説明

揮発性有機化合物含有ガス処理装置

【課題】加熱効率が高い揮発性有機化合物含有ガス処理装置を提供することを課題とする。
【解決手段】揮発性有機化合物含有ガスを処理する処理装置であって、ヒートポンプユニット2と揮発性有機化合物含有ガス処理ユニット3とを備えている。ヒートポンプユニット2は、圧縮機21、凝縮器22、膨張弁23、及び蒸発器24が順次環状に接続され、トルエンを冷媒として循環させる。また、揮発性有機化合物含有ガス処理ユニット3は、触媒反応器32を有し、揮発性有機化合物含有ガスを、凝縮器22、触媒反応器32、蒸発器24、の順に送るように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物含有ガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベンゼンや、メタノール、アンモニアなどの揮発性有機化合物(VOC(volatile organic compounds))を含有したガスは、大気へ放出されると公害などの被害を引き起こすため、大気へ放出する前に処理する必要がある。例えば特許文献1には、揮発性有機化合物含有ガスをバーナーや電熱ヒータを用いた予熱装置によって加熱した後に触媒反応器へと送ることで、揮発性有機化合物含有ガスを浄化する処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−156142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような触媒反応器を用いた揮発性有機化合物含有ガス処理装置では、揮発性有機化合物含有ガスを触媒反応器で分解させるためには、この揮発性有機化合物含有ガスを一旦加熱してから触媒反応器に送る必要があり、例えばベンゼンを含有する場合は約210度、メタノールの場合は約150度、アンモニアの場合は約220度に加熱する必要がある。このため、上述したような揮発性有機化合物含有ガス処理装置は、バーナーや電熱ヒータ等によって揮発性有機化合物含有ガスを約250度に加熱してから触媒反応器に送っているが、これらバーナーや電熱ヒータはその加熱効率が100%(COP(Coefficient Of Performance)が1.0)を超えることはない。そこで、本発明は、加熱効率が高い揮発性有機化合物含有ガス処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る揮発性有機化合物含有ガス処理装置は、揮発性有機化合物含有ガスを処理する処理装置であって、圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器が順次環状に接続され、トルエンを冷媒として循環させるヒートポンプユニットと、触媒反応器を有し、前記揮発性有機化合物含有ガスを、前記凝縮器、前記触媒反応器、前記蒸発器、の順に送る揮発性有機化合物含有ガス処理ユニットと、を備えている。
【0006】
上記揮発性有機化合物含有ガス処理装置によれば、触媒反応器に送る前の揮発性有機化合物含有ガスをヒートポンプユニットの凝縮器に送ることで加熱している。このヒートポンプユニットは加熱効率(COP)が100%を超えることが可能であるため、効率的な揮発性有機化合物含有ガス処理装置とすることができる。なお、触媒反応器に送る前に揮発性有機化合物含有ガスを約250度に加熱する必要があるが、一般的なヒートポンプユニットは冷媒として臨界温度が約150度以下のフロン系ガスなどを使用している。このため、一般的なヒートポンプでは、凝縮器において冷媒の温度が臨界温度を超えてしまい加熱効率が悪くなってしまう。しかし、本発明に係る揮発性有機化合物含有ガス処理装置では、ヒートポンプの冷媒として臨界温度が321度のトルエンを使用しているため、凝縮器における冷媒の温度は臨界温度を超えることはなく、その結果、加熱効率のよい揮発性有機化合物含有ガス処理装置とすることができる。なお、揮発性有機化合物含有ガス処理ユニットは、揮発性有機化合物含有ガスを凝縮器、触媒反応器、蒸発器の順に送るが、触媒反応器において揮発性有機化合物含有ガスは分解されて分解ガスとなるため、蒸発器に送られるのは分解ガスである。
【0007】
上記揮発性有機化合物含有ガス処理装置は、種々の構成をとることができるが、例えば揮発性有機化合物含有ガス処理ユニットが、熱交換器をさらに有し、揮発性有機化合物含有ガスを、熱交換器、凝縮器、触媒反応器、蒸発器、熱交換器の順に送るような構成とすることができる。この構成によれば、揮発性有機化合物含有ガスを凝縮器に送る前に熱交換器によって加熱しておくことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加熱効率が高い揮発性有機化合物含有ガス処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は本実施形態に係る揮発性有機化合物含有ガス処理装置の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る揮発性有機化合物含有ガス処理装置の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図中の矢印は冷媒や揮発性有機化合物含有ガスの流れ方向を示す。
【0011】
図1に示すように、揮発性有機化合物含有ガス処理装置1は、ヒートポンプユニット2と、揮発性有機化合物含有ガス処理ユニット3と、から主に構成されている。
【0012】
[ヒートポンプユニット]
ヒートポンプユニット2は、圧縮機21、凝縮器22、膨張弁23、蒸発器24が冷媒配管によってこの順で環状に接続されている。ヒートポンプユニット2内はトルエンが冷媒として循環している。なお、トルエンの臨界温度は321℃である。
【0013】
圧縮機21は、駆動装置(図示省略)によって駆動され、吸引した冷媒を内部で圧縮して高圧・高温とし凝縮器22側へと吐出するように構成されている。
【0014】
凝縮器22は、その内部において、冷媒と、後述する揮発性有機化合物含有ガス処理ユニット3によって送られてくる揮発性有機化合物含有ガスとを熱交換させるように構成されており、例えば、冷媒流路221と揮発性有機化合物含有ガス流路222とが形成された熱交換器(例えばプレート式熱交換器など)によって構成することができる。この凝縮器22は、圧縮機21の下流側に配管を介して接続されるとともに、後述する揮発性有機化合物含有ガス処理ユニット3が接続されている。なお、凝縮器22内において揮発性有機化合物含有ガスと冷媒とが熱交換することによって、揮発性有機化合物含有ガスが加熱される。
【0015】
膨張弁23は、冷媒を急激に減圧して温度を下げるとともに圧力も下げるように構成されており、凝縮器22の下流側に配管を介して接続されている。
【0016】
蒸発器24は、その内部において、冷媒と、後述する揮発性有機化合物含有ガス処理ユニット3の触媒反応器32において生成される分解ガスとを熱交換させるように構成されており、例えば、冷媒流路241と、分解ガス流路242とが形成された熱交換器(例えばプレート式熱交換器など)によって構成することができる。この蒸発器24は、膨張弁23の下流側に配管を介して接続されるとともに、後述する揮発性有機化合物含有ガス処理ユニット3が接続されている。
【0017】
[揮発性有機化合物含有ガス処理ユニット]
揮発性有機化合物含有ガス処理ユニット3は、熱交換器31や触媒反応器32を主な構成としている。また、揮発性有機化合物含有ガス処理ユニット3は、その他にも、熱交換器31と凝縮器22とを接続する第1の接続管33や、凝縮器22と触媒反応器32とを接続する第2の接続管34、触媒反応器32と蒸発器24とを接続する第3の接続管35、蒸発器24と熱交換器31とを接続する第4の接続管36も備えている。
【0018】
熱交換器31は、例えば塗装関係設備や印刷関係設備等から排出された揮発性有機化合物含有ガスを内部に取り込み、この揮発性有機化合物含有ガスと、外部へ排出される分解ガスと、を熱交換させるように構成されており、揮発性有機化合物含有ガス流路311と分解ガス流路312とを備えた構成(例えばプレート式熱交換器など)とすることができる。揮発性有機化合物含有ガス流路311は、揮発性有機化合物含有ガスを取り込むよう一方端が供給管に接続されており、もう一方端が第1の接続管33を介して凝縮器22へと接続されている。また、分解ガス流路312は、蒸発器24からの分解ガスを取り込むよう一方端が第4の接続管36に接続されており、もう一方端が外部へと分解ガスを排出するための排出管に接続されている。
【0019】
触媒反応器32は、公知のものを採用することができ、具体的には、例えばハニカム状の触媒ユニットと、この触媒ユニットに揮発性有機化合物含有ガスを通過させるための経路を有するケーシングとによって構成されたものを採用することができる。なお、触媒としては、例えば白金系や鉄−マンガン系などを採用することができる。
【0020】
[作動方法]
次に上述した揮発性有機化合物含有ガス処理装置1の作動方法について説明する。まず、塗装関係設備や印刷関係設備等から排出された揮発性有機化合物含有ガスが、熱交換器31に取り込まれて揮発性有機化合物含有ガス流路311を流れる。この熱交換器31は、揮発性有機化合物含有ガス流路311以外にも分解ガス流路312が形成されており、分解ガス流路312に約180度の分解ガスが流れている。このため、熱交換器31内において、揮発性有機化合物含有ガスは、分解ガスと熱交換を行い加熱されて約140度となって第1の接続管33を介して凝縮器22へと送られる。
【0021】
凝縮器22では、熱交換器31から送られてきた揮発性有機化合物含有ガスが揮発性有機化合物含有ガス流路222を流れる一方で、圧縮機21によって圧縮されて約265度の高温となった冷媒が冷媒流路221を流れる。このため、揮発性有機化合物含有ガスは、冷媒と熱交換を行い加熱され、約250度となり、第2の接続管34を介して触媒反応器32へと送られる。
【0022】
凝縮器22によって約250度となった揮発性有機化合物含有ガスは、触媒反応器32に送られ、触媒の作用によってCO2とH2Oに分解される。このように触媒反応器32で生成されたCO2などの分解ガスは、第3の接続管35を介して蒸発器24へと送られる。なお、触媒反応器32を出た分解ガスは、反応熱のために触媒反応器32に入る直前の揮発性有機化合物含有ガスとほぼ同じ温度で蒸発器24へと送られる。
【0023】
蒸発器24には、触媒反応器32から第3の接続管35を介して約250度の分解ガスが分解ガス流路242に送られてくる一方で、膨張弁23を経由して約165度となった冷媒が冷媒流路241に送られてくる。分解ガス流路242を流れる分解ガスは、冷媒流路241を流れる冷媒と熱交換することで冷媒を加熱し、冷媒を約180度とする。冷媒は、蒸発器24において加熱されることで蒸発した後、圧縮機21へと送られ再度圧縮機21で圧縮されることで約265度となって凝縮器22へと送られる。また、分解ガスは、冷媒に放熱することで約180度となり、第4の接続管36を介して熱交換器31へと送られる。
【0024】
熱交換器31では、蒸発器24から送られてきた分解ガスが、分解ガス流路312を流れ、上述したように揮発性有機化合物含有ガス流路311を流れる揮発性有機化合物含有ガスと熱交換することで揮発性有機化合物含有ガスに放熱し、約80度となって外部へと排出される。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0026】
例えば、一般的に揮発性有機化合物処理装置1に供給される揮発性有機化合物含有ガスは室温程度であるため、上記実施形態では、熱交換器31によって凝縮器22に送る前に一旦加熱しているが、揮発性有機化合物含有ガスの温度が元から高温である場合は、熱交換器31を省略することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 揮発性有機化合物含有ガス処理装置
2 ヒートポンプユニット
21 圧縮機
22 凝縮器
23 膨張弁
24 蒸発器
3 揮発性有機化合物含有ガス処理ユニット
31 熱交換器
32 触媒反応器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物含有ガスを処理する処理装置であって、
圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器が順次環状に接続され、トルエンを冷媒として循環させるヒートポンプユニットと、
触媒反応器を有し、前記揮発性有機化合物含有ガスを、前記凝縮器、前記触媒反応器、前記蒸発器、の順に送る揮発性有機化合物含有ガス処理ユニットと、
を備えた、揮発性有機化合物含有ガス処理装置。
【請求項2】
前記揮発性有機化合物含有ガス処理ユニットは、熱交換器をさらに有し、前記揮発性有機化合物含有ガスを、前記熱交換器、前記凝縮器、前記触媒反応器、前記蒸発器、前記熱交換器の順に送る、請求項1に記載の揮発性有機化合物含有ガス処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−255282(P2011−255282A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130499(P2010−130499)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】