説明

揺動椅子

【課題】腰掛シートが任意の周方向に揺動し、精密な加工を行わなくても円滑な揺動運動が達成され、静音性に優れ、安価な揺動椅子を提供する。
【解決手段】揺動椅子1は、腰掛シート30と、腰掛シート30の支持体10と、腰掛シート30と支持体10とを連結する連結部材とを備え、連結部材が、腰掛シート30と支持体10の間の中間部材50と、支持体10に設けられた下向きに湾曲した2本の第1レール20と、腰掛シート30に設けられた下向きに湾曲し且つ第1レール20と垂直な方向に伸びた2本の第2レール40と、中間部材50に設けられた第1レール20に沿って走行可能な2個のローラ61を含む2列の第1ローラ列60と、第2レール40に沿って走行可能な2個のローラ71を含む2列の第2ローラ列70とを備えている。腰掛シート30が支持体10に対して任意の周方向に揺動し、ローラ61,71を使用しているので静音性に優れ、安価である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が腰を掛ける腰掛シートが揺動可能なように構成された揺動椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
長時間椅子に座り続けたときの腰部疲労の回復、腰痛の予防や緩和、或いはリハビリテーションにおける腰部の訓練等のために好適に使用される椅子として、使用者が腰を掛ける腰掛シートがその上方に位置する点、好ましくは身体の重心の近傍に位置する点、を中心として円弧上を揺動運動するように構成された揺動椅子が従来から知られている。
【0003】
このような椅子として、特許文献1(実開平2−51540号公報)には、腰掛シートと、該腰掛シートの下面に設けられた下方に向いた凸面を有する上部支持球面板と、上部支持球面板の下側に配置された上部支持球面板の凸面に対応する凹面を有する球面案内基板とを有する揺動運動椅子が記載されている。上部支持球面板が球面案内基板上を滑動することにより、上部支持球面板が腰掛シートの上方に位置する点を中心に揺動する。好ましい構成では、上部支持球面板の揺動を円滑にする目的で、球面案内基板の凹面上にボールキャスタが配置され、ボールキャスタ上で上部支持球面板が揺動する。
【0004】
また、特許文献2(特表平7−503392号公報)にも、シート部(腰掛シート)と、該シート部の下側に下方に向かって凸面状に形成された皿状のシートシェルと、該シートシェルを揺動可能に軸承する軸受をヘッド部に有する中間部材と、この中間部材に連結された脚部とを備えた同様の能動型動的シート装置(揺動椅子)が記載されている。軸受として、一つ又は多数のケージ内に回転可能に軸承された多数のボール、すなわち多数のボールキャスタが用いられ、ボールキャスタ上でシートシェルがシート部の上方に位置する点を中心に揺動する。
【0005】
これらの公報に記載されているような、腰掛シートの下面に設けられた腰掛シートより上方に位置する点を中心とした球面の一部分をなす凸面を有する突出体(特許文献1の椅子における上部支持球面板、特許文献2の椅子におけるシートシェル)と、この突出体の凸面に接触して突出体が上記球面に沿って揺動可能なように案内する案内部材(特許文献1の椅子における球面案内基板又はボールキャスタ、特許文献2の椅子におけるボールキャスタ)とを備えた揺動椅子によると、腰掛シートが使用者によって印加された力の方向と同じ方向に傾動し、腰掛シートの自由回転も可能である。
【0006】
従って、この種類の揺動椅子によると、使用者に椅子に座りながらにして腰振り動作と同様の動作をさせることができ、また使用者が姿勢を保とうとして腰掛シートを中立位置に復帰させる際に腰部筋肉を使用するため、効率良く腰部疲労の回復、腰痛の予防や緩和、或いはリハビリテーションにおける腰部の訓練等の効果を得ることができる。さらに、腰掛シートの揺動には身体の重心位置の移動をほとんど伴わないため、初めてこの種類の椅子を使用する使用者でも安全かつ容易に椅子を使用することができる。なお、「中立位置」の語は、腰掛シートに周方向に向かう外力が加わっていないときに椅子の各部材(例えば腰掛シート)が占める位置を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平2−51540号公報
【特許文献2】特表平7−503392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、通常の成型、切削等の球面加工によると、一般に加工精度のばらつきや加工後の温度変化、外部からの荷重による変形などにより真球面からの形状誤差が生じる。したがって、特許文献1の椅子のように、突出体の凸面に対応する凹面を有する球面案内基板を案内部材として使用すると、凸面及び凹面の真球面からの形状誤差に加えて凸面と凹面との間に発生する摩擦により、腰掛シートの円滑な揺動運動が達成されない。また、案内部材としてボールキャスタを使用しても、突出体の凸面の真球面からの形状誤差のために腰掛シートの揺動が不自然になり、それに加えて椅子に座った使用者の体重により突出体及びボールキャスタが変形し、この変形がボール上の突出体の滑動及びボールの回転における摩擦抵抗を増大させるため、腰掛シートの揺動運動が満足できるほど円滑であるとはいえない。その上、ボールキャスタがボールの回転時に極めて大きなノイズを発生するため、部屋内で複数人がこの種類の椅子を使用した場合には、大きすぎるノイズにより、例えばデスクワークやリハビリテーションの進行が妨げられる。
【0009】
この大きなノイズを解消するために、磁場装置、油圧装置等を使用して腰掛シートを浮上させることが考えられるが、椅子が大型になる上に高価になる。また、真球面を得るための精密な球面加工と軽量で高硬度な材料の使用も、椅子を高価にする。
【0010】
そこで、本発明の課題は、腰掛シートが360°全周方向に揺動可能な揺動椅子であって、椅子を製造するために精密な加工や高価な材料の使用を行わなくても円滑な揺動運動が達成され、静音性に優れ、安価に製造することができる揺動椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決する本発明の揺動椅子は、腰掛シートと、該腰掛シートを支持するための支持体と、上記腰掛シートと上記支持体とを上記腰掛シートが上記支持体に対して揺動可能なように連結する連結部材とを備えた揺動椅子であって、上記連結部材が、上記腰掛シートと上記支持体との間に配置された中間部材と、上記支持体と上記中間部材とを連結する、上記支持体及び上記中間部材の一方に設けられ、下向きに湾曲し、1本或いは平行に隔たった状態で配列された複数本の第1レールと、上記支持体及び上記中間部材の他方に上記第1レールに対応して設けられ、対応する第1レールに沿って走行可能な少なくとも2個のローラを含む、上記第1レールと同数の第1ローラ列とからなる第1連結部と、上記腰掛シートと上記中間部材とを連結する、上記腰掛シート及び上記中間部材の一方に設けられ、下向きに湾曲し、上記第1レールと垂直な方向に伸び、1本或いは平行に隔たった状態で配列された複数本の第2レールと、上記腰掛シート及び上記中間部材の他方に上記第2レールに対応して設けられ、対応する第2レールに沿って走行可能な少なくとも2個のローラを含む、上記第2レールと同数の第2ローラ列とからなる第2連結部とを備えており、上記腰掛シートが上記支持体に対して任意の周方向に揺動可能であることを特徴とする。
【0012】
本発明の揺動椅子では、腰掛シートを支持するための支持体及び腰掛シートと支持体との間に配置された中間部材の一方に、下向きに湾曲している第1レールが設けられており、このレールに沿って、支持体及び中間部材の他方に設けられている第1ローラ列に含まれる少なくとも2個のローラが走行可能なようになっており、この第1レールと第1ローラ列とにより、支持体と中間部材を連結する第1連結部が構成されている。複数本の第1レールが存在する場合には、これらは平行に隔たった状態で配列されており、それぞれの第1レールに対応して第1ローラ列が設けられている。したがって、第1レールと第1ローラ列の数は同数である。そして、それぞれの第1ローラ列にそれぞれ少なくとも2個のローラが含まれており、それぞれの第1レールを少なくとも2個のローラが走行可能なようになっている。
【0013】
また、腰掛シート及び中間部材の一方に、下向きに湾曲し、上記第1レールと垂直な方向に伸びている第2レールが設けられており、このレールに沿って、腰掛シート及び中間部材の他方に設けられている第2ローラ列に含まれる少なくとも2個のローラが走行可能なようになっており、第2レールと第2ローラ列により、腰掛シートと中間部材を連結する第2連結部が構成されている。複数本の第2レールが存在する場合には、これらは平行に隔たった状態で配列されており、それぞれの第2レールに対応して第2ローラ列が設けられている。したがって、第2レールと第2ローラ列の数は同数である。そして、それぞれの第2ローラ列にそれぞれ少なくとも2個のローラが含まれており、それぞれの第2レールを少なくとも2個のローラが走行可能なようになっている。
【0014】
使用者が腰掛シートに対して第2レールの伸張方向(以下、「X方向」という。一般には椅子の前後方向或いは左右方向)と同一の方向に力を印加すると、第2レールが第2ローラ列のローラを回転させながら力が加えられた方向に移動し、或いは、第2レールに沿って第2ローラ列のローラが走行し、腰掛シートが力を印加された方向に傾動する(X方向の運動)。第2レールが下向きに湾曲しているので、X方向の運動に使用者の身体の重心位置の移動をほとんど伴わない。使用者が腰掛シートに対して第1レールの伸張方向(以下、「Y方向」という。一般には椅子の左右方向或いは前後方向)と同一の方向に力を印加すると、第2ローラ列のローラが第2レールにより力が印加された方向に押され、或いは、第2レールが第2ローラ列のローラにより力が印加された方向に押され、この力が上記中間部材に伝わり、第1ローラ列のローラを第1レールに沿って走行させ、或いは、第1レールを第1ローラ列のローラを回転させながら移動させ、腰掛シートが力を印加された方向に傾動する(Y方向の運動)。第1レールが下向きに湾曲しているので、Y方向の運動にも使用者の身体の重心位置の移動をほとんど伴わない。使用者が腰掛シートに対してX方向とY方向との間の方向に力を印加すると、X方向の運動とY方向の運動の両方が生ずる。したがって、本発明の揺動椅子では、腰掛シートが360°全周方向に揺動可能である。
【0015】
本発明の揺動椅子では、第1レールに沿った第1ローラ列のローラの走行と第2レールに沿った第2ローラ列のローラの走行とを互いに独立に生じさせることができ、それぞれの第1ローラ列の少なくとも2個のローラは互いに独立に回転可能であり、それぞれの第2ローラ列の少なくとも2個のローラも互いに独立に回転可能である。したがって、第1レールと第2レールとを同心の真円に沿った円弧の形態に形成しなくとも、第1ローラ列のローラ及び第2ローラ列のローラの走行が阻害されることがない。したがって、上述の従来技術のような精密な加工を施さなくても、或いは高価な材料を使用しなくても、従来技術と同様に、使用者の身体の重心位置の移動をほとんど伴わずに腰掛シートを360°全周方向に揺動させることができる。その上、移動手段がレールに沿って走行するローラであるため、静音性に優れ、安価に製造することができる。
【0016】
第1レールと第2レールは下向きに湾曲してさえいれば、円弧の形状であっても良いが、湾曲度が均一である必要はなく、本発明の揺動椅子では、第1レールと第2レールの湾曲度を椅子の用途に応じてそれぞれ独立に選択することができる。例えば、上記第1レール或いは上記第2レールを左右方向に伸びるように配置し、レール中央部がレール端部より緩やかに湾曲するようにしても良い。また、上記第1レール或いは上記第2レールを前後方向に伸びるように配置し、前方と後方の湾曲度が異なるようにすることもできる。このようにすると、腰掛シートの揺動運動をさまざまに変化させることができるため、用途に応じたさまざまな揺動椅子を提供することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、上記腰掛シートが、着座部と、該着座部の下面側に設けられている保持部とを有しており、上記着座部が上記保持部に対して回転可能なように連結されている。このような連結は、例えば上記着座部と上記保持部とをスラスト軸受を用いて連結することにより実現することができる。この好ましい構成によると、椅子に座りながらにして腰部の捻り運動を行うことができ、またX方向の運動とY方向の運動の両方が生じた際に、着座部が回転するため、360°全周方向への腰掛シートの揺動がより自然になる。
【0018】
本発明の揺動椅子では、ローラがレールから脱輪することなく所定の軌道を往復走行することができれば、ローラ及びレールの形状には限定がないが、上記第2レールを溝の形状に形成し、溝に上記第2ローラ列のローラの少なくとも一部を収容し、ローラを溝内で走行させるのが好ましい。この好ましい構成によると、第2レールから第2ローラ列のローラが脱輪しにくく、しかも、Y方向の運動の際に、第2レールの溝の側面が第2ローラ列のローラの側面を確実に押すことができ、或いは、第2ローラ列のローラの側面が第2レールの溝の側面を確実に押すことができるため、安全且つ確実にY方向の運動が行われる。
【0019】
本発明の揺動椅子には、上記中間部材の脱落を防止する脱落防止部材がさらに備えられているのが好ましい。この好ましい構成によると、腰掛シートが安全に360°全周方向に揺動する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の揺動椅子によると、腰掛シートと支持体との連結を、腰掛シートと支持体との間に配置されている中間部材と、支持体と中間部材を連結する第1レールと第1ローラ列とからなる第1連結部と、腰掛シートと中間部材を連結する第2レールと第2ローラ列とからなる第2連結部とを備えた連結部材によって行っているため、第1レールに沿った第1ローラ列のローラの走行と第2レールに沿った第2ローラ列のローラの走行とを互いに独立に生じさせることができ、しかも、それぞれの第1ローラ列の少なくとも2個のローラが互いに独立に回転し、それぞれの第2ローラ列の少なくとも2個のローラが互いに独立に回転する。そのため、第1レールと第2レールとを同心の真円に沿った円弧の形態に形成しなくとも、第1ローラ列のローラ及び第2ローラ列のローラの走行が阻害されることがなく、精密な加工を施さなくても、或いは高価な材料を使用しなくても、使用者の身体の重心位置の移動をほとんど伴わずに腰掛シートを360°全周方向に揺動させることができる揺動椅子を提供することができる。その上、移動手段がレールに沿って走行するローラであるため、揺動椅子を安価に製造することができ、また静音性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の揺動椅子の構成を説明する図である。
【図2】図1に示す揺動椅子における支持体を示す概略図であり、(a)は正面図であり、(b)は(a)のI−I線における断面図である。
【図3】図1に示す揺動椅子における腰掛シートを示す概略図であり、(a)は正面図を、(b)は右側面図を、(c)は平面図を示している。
【図4】図1に示す揺動椅子における中間部材を示す概略図であり、(a)は正面図を、(b)は右側面図を、(c)は平面図を示している。
【図5】図1に示す揺動椅子における腰掛シートの揺動を説明する正面図である。
【図6】図1に示す揺動椅子における腰掛シートの揺動を説明する、図5のII−II線における断面図である。
【図7】図1に示す揺動椅子の変形形態を説明する、図6に対応する断面図である。
【図8】図1に示す揺動椅子の別の変形形態を説明する、図6に対応する断面図である。
【図9】本発明の別の実施形態の揺動椅子における連結部材の構成を説明する概略図であり、(A)は正面図を、(B)は右側面図を示している。
【図10】本発明のさらに別の実施形態の揺動椅子における連結部材の構成を説明する概略図であり、(A)は正面図を、(B)は右側面図を示している。
【図11】本発明のさらに別の実施形態の揺動椅子における連結部材の構成を説明する概略図であり、(A)は正面図を、(B)は右側面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
第1実施形態
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜6を参照しながら説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態の揺動椅子1は、支持体10、支持体10の上部に設けられた第1レール20、腰掛シート30、腰掛シートの下面側に設けられた第2レール40、支持体10と腰掛シート30の間に配置される中間部材50、中間部材50に設けられており且つ第1レール20に沿って走行可能なローラ61を含むローラ列60、及び、中間部材50に設けられており且つ第2レール40に沿って走行可能なローラ71を含むローラ列70を主要な構成要素として有している。支持体10の上部に設けられた第1レール20の上に、中間部材50に設けられた第1ローラ列60のローラ61を載置し、さらに、中間部材50に設けられた第2ローラ列70のローラ71の上に、腰掛シート30の第2レール40を載置することにより、本実施の形態の揺動椅子1が組み立てられる。そして、第1レール20と第1ローラ列60により第1連結部3が構成され、第2レール40と第2ローラ列70により第2連結部4が構成され、中間部材50、第1連結部3及び第2連結部4により、支持体10と腰掛シート30とを連結する連結部材2が構成される。図5は、組み立てられた後の本実施の形態の揺動椅子1の正面図であり、図6は、図5のII−II線における断面図である。
【0024】
図2は、支持体10及び支持体10の上部に設けられた第1レール20を示した概略図であり、(a)は正面図であり、(b)は(a)のI−I線における断面図である。支持体10は、床面上に載置される放射状に広がった4本の脚部11と、4本の脚部11の接合部から垂直に上方に伸びている2本の円筒を連結することにより形成された支柱部12と、支柱部12の先端に設けられている矩形の平板で構成された台部13と、台部13から上方に伸びている第1レールを支承するための支承部14とから構成されている。矩形の台部13は、対向する長辺が椅子1の前後に位置するように配置されている。そして、台部13の4隅と各長辺の中央部から合計で6本の支承部14が上方に向かって伸びており、前側に設けられた3本の支承部14aの先端は前方に、後側に設けられた3本の支承部14bの先端は後方にそれぞれ折れ曲げられている。前側の支承部14aも、後側の支承部14bも、中央の支承部がその左右に位置する支承部よりも短く形成されており、また、前側の支承部14aは対向する後側の支承部14bよりも短く形成されている。
【0025】
折れ曲げられた支承部14の先端には、断面が円形のパイプにより形成された第1レール20が固定されている。第1レール20は下向きに湾曲しており、前側の第1レール20aと後側の第1レール20bが平行に配置されている。前側の第1レール20aを支承する前側の支承部14aが後側の第1レール20bを支承する後側の支承部14bよりも短く形成されているため、図2(b)に示すaの長さだけ前側の第1レール20aが後側の第1レール20bより低い位置に設けられている。
【0026】
第1レール20の両端には、椅子1の両側方に向かった後に上方に向かって伸びている一対の肘掛用アーム15が第1レール20と一体的に円形パイプにより形成されており、肘掛用アーム15の先端には肘掛16が取り付けられている。さらに、矩形の台部13の後側の長辺の中央部には、椅子1の後方に向かった後に上方に向かって伸びている背もたれ用アーム17が設けられている。背もたれ用アーム17の先端には両側方に伸びている背もたれ支持部18が設けられており、この背もたれ支持部18に背もたれ19が取り付けられている。さらに、第1レール20と肘掛用アーム15の境界部に、第1レール20の外径より太い外径を有する円管で形成された第1ストッパ21が設けられている。この第1ストッパ21は、後述するが、第1ローラ列60のローラ61が肘掛用アーム15まで走行するのを防止する役割を果たす。
【0027】
図3は、腰掛シート30及び腰掛シート30の下面側に設けられた第2レール40を示した概略図であり、(a)は正面図を、(b)は右側面図を、(c)は平面図を、それぞれ示している。
【0028】
腰掛シート30は、矩形状の着座板33と着座板33の上面に取り付けられたクッション材32とから構成される着座部31と、着座板33の下側に連結されているかまぼこ型の保持部35とを有している。保持部35は、矩形の平面部35aが上に向くように配置されており、着座板33と保持部35の平面部35aの間にはスラスト玉軸受36が配置されている。スラスト玉軸受36の軸軌道盤36aが着座板33の下面に、ハウジング軌道盤36bが保持部35の平面部35aにそれぞれ固定されており、着座部31が保持部35に対して回転可能なようになっている。また、着座板33の下面に、軸軌道盤35aの内径よりわずかに細い外径を有する円柱状の軸部34が設けられており、この軸部34が保持部35の平面部35aに設けられた凹陥部37内に挿入され、着座部31の保持部35に対する安定な連結と回転とを保証している。図3(c)の仮想線は、着座部31が保持部35に対して回転した状態を示している。
【0029】
かまぼこ型の保持部35の曲面部35bには、第2レール40が設けられている。第2レール40は、下向きに湾曲しており、保持部の端面35cの近傍の位置に、左右に平行に2列、溝の形状に形成されている。そして、左側の第2レール40aと右側の第2レール40bのそれぞれの両端に、第2ストッパ41が設けられている。この第2ストッパ41は、後述するが、第2ローラ列70のローラ71が保持部35から抜けるのを防止する役割を果たす。
【0030】
さらに、かまぼこ型の保持部35の両端面35cに、円弧状の凹陥部38が設けられている。この凹陥部38は、後述するが、中間部材50上に載置された腰掛シート30が脱落するのを防止する役割を果たす。
【0031】
図4は、中間部材50及び中間部材50に設けられた第1ローラ列60及び第2ローラ列70を示した概略図であり、(a)は正面図を、(b)は右側面図を、(c)は平面図を、それぞれ示している。
【0032】
中間部材50は、平面視で矩形状の平板を後側が高くなるように折り曲げることにより形成された基体51を有し、基体51の中央部には矩形の孔52が形成されている。この孔52は、材料を節約するために、また中間部材50上に腰掛シート30を載置した際に、腰掛シート30の保持部35の曲面部35bが中間部材50と接触することがないように設けられている。さらに、基体51の4隅には、ローラ61,71を収容するための溝53と孔54とが設けられている。溝53は、第1レール20に沿って走行する第1ローラ列60のローラ61を収容するための溝であり、孔54は、第2レール40に沿って走行する第2ローラ列70のローラ71を収容するための孔である。
【0033】
本実施の形態の揺動椅子1では、2本の第1レール20に対応して、2列の第1ローラ列60が設けられており、中間部材50の前側に取付けられた第1ローラ列60aに含まれる2個のローラ61a,61bが前側の第1レール20aの上に載置され、中間部材50の後側に取付けられた第1ローラ列60bに含まれる2個のローラ61c,61dが後側の第1レール20bの上に載置される(図1,5,6参照)。そして、第1ローラ列60aと第1レール20a、第1ローラ列60bと第1レール20bにより、支持体10と中間部材50とを連結する第1連結部3が形成される。各ローラ61a,61b,61c,61dは、円形パイプで形成された第1レール20a,20bに沿って走行可能なように、走行面に溝を有する鼓型(V型)の形状を有している。また、図4(b)にbで示した前側のローラ61a,61bと後側のローラ61c,61dの高さの差は、図2(b)に示した前側の第1レール20aと後側の第1レール20bとの高さの差aと同じである。
【0034】
本実施の形態の揺動椅子1では、2本の第2レール40に対応して、2列の第2ローラ列70が設けられており、中間部材50の左側に取付けられた第2ローラ列70aに含まれる2個のローラ71a,71bの一部が左側の第2レール40aの溝内に収容され、中間部材50の右側に取付けられた第2ローラ列70bに含まれる2個のローラ71c,71dの一部が右側の第2レール40bの溝内に収容される(図1,5参照)。そして、第2ローラ列70aと第2レール40a、第2ローラ列70bと第2レール40bにより、腰掛シート30と中間部材50とを連結する第2連結部4が形成される。各ローラ71a,71b,71c,71dは、溝の形状の第2レール40a、40b内を安定に走行可能なように、走行面に溝のない円筒形状を有している。
【0035】
中間部材50の前面及び後面には、ローラ61に隣接する位置に、平行四辺形の板体で形成された第1防御板81と、この第1防御板81の先端に設けられた円筒状の第1突起体82からなる第1脱落防止部材80が取り付けられる。第1突起体82とローラ61の間に第1レール20を配置することにより、中間部材50に設けられた第1ローラ列60のローラ61が第1レール20から脱落するのが防止される。
【0036】
中間部材50の上面にはさらに、孔52の左右の位置に、矩形の板体で形成された第2防御板84と、この第2防御板84の先端に設けられた円筒状の第2突起体85からなる第2脱落防止部材83が取り付けられる。第2突起体85を腰掛シート30の保持部35の端面35cに設けられた円弧状の凹陥部38に挿入することにより、中間部材50に設けられた第2ローラ列70のローラ71が第2レール40から脱落するのが防止される。
【0037】
図1,5,6を使用して、本実施の形態の揺動椅子1の組み立て方法を説明する。まず、支持体10の上に中間部材50を載置する。このとき、支持体10に取付けられた第1レール20上に中間部材50に取り付けられた第1ローラ列60のローラ61が載置されるように、また、第1脱落防止部材80の第1突起体82と第1ローラ列60のローラ61により円形パイプで構成された第1レール20が挟み込まれるように、中間部材50を配置する。第1突起体82により、中間部材50を上方に持ち上げても中間部材50に取り付けられたローラ61が第1レール20から外れることがなく、第1防御板81により、中間部材50が前後に動いてもローラ61が第1レール20から外れることがない。
【0038】
次いで、中間部材50の上に腰掛シート30を載置する。このとき、腰掛シート30の保持部35に設けられた第2レール40の溝内に第2ローラ列70のローラ71の一部が収容されるように、また、第2脱落防止部材83の第2防御板84により腰掛シート30の保持部35が挟まれ、第2突起体85が端面35cに設けられた円弧状の凹陥部38に挿入されるように、腰掛シート30を配置する。第2突起体85により、腰掛シート30を上方に持ち上げても中間部材50に取り付けられたローラ71が第2レール40から外れることがなく、第2防御板84により、腰掛シート30が左右に動いてもローラ71が第2レール40から外れることがない。
【0039】
図5及び図6を使用して、本実施の形態の揺動椅子1における腰掛シートの揺動運動を説明する。
【0040】
図6に示すように、使用者が腰掛シート30に対してX方向(第2レール40の伸張方向)の力を印加(図6では椅子1の後方に向かう力を印加)すると、第2レール40が中間部材50に取り付けられた第2ローラ列70のローラ71を回転させながら力が加えられた方向に移動(第2レール40側から見ると、第2レール40に沿って第2ローラ列70のローラ71が走行)し、腰掛シート30が力を印加された方向に傾動し(X方向の運動)、使用者が腰掛シート30に力を印加するのを停止するか、或いはローラ71が第2ストッパ41に接触するまで、腰掛シート30が傾動し続ける。図6の仮想線は、腰掛シート30が後側に傾動した状態を示している。使用者が腰掛シート30に力を印加するのを停止すると、第2レール40が中間部材50に取り付けられた第2ローラ列70のローラ71を回転させながら移動(第2レール40側から見ると、第2レール40に沿って第2ローラ列70のローラ71が走行)し、腰掛シート30が中立位置に復帰する。
【0041】
第2レール40が下向きに湾曲しているので、X方向の運動に使用者の身体の重心位置の移動をほとんど伴わない。そして、本実施の形態の揺動椅子1では、前側の第1レール20aが後側の第1レール20bより低い位置に存在するため、中立位置において、腰掛シート30のかまぼこ型の保持部35の下端が後側の第1レール20bより前側の第1レール20aに接近して配置されることになる。そのため、腰掛シート30を前方より後方に大きく傾動させることができる。
【0042】
図5に示すように、使用者が腰掛シート30に対してY方向(第1レール20の伸張方向)の力を印加(図5では椅子1の左側に向いた力を印加)すると、中間部材50に取り付けられた第2ローラ列70のローラ71の側面が第2レール40の溝の側面によって力が印加された方向に押され、この力が中間部材50に伝わり、第1ローラ列60のローラ61を第1レール20に沿って走行させ、腰掛シート30が力を印加された方向に傾動し(Y方向の運動)、使用者が腰掛シート30に力を印加するのを停止するか、或いはローラ61が第1ストッパ21に接触するまで、腰掛シート30が傾動し続ける。図5の仮想線は、腰掛シート30が左側に傾動した状態を示している。使用者が腰掛シート30に力を印加するのを停止すると、第1レール20に沿って中間部材50に取り付けられた第1ローラ列60のローラ61が走行し、腰掛シート30が中立位置に復帰する。
【0043】
第1レール20が下向きに湾曲しているので、Y方向の運動にも使用者の身体の重心位置の移動をほとんど伴わない。使用者が腰掛シート30に対してX方向とY方向との間の方向に力を印加すると、X方向の運動とY方向の運動の両方が生ずる。
【0044】
さらに、本実施の形態の揺動椅子1では、腰掛シート30の着座部31が保持部35に対してスラスト玉軸受36を介して連結しているので、使用者は、必要に応じて着座部31を保持部35に対して回転させることができ(図3(c)参照)、したがって使用者は椅子1に座りながらにして腰部の捻り運動を行うことができ、またX方向の運動とY方向の運動の両方が生した際に、着座部31が回転するため、360°全周方向への腰掛シート30の揺動がより自然になる。
【0045】
本実施の形態の揺動椅子1によると、腰掛シート30が、360°全周方向へ揺動可能であり、また自由回転も可能である。また、第1レール20及び第2レール40の加工に関し、精密な加工が要求されず、高価な材料を使用する必要もない。さらに、ローラ61,71を移動手段として使用しているため、小型で安価に静音性に優れた揺動椅子1を構成することができる。
【0046】
第1実施形態の変形形態として、第2レール40を円弧状に形成せず、前方と後方の湾曲度が異なるように構成することができる。図7は、前方(40F)より後方(40B)が緩く湾曲している第2レール40が設けられた揺動椅子1についての、図6と同様の概略的な断面図を示している。上述の実施形態における各部材に対応する部材には同じ番号が付されている。この変形形態では、腰掛シート30を後方に移動させる際に、矢印Aで示す腰掛シート30の前縁部分の下降距離より矢印Bで示す後縁部分の上昇距離を長くすることができるため、椅子に座っている使用者が立ち上がりやすくなる。また、図7に示す腰掛シート30の前後を逆にして中間部材50上に配置するだけで、前方が後方より緩く湾曲した第2レール40を有する揺動椅子1を得ることができる。この揺動椅子1によると、腰掛シート30を前方に移動させる際に、腰掛シート30の前縁部分の上昇距離を後縁部分の下降距離より長くすることができるため、使用者が背もたれにもたれかかって休息する際の動作を楽に行うことができる。
【0047】
また、別の変形形態として、第1レール20が前後に伸びる(したがって、第2レール40が左右に伸びる)ように揺動椅子1を形成することができる。このときも、第1レール20を円弧状に形成せず、前方と後方の湾曲度が異なるようにすることもできる。図8は、後方(20B)より前方(20F)が緩く湾曲している第1レール20が設けられた揺動椅子1についての、図6と同様の概略的な断面図を示している。上述の実施形態における各部材に対応する部材には同じ番号が付されている。この変形形態では、腰掛シート30を後方に移動させる際に、矢印Aで示す腰掛シート30の前縁部分の下降距離より矢印Bで示す後縁部分の上昇距離を長くすることができるため、椅子に座っている使用者が立ち上がりやすくなる。また、第1レール20の後方が前方より緩く湾曲するように第1レール20を形成することもできる。このようにすると、腰掛シート30を前方に移動させる際に、腰掛シート30の前縁部分の上昇距離を後縁部分の下降距離より長くすることができるため、使用者が背もたれにもたれかかって休息する際の動作を楽に行うことができる。
【0048】
第2実施形態
上述の第1実施形態では、支持体10に第1レール20を設け、腰掛シート30に第2レールを設け、支持体10と腰掛シート30の間に配置される中間部材50に、第1レール20に対応する第1ローラ列60と第2レール40に対応する第2ローラ列70とを設けたが、本発明では、支持体10に第1レール20を設け、中間部材50に第1レール20に対応する第1ローラ列60と第2レール40を設け、腰掛シート30に第2レール40に対応する第2ローラ列70を設けることも可能である。図9は、このような構成を有する本発明の第2実施形態の揺動椅子1における連結部材の構成を説明する図であり、(A)は正面図を、(B)は右側面図を、それぞれ示している。上述の第1実施形態における各部材に対応する部材には同じ番号が付されている。
【0049】
図9において、支持体10の上部の左右の位置には、前後に伸びる一対の支持部10Aが形成されており、この支持部10Aの上面は両端が上方に突出しており、この湾曲した上面に下向きの湾曲した第1レール20が溝の形状に設けられている。中間部材50は、支持部10Aの上方に位置し、前後に伸びており且つ断面が正方形である一対のパイプ50Aと、これらのパイプ50Aの対向部位を接続する、下向きに湾曲しており且つ断面が正方形である一対のパイプ50Bとから構成されている。一対のパイプ50Bの上面には、下向きに湾曲した溝状の第2レール40がそれぞれ設けられており、一対のパイプ50Aの下面の両端には、第1ローラ列60に含まれる2個のローラ61がそれぞれ取り付けられている。そして、第1ローラ列60に含まれる2個のローラ61の一部が、対応する第1レール20の溝内に収容され、第1レール20と第1ローラ列60により第1連結部が構成されている。腰掛シート30の保持部35は、直方体形状を有しており、中間部材50を構成する一対のパイプ50Bの上方に位置する側面に、第2ローラ列70に含まれる2個のローラ71がそれぞれ取り付けられている。そして、第2ローラ列70に含まれる2個のローラ71の一部が、対応する第2レール40の溝内に収容され、第2レール40と第2ローラ列70により第2連結部が構成されている。
【0050】
使用者が腰掛シート30に対してX方向(第2レール40の伸張方向)の力を印加(図9(A)では椅子1の左側に向かう力を印加)すると、第2レール40に沿って第2ローラ列70のローラ71が走行し、腰掛シート30が力を印加された方向に傾動する(X方向の運動)。図9(A)の仮想線は、腰掛シート30が左側に傾動した状態を示している。使用者が腰掛シート30に対してY方向(第1レール20の伸張方向)の力を印加(図9(B)では、椅子1の後方に向かう力を印加)すると、第2レール40が第2ローラ列70のローラ71により力が印加された方向に押され、この力が中間部材50に伝わり、第1ローラ列60のローラ61が第1レール20に沿って走行し、腰掛シート30が力を印加された方向に傾動する(Y方向の運動)。図9(B)の仮想線は、腰掛シート30が後方に傾動した状態を示している。使用者が腰掛シート30に対してX方向とY方向との間の方向に力を印加すると、X方向の運動とY方向の運動の両方が生ずる。
【0051】
第3実施形態
本発明ではまた、支持体10に第1ローラ列60を設け、中間部材に第1ローラ列60に対応する第1レール20と第2レール40を設け、腰掛シート30に第2レール40に対応する第2ローラ列70を設けることも可能である。図10は、このような構成を有する本発明の第3実施形態の揺動椅子1における連結部材の構成を示す図であり、(A)は正面図を、(B)は右側面図を、それぞれ示している。上述の第1実施形態における各部材に対応する部材には同じ番号が付されている。
【0052】
図10において、支持体10の上部の左右の位置には、前後に直線的に伸びる一対の支持部10Bが形成されており、この支持部10Bの上面の両端に、第1ローラ列60に含まれる2個のローラ61がそれぞれ取り付けられている。中間部材50は、支持部10Bの上方に位置し、前後に伸びている一対の板体50Cと、これらの板体50Cの対向部位を接続する、下向きに湾曲しており且つ断面が正方形である一対のパイプ50Dとから構成されている。一対の板体50Cの下面は、中央部が下方に突出しており、この湾曲した下面に、下向きに湾曲した溝状の第1レール20がそれぞれ設けられている。そして、第1ローラ列60に含まれる2個のローラ61の一部が、対応する第1レール20の溝内に収容され、第1レール20と第1ローラ列60により第1連結部が構成されている。また、一対のパイプ50Dの上面には、下向きに湾曲した溝状の第2レール40がそれぞれ設けられている。腰掛シート30の保持部35は、直方体形状を有しており、中間部材50を構成する一対のパイプ50Dの上方に位置する側面に、第2ローラ列70に含まれる2個のローラ71がそれぞれ取り付けられている。そして、第2ローラ列70に含まれる2個のローラ71の一部が、対応する第2レール40の溝内に収容され、第2レール40と第2ローラ列70により第2連結部が構成されている。
【0053】
使用者が腰掛シート30に対してX方向(第2レール40の伸張方向)の力を印加(図10(A)では椅子1の左側に向かう力を印加)すると、第2レール40に沿って第2ローラ列70のローラ71が走行し、腰掛シート30が力を印加された方向に傾動する(X方向の運動)。図10(A)の仮想線は、腰掛シート30が左側に傾動した状態を示している。使用者が腰掛シート30に対してY方向(第1レール20の伸張方向)の力を印加(図10(B)では、椅子1の後方に向かう力を印加)すると、第2レール40が第2ローラ列70のローラ71により力が印加された方向に押され、この力が中間部材50に伝わり、第1レール20が第1ローラ列60のローラ61を回転させながら移動し、腰掛シート30が力を印加された方向に傾動する(Y方向の運動)。図10(B)の仮想線は、腰掛シート30が後方に傾動した状態を示している。使用者が腰掛シート30に対してX方向とY方向との間の方向に力を印加すると、X方向の運動とY方向の運動の両方が生ずる。
【0054】
第4実施形態
本発明ではさらに、支持体10に第1ローラ列60を設け、中間部材に第1ローラ列60に対応する第1レール20と第2ローラ列70を設け、腰掛シート30に第2ローラ列70に対応する第2レール40を設けることも可能である。図11は、このような構成を有する本発明の第4実施形態の揺動椅子1における連結部材の構成を示す図であり、(A)は正面図を、(B)は右側面図を、それぞれ示している。上述の第1実施形態における各部材に対応する部材には同じ番号が付されている。
【0055】
図11において、支持体10の上部の左右の位置には、前後に直線的に伸びる一対の支持部10Cが形成されており、この支持部10Cの上面の両端に、第1ローラ列60に含まれる2個のローラ61がそれぞれ取り付けられている。中間部材50は、支持部10Bの上方に位置し、前後に伸びている一対の板体50Eと、これらの板体50Eの対向部位を接続する、直線的に伸びており且つ断面が正方形である一対の板体50Fとから構成されている。一対の板体50Eの下面は、中央部が下方に突出しており、この湾曲した下面に、下向きに湾曲した溝状の第1レール20がそれぞれ設けられている。そして、第1ローラ列60に含まれる2個のローラ61の一部が、対応する第1レール20の溝内に収容され、第1レール20と第1ローラ列60により第1連結部が構成されている。また、一対の板体50Fには、第2ローラ列70に含まれる2個のローラ71がそれぞれ取り付けられている。腰掛シート30は、かまぼこ型の保持部35を有している。かまぼこ型の保持部35の曲面部35bには、第2レール40が設けられている。第2レール40は、下向きに湾曲しており、保持部35の端面35cの近傍の位置に、平行に2列、溝の形状に形成されている。そして、第2ローラ列70に含まれる2個のローラ71の一部が、対応する第2レール40の溝内に収容され、第2レール40と第2ローラ列70により第2連結部が構成されている。
【0056】
使用者が腰掛シート30に対してX方向(第2レール40の伸張方向)の力を印加(図11(A)では椅子1の左側に向かう力を印加)すると、第2レール40が第2ローラ列70のローラ71を回転させながら力が加えられた方向に移動し、腰掛シート30が力を印加された方向に傾動する(X方向の運動)。図11(A)の仮想線は、腰掛シート30が左側に傾動した状態を示している。使用者が腰掛シート30に対してY方向(第1レール20の伸張方向)の力を印加(図11(B)では、椅子1の後方に向かう力を印加)すると、第2ローラ列70のローラ71が第2レール40により力が印加された方向に押され、この力が中間部材50に伝わり、第1レール20が第1ローラ列60のローラ61を回転させながら移動し、腰掛シート30が力を印加された方向に傾動する(Y方向の運動)。図11(B)の仮想線は、腰掛シート30が後方に傾動した状態を示している。使用者が腰掛シート30に対してX方向とY方向との間の方向に力を印加すると、X方向の運動とY方向の運動の両方が生ずる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【0058】
例えば、第1実施形態において、左右方向に伸びる前側の第1レール20aを後側の第1レール20bより低い位置に設けたが、両者を同じ高さの位置に設けることもできる。この場合に、中間部材50に対して第2ローラ列70の前側のローラ71a,71cを後側のローラ71b,71dより低い位置に取り付けると、第1実施形態と同様の腰掛けシート30の揺動を実現することができる。
【0059】
また、第1レールと第2レールの湾曲度を椅子の用途に応じてそれぞれ独立に選択することができ、第1〜第4実施形態において、上記第1レール或いは上記第2レールを左右方向に伸びるように配置し、レール中央部がレール端部より緩やかに湾曲するようにしても良く、第2〜第4実施形態において、上記第1レール或いは上記第2レールを前後方向に伸びるように配置し、前方と後方の湾曲度が異なるようにすることもできる。このようにすると、腰掛シートの揺動運動をさまざまに変化させることができるため、用途に応じたさまざまな揺動椅子を提供することができる。
【0060】
さらに、第1〜第4実施形態において、腰掛シート30の着座部31と保持部35とを伸縮可能な連結体で連結しても良い。例えば、第一実施形態において着座部31と保持部35とを伸縮可能な連結体で連結する場合には、スラスト玉軸受36を軸部34の先端と保持部35の平面部35aに設けられた凹陥部37の底面との間に設けることができる。このことにより、着座部31の高さを変更することができるため、使用者の体格に合わせ、腰掛シート30の揺動に伴って使用者の身体の重心位置の移動が生じにくいように調節することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の揺動椅子は、コンピュータ操作等の一般事務用椅子、リハビリテーション用椅子のほか、腰部筋肉の訓練のための健康機器、ゆりかごなどにも好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 揺動椅子
2 連結部材
3 第1連結部
4 第2連結部
10 支持体
20 第1レール
30 腰掛シート
31 着座部
35 保持部
36 スラスト玉軸受
40 第2レール
50 中間部材
60 第1ローラ列
61 第1ローラ列のローラ
70 第2ローラ列
71 第2ローラ列のローラ
80 第1脱落防止部材
81 第1防御板
82 第1突起体
83 第2脱落防止部材
84 第2防御板
85 第2突起体



【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰掛シートと、
該腰掛シートを支持するための支持体と、
前記腰掛シートと前記支持体とを前記腰掛シートが前記支持体に対して揺動可能なように連結する連結部材と
を備えた揺動椅子であって、
前記連結部材が、
前記腰掛シートと前記支持体との間に配置された中間部材と、
前記支持体と前記中間部材とを連結する、
前記支持体及び前記中間部材の一方に設けられ、下向きに湾曲し、1本或いは平行
に隔たった状態で配列された複数本の第1レールと、
前記支持体及び前記中間部材の他方に前記第1レールに対応して設けられ、対応す
る第1レールに沿って走行可能な少なくとも2個のローラを含む、前記第1レールと
同数の第1ローラ列と
からなる第1連結部と、
前記腰掛シートと前記中間部材とを連結する、
前記腰掛シート及び前記中間部材の一方に設けられ、下向きに湾曲し、前記第1レ
ールと垂直な方向に伸び、1本或いは平行に隔たった状態で配列された複数本の第2
レールと、
前記腰掛シート及び前記中間部材の他方に前記第2レールに対応して設けられ、対
応する第2レールに沿って走行可能な少なくとも2個のローラを含む、前記第2レー
ルと同数の第2ローラ列と
からなる第2連結部と
を備えており、前記腰掛シートが前記支持体に対して任意の周方向に揺動可能であることを特徴とする揺動椅子。
【請求項2】
前記腰掛シートが、着座部と、該着座部の下面側に設けられている保持部とを有しており、前記着座部が前記保持部に対して回転可能なように連結されている、請求項1に記載の揺動椅子。
【請求項3】
前記中間部材の脱落を防止する脱落防止部材をさらに備えている、請求項1又は2に記載の揺動椅子。
【請求項4】
前記第2レールが溝の形状に形成されており、溝内に前記第2ローラ列のローラの少なくとも一部が収容されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の揺動椅子。
【請求項5】
前記第1レール或いは前記第2レールが前後方向に伸びており、レールの前方と後方の湾曲度が異なっている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の揺動椅子。
【請求項6】
前記第1レール或いは前記第2レールが左右方向に伸びており、レール中央部がレール端部より緩やかに湾曲している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の揺動椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−29646(P2010−29646A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132873(P2009−132873)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【出願人】(306011838)株式会社サイエンス・ロード (2)
【Fターム(参考)】