説明

損傷防止機能を備えた小型フィルタエレメント

巻フィルタで形成して軸端面(2)の間を軸方向に流体が流れるように構成されるフィルタ本体(1)を備えた小型フィルタエレメント(10)が、誤って硬質面に衝突するような場合に損傷することを防止するために、前記フィルタ本体(1)の少なくとも一軸端面(2)にはフィルタ本体の外周を包囲して該軸端面(2)よりも長く突出する保護用カラー(3)を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の特徴(軸方向両端面(2)間のフィルタ内を軸方向に流体が流れるように形成した巻フィルタで構成されるフィルタ本体(1)を備えていること)を有する損傷防止機能を備えた小型フィルタエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(DE3249151C2)は波形のフィルタ紙と平面のフィルタ紙を備える小型空気フィルタエレメントを開示している。2枚のフィルタ紙を糊付けして一緒に巻いて所望の大きさのフィルタエレメントにする。この点、フィルタ紙の波形層と平面層の隙間は両軸端部のどちらか一方が閉鎖されるように帯状に糊を付けて接着しているので、流体がフィルタ紙で濾過されずに流路内を通過することはない。未濾過空気側から清浄空気側へと空気流体が流れる場合、まず1の通路に到達した空気流体はフィルタ紙を通過し他の通路から流出する。従来の折りたたみ式フィルタと比べると、この小型空気フィルタは同じ大きさの他の空気フィルタに比べてフィルタ面が広く、同じフィルタ面積を備える他の空気フィルタよりもサイズをコンパクトにできる。
【0003】
折りたたみ式フィルタの場合、フィルタ媒体の補修・点検は、挿設されているフィルタ媒体をハウジングから取り出し硬質面に打ち付けて、折り目の間に集積された塵埃を除去することにより行う。除去される塵埃が粗い粒子だけでフィルタ媒体の気孔に細かい粉塵が詰まったまま残留していると、補修・点検しても挿設されるフィルタ部材の寿命が大きく延びることはない。また、交換時にフィルタ媒体が誤って何かに衝突し損傷する可能性もある。例えば、紙のフィルタ層を巻いて作った(wound from paper layers)小型空気フィルタ媒体は、接着剤で波形フィルタ紙と平面のフィルタ紙とを接着してフィルタ紙の層の間に形成される流路の終端が閉鎖されるように構成されているが、その接着剤が剥離して流路を流れる空気が未濾過空気側から清浄空気側へとフィルタを通さずに流出する可能性がある。そうすると、小型フィルタエレメントを内燃機関の上流に配置する場合にエンジンの消耗が激しくなる。
【0004】
また、接着剤の剥離に加えて、硬質面に打ち付ける時にフィルタ紙自体が破れ、損傷箇所が接着部分にまで及ぶ可能性がある。その場合も汚染空気がフィルタ紙を経ずに小型空気フィルタエレメントの中を通過してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
DE3249151C2
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は上述したような小型空気フィルタエレメントを不適切な取り扱いがされないように改良することである。
【0007】
この目的は請求項1に記載の特徴(軸方向両端面の間を軸方向に流体が流れるように形成した巻フィルタで構成されるフィルタ本体を備えた損傷防止機能付き小型フィルタエレメントにおいて、前記フィルタ本体の少なくとも一の軸端面にはフィルタ本体の外周を包囲して該軸端面よりも軸方向に突出する保護用カラーを設けたこと)を備えた小型空気フィルタエレメントにより解決される。
【0008】
本発明において小型空気フィルタエレメントの少なくとも1の軸端面に、該軸端面よりも長く延在させた保護用カラーを設けることを提案しており、保護用カラーは好ましくはエラストマー(ゴムなどの非常に大きな弾性をもつ高分子化合物)製とする。このように構成することにより小型空気フィルタエレメントの軸端面が誤って何かに衝突しても保護用カラーによって衝撃が相殺されてフィルタ本体端部の破損を防ぐことが出来る。更に濡れた場所や汚い面に置いてもフィルタ本体を保護できる。
【0009】
更に、好ましくは小型空気フィルタエレメントの少なくとも外周部に封止用カラー(リング)を設け、保護用カラー及び保護用カラーと一体構造をなす封止用カラー(リング)は同じエラストマー材製とする。更に好ましくは、封止用カラー(リング)と保護用カラーは一部材として構成する。
【0010】
本発明において、保護用カラーは(衝突時に破壊するか裂け目ができることが可能な形状の)脆性材料製とするか脆性塗料でコーティングすることにより別異の効果が出て、この場合も好ましい実施例となる。脆性材料で製造すると小型フィルタエレメントが誤って何かに衝突した場合に破壊するか裂け目ができるので、内部のフィルタ部材が不適切に使用されることがなくなり、よってメーカーは不当に義務を負わなくてもよくなる。また偽造品からの保護を強化するために、安全策としてホログラム等を脆性シール層に埋め込んでもよい。
【0011】
他の例として、保護用カラーは硬質材からなるスリーブとして構成し、小型フィルタエレメントの半径方向に突縁部を突出させ封止用カラー(リング)の溝に嵌めることにより封止用カラー(リング)を取り付けるようにした。硬質スリーブは端部に衝撃が与えられることを防ぐだけでなく小型空気フィルタを重い物体の下に置いてもフィルタ外面が折れ曲がったり傷ついたりしないよう保護できる。封止用カラー(リング)を組合せて使用することにより保護用カラーに取り付けた封止用リングの形状を維持することができフィルタ本体表面が変形したとしても封止用リングの形状まで変形することはない。
【0012】
保護用カラーは更に把持部を備えるように構成してもよい。そうすると、点検・補修の際の取り扱いでフィルタ部材の外面が損傷することはない。
【0013】
更に、保護用カラーの機能が付加的にハウジングのフィルタ部材をクランプ固定することであっても良く、固定機能と封止機能を切り離してもよい。
【0014】
スリーブ形状の保護用カラーはフィルタ部材の外周全体に気密に取り付けて封止用カラー(リング)を取り付けた保護用カラーの下に流体が漏洩することを回避できる。
【0015】
好ましくは、保護用カラーは小型フィルタエレメント内部のフィルタ端面近傍の接着部分を跨ぐように少なくとも小型フィルタエレメントの長手方向に軸端面よりも長く延在させる。
【0016】
更なる実施例においては、把持用凸部又は把持用凹部を保護用カラーの内側若しくは外側に一体的に形成するか、新しい部材として組み込む。このような補助手段を外周全体に延在させるか一部分に配置することにより、フィルタ部材を容易に把持して交換できるようにする。
【0017】
他の実施例は従属クレームに記載され、以下に図面を参照して更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の保護用カラーを備えた小型フィルタエレメントの斜視図である。
【図2】第1実施例における保護用カラーの断面図である。
【図3】第2実施例における保護用カラーの断面図である。
【図4】カップ(筒)型ハウジングに取り付けた第3実施例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1はフィルタ本体1が巻フィルタ媒体で構成された小型フィルタエレメント10の斜視図である。
【0020】
平面状のフィルタ媒体は2枚のフィルタ紙を接着剤で接着して形成される。この点、波形フィルタ紙と平面フィルタ紙を接着してその間に断面が半円若しくは三角形の流路が軸方向に複数形成されるようにする。吸い込み側から見た時に、流路の終端を完全に閉鎖することで流体は必ずフィルタ紙を通過してその流路に隣接する別の流路を通ることになる。別の流路では吸い込み側が閉鎖され清浄空気側のみが開口している。
【0021】
フィルタ本体1端部への衝撃から保護してフィルタ紙自体が破れたり接着剤がフィルタ紙から剥がれることを防ぐために、フィルタ本体1に保護用カラー3を取り付けてフィルタ本体1の軸端面2まで外周を包囲して更に軸端面2よりも長く突出させる。本図面のフィルタ軸端面2は未濾過空気側、即ち未濾過空気の吸い込み側である。反対側の清浄空気側にも同様の保護用カラーを設けてもよい。
【0022】
小型空気フィルタエレメント10と空気フィルタハウジングとの環状の隙間を完全に封止するために、フィルタ本体1の外周全体に渡ってエラストマー材の密閉用カラー4を設け、好ましくはフィルタ本体1に一体的に取り付ける。
【0023】
図2に断面図を示した本発明の保護用カラー3の第1実施例では、保護用カラー3はフィルタ本体1外周を囲む薄く形成された包囲部分3.1とフィルタ本体1軸端面より突出させた突縁部(profiled web)3.2で構成される。断面で示される包囲部分3.1によってフィルタ本体外周面の損傷を防ぎ、突縁部(web)3.2によってフィルタ本体1軸端面が誤って他の部材に衝突した場合に損傷がないよう保護する。
【0024】
図3は第2実施例における保護用カラー3’を示し、突縁部3.2’が軸端面2よりも長く突出し、包囲部分3.1’は封止用カラー(リング)4’へと切れ目なく延在して連接している。本実施例において封止用カラー4’と保護用カラー3’を同一の材質で1部材として一体化して形成する。
【0025】
図4は第3実施例における保護用カラー3”を示し、エラストマー材ではなく硬質材で製造し好ましくは熱可塑性材とする。断面図において2方向(フィルタ軸方向と軸直交方向)にアングル部を有する構造(double angle configuration)であり、第1のアングル部3.2”はフィルタ本体1外周側より中心側に直角に屈曲させて、フィルタ本体1前端面と当接させ、一方第2のアングル部3.3”は保護用カラー3”の後部側で、フィルタ本体1外周から半径方向外側にフランジ状に突出(拡径)する突縁部(ウェブweb)として形成される。そして封止用リング(カラー)4”の内側対応位置に収納溝4.2を設けて、該収納溝4.2に第2のアングル部3.3”を係合させて固定する。
【0026】
フィルタ本体1と保護用カラー3”は、カップ(筒)型ハウジング部材20内周側に挿入してフィルタ本体1全体を被包するハウジングを形成する。この場合に(第2のアングル部3.3”内周側とフィルタ本体1外周間のリング状間隙に)別の封止用リング5を設けるか外周に充填剤を注入することによってフィルタ本体1を保護用カラー3に気密に取り付けることができる。
【0027】
保護用カラー3”のフィルタ本体の包囲壁3.1”は第2のアングル部3.3”を超えて軸方向背側に延在させて、該延在部をカップ(筒)型ハウジング部材20におけるフランジ21のフランジ面22を支持する支持部3.4として機能させている。保護用カラー3”とカップ(筒)型ハウジング部材20を連結する時の押圧力がかかるのは硬質樹脂製ハウジング間のフランジ面22のみである。また、第2のアングル部3.3”に固定して取り付けられた封止用カラー4”はプリテンション(引張応力)がかからないので柔軟な材質でもよい。
【0028】
(フィルタ本体前端面より前方に向けて延在しながら外周側に拡径する方向に湾曲させた)把持部3.5”をフィルタ本体前端より突出させて設けることによりハウジングの連結を解除した後にカップ(筒)型ハウジング部材20から小型フィルタエレメント10”を簡単に取り外すことが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向両端面(2)の間を軸方向に流体が流れるように形成した巻フィルタで構成されるフィルタ本体(1)を備えた損傷防止機能付き小型フィルタエレメント(10、10’、10”)において、
前記フィルタ本体(1)の少なくとも一の軸端面(2)にはフィルタ本体の外周を包囲して該軸端面(2)よりも軸方向に突出する保護用カラー(3、3’、3”)を設けたことを特徴とする損傷防止機能付き小型フィルタエレメント(10、10’、10”)。
【請求項2】
前記フィルタ本体(1)の外周をフランジ状に拡径して包囲する封止用カラー(リング)(4、4’、4”)を少なくとも1つ備えることを特徴とする請求項1記載の小型フィルタエレメント(10、10’、10”)。
【請求項3】
前記封止用カラー(リング)(4、4’、4”)と保護用カラー(3’)を同一のエラストマー材で製造することを特徴とする請求項2に記載の小型フィルタエレメント(10’)。
【請求項4】
前記保護用カラー(3’)と前記封止用カラー(リング)(4’)が一体構造を為すことを特徴とする請求項2又は3に記載の小型フィルタエレメント(10’)。
【請求項5】
前記保護用カラー(3”)は硬質材でできたスリーブとして形成され、該保護用カラーからは突縁部(3.3”)が小型フィルタエレメントの半径方向(フィルタ本体軸線と直交する外方)に突出しており、封止用カラー(リング)(4”)の内周側に設けた収納溝(4.2”)に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載の小型フィルタエレメント(10”)。
【請求項6】
前記保護用カラー(3”)は断面図において2つの部位に中心側に向く第1のアングル部と外周方向に向く第2のアングル部を備えた構成であり、第1のアングル部(3.3”)は封止用カラー(リング)(4”)を取り付けるための突縁部(web)として形成され、他方のアングル部(3.2”)は前記フィルタ本体(1)の軸端面(2)の前方に形成されることを特徴とする請求項5に記載の小型フィルタエレメント(10”)。
【請求項7】
前記小型フィルタエレメントは少なくとも1層の平面フィルタ紙と1層の波形フィルタ紙の軸端部に接着剤を付けてフィルタ紙間に形成される流路の端部を閉鎖するように構成され、前記保護用カラー(3、3’、3”)の外周包囲部(3.1、3.1’、3.1”)が小型フィルタエレメント内部の軸端面付近の接着剤付着部を跨いでフィルタの軸端面(2)から見てフィルタ本体(1)の長手方向へと延在していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の小型空気フィルタエレメント(10、10’、10”)。
【請求項8】
前記保護用カラーは脆性材料製であるか、又は脆性塗料コーティングされていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の小型空気フィルタエレメント(10、10’、10”)。
【請求項9】
前記保護用カラー(3”)に把持用凸部又は把持用凹部を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の小型空気フィルタエレメント(10”)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−539596(P2009−539596A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514802(P2009−514802)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055898
【国際公開番号】WO2007/144405
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(505229863)マン ウント フンメル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (86)
【Fターム(参考)】