説明

揮発性物質を分配するための方法

香りを含むがこれに限定されない複数の揮発性物質を環境中に分配するための、物品、システム、及び方法が、開示される。方法の一実施形態では、人が居る部屋に香りを匂わせるために、
(a)第一の香り要素をある実行期間にわたってその部屋の中に分散させる工程であって、実行期間は、人が芳香に気付くのに十分に長いが、人がその芳香に対して鈍感になる可能性のある期間を超えないものである、第一の香り要素を分散させる工程と、
(b)第一の香り要素に関連する実行期間が完了した後、第二の香り要素を実行期間にわたってその部屋の中に分散させる工程であって、第二の香り要素が第一の香り要素と異なるものである、第二の香り要素を分散させる工程と、
(c)第二の香り要素に関連する実行期間が完了した後、第三の香り要素を実行期間にわたってその部屋の中に分散させる工程であって、第三の香り要素が第一及び第二の香り要素の両方と異なるものである、第三の香り要素を分散させる工程とを含む方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香り物質を含むがこれに限定されない揮発性物質を環境中へ分配するための、及び揮発性物質を含む製品を提供するための、製品、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単一の香りなどの揮発性物質を部屋内及び自動車内に分配するための器具は、現在でも利用可能である。単一の香りを部屋内に分配するための器具の例には、S.C.ジョンソン(Johnson)により製造されるグレイドプラグイン(GLADE PLUG INS:登録商標)プラグイン・ルームフレッシュナーが含まれる。香りのある物質を分配可能な器具は、特許文献中にも記載されている。そのような器具の例が、米国特許第4,549,250号、同第4,714,984号、同第4,695,434号、同第4,629,604号、及び同第5,805,768号、並びにPCT公開WO97/02076及びカナダ特許出願2,222,838、PCT公開WO00/121143、並びに米国特許出願公開2002/0066798、同2002/0066967、同2002/0068009、及び同2002/0068010に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、器具及びシステムの改善の探求が、続けられている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、揮発性物質の環境中への分配に関する。幾つかの実施形態では、本発明は、複数の香りを環境中に分配するためのシステムもしくは方法、及び/又は器具もしくは物品に関する。本明細書には、システムの幾つかの構成要素として幾つかの非限定的な実施形態が記述されており、そのそれぞれは、それ自体で又は他の構成要素と共に、発明を構成することができる。
【0005】
一実施形態では、揮発性物質を分配するためのシステムは、分配器具などの装置と、分配器具に組み合わせて使用される1つ以上の揮発性物質を含有する製品とを含む。一実施形態では、人が居る部屋に香りを匂わせるために、
(a)第一の香り要素をある実行期間にわたってその部屋の中に分散させる工程であって、前記実行期間は、人が芳香に気付くのに十分に長いが、人がその芳香に対して鈍感になる可能性のある期間を超えないものである、第一の香り要素を分散させる工程と、
(b)前記第一の香り要素に関連する前記実行期間が完了した後、第二の香り要素を前記実行期間にわたってその部屋の中に分散させる工程であって、前記第二の香り要素が前記第一の香り要素と異なるものである、第二の香り要素を分散させる工程と、
(c)前記第二の香り要素に関連する前記実行期間が完了した後、第三の香り要素を前記実行期間にわたってその部屋の中に分散させる工程であって、前記第三の香り要素が前記第一及び第二の香り要素の両方と異なるものである、第三の香り要素を分散させる工程とを含む方法が提供される。
【0006】
多数の他の実施形態もまた可能であり、次の詳細説明で記載されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書は、本発明を形成するとみなされる主題を特に指摘して明確に請求する特許請求の範囲をもって結論とするが、本発明は、添付の図面と関連させた次の説明で更によく理解されると考えられる。
【0008】
I.導入(揮発性物質の分配システム及び装置)
本発明は、揮発性物質の環境中への分配に関する。幾つかの実施形態では、本発明は、複数の香りを環境中に分配するためのシステムもしくは方法、及び/又は器具もしくは物品に関する。本明細書には、システムの幾つかの構成要素として様々な非限定の実施形態が記述されており、それぞれは、それ自体で又は他の構成要素と共に、発明を構成することができる。香り又は芳香は、様々な施設に供給可能であり,それには、部屋、家屋、病院、事務所、劇場、ビルディングなどや、又は列車、地下鉄、自動車、航空機などの様々な乗り物が含まれるが、これらに限定されない。
【0009】
本明細書で使用するとき、用語「揮発性物質」は、蒸発可能な物質を指す。本明細書で使用するとき、用語「揮発性物質」、「芳香物質」、及び「香り物質」は、心地良い又は快い匂いを含むがこれらには限定されず、従って、殺虫剤、エアフレッシュナー、防臭剤、アロマコロジー、アロマセラピーとして機能する香り、又は雰囲気を調整する、変える、もしくは他の方法で満たす、又は環境を変える作用をする他のいずれかの匂いをも包含する。しかしながら、香料、芳香物質、及び香り物質は、1つ以上の揮発性物質(これらは、揮発性物質の集合からなる唯一及び/又は個別のユニットを形成してもよい)からなることが多いことを理解すべきである。
【0010】
一実施形態では、揮発性物質を分配するためのシステムは、1つ以上の香り又は芳香物質を含有する1つ以上の構成要素を含む。そのような実施形態では、システムは、好ましくは、器具などの分配器具と、芳香剤「カートリッジ」の形態で提供されることがある1つ以上の芳香物質内蔵製品又は「香り物質内蔵製品」とを含む。それぞれのカートリッジは、単一の揮発性組成物、又は異なる香り物質の組合せなどの異なる揮発性物質の組合せを提供することができる。ある種の実施形態では、カートリッジのそれぞれは、例えばテーマ、経験、生理的効果、及び/又は治療効果を伝達する、香り物質の集合を提供する。
【0011】
放出された芳香に対する知覚強度は、芳香剤放出の瞬間から時間と共に減少するものであり、従って、所望の芳香強度を維持するために、芳香剤の繰り返し放出が必要なこともあると知られている。人の臭覚機関が特定の匂い又は芳香に「飽和」し、ひいては、人がその特定の芳香の存在に対して鈍感になる、「芳香疲労」が生じ得ることも知られている。ある種の実施形態では、本システム及び方法は、単一の香りだけを放出可能な従来器具で生じるこの芳香疲労を克服するために、並びに複数の香りを放出可能な従来器具の欠点に対処するために特に有用である。しかしながら、単一の香り又は他のタイプの揮発性組成物を放出可能な器具上で使用されるときでさえも、本発明の様々な態様が新規であると考えられるので、本発明は、複数の香りを放出可能な器具に限定されないことを理解すべきである。
【0012】
図1及び図3は、揮発性物質を環境中に分配するための構成要素のシステムの1つの非限定的な実施形態を示す。これらの図に示されるシステムは、装置(又は「拡散器」、「分配器具」、又は単に「器具」)20と、カートリッジ22などの交換可能な複数区画の揮発性組成物内蔵製品とを備える。図は、器具及び揮発性組成物内蔵製品の1つの非限定的な例を示す。器具の制御ボタンについては、以下で更に詳細に説明する。本発明のシステム(すなわち、器具及びカートリッジ)は、多数の他の好適な構成で供給可能である。
【0013】
II.揮発性組成物内蔵製品
図3は、器具20から取り出されたときに見られる、カートリッジ22の形態の揮発性組成物内蔵製品の1つの非限定的な実施形態を示す。カートリッジ22は、香り物質などの単一の揮発性組成物、又は複数の揮発性組成物(例えば、複数の香り物質及び/もしくは他のタイプの揮発性組成物)を含むことができる。カートリッジ22は、長手方向中心線L及び横断方向中心線Tを有する。
【0014】
カートリッジ22は、上面26と下面28と前端部30と後ろ端部32と側部34とを有するハウジング部分(又はシェル)24を備える。カートリッジ22は、いかなる好適な形状にもすることができる。他の実施形態では、製品は、ディスク形状、楕円形、平行六面体形状、長方形、立方体、直方体、円筒形、ピラミッド形、球形、不規則形状、又は何か他の形状などの形状を有することができる。
【0015】
他の実施形態では、揮発性組成物は、図示されるカートリッジには類似しない物品の中又は上に含まれてもよい。本明細書で使用するとき、用語「カートリッジ」は、ケース又はカセットの形体の物品に限定されない。例えば、揮発性組成物は、図示される器具ではなく、コンパクトディスク(CD)などのディスクに類似する物品の中又は上で提供することも可能である。加えて、用語「カートリッジ」が本明細書で使用されるときはいつでも、図示される構造を説明する目的のためだけになされており、カートリッジに関して説明されるいかなることも他のタイプ及び形状の製品にも適用可能であると理解すべきである。この特定のカートリッジは、香り組成物を含むと記述されているが、他の実施形態では、本明細書に記述される製品のいかなるものも、いかなる他のタイプの揮発性物質をも含み得ることも理解すべきである。
【0016】
図示の実施形態では、カートリッジ22は、ディスク状の形状を有する。上方から見るとき、カートリッジ22は、その後ろ端部32において突出領域35が付いた概ね円形状を有する。上方から見るとき、半カートリッジ22は、円に似た形状の前半分を有する。カートリッジ22の後ろ半分は、カートリッジ22の後ろ端部32から突出する領域35付きの半円に類似する。カートリッジの側部34は、カートリッジ後ろ半分上の突出領域35において、内向きにわずかに凹面の曲線をなす。この突出領域35は、器具20内に置かれたときに、カートリッジ22を回転から安定させるのに使用可能である。カートリッジ22のシェル24は、上側部分(上半分)36及び下側部分(下半分)38を含む。
カートリッジ22などの揮発性組成物内蔵製品は、好ましくは、器具から取り出し可能であり、カートリッジ22が器具20から取り出されているときに揮発性組成物の蒸発を防止するために、閉止及び封止(すなわち、揮発性組成物が封止)される。本明細書で使用するとき、用語「封止される」は、封止する又は揮発性物質の蒸発を減少させるためにこれを他の方法で覆う、いかなる試みについても言う。したがって、用語「封止される」とは、蒸発が全くないような方法で揮発性物質が封止される実施形態に限定されない。用語「封止される」は、蒸発に対して少なくとも部分的なバリアを提供する構成、及び蒸発に対して実質的に完全なバリアを提供する構成を包含する。香料の香りがある揮発性物質の場合、幾つかの実施形態では、揮発性組成物内蔵製品は、3ヶ月間にわたって、香料などの揮発性物質の損失が当初の揮発性物質量の約50重量%以下(すなわち50%以上を保持)であるのが望ましい。他の実施形態では、揮発性組成物内蔵製品は、同様期間にわたって、揮発性物質の損失が当初の揮発性物質量の約25重量%以下、あるいは20%未満であるのが望ましい。香料組成物が特に異なる揮発性の揮発性物質を含む(例えば、揮発性が非常に高い物質と揮発性が低い物質の組合せの組成物であって、これらが組み合わさって所望の芳香を提供する)場合は、著しくより低い損失が望ましい。これらの場合、約5%の損失であっても、著しい特性変化が生じることがある。
カートリッジ22などの揮発性組成物内蔵製品は、ある種の実施形態では、「実行」の後で使い捨てである。しかしながら、他の実施形態では、カートリッジ22などの揮発性組成物内蔵製品は、当初「実行」されて器具から取り出された後で次に器具の中又は上へ戻し挿入されて、再使用可能及び再生可能であることが望ましい。
カートリッジ22などの揮発性組成物内蔵製品は、図示するように、その中に少なくとも1つの開口部52を有するカバーを備える閉止構造体を含む。好ましくは、少なくとも1つの開口部52は、所与の時間に区画の1つから揮発性組成物を放出するために構成される。したがって、一実施形態では、カバー、シェル24は、香りの1つを放出するためのその中の単一の開口領域を有する。図示する実施形態では、カートリッジ22は、単一の組成物を放出するために構成された領域内を部材54により仕切られた、4つの開口部52A、52B、52C、及び52D付きの単一の開口領域52を有する。小開口部52A、52B、52C、及び52Dの使用により、暴露された揮発性組成物にユーザーが接触するのを防止することができる。カートリッジ22は、任意数のそのような開口部を有することができる。しかしながら、単一の開放領域を有することは、複数の扉又はカバーを備え、そのそれぞれが部分的又は完全に開放されて揮発性組成物の蒸発という結果になる構造よりも、含まれる揮発性組成物の蒸発の可能性がより少ないカートリッジ22を提供すると考えられる。これはまた、いたずらに対するより強い保護を有するカートリッジ22を提供する。したがって、図示する実施形態では、揮発性組成物内蔵製品が器具から取外されるとき、揮発性組成物が包囲されて、揮発性組成物は、揮発性組成物を覆う扉を開放するなどによる物品外からのアクセスが不可能である。
【0017】
カートリッジ22などの揮発性組成物内蔵製品はまた、好ましくは、揮発性組成物を蒸発から封止する1つ以上の封止機構を有する。封止機構は、製品の外側シェルの内部、又は外側シェルの外部とすることができる。カートリッジ22は、カートリッジの最初の使用前に揮発性組成物を蒸発から防止するために取り外し可能な輸送封止を有することができる。図示する実施形態では、カートリッジ22はまた、物品が器具に挿入又は上に置かれて容器の1つ内の揮発性組成物から揮発性組成物が放出されるときに、揮発性組成物の放出を意図されない揮発性組成物を封止する封止機構を含む。封止機構はまた、物品が器具から取り出されるときに、全ての揮発性組成物容器を封止可能である。図示する実施形態では、この封止機構は、封止位置及び開放位置を有することができ、カートリッジシェルの内側にある内部型である。揮発性組成物内蔵容器は、好ましくは、単一の閉止機構で閉止される。この単一の閉止機構は、好ましくは、容器の全てを封止するために移動される1つの要素だけを有する。このことは、各香り物質にアクセスするための複数の扉を有して、全ての揮発性組成物を封止するために閉止されなければならない多数の要素を有する物品と、対照をなすことができる。このことにより、製品は、より簡単及び製造がより安価になり、並びに信頼性を高めることもできる。もちろん、他の実施形態では、製品は、複数の構成要素を有する、又はその封止機能を実行するために2つ以上の要素の移動を伴う、封止機構を備えることも可能である。
【0018】
カートリッジ22などの揮発性組成物内蔵製品はまた、好ましくは、製品のロック及びロック解除が可能なロック機構を含む。ロック機構は、好ましくは、カートリッジ22が器具から取外されたときの安全のために、揮発性組成物への接近を阻止する。ロック機構は、好ましくは、封止機構と協働する。封止機構は、第一の封止位置及び第二の開放位置を有する。図示する実施形態では、製品は、好ましくは、封止機構がその第一の封止位置になるまで、器具から取外し不能である。製品はまた、好ましくは、「ブランク」区間を備え、ここは、その上又はその中に提供されたいかなる揮発性組成物も有さない。「ブランク」区間は、製品から揮発性組成物を放出するための始動及び停止位置を提供する。
【0019】
図8は、カートリッジ22のこの実施形態の構成を更に詳細に示す。しかしながら、この点に関して、図8に示されるカートリッジ22は、製品の単なる1つの可能な実施形態であることを理解すべきである。図8に示されるカートリッジ22の機構の幾つか又は全てを有さなくてもよい他のタイプの揮発性組成物内蔵物品が、提供可能である。図8に示されるカートリッジ22は、幾つかの基本的な構成要素を含む。これらには、上から下へ、カートリッジシェルの上側部分36、円形の回転可能なディスク又はトレー46、及びカートリッジシェルの下側部分38が含まれる。回転可能なトレー46を最初に説明するのは、この実施形態において、カートリッジ22の他の構成要素が、トレー46の様々な機構と協働するように設計されているからである。
【0020】
この実施形態の1つのバージョンでは、カートリッジ22は、複数の揮発性組成物内蔵構成要素の上に配置(及び/又は、好ましくはこの中に一体化)された複数の揮発性組成物(又は香り物質、芳香物質、芳香剤、もしくは香料)42を含む。好ましくは、複数の揮発性組成物は、複数の揮発性組成物内蔵構成要素の上又は中に配置されて、一体構造を形成する。複数揮発性組成物内蔵構成要素は、いかなる好適な構成にても提供可能であり、及びいかなる好適な形状をも有することができる。図示する実施形態では、複数の揮発性組成物内蔵構成要素は、円形の回転可能トレー46であって、揮発性組成物が、回転可能なトレー46に形成された窪み、貯蔵槽、又はポケット44などの容器又はホルダー内に配置される。
【0021】
このトレー46は、カートリッジのシェル24の内側の上側部分36と下側部分38の間に入れられる。トレー46は、上面48及び下面50を有する。トレー46の上面48が、そこに形成されたポケット44を有する。任意数の好適なポケット44が、形成可能であり、いかなる好適な形状にもすることができる。図示する実施形態では、5つのポケット44と、カートリッジ22が香り放出を意図されないときのために、ポケット44の2つの間にブランク空間51とがある。
【0022】
図示する実施形態における揮発性組成物用のポケット44は、その上を流れる空気に接触してその中に放出するための、1つの開口部すなわち上開口部を設ける。これは、香り物質が放出される空気流が揮発性組成物内蔵構成要素の中を通る構造と対照的である。もちろん、香り物質が放出される空気流が容器の中を通る他の実施形態も、提供可能である。香り物質を放出するための開口部がポケット44の上部以外のいずれかに配置される他の実施形態も、提供可能である。
【0023】
図8に示す実施形態では、トレー46は、好ましくは、複数のスロット70をその周辺部72に有する。スロット70は、香りポケット44の一縁部に配置される。これらのスロット70のどちらの側にも、スロット70に近づくにつれて深さが徐々に増すスロープ74がある。図9に示すように、カートリッジ22のこの実施形態では、カートリッジシェルの上側部分36の内側表面90は、トレー46のポケット44の少なくとも幾つか、好ましくは全てを封止するための隆起した封止部56を有する。隆起封止部56は、いかなる好適な形状をも有することができる。図示する実施形態では、隆起封止部は、ポケット44の周辺形状に類似する形状を有する。隆起封止部56を、ポケット44より大きいような大きさにする。
【0024】
図5及び図8に示すように、この実施形態では、カートリッジ22は、その底面28(すなわち、カートリッジシェルの下側部分38)に3つの開口部を有する。カートリッジシェルの下側部分38の開口部は、器具の一部を挿入可能にしてカートリッジ22内側の回転可能なトレー46を回転させるための中央開口部94と;器具20内の加熱エレメントからの熱を放出のために暴露された揮発性組成物ポケット44に伝達可能にする開口部96と;カートリッジ22が使用されていないときに揮発性組成物を封止するために、器具20がカートリッジ22内側のロックシステムを活性化及び非活性化することを可能にする開口部98とを含む。図示する実施形態では、ロック機構は、カートリッジシェルの下側部分から延びて、トレー46の周辺部回りのスロット70に遭遇してトレー46の回転を阻止するように配置された、カンチレバータブ86である。このように、ロック機構は、カートリッジシェル及び/又はトレー46に一体化されており、カートリッジ22をロックするために他の構成要素を何も必要としない。しかしながら、必要であれば、タブ86のいかなるクリープを相殺する金属ばねなどの任意構成要素が、追加されてもよい。
【0025】
これらの開口部は、いかなる好適な形状をも有することができる。図示する実施形態では、中央開口部94は円形である。更に、図8に示すように、カートリッジシェルの隣接部分は、内向きに延びる、及びカートリッジ22の中心に向かって内向きに先細にする、側壁58を形成する。これらの先細側壁58を使用して、カートリッジ22が器具20の中へ挿入されるときに、器具のスピンドル(又はハブ)60の上でカートリッジ22の中心決めを助けることができる。図示する実施形態では、第二の開口部96も円形である。しかしながら、他の実施形態では、この開口部は、カートリッジ22を回転に対して更に安定化させるために、加熱エレメント142の形状に一致する形状とすることができる。図示する実施形態では、第三の開口部98は、少なくとも幾つかの直線区分で形成された側部を有する。
【0026】
カートリッジの上側部分36の上面26は、いかなる好適な形状をも有することができる。上面26は、平面、凸面、又は凹面とすることができる。幾つかの実施形態では、トレー46とカートリッジの上面26とが互いに押されたときに、カートリッジ22の上面26が平らになるように、上面はわずかに凸面又は凹面であるのが望ましい。この配置を使用すると、当初平らな上面26よりも均一及び予測できる封止面を提供可能になる。スロープ74がトレー46の周辺回りに配置された図示される実施形態では、カートリッジの上面26は、凹面であるのが望ましい。それならば、トレー46がスロープ74上に移動して封止を形成するときにトレー46が上へ押されるので、カートリッジ22の上面26が平面化して、上側カートリッジシェル36の下側90上の封止部56が、トレー46の上面上の各ポケット回りの領域と接触する。カムシステム(すなわち、スロープなど)がトレー46の中央にある実施形態では、カートリッジの上面26は、凸面であるのが望ましいことがある。
【0027】
カートリッジ22が加熱器を含む器具20内で使用される場合、トレー46は、揮発性物質が加熱されるときに溶融しない材料を含むべきである。この要求を満たすいかなる好適な材料も、そのような状況で使用可能であり、これには、ポリブチルテラフタレート(polybutyl terapthalate)(すなわち、「PBT」)が含まれるが、これに限定されない。
カートリッジ22は、多数の追加機構を備えることができる。例えば、幾つかの実施形態では、カートリッジ22は、トレー46がその縦軸周りで(動揺などがなく)滑らかに回転することを確実にする機構を備えてもよい。幾つかの実施形態では、カートリッジ22は、カートリッジ22内側のトレー46が適切に回転できるように、カートリッジ22が器具内で(回転などをすることなく)固定位置にとどまることを確実にする機構を備えてもよい。幾つかの実施形態では、カートリッジ22(又はディスク46などのその構成要素)は、様々な(例えば、カートリッジ22が器具の中へ適切に挿入されることを確実にする)安全機構を備えてもよい。
【0028】
図5に示すように、この実施形態では、トレー46の底面50は、それから突出する(ポケット44により形成される突出部に加えて)幾つかの要素を有する。これらがカートリッジ22の底面28の穴94及び96を通って突出するのが見える。トレー46の中心には、円形断面を有するボス62がある。円形ボス62は、その対向する側から延びるリブ64及び66などの、それから延びる1つ以上のリブを有する。図示する実施形態では、リブ64及び66は、概ね長方形を有する。図示する実施形態では、リブは、1つのリブ64が他方のリブ66より広いように構成される。これらのリブ64及び66は、器具20のハブ60の頂部の溝と噛み合う。リブ64及び66の形状は、カートリッジ22が器具20へ一方向だけに挿入可能であるように確立されている。リブ64及び66は、この一方向嵌合を確実に可能にする条件で、いかなる好適な大きさ及び形状にもすることができる。1つの非限定的な実施形態では、トレー46のブランク区間に近い側部上のリブ66は、約0.05インチ〜約0.1インチ(約1.3〜約2.5mm)の間の厚さ(これは、図5に示されるように向けられたときに横断方向中心線Tに平行に測定される寸法)である。反対側のリブ64は、厚さが約0.06インチ〜約0.125インチ(約1.5mm〜約3.8mm)の間である。各リブ64及び66は、約0.2インチ〜約0.3インチ(約60mm〜約90mm)の間の中心ボス62から突き出る。
【0029】
リブ64及び66の端部において、リブ64及び66に垂直な弧状リブ76が、存在可能である。この実施形態では、リブ端部及び弧状リブ76を、カートリッジ22の底28に中心穴94を画定する、カートリッジ22の部分に一致するような大きさにする。このことは、トレー46をカートリッジの底に関して安定化させて、トレー46がカートリッジ22内の固定軸回りで回転することを確実にする。追加の弧又は位置決め機構を加えて、トレー46をカートリッジに関して更に安定化させることができる。例えば、トレー46の底面50はまた、ブランク区間51の下側にある大きな弧状リブ78などの他の突出部を有して、ポケット44が存在しない領域内でさえもトレー46が滑らかに回転するのを確実にすることができる。
【0030】
図示する実施形態では、封止機構は、水平に向くタブ又は棚の形態で示されるカムフォロワー(又はポスト)とカム(又はスロープ)とを含み、これらが互いに係合してカートリッジの構成要素を共に密接に嵌合させて、封止を形成する。ポスト92及びスロープ74は、製品のいずれの好適な構成要素上にも配置することができる。例えば、ポスト92が、シェル24上に配置されて、スロープ74が、トレー46の周辺部72上に配置されてもよい。図示する実施形態では、ポスト92は、上側シェルの内側部分90上に配置されている。揮発性組成物ポケット44が暴露されない位置にトレー46が回転されると、トレー46の周辺部72上のスロープ74が、上側シェル36の内側90のポスト92と係合して、トレー46を上側シェル36の上面に向かって押す。トレー46が上側シェル36の上面26の内側90に近づくと、トレー46は、まず上面26の内側90の中央部に接触して、平らな形状に変化するまで上面26を引き続いて押し、この時、封止部56のそれぞれが、トレー46の上面48の内側90と接触する。
【0031】
製品22は、輸送封止80を含む。輸送封止80は、例えば、製品が作成された後で、製品が輸送されるのを待つ在庫中に、及び/又は輸送中に、使用可能である。輸送封止の使用によって、カートリッジの封止機構を使用して提供可能なものより緊密な封止を提供することが望ましい。図10〜図12は、輸送封止80の1つの非限定的な実施形態を示す。図11に示すように、輸送封止80は、ポケット44などの1つ以上の区画を覆う少なくとも一片の材料を含む。輸送封止80は、本明細書で説明する多数の他の構成要素と同様に、複数香り物質の物品上、再使用可能又は再実行可能な物品上での使用に限定されるものではなく、単一組成物の物品、使い捨て物品、及び単一使用の物品の上で使用可能である。
【0032】
輸送封止80は、いかなる好適な材料をも含むことができ、製品のいかなる部分にも、いかなる好適な方法でも取り付け可能である。1つの非限定的な実施形態では、輸送封止80は、複数層からなる可剥性フィルムを含み、これには、非晶質ポリエステルの封止剤層と金属被覆されたポリエステルのバリア槽とが含まれるが、これらに限定されない。この実施形態では、輸送封止80を、トレー46の区画44のそれぞれの周りで熱封着する。区画44が異なる物質を含む場合、区画44のそれぞれの周りの封止を使用すると、区画44内の異なる揮発性組成物42間の相互汚染を防止することができる。輸送封止80を、熱封着によりトレー46に封止し、その際、ポリエステル層の少なくとも一部を溶融する。輸送封止80は、接着剤でトレー46に封止も可能であるが、区画44が香料を含む場合は、多数の接着剤が多数の香料成分とうまくいかないので、熱封着が好ましい場合がある。
この実施形態における輸送封止80は、第一の部分である封止部分80Aと、封止部分80Aの上に曲げ戻された第二の折り曲げ部分80Bとを有する。折り曲げ部分80Bは、ユーザーにより把握されるタブを含んでもよい。この形状により、輸送封止80が、単一動作で、トレー46からの剥ぎ取りと、カートリッジ22の後ろ部分内のスロット82などの開口部を通す取り外しが可能になる。カートリッジ22の好ましい実施形態では、輸送封止80を取外すためのスロット82は、長手方向中心線Lから0度超過及び約90度未満の角度でオフセットしている。このオフセットは、剥がし方向に垂直である封止区域の表面積が減少するように剥がし方向を向けることによって、及び/又は輸送封止の取外し持続時間にわたってより均一化して、輸送封止を取外すためのピーク引張り力を減少させる。
【0033】
揮発性組成物内蔵製品の多数の他の実施形態、例えばカートリッジ22が、可能である。本明細書で記述された揮発性組成物内蔵製品に適用可能な他の実施形態の幾つかの非限定的な例が、本明細書に参考として組み込まれる優先権出願の幾つかで更に詳細に説明されている。これら又は他の実施形態では、カートリッジなどの製品は、次の特性:再使用可能性、再充填可能性、処分可能性、及び再生利用可能性の1つ以上を有するように、変更可能である。
【0034】
揮発性組成物42は、いかなる好適な形態でも提供可能である。幾つかの実施形態では、香りが、好適な担体上又はその中に組み込まれた、香油などの香料を含む揮発性組成物により提供される。担体は、次の非限定的な形態:固体、液体、ペースト、ジェル、ビーズ、カプセル封入、ウィック、香料を含浸又は含有する多孔質材料などの担体物質、及びこれらの組合せで提供可能である。幾つかの実施形態では、担体は、溶融可能であって、室温(73°F(25℃)、50%RH)において柔軟性固体構造又はマトリックスの形態である組成物を形成するために添加された香料成分を有する、柔軟性固体の形態である。
【0035】
ある種の実施形態では、揮発性組成物は、AR2000(米国デラウェア州ニューキャッスル(New Castle)のTAインスツルメンツ((TA instruments))のような回転レオメーターにおいて25℃にて40mm直径のコーン/プレート構造を使用する100Paのせん断応力で測定して、約1,000cP(約1Pa・s)〜約1,000,000cP(約1,000Pa・s)又はそれ以上の粘度を有する。そのような組成物は、少なくとも約13,000cP(約13Pa・s)までのジェルとして流出することができる。ある種の実施形態では、組成物が柔軟性固体の形態であるとき、約100,000〜約1,000,000cP(約100〜約1,000Pa・s)の粘度を有することができる。
【0036】
1つの非限定的な実施形態では、組成物は、室温において、構造化されたポリマー性柔軟性固体の構造形態である。そのような構造は、多孔質であっても、なくてもよい。そのような構造は、均質であっても(本明細書において「連続」と呼ぶこともある)、均質でなくてもよい。多数の実施形態において、構造は、含有される揮発性物質に対して透過性であることが望ましい。これにより、構造は、含有される揮発性物質を所望のときに放出することができる。そのような実施形態の好ましいバージョンでは、組成物は、非多孔質の均質で透過性の構造化されたポリマー性柔軟性固体を含む。
【0037】
揮発性組成物は、多数の異なる方法で形成可能である。一実施形態では、組成物は、揮発性成分をポリエチレングリコール(すなわち「PEG」)などの担体に添加することにより作成可能である。香料などの揮発性成分は、好ましくは担体と混和性であり、冷却後、室温において柔軟性固体様のものを形成する。PEGは、様々な分子量で入手可能である。低い分子量(すなわち「MW」)を有するPEG(例えば、分子量が400未満)は、香料に対する溶媒として使用可能であるが、そのようなPEGは、室温において液体であり、本明細書で説明する組成物中で使用するのは好ましくない。組成物のより好ましい実施形態では、PEGのMWは、約1,000以上、又は約4,000以上である。PEGのMWは、約8,000以上であることが望ましい。PEGの分子量は、24,000にも、又はそれよりも高くてもよい。本明細書で指定する全ての分子量は、重量平均分子量である。
【0038】
その他の好適な担体は、硬化ヒマシ油及び長鎖脂肪酸類、特に14炭素原子以上の鎖長を有するものである。ある種の実施形態では、組成物の大部分が、そのような担体と揮発性成分を含むことが望ましい。したがって、そのような担体と揮発性成分は、組成物の約20重量%超過、あるいは約50重量%超過を含むことができる。ある種の実施形態では、組成物(及び/又は担体)は、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)が実質的にないことも望ましい。
【0039】
担体と共に構造成分を使用することが望ましい。構造成分は、いずれかの好適な目的のために使用可能である。そのような目的の例には、組成物により形成された構造に更なる安定性をもたらすことが含まれるが、これに限定されない。構造成分は、低温(例えば、周囲又は貯蔵又は輸送温度)で揮発性物質を放出するという構造の傾向を低減させることができる。したがって、揮発性物質は、揮発性物質を放出するためのエネルギーが構造に付加されるまで、放出されないことになる。いかなる好適な構造成分も使用可能である。好適な構造成分は、二価陽イオンを含むいずれかの物質を含むことが出きる。二価陽イオンを含む物質として、マグネシウム及びカルシウムの塩化物、並びにマグネシウム及びカルシウムの炭酸化物のような、マグネシウム及びカルシウムを含む分子が挙げられるが、これらに限定されない。その他の好適な構造成分として、硬化ヒマシ油が挙げられるがこれに限定されない、ヒマシ油の誘導体が含まれるが、これに限定されない。
【0040】
組成物が少なくとも1つのワックスを含むことも望ましい。ワックスは、いずれかの好適な目的のために使用可能であり、これには、組成物により形成された構造の融点を上昇させて安定性向上を求めることが含まれるが、これに限定されない。いかなる好適なワックスも使用可能である。ある種の実施形態では、ワックスは、担体の融点より高い融点を有することが望ましい。担体がPEGである場合、ワックスの融点は、例えば、約50℃超過とすることができる。好適なワックスには、担体の誘導体であるワックス、例えばPEGの誘導体が含まれるが、これに限定されない。担体の誘導体であるワックスが好ましいのは、担体を構造化可能な構造成分が、ワックスも構造化することができ、マトリックス全体の融点を更に上昇させるからである。ワックスはまた、揮発性物質に対する親和性を有さず、その結果、揮発性物質の放出速度又は排出に影響を及ぼさないことが望ましい。
【0041】
一実施形態では、組成物は、ポリエチレングリコール(すなわち「PEG」)と、硬化ヒマシ油と、少量の少なくとも1つのワックスと、少なくとも1つの揮発性成分との組合せにより形成される。揮発性成分は、多数の構成成分又は組成物を含むことができ、芳香剤(又は香油)、香味料、殺虫剤、防虫剤、又はこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。揮発性成分は、担体物質といずれかの好適な方法で組合せ可能である。揮発性成分が担体物質と組合せ可能である幾つかの好適な方法として、エントラップメントによる;揮発性成分が担体物質中に溶解可能;揮発性成分が担体物質中に部分的又は完全にカプセル化可能が含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
組成物の構成要素は、いかなる好適な量でも組成物に組込み可能である。幾つかの実施形態では、揮発性物質の濃度は、組成物の約10%超過であることが望ましい。幾つかの実施形態では、香料成分などの揮発性物質の濃度は、組成物の約75%にも又はそれ以上にも高くすることができる。他の実施形態では、揮発性物質の量は、組成物の約25%〜約75%の範囲とすることができる。担体(ポリエチレングリコールなど)は、組成物の残部を含むことができる。幾つかの実施形態では、担体は、約25%〜約75%又はそれ以上の範囲とすることができる。代替実施形態では、担体は、この範囲より少ない量で存在してもよい。構造成分(硬化ヒマシ油など)の量は、約0〜約15%、20%、30%、40%又はそれ以上の範囲とすることができる。ワックスの量は、約0〜約3%、5%又はそれ以上の範囲とすることができる。本明細書に記述した全てのパーセントは、異なって記述しない限り、組成物の重量による。構成成分の量は、その合計が100%であるように通常は選択される。しかしながら、組成物に添加される他の構成成分は、担体、揮発性物質、構造成分、及びワックスなどの構成成分の合計重量が組成物の100%未満である場合も可能である。
【0043】
その組成物は、いかなる好適な方法でも作成可能である。1つの非限定的な実施形態では、組成物は、担体物質(PEGなど)を溶融するまで加熱して、溶融した担体物質に、又は担体と他の成分(構造成分及び/又はワックス)の溶融混合物に、揮発性物質を添加することにより形成される。担体がPEGである場合、通常は約100℃〜約120℃で溶融する。揮発性物質の添加により、PEGは、より低温に冷却し、室温まで冷却したときに、柔軟性固体を形成する。
【0044】
組成物を含む構造体(又はマトリックス)は、熱的に加勢され、又は他の方法でエネルギーが加えられて、揮発性物質を放出することができる。そのような構造は、構造が加熱される温度にもよるが、様々な異なる状態間の推移を経ることができる。例えば、幾つかの実施形態では、組成物は、次の相:固体、ペースト、ゲル、半溶融、及び液体、又は他の状態のいずれかで出ることができる。組成物の各相は、異なる揮発特性をもたらすことができる。香り物質の場合、異なる揮発速度、強度、香り個性、放出プロファイルなどが含まれ得る。幾つかの実施形態では、組成物の状態変化は、より固体状態に戻る又は進む変化が可能であるという点で、可逆性である。幾つかの実施形態では、組成物の形態又は状態は、組成物の構成成分の比率を調節することにより、固体状からゲル状に変化可能なことがある。例えば、組成物は、硬化ヒマシ油などの追加構造成分の添加で、固体状からゲル状の方へ進む。構造の可逆的な液化/ゲル化/固化を用いて、揮発性物質の放出を調節/制御することができる。芳香組成物の場合、多くの組成物において、低温では、より揮発性の高い香料構成成分(「トップノート」)が、最初に蒸発する。本明細書で説明する組成物のある種の実施形態の場合、組成物がその融点より上に(液体になるまで)加熱されると、揮発性の高い香料構成成分(「トップノート」)から揮発性のより低いもの(「ボトムノート」)まで物質の構成成分の全てが所望の温度及び時間に同一強度で放出されるので、揮発性組成物の認識は、揮発性物質の特性や香りや風味などの所望の本質により近くなる。したがって、ある種の実施形態では、揮発性物質組成物の異なる構成成分に最低限の仕切りしかなく、それでも、特性/濃度の一貫性が長時間続く。本明細書で説明される実施例の場合、マトリックスの融点は、約52℃である。エネルギーがもはや付加されないとき、構造は、ワックス状の固体状態又は柔軟性固体に戻り、これにより、揮発性物質が逃げる傾向が減少する。組成物が担体の融点より高い融点まで常に加熱される場合には、これにより、組成物から揮発性成分を放出するために十分なエネルギーが組成物に対して常に提供されることになる。
【0045】
幾つかの実施形態では、組成物は、20ダイン/cm超過及び25ダイン/cm未満の表面張力を有する。幾つかの実施形態では、組成物は、高い揮発性物質濃度においてさえも、高温(例えば、約120°F、すなわち50℃まで)及び/又は高湿度(例えば、約80%RHまで;又はそれ以上)において、良好な安定性を有する。すなわち、組成物は、そのような条件下で、形状又は物理状態を変化しない。ある種の実施形態では、組成物は、湿分などの水分を吸収するときでさえも、その物理状態を変化(例えば、より液体化)しない構造を提供する。
【0046】
幾つかの実施形態では、組成物はまた、比較的大量(例えば、組成物の約25重量%〜約75重量%)の揮発性物質を含有できるという点で有利なことがある。組成物はまた、異なる揮発性物質の大きな数、範囲、スペクトル(又はポートフォリオ)を組込み可能である。このことは、構造成分(例えば、硬化ヒマシ油)の量を修正することによって、揮発性物質の極性に調和するように担体の極性を変更/調節するという能力のために可能になる。例えば、本明細書で説明する組成物の場合、揮発性物質の極性は、約2〜約5デバイの範囲であり得るが、それでも、組成物は、広い範囲の貯蔵条件下で依然安定にすることができる。このことにより、組成物への組込みに通常は融和性のない香料の組合せが可能になる(例えば、非常に極性であるバニラ、コーヒー、シナモンが、極性スペクトルで反対端にある果物(例えば、レモン)又は他のタイプの香料成分と組合せ可能である)。それに加えて、揮発性物質を組み込んだ組成物の構造は、可逆性にすることができる(すなわち、より固体状態(例えば、柔軟性固体)からより液体状態へ、次により固体状態に戻る変換が可能である)。このことにより、取扱い、貯蔵、及び加工性に効果のある組成物が、提供可能になる。
【実施例】
【0047】
表1は、本明細書の説明によって作成可能な香り組成物の幾つかの非限定的な例を示す。
【0048】
【表1】

【0049】
揮発性組成物は、いかなる好適な香料をも含むことができる。香料の強度は評価可能であり、強すぎることが判った場合は、香料は、希釈可能である。必要であれば、香料は、ジプロピレングリコール、トリエチルシトレート、又は他の適切な溶媒などの溶媒で変化するレベルに希釈可能である。香料が希釈可能な範囲の1つの非限定的な例は、0(すなわち、元の希釈前の香料濃度)〜50重量%の間に香料が希釈可能というものである。
【0050】
揮発性組成物内蔵製品は、好ましくは、類似強度範囲に入る強度の様々な香料を提供する。言い換えれば、本発明の任意であるが好ましい一態様では、揮発性組成物は、製品内の各組成物に対して等しい強度の香り経験となるように、「正規化」される。揮発性組成物を正規化する方法は、本出願が優先権を請求する特許出願中で更に詳細に説明されている。
【0051】
揮発性組成物が香り組成物を含むとき、カートリッジ22内の香りは、全体的なテーマ又は生理的効果を有してもよい。本明細書で使用するとき、用語「テーマ」は、一般に、フィルム、音楽、劇場、美術などの他のメディアと同時に放出されるように設計されてそのような他のメディアに係る香り物質よりも、製品の中又は上に含まれる他の香り物質の1つ以上にもっぱら関連する香り物質について言う。更に、本発明のある種の態様は、香りが何か他のメディアで生じている事象と同時に放出されるときも新規であると考えられる。したがって、本発明は、本発明のこれらの態様が関係する場合に、他のメディアと同時に放出される香りの使用を除外するものではない。更に他の実施形態では、カートリッジ内に含まれる幾つかの香り組成物は、たとえカートリッジが全体的テーマを有さなくても、一般的なタイプの香り(例えば花など)を含むというように、相互に関連付けられる。任意数の香りが、そのような方法で関連付けられてもよい。
【0052】
カートリッジ22又は上面26などのそのいずれかの部分は、様々な目的のための1つ以上の図、色、アイコン、及び/又は文字をその上に有することができる。カートリッジ22は、森又は花のテーマなどの、カートリッジ内の香りの「テーマ」を表す図を有してもよい。カートリッジ22はまた、その中に含まれる香りと香りがその上に見出される「トラック」のリストを有してもよい。
【0053】
III.器具
香りを放出する器具(又は装置、拡散器、又は単に「器具」)20は、いかなる好適な構成にもすることができる。器具20の一実施形態が、図1及び図2に示される。図示する実施形態では、上方から見るときの器具20の形状は、カートリッジ22のものに類似する。器具20は、上面106、底面108、前部分110、背又は後ろ部分112、及び側部114を有する。しかしながら、器具20の後ろ部分は、カートリッジ22の後ろ上の突出部35より更に延びる。器具の頂部は、蓋100と、その上の空気排出口102とを有する。蓋100は、器具のユーザーが内側のカートリッジ22及びその上のいかなる情報をも見ることができるように、透明とすることができる。
【0054】
器具20は、個人のパーソナルユースのために香り物質などの揮発性物質を放出するように構成可能であり(例えば、器具は、ユーザーの鼻の近くに置かれた管などを介して香りを放出するだけ)、又は部屋もしくは車両など特定の空間全体に揮発性物質を分配するように構成可能である。好ましくは、器具20は、揮発性物質を空間全体に分配するように構成される。
【0055】
器具の多数の他の実施形態が可能である。本発明は、図示される構成を有する器具に限定されるものではなく、他の実施形態においては、器具の構成は、図示されるものから大幅に異なり得ることを理解すべきである。
【0056】
器具20は、揮発性物質をその「休止」状態から活性状態に活性化させるための構成要素を含むことができる。そのような構成要素は、揮発性物質を蒸発させる又は加熱する構成要素を含んでもよいが、これらに限定されない。分配器具20はまた、揮発性物質を環境又は雰囲気内に拡散又は移送するためのファンなどの構成要素を含んでもよい。
【0057】
図2は、図1に示される器具20の構造を示す。図2に示される器具20の実施形態は、幾つかの主要要素を備えるハウジング116を含んでおり、それには、基部118と、ハウジング本体120と、外蓋100及び内蓋101とを含み、カートリッジ22を受け入れるために調和して持ち上げ可能な二部分からなる頂部カバーシステム(又は「カバー」)と、空気排出口102と、回転皿122と、少なくとも1つのモータ(図2に示される実施形態は2つのモータ124及び126を含む)とが含まれる。器具20はまた、揮発性物質の拡散を加速するための加熱器104などの活性化構成要素と、回転可能なトレー46内の暴露された揮発性物質のポケット44の上に空気排出口を通して強制空気を流すためのファン156などの拡散構成要素とを含む。器具20は、加熱エレメント142を1つ以上の揮発性組成物内蔵容器44と整列させるための機構を含んでもよい。1つの非限定的な実施形態では、その機構は、容器44の少なくとも1つを加熱エレメント142と整列させるために、製品内の容器44を回転させる。他の実施形態では、容器44の下に2つ以上の加熱エレメントがあってもよい。更に他の実施形態では、容器44は静止のままであって、器具20が、加熱エレメント142を回転又は他の方法で移動させて容器44に整列させるための機構を含んでもよい。
【0058】
内蓋101は、上側101Aと、下側101Bと、空気流路103と、空気排出口102の下部分を画定する前部分105とを有する。二部分からなるカバーシステムの外蓋100は、主として外観上のためにある。器具20は、単一構成要素の蓋で同様にうまく機能する。
【0059】
皿122は更に、カートリッジ22内側の回転可能なトレー46に係合してこれを回転させるためのスピンドル又はハブ60を備える。加えて、皿122には、皿122が(トレー46上のブランク空間51をカートリッジの開放領域52の下にして)そのホームポジションにあるとき、蓋100が開放されてカートリッジ22が排出されることを可能にするスロット128がある。皿122がホームポジションではないときは、排出機構が、皿122を妨げて、蓋100を閉止位置にロックする。このスロット128が存在するとき(ホームポジション)だけ、排出機構が移動して、蓋100を開放することができる。これにより、揮発性組成物内蔵ポケット44が暴露されている場合には、カートリッジ22が取り出し不能であることが確実になる。これはまた、加熱エレメントが活性状態にある間に、ユーザーがこれに直接接触することを防止する。
【0060】
カートリッジ22が器具20の内側に置かれて、カバー100が閉止されるとき、内蓋101の下側101Bとカートリッジ22の上面26が協働して、それらの間に空気流路103を形成する。すなわち、内蓋101の下側101Bが空気流路103の上側部分を形成し、カートリッジ22の上面26が空気流路の下側部分を形成する。
【0061】
この特定の実施形態では、空気流路103は、器具20の前部分に向かってラッパ状である。このことにより、空気流路103の前部が、揮発性物質の拡散を助けるノズル構造を備えることができる。空気流路の前部は、長手方向中心線L1の各側において、長手方向中心線L1に対して0度超過〜90度又はそれ以上の角度のいずれか好適な大きさで、ラッパ状にすることができる。図示する実施形態では、空気流路の前部は、その長手方向中心線L1の各側で約45度の角度で外向きにラッパ状である。それに加えて、空気排出口102の下側部分は、水平向きから上向きに角度が付くような傾斜になっていてもよい。これの使用によっても、揮発性物質の拡散を助けることができる。空気排出口102の下側部分は、0度超過〜30度又はそれ以上のいずれか好適な上向き角度を形成することができる。この特定の実施形態では、内蓋101の前部分105により、空気排出口102の前部の下側部分が、約15度の角度を形成するスロープを備える。
【0062】
この特定の実施形態では、カバーが持ち上げられたとき、カートリッジ22用の窪み領域130が見える。図示する実施形態では、窪み領域130は、ハウジング116の上部分に形成されている。窪み領域130は、いかなる好適な形状にもすることができる。図示するもののような幾つかの実施形態では、窪み領域130は、カートリッジ22の形状の少なくとも一部に一致することが望ましく、その結果、カートリッジ22の内側のトレー46が器具20により回転されるとき、カートリッジが回転又は他の方法で移動することが防止される。1つの非限定的な実施形態では、窪み領域46は、カートリッジ22の外部と実質的に同一形状を有することができる。
【0063】
器具20は、様々な安全機構を備えてもよい。図示する実施形態では、器具20は、器具20が始動可能となる前に、ユーザーがカートリッジ22を挿入して蓋を閉止することを必要とする、安全インターロック機構を備える。この実施形態では、ばね搭載スイッチなどのスイッチ132が、窪み領域130内側の窪み領域右側上のハブ用開口部及びハブ60の右に配置される。スイッチ132は、プリント基盤(「PCB」)134上の電力供給源とインラインである。安全インターロックは、器具20がカートリッジ22の重量だけでは活性化されないことを確実にするために、追加ばね136を窪み領域130内でハブの左側に組み込んでいる。このようにして、器具20が実行モードである場合でも、追加ばね136が開放されると直ちに、スイッチ132が、器具20を停止する。追加ばね136は、カートリッジ22を始動又は活性化するためには、カートリッジ22の重量より大きな力が必要とされるように構成される。蓋100が閉じられてカートリッジ22の頂部を押し下げるとき、追加ばね136は、単に押し下げられて、始動させる。インターロックスイッチ132のばね特性はまた、追加ばね136と相俟って、カートリッジ22を器具20から取り出すことを助ける排出機構として作用してもよい。
【0064】
図示する実施形態では、皿122は、2つの弧状位置決めリング138を備える。内側の位置決めリングは、トレー46内のポケット44の位置に対応する位置を表す5つのノッチ140を有する。外側リングは、トレー46内のブランク空間51(「ホームポジション」)の位置に対応する単一のノッチ140を有する。皿122は、位置決めシステムとして使用され、これが、適切なポケット44を加熱器104の上及び強制空気流の中へ移動させ、一方、その他のポケット44を封止位置に残す。このことは、皿122上の位置決めリング138内のノッチ140と共に、2つの紙センサー(U字形状に形作られて、それ自体を「見る」ことができるかどうかを読み取る、送信及び受信ユニット)を、プリント回路基盤134上に組み込むことにより達成される。そのセンサーは、ノッチ140の存在を検知するために、赤外線又は類似手段を使用する。センサーが内側位置決めリング内のノッチ140を見ると、皿122ひいてはカートリッジトレー46は、5つの「実行」位置の1つにある。外側位置決めリング内のノッチ140を見ると、皿122は、ホームポジションにある。位置決めシステムは、本出願と同日付でホルムス(Holmes)グループにより出願された「揮発性物質を環境中へ分散させる装置(Apparatus for Dispersing Volatile Materials Into the Environment)」という名称の特許出願中にて、更に詳細に説明されている。
【0065】
加熱器104は、揮発性組成物を所望の温度まで加熱可能である、いかなる好適な加熱器にもすることができる。加熱器104は、好ましくは、加熱器の熱くなる部品である加熱エレメント142を備える。図示する実施形態では、加熱エレメント142は、カバー146を含み、これは、アルミニウム又はステンレス鋼を含むいかなる好適な材料にても作成可能である。加熱器104は、いかなる好適な温度においても、及びいかなる好適な持続時間でも作動可能である。他の実施形態では、加熱器104は、全く省略可能であり、この場合、香りは、ファン156により、又は揮発性物質の揮発を助けることができるいずれか他の構成要素、すなわち赤外線エネルギー又はマイクロ波などにより、その「休止」又は非加熱状態から拡散される。
【0066】
加熱器が存在する場合、加熱エレメント142は、好ましくは、放出のために暴露された揮発性組成物内蔵ポケット44Aに近接する。加熱エレメント142は、ポケット44Aに接触する必要はない。しかしながら、必要ならば、加熱エレメント142は、ポケット44Aに近接してもよいばかりでなく、放出のために暴露されたポケット44Aに接触して、加熱エレメント142からポケット44A内の揮発性組成物への熱伝達を増加させてもよい。図2Aに示す実施形態では、加熱エレメント142は、「浮き」設計であるように構成されており、これにより、加熱エレメント142は、加熱されているポケット44Aの下側に一定接触を続けることができる。このことにより、熱は、対流とは対照的な伝導により揮発性組成物へ伝達可能になる。加熱エレメント142は、ばね144上に配置され、これにより、加熱エレメント142が上下に移動可能になる。ばね144との連結はまた、加熱エレメント142が側から側へ旋回又は傾斜可能であるように構成されてもよい。図示する実施形態では、加熱エレメント142の中心は、縦軸Aに整列したままであるが、他の実施形態では、これは変化可能である。
【0067】
この実施形態では、カートリッジ22内側のトレー46は、ハブ60により回される(回転される)。ハブ60の頂部の溝68が、トレー46の下側50のリブ64及び66に係合する。皿122は、一連の歯車を通してモータ124に連結されており、歯車には、モータシャフトに直接取り付けられたウォームギア148と、次に皿122を駆動する一組の歯車150とが含まれる。モータ124は、ウォームギア148を回転させ、ウォームギア148は、一組の歯車150を回転させる。一組の歯車150が、皿122を回転させると、これが、カートリッジ22内のトレー46を回転させる。
【0068】
カートリッジ22が器具20の外側にあるとき、カートリッジ22は、回転可能なトレー46のブランク部分51をカートリッジ22上側部分の開口部52下の位置にして、ロック位置にある。回転可能なトレー46は、ロックピン86などのロック機構によりホームポジションにロックされる。このロックピン86は、カートリッジシェルの下側部分38の一部である。ロックピン86は、回転可能なトレー46の周辺部72上のスロット70に嵌り込む。カートリッジ22が器具20に設置されたとき、ロックピン86は、器具のハウジングの窪み領域130内側の突出部152に接触する。この接触により、ロックピン86が外へ押し出されて、回転可能なトレー46は、ハブ60により駆動されるとき、回転可能になる。カートリッジ22の実行が完了して、器具20から取り出されると、ロックピン86が、トレー46の回転を妨げる。
【0069】
図示する実施形態では、器具20は、ファン156を回転させるための別個のモータ126を有してもよい。モータを、制御回路を有するプリント回路基盤に結線し、プリント回路基盤を、制御ボタンに接続する。器具20は、構造物又は車両の電気出力端(例えば、自動車のシガレットライター)などへ挿入のための電気プラグを備えることができる。別の方法として、器具20は、電池から電力供給可能である。
【0070】
器具20は、ユーザーのためにいかなる好適な制御をも有することができる。幾つかの実施形態では、器具20は、揮発性組成物の休止状態から活性状態への活性化と、揮発性組成物の周囲への拡散との両方を制御する、単一の制御器を有することができる。例えば、単一の制御器は、加熱器104及びファン156両方の作動を制御することができる。器具20が香りのある揮発性組成物を放出するように設計されているとき、器具20は、器具の始動及び停止と、香りの「量」又は強度の選定と、カートリッジ内の1つ以上の揮発性組成物のスキップとを行う、制御器を備えることができる。これらは、始動及び停止ボタン(別個であってもよいが、好ましくは単一の始動(又は実行)/停止ボタン)160と、排出ボタン又はラッチ162と、香り強度制御164と、順序内で次の香りまで前に跳ぶ「スキップ」ボタン168とを含むことができる。前文で説明された制御は、器具20用に可能な制御の一実施形態に過ぎないことが理解されるであろう。器具20は、これらの制御の全てを有する必要はなく、その他又は異なる制御を有してもよい。消費者が「スキップ」制御を利用しない場合、又は器具20がそのような制御を備えていない場合、揮発性物質は、予め定められた順序で放出可能である。そのような順序は、トレー46の周りに配置された順序で揮発性物質を連続的に放出することを含み得るが、これに限定されない。
【0071】
器具20はまた、ユーザーが制御設定を決定可能であるように、1つ以上の表示器を有してもよい。表示器の幾つかの非限定的な例には、香り強度表示器、香り「トラック」番号表示器、及び香り持続時間表示器が含まれる。表示器は、いかなる既知の形態であってもよい。図示する実施形態では、表示器は、発光ダイオード(LED)表示器の形態である。図1に図示する実施形態では、実行ボタン160は、器具20が始動したときを表示する光166と、強度設定が弱か中か又は強のどれかを表すための3つの光170とを有する。それに加えて、図1の器具は、香りカートリッジ22の回転可能なトレー46の上に示されるトラック番号をユーザーが見ることができる、窓を蓋100の中に備える。
【0072】
器具20の構成要素は、いかなる好適な材料からも作成可能であり、いかなる好適な配置も可能である。好適な材料には、金属(例えばアルミニウム)、ガラス、又はプラスチックが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、空気流路103などの器具上のダクトがPETで作成されるのは、匂いの吸収と加熱されたときの変形の傾向が最小限だからである。加えて、排出口と加熱エレメント142と放出される香り用の香り容器44Aは、排出口102の「風下」にある器具の部分を香りが汚染するいずれかの傾向を最小限にするために、好ましくは、器具の比較的外部近くに配置される。
【0073】
器具20は、様々な内部制御及び他の機構を備えてもよい。図示する実施形態では、器具20は、例えば、閉ループ温度制御(又はフィードバック)システムを備える。閉ループ制御システムは、器具20が作動されているときに、加熱エレメント142の温度を連続的に測定して調節することができる。このことは、様々な異なる方法で達成可能である。例えば、そのシステムは、温度測定器及び温度調節器を含むことができる。温度測定器は、熱電対、サーミスタ、又は抵抗温度検知器(RTD)を含むことができるが、これらに限定されるものではなく、温度調節器は、制御回路を含むことができるが、これに限定されない。図示する実施形態では、サーミスタ(又は熱電対)を、加熱エレメント142との直接接触に維持する。サーミスタは、加熱エレメント142の温度を絶えず測定して電圧(又は平均電力)を調節し、その結果、所望の加熱エレメント142の温度が維持される。更に具体的には、サーミスタは、温度が変化するにつれて抵抗が変化する調節型抵抗器である。プリント回路基盤は、ソフトウェアプログラムを搭載したマイクロコントローラと協力して、この変化を測定して加熱エレメント142への電力を調節しており、それ故に、目標温度が達成される。このことにより、加熱エレメント142の温度が調節可能になり、環境及び他の条件の変化を補償することができる。これによりまた、加熱器104が、1つの強度から別の強度に迅速に変化することが可能になる。他の制御実施形態を使用することもできる。例えば、温度は、ある温度に到達するのに必要とされる加熱器への供給電圧を予め定めるなどにより、制御することもできる。更に、このサーミスタは、加熱器が安全な温度以下になるまでは器具がホームポジションに回転しないので、器具の安全装置に組み込まれる。このことが、排出ロック及び電力インターロックと共に、ユーザーが活性状態の加熱エレメントに接触することから保護する。最後に、フューズが、加熱器組立体に組み込まれて、加熱器が安全作動温度を外れる状況を防止する。この場合、フューズがとんで、器具の電源が切れる。
【0074】
本発明のその他の新規態様は、器具が香り物質又は芳香物質の放出のためにプログラム可能であることの方法に関する。これを「放出プログラム」と呼ぶ。放出プログラムは、芳香物質がその間に放出される1つ以上の放出期間と、香り物質が放出される方法(単数又は複数)とを含む。
【0075】
一実施形態では、芳香物質の少なくとも1つが、約1分以上及び120分未満の放出期間にわたって放出される。他の実施形態では、放出期間は、前述の範囲内に入るいずれかの範囲の数分であってもよい。そのような他の範囲には、始めと終わりを含んで、約1分〜約90分の間の範囲、及び約1分〜約60分の間の範囲が含まれるが、これらに限定されない。更に他の、しかしあまり好ましくない実施形態では、芳香物質は、1分未満、又は120分以上の放出期間にわたって放出されてもよい。芳香物質は、放出期間中に、連続的又は断続的に放出可能である。好ましい実施形態における香り放出プログラムは、断続的であり、「習慣化」を最小限にするために、及び以下で更に詳細に説明する他の効果のために、それぞれの所与の香りに対してパルス化された香り放出順序を使用する。その制御は、ユーザーによる制御があってもなくても、香りの断続放出を実施可能できるように設定可能である。
【0076】
一実施形態では、人が居る部屋に香りを匂わせるために、
(a)第一の香り要素をある実行期間にわたってその部屋の中に分散させる工程であって、前記実行期間は、人が芳香に気付くのに十分に長いが、人がその芳香に対して鈍感になる可能性のある期間を超えないものである、第一の香り要素を分散させる工程と、
(b)前記第一の香り要素に関連する前記実行期間が完了した後、第二の香り要素を前記実行期間にわたってその部屋の中に分散させる工程であって、前記第二の香り要素が前記第一の香り要素と異なるものである、第二の香り要素を分散させる工程と、
(c)前記第二の香り要素に関連する前記実行期間が完了した後、第三の香り要素を前記実行期間にわたってその部屋の中に分散させる工程であって、前記第三の香り要素が前記第一及び第二の香り要素の両方と異なるものである、第三の香り要素を分散させる工程とを含む方法が提供される。
【0077】
この実施形態の1つのバージョンでは、実行期間は、約15分〜約60分、又は別の方法としては約20分〜約40分、又は別の方法としては約30分である。この実施形態のあるバージョンでは、(a)から(c)までの工程の分散は、(i)前記香り要素を活性化させるサブ工程と、(ii)前記活性化された香り要素を部屋の中に拡散させるサブ工程とを含む。そのようなバージョンでは、実行期間は、第一の小期間及び第二の小期間を含むことができて;前記香り要素を活性化させるサブ工程は、第一の小期間中だけで実施され;及び活性化された香り要素を部屋の中に拡散させるサブ工程は、第一及び第二の小期間の両方で実施される。1つの例では、実行期間は約15〜60分であって、前記第二の小期間が約5〜10分であり;又は別の方法としては、実行期間は約20〜40分であって、第二の小期間が約5〜10分であり;又は別の方法としては、実行期間は約30分であって、第二の小期間が約8分である。ある種の実施形態では、香り要素を活性化させるサブ工程は、香り要素を加熱することにより実施される。ある種の実施形態では、活性化された香り要素を部屋の中に拡散させるサブ工程は、活性化された香り要素の上に空気を吹かすことにより実施される。
【0078】
器具20とカートリッジ22などの製品は、承認されたタイプの製品だけが器具20に挿入可能であることを確実にするために、様々な機構を備えることができる。例えば、一実施形態では、器具20は、幅が4.2インチ(10.7cm)未満の製品だけを受け入れるように構成されてもよい。円形の平面図形状を有する物品の場合、そのような物品は、2.1インチ(5.3cm)未満の半径を有する必要がある。物品は、形状とは関係なく、少なくとも1つの突出領域35などの少なくとも幾つかの領域を有してもよく、これにより、器具20内の回転に対して更に物品を安定させることができる。これらの安定化領域は、横断方向中心線Tに対して垂直の方向に測定して、横断方向中心線Tから約0.9インチ(約2.3cm)〜約1.1インチ(約2.8cm)の間の距離において始まることができる。物品は、物品の長手方向中心線Lから約0.85インチ(約2.2cm)以上の距離では、厚さが約0.5インチ(約1.3cm)以上であってはならない。器具20の内蓋により画定される空気流路103のために、物品は、長手方向中心線Lに沿う領域内ではより大きな厚さを有してもよい。厚さがより大きいこの領域は、長手方向中心線Lの周りに中心を置いて、幅が約1.4インチ(約3.6cm)〜約1.7インチ(約4.3cm)の間の領域とすることができる。一実施形態では、厚さがより大きい領域は、約1インチ(約2.5cm)まで又はそれ以上の厚さとすることができる。
【0079】
物品は、その底に、最小直径約1/2インチ(約1.3cm)の中心穴を有する必要がある。物品は、加熱エレメント142用の開口部を底に有して、この底開口部の幅のある部分において、少なくとも約1インチ(約2.54cm)、好ましくは少なくとも約1.25インチ(約3.2cm)の幅である必要がある。物品はまた、ロックピンをロック解除する突出部152のための第三の開口部をその底に有する必要がある。この第三の開口部の少なくとも一部は、物品の底を見るとき、長手方向及び横断方向の中心線L及びTの交点から測定して、物品の横断方向中心線Tに対してある角度の領域内に置かれる。(長手方向及び横断方向の中心線L及びTは、好ましくは、トレー46の下側上の円形ボス62か、又は器具のハブ60内の溝68と係合するリブ64及び66などの要素の間の中ほどにあるいずれかの等価要素かを含む領域内で交差する。図5に示すように、この第三の開口部が横断方向中心線Tに対してなす角度αは、約45度〜約55度の間である。第三の開口部の少なくとも一部は、長手方向及び横断方向の中心線L及びTの交点から約1.8インチ(約4.6cm)〜約2インチ(約5cm)の間隔がある。この第三の開口部の少なくとも一部は、少なくとも約0.05インチ(約0.13cm)〜約0.36インチ(約0.9cm)又はそれ以上の幅Wと、0.5インチ(約1.3cm)まで又はそれ以上の範囲にすることができる少なくとも等寸法の高さHとを有する。
【0080】
器具20はまた、その操作についての説明書を備えることができる。そのような説明書には、器具の作動を確実にし強化するための設置説明が含まれるが、これに限定されない。設置説明は、高さが低すぎも高すぎもしない場所(例えば、床上ではなく、床上方2〜4フィート(約1m+/−30cm)の間)に器具を置くこと;器具を(テーブル又はカウンタートップなどの)硬質表面の上に置くこと;器具が置かれた部屋又は他の領域の中心に排出口が面するように器具を置くこと;及び器具が置かれた空間内の自然空気流(例えば、2階建ての家屋では通常は、空気流は、2階へ行く階段に向かって動く)と同一方向に器具からの空気流がなるように器具を置くことをユーザーに教示する説明を含むことができるが、これらに限定されない。説明書はまた、器具が置かれた部屋や車両などの大きさに基づいて強度を設定するための説明を含んでもよい。説明書は、いずれかの好適な形態、例えば書物、音声、及び/又はビデオなどで提供可能である。
【0081】
器具がプログラムされてもよい並びにユーザーが器具にインプットしてもよい揮発性物質を放出する方法(「放出プログラム」)については、本出願が優先権を主張する出願中の幾つかで更に詳細に説明されている。器具はまた、必要であれば、非限定的な多数の他の任意機構を備えることができる。これらもまた、先行特許出願中の幾つかで説明されている。
【0082】
加えて、器具の多数の他の実施形態が可能である。例えば、使用中にカートリッジが器具のハウジングの外側に置かれる他の実施形態も、作成可能であると考えられている。
【0083】
これら及び他の実施形態においては、回転可能なディスクを有するカートリッジではなく、ディスクは静止して残ることもでき、器具は、揮発性組成物内蔵容器の下にある又は下で回転する1つ以上の加熱エレメント(又は複数の加熱器)を備えることができる。もちろん、本明細書で説明した実施形態のいずれにおいても、加熱器は、他の実施形態中の揮発性組成物内蔵容器の上に又はこれに隣接して配置することが可能である。その他の実施形態もまた可能である。
【0084】
意図される操作モードは、ユーザーがカートリッジ22を器具20の中に置き、扉を閉じて再生ボタン160を押すことである。カートリッジ22が器具の外側にあるとき、カートリッジ22は、回転可能なディスクの香り容器がないブランク部分51をカートリッジ22の上側部分の開口部52の下の位置にして、ロックされた位置にある。器具20は、カートリッジ22の内側でまず回転可能なトレー46をロック解除し、次にカートリッジ22の内部の回転可能トレー46を回転させて、香りジェルを含む最初のポケット44Aを暴露する。ポケット44Aの下の加熱エレメント142が、エネルギーを加えて、香料の放出を加速する。次に、ファン156が始動して、空気が空気流路103を通って揮発性組成物を含む暴露されたポケット44Aを通るように強制する。この空気が、次に部屋へ流入して、雰囲気全体に急速に香りを拡散させる。予め定められた間隔の後で、加熱を停止し、トレー46を回転して、次のポケット44を暴露する。次に、加熱器104が再始動して、次の揮発性物質を放出する。
【0085】
ユーザーが器具20を停止したいと望む場合は、実行/停止ボタン160を押すと、器具20がまずカートリッジ22内側のトレー46を回転させて閉止位置に戻り、その結果、どのポケット44も外部に暴露されない。これが完了した後では、カバーが開放可能となり、ユーザーはカートリッジを取り出してもよい。その後、香料がポケット内側にまだ残っている場合、カートリッジ22は、後に再使用されてもよい。
【0086】
本記述全体にわたって言及したすべての特許、特許出願(及びそれに基づいて発行された特許及び関連して発行された外国特許出願)、並びに公開公告の開示内容を本明細書に参考として組み込む。但し、本明細書に参考として組み込まれる文献のいずれもが本発明を教示又は開示していないことを明言する。
【0087】
本明細書全体を通じて与えられるあらゆる最大数値限界には、それよりも小さいあらゆる数値限界も、本明細書に明確に記載されたものとして含まれることを理解すべきである。本明細書全体にわたって記載されるあらゆる最小数値限定は、それより大きいあらゆる数値限定も、本明細書に明確に記載されたものとして包含する。本明細書全体にわたって記載されるあらゆる数値範囲は、そのようなより広い数値範囲内にあるあらゆるより狭い数値範囲も、すべて本明細書に明確に記載されたものとして包含する。
【0088】
本発明の特定の実施形態について記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本発明の様々な変更及び修正を実施できることが当業者には明らかである。更に、本発明をある特定の実施形態と関連して説明してきたが、これは説明を目的とするものであって、限定を目的とするものではなく、本発明の範囲は、添付の請求項によって定義され、これは従来技術が可能にするのと同様に幅広く考えられるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】カートリッジが挿入されて上カバーが閉止位置にある、器具の一実施形態の斜視図。
【図2】図1に示される器具の主要な構成要素の分解斜視図。
【図2A】器具の加熱エレメントとばねの取り合いの概略図であって、加熱エレメントがどのように動くことができるか想像線で示す。
【図3】カートリッジの一実施形態の斜視図。
【図4】図3に示されるカートリッジの上面図。
【図5】図3に示されるカートリッジの底面図。
【図6】図3に示されるカートリッジの側面図。
【図7】図3に示されるカートリッジの背面図。
【図8】図3に示されるカートリッジの構成要素を示す分解斜視図。
【図9】カートリッジの上側半分を構成するシェルの下側の平面図。
【図10】図3に示されるカートリッジの上面図であって、取外し可能な封止材料の一部がカートリッジの後ろから延びている。
【図11】カートリッジのトレーの構成要素を覆う取外し可能な封止材料を適用することの第一段階を示す概略上面図。
【図12】カートリッジのトレーの構成要素を覆う取外し可能な封止材料の一部を曲げ戻す第二段階を示す概略上面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が居る部屋に香りを匂わせるための方法であって、前記方法は、
(a)第一の香り要素をある実行期間にわたって前記部屋の中に分散させる工程であって、前記実行期間は、人が芳香に気付くのに十分に長いが、人が前記芳香に対して鈍感になる可能性のある期間を超えないものである、第一の香り要素を分散させる工程と、
(b)前記第一の香り要素に関連する前記実行期間が完了した後、第二の香り要素を前記実行期間にわたって前記部屋の中に分散させる工程であって、前記第二の香り要素が前記第一の香り要素と異なるものである、第二の香り要素を分散させる工程と、
(c)前記第二の香り要素に関連する前記実行期間が完了した後、第三の香り要素を前記実行期間にわたって前記部屋の中に分散させる工程であって、前記第三の香り要素が前記第一及び第二の香り要素の両方と異なるものである、第三の香り要素を分散させる工程とを含む、方法。
【請求項2】
前記実行期間は、約15〜60分である、請求項1に定義される部屋に香りを匂わせるための方法。
【請求項3】
前記実行期間は、約20〜40分である、請求項1に定義される部屋に香りを匂わせるための方法。
【請求項4】
前記実行期間は、約30分である、請求項1に定義される部屋に香りを匂わせるための方法。
【請求項5】
工程(a)から(c)までの前記分散は、、
(i)前記香り要素を活性化させるサブ工程と、
(ii)前記活性化された香り要素を前記部屋の中に拡散させるサブ工程とを含む、請求項1に定義される部屋に香りを匂わせるための方法。
【請求項6】
前記実行期間は第一の小期間及び第二の小期間を含み、
前記香り要素を活性化させる前記サブ工程は、前記第一の小期間中だけで実施され、
前記活性化された香り要素を前記部屋の中に拡散させる前記サブ工程は、前記第一及び第二の小期間の両方の期間内に実施される、請求項5に定義される部屋に香りを匂わせるための方法。
【請求項7】
前記実行期間は約15〜60分であり、前記第二の小期間は約5〜10分である、請求項6に定義される部屋に香りを匂わせるための方法。
【請求項8】
前記実行期間は約20〜40分であり、前記第二の小期間は約5〜10分である、請求項6に定義される部屋に香りを匂わせるための方法。
【請求項9】
前記実行期間は約30分であり、前記第二の小期間は約8分である、請求項6に定義される部屋に香りを匂わせるための方法。
【請求項10】
前記香り要素を活性化させる前記サブ工程は、前記香り要素を加熱することにより実施される、請求項5に定義される部屋に香りを匂わせるための方法。
【請求項11】
前記活性化された香り要素を前記部屋の中に拡散させる前記サブ工程は、前記活性化された香り要素の上に空気を吹き込むことにより実施される、請求項5に定義される部屋に香りを匂わせるための方法。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2006−525854(P2006−525854A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−514935(P2006−514935)
【出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/016163
【国際公開番号】WO2004/105813
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】