説明

搬送ローラー、搬送ローラーの製造方法及び印刷装置

【課題】搬送精度の低下を抑制すること。
【解決手段】搬送媒体を搬送する搬送ローラーであって、金属板の対向する一対の端部が近接するあるいは当接するように円筒状に形成され、前記一対の端部による繋ぎ目を有するローラー本体と、前記ローラー本体の円筒面に形成され、前記搬送媒体に当接される複数の突起部と、複数の前記突起部に近接して設けられ、前記ローラー本体の内外を連通する開口部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラー、搬送ローラーの製造方法及び印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば紙などのシート状の搬送媒体上に情報を印刷する印刷装置が用いられており、この印刷装置には搬送媒体を搬送する搬送装置が設けられている。例えば印刷が行われた直後の搬送媒体は、印刷に用いられるインクなどが完全に乾いていないことがある。このような場合において、未乾燥状態のインクが極力付着しないように、例えば搬送媒体に点接触しつつ当該搬送媒体を搬出する搬送ローラー(スターホイール)などが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−129911号公報
【特許文献2】特開2006−182482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成の搬送ローラーを用いて搬送媒体を搬送する場合、搬送媒体を介して異物(例えば、紙粉など)が搬送ローラーに付着し、搬送精度が低下する場合がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、搬送精度の低下を抑制することができる搬送ローラー、搬送ローラーの製造方法及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る搬送ローラーは、搬送媒体を搬送する搬送ローラーであって、金属板の対向する一対の端部が近接するあるいは当接するように円筒状に形成され、前記一対の端部による繋ぎ目を有するローラー本体と、前記ローラー本体の円筒面に形成され、前記搬送媒体に当接される複数の突起部と、複数の前記突起部に近接して設けられ、前記ローラー本体の内外を連通する開口部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、搬送媒体を介した異物が開口部からローラー本体の内部に収容されるため、当該搬送媒体を介した異物が搬送ローラーに付着するのを防ぐことができる。これにより、搬送精度の低下を抑制することができる搬送ローラーを得ることができる。
【0008】
上記の搬送ローラーは、複数の前記突起部は、前記円筒面の接平面に対して垂直な方向に突出するように形成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、ローラー本体の耐久性が向上すると共に、当該複数の突起部によって搬送媒体を効率的に搬送することができる。
【0009】
上記の搬送ローラーは、複数の前記突起部は、前記周方向に沿って一列に配置されており、前記ローラー本体は、中心軸方向に前記突起部の列を複数有することを特徴とする。
このような構成によれば、突起部の列が複数設けられているため、搬送媒体に加えられる突起部からの圧力が分散されることになる。これにより、被記録媒体に係る負担を低減することができる。
【0010】
上記の搬送ローラーは、前記突起部は、前記ローラー本体に一部が接続されるように切り込まれ前記円筒面上に向けて曲げられた切片部を有することを特徴とする。
このような構成によれば、ローラー本体に切片部を形成することにより、突起部を容易に形成することができる。
【0011】
上記の搬送ローラーは、前記開口部は、前記切片部による前記ローラー本体の切断面と、前記切片部及び前記ローラー本体の接続部分とで形成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、開口部が切片部によるローラー本体の切断面と、切片部及びローラー本体の接続部分とで形成されているので、突起部と開口部とを容易に形成することができる。
【0012】
上記の搬送ローラーは、前記ローラー本体は、前記搬送媒体の搬送方向に直交する方向において当該搬送媒体のほぼ全域に跨るように一体的に形成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、ローラー本体が搬送媒体の搬送方向に直交する方向において当該搬送媒体のほぼ全域に跨るように一体的に形成されているため、搬送媒体の移動に伴ってローラー本体が一体的に回転することとなる。これにより、搬送媒体の搬送方向に直交する方向における搬送力にバラつきが生じるのを回避できる。また、ローラー本体が一体的に形成されているため、搬送媒体の熱を効率的に逃がすことができる。
【0013】
上記の搬送ローラーは、複数の前記突起部のうち突出方向の先端部は、前記搬送媒体の被記録面に点接触するように形成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、複数の突起部のうち突出方向の先端部が搬送媒体の被記録面に点接触するように形成されているため、被記録面の記録状態を保持しつつ搬送媒体を搬送することができる。
【0014】
上記の搬送ローラーは、前記ローラー本体は、導電性を有する材料を用いて形成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、ローラー本体が導電性を有する材料を用いて形成されているため、搬送媒体に帯電する電荷を除去することができる。
【0015】
本発明に係る搬送ローラーの製造方法は、搬送媒体を搬送する搬送ローラーの製造方法であって、金属板の対向する一対の端辺が互いに近接する、あるいは当接するように前記金属板を曲げてローラー本体を形成する曲げ加工工程と、前記金属板にパンチを押圧し、前記ローラー本体の円筒面の周方向に沿った複数の突起部を形成すると共に、前記突起部に近接する部分に前記金属板の表裏を連通する開口部を形成するパンチ加工工程とを含むことを特徴とする。
【0016】
このような構成によれば、金属板にパンチを押圧することにより、突起部及び開口部を一工程で形成することができる。これにより、搬送精度の低下を抑制することができる搬送ローラーを簡単な工程で効率的に製造することができる。
【0017】
上記の搬送ローラーの製造方法は、前記パンチ加工工程は、前記曲げ加工工程に先立って、前記金属板のうち前記ローラー本体の外周面となる面に対して前記突起部を形成することを含むことを特徴とする。
このような構成によれば、パンチ加工工程において、曲げ加工工程に先立ち、金属板のうちローラー本体の外周面となる面に対して突起部を形成することとしたので、効率的に突起部を形成することができる。
【0018】
上記の搬送ローラーの製造方法は、前記パンチ加工工程は、前記金属板のうち前記突起部を形成する所定領域の一部が前記金属板に接続されるように前記金属板を切り込んで切片部を形成すると共に、前記切片部が前記円筒面の外周側に突出するように前記切片部を曲げることで、前記突起部及び前記開口部を形成することを特徴とする。
このような構成によれば、パンチ加工工程において、金属板に切り込みを入れて切片部を形成し、当該切片部を円筒面の外側に曲げることで突起部及び開口部を形成することとしたので、突起部及び開口部を容易に形成することができる。
【0019】
本発明に係る印刷装置は、搬送媒体に記録を行う記録部と、前記搬送媒体を搬送する搬送部とを備え、前記搬送部は、本発明の搬送ローラーを有することを特徴とする。
このような構成によれば、搬送部の搬送特性の高い印刷装置を得ることができる。
【0020】
上記の印刷装置は、前記搬送部は、前記記録部に前記被記録媒体を搬入する搬入部と、
記録が行われた前記搬送媒体を搬出する搬出部とを有し、本発明の前記搬送ローラーは、前記搬出部に設けられていることを特徴とする。
このような構成によれば、搬出部の搬送特性の高い印刷装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンターの側断面図。
【図2】(a)搬送ユニット部分の平面図、(b)駆動系の側面図。
【図3】(a)(b)搬出ギザローラーの概略構成図。
【図4】(a)〜(c)本実施形態に係る搬出ローラーの製造装置の概略構成図。
【図5】本実施形態に係る抜き工程の工程断面図。
【図6】同、鍛造工程の工程断面図。
【図7】本実施形態に係る鍛造工程後の金属板の平面図。
【図8】(a)〜(c)本実施形態に係る曲げ工程の工程図。
【図9】(a)〜(c)本実施形態に係る曲げ工程の工程図。
【図10】(a)ローラー本体の斜視図、(b)繋ぎ目の側断面図。
【図11】(a)〜(c)ローラー本体の構成を示す概略図。
【図12】(a)、(c)繋ぎ目を示す図、(b)金属板の平面図。
【図13】(a)ローラー本体の繋ぎ目を示す図、(b)金属板の平面図。
【図14】(a)ローラー本体の繋ぎ目を示す図、(b)金属板の平面図。
【図15】(a)〜(c)繋ぎ目の形状を説明するための図。
【図16】(a)繋ぎ目の形状説明図、(b)作用説明図。
【図17】繋ぎ目の形状を説明するための図。
【図18】(a)〜(c)繋ぎ目の形状を説明するための図。
【図19】(a)搬出ギザローラーの変形例を示す図、(b)パンチの構成図。
【図20】(a)〜(c)搬出ローラーの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの側断面図である。
図2(a)はインクジェットプリンターの搬送ユニットを示す平面図、図2(b)は搬送ユニットの駆動系を示す側面図である。
図1に示すように、インクジェットプリンター(印刷装置)1は、プリンター本体3と、プリンター本体3の後側上部に設けられた給紙部5と、プリンター本体3の前側に設けられた排紙部7と、を備えている。
【0023】
給紙部5には給紙トレイ11が設けられており、給紙トレイ11には複数枚の搬送媒体Pが積載されるようになっている。ここで、搬送媒体Pとしては、普通紙、コート紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)用シート、光沢紙、光沢フィルム等が用いられる。以下、搬送媒体Pの搬送経路において、給紙トレイ11側を上流側、排紙部7側を下流側という。給紙トレイ11の下流側には、給紙ローラー13が設けられている。
【0024】
給紙ローラー13は、対向する分離パッド(図示せず)との間で給紙トレイ11の最上部に位置する搬送媒体Pを挟圧し、下流側へ送り出すように構成されている。給紙ローラー13の下流側には、搬入ローラー機構19が設けられている。
【0025】
搬入ローラー機構19は、下側に配置された搬入ローラー15と、上側に配置された従動ローラー17とを備えている。搬入ローラー15には、不図示の高摩擦層が形成されている。高摩擦層は、例えば搬入ローラー15の両端部を除く中央部に選択的に形成されている。高摩擦層の表面には、無機粒子や樹脂粒子などの鋭く尖った部分が露出した状態で固定され、高い摩擦力を発揮するようになっている。
【0026】
搬入ローラー15は、高摩擦層と従動ローラー17との間に搬送媒体Pを挟圧し、図2に示す駆動部30により回転駆動するように設けられている。これにより、搬入ローラー15は、搬送媒体Pを下流側に配置された印字ヘッド(印刷部)21へ、搬送印刷処理に伴う精密で正確な搬送(紙送り)動作により搬送することができるようになっている。
【0027】
印字ヘッド21はキャリッジ23に保持されており、キャリッジ23は給紙方向(搬送媒体Pの搬送方向)と直交する方向に往復移動するよう構成されている。印字ヘッド21による印字処理(印刷処理)は、制御部CONTによって制御されるようになっている。印字ヘッド21と対向する位置には、プラテン24が配設されている。プラテン24は、キャリッジ23の移動方向に沿って間隔をあけて配置された、複数のダイヤモンドリブ25によって構成されている。
【0028】
ダイヤモンドリブ25は、印字ヘッド21によって搬送媒体Pに印刷を行う際に搬送媒体Pを下側から支持するものであり、頂面が支持面として機能するようになっている。ダイヤモンドリブ25と印字ヘッド21との距離は、搬送媒体Pの厚さに応じて調節可能になっている。
これにより、搬送媒体Pはダイヤモンドリブ25の頂面上を滑らかに通過することが可能となっている。
【0029】
ダイヤモンドリブ25及び印字ヘッド21の下流側には、排紙ローラー機構29が設けられている。排紙ローラー機構29は、下側に配置された搬出ローラー27と上側に配置された搬出ギザローラー(搬送ローラー)28とを備え、搬出ローラー27の回転駆動によって搬送媒体Pを引き出し、排出するようになっている。
【0030】
ここで、搬入ローラー機構19及び排紙ローラー機構29の駆動部30及び搬入ローラー15、搬出ローラー27の駆動速度の関係について説明する。プリンター本体3には、図2(a)及び図2(b)に示すように、制御部CONTの制御下で駆動される搬送モーター32が設けられている。この搬送モーター32の駆動軸にはピニオン33が設けられており、ピニオン33には搬送駆動ギア35が歯合しており、搬送駆動ギア35には搬入ローラー15が内挿されて連結されている。このような構成のもとに搬送モーター32等は、搬入ローラー15を回転駆動する駆動部30となっている。
【0031】
また、搬入ローラー15には、搬送駆動ギア35と同軸にインナーギア39が設けられており、このインナーギア39には中間ギア41が歯合しており、中間ギア41には排紙駆動ギア43が歯合している。排紙駆動ギア43の回転軸は、図2(a)に示すように搬出ローラー27の軸体45となっている。このような構成のもとに、搬入ローラー機構19の搬入ローラー15と排紙ローラー機構29の搬出ローラー27とは、同一の駆動源である搬送モーター32からの回転駆動力を受け、駆動されるようになっている。
【0032】
なお、搬出ローラー27の回転速度は、各ギアのギア比を調整することにより、搬入ローラー15の回転速度より速くなるように設定されている。したがって、排紙ローラー機構29の排紙速度は、搬入ローラー機構19の搬送速度より増速率だけ速くなっている。
【0033】
また、搬入ローラー機構19による搬送媒体Pの挟持力(押圧力)は、排紙ローラー機構29による挟持力(押圧力)よりも大きく設定されている。したがって、搬入ローラー機構19と排紙ローラー機構29とが共に搬送媒体Pを挟持しているとき、その用紙搬送速度は、排紙ローラー機構29の排紙速度とは関係なく、搬入ローラー機構19の搬送速度で規定されるようになっている。
【0034】
次に、搬出ギザローラー28について説明する。
図3(a)は、搬出ギザローラー28の一部の構成を示す斜視図である。
図3(a)に示すように、搬出ギザローラー28は、中空円筒状のローラー本体16と、ローラー本体16の表面の長手方向(軸方向)の一部に形成された突起部PRと、当該突起部PRに近接して設けられた開口部OPとを有している。
【0035】
ローラー本体16は、例えば亜鉛メッキ鋼板やステンレス鋼板等の金属板が巻回された鋼板コイルを母材として形成されている。このようにローラー本体16は、導電性を有する金属材料を用いて形成されている。このため、ローラー本体16が搬送媒体Pに接触する際には搬送媒体Pに帯電する電荷を除去することができるようになっている。
【0036】
ローラー本体16は、コイルを巻き戻した金属板の一対の端面が対向するように曲げ加工され、コイルの内周面側であった面が内周面となる円筒状に形成された円筒軸である。すなわち、ローラー本体16を形成する金属板は、コイルによる巻きぐせが円筒の内周面側に反るように残った状態で円筒状に形成されている。金属板の厚さは、例えば0.025〜0.2mm程度に形成されている。
【0037】
また、ローラー本体16は、曲げ加工されて突き合わされた金属板の一対の端面61a,61b間に形成された繋ぎ目80を有している。なお、本実施形態のローラー本体16は、周方向(曲げ方向)とコイルの巻回方向(金属板の圧延方向)とが同一となっており、繋ぎ目80はローラー本体16の軸方向と略平行に形成されている。
【0038】
突起部PRは、ローラー本体16の周方向(図中破線で示す方向)に例えば1列に設けられており、当該突起部PRの列がローラー本体16の中心軸16cの方向(中心軸方向)に例えば複数列設けられている。各突起部PRは、ローラー本体16の外周面(円筒面)16aの接平面Fに対して垂直な方向に突出するように形成されている。ローラー本体16の中心軸方向に見ると、複数の突起部PRが各列同士の間で重なるように配置されている。したがって、各列の突起部PRがローラー本体16の周方向においてほぼ等しい角度位置に配置されている。
【0039】
当該突起部PRの列は、例えば図2(a)に示すように、ローラー本体16の中心軸方向において、搬送媒体Pの通過領域のほぼ全面に対応するように配置されている。この構成では、搬送媒体Pが各列の突起部PRによって分散して支持されることになるため、搬送時の搬送媒体Pの負担が軽減されることになる。
【0040】
また、ローラー本体16は、例えば図2(a)に示すように、搬送媒体Pの搬送方向に直交する方向において当該搬送媒体Pのほぼ全域に跨るように一体的に形成されている。このため、搬送媒体Pの移動に伴ってローラー本体16が一体的に回転することとなる。これにより、搬送媒体Pの搬送方向に直交する方向における搬送力にバラつきが生じるのを回避できるようになっている。また、ローラー本体16が一体的に形成されているため、搬送媒体Pの熱を効率的に逃がすことができるようになっている。
【0041】
図3(b)は、図3(a)におけるA−A断面に沿った構成を示す図である。
図3(b)に示すように、各突起部PRは、ローラー本体16に一部(接続部CN)が接続されるように切り込まれた切片部SLを有している。当該切片部SLは、接続部CNにおいて円筒面上に向けて曲げられている。切片部SLの上端部SLaは、例えば搬送媒体Pのうち印刷処理が行われる面に当接される。
【0042】
上端部SLaの寸法としては、例えば搬送媒体Pに対して点接触可能な寸法に形成されている。本実施形態では、図を判別しやすくするため、上端SLaが周方向に幅を有する構成として図示しているが、これに限られることは無い。例えば上端SLaが角部として形成されていても構わない。
【0043】
開口部OPは、切片部SLによるローラー本体16に形成された切断面SCと、接続部CNとで形成されている。開口部OPは、ローラー本体16の内外を連通するように形成されている。開口部OPは、切片部SLがローラー本体16の外周面16aに曲げられることにより形成されている。
【0044】
次に、搬出ギザローラー28の製造装置について説明する。
図4は、本実施形態の搬出ギザローラー28の製造装置の模式図である。
図4に示すように、製造装置100は、アンコイラー110と、レベラー120と、第1プレス機130と、第2プレス機140とが、一方向に配置された構成となっている。
また、製造装置100は、コイルCから巻き戻された金属板Mを一方向に送る不図示の搬送部と、加工された円筒軸を金属板Mから切り離す不図示の切断部とを備えている。
アンコイラー110は、金属板Mが圧延方向に巻回された円筒状のコイル(鋼板コイル)Cを軸回りに回転可能に支持し、コイルCを巻き戻すためのものである。
【0045】
レベラー120は、上下に交互に配置された複数のワークロール121を備え、これら上下のワークロール121の間に金属板Mを通すことで、金属板Mを平坦化するように構成されている。本実施形態のレベラー120は、金属板MのコイルCによる巻きぐせ(反り)を完全には除去せず、第1プレス機130による加工が可能な程度に巻きぐせを調整するようになっている。
【0046】
第1プレス機130はパンチ131とダイ132とを備え、プレスにより金属板Mを所定の形状に抜き加工するように構成されている。
パンチ131は、上記の突起部PRを形成するパンチユニットPUを有している。パンチユニットPUは、例えば図4(b)及び図4(c)に示すように、切片部SL及び開口部OPの形状に対応する形状に形成されたパンチPNを有している。パンチPNは基部BP上に配置されている。パンチPNの先端面PNaは、平面視で台形状に形成されており、例えば基部BPに対して傾いて形成されている。本実施形態では、先端面PNaのうち台形の上底側(短辺側)の方が、下底側(長辺側)よりも、基部BPに対して突出するように形成されている。
【0047】
第2プレス機140は、一方向に配置された複数のダイ(曲げダイ)141,143及びパンチ(曲げパンチ)142,144、並びに、上型145及び下型146を備え、プレスにより金属板Mを曲げ加工をするように構成されている。そして、不図示の搬送部により金属板Mを一方向に間欠的に送りながら、順次、異なる型により曲げ加工を行うこと(順送)で、金属板Mを徐々に円筒に近づけるように構成されている。
【0048】
次に、搬出ギザローラー28の製造方法について説明する。
まず、例えば板厚が0.025mm〜0.2mm程度の冷間圧延鋼板や電気亜鉛めっき鋼板等の金属板Mが圧延方向に巻回されたコイルCを用意する。そして、製造装置100のアンコイラー110によってコイルCを支持し、コイルCを軸回りに回転させて金属板Mを巻き戻す。コイルCから巻き戻された金属板Mは、コイルCの内周側の面C1が凹面、外周面側の面C2が凸面となる側面視で円弧状の巻きぐせが残った状態になっている。巻き戻された金属板Mは不図示の搬送部によって一方向(圧延方向)に搬送され、レベラー120に到達する。
【0049】
レベラー120に到達した金属板Mは、上下に配置された複数のワークロール121によって平坦化され、巻きぐせが調整される。これにより、金属板Mは第1プレス機130による加工が可能な程度まで平坦化されるが、コイルCの内周側の面C1が凹面となる巻きぐせは、ある程度残されている。レベラー120によって平坦化された金属板Mは、不図示の搬送部によって一方向に搬送され、第1プレス機130に到達する。
【0050】
第1プレス機130に到達した金属板Mは、パンチ131とダイ132を用いたプレスにより抜き加工される。図5は、第1プレス機130によって抜き加工された金属板Mの平面図である。図5に示すように、金属板Mには、抜き加工により、搬送方向(圧延方向)に連続する枠部66と、搬送方向と交差する方向に延びる帯状の平板部60と、枠部66と平板部60とを連結する連結部67とが形成される。本実施形態では、平板部60は略長方形であり、短辺60aが圧延方向に平行で長辺60bが圧延方向と直交するように型抜きされている。金属板Mを不図示の搬送部によって間欠的に搬送しながら繰り返しプレスを行うことで、平板部60と連結部67は金属板Mの搬送方向に等間隔に複数形成される。
【0051】
その後、更にパンチユニットPUによって抜き加工が行われる(パンチ加工工程)。図6(a)に示すように平板部60とパンチPNとを位置合わせし、図6(b)に示すようにパンチPNを平板部60に押圧する。この動作により、パンチPNが平板部60を貫通し、切片部SLが形成される。切片部SLは接続部CNにおいて平板部60に接続された状態となり、切片部SLの先端部SLaは、パンチPNに沿って例えば垂直に立った状態となる。
【0052】
このままパンチPNを平板部60から抜くことにより、突起部PRが形成されることになる。また、パンチPNによって切断された切断面SCと、上記の接続部CNとによって囲まれた部分に開口部OPが形成される。なお、パンチPNをパンチ131と一体的に形成しておき、パンチPNによる抜き加工をパンチ131による抜き加工と同時に行うようにしても構わない。
【0053】
第1プレス機130によって抜き加工された金属板Mは、不図示の搬送部によって搬送され、図4に示す第2プレス機140に到達する。第2プレス機140では、平板部60の曲げ加工工程を行う。したがって、本実施形態では、曲げ加工工程に先立ってパンチ加工工程が行われることになる。
図7(a)〜図7(c)、図8(a)〜図8(c)は、第2プレス機140による曲げ工程(曲げ加工工程)を示す側面図である。
【0054】
第2プレス機140に到達した金属板Mの平板部60は、プレスによって図6に示す短辺60aに平行な方向(圧延方向)に曲げ加工される。すなわち、平板部60の両側の長辺60b,60bに沿う一対の端面を近接させるように曲げ加工する。そして、図7(a)〜図7(c)、図8(a)〜図8(c)に示すように、これら一対の端面を対向させて突き合わせるように円筒状に形成する。
【0055】
具体的には、まず、図7(a)に示すダイ(曲げダイ)141とパンチ(曲げパンチ)142とで金属板Mの平板部60をプレスし、平板部60の両側部62a,62bを円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。なお、図7(a)においては、各部材を分かりやすくするため、平板部60とダイ141とパンチ142との間にそれぞれ間隔を開けてこれらの部材を記しているが、この間隔は実際には存在せず、平板部60とダイ141、パンチ142とはそれぞれの接触部においてほぼ密着している。これは、後述する図7(b)、図7(c)、図8(a)〜図8(c)においても同様である。
【0056】
ここで、パンチ142は、図4に示すコイルCにおいて内周側であった面C1(図7において平板部60の下側の面)に対向するように配置されている。また、ダイ141は、図4に示すコイルCにおいて外周側であった面C2(図7において平板部60の上側の面)に対向するように配置されている。これにより、平板部60の両側部62a,62bはコイルCの内周面であった面C1側に曲げ加工される。
【0057】
次に、金属板Mを一方向に送った後、図7(b)に示す第2のダイ(曲げダイ)143と第2のパンチ(曲げパンチ)144とで、平板部60の短辺方向(曲げ方向)における中央部をプレスする。そして、図4に示すコイルCにおいて内周側であった面C1側に、平板部60を円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。
【0058】
次に、金属板Mを一方向に送った後、図7(c)に示すように、平板部60の内側に芯型147を配置する。そして、図7(c)に示す上型145と下型146とを用いて、図8(a)〜図8(c)に示すように、平板部60の両側部62a,62bの各端面61a,61bを近接させる。
【0059】
ここで、図7(c)および図8(a)〜図8(c)に示す芯型147の外径は、形成する中空円筒状のローラー本体16の内径と等しくしてある。また、図7(c)に示すように、下型146のプレス面146cの半径と上型145のプレス面145aの半径は、それぞれ、研磨しろを考慮したローラー本体16の外径の半径と等しくしてある。また、図8(a)〜図8(c)に示すように下型146は左右一対の割型であり、これら割型146a,146bは、それぞれ独立して昇降可能に構成されている。
【0060】
すなわち、図7(c)に示す状態から、図8(a)に示すように左側の割型146aを上型145に近接させ、平板部60の一方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。なお、上型145も下型146と同様左右一対の割型とし(割面145b参照)、この図8(a)に示す工程の際に、同じ側の上型を割型146aに近接させてもよい。
【0061】
次いで、図8(b)に示すように、芯型147を少し(一方の側の端面61aと他方の側の端面61bとを近接させることができる程度に)上型145側へ移動させるとともに、他方の側の割型146bを上型145に近接させ、平板部60の他方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。
【0062】
その後、図8(c)に示すように、芯型147および一対の割型146a,146bを共に上型145に近接させ、円筒状のローラー本体(中空パイプ)16を形成する。この状態で、左右両側の端面61a,61bは互いに対向して突き合わされた状態となる。すなわち、この円筒状のローラー本体16にあっては、基材である金属板Mの平板部60の両側の端面61a,61bが互いに近接して、これらの端面61a,61b間に繋ぎ目が形成されている。ここで、図4に示すコイルCの内周側であった面C1はローラー本体16の内周面となり、コイルCの外周側の面であったC2はローラー本体16の外周面となっている。このように、平板部60を芯型147に巻きつけるようにローラー本体16を形成する。
【0063】
図9は、図7(a)〜図7(c)、図8(a)〜図8(c)に示す工程を経て平板部60が段階的に円筒状に形成された金属板Mを示す平面図である。
図6に示すように型抜きされた金属板Mは、図4に示す第2プレス機140に到達し、一方向に間欠的に送られながら、図7(a)〜図7(c)、図8(a)〜図8(c)に示す工程により平板部60がプレスにより順次曲げ加工される(順送プレス)。そのため、図9に示すように、第2プレス機140に到達した平板部60は、金属板Mの搬送方向の前方ほど円筒に近くなっていく。平板部60が円筒状に形成された後は、不図示の切断部により連結部67が切断されて中空円筒状のローラー本体16となる。
【0064】
このようにして、真円度が高く、かつ、振れ量の小さいローラー本体16が得られる。なお、このローラー本体16にあっては、前記の両端面61a、61b間がより狭まることで、図10(a)に示すようにこれら両端面61a、61b間の隙間がより狭くされた繋ぎ目80が形成される。
【0065】
なお、上記プレス加工では、平板部60の両端面61a、61b間の隙間が無くなるように、すなわち、両端面61a、61bが互いに当接するようにするのが好ましい。しかしながら、得られるローラー本体16の真円度や振れ量を良好にしつつ、この隙間を完全に無くすのは困難であり、現状ではある程度の隙間が形成されるようになる。
【0066】
この繋ぎ目80は、前記平板部60の外周面と内周面とが同じ寸法(幅)であることにより、図10(b)に示すように、一対の端面61a、61b間の距離が、ローラー本体16の外周面16a側で相対的に広く、内周面16b側で相対的に狭くなっている。
【0067】
次に、インクジェットプリンター1の動作について、図1、図2を参照して説明する。インクジェットプリンター1は、給紙トレイ11の最上部に位置する搬送媒体Pを給紙ローラー13によって挟圧して下流側へ送り出す。送り出された搬送媒体Pは搬入ローラー機構19に至る。
【0068】
搬入ローラー機構19は、搬送媒体Pを搬入ローラー15と従動ローラー17との間で挟圧し、搬入ローラー15の回転駆動による紙送り動作で印字ヘッド21の下方に向けて定速で搬送する。印字ヘッド21の下方に搬送された搬送媒体Pは、ダイヤモンドリブ25の頂面上を滑らかに通過しつつ、印字ヘッド21によって高品質に印刷される。印字ヘッド21で印刷された搬送媒体Pは、排紙部7の搬出ギザローラー28及び搬出ローラー27によって順次排出される。このとき、搬出ギザローラー28は、搬送媒体Pのうちインクが付着した被記録面Pa(図1参照)に当接されることになる。
【0069】
排紙ローラー機構29の搬送速度は搬入ローラー機構19の搬送速度より速く設定されているため、搬送媒体Pはバックテンションが掛かった状態で搬送される。ただし、搬入ローラー機構19と排紙ローラー機構29とが共に搬送媒体Pを挟持しているときには、その用紙搬送速度は搬入ローラー機構19の搬送速度で規定されている。したがって、このように排紙ローラー機構29と搬入ローラー機構19とによって排紙と搬送とを同時に行う際にも、その用紙の搬送速度は搬入ローラー機構19の搬送速度で規定されている。そのため、搬送ムラのない正確で安定した紙送り(搬送)がなされるようになる。
【0070】
以上のように、本実施形態によれば、ローラー本体16の外周面16aに周方向に沿って形成され搬送媒体Pに当接される複数の突起部PRと、複数の突起部PRの少なくとも1つに近接して設けられローラー本体16の内外を連通する開口部OPとを備えることとしたので、搬送媒体Pを介した異物が開口部OPからローラー本体16の内部に収容されることになる。このため、当該搬送媒体Pを介した異物が搬出ギザローラー28に付着するのを防ぐことができる。これにより、搬送精度の低下を抑制することができる搬出ギザローラー28を得ることができる。
【0071】
また、本実施形態によれば、ローラー本体16を形成する際に、金属板Mの対向する一対の端部61a及び61b同士が近接するあるいは当接するように円筒状に形成する工程を行うと共に、金属板MにパンチPNを押圧し、ローラー本体16の外周面16aの周方向に沿った複数の突起部PRを形成すると共に、突起部PRに近接する部分に金属板Mの表裏を連通する開口部OPを形成するパンチ加工工程とを含むこととしたので、突起部PR及び開口部OPを一工程で形成することができる。これにより、搬送精度の低下を抑制することができる搬出ギザローラー28を簡単な工程で効率的に製造することができる。
【0072】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
また、上記実施形態においては、ローラー本体16は、例えば亜鉛メッキ鋼板やステンレス鋼板等の金属板が巻回された鋼板コイルを母材として形成されている構成としたが、これに限られることは無い。例えば平板状の金属板を母材とし、当該平板金属板から上記平板部60とほぼ同形同寸法の金属板を形成して、当該金属板を加工することでローラー本体16を形成しても構わない。したがって、例えば上記説明あるいは以下の記載において、平板部60を当該金属板に置き換えた場合であっても適用可能である。
【0073】
また、ローラー本体16に形成される繋ぎ目80の形状を、図11(a)に示すような形状にしてもよい。すなわち、繋ぎ目80は、第1端面274と第2端面275とが、ローラー本体271の外周面271a側で互いに接している。第1端面274と第2端面275との間の隙間は、径方向外側から内側に向かうに従い漸次幅広となっている。また、第1端面274及び第2端面275の形状は、折曲部85以外では、ローラー本体271の全長に亘り同一の形状となっている。
【0074】
また、第1端面274と外周面271aとで形成される第1角度α、及び第2端面275と外周面271aとで形成される第2角度βは、いずれも90°より小さく形成されている。
【0075】
繋ぎ目80の第1端面274及び第2端面275は外周面271a側で互いに接しており、接続部276において外周面271a側の平滑度が向上している。そのため、搬出ギザローラー28が回転してもその外周面は搬送媒体Pと安定して接触することができる。このため、搬送媒体Pを高い精度で搬送することができる。
【0076】
繋ぎ目80の形状は、図11(b)に示すように、繋ぎ目80の第1端面274と外周面271aとで形成される第1角度αは、90°より小さく形成され、第2端面275と外周面271aとで形成される第2角度βは、90°以上の大きさで形成してもよい。すなわち、接続部276における第1端面274及び第2端面275が、周方向に関して所定の方向に傾いた形状としてもよい。
【0077】
なお、繋ぎ目80の形状は、以下の工程を経て形成される。すなわち、順送プレス加工における打ち抜き加工によって金属板270を形成した後に、金属板270の第1端面274及び第2端面275に対して、端面調整加工を実施し、第1端面274及び第2端面275の、外周面271aに対する傾きを調整する。
【0078】
図11(c)に示すように、プレス加工によって第1端面274及び第2端面275の外周面271aに対する傾きを調整する。この調整により、第1端面274と外周面271aとで形成される第1角度α、及び第2端面275と外周面271aとで形成される第2角度βは、いずれも90°より小さくなる。
【0079】
したがって、金属板270を曲げ加工して円筒状のローラー本体271を成形したときに、第1端面274と第2端面275とは少なくとも外周面271a側で互いに接することになる。
【0080】
なお、図10(a)に示したように本実施形態に係る搬出ギザローラー28(ローラー本体16)では、その繋ぎ目80を、円筒状の中空パイプからなるローラー本体16の中心軸と平行になるように形成したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば基材となる平板部60の一対の端部間に形成される繋ぎ目を、円筒状パイプ(ローラー本体)の外周面上における、該円筒状パイプの中心軸に平行な直線上において、該直線に対して線分で重なることなく、一つあるいは複数の点でのみ重なるように形成してもよい。
【0081】
具体的には、図12(a)に示すように繋ぎ目81として、ローラー本体16の中心軸16cに平行となることなくこれに交差するように、ローラー本体16の外周面をその周方向に延びつつ、ローラー本体16の一端から他端にかけて延在するように形成してもよい。このように繋ぎ目81を形成するには、基材となる金属板として、細長い矩形状の平板部60でなく、図12(b)に示すように細長い平行四辺形の平板部60aを形成し、符号16dで示す直線が中心軸となるようにプレス加工する。これにより、図12(a)に示したローラー本体16が得られ、繋ぎ目81が中心軸16cに対して非平行となる。
【0082】
なお、図12(a)に示したローラー本体16では、その繋ぎ目81が、ローラー本体16の一端から他端にかけて、その周面を一周未満しか回らないように形成している。これは、平板部60aのプレス加工を容易にするためである。ただし、図12(c)に示すように繋ぎ目82が、ローラー本体16の一端から他端にかけて、その周面を一周以上回るように、すなわち螺旋状に回るように形成してもよい。その場合には、基材となる金属板として、図12(b)に示した細長い平行四辺形の平板部60aにおける、角度θをより鋭角にすればよい。
【0083】
また、図13(a)に示すように繋ぎ目83を、サイン波等の曲線からなる波線状に形成してもよい。このように繋ぎ目83を形成するには、基材となる金属板として、図13(b)に示すように、細長い略矩形状で、その両方の長辺が波線状に形成された平板部60bを用い、符号16dで示す直線が中心軸となるようにプレス加工する。なお、波線状に形成された一対の長辺は、プレス加工によってこれらが近接させられるため、当然ながら互いに対応する箇所間では、一方の長辺が山部となる場合に他方の長辺では谷部となり、逆に、一方の長辺が谷部となる場合に他方の長辺では山部となるように形成する。また、この例では、繋ぎ目83の中心線がローラー本体16の中心軸と平行になるように形成したが、この繋ぎ目83の中心線も、ローラー本体16の中心軸と非平行になるように形成してもよい。その場合に、基材となる金属板として、図12(b)に示したような細長い平行四辺形の金属板で、かつ、その両方の長辺が波線状に形成されたものを用いればよい。
【0084】
また、図14(a)に示すように繋ぎ目84を、鉤状に折れ曲がった波線状に形成してもよい。このように繋ぎ目84を形成するには、基材となる金属板として、図12(b)に示すように、細長い略矩形状で、その両方の長辺が鉤状に折れ曲がった波線状に形成された平板部60cを用い、符号16dで示す直線が中心軸となるようにプレス加工する。
この平板部60cにおいても、波線状に形成された一対の長辺において互いに対応する箇所間では、一方の長辺が山部となる場合に他方の長辺では谷部となり、逆に、一方の長辺が谷部となる場合に他方の長辺では山部となるように形成する。なお、この例でも、繋ぎ目84の中心線がローラー本体16の中心軸と平行になるように形成したが、繋ぎ目83の場合と同様に、ローラー本体16の中心軸と非平行になるように形成してもよい。
【0085】
また、繋ぎ目については、図12〜図14に示した例に限定されることなく、種々の形状を採用することができる。例えば、図13(a)に示した曲線からなる波線と、図14(a)に示した折れ曲がった波線とを組み合わせてもよく、これらに、図12に示したような斜めの線を組み合わせてもよい。
【0086】
このように繋ぎ目81〜84を、円筒状パイプ(ローラー本体16)の中心軸に平行な直線に対して線分で重なることなく、一つあるいは複数の点でのみ重なるように形成すれば、このローラー本体16を有してなる搬出ギザローラー28は、搬出ローラー27と協働して搬送媒体Pを搬送する際、つまり紙送りをする際、搬送媒体Pの搬送速度が一定になり、搬送ムラがより確実に防止されたものとなる。
【0087】
また、円筒状の中空パイプからなる搬出ギザローラー28(ローラー本体16)の繋ぎ目については、前述した例以外にも、例えば図15(a)に示すように、ローラー本体16の中心軸と平行な直線部85aとこれに直交する直線部85bとからなる、矩形波状の折曲部85を有して形成されていてもよい。このような折曲部85を有してなる繋ぎ目にあっても、この繋ぎ目に起因して仮に溝が形成された場合に、この溝が紙送りの際に搬送媒体Pの幅全体に同時に接触することがないため、搬送媒体Pの搬送速度がほぼ一定になり、搬送ムラが防止される。
【0088】
また、この折曲部85については、図15(b)に示すようにローラー本体16の長さ全体に亘って形成されていてもよく、図15(c)に示すように、その中央部を除く両端部に選択的に形成されていてもよい。図15(c)に示したように折曲部85を両端部にのみ形成する場合には、これら折曲部85間はローラー本体16の中心軸と平行な中央直線部86となる。ただし、図示しないものの、折曲部85間の中央直線部を、図12(a)に示したように中心軸16cと非平行となる斜め線に形成してもよい。
【0089】
また、このように折曲部85を両端部にのみ形成し、その間の中央部については中央直線部86とした場合、図12(c)に示した高摩擦層50の形成領域を中央部直線部86に対応させるのが好ましい。
【0090】
繋ぎ目に折曲部85を形成し、したがってこの折曲部85を凹凸による嵌合部にすると、これら折曲部85(嵌合部)では設計通りに嵌合させ、凸部の先端とこれに対応する凹部との間を隙間なく近接させる(突き合わせる)のが難しくなる。したがって、ローラー本体16の全長に亘って折曲部85を形成すると、ローラー本体16に歪みや捩れ等が生じ易くなる。そこで、図15(c)に示したように折曲部85を両端部にのみ形成すれば、このような歪みや捩れ等が生じるのを抑えることができる。また、特に搬送媒体Pに直接接する領域となる高摩擦層50に対応する中央部を、折曲部85とすることなく中央直線部86とすることにより、搬送媒体Pに直接接する領域に歪みや捩れ等が生じるのを確実に防止することができる。
【0091】
また、図15(b)に示したように、折曲部85をローラー本体16の長さ全体に亘って形成した場合、図16(a)に示すようにこの折曲部85からなる繋ぎ目87を、直線部85bからなる複数の交差部87aと、該交差部87aの一方の側の端部間を結ぶ第1直線部87bと、他方の側の端部間を結ぶ第2直線部87cとからなるように形成してもよい。ここで、第1直線部87bおよび第2直線部87cはローラー本体16の中心軸に略平行となるように形成し、交差部87aはこれら第1直線部87bおよび第2直線部87cと直交するように、つまりローラー本体16の中心軸に直交するように形成する。また、第2直線部87cは第1直線部87bより短く形成する。
【0092】
このような構成の繋ぎ目87を形成する場合、特に、第2直線部87cにおいて互いに対向する一対の端部間の距離d3を、第1直線部87bにおいて互いに対向する一対の端部間の距離d4より長く形成するのが好ましい。なお、ここでいう一対の端部間の距離d3、d4は、いずれもローラー本体16における外周面に形成される隙間における端部間の距離とする。
【0093】
このようにすれば、ローラー本体16の、円筒状中空パイプとしての形状や寸法の精度をより高くすることができ、したがって、ローラー本体16の変形等に起因する搬送ムラを防止することができる。すなわち、このようなローラー本体16を形成するための基材となる金属板では、第2直線部87cを構成する一方の端部は、隣り合う一対の交差部87a、87aとこれらの端部間を結ぶ第2直線部87cとを外形とする凸片87dとなる。したがって、金属板をプレス加工してこの凸片87dを対向する端部に近接させようとした際、図16(b)中に二点鎖線で示すように、この凸片87dの先端側が円周面状に十分に曲げられずに、対向する端部に対して寸法t1分浮いた状態になり、結果としてこの第2直線部87cおいて段差を形成してしまう。すると、この段差に起因して、得られるローラー本体16には変形等が生じ易くなり、形状や寸法について良好な精度が得られにくくなってしまう。
【0094】
そこで、この第2直線部87cにおける端部間の距離d3を、この第2直線部87cより長く形成されている第1直線部87bにおける端部間の距離d4よりも長くすることにより、図16(b)中に実線で示すように、凸片87dの先端側が浮く分の寸法t2が前述のt1に比べて少なく(小さく)なり、これによって第2直線部87cにおいて段差が形成されるのを抑えることができる。
【0095】
なお、図16(b)では、理解を容易にするため寸法t2も大きく記しているが、実際にはこの寸法t2はほとんど零に近くなり、実質的な段差がなくなるようになる。つまり、このように第2直線部87cにおいて段差が形成されるのを抑えることにより、この段差に起因するローラー本体16の変形等を抑え、形状や寸法についての精度を高めることができるのである。
【0096】
また、図15(c)に示したように、折曲部85をローラー本体16の両端部にのみ形成した場合、図17に示すようにこの折曲部85における交差部87a(直線部85b)において互いに対向する一対の端部間の距離d5を、中央直線部86において互いに対向する一対の端部間の距離d6より短く形成するのが好ましい。
【0097】
このようにすれば、距離d5が相対的に短くなって交差部87aにおける端部間の隙間が非常に狭くなるため、ローラー本体16を形成するための基材となる金属板をプレス加工した際、一方の端部と他方の端部との間の長さ方向(軸方向)でのずれが、交差部87aを構成する一対の対向する端部によって規制されるようになる。したがって、得られるローラー本体16(搬出ギザローラー28)に歪みや捩れ等が生じにくくなり、このような歪みや捩れ等に起因する搬送ムラが防止される。
【0098】
なお、図15(c)に示したように、折曲部85をローラー本体16の両端部にのみ形成した場合には、図17に示すようにこの折曲部85の凸片87dを構成する第2直線部87cにおいて互いに対向する一対の端部間の距離d7を、中央直線部86において互いに対向する一対の端部間の距離d6より短く形成してもよく、また、長く形成してもよい。
【0099】
距離d7を距離d6より短く形成すれば、繋ぎ目の全長を見た場合に、対向する一対の端部間にできる隙間がより均一化し易くなり、これによって得られるローラー本体16の形状や寸法についての精度がより高くなる。すなわち、中央直線部86の長さは折曲部85における第2直線部87cの長さより長くなり、したがって中央直線部86における一対の端部間の方が第2直線部87cに比べて精度良く近接させることができる。よって、相対的に端部間の精度をより良好にすることができる中央直線部86の方の一対の端部間の距離を、第2直線部87cに比べて長くしてその隙間を大きくしても、この隙間を十分均一にすることが可能になり、したがって得られるローラー本体16の歪みや捩れ等に起因する搬送ムラが防止される。
【0100】
一方、距離d7を距離d6より長く形成すれば、図16(b)に示したように凸片87dの先端側が浮く分の寸法t2が少なく(小さく)なり、これによって第2直線部87cにおいて段差が形成されるのが抑えられる。よって、このように第2直線部87cにおいて段差が形成されるのが抑えられることにより、この段差に起因するローラー本体16の変形等が抑えられ、形状や寸法についての精度が高めることによって搬送ムラが防止される。
【0101】
なお、円筒状の中空パイプからなる搬出ギザローラー28(ローラー本体16)の繋ぎ目については、前述の例以外にも、例えば図18(a)に示すように折曲部88における交差部88aを、ローラー本体16の中心軸に対して非平行とし、折曲部88における凸片88bの先端側の角度αを鈍角(180°未満)に形成してもよい。このようにすれば、金属板のプレス加工において一対の端面を近接させた際、凸片88bの先端を対応する凹部に嵌合させ易くなり、したがって、ローラー本体16に歪みや捩れ等が生じるのを抑制することができる。
【0102】
また、上記実施形態では、突起部PRの形状として、切片部SLが外周面16a上に向けて曲げられた形状を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。例えば、図19に示すように、突起部PRの形状として、例えばローラー本体16に屈曲部CVが設けられた構成であっても構わない。屈曲部CVは、折れ曲がっている部分が外周面16aに対して突出している。屈曲部CVの一部は、ローラー本体16に対して切り込まれた状態になっている。この切断面SCに囲まれた領域には、開口部OPが形成されている。
【0103】
図19(a)に示すような突起部PR及び開口部OPは、例えば図19(b)に示すパンチユニットPUを用いて形成される。図19(b)に示すパンチユニットPUは、基部BP上にパンチPNが配置されている。パンチPNは、基部BPに対して垂直に形成された第一面PNaと、当該第一面PNaの上端から湾曲して形成された第二面PNbと、第二面PNbの側方に一対設けられた第三面PNcとを有している。当該パンチユニットPUを用いることにより、図19(a)に示す突起部PRを形成することができる。
【0104】
また、例えば図20(a)〜図20(c)に示すように、例えば削り出し部材300を用いて平板部60の面C2を削り出すことにより、突起部PR及び開口部OPを形成することもできる。この削り出し部材300は、例えば尖形に形成された複数の尖状部300aを有している。
【0105】
この削り出し部材300を用いて突起部PR及び開口部OPを形成する場合、例えば図20(b)に示すように、尖状部300aを平板部60の面C2に押し当てつつ、削り出し部材300を一方向に引っ張る。この動作を行うと、図20(c)に示すように、尖状部300aによって平板部60の一部が掻き取られ、面C2上に向けて捲れ上がる。このようにして、突起部PR及び開口部OPを形成することができる。
【0106】
なお、本件は搬送ローラーと突起部を一体に形成したものを例に説明したが、搬送ローラーと突起部を別体に形成し、組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0107】
P…搬送媒体 PR…突起部 OP…開口部 SL…切片部 CN…接続部 SC…切断面 M…金属板 PU…パンチユニット 1…インクジェットプリンター 3…プリンター本体 5…給紙部 7…排紙部 19…搬入ローラー機構 21…印字ヘッド 28…搬出ギザローラー 29…排紙ローラー機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送媒体を搬送する搬送ローラーであって、
金属板の対向する一対の端部が近接するあるいは当接するように円筒状に形成され、前記一対の端部による繋ぎ目を有するローラー本体と、
前記ローラー本体の円筒面に形成され、前記搬送媒体に当接される複数の突起部と、
複数の前記突起部に近接して設けられ、前記ローラー本体の内外を連通する開口部と、
を備える搬送ローラー。
【請求項2】
複数の前記突起部は、前記円筒面の接平面に対して垂直な方向に突出するように形成されている
請求項1に記載の搬送ローラー。
【請求項3】
複数の前記突起部は、前記周方向に沿って一列に配置されており、
前記ローラー本体は、中心軸方向に前記突起部の列を複数有する
請求項1又は請求項2に記載の搬送ローラー。
【請求項4】
前記突起部は、前記ローラー本体に一部が接続されるように切り込まれ前記円筒面上に向けて曲げられた切片部を有する
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の搬送ローラー。
【請求項5】
前記開口部は、前記切片部による前記ローラー本体の切断面と、前記切片部及び前記ローラー本体の接続部分とで形成されている
請求項4に記載の搬送ローラー。
【請求項6】
前記ローラー本体は、前記搬送媒体の搬送方向に直交する方向において当該搬送媒体のほぼ全域に跨るように一体的に形成されている
請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の搬送ローラー。
【請求項7】
複数の前記突起部のうち突出方向の先端部は、前記搬送媒体の被記録面に点接触するように形成されている
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の搬送ローラー。
【請求項8】
前記ローラー本体は、導電性を有する材料を用いて形成されている
請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の搬送ローラー。
【請求項9】
搬送媒体を搬送する搬送ローラーの製造方法であって、
金属板の対向する一対の端辺が互いに近接する、あるいは当接するように前記金属板を曲げてローラー本体を形成する曲げ加工工程と、
前記金属板にパンチを押圧し、前記ローラー本体の円筒面の周方向に沿った複数の突起部を形成すると共に、前記突起部に近接する部分に前記金属板の表裏を連通する開口部を形成するパンチ加工工程と
を含む搬送ローラーの製造方法。
【請求項10】
前記パンチ加工工程は、前記曲げ加工工程に先立って、前記金属板のうち前記ローラー本体の外周面となる面に対して前記突起部を形成することを含む
請求項9に記載の搬送ローラーの製造方法。
【請求項11】
前記パンチ加工工程は、
前記金属板のうち前記突起部を形成する所定領域の一部が前記金属板に接続されるように前記金属板を切り込んで切片部を形成すると共に、前記切片部が前記円筒面の外周側に突出するように前記切片部を曲げることで、前記突起部及び前記開口部を形成する
請求項9又は請求項10に記載の搬送ローラーの製造方法。
【請求項12】
搬送媒体に記録を行う記録部と、
前記搬送媒体を搬送する搬送部と
を備え、
前記搬送部は、請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載の搬送ローラーを有する
印刷装置。
【請求項13】
前記搬送部は、
前記記録部に前記被記録媒体を搬入する搬入部と、
記録が行われた前記搬送媒体を搬出する搬出部と
を有し、
前記搬送ローラーは、前記搬出部に設けられている
請求項12に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−230863(P2011−230863A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100021(P2010−100021)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】