説明

搬送ローラおよびこれを用いたシート状基板の搬送方法

【課題】配線基板用のシート状基板における製品領域に搬送ローラとの接触による傷や異物の付着が発生するのを抑制し、それにより微細配線の配線基板を歩留り高く製造することが可能な搬送ローラおよび搬送方法を提供することである。
【解決手段】周面上に配線基板用のシート状基板30を載置して搬送する円柱体または円筒体11を有する搬送ローラ10であって、円柱体または円筒11は、シート状基板30に強く接触する径大部11aとシート状基板30に弱く接触する径小部11bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板となる製品領域と配線基板とならない非製品領域とを備えた配線基板用のシート状基板を搬送するために用いられる搬送ローラおよび該搬送ローラを用いたシート状基板の搬送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子等の電子部品を搭載するために用いられる小型の配線基板は、配線基板となる複数の製品領域と配線基板とならない非製品領域とを備えた広面積のシート状基板から同時集約的に製造されており、その製造工程においては、露光・現像やエッチング、洗浄等の様々な加工が施される。そして、このような加工においては、このような加工を行なう加工装置内および加工装置間で配線基板用のシート状基板を搬送する必要があり、搬送方法として水平な回転軸を中心に回転する搬送ローラ上にシート状基板を載置して搬送する方法が採用されている。
【0003】
このような搬送に用いられる従来の搬送ローラの例を図5,図6および図7,図8に示す。図5,図6に示す搬送ローラ40は、円柱体または円筒体41を用いた例であり、円柱体または円筒体41の中心に回転軸となる軸棒42が配置されている。そして、軸棒42を中心にして円柱体または円筒体41が回転し、円柱体または円筒体41の周面上に配線基板用のシート状基板30を載置した状態でシート状基板30を搬送する。
【0004】
また、図7,図8に示す搬送ローラ50は、リング体51を用いた例であり、所定間隔で並んで配置された複数のリング体51の中心に回転軸となる軸棒52が配置されている。そして、軸棒52を中心にして各リング体51が回転し、各リング体51の周面上に配線基板用のシート状基板30を載置した状態でシート状基板30を搬送する。
【0005】
なお、図5,図6および図7,図8では簡略のため、それぞれ1本の搬送ローラ40および50を示しているが、実際には複数の搬送ローラ40または50が搬送路上に所定間隔で並んで配置される。
【0006】
一方、搬送ローラ40や50によって搬送される配線基板用のシート状基板30は配線基板となる製品領域30aとシート状基板30の取り扱いを容易とするために設けられた配線基板とならない非製品領域30bとを有している。これらの例では、シート状基板30は、その外周部と幅方向の中央部および長さ方向の中央部に帯状の非製品領域30bを有しており、この非製品領域30bで囲まれるようにして製品領域30aが配置されている。
【0007】
ところで、これらの従来の搬送ローラ40や50においては、円柱体または円筒体41やリング体51の直径が1本の搬送ローラ40や50において一様であり、円柱体または円筒体41やリング体51のシート状基板30と接する面は略均一な接触圧でシート状基板30と接触しながらシート状基板30搬送する。そのため、シート状基板30の製品領域30aと円柱体または円筒体41やリング体51とが強く接触して製品領域30aに傷を付けたり、製品領域30aに異物を擦り付けたりすることがあった。近時は配線基板における配線導体の幅や間隔は例えば20μm以下の極めて狭いものとなってきており、そのため、搬送ローラ40の円柱体または円筒体41や搬送ローラ50のリング体51との接触により引き起こされる僅かな傷や異物の付着によっても配線基板の配線導体に断線や短絡が生じることがあり、このような僅かな傷や異物の付着が配線基板の製造歩留りを落とす原因となっていた。
【特許文献1】特開2000−151076号公報
【特許文献2】特開2001−36217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、配線基板用のシート状基板における製品領域に搬送ローラとの接触による傷や異物の付着が発生するのを抑制し、それにより微細配線の配線基板を歩留り高く製造することが可能な搬送ローラおよび搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の搬送ローラは、周面上に配線基板用のシート状基板を載置して搬送する円柱体または円筒体を有する搬送ローラであって、前記円柱体または円筒体は、前記シート状基板に強く接触する径大部と前記シート状基板に弱く接触する径小部とを有することを特徴とするものである。
また、本発明の搬送ローラは、回転軸となる軸棒と、該軸棒に所定間隔で付設されており、前記軸棒を中心とした周面を有する複数のリング体とから成り、前記周面上に配線基板用のシート状基板を載置して搬送する搬送ローラであって、前記リング体は、前記シート状基板に強く接触する径大リング体と前記シート状基板に弱く接触する径小リング体とを具備することを特徴とするものである。
また、本発明のシート状基板の搬送方法は、上記の搬送ローラ上に配線基板用のシート状基板を載置して搬送することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の搬送ローラによれば、周面上に配線基板用のシート状基板を載置して搬送する円柱体または円筒体が、前記シート状基板に強く接触する径大部と前記シート状基板に弱く接触する径小部とを有することから、径大部をシート状基板において傷や異物の付着が発生しても良い個所に対応させて配置するとともに径小部をシート状基板において傷や異物の付着が発生してはいけない個所に対応させて配置し、その上にシート状基板を載置して搬送することにより、搬送ローラによる傷や異物の付着による影響を小さいものとして微細配線の配線基板を歩留りよく製造することができる。
また、本発明の搬送ローラによれば、周面上に配線基板用のシート状基板を載置して搬送するリング体が、前記シート状基板に強く接触する径大リング体と前記シート状基板に弱く接触する径小リング体とを有することから、径大リング体をシート状基板において傷や異物の付着が発生しても良い個所に対応させて配置するとともに径小リング体をシート状基板において傷や異物の付着が発生してはいけない個所に対応させて配置し、その上にシート状基板を載置して搬送することにより、搬送ローラによる傷や異物の付着による影響を小さいものとして微細配線の配線基板を歩留りよく製造することができる。
また、本発明のシート状基板の搬送方法によれば、上記の搬送ローラ上に配線基板用のシート状基板を載置して搬送することから、搬送ローラによる傷や異物の付着による影響を小さいものとして微細配線の配線基板を歩留りよく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明にかかる搬送ローラおよびこれを用いたシート状基板の搬送方法の実施形態例について、図1〜図4を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明にかかる搬送ローラの一実施形態例を示す斜視図であり、図2は図1に示す搬送ローラの正面図である。図1,図2に示すように、本実施形態例の搬送ローラ10は、ポリエチレンや塩化ビニル、フッ素樹脂等の高分子樹脂材料から成る円柱体または円筒体11の中心に回転軸となるステンレス製の軸棒12が配置されている。そして、軸棒12を中心にして円柱体または円筒体11が回転し、円柱体または円筒体11の周面上に配線基板用のシート状基板30を載置した状態でシート状基板30を搬送する。なお、シート状基板30は、小型の配線基板となる領域が密集して配置された製品領域30aとシート状基板30の取り扱いを容易とするための配線基板とならない非製品領域30bとを有している。非製品領域30bはシート状基板30の外周部と幅方向の中央部および長さ方向の中央部に帯状に形成されており、この非製品領域30bで囲まれるようにして製品領域30aが配置されている。なお、この例では簡略のため、1本の搬送ローラ10のみを示しているが、実際には複数の搬送ローラ10が搬送路上に所定間隔で並んで配置される。また、2本のローラ10を所定間隔をあけて互いに上下に向き合うように配置し、その間にシート状基板30を挟持して搬送する場合もある。
【0013】
円柱体または円筒体11には直径の大きな径大部11aが前記非製品領域30bに対応する位置に複数個所設けられており、それ以外の個所は径大部11aよりも0.2〜4mm程度直径が小さな径小部11bとなっている。径大部11aの幅は1〜10mm程度あり、非製品領域30bの幅以下となっている。そして、円柱体または円筒体11の周面に配線基板用のシート状基板30を載置して搬送すると、シート状基板30における非製品領域30bはシート状基板30の自重により径大部11aの周面に強く接触する。一方、シート状基板30における製品領域30aはその両側の非製品領域30bが径大部11aにより支えられているために、下方に少し撓んだ状態で径小部11bの周面に弱く接触する。したがって、円柱体または円筒体11の周面上にシート状基板30を載置して搬送すると、製品領域30aは径小部11bに弱く接触しているので製品領域30aに搬送ローラ10による傷や異物の付着が発生することを極めて有効に防止することができる。なお、このような円柱体または円筒体11は、径小部11bとなるポリエチレン製や塩化ビニル製の一様な直径の円柱または円筒の周面全面に厚みが0.1〜2mm程度のフッ素樹脂製のコーティング層を被着させるとともに、該コーティング層の径大部11aに対応する部分を残して径小部11bに対応する部分を選択的に除去することにより形成される。
【0014】
次に、本発明にかかる搬送ローラの他の実施形態例について、図3,図4を基に説明する。図3は、本発明にかかる搬送ローラの他の実施形態例を示す斜視図であり、図4は図3に示す搬送ローラの正面図である。図3,図4に示すように、本実施形態例の搬送ローラ20は、ポリエチレンや塩化ビニル、フッ素樹脂等の高分子樹脂材料から成り、所定の間隔で並んで配置された複数のリング体21の中心に回転軸となるステンレス製の軸棒22が配置されている。そして、軸棒22を中心にしてリング体21が回転し、リング体21の周面上に配線基板用のシート状基板30を載置した状態でシート状基板30を搬送する。シート状基板30は、上述した一実施形態例の場合と同様に、小型の配線基板となる領域が密集して配置された製品領域30aとシート状基板30の取り扱いを容易とするための配線基板とならない非製品領域30bとを有している。また、この例においても上述した一実施形態例の場合と同様に簡略のため、1本の搬送ローラ20のみを示しているが、実際には複数の搬送ローラ20が搬送路上に所定間隔で並んで配置される。また、2本のローラ20を所定間隔をあけて互いに上下に向き合うように配置し、その間にシート状基板30を挟持して搬送する場合もある。
【0015】
リング体21の中には直径の大きな径大リング体21aが前記非製品領域30bに対応する位置に複数個設けられており、それ以外の個所には径大リング体21aよりも0.2〜4mm程度直径が小さな径小リング体21bが配置されている。リング体21の幅は1〜10mm程度あり、径大リング体21aの幅は非製品領域30bの幅以下となっている。そして、リング体21の周面に配線基板用のシート状基板30を載置して搬送すると、シート状基板30における非製品領域30bはシート状基板30の自重により径大リング体21aの周面に強く接触する。一方、シート状基板30における製品領域30aはその両側の非製品領域30bが径大リング体21aにより支えられているために下方に少し撓んだ状態で径小リング体21bの周面に弱く接触する。したがって、リング体21の周面上にシート状基板30を載置して搬送すると、製品領域30aは径小リング体21bに弱く接触しているので製品領域30aに搬送ローラ20による傷や異物の付着が発生することを極めて有効に防止することができる。
【0016】
かくして、本発明の搬送ローラおよびこれを用いたシート状基板の搬送方法によれば、配線導体の幅や間隔が例えば20μm以下の微細配線の配線基板を歩留りよく製造することが可能となる。なお、本発明は上述した一実施形態例および他の実施形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能であり、例えば上述した一実施形態例における径大部11aの周面をポリエチレンや硬質塩化ビニル、フッ素樹脂等の硬質部材で形成するとともに径小部11bの周面をスポンジやゴム等の軟質部材で形成したり、上述した他の実施形態例における径大リング体21aの周面をポリエチレンや硬質塩化ビニル、フッ素樹脂等の硬質部材で形成するとともに径小リング体21bの周面をスポンジやゴム等の軟質部材で形成したりしても良い。この場合、製品領域30aに接触する径小部11bや径小リング21bの周面が軟質部材から成ることから、製品領域30aに傷等を付けることを更に良好に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】は、本発明の一実施形態例に係る搬送ローラおよびこれを用いたシート状基板の搬送方法を説明するための斜視図である。
【図2】は、図1に示す搬送ローラおよびこれに載置されたシート状基板の正面図である。
【図3】は、本発明の他の実施形態例に係る搬送ローラおよびこれを用いたシート状基板の搬送方法を説明するための斜視図である。
【図4】は、図3に示す搬送ローラおよびこれに載置されたシート状基板の正面図である。
【図5】は、従来の搬送ローラの一例およびこれを用いたシート状基板の搬送方法を説明するための斜視図である。
【図6】は、図5に示す搬送ローラおよびこれに載置されたシート状基板の正面図である。
【図7】は、従来の搬送ローラの他の例およびこれを用いたシート状基板の搬送方法を説明するための斜視図である。
【図8】は、図7に示す搬送ローラおよびこれに載置されたシート状基板の正面図である。
【符号の説明】
【0018】
10,20:搬送ローラ
11 :円柱体または円筒体
11a :径大部
11b :径小
21 :リング体
21a :径大リング体
21b :径小リング体
22 :軸棒
30 :シート状基板
30a :製品領域
30b :非製品領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面上に配線基板用のシート状基板を載置して搬送する円柱体または円筒体を有する搬送ローラであって、前記円柱体または円筒体は、前記シート状基板に強く接触する径大部と前記シート状基板に弱く接触する径小部とを有することを特徴とする搬送ローラ。
【請求項2】
前記シート状基板に、配線基板となる製品領域と配線基板とならない非製品領域とが設けられており、前記径大部が前記非製品領域に接触し、前記径小部が前記製品領域に接触することを特徴とする請求項1記載の搬送ローラ。
【請求項3】
前記非製品領域が前記シート状基板の両端部および中央部を通るように形成されており、前記径大部が前記両端部および前記中央部に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項2記載の搬送ローラ。
【請求項4】
前記径大部の周面が硬質部材から成り、前記径小部の周面が軟質部材から成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の搬送ローラ。
【請求項5】
回転軸となる軸棒と、該軸棒に所定間隔で付設されており、前記軸棒を中心とした周面を有する複数のリング体とから成り、前記周面上に配線基板用のシート状基板を載置して搬送する搬送ローラであって、前記リング体は、前記シート状基板に強く接触する径大リング体と前記シート状基板に弱く接触する径小リング体とを具備することを特徴とする搬送ローラ。
【請求項6】
前記シート状基板に、配線基板となる製品領域と配線基板とならない非製品領域とが設けられており、前記径大リング体が前記非製品領域に接触し、前記径小リング体が前記製品領域に接触することを特徴とする請求項5記載の搬送ローラ。
【請求項7】
前記非製品領域が前記シート状基板の両端部および中央部を通るように形成されており、前記径大リング体が前記両端部および前記中央部に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項6記載の搬送ローラ。
【請求項8】
前記径大リング体の周面が硬質部材から成り、前記径小リング体の周面が軟質部材から成ることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の搬送ローラ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の搬送ローラ上に配線基板用のシート状基板を載置して搬送することを特徴とするシート状基板の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−83596(P2010−83596A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251291(P2008−251291)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】