説明

揺動印刷ロール

【課題】軸芯方向への揺動速度を自由に変えることが出来る可変速式の揺動印刷ロールを得る。
【解決手段】内部空洞11を有する円筒形ロール本体12を、ベアリング14を介して支軸13に回転可能かつ支軸13の軸芯方向X−Xに摺動可能に軸承して成る揺動印刷ロール15において、支軸13の軸芯X−Xを中心に回転する立体カム16とカムフォロア17との何れか一方を支軸13に軸承され、その他方をロール本体12の内部空洞11の内周面に取り付け、支軸13に軸承された立体カム16とカムフォロア17との何れか一方を、支軸13の軸芯X−Xを中心に回転可能に軸承する。その支軸13に軸承された立体カム16とカムフォロア17との何れか一方を支軸13の軸芯X−Xを中心に回転駆動するモータ18を支軸13に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機のインキ供給源から版面にインキを転送する転送ロールや加湿水分供給源から版面に加湿水分を転送する転送ロール等の周面にコロガリ接触して回転しつつ、ロールの軸芯方向に揺動して転送ロール表面のインキ塗膜や加湿水分塗膜を均一にし、インキ塗膜や加湿水分塗膜の膜厚のバラツキに起因するゴーストその他の印刷不良を回避するために使用される揺動印刷ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
揺動印刷ロールは、ベアリングを介して円筒形ロール本体を支軸に回転可能かつ軸芯方向に摺動可能に軸承して構成されている。その揺動印刷ロールを軸芯方向に揺動するため、その揺動印刷ロールがコロガリ接触する転送ロールを軸芯方向に揺動すること(例えば、特許文献1参照)、揺動印刷ロールの空洞内部にソレノイドや電磁石を配置すること(例えば、特許文献2参照)、揺動印刷ロールの空洞内部にエアーシリンダーやオイルシリンダーを配置すること(例えば、特許文献3・4参照)は公知である。
【0003】
揺動印刷ロールの軸芯を中心に回転する立体カムを支軸に軸承させ、カムフォロアをロール本体の内部空洞の内周面に取り付けると共に、支軸とロール本体の間に歯車列を配置してロール本体の回転を立体カムに伝え、その立体カムを回転してカムフォロアと共にロール本体の軸芯方向へ駆動し、揺動印刷ロールの揺動速度を変えることも公知である(例えば、特許文献5・6参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平08−090948号公報(特許第2720315号)
【特許文献2】特開昭62−032051号公報(特公平04−000832)
【特許文献3】特開平01−258952号公報(特許第2519504号)
【特許文献4】特開平03−230951号公報(特公平07−102696)
【特許文献5】特開平04−094941号公報(特許第2946234号)
【特許文献6】特開2000−37856号公報(特許第3013303号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
転送ロールを軸芯方向に揺動する方法(特許文献1)では、揺動印刷ロールの移動距離が転送ロールとの摩擦力に依存するので、特に、滑り易いインキやニス等を印刷する場合には、その移動距離を制禦することは困難である。ソレノイドや電磁石、エアーシリンダー、オイルシリンダー等によって揺動する方法(特許文献2・3・4)では、揺動印刷ロールの移動距離を大きくすることは出来ても、その揺動速度を揺動印刷ロールの回転速度に同調させることは困難である。歯車列によって揺動印刷ロールの揺動速度を変える方法(特許文献5・6)では、揺動印刷ロールの揺動速度と回転速度を同調させることは出来ても、それらの速度比を変えるには歯車列を変えなければならず、その軸芯方向への揺動速度を自由に変えることは出来ない。
【0006】
そこで本発明は、軸芯方向への揺動速度を自由に変えることが出来る可変速式の揺動印刷ロールを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る揺動印刷ロールは、(a) 内部空洞11を有する円筒形ロール本体12を、ベアリング14を介して支軸13に回転可能かつ支軸13の軸芯方向X−Xに摺動可能に軸承して成る揺動印刷ロール15において、(b) 支軸13の軸芯X−Xを中心に回転する立体カム16とカムフォロア17との何れか一方が、支軸13に軸承され、その他方がロール本体12の内部空洞11の内周面に取り付けられており、(c) 支軸13に軸承された立体カム16とカムフォロア17との何れか一方が、支軸13の軸芯X−Xを中心に回転可能に軸承されており、(d) その支軸13に軸承された立体カム16とカムフォロア17との何れか一方を支軸13の軸芯X−Xを中心に回転駆動するモータ18が、支軸13に設けられていることを第1の特徴とする。
【0008】
本発明に係る揺動印刷ロールの第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、支軸13に軸承されているロール本体12の回転を検知するセンサー19を具備する点にある。
【0009】
本発明に係る揺動印刷ロールの第3の特徴は、上記第1と第2の何れかの特徴に加えて、支軸13に設けられているモータ18を冷却する冷却手段を具備する点にある。
【0010】
本発明に係る揺動印刷ロールの第4の特徴は、上記第1と第2と第3の何れかの特徴に加えて、立体カム16が支軸13に回転可能に軸承されており、その立体カム16と協働するカムフォロア17がロール本体12の内部空洞11の内周面に取り付けられている点にある。
【発明の効果】
【0011】
本発明において、モータ18を停止させる場合には、揺動印刷ロール15が1回転すると、立体カム16のカム変位曲線における振幅距離分(H)だけ、揺動印刷ロール15が軸芯方向X−Xに1往復することになる。
そのモータ18を駆動する場合には、支軸13に回転可能に軸承されている立体カム16またはカムフォロア17がモータ18に駆動されて回転すると、モータ18の回転速度と揺動印刷ロール15の回転速度との位相差に応じて、揺動印刷ロール15の軸芯方向X−Xへの揺動速度が、モータ18が停止している場合に比して相対的に変化する。
そのモータ18の回転速度を揺動印刷ロール15の回転速度に同調させる場合、即ち、モータ18の回転速度と揺動印刷ロール15の回転速度との位相差をゼロにする場合には、揺動印刷ロール15の軸芯方向X−Xへの移動(揺動)が停止することになる。
【0012】
本発明によると、このように立体カム16とカムフォロア17を介して揺動印刷ロール15がモータ18に軸芯方向X−Xに駆動されるので、印刷に使用するインキやニス等の印刷液体の塗膜の粘度や摩擦・滑性に起因して発生が懸念されるゴーストや濃度斑を回避するために揺動印刷ロール15の軸芯方向X−Xへの揺動速度を自由に変え、印刷不良を回避することが出来る。
【0013】
本発明では、ロール本体12の回転を検知するセンサー19を設けたので、転送ロール等にコロガリ接触して回転する揺動印刷ロール15の回転速度がインキやニス等の印刷液体の粘度や摩擦・滑性に応じて変化しても、その変化に即応して揺動印刷ロール15の揺動速度を追従させることが出来る。
【0014】
本発明では、モータ18を冷却する冷却手段を設けたので、モータ18が畜熱して印刷精度が左右されることはない。
【0015】
立体カム16を支軸13に軸承させる場合には、カム溝20をカム母体の外周面に刻設することになるので、立体カム16が作成し易く、又、支軸13に装着し易いので、揺動印刷ロール15を効率的且つ経済的に得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の揺動印刷ロール15の適用される印刷機は、紙用印刷機、プラスチックフイルム用印刷機、布帛用印刷機、金属板用印刷機の何れでもよく、ニスや接着剤等のインキ以外の塗料を転送する転送ロールを備えた塗布装置であってもよい。本発明の揺動印刷ロール15は、ゴースト発生の虞れのないベタ塗り(無地)印刷においても有効であり、そのベタ塗り(無地)印刷においては、色彩濃度やインキの塗膜の厚み斑等による印刷不良が懸念されるが、同様に、ニスや接着剤等の塗料を転送する転送ロールを備えた塗布装置においても、ニスや接着剤等の塗膜の厚み斑等による塗着不良が懸念されるからである。
【0017】
揺動印刷ロールの回転を検知するセンサー19には、エンコーダーその他の回転検知機器を使用することが出来る。支軸13には、軸芯X−Xに沿って連通孔21を穿設し、モータ18に向けて吹出孔22を開け、連通孔21から吹出孔22を通ってモータ18へと冷却エアーを吹き出して冷却手段を構成するとよい。その場合、連通孔21は、モータやセンサーへの配線に利用することが出来る。モータ18には、サーボモータ、インバーターモータ、ステッピングモータ(パルスモータ)等が好適に使用される。
【0018】
支軸13には金属パイプを適用することが出来る。モータ18の冷却手段は、冷却水等の液体による循環式であってもよく、金属パイプを支軸13に用いる場合は、その液体循環パイプを支軸(パイプ)内に配管することが出来る。
【0019】
図1には立体カム16として円柱溝カム(円筒カム)を例示している。しかし、立体カム16は、図1に図示する円柱溝カムのカム溝20とは逆に凸状カム畝を突出した構造にすることも出来る。そのように凸状カム畝によってカム曲面が構成される立体カムに対応するカムフォロア(17)は、その凸状カム畝を左右から挟むように2個1対とする。
本発明において「立体カムとカムフォロアとの何れか一方が支軸に軸承」とは、図1に図示する立体カム16とカムフォロア17とは逆に、ロール本体12の内部空洞11の内周面に立体カムを形成し、その立体カムと協働するカムフォロアを支軸に軸承した反対カムとすることも出来ることを意味する。
【0020】
図1において、モータ18は、支軸13に固定された円筒28の内周面に設けたステータ23と、立体カム16と一体回転するロータ24とから成り、ロータ24を支持する円筒25は立体カム16に螺子止めされている。26は、立体カム16を回転可能に軸承するためのベアリングである。ロール本体12の外周面には、ゴム組成物その他のエラストマーによる表面層27が積層される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る揺動印刷ロールの要部断面図である。
【符号の説明】
【0022】
11:空洞
12:ロール本体
13:支軸
14:ベアリング
15:揺動印刷ロール
16:立体カム
17:カムフォロア
18:モータ
19:センサー
20:カム溝
21:連通孔
22:吹出孔
23:ステータ
24:ロータ
25:円筒
26:ベアリング
27:表面層
28:円筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 内部空洞(11)を有する円筒形ロール本体(12)を、ベアリング(14)を介して支軸(13)に回転可能かつ支軸(13)の軸芯方向(X−X)に摺動可能に軸承して成る揺動印刷ロール(15)において、
(b) 支軸(13)の軸芯(X−X)を中心に回転する立体カム(16)とカムフォロア(17)との何れか一方が、支軸(13)に軸承され、その他方がロール本体(12)の内部空洞(11)の内周面に取り付けられており、
(c) 支軸(13)に軸承された立体カム(16)とカムフォロア(17)との何れか一方が、支軸(13)の軸芯(X−X)を中心に回転可能に軸承されており、
(d) その支軸(13)に軸承された立体カム(16)とカムフォロア(17)との何れか一方を支軸(13)の軸芯(X−X)を中心に回転駆動するモータ(18)が、支軸(13)に設けられている揺動印刷ロール。
【請求項2】
支軸(13)に軸承されているロール本体(12)の回転を検知するセンサー(19)を具備する前掲請求項1に記載の揺動印刷ロール。
【請求項3】
支軸(13)に設けられているモータ(18)を冷却する冷却手段を具備する前掲請求項1と2の何れかに記載の揺動印刷ロール。
【請求項4】
立体カム(16)が支軸(13)に回転可能に軸承されており、その立体カム(16)と協働するカムフォロア(17)がロール本体(12)の内部空洞(11)の内周面に取り付けられている前掲請求項1と2と3の何れかに記載の揺動印刷ロール。

【図1】
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【公開番号】特開2009−61706(P2009−61706A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232376(P2007−232376)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000109495)テクノロール株式会社 (9)
【Fターム(参考)】