説明

搬送装置および貨幣処理機

【課題】物体の搬送における滞留などの異常を検出可能としながらも、異常が誤って検出されることを極力抑えることが容易となる搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送ラインを有し、搬送ラインの上流から下流に向けて物体を搬送する搬送装置において、搬送ライン上の第1位置における、物体の到来を検出する第1検出部と、第1位置よりも下流側の第2位置における、物体の到来を検出する第2検出部と、第1検出部により前記到来が検出された場合、所定期間を示すタイムスロットと、タイムスロットより後となる第1タイミングを設定するとともに、これらと第2検出部により前記到来が検出されるタイミングとの前後関係を判断する制御部と、を備えた搬送装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨幣などの物体を搬送させる搬送装置、ならびに貨幣処理機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、貨幣処理機を含む種々の装置等において、物体を搬送するための搬送装置が広く用いられている。例えば特許文献1に記載の貨幣処理機では、搬送装置が設けられていることにより、入金口に投入された貨幣を収納庫に搬送して収める入金処理や、収納庫から貨幣を取り出して出金口に搬送する出金処理などを実行させることが可能である。
【0003】
ここで搬送装置においては、物体の搬送における滞留(ジャム)や異物の混入等といった異常が発生した場合に搬送の停止処理等を施すため、搬送状況を適切に監視する必要がある。この監視方法としては、例えば特許文献2に記載のように、搬送ラインの上流側と下流側にそれぞれセンサ(フォトセンサ)を設けておき、上流側センサと下流側センサにおける物体の検出結果に基づいてなされる。
【0004】
なお特許文献2に記載の搬送装置によれば、上流側センサにおける遮光時間や搬送速度などに基づいて下流側センサへの予想搬送時間を算出し、この結果を下流側センサに実際に搬送された時間と比較することにより、センサによる滞留誤検知を防止している。
【特許文献1】特開2004−145600号公報
【特許文献2】特許2968598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような搬送装置によれば、紙葉類や、その他の搬送面に対して鉛直方向に厚みが薄いもの(例えば1円硬貨など)を搬送する場合、搬送元からこれらの搬送物を1枚ずつ繰出す際に、重層繰出し(2枚以上重なっての繰出し)の発生する可能性がある。このような重層繰出しが発生した場合、搬送途中で重なりが解消され、上流側センサでは1枚と検出されたにも関わらず、下流側センサでは2枚以上と検出されるおそれがある。
【0006】
また逆に、上流側センサでは正しく2枚と検出されたにも関わらず、例えば搬送物が搬送途中で僅かに動くこと等により搬送物同士が接触してしまい、下流側センサでは搬送物間の隙間を検出できずに、1枚として検出される(以下、この現象を「くっつき」と称する)おそれがある。
【0007】
このような場合、実質的には搬送の滞留や異物混入は生じていないにも関わらず、上流側センサと下流側センサにおける搬送物の検出数が異なっているため、搬送に異常が生じていると判断される事態が生じる。その結果、不必要な休止処置が頻発し、物体の円滑な搬送が阻害されるおそれがある。なお特に紙葉類では、何らかの原因により斜行繰出(搬送方向に対して、搬送方向先端が直交せず斜めになった状態での繰出し)が発生する可能性もあり、この場合には更に誤検出が生じ易くなる。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑み、物体の搬送における滞留などの異常を検出可能としながらも、異常が誤って検出されることを極力抑えることが容易となる搬送装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る搬送装置は、搬送ラインを有し、該搬送ラインの上流から下流に向けて物体を搬送する搬送装置において、前記搬送ライン上の第1位置における、前記物体の到来を検出する第1検出部と;前記第1位置よりも下流側の第2位置における、前記物体の到来を検出する第2検出部と;前記第1検出部により前記到来が検出された場合、所定期間を示すタイムスロットと、所定のタイミングを示す第1タイミングと、を設定するとともに、該タイムスロットまたは第1タイミングと、前記第2検出部により前記到来が検出されるタイミングと、の前後関係を判断する制御部と;を備え、前記タイムスロットは、前記第1検出部により前記到来が検出されてから所定の最速時間が経過したタイミングから、前記第1検出部により前記到来が検出されてから前記最速時間より長い所定の最遅時間が経過したタイミングまで、の期間であり、前記第1タイミングは、該タイムスロットの終りより後の所定のタイミングである構成(第1の構成)とする。
【0010】
本構成によれば、所定のタイムスロットおよび第1タイミングが設定されるとともに、これらと第2検出部により物体の到来が検出されるタイミングとの前後関係が判断される。そのため例えば、タイムスロット内や第1タイミングにて、未だ第2検出部により物体の到来が検出されない場合を搬送の異常としておくことにより、搬送の異常が検出可能となる。
【0011】
また後述する所定の条件判断を設けることにより、「くっつき」の発生による搬送の異常の誤検出を防ぐことが可能となる。そのため本構成によれば、搬送の異常が誤って検出されることを極力抑えることが容易となる。
【0012】
また上記第1の構成において、前記制御部は、第2タイミングと、前記第2検出部により前記到来が検出されるタイミングと、の前後関係をも判断するものであり、該第2タイミングは、前記タイムスロットの始めより前の所定のタイミングである構成(第2の構成)としても良い。
【0013】
本構成によれば、第2検出部により物体の到来が検出されるタイミングが、タイムスロットの始めより前である場合において、搬送状況を更に細かく判断することが可能となる。例えば、第2検出部により物体の到来が検出されるタイミングが第2タイミングより後であれば軽度の異常とし、逆に第1タイミングより前であれば重度の異常であると判断することができる。
【0014】
また上記第1の構成としてより具体的には、前記制御部は、前記タイムスロット内にて前記第2検出部により前記到来が検出された場合には、前記搬送は正常であると判断する一方、前記第1タイミングにて、未だ前記第2検出部により前記到来が検出されていない場合には、前記搬送は異常であると判断する構成(第3の構成)としても良い。
【0015】
また上記第1または第2の構成において、前記最速時間および最遅時間は、前記制御部により設定されるものであり、該制御部は、前記最速時間および最遅時間の設定に関する態様について、前記第1検出部が前記物体を検出した時の前記搬送の速度、および該物体の種類に基づいて、前記最速時間および最遅時間を求めた上で前記設定を行う第1態様と、前記第1検出部が前記物体を検出したタイミングから、予め定められた時間が経過した時として、前記最速時間および最遅時間を設定する第2態様と、の何れかを選択可能である構成(第4の構成)としても良い。
【0016】
本構成によれば、タイムスロットの設定方法を、状況に応じて適切に選択することが容易となる。そのため、搬送状況の判断をより妥当なものとすることが可能となる。
【0017】
また上記第1の構成において、前記第1検出部および第2検出部は、前記搬送方向における前記物体の前端および後端を認識可能であり、前記制御部は、複数の物体が順次搬送された場合、それぞれの物体の搬送に対して前記タイムスロットおよび第1タイミングを設定する構成(第5の構成)としても良い。本構成によれば、順次搬送される2つの物体の各々について、搬送の管理を実行することが可能となる。
【0018】
また上記第5の構成において、前記制御部は、2つの物体が順次搬送された場合であって、さらに上流側物体に対応する前記第1タイミングまでに、前記第2検出部により該2つの物体の各々の前端が検出されなかった場合、前記第2検出部によって物体の後端が検出された時点が、上流側物体に対応する前記タイムスロットの終りより後か否かを判断し、該判断結果に応じて、前記搬送が異常であるか否かを判断する構成(第6の構成)としても良い。
【0019】
更に上記第5の構成において、前記制御部は、2つの物体が順次搬送された場合であって、さらに上流側物体に対応する前記第1タイミングまでに、前記第2検出部により該2つの物体の各々の前端が検出されなかった場合、前記第2検出部によって物体の前端が検出された時点が、下流側物体に対応する前記タイムスロットの終りより後か否かを判断し、該判断結果に応じて、前記搬送が異常であるか否かを判断する構成(第7の構成)としても良い。
【0020】
これらの構成によれば、物体が第1検出部で検出されてから第2検出部で検出されるまでに「くっつき」が発生した場合であっても、紙幣搬送の異常が誤検出される事態を、回避し易くなる。
【0021】
また上記第5の構成において、前記制御部は、2つの物体が順次搬送された場合において、さらに上流側物体に対応する前記第1タイミングまでに、前記第2検出部により該2つの物体の各々の前端が検出されなかった場合、前記第2検出部によって物体の後端が検出された時点が、上流側物体に対応する前記タイムスロットの終りより後であれば、満たされているとする第1条件と、前記第2検出部によって物体の前端が検出された時点が、下流側物体に対応する前記タイムスロットの終りより後でなければ、満たされているとする第2条件と、の各条件を判断した上で、該第1条件と第2条件の双方が満たされている場合には、前記搬送は正常であると判断する一方、何れかの条件が満たされていない場合には、前記搬送は異常であると判断する構成(第8の構成)としても良い。
【0022】
本構成によれば、2つの物体が順次搬送された場合において、これら2つの物体が上流側物体に対応する第1タイミングまでに検出されないときに、搬送の異常と検出することができる。そして更に、物体が第1検出部で検出されてから第2検出部で検出されるまでに「くっつき」が発生した場合に搬送の異常が誤検出される事態を、極力回避することが可能となる。
【0023】
また上記第3、第6、第7または第8の構成において、前記制御部は、前記搬送が異常であると判断したときには、該搬送を停止させる構成(第9の構成)としても良い。本構成によれば、搬送異常時に搬送を停止させることで、搬送異常が重大化することを極力回避することが可能となる。
【0024】
また上記第1の構成において、前記物体は、紙葉類である構成(第10の構成)としても良いし、貨幣である構成(第11の構成)としても良い。
【0025】
また本発明に係る貨幣処理機は、貨幣を搬送させる搬送ラインを有し、該貨幣に対して該搬送を含んだ所定の処理を施す貨幣処理機であって、前記搬送ライン上の第1位置における、前記物体の到来を検出する第1検出部と;前記第1位置よりも下流側の第2位置における、前記物体の到来を検出する第2検出部と;前記第1検出部により前記到来が検出された場合、所定期間を示すタイムスロットと、所定のタイミングを示す第1タイミングと、を設定するとともに、該タイムスロットまたは第1タイミングと、前記第2検出部により前記到来が検出されるタイミングと、の前後関係を判断する制御部と;を備え、前記タイムスロットは、前記第1検出部により前記到来が検出されてから所定の最速時間が経過したタイミングから、前記第1検出部により前記到来が検出されてから前記最速時間より長い所定の最遅時間が経過したタイミングまで、の期間であり、前記第1タイミングは、該タイムスロットの終りより後の所定のタイミングである構成(第12の構成)とする。
【0026】
また、搬送ラインを有し、該搬送ラインの上流から下流に向けて物体を搬送する搬送装置の制御方法であって、該搬送ライン上の第1位置に、前記物体が到来したことを検出する第1ステップと、該検出がなされたときに、所定期間を示すタイムスロットおよび所定のタイミングを示す第1タイミングを設定する第2ステップと、該タイムスロットまたは第1タイミングと、前記第1位置より下流側の第2位置に前記物体が到来したタイミングと、の前後関係を判断する第3ステップと、を含み、前記タイムスロットは、前記第1検出部により前記到来が検出されてから所定の最速時間が経過したタイミングから、前記第1検出部により前記到来が検出されてから前記最速時間より長い所定の最遅時間が経過したタイミングまで、の期間であり、前記第1タイミングは、該タイムスロットの終りより後の所定のタイミングである方法(第13の方法)も有用である。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る搬送装置によれば、所定のタイムスロットおよび第1タイミングが設定されるとともに、これらと第2検出部により物体の到来が検出されるタイミングとの前後関係が判断される。そのため例えば、タイムスロット内や第1タイミングにて、未だ第2検出部により物体の到来が検出されない場合を搬送の異常としておくことにより、搬送の異常が検出可能となる。
【0028】
また後述する所定の条件判断を設けることにより、「くっつき」の発生による搬送の異常の誤検出を防ぐことが可能となる。そのため本構成によれば、搬送の異常が誤って検出されることを極力抑えることが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
[第1実施例]
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず本実施形態に係る循環式紙幣入出金機(以下、「紙幣入出金機」と称する)の構成について説明する。
【0030】
図1に、紙幣入出金機11の外観図を、また図2に、同じく紙幣入出金機11の断面図を、それぞれ示す。この紙幣入出金機11は、例えば銀行などの金融機関のカウンターに、このカウンターの内側に居る2人のテラー間に設置され、紙幣入出金機11の左右の一方または両方に居るテラーのいずれからも使用可能となっている。
【0031】
紙幣入出金機11には通信インターフェースが設けられており、ここには、左右の2人のテラーが操作する上位端末12,13がそれぞれ接続されている。これにより、上位端末12,13と紙幣入出金機11との双方向通信が可能となっている。そしてこれら上位端末12,13のいずれか一方のみで紙幣入出金機11を使用する場合、両方で紙幣入出金機11を使用する場合の3通りの使用方法が可能である。
【0032】
紙幣入出金機11は機体14を有し、この機体14は、テラーが操作する操作面側を前面14aとし、この前面14aと反対側つまりカウンターの外側の顧客側を後面14bとした場合、左右方向の横幅が狭く、前後方向の奥行きが長いとともに上下方向の高さが高い縦型に構成されている。
【0033】
また機体14には、上部ユニット15および下部ユニット16が機体14の前面側からそれぞれ引出可能に設けられている。
【0034】
上部ユニット15の上面前側および前面上側には、操作部としての上面操作部17および前面操作部18がそれぞれ配置され、上面操作部17は機体14の上面14cより上方に突出され、この上面操作部17の後方の機体14の上面域にカウンターが嵌合する嵌合段部19が形成され、この嵌合段部19から機体14の後面14bまでの幅寸法のカウンターが機体14の上面14cに嵌合配置され、上面操作部17の上面がカウンターの上面と略同じぐらいの高さ位置に配置される。
【0035】
上部ユニット15の上面操作部17には、すなわち機体14の上面前側には、前側から順に、前方へ向けて下降傾斜する傾斜面20および略水平な水平面21が形成され、この水平面21には、前側から順に、紙幣を出金する紙幣出金口22、および紙幣を入金する紙幣入金口23が形成され、これら紙幣出金口22および紙幣入金口23の設置域の左右両側域に左右いずれのテラーで入金処理または出金処理を占有するかを指示する占有指示部としての占有ボタン24がそれぞれ配置され、紙幣出金口22および紙幣入金口23の設置域の一側すなわち左側に紙幣の詰まり箇所や紙幣の残量などを表示する表示部25が配置されている。各占有ボタン24は、それぞれランプを内蔵しており、操作されて占有状態となることで点灯表示する。
【0036】
上部ユニット15の前面操作部18には、入金処理時に入金紙幣の一時保留後の入金非承認によって返却することになった紙幣を取り出すための開口部26が形成され、前面扉36で閉塞される。また、上部ユニット15を機体14に収納した状態で施錠解錠するテラー操作用の上部ユニット錠27が設けられている。そして、この上部ユニット錠27の解錠によって上部ユニット15が機体14から引き出せる。
【0037】
機体14の前面下部域には扉体28が開閉可能に取り付けられ、この扉体28に下部ユニット16を機体14に収納して扉体28を閉じた状態で施錠解錠する金融機関の上位管理者または警備保障会社の社員しか操作できない下部ユニット錠29が設けられており、扉体28を解錠して開放することで下部ユニット16を機体14内から前方へ引き出し可能としている。なお、下部ユニット錠29はテラーには解錠できない。
【0038】
また、上部ユニット15の紙幣出金口22および紙幣入金口23の下部には、紙幣を立位姿勢でかつ長方形の紙幣の短手方向を上下方向として収納するボックス状の紙幣出金部32および紙幣入金部33がそれぞれ配置されている。紙幣出金口22には、出金中に紙幣出金口22を閉じるとともに出金終了時に開く透明シャッタ34が開閉可能に配置され、出金中においては閉じている透明シャッタ34を透過して紙幣出金口32に出金される紙幣を視認可能としている。
【0039】
上部ユニット15の前面の開口部26の内側には、すなわち機体14の前側域には、正規と識別された入金紙幣つまり入金正規紙幣を受収して金種混合状態で一括して一時保留する入金紙幣一時保留部35が配置されている。この入金紙幣一時保留部35の前面には閉鎖状態で図示しない電磁ロックによってロックされる透明な前面扉36が開閉可能に配置され、一時保留紙幣の返却時に電磁ロックが解除され、前面扉36に設けられている取手37を持って開口部26から前方へ開くことにより、開口部26を通じて入金紙幣一時保留部35内の入金非承認時の一時保留紙幣を一括取出可能としている。
【0040】
上部ユニット15内には、紙幣出金部32、紙幣入金部33および入金紙幣一時保留部35に接続されて紙幣を搬送する上部ユニット側紙幣搬送部40が配設されている。この上部ユニット側紙幣搬送部40は、紙幣出金部32に紙幣を搬送する出金搬送路部41、紙幣入金部33から繰り出される紙幣を搬送する入金搬送路部42、出金搬送路部41の途中に接続されて入金紙幣一時保留部35との間で紙幣を搬送する保留搬送路部43、後方から前方へ折り返す略U字形で上側の一端が入金搬送路部42に接続された識別搬送路部44、識別搬送路部44の上側の一端と下側の他端とを接続するバイパス搬送路部45、出金搬送路部41と識別搬送路部44の上側の一端(パイパス搬送通路45の上端)との間に接続された保留出金搬送路部46、保留出金搬送路部46に接続されて前方へ延設されたリジェクト紙幣搬送路部47、識別搬送路部44の下側の他端(パイパス搬送通路45の下端)に接続されて前方へ延設され前端がリジェクト紙幣搬送路部47に接続された収納出金搬送路部48を有している。
【0041】
少なくとも出金搬送路部41、保留搬送路部43、識別搬送路部44、保留出金搬送路部46および収納出金搬送路部48は、紙幣の搬送方向を正逆に反転させることができる。各搬送路部41〜48間の接続部分には紙幣の進行方向を切り換える切換部材49がそれぞれ配置されている。識別搬送路部44には搬送する紙幣の金種、真偽、および正損などを識別する紙幣識別部50が配設されている。なお「金種」とは貨幣の種類のことであり、「真偽」とは貨幣が偽造されたものであるか否か(本物か偽者か)を示すものであり、「正損」は所定の判断基準(例えば、汚れ度合や損傷の度合に関する基準)に照らして適正な貨幣であるか否かを示すものである。
【0042】
紙幣出金部32には、出金搬送路部41で搬送してくる紙幣を立位姿勢で紙幣出金部32内に1枚ずつ繰り込む羽根ローラ53、この羽根ローラ53で繰り込まれる紙幣を立位姿勢で受け入れるとともに紙幣を受け入れる位置を一定にして紙幣の立位姿勢を保ちながら前方へ整列集積するために受け入れた紙幣量に応じて移動するトレイ54がそれぞれ配設されている。
【0043】
紙幣入金部33には、入金紙幣を立位姿勢で受け入れるトレイ57、入金処理の開始時に移動するトレイ57で押し付けられる立位姿勢で整列集積される紙幣を1枚ずつ下方へ繰り出すキックローラ58、このキックローラ58で繰り出される紙幣を挟持して入金搬送路部42へ送り込むフィードローラ59とゲートローラ60がそれぞれ配設されている。
【0044】
入金紙幣一時保留部35は、その後面上側に保留搬送路部43が接続され、その後面上側が後方へ向けて下り傾斜されており、入金紙幣一時保留部35における保留空間部35aの周囲を囲む前面扉36である前面壁63と後面壁64との間で入金紙幣一時保留部35内を昇降する集積台65上に紙幣の紙面を上下方向に向けて集積する。
【0045】
入金紙幣一時保留部35には、保留搬送路部43から入金紙幣一時保留部35に入金紙幣を1枚ずつ繰り込むとともに入金承認時に一時保留紙幣を保留搬送路部43へ1枚ずつ繰り出す繰込繰出手段66が配設されている。この繰込繰出手段66は、紙幣を載せて昇降する集積台65と連動して動作するもので、保留搬送路部43から入金紙幣一時保留部35に紙幣を繰り込むとともに入金紙幣一時保留部35から保留搬送路部43へ紙幣を繰り出す軸方向に複数のフィードローラ67およびゲートローラ68、紙幣繰出時に集積台65上の一時保留紙幣を1枚ずつフィードローラ67とゲートローラ68との間に繰り出すキックローラ72などを備えている。
【0046】
また下部ユニット16には、機体14の前側域に、商品券などを収納する着脱ボックス81が着脱可能に配置されているとともに、リジェクト紙幣を収納するリジェクトボックス82が固定的に配置されている。
【0047】
さらに、リジェクトボックス82の後部域には、金種別に紙幣を収納する金種別紙幣収納部83が、前後方向に並んで固定的に配置されている。これら各金種別紙幣収納部83の上部に紙幣の受収および1枚ずつの繰り出しをする紙幣受収繰出部84が配置され、金種別紙幣収納部83の上方域に各紙幣受収繰出部84に接続して紙幣を搬送する下部ユニット側紙幣搬送部85が配置されている。なお下部ユニット16の最後部には、必要に応じて金種別紙幣収納部83を増設可能とする増設スペース86が形成されている。
【0048】
リジェクトボックス82には、このリジェクトボックス82の上部から紙幣を1枚ずつ繰込可能とする繰込手段87が配置されている。
【0049】
各金種別紙幣収納部83には、集積台88が昇降可能に配置され、この集積台88上に紙幣の紙面を上下方向に向けて集積する。
【0050】
下部ユニット側紙幣搬送部85は、金種別紙幣収納部83の上方域に沿って前後方向に配置された主搬送路部89、この主搬送路部89から各金種別紙幣収納部83に繰り込む紙幣を搬送する繰込搬送路部90、各金種別紙幣収納部83から繰り出される紙幣を主搬送路部89に搬送する繰出搬送路部91を備え、各搬送路部89〜91の接続部分には紙幣の進行方向を切り換える切換部材92がそれぞれ配置されている。下部ユニット側紙幣搬送部85の主搬送路部89は、紙幣の搬送方向を正逆に反転させることができる。
【0051】
紙幣受収繰出部84は、紙幣を載せて昇降する集積台88と連動して動作するもので、紙幣収納時に繰込搬送路部90からの紙幣を集積台88上に繰り込む繰込ローラ93,94、紙幣繰出時に集積台88上の紙幣を1枚ずつ繰り出すキックローラ95、このキックローラ95で繰り出される紙幣を繰出搬送路部91に繰り出す繰出ローラ96およびゲートローラ97を備えている。
【0052】
そして、金種別紙幣収納部83への紙幣繰込時には、集積台88上に紙幣を集積収納する毎に紙幣の上面高さが高くなるため、集積台88を順次下降させて紙幣を受け入れて集積収納する上面高さを一定の範囲内に保つようにする。また、金種別紙幣収納部83からの紙幣繰出時には、集積台88を上昇させて紙幣をキックローラ95に押し付け、キックローラ95の回転により、紙幣を1枚ずつ繰り出す。
【0053】
また、機体14には、上部ユニット15と下部ユニット16との間において、機体14に収納した下部ユニット16の上面を閉塞状態に覆う板状の被覆部材100が固定されている。この被覆部材100には前端側に第1の開口部101および第2の開口部102がそれぞれ形成され、第1の開口部101には上部ユニット側紙幣搬送部40の収納出金搬送路部48の前端側と下部ユニット側紙幣搬送部85の前端側とを接続して紙幣を搬送する第1の接続通路部103が配置され、第2の開口部102には上部ユニット側紙幣搬送部40のリジェクト紙幣搬送路部47とリジェクトボックス82とを接続して紙幣を搬送する第2の接続通路部104がそれぞれ配置されている。
【0054】
これら第1の接続通路部103および第2の接続通路部104は、機体14側に固定された被覆部材100の第1の開口部101および第2の開口部102を通じて、機体14に対してそれぞれ引出可能とした上部ユニット15および下部ユニット16を機体14に収納した状態で接続されて上部ユニット15と下部ユニット16との間で紙幣の搬送が可能となる。さらに、第1の接続通路部103および第2の接続通路部104は、紙幣の搬送方向を正逆に反転させることができる。
【0055】
次に紙幣入出金機11および上位端末12,13からなるシステムの制御体系について、図3を参照しながら説明する。本図に示すように紙幣入出金機11は、先述したものの他、搬送ライン201、搬送監視センサ202、記憶部203、および制御部204、をも有している。
【0056】
搬送ライン201は、先述した上部ユニット側紙幣搬送部40や下部ユニット側紙幣搬送部85などにより構成されている、紙幣を搬送させる経路(ライン)全体を指す。なお搬送ライン201は、機能的に見れば、ある地点から他の地点に紙幣を順次移動させるための流れを生じさせる機構ともいえる。
【0057】
搬送監視センサ202は、フォトセンサ(フォトインタラプタ等)により構成されており、搬送ライン201上の監視ポイント(光の照射位置)に紙幣が存在しているか否かを継続的に検出可能である。また搬送監視センサ202は、図2に示すように、搬送ライン201上の搬送方向に一定距離だけ離れた2箇所(以下、上流側のものを「センサA(202a)」、下流側のものを「センサB(202b)」と称することがある)にそれぞれ設けられている。ここで搬送監視センサ202により、紙幣の搬送状況が検出される仕組について、図4および図5を参照しながら説明する。
【0058】
図4は、搬送ライン201上を、紙幣(破線で示す)が右方向に搬送されている状況を表している。また円形の着色部分は、センサA202aの監視ポイント210a、およびセンサB202bの監視ポイント210bを、それぞれ示している。
【0059】
また図5は、センサA202aとセンサB202bが出力する検出信号の状態を示したグラフである。当該グラフ(以降に登場するグラフも同様とする)において、横軸は時間を示している一方、縦軸は信号状態を示している。信号状態については、ハイレベルは紙幣が検出されている(監視ポイントに紙幣が有る)状態、ローレベルは紙幣が検出されていない(監視ポイントに紙幣が無い)状態を表している。
【0060】
なお当該グラフの(A)〜(D)の各々は、紙幣が搬送によって図4の(A)〜(D)の各位置に到達するタイミングを表している。より具体的には、紙幣の前端が監視ポイント210aに到達した時は、センサA202aの検出信号は立上りとなる(A)。また紙幣の後端が監視ポイント210aに到達した時は、センサA202aの検出信号は立下りとなる(B)。また紙幣の前端が監視ポイント210bに到達した時は、センサB202bの検出信号は立上りとなる(C)。また紙幣の後端が監視ポイント210bに到達した時は、センサB202bの検出信号は立下りとなる(D)。
【0061】
このように各搬送監視センサ202の検出信号に基づけば、各監視ポイントに搬送紙幣の前端が到達したことや後端が到達したことも検出可能である。また紙幣が監視ポイント210aを通過した後、どのようなタイミングで監視ポイント210bを通過するか等を検出可能であるため、これら双方の監視ポイント間での搬送状況(ジャムの度合い等)を判断することが可能である。
【0062】
図3に戻り、記憶部203は、例えばフラッシュメモリのように書換え可能な記憶装置からなっており、紙幣入出金機11の制御に必要な種々の情報を記憶する。また制御部204は、紙幣入出金機11においてなされる入金処理や出金処理などを全体的に制御する。なお入金処理等においては、搬送監視センサ202を通じて紙幣の搬送状況を監視し、搬送に異常が生じている場合等に所定の処理を実行する、搬送管理を行う。この搬送管理の内容については、改めて説明する。また制御にあたっては、上位端末12,13、紙幣識別部50、および記憶部203などから取得される各種情報が用いられることになる。
【0063】
以上に示した構成の紙幣入出金機11によれば、紙幣の入金処理(受取った紙幣を所定箇所に収納する処理)や出金処理(収納されている紙幣から、指定された金額分を取り出す処理)などを実行することが可能である。なお、上述した搬送ライン201、搬送監視センサ202、および制御部204などに着目すれば、紙幣入出金機11は、搬送ライン201の上流から下流(入金処理か出金処理かによって、上流と下流は変動し得る)に向けて紙幣(物体)を搬送する、搬送装置を備えていると見ることもできる。
【0064】
次に、先述した搬送管理の内容について、各図を参照しながら詳細に説明する。
【0065】
まず、搬送ライン201により、1枚の紙幣が上流側から下流側に搬送される場合における搬送管理について、図6を参照しながら説明する。図6は、あるタイミングT(0)でセンサA202aによって紙幣が検出された場合における、センサB202bの検出信号をグラフ表示したものである。
【0066】
制御部204は、センサA202aにより紙幣の前端が検出された場合(センサA202aの検出信号が立上りとなったとき)に、その後にセンサB202bが紙幣の前端を検出するタイミング(センサB202bの検出信号が立上りとなるタイミング)を監視する。そして監視の結果、T(0)から予め定められた時間の経過後として設定されたジャム判別時(図6のT(E)で示すタイミング)までに、センサB202bが紙幣の前端を検出しなければ、搬送にジャム(渋滞)が生じたことによる搬送エラーと判断して、紙幣状況を矯正するための搬送矯正処理を実行する。なおT(E)のタイミングは、後述するタイムスロットの終わりよりも、後のタイミングとなるように設定される。
【0067】
この搬送矯正処理としては、必要に応じて種々の処理を採用することが可能である。例えば、紙幣の搬送を一時停止させる(指示があれば再度搬送を開始する)こととすれば、ジャムの度合が更に深刻化することを防ぐことができる。またかかる状況を外部に報知する報知処理を実行するようにすれば、テラー等に適切な処置を施させることができる。なお報知処理としては、例えば報知手段(表示装置や音響発生装置など)を通じて、異常のあった旨の表示やサイレンを鳴らすこと等により実現される。
【0068】
また上述の処理に加えて、センサA202aにより紙幣の前端が検出されたときは、搬送状況を判断するための情報として用いられる、タイムスロットを設定する。
【0069】
この「タイムスロット」は所定の期間を示すものである。より具体的には、センサA202aによって紙幣が検出されたタイミングT(0)から、次の(1)式で示される時間t1が経過したタイミング(以下、T(P)とする)を初めとし、T(0)から次の(2)式で示される時間t2が経過したタイミング(以下、T(Q)とする)を終りとして定まる期間として設定される。
t1=(L/V)−α ・・・(1)
t2=(L/V)+β ・・・(2)
なお、Lは監視ポイント210aと監視ポイント210bとの距離を、Vは搬送ライン201における搬送速度である。またα及びβは、搬送において生じ得る誤差(例えば、斜め搬送による検出誤差など)を考慮して、予め定められている一定時間である。
【0070】
つまりタイムスロットは、センサB202bで紙幣の前端が検出されるタイミングとしての計算値(T(0)から、L/Vが経過したタイミング)を基準として、αおよびβに相当する許容誤差が設けられた期間と見ることができ、図6では着色部で示される期間に相当する。
【0071】
なおこのタイムスロットの終りのタイミングT(Q)については、正常な搬送状況にて紙幣の後端が監視ポイント210bを通過するタイミングより前となるように配慮しておく。またこのタイムスロットがどのように用いられるかについては、追って説明する。
【0072】
ここで、センサB202bの検出信号が図6に示す各ケースとなった場合における処理の内容について、順に説明する。まず「ケース1」のようであった場合、センサB202bは、タイムスロット内にて、紙幣の前端を検出している。この場合、紙幣の搬送状況はほぼ計算通り(理想通り)であり、特に問題は生じていないと考えられる。そのため、搬送矯正処理は不必要であり、そのまま紙幣搬送を続行させることとする。
【0073】
また「ケース2」のようであった場合、センサB202bは、ジャム判別時T(E)よりは前であるが、タイムスロットより遅れて紙幣の前端を検出している。この場合、搬送ライン201上では、何らかの原因によって軽度のジャムが発生している可能性がある。そこで必要に応じて、搬送矯正処理を実行させるようにしても良い。
【0074】
また「ケース3」のようであった場合、ジャム判別時T(E)が到来したにも関わらず、未だセンサB202bによって紙幣の前端が検出されていない。そのため先述した通り、搬送のジャムが発生していると判断し、搬送矯正処理が実行されることになる。
【0075】
また「ケース4」のようであった場合、センサB202bは、タイムスロットより早く紙幣の前端を検出している。通常、紙幣が搬送ライン201による搬送速度よりも速く搬送されることは考え難いので、このようになる状況としては、紙幣が搬送ライン外から混入したことや、湧出(複数の紙幣が重なって搬送されていたものが搬送途中で分離し、見掛け上の枚数が増える現象)が生じたこと等が考えられる。
【0076】
そこでこの場合、必要に応じて、搬送矯正処理を実行するようにしても良い。なお上述した「湧出」は、紙幣の搬送自体に特筆すべき問題が有る訳ではない。そのため、ケース4のようになった原因が湧出によるものと考えられる場合は、搬送矯正処理が実行されないようにしても良い。
【0077】
また、T(0)の時点で、タイムスロットよりも前となる所定のタイミング(図6に示すT(S))を予め設定しておき、タイムスロットより早くセンサB202bによって紙幣の前端が検出された場合については、センサB202bによって紙幣の前端が検出された時点が、このT(S)よりも前か後かを判断するようにしても良い。この場合、センサB202bによって紙幣の前端が検出された時点がT(S)よりも前であれば、比較的重度の異常と考えられ、逆にT(S)よりも後であれば、比較的軽度の異常と考えられる。
【0078】
このように搬送管理では、搬送監視センサ202の検出結果を通じて、搬送ライン201における紙幣の搬送状況を監視するとともに、搬送に異常があった場合には適切な処理を行うこととしている。なお上述の内容に沿った搬送管理の具体的態様としては種々のものが考えられるが、その一例としては、図7の表に示す態様のものが挙げられる。
【0079】
すなわちかかる搬送管理では、センサA202aによって紙幣の前端が検出されたとき、該紙幣の搬送に対して、先述したT(S)、T(P)、T(Q)、T(E)の各々のタイミングが設定される。その後、センサB202bによって紙幣の前端が検出されたタイミングが、T(S)より前であれば、重度の搬送異常であると判断し、異常を報知するとともに搬送を一時的に停止させる(図7の(1))。
【0080】
またセンサB202bによって紙幣の前端が検出されたタイミングが、T(S)とT(P)の間であれば、軽度の搬送異常であると判断し、異常を報知する(図7の(2))。またセンサB202bによって紙幣の前端が検出されたタイミングが、タイムスロット内であれば、搬送は正常であると判断し、搬送の矯正に関する処理を実行しない(図7の(3))。またセンサB202bによって紙幣の前端が検出されたタイミングが、T(P)とT(E)の間であれば、軽度の搬送異常であると判断し、異常を報知する(図7の(4))。またセンサB202bによって紙幣の前端が検出されたタイミングが、T(E)より後であれば、重度の搬送異常であると判断し、異常を報知するとともに搬送を一時的に停止させる(図7の(5))。
【0081】
なお、図7の(2)および(4)で示すケースにおいては、搬送状況は正常であるとみなすようにし、特段の搬送矯正処理を実行しないようにしておいても良い。このように紙幣入出金機11では、以上に説明した搬送管理により、搬送異常の度合いに応じて適切な処置を施すことが可能となっている。
【0082】
また一方、タイムスロットの設定においては、先述の(1)式および(2)式の各パラメータを固定としておいても良い。この場合、T(0)が定まると(つまりセンサA202aが紙幣の前端を検出した時点で)、タイムスロットの内容も確定する。
【0083】
またその他、搬送ライン201における搬送速度を継続的に把握しておき、タイムスロットの設定においては、T(0)のタイミングにおける搬送速度を反映させるようにしても良い。これにより、搬送速度が随時変動するような場合であっても、タイムスロットを極力正確に設定することが可能となる。
【0084】
また更に、搬送物の種類に応じて、タイムスロットの幅を定めるαやβのパラメータを調整できるようにしておいたり、上述の(1)式や(2)式の右辺に何らかの係数を乗じるようにしたりしても良い。これにより、搬送物の種類が変動する場合であっても、搬送管理を極力状況に応じたものとすることが可能となる。
【0085】
また更に、タイムスロットの設定方法を定める複数のモードを用意しておき、その何れかが選択可能であるようにしても良い。例えば、上述の(1)式および(2)式におけるVに、センサA202aによって紙幣の前端が検出された時の搬送速度を適用するとともに、αおよびβに、搬送物の種類に対応した所定値を適用した上で、タイムスロットを求めて設定する第1モードを設けておく。
【0086】
これに加え、上述の(1)式および(2)式におけるV、α、およびβは一定であるとして、タイムスロットを求めて設定する第2モードをも設けておく。そしてこれらのいずれかのモードを、テラーの操作する上位端末12,13から送られてくる信号に応じて、自在に選択できるようにしておけば良い。これにより、更に状況に応じた搬送管理を実現することが可能となる。
【0087】
また以上の通り、1枚の紙幣が搬送される場合の搬送管理について説明したが、例えばセンサA202aによって紙幣が検出される度に、タイムスロットおよびジャム判別時等を設定するようにしておけば、複数枚の紙幣が搬送される場合についても同様の搬送管理が可能である。
【0088】
ここで複数枚の紙幣が搬送されるにあたっては、紙幣同士が搬送途中で接触する現象(つまり、先述した「くっつき」)が発生する可能性がある。この「くっつき」は、単に何らかの原因により搬送中の紙幣同士が接触したものであるから、紙幣の搬送自体に特筆すべき問題がある訳ではない。
【0089】
しかし、センサA202aの監視ポイントとセンサB202bの監視ポイントとの区間において「くっつき」が発生した場合は、搬送エラーと判断されて、無駄な搬送矯正処理が実行されるおそれがある。このような事態は、紙幣搬送の円滑や迅速を維持する観点から、極力回避されるべきである。そこで本実施形態の紙幣入出金機11では、かかる事態を回避するために、搬送監視の実行過程に工夫が施されている。
【0090】
この内容を説明するため、2枚の紙幣(下流側から順に、第1紙幣および第2紙幣とする)が、順次搬送ライン201によって搬送される場合の搬送管理について、図8を参照しながら説明する。図8は、センサA202aによって第1紙幣と第2紙幣が検出された場合における、センサB202bの検出信号をグラフ表示したものである。
【0091】
第1紙幣と第2紙幣の前端がセンサA202aによって検出されるため、これら各紙幣の搬送に対して、先述の通りタイムスロットおよびジャム判別時T(E)が設定される。なお搬送ライン201での搬送が正常であれば、図8の「ケース5」で示すように、双方のタイムスロットの各々において、センサB202bが紙幣の前端を検出することになる。
【0092】
一方、第1紙幣のジャム判別時までに、センサB202bが何れの紙幣の前端をも検出しなかった場合、または、第2紙幣のジャム判別時までに、センサB202bが2枚分の紙幣の前端を検出しなかった場合には、搬送エラーと判断されて所定の搬送矯正処理が実行されることになる。
【0093】
ここで、監視ポイント210aから監視ポイント210bまでの区間で、第1紙幣と第2紙幣の2枚の紙幣による「くっつき」が発生した場合を考えると、図8の「ケース6」で示すように、センサB202bは、両紙幣間の隙間を検出することができない。そのためセンサB202bは、第1紙幣のジャム判別時までに1枚目の紙幣の前端を検出するものの、第2紙幣のジャム判別時までに2枚目の紙幣の前端を検出せず、結果として、搬送エラーと判断されることになる。
【0094】
そこで、このような「くっつき」の発生に対しては搬送エラーと判断されないようにするべく、以下に説明するような「くっつき」の発生を判断するための条件を設定しておく。そしてかかる条件が満たされていれば、第2紙幣のジャム判別時までに2枚目の紙幣の前端がセンサB202bによって検出されなくとも、搬送エラーと判断しないこととする。
【0095】
まず、センサB202bが紙幣(センサ側から見れば、この紙幣が第1紙幣と第2紙幣の何れであるか区別できない)の後端を検出したタイミング、つまりセンサB202bの検出信号の立下り時が、第2紙幣に対するタイムスロットを既に過ぎているという条件(以下、「第1条件」と称する)を設定する。この第1条件が判断されることにより、「ケース6」のような場合には「くっつき」が発生していると判断される。
【0096】
しかしこの第1条件の判断だけでは、例えば図8の「ケース7」に示すように、単に紙幣の搬送が遅れている状況まで含まれてしまうことが懸念される。
【0097】
そこで更に、センサB202bが紙幣の前端を検出した時が、第1紙幣に対するタイムスロットの終わりより遅れていないという条件(以下、「第2条件」と称する)を設定する。第1条件に加え、この第2条件が判断されることにより、「ケース7」のような場合には「くっつき」とは判断されず、ひいては通常通り、第2紙幣のジャム判別時までに2枚目の紙幣の前端がセンサB202bによって検出されない場合には、搬送エラーと判断することが可能となる。
【0098】
以上のように、第2紙幣のジャム判別時までに、センサB202bによって2枚目の紙幣の前端が検出されなかった場合であっても、上述した第1条件と第2条件を満たしている限りは、このことを理由として搬送エラーと判断されることが無くなる。その結果、「くっつき」の発生を原因として不要な搬送矯正処理が実行されることを回避することができ、紙幣入出金機11の処理効率を向上させることが可能となる。
【0099】
以上の通り、本発明の第1実施例について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の改変を加えることが可能である。例えば搬送物(物体)としては「紙幣」を例に挙げて説明したが、その他に、金券や証券などの紙葉類や、紙幣以外の貨幣(硬貨を含む)などであっても良い。
【0100】
[第2実施例]
第1実施例に係る紙幣入出金機11では、搬送ライン201の適所に搬送監視センサ202を設けておくことにより、その箇所での紙幣の存在や通過を認識し、紙幣搬送の管理に役立てている。ここで紙幣搬送の管理をより正確に実行させるためには、紙幣以外の異物、特に紙幣の一部が破れて生じる紙片が、搬送ライン201に紛れ込む事態を考慮する必要がある。
【0101】
この点が考慮されていないと、例えば紙片が通常の紙幣として認識されてしまい、紙幣搬送の適切な管理が阻害されるおそれがある。なお海外市場の紙幣は、日本の紙幣に比べて破れ易い場合もあることから、紙片等の混入については十分に配慮されるべきである。
【0102】
このような問題に対応して、紙幣入出金機11では、搬送監視センサ202ごとの有効検出時間を自在に調整できるようにしておく。ここで有効検出時間とは、搬送監視センサ202により検出される物体を、有効な搬送物とみなすか否かの判断基準となる時間のことである。
【0103】
つまり、搬送監視センサ202の監視ポイント(210a、210b)に搬送物が搬送されてきても、この監視ポイントに存在している時間(すなわち、センサの検出信号における立上りから立下りまでの時間)が有効検出時間を下回っていれば、搬送物とみなさない(例えば、搬送物の個数に計数しない)こととする。これにより、紙片のような小さい物体が監視ポイントに到来したとしても、搬送処理では無視することが可能となり、搬送管理に影響が及ばないようにすることができる。
【0104】
なお、このように有効検出時間を調整可能とすることは、紙幣の搬送を実行する機器に対し、搬送管理を適切に行わせる上で一般的に有効であるといえる。例えば、各計数処理開始前に、紙幣を集積することができるメカユニットへの搬送において、最後に通過するセンサ(最終センサ)や、実行する計数では搬送されるはずのない搬送路上に位置するセンサに対する紙幣と認識するための有効検出時間を、他の搬送路上のセンサのものよりも長めに設定することが可能となる。これにより、比較的紙片が発生しやすい集積部の最終センサや搬送されるはずのない搬送路上のセンサを特定して、紙片を無視することができる。
【0105】
なお最終センサは、計数によっては繰出し直後のセンサとして監視することも考えられ、また搬送されるはずのない搬送路も、別の計数では搬送される搬送路になることもある。この場合、通常の紙幣をより早く検知できる機能を損なわずに、紙片を無視したいセンサだけ有効検出時間を長く設定できる。
【0106】
また計数動作中でない状態、もしくは搬送モータが回っていない状態では、有効検出時間を計数中よりもかなり長めに設定しておくことにより、装置の振動、風、操作ミスによるメカユニット開閉時のセンサ光軸ずれ、および埃などが原因となる紙幣の誤検知を防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、金融機関で用いられる貨幣処理機などの分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の実施形態に係る循環式紙幣入出金機の外観図である。
【図2】本発明の実施形態に係る循環式紙幣入出金機の断面図である。
【図3】本発明の実施形態の制御体系を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態における、紙幣の搬送状況を示す説明図である。
【図5】図4に示す搬送状況に対応した検出信号の状態に関するグラフである。
【図6】1枚の紙幣が搬送される状況での、検出信号の状態に関するグラフである。
【図7】搬送管理の具体的事例に関する表である。
【図8】2枚の紙幣が搬送される状況での、検出信号の状態に関するグラフである。
【符号の説明】
【0109】
11 循環式紙幣入出金機(貨幣処理機)
12、13 上位端末
22 紙幣出金口
23 紙幣入金口
24 占有ボタン
34 透明シャッタ
35 入金紙幣一時保留部
36 前面扉
40 上部ユニット側紙幣搬送部
50 紙幣識別部
82 リジェクトボックス
83 金種別紙幣収納部
85 下部ユニット側紙幣搬送部
201 搬送ライン
202 搬送監視センサ
202a センサA(第1検出部)
202b センサB(第2検出部)
203 記憶部
204 制御部
210a センサAに対応する監視ポイント
210b センサBに対応する監視ポイント
T(0) センサAに紙幣前端が到達したタイミング
T(S) 搬送管理に用いられるタイミング(第2タイミング)
T(P) タイムスロットの始めのタイミング
T(Q) タイムスロットの終りのタイミング
T(E) ジャム判別時(第1タイミング)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ラインを有し、該搬送ラインの上流から下流に向けて物体を搬送する搬送装置において、
前記搬送ライン上の第1位置における、前記物体の到来を検出する第1検出部と;
前記第1位置よりも下流側の第2位置における、前記物体の到来を検出する第2検出部と;
前記第1検出部により前記到来が検出された場合、
所定期間を示すタイムスロットと、所定のタイミングを示す第1タイミングと、を設定するとともに、
該タイムスロットまたは第1タイミングと、前記第2検出部により前記到来が検出されるタイミングと、の前後関係を判断する制御部と;を備え、
前記タイムスロットは、
前記第1検出部により前記到来が検出されてから所定の最速時間が経過したタイミングから、前記第1検出部により前記到来が検出されてから前記最速時間より長い所定の最遅時間が経過したタイミングまで、の期間であり、
前記第1タイミングは、
該タイムスロットの終りより後の所定のタイミングであることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、
第2タイミングと、前記第2検出部により前記到来が検出されるタイミングと、の前後関係をも判断するものであり、
該第2タイミングは、前記タイムスロットの始めより前の所定のタイミングであることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記タイムスロット内にて前記第2検出部により前記到来が検出された場合には、前記搬送は正常であると判断する一方、
前記第1タイミングにて、未だ前記第2検出部により前記到来が検出されていない場合には、前記搬送は異常であると判断することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記最速時間および最遅時間は、前記制御部により設定されるものであり、
該制御部は、
前記最速時間および最遅時間の設定に関する態様について、
前記第1検出部が前記物体を検出した時の前記搬送の速度、および該物体の種類に基づいて、前記最速時間および最遅時間を求めた上で前記設定を行う第1態様と、
前記第1検出部が前記物体を検出したタイミングから、予め定められた時間が経過した時として、前記最速時間および最遅時間を設定する第2態様と、
の何れかを選択可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記第1検出部および第2検出部は、
前記搬送方向における前記物体の前端および後端を認識可能であり、
前記制御部は、
複数の物体が順次搬送された場合、それぞれの物体の搬送に対して前記タイムスロットおよび第1タイミングを設定することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記制御部は、
2つの物体が順次搬送された場合であって、さらに上流側物体に対応する前記第1タイミングまでに、前記第2検出部により該2つの物体の各々の前端が検出されなかった場合、
前記第2検出部によって物体の後端が検出された時点が、上流側物体に対応する前記タイムスロットの終りより後か否かを判断し、
該判断結果に応じて、前記搬送が異常であるか否かを判断することを特徴とする請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記制御部は、
2つの物体が順次搬送された場合であって、さらに上流側物体に対応する前記第1タイミングまでに、前記第2検出部により該2つの物体の各々の前端が検出されなかった場合、
前記第2検出部によって物体の前端が検出された時点が、下流側物体に対応する前記タイムスロットの終りより後か否かを判断し、
該判断結果に応じて、前記搬送が異常であるか否かを判断することを特徴とする請求項5に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記制御部は、
2つの物体が順次搬送された場合において、さらに上流側物体に対応する前記第1タイミングまでに、前記第2検出部により該2つの物体の各々の前端が検出されなかった場合、
前記第2検出部によって物体の後端が検出された時点が、上流側物体に対応する前記タイムスロットの終りより後であれば、満たされているとする第1条件と、
前記第2検出部によって物体の前端が検出された時点が、下流側物体に対応する前記タイムスロットの終りより後でなければ、満たされているとする第2条件と、
の各条件を判断した上で、
該第1条件と第2条件の双方が満たされている場合には、前記搬送は正常であると判断する一方、
何れかの条件が満たされていない場合には、前記搬送は異常であると判断することを特徴とする請求項5に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記搬送が異常であると判断したときには、該搬送を停止させることを特徴とする請求項3、請求項6、請求項7、または請求項8に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記物体は紙葉類である、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記物体は貨幣である、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項12】
貨幣を搬送させる搬送ラインを有し、該貨幣に対して該搬送を含んだ所定の処理を施す貨幣処理機であって、
前記搬送ライン上の第1位置における、前記物体の到来を検出する第1検出部と;
前記第1位置よりも下流側の第2位置における、前記物体の到来を検出する第2検出部と;
前記第1検出部により前記到来が検出された場合、
所定期間を示すタイムスロットと、所定のタイミングを示す第1タイミングと、を設定するとともに、
該タイムスロットまたは第1タイミングと、前記第2検出部により前記到来が検出されるタイミングと、の前後関係を判断する制御部と;を備え、
前記タイムスロットは、
前記第1検出部により前記到来が検出されてから所定の最速時間が経過したタイミングから、前記第1検出部により前記到来が検出されてから前記最速時間より長い所定の最遅時間が経過したタイミングまで、の期間であり、
前記第1タイミングは、
該タイムスロットの終りより後の所定のタイミングであることを特徴とする貨幣処理機。
【請求項13】
搬送ラインを有し、該搬送ラインの上流から下流に向けて物体を搬送する搬送装置の制御方法であって、
該搬送ライン上の第1位置に、前記物体が到来したことを検出する第1ステップと、
該検出がなされたときに、所定期間を示すタイムスロットおよび所定のタイミングを示す第1タイミングを設定する第2ステップと、
該タイムスロットまたは第1タイミングと、前記第1位置より下流側の第2位置に前記物体が到来したタイミングと、の前後関係を判断する第3ステップと、
を含み、
前記タイムスロットは、
前記第1検出部により前記到来が検出されてから所定の最速時間が経過したタイミングから、前記第1検出部により前記到来が検出されてから前記最速時間より長い所定の最遅時間が経過したタイミングまで、の期間であり、
前記第1タイミングは、
該タイムスロットの終りより後の所定のタイミングであることを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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