説明

搬送装置、それを備えてなる捺染装置および捺染方法

【課題】作業環境および作業効率を低下させることなく、プリント精度の高い捺染物を得ることのできる搬送装置およびそれを備えてなる捺染装置を提供する。
【解決手段】被記録物を搬送する搬送手段、および、該搬送手段を駆動させる搬送駆動手段を有する搬送装置1であって、該搬送手段が無端ベルト4またはドラム上に樹脂フィルム5を有しており、さらに該樹脂フィルム5上に粘着剤層6を有している搬送装置1である。また、前記搬送装置1を備えてなる捺染装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、それを備えてなる捺染装置および捺染方法に関し、詳細には、粘着性を有する搬送手段を有し、そのメンテナンスが容易な、連続して捺染を行う場合に使用される搬送装置、それを備えてなる捺染装置および捺染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
捺染する際に、布帛を単に搬送ベルト上に置くと、布帛が折れ重なったり、プリント中に布帛が動いてしまったりしてプリント柄がずれてしまう。これを防ぐために、従来、地張り剤と呼ばれる粘着性の樹脂などを搬送ベルトに塗布して、布帛を固定することが行われている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、感圧性の接着樹脂を生地搬送ベルトに塗布して捺染を行うことが記載されている。前記接着樹脂の接着力が低下した場合、接着樹脂層を取り除く必要がある。その方法としては、トルエンなどの溶剤を用いて樹脂を溶解し、削り取る方法が用いられる。しかし、この方法は、トルエンなどの有機溶剤を使わなければならないため、安全性や衛生上の点で問題(作業環境悪化)がある。また、接着樹脂を溶解し、削り取る作業には長時間かかるため、作業効率が悪いという問題があり、さらには、この作業には熟練した技術が必要となるため、接着樹脂をきれいに取り除くことが困難である。その上、このような溶剤を用いると、搬送ベルトが劣化するため伸びが大きくなったり、搬送ベルトにひび割れが生じたりして、搬送性が低下するという問題もある。また、除去に使用される前記溶剤に加えて、粘度調整のためなどにもともと接着樹脂に含まれている溶剤でも搬送ベルトが劣化する。
【0004】
これを解決する方法として、特許文献2には、接着樹脂の代わりに両面接着シートを用いた被捺染物搬送方法が開示されており、金属製無端ベルトに両面接着シートが張り付けられ、該両面接着シートに被捺染物が張り付けられている。この方法においては、前記シート全体の粘着力が低下した場合はもちろん、両面接着シートの両端部が重なっていると、その重なり部分は磨耗が激しく粘着力がなくなりやすいが、この場合においても表面の凹凸がプリント精度に影響するため、粘着力のなくなった部分だけでなく、該シート全体を交換する必要がある。両面接着シートは、特許文献1に記載されているような接着樹脂よりも高価であるため、コストの点で問題がある。また、無端ベルトの場合、両面接着シートの継ぎ目部において隙間ができたり、あるいは、両面接着シートの両端部を重ねると凹凸が生じたりして、シート端部にインク汚れやベルト洗浄水が残ってしまい、プリント精度が低下するという問題もある。さらに、両面接着シートの継ぎ目部から、シート剥れが生じやすい。
【0005】
また、特許文献3には、粘着テープの粘着層を、無端ベルトもしくはローラ表面に転写することで粘着層を設けた粘着性無端ベルトもしくはローラであって、前記粘着テープが基材無し粘着テープであることを特徴とする粘着性無端搬送ベルトもしくはローラが開示されている。やはり、この場合も特許文献2同様に、粘着層の一部でも粘着力が低下すると、粘着層全体を交換しなければならないのでコスト高となり、また、粘着層の端部の隙間あるいは重なりにインク汚れやベルト洗浄水が残ってしまい、プリント精度が低下するという問題がある。また、粘着層が基材を有していないため、剥すときに破れ易く、交換することが困難である。さらには、前記粘着層は、ベルトもしくはローラ接触面との粘着力、および、布帛接触面との粘着力が同じになるため、粘着力の調整(選択)が難しいという問題もある。つまり、ベルトまたはローラからは剥がれ難く、布帛からは剥がれ易くするといった調整が難しい。ベルトまたはローラから剥がれ難くすることができたとしても、今度は、粘着層を交換するときに、さらに剥がれ難くなってしまう。
【0006】
【特許文献1】特開平4−327262号公報
【特許文献2】特開平06−220781号公報
【特許文献3】特開2006−264805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、作業環境および作業効率を低下させることなく、さらには、無端ベルトまたはドラムの劣化を防ぎ、プリント精度の高い捺染物を得ることのできる搬送装置、それを備えてなる捺染装置および捺染方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、被記録物を搬送する搬送手段、および、該搬送手段を駆動させる搬送駆動手段を有する搬送装置であって、該搬送手段が無端ベルトまたはドラム上に粘着剤を介して樹脂フィルムを有しており、さらに該樹脂フィルム上に粘着剤層を有している搬送装置に関する。
【0009】
前記樹脂フィルムを1%伸ばすのに必要な張力が、0.5〜5.0N/mmであることが好ましい。
【0010】
前記樹脂フィルムが、その搬送方向に対して直角にある端部同士が重ならないように搬送手段に接着されていることが好ましい。
【0011】
前記樹脂フィルムが、その搬送方向に対して直角にある端部同士を重ねて搬送手段に接着されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、前記記載の搬送装置を備えてなる捺染装置に関する。
【0013】
さらに、本発明は、樹脂フィルムを有する無端ベルトまたはドラムの少なくとも樹脂フィルム上に粘着剤を付与する工程、該粘着剤上に被記録物を貼着して搬送する工程、および、該被記録物に捺染する工程を含む捺染方法に関する。
【0014】
前記被記録物に捺染する工程に続いて、さらに樹脂フィルム上に粘着剤を付与する工程を含むことが好ましい。
【0015】
さらに、前記樹脂フィルムごと粘着剤を除去する工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の搬送装置は、無端ベルトまたはドラム上に樹脂フィルムを有しているため、粘着剤が直接無端ベルトまたはドラムに接触しない、あるいは接触する面積を最小限に抑えることができ、粘着剤に含まれる溶剤による無端ベルトまたはドラムの劣化を抑制することができる。よって、とくに無端ベルトの劣化による伸びが抑制され、被記録物を精度良く搬送することが可能となり、その結果、プリント精度を向上させることができる。
【0017】
さらに、樹脂フィルムは粘着剤を介して無端ベルトまたはドラムに粘着しているため、容易に剥がすことができる。そのため、粘着剤層を取り替える際には、樹脂フィルムごと粘着剤層を取り除くことができ、作業が非常に簡便である。粘着剤層を剥がす際に溶剤を使用しないため安全であり、無端ベルトまたはドラムの劣化を防ぐこともできる。
【0018】
また、本発明の捺染装置は前記搬送装置を備えてなるので、この捺染装置を用いると、メンテナンス作業の安全性および生産効率が向上する。
【0019】
さらにまた、本発明の捺染方法は、好ましくは樹脂フィルム上に粘着剤を重ねて付与するため、装置を停止させて行う樹脂フィルムの剥離作業といったメンテナンス作業の頻度を低下させることができ、生産効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の搬送装置は、図1に示すように、搬送手段が無端ベルトまたはドラム上に樹脂フィルムを有しており、さらに該樹脂フィルム上に粘着剤層を有していることを特徴とする。
【0021】
本発明で使用される無端ベルトまたはドラムの材質としては、ステンレスおよび鉄などの金属、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アクリル・ニトリル・ブタジエンゴム、ポリアミド、ポリウレタンおよびポリエチレンなどがあげられる。なかでも、耐摩耗性および屈曲性の点で、樹脂フィルム側はポリウレタンが好ましく、引張強度の点で、搬送ロール側はポリエチレンが好ましい。
【0022】
前記無端ベルトは、1%伸ばすのに必要な張力が20N/mm以上であることが好ましく、実質的に伸びないものであることが好ましい。張力が20N/mm未満であると伸び縮みするため、接着した樹脂フィルムが剥れたり、樹脂フィルムとの間に空気が入ったりして、プリント精度が低下する傾向にある。
【0023】
本発明で使用される樹脂フィルムは、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂フィルム等の材質のフィルムが使用できる。この熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エチレン・プロピレンランダム共重合体、ポリスチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂は、1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。なかでも、薄くても強度に優れる点で、ポリエチレンからなるものが好ましい。
【0024】
また、その厚さは、50〜100μmであることが好ましい。厚さが50μmより薄いと、樹脂フィルムを無端ベルトまたはドラムから剥がすときに破れやすくなる傾向にあり、100μmをこえると、フィルムが伸びにくくなるために、搬送を繰り返した場合に剥れやすくなる傾向にある。
【0025】
前記樹脂フィルムは、1%伸ばすのに必要な張力が0.5〜5.0N/mmであることが好ましい。特に好ましくは、0.7〜2.0N/mmである。前記張力が5.0N/mmより大きいと、特に無端ベルトでは曲がる部分で追従できず、無端ベルトとの間に空気が入って剥がれやすくなる傾向にある。0.5N/mmより小さいと、無端ベルトまたはドラムに貼るときや剥がすときに破れやすくなる傾向にある。
【0026】
前記樹脂フィルムの1%伸ばすのに必要な張力が0.5〜5.0N/mmであることにより、無端ベルトまたはドラムへの追従性が向上し、また、無端ベルトまたはドラムと樹脂フィルムとを合わせて1%伸ばすのに必要な張力は、無端ベルトまたはドラム単独の場合と同様に20N/mm以上であるため、送り精度(位置決め精度)が±10μm/100mm程度に向上し、プリント精度が向上する。
【0027】
前記樹脂フィルムは、粘着剤(以下、粘着剤Aと称す)を介して、前記無端ベルトまたはドラムと粘着している。好ましくは、予め粘着剤Aを樹脂フィルムに塗布し、該塗布面を無端ベルトまたはドラムに粘着する。
【0028】
なお、樹脂フィルムは、後述する粘着剤層と無端ベルトまたはドラムとを仲介するものであり、無端ベルトまたはドラムと樹脂フィルムとの間が粘着剤により粘着されているので、樹脂フィルムと無端ベルトまたはドラムとの間の粘着力、粘着剤層と被記録物との間の粘着力をそれぞれ適切なものに調整することが容易である。
【0029】
この樹脂フィルムに塗布される粘着剤Aとしては、天然ゴムもしくは合成ゴムを主成分とするゴム系、アクリル系、シリコン系などがあげられる。なかでも、汚染防止とコストの点で、ゴム系の粘着剤が好ましいが、インクを直接受けるものではないため、汚染をそれほど考慮しなくてもよく、コストの点でアクリル系を使用することが好ましい。ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、スチレン−イソプレン−スチレン・ブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリブテン、ポリイソブチレンなどが好ましい。アクリル系粘着剤としては、脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とから得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体または共重合体および/または上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとその他の官能性モノマーとの共重合体が好ましい。シリコーン系粘着剤としては、ポリジメチルシロキサン等を主成分とするものが好ましい。
【0030】
その塗布量は、20〜100g/mであることが好ましい。20g/mより少ないと、均一に塗布できず十分な粘着力が得られない傾向にあり、100g/mをこえると、厚さにムラがでる傾向にあり、プリント精度に影響を与える場合がある。
【0031】
その塗布厚は、20〜1000μmであることが好ましい。厚さが20μmより薄いと、無端ベルトまたはドラムから剥離しやすい傾向にあり、1000μmをこえると、厚さにムラがでる傾向にあり、プリント精度に影響を与える場合がある。
【0032】
また、前記粘着剤Aは、樹脂フィルムの両面に塗布されていてもよい。これにより、無端ベルトまたはドラムに接着していない側の面の粘着剤を、被記録物の固定に寄与させることができる。
【0033】
本発明で使用される粘着剤層は、前記樹脂フィルム上に粘着剤(以下、粘着剤Bと称す)を塗布することにより形成されている。この粘着剤層は、被記録物を無端ベルトまたはドラム上で固定する役割のものである。
【0034】
前記粘着剤Bとしては、天然ゴムもしくは合成ゴムを主成分とするゴム系、アクリル系、シリコン系などがあげられる。なかでも、汚染防止とコストの点で、ゴム系の粘着剤が好ましい。具体的には、粘着剤Aと同様なものがあげられる。
【0035】
この粘着剤層は、樹脂フィルムと無端ベルトまたはドラムとの粘着性に関係していないため、被記録物との粘着性のみを考慮して自由にその粘着力を調整することができる。
【0036】
その1回の塗布量は、20〜100g/mであることが好ましい。20g/mより少ないと、均一に塗布できず十分な粘着力が得られない傾向にあり、100g/mをこえると、厚さにムラがでる傾向にあり、それによって接着力にもムラが生じて、プリント精度に影響を与える場合がある。
【0037】
その1回の塗布厚は、20〜1000μmであることが好ましい。厚さが20μmより薄いと、被記録物が樹脂フィルムから剥離しやすい傾向にあり、1000μmをこえると、厚さにムラがでる傾向にあり、それによって接着力にもムラが生じて、プリント精度に影響を与える場合がある。また、後述するように、被記録物の搬送を長時間行って粘着剤Bの接着力が低下した場合、粘着剤Bを塗り重ねるが、1回の塗布厚が厚すぎると、塗り重ね可能な回数が少なくなるため、作業効率の点で好ましくない。
【0038】
この粘着剤層は溶剤を含んでいてもよいが、無端ベルトまたはドラムとの間に樹脂フィルムが介されているため、この溶剤により無端ベルトまたはドラムが劣化するのを防ぐことができる。
【0039】
前述したように、前記粘着剤層の粘着力がプリント精度に影響するほど低下した場合は、粘着剤Bを塗り重ねることによって粘着力を回復することができ、経済的、効率的である。さらに、この塗り重ねにより粘着剤層の厚さがプリント精度に影響するほどになった場合には、樹脂フィルムを無端ベルトまたはドラムから剥がすことにより、粘着剤層ごと取り除くことができるため、非常に簡便である。もちろん、トルエンなどの人体に害を及ぼす有機溶剤を使う必要が無くなるため、作業環境が改善され、かつ、無端ベルトまたはドラムの劣化を抑制することができる。さらに、非常に短時間で取替え作業が終了するため生産効率が向上する。
【0040】
本発明に使用される搬送駆動手段としては、たとえば搬送ローラがあげられる。
【0041】
また、本発明の搬送装置には、その他、プラテンローラ、板状のプラテンなど、従来公知の部材を有していてもよい。
【0042】
本発明の搬送装置の一態様を図1に示す。図1において、本発明の搬送装置1は、被記録物を搬送する搬送ローラ2、プラテンローラ3、無端ベルト4、樹脂フィルム5(無端ベルトと樹脂フィルムとの間に介在する粘着剤Aは図示せず)および粘着剤層6を備えている。なお、明示されていないが、樹脂フィルム5は、搬送方向に対して直角にある端部7同士が重ねられている場合を示している。
【0043】
図2(a)に示すように、樹脂フィルム5の端部は、重ねずにその隙間を粘着剤層6で覆うようにしてもよいし、図2(b)に示すように、重ねて粘着剤層6で覆うようにしてもよい。いずれの場合にも、樹脂フィルム端部は粘着剤層6により無端ベルト4に密着され、ベルト駆動中における樹脂フィルム5の剥がれが抑制されるため、作業性が向上する。また、樹脂フィルム5の継ぎ目における凹凸が軽減されるため、プリント精度が向上し、該凹凸部にインク汚れやベルト洗浄水が残り難くなって、被記録物への汚れが軽減される。
【0044】
前記凹凸をより軽減するには、粘着剤層6を形成する粘着剤Bをできるだけ平坦に塗布することが好ましい。そのためには、図3に示すように、たとえば刃先にR=3〜4mmの丸みをもったブレード8を用いて塗布する方法があげられる。なお、ブレード8は、樹脂製のものであれば特に限定されないが、ブレード8に接着した粘着剤Bを取り除きやすいという点で、フッ素樹脂製であることが好ましい。このブレード8を樹脂フィルム5に押し当て、布帛の搬送方向14の上流に粘着剤9を置き、樹脂フィルム5を一定速度で駆動して粘着剤B9を薄く延ばす。駆動速度が早いと厚く塗ることができ、遅いと薄く塗ることができる。
【0045】
樹脂フィルム5および粘着剤層6は、無端ベルト4の全幅に設けられる必要は無いが、プリント精度を低下させないように、少なくとも被記録物の幅と同じ幅に設けられることが好ましい。
【0046】
また、樹脂フィルム5と粘着剤層6とは、前記したようにそれらがともに被記録物の幅以上であれば、同じ幅である必要は無い。図4(a)に示すように、樹脂フィルム5の幅が粘着剤層6よりも広い場合、つまり、粘着剤層6のすべてが樹脂フィルム5上に付与される場合、粘着剤層6を取り替えるときに、樹脂フィルム5の端を摘んで切欠にした部分をきっかけにして、一度に剥がすことができる。よって、カッターなどで無端ベルト4を傷つけることがなく、取替えがスムーズに行われる。また、図4(b)に示すように、樹脂フィルム5の幅が粘着剤層6よりも狭い場合、つまり、粘着剤層6が樹脂フィルム5からはみ出して、無端ベルト4上にも塗布される場合は、無端ベルトの稼働中、とくに洗浄後に樹脂フィルム5が無端ベルトから剥がれてしまうことを抑制することができる。
【0047】
本発明の捺染装置は前記搬送装置を備えてなるものである。捺染機は特に限定されないが、インクジェットプリンタが好ましい。
【0048】
図5に、本発明の捺染装置の一部を模式的に示す。この捺染装置10は、無端ベルト洗浄機13、プリント用ヘッド11およびヘッド駆動装置12を有するインクジェットプリンタ、および、布帛の搬送方向14の上流に樹脂フィルム5に粘着剤B9を塗布するためのブレード8を備えている。
【0049】
本発明の捺染装置は前記搬送装置を備えているので、搬送手段のメンテナンスが容易であり、安全性および生産効率が向上する。
【0050】
本発明に使用される被記録物は、布帛であれば特に限定されない。具体的には、編物、織物および不織布などがあげられる。また、これらを構成する素材としては、金属繊維、ガラス繊維、岩石繊維および鉱サイ繊維等の無機繊維、セルロース系およびたんぱく質系等の再生繊維、セルロース系等の半合成繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンおよびポリフッ化エチレン等の合成繊維、綿、麻、絹および毛等の天然繊維等各種の繊維があげられ、単独もしくは組合せて使用できる。
【0051】
本発明の搬送装置および捺染装置は、樹脂フィルムの継ぎ目を粘着剤層で覆うことができるので、該継ぎ目における粘着力が均一であり、また継ぎ目の段差が軽減されるため、とくに目付けの小さな布帛の捺染に有用である。具体的な布帛の目付けとしては、400g/m以下が好ましく、300g/m以下がより好ましい。一方目付けが40g/mより小さいと、繊維密度が低いため、インクを布帛だけで受け止められず粘着剤層への汚染が顕著となり、搬送装置の洗浄に負荷がかかるため、40g/m以上が好ましい。
【0052】
また、捺染に使用する染料としてはとくに限定されず、分散染料、反応染料、酸性染料、直接染料などがあげられる。
【0053】
本発明の捺染方法は、樹脂フィルムを有する無端ベルトまたはドラムの少なくとも樹脂フィルム上に粘着剤を付与する工程、該粘着剤上に被記録物を貼着して搬送する工程、および、該被記録物に捺染する工程を含んでいる。
【0054】
好ましくは、前記粘着剤を塗布した後、粘着剤が粘着力を有している間は、搬送および捺染工程を続けて行い、粘着剤の粘着力が、プリント精度に影響が出るほど低下したら、すでに付与されている粘着剤の上から再び粘着剤を付与して、粘着力の回復を図る。これにより、粘着剤の粘着力が低下するたびに、粘着剤の剥離作業を行う必要がなく、効率的である。さらに、粘着剤を複数回塗り重ねたことにより粘着剤の厚さが増し、プリント精度に影響が出るようになったら、前記したように樹脂フィルムごと粘着剤を除去することが好ましい。この場合、粘着剤の除去に溶剤を使用しないため作業環境性に優れ、また、一度に粘着層を剥がすことができるので、効率的である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の捺染装置を模式的に示した斜視図である。
【図2】(a)および(b)ともに、本発明に使用される搬送手段の模式断面図である。
【図3】本発明に使用される粘着剤層の形成方法を示した模式断面図である。
【図4】(a)および(b)ともに、本発明に使用される搬送手段の模式図である。
【図5】本発明の捺染装置を模式的に示した斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 搬送装置
2 搬送ローラ
3 プラテンローラ
4 無端ベルト
5 樹脂フィルム
6 粘着剤層
7 搬送方向に対して直角にある樹脂フィルム端部
8 ブレード
9 粘着剤B
10 インクジェット装置
11 プリント用ヘッド
12 ヘッド駆動装置
13 無端ベルト洗浄機
14 布帛搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録物を搬送する搬送手段、および、該搬送手段を駆動させる搬送駆動手段を有する搬送装置であって、該搬送手段が無端ベルトまたはドラム上に粘着剤を介して樹脂フィルムを有しており、さらに該樹脂フィルム上に粘着剤層を有している搬送装置。
【請求項2】
前記樹脂フィルムを1%伸ばすのに必要な張力が、0.5〜5.0N/mmである請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記樹脂フィルムが、その搬送方向に対して直角にある端部同士が重ならないように搬送手段に接着されている請求項1または2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記樹脂フィルムが、その搬送方向に対して直角にある端部同士を重ねて搬送手段に接着されている請求項1または2記載の搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の搬送装置を備えてなる捺染装置。
【請求項6】
樹脂フィルムを有する無端ベルトまたはドラムの少なくとも樹脂フィルム上に粘着剤を付与する工程、該粘着剤上に被記録物を貼着して搬送する工程、および、該被記録物に捺染する工程を含む捺染方法。
【請求項7】
前記被記録物に捺染する工程に続いて、さらに樹脂フィルム上に粘着剤を付与する工程を含む請求項6記載の捺染方法。
【請求項8】
さらに、前記樹脂フィルムごと粘着剤を除去する工程を含む請求項6または7記載の捺染方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−247592(P2008−247592A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93965(P2007−93965)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】