説明

搬送台車の転倒防止装置

【課題】簡単な構造で製造コストも小さく、多様な荷の転倒を防止できる。
【解決手段】搬送台車の移載装置の搬送面CFの両側に、被搬送物の出し入れを案内するガイドレール15をそれぞれ配置し、ガイドレール15の前後位置に、垂直軸に回動自在に支持されて、パレットP左右側面の前後ポケットP1f,P1rに嵌合可能な回動ストッパ23と、これら回動ストッパ23を、ポケットP1f,P1rに嵌合される中立係止位置Cに保持するとともに回動付勢するコイルばねとを有する転倒防止具22R,22Lを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台に、荷を自動的に搬入出する移載装置を具備した無人搬送車や、レールに案内されて走行するレール式、作業者が操向する自走式などの搬送台車の転倒防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送台車の荷台に背が高く転倒の恐れのある荷を積み込む場合、一般的にシリンダ装置などの駆動装置を使用して、スイッチ式や荷を検出して自動的に荷を押さえる自動式や、作業員がスイッチを操作する操作式の転倒防止装置が使用されている。上記駆動式に替えて、特許文献1に示すように、荷の前後の左右の所定位置で、荷の傾動を上方から規制する固定式の転倒防止具が設置されたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−59999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の自動式や操作式では、駆動装置や駆動源が必要で製造コストが嵩むとともにメンテナンスも必要であり、複雑となりやすいという問題があり、また固定式では、一定位置に転倒防止具が設置されているため、荷が限定され、荷姿の変更毎に転倒防止具の位置を変更しなければならず、多様な姿の荷に対応できないという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決して、簡単な構造で製造コストも小さく、多様な荷に対応できる搬送台車の転倒防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、被搬送物を出し入れ可能な移載装置を具備した搬送台車の転倒防止装置であって、
前記移載装置の搬送面の両側に、被搬送物の出し入れを案内するガイド部材をそれぞれ配置し、
前記ガイド部材に、垂直軸心周りに回動自在に支持されて被搬送物の底部側面に形成されたポケットに嵌合可能な回動ストッパと、当該回動ストッパを、搬送面上に突出されて前記ポケットに嵌合可能な中立係止位置に回動付勢する付勢部材とを有する転倒防止具を設けたものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、
転倒防止具は、搬送面の左右両側で前後位置に配置され、
被搬送物は、載荷体上に載置または固定された荷であり、
前記載荷体の左右側面で、前記搬送面の搬送位置に搬入れた時に前記転倒防止具に対向する前後位置に、ポケットがそれぞれ形成されたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、移載装置により被搬送物が搬送面に沿って搬入されると、被搬送物により、中立係止位置に突出する回動ストッパが後方に押されて回動し後退され、被搬送物が搬送位置に達すると、付勢部材により回動ストッパが中立係止位置に回動復帰されてポケットに嵌合される。これにより、搬送中における被搬送物の転倒が確実に防止される。また被搬送物の搬入および搬出時に、被搬送物により、中立係止位置の回動ストッパの遊端側が押されて後退され、搬入および搬出が済むと、回動ストッパが中立係止位置に復帰されるので、被搬送物を検出するセンサや、ストッパを駆動する駆動装置も不要となり、簡単な構造で製造コストも小さくてすむ。また被搬送物は、底部の左右側面に回動ストッパが嵌合可能なポケットを有すればよく、多様な荷に対応することができて汎用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る転倒防止装置の実施例1を示し、(a)は転倒防止具の配置を示す概略斜視図、(b)はパレットの斜視図である。
【図2】転倒防止具の拡大横断面図である。
【図3】図2に示すA−A断面図である。
【図4】搬送台車の平面図である。
【図5】搬送台車の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施例1]
以下、本発明に係る搬送台車の転倒防止装置の実施例1を図面に基づいて説明する。
図4,図5に示すように、この搬送台車は、無線やセンサなどを利用して設定経路に沿って自動的に走行し、被搬送物Mを搬送する自走式搬送車(無人搬送車)で、車体11の底部には、中央右寄りの前後位置に駆動式走行車輪12が設けられ、左側部の前後位置にキャスター型の遊転式操向車輪13が設けられている。
【0011】
車体11上に、被搬送物Mを左右方向に出し入れするローラコンベヤ式の移載装置14が搭載されており、移載装置14のコンベヤローラ14a上に搬送面CFが形成されている。この搬送面CFには、前後両側に、被搬送物Mの搬入出を案内するガイドレール(ガイド部材)15と、被搬送物Mの崩れ止めプレート16がそれぞれ配設されている。17は、搬送面CFの左端部に着脱自在に立設されて被搬送物Mの移載限を設定するストッパガードで、被搬送物Mの出し入れ方向に対応して搬送面CFの奥側に設置され、搬送面CFの右端部に付け替えたり、取り外したりすることもできる。ストッパガードを取り外す場合は、左右両方向で搬入と搬出を行う場合である。
【0012】
被搬送物Mとして、載荷体であるパレットP上に載置または固定された荷Bを図4に示している。パレットPは、図1(b)に示すように、左右両側面にフォークを挿入可能な前後一対の前後ポケットP1f,P1rがそれぞれ形成され、また前後側面にフォークを挿入可能な左右一対のポケット(ポケット)P2がそれぞれ形成されている。ここで、底部の左右側面に前後ポケットP1f,P1rが形成されたトレイや筐体などの載荷体に荷Bを積み込んだ被搬送物Mであればよく、荷Bそのものにポケットが形成され被搬送体Mであってもよい。
【0013】
本発明に係る転倒防止装置21は、左右のガイドレール15の前後位置に、搬送位置に搬入停止されたパレットPの左右ポケットP2に対応して、前後の転倒防止具22R,22Lが左右両側にそれぞれ4組配置されている。これら転倒防止具22R,22Lは、図1〜図3に示すように、ガイドレール15に垂直軸24を介して回動自在に支持された回動ストッパ23と、この回動ストッパ23を中立係止位置Cに保持するとともに回動付勢するコイルばね(付勢部材)25とを具備している。
【0014】
すなわち、ガイドレール15上に立設された垂直軸24に、コイルばね25が外嵌されるとともに、板状の回動ストッパ23が基端穴23aを介して回動自在に支持されている。そして回動ストッパ23の基端部から回動ピン27が垂下されるとともに、ガイドレール15に固定ピン26が立設されており、コイルばね25の両端部、すなわち図3で反時計方向に回動圧縮される一端部25aと、時計方向に回動圧縮される他端部25bとの間に挟まれて回動ピン27と固定ピン26が配置された状態で、回動ストッパ23が中立係止位置Cに保持される。そしてパレットPの搬入時や搬出時に、パレットPにより回動ストッパ23が前方または後方に押されて回動し後退されることがあっても、回動時に回動ピン27によりコイルばね25が回動圧縮されるので、回動ストッパ23に対する押圧が解除されると、コイルばね25の復元力により中立係止位置Cに復帰される。
【0015】
上記構成において、被搬送物Mが他の荷搬入設備や荷搬出設備から被搬送物Mが移載されると、入口側の転倒防止具22R(または22L)は、パレットPの前ポケット前面コーナ部PC1により、中立係止位置Cの回動ストッパ23の遊端部が前方に押されて、回動ピン27によりコイルばね25のばね力に抗して回動ストッパ23が前方に回動され、搬送面CFから後退される。そして、パレットPの前面コーナ部PC1が通過して前ポケットP1fに達すると、コイルばね25の作用により、回動ストッパ23が中立係止位置Cに復帰されて前ポケットP1fに嵌合される。
【0016】
さらにパレットPが移動されると、奥側の転倒防止具22R(または22L)は、パレットPの前ポケット前面コーナ部PC1により、中立係止位置Cの回動ストッパ23が前方に押されて、回動ピン27によりコイルばね25のばね力に抗して前方に回動され、搬送面CFから後退される。同時に入口側の転倒防止具22Rは、前ポケットP1fの後コーナ部PC2により、入口側の転倒防止具22Rの回動ストッパ23が前方に押されて前方に回動され搬送面CFから後退される。
【0017】
そして、パレットPが搬送停止位置に達して、前後のポケットP1f,P1rに転倒防止具22R,22Lが対面位置で停止されると、それぞれコイルばね25の作用により回動ストッパ23が中立係止位置Cに復帰されて、前後ポケットP1f,P1rにそれぞれ係合される。
【0018】
これにより、4個の回動ストッパ23がそれぞれ前後のポケットP1f,P1rに嵌合されることにより、パレットPを介して荷Bの転倒が防止される。
搬出時には、前後ポケットP1f,P1rの後コーナ部で回動ストッパ23が押されて回動後退され、パレットPが移送されて被搬送物Mが搬出される。
【0019】
上記実施例1によれば、コイルばね25により、搬送面CF上の中立係止位置Cに保持されるように回動付勢された回動ストッパ23を設けた簡単な構成で、搬送中における被搬送物の転倒を未然に防止することができ、荷のセンサやストッパの駆動装置も不要で、低コストで容易に設置することができる。
【0020】
なお、実施例1では、移載装置14をローラコンベヤ式としたが、チェーンコンベヤやベルトコンベヤであってもよい。
また、ここで搬送台車を無人搬送車としたが、これにに限るものではなく、レール台車や自走式の搬送台車であってもよい。
【符号の説明】
【0021】
C 中立係止位置
M 被搬送物
P パレット
P2 左右ポケット
B 荷
11 車体
14 移載装置
14a コンベヤローラ
15 ガイドレール
21 転倒防止装置
22R,22L 転倒防止具
23 回動ストッパ
23a 基端穴
24 垂直軸
25 コイルばね(付勢部材)
25a 一端部
25b 他端部
26 固定ピン
27 回動ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を出し入れ可能な移載装置を具備した搬送台車の転倒防止装置であって、
前記移載装置の搬送面の両側に、被搬送物の出し入れを案内するガイド部材をそれぞれ配置し、
前記ガイド部材に、垂直軸心周りに回動自在に支持されて被搬送物の底部側面に形成されたポケットに嵌合可能な回動ストッパと、当該回動ストッパを、搬送面上に突出されて前記ポケットに嵌合可能な中立係止位置に回動付勢する付勢部材とを有する転倒防止具を設けた
ことを特徴とする搬送台車の転倒防止装置。
【請求項2】
転倒防止具は、搬送面の左右両側で前後位置に配置され、
被搬送物は、載荷体上に載置または固定された荷であり、
前記載荷体の左右側面で、前記搬送面の搬送位置に搬入れた時に前記転倒防止具に対向する前後位置に、ポケットがそれぞれ形成された
ことを特徴とする請求項1記載の搬送台車の転倒防止装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−126518(P2012−126518A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279984(P2010−279984)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】