説明

搬送装置および搬送方法

【課題】フロアパネルの敷設作業に際し、作業者にかかる負担を軽減して作業効率を向上するための搬送装置を提供する。
【解決手段】フロアパネル82を吸着する吸着部38と、吸着されたフロアパネル82を水平方向に回動するアーム部30と、このアーム部30を昇降する昇降機構を備えた支柱24と、この支柱24が取付けられた移動台車22とを備えた搬送装置において、前記移動台車22には、作業者が着座する台座部26と、前記アーム部30には、作業者が台座部26に着座した状態でフロアパネル82の吸着・解除を操作する操作パネルとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物を移動させる作業者の移動作業にかかる負担を軽減するための技術である。
【背景技術】
【0002】
例えば、フロアパネル(二重床)の施工では、フロアパネルを支持するフロアパネル支持脚を床に接着固定した後に、両手に持ったフロアパネルを屈み込んでフロアパネル支持脚上に四隅の位置を合わせて敷き並べていた。このフロアパネルの移動作業は、常に屈み込んだ姿勢で行われており、フロアパネルが重量物であることもあって、腰と膝に負担がかかり疲れやすく、長時間作業することが困難であった。
【0003】
このような作業者の負担を軽減するために、特許文献1に開示されるような板状体の吊り上げ台車が開発された。これは、図3に示すような発明であり、車台11上に支柱41を設け、支柱に第1アーム50と第2アーム52からなる荷上げアームを水平回転自在に取付け、先端に取付けた案内プーリ55bに吊り紐56を一端が垂下するように巻掛け、この垂下する吊り紐56の一端に板状体3を吸着して水平に保持することができる吸着台60を接続し、この吸着台60が昇降できるように吊り紐56の他端を一端側の負荷とバランスする引張り力で付勢するバランサ53を介して荷上げアームに接続し、車台11の前後左右にアウトリガー14を引出し・収納可能に設け、このアウトリガー14の先端にキャスタ21を取付けたものである。
【0004】
【特許文献1】特許第2808429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この特許文献1に記載の「吊り上げ台車」には、以下のような欠点があった。
(1)作業現場であるビルの一室等にこの「吊り上げ台車」を搬入する場合、「吊り上げ台車」が大型化しており、且つその総重量が250〜300kgとなるため、エレベータによる運搬時及びビルの一室のドア部からの搬入時に、分解し搬入した後、作業現場にて組み立てをする必要があり、作業が煩雑となる。
(2)床面又はスラブ面に、「吊り上げ台車」を移動するための案内レールを設置し、作業後にはこれを分解・撤去しなければならず、作業が煩雑となる。
(3)「吊り上げ台車」を移動する場合、アウトリガーを収納部から引き出し、アウトリガーの先端に取り付けられたキャスター位置を案内レールの幅に合わせなければならないため、構造が煩雑となる。
(4)フロアパネルを吸着台に吸着させて、これを床面へ施工又は床面から取り外す場合、「吊り上げ台車」をジャッキにより固定させた後、吸着台をフロントパネルの上面に移動させて、これを降下させて吸着させる。この時に吸着台がワイヤー等に吊り下げられているため、安定性が悪く2人以上の作業者が必要となる。
【0006】
そこで、本発明は、これらの課題を解決し、作業者にかかる負担を軽減して作業効率を向上するための技術を提供することを目的とする。
なお、本発明は、フロアパネルの移動のためだけでなく、作業の際に移動を要するその他の被搬送物にも使用できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第一の発明は、被搬送物を吸着する吸着部と、吸着された被搬送物を水平方向に回動するアーム部と、該アーム部を昇降する昇降機構を備えた支柱と、該支柱が取付けられた移動台車とを備えた搬送装置において、前記移動台車には、作業者が着座する台座部と、前記アーム部には、作業者が台座部に着座した状態で被搬送物の吸着・解除を操作する操作パネルとを備えたことを特徴とするものである。
第二の発明は、前記アーム部が、台座部の略周囲に沿って湾曲する湾曲部を備えたことを特徴とするものである。
第三の発明は、前記被搬送物を載置する載置部を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
第四の発明は、被搬送物を吸着し搬送する搬送方法であって、移動台車に設けられた台座部に着座した作業者が、床につけた足により移動する走行工程と、台座部に着座した作業者により、前記移動台車に取付けられた昇降及び回動可能なアーム部に設けられた吸着部を用い被搬送物を吸着する吸着工程と、吸着された被搬送物を昇降及び水平移動させて床面から離間する移動工程と、前記移動台車を移動させて移動先に被搬送物を移動させた後、被搬送物を吸着部から解除する解除工程とを備えたことを特徴とするものである。
第五の発明は、前記アーム部には、作業者が台座部に着座した状態で被搬送物の吸着・解除を操作する操作パネルを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下のような効果を有する。
(1)本発明の搬送装置は、被搬送物を移動させるために必要な最低限の機構からなり、非常にコンパクトで軽量にできている。このため、作業現場への搬入が容易で、また、作業現場での組み立てなどを必要としない。従って、従来より作業負担が軽減される。
(2)床面又はスラブ面に、「吊り上げ台車」を移動するための案内レールなどの設置は不要であり、従来より作業負担が軽減される。
(3)搬送装置の移動には、着座した作業者の足を使用するので、操作がし易く、微妙な操作も可能となる。また、作業者がバランスをとりながら搬送装置を安定化させることができる。従って、従来のように作業中に搬送装置の足回りを固定する必要がなく、作業負担が軽減される。
(4)以上のように、作業者の作業負担が軽減されることで、作業効率が向上し、作業時間の短縮、作業コストの低減、作業の安全性などを図ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、ここでは、本発明の搬送装置をフロアパネルの移動作業に使用する場合を例にして説明する。
図1は、搬送装置の使用状態を示す平面図であり、図2は、その搬送装置をX方向からみた背面図である。
【0011】
図1及び図2に示す搬送装置20の構造は、フロアパネル82を吸着する吸着部38と、吸着されたフロアパネル82を水平方向に回動するアーム部30と、このアーム部30を昇降する昇降機構を備えた支柱24と、この支柱24が取付けられた移動台車22とを備える。そして、移動台車22には、作業者(図示省略)が着座する台座部26と、アーム部30には、作業者が台座部26に着座した状態でフロアパネル82の吸着・解除を操作する操作パネル34とを備える。以下、重要な構成要素について、詳しく説明する。
【0012】
アーム部30は、台座部26の後方にあって2本のバーからなる第1アーム31と、この第1アーム31と関節部35を介して連接され台座部26の右横にある第2アーム36からなっている。
第1アーム31は、移動台車22に取り付けられた支柱24に左端部32を支軸として固定し、関節部35と接続する右端部33を上下方向に昇降可動する。この時、支柱24の横に昇降機構としてエアーシリンダー25を備える。また、第2アーム36は、関節部35を中心に左右方向に水平可動する。これらによって、アーム部30は全体として上下左右方向に自在に可動することになる。また、第2アーム36は関節部35側に台座部26の略周囲に沿って湾曲する湾曲部37を形成し、アーム部30を台座部26に引き寄せた場合、作業者を巻き込むような状態になる。なお、第2アーム36中央付近内側には、鉤形のハンドル39を備える。
【0013】
第2アーム36の先端は、床80に垂下して吸着部38を設けている。吸着部38は、アーム部30内を通したエアホースにつながっている真空ポンプ(コンプレッサー:図示省略)によって真空状態になる。そして、吸着部38は、その真空状態を利用して台車81に積載したフロアパネル82を吸着する。フロアパネル82の吸着・解除の操作は、吸着部38上のアーム部30に設けられた操作パネル34の操作ボタン340,340によって行われる。ここでは、吸着部38を常時真空状態にしており(吸着可能)、操作ボタンを押すことで真空状態を解くようにしている(吸着解除)。操作パネル34を吸着部38上のアーム部30に設けることで、アーム部30の操作をしながら、吸着解除の操作もできるので、作業性が極めて良い。
【0014】
また、アーム部30は、支柱24の横にあるエアーシリンダー25によって浮力が与えられ、吸着部38が吸着したフロアパネル82を浮揚する。このようにアーム部30はフロアパネル82を吸着し浮揚する吊り下げ機能を備えて、フロアパネル82を移動先であるフロアパネル支持脚83,83,83,83へ導く。すなわち、アーム部30に吊り下げ機能があるので、作業者はほとんど労力をかけずに移動先へフロアパネル82を移動させることができ、作業者はフロアパネル82を移動先へ導くだけでよいのである。
【0015】
フロアパネル支持脚83,83,83,83へフロアパネル82を導くと、作業者は操作ボタン340を押して吸着部38の真空状態を止めて吸着を解除する。これによって、一枚のフロアパネル82の移動作業が終了する。
【0016】
そして、作業者(図示省略)は着座しながら床80につけた足で移動台座22を後ろ方向に走行させ、同じ作業を繰り返す。このように、搬送装置20は、足回りがフリーであるため、操作の際に人間(作業者)が機械の態勢を安定化させ、移動をコントロールできるようになった。その結果、機械のバランスや移動のための装置が不要となり、機械を小型化・軽量化できるようになった。
【0017】
また、アーム部30が、台座部26に着座した作業者の横へ位置するように設けられるとともに、台座部26に腰を下ろした作業者を巻き込むような湾曲部37を形成していることで右手で簡単にアーム部30を操作でき、アーム部30のハンドリング性が向上するようになった。その結果、作業者がアーム部30でフロアパネル82を吸着し、移動先に導き、移動先で吸着を解除する一連の作業が極めてスムーズに行えるようになった。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、フロアパネルの移動のためだけでなく、作業の際に移動を要するその他の被搬送物にも幅広く利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】搬送装置の使用状態を示す平面図。
【図2】搬送装置をX方向からみた背面図。
【図3】特許文献1に開示された板状体の吊り上げ台車を示す全体側面図。
【符号の説明】
【0020】
20 搬送装置 22 移動台車 24 支柱 25 エアーシリンダー
26 台座部
30 アーム部 31 第1アーム 32 左端部 33 右端部
34 操作パネル 340 操作ボタン
35 関節部 36 第2アーム 37 湾曲部 38 吸着部
39 ハンドル
80 床 81 台車 82 フロアパネル 83 フロアパネル支持脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を吸着する吸着部と、吸着された被搬送物を水平方向に回動するアーム部と、該アーム部を昇降する昇降機構を備えた支柱と、該支柱が取付けられた移動台車とを備えた搬送装置において、
前記移動台車には、作業者が着座する台座部と、
前記アーム部には、作業者が台座部に着座した状態で被搬送物の吸着・解除を操作する操作パネルとを備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記アーム部が、台座部の略周囲に沿って湾曲する湾曲部を備えたことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記被搬送物を載置する載置部を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の搬送装置。
【請求項4】
被搬送物を吸着し搬送する搬送方法であって、
移動台車に設けられた台座部に着座した作業者が、床につけた足により移動する走行工程と、
台座部に着座した作業者により、前記移動台車に取付けられた昇降及び回動可能なアーム部に設けられた吸着部を用い被搬送物を吸着する吸着工程と、
吸着された被搬送物を昇降及び水平移動させて床面から離間する移動工程と、
前記移動台車を移動させて移動先に被搬送物を移動させた後、被搬送物を吸着部から解除する解除工程とを備えたことを特徴とする搬送方法。
【請求項5】
前記アーム部には、作業者が台座部に着座した状態で被搬送物の吸着・解除を操作する操作パネルを備えたことを特徴とする請求項4記載の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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