説明

搬送装置及び描画装置

【課題】クリーン度を低下させることなくワーク幅の変更に簡便に対応する。
【解決手段】帯状のワーク80を幅方向で保持するローラ61を備える。幅方向で分割されそれぞれがワーク80を保持する一対の保持体65を有する。一対の保持体65のそれぞれは、分離一体可能な複数の分割体65Aと、複数の分割体65Aを一体化する方向に付勢する付勢部材71と、複数の分割体65Aが一体化されたときに、保持体65を前記幅方向に位置決めさせる位置決め部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及び搬送方法並びに描画装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶表示装置に用いられるCOF(Chip On Film)には、各種配線が形成されるが、近年では金属配線形成技術として、液体吐出方式の利用が拡大する傾向にある。液体吐出方式による塗布技術は、一般に、基板と液体吐出ヘッドとを相対的に移動させながら、液体吐出ヘッドに設けられた複数のノズルから金属材料を含む液状体を液滴として吐出し、その液滴を基板上に繰り返し付着させて塗布膜を描画形成するものであり、液状体の消費に無駄が少なく、任意のパターンをフォトリソグラフィーなどの手段を用いず直接塗布することが出来るといった利点を有している。
【0003】
この種の配線形成においては、前工程で配線が形成されたテープ状(帯状)のフィルム上に液滴吐出方式で金属材料を含む液滴を吐出して金属配線を形成する場合がある。
このテープ状フィルムは、フィルムを幅方向両側から保持するフランジを有するローラにより連続的に送られるが、フィルムの幅は機種に応じて変動するため、ローラにおいてもフランジによる保持幅を対応させる必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、リンク機構を用いてガイドローラによる帯状部材の保持幅を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5−26351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
保持幅調整にリンク機構を用いるため、装置が大型化するという問題が生じる。
また、ローラをフィルム(テープ)の幅方向(回転軸の軸方向)に分割し、それぞれ回転軸にフィルム幅に応じた位置で取付ネジやプランジャを用いて固定する方法も考えられるが、この場合、取付ネジの取り付け、取り外しにレンチ等の工具が必要になり、作業が繁雑になるという問題が生じる。
【0007】
また、プランジャによるローラの固定は、プランジャが回転軸に摺接するため、クリーン度に問題が生じてしまう。
さらに、取付ネジやプランジャを用いたローラの固定では、フィルムに対する十分な位置決め精度を確保しづらいという問題もある。
【0008】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、クリーン度を低下させることなくワーク幅の変更に簡便に対応できる搬送装置及び搬送方法並びに描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
本発明の搬送装置は、帯状のワークを幅方向で保持するローラを備えた搬送装置であって、前記ローラは、前記幅方向で分割されそれぞれが前記ワークを保持する一対の保持体を有し、前記一対の保持体のそれぞれは、分離一体可能な複数の分割体と、前記複数の分割体を一体化する方向に付勢する付勢部材と、前記複数の分割体が一体化されたときに、当該保持体を前記幅方向に位置決めさせる位置決め部とを有することを特徴とするものである。
【0010】
従って、本発明の搬送装置では、付勢部材の付勢力に抗して分割体を分割することにより、保持体のワークの幅方向の位置決めを解除することが可能になり、ワークの幅に応じた位置で分割体を一体化することにより、一対の保持体をそれぞれワークの保持位置で位置決めすることができる。
そのため、本発明では、工具等を用いることなく、簡便にワーク幅の変更に対応することができる。また、本発明では、付勢部材の付勢力に抗して分割体を分離させる方向に力を加えればよいため、プランジャ等による摺接が生じず、クリーン度の低下も防止することができる。
【0011】
また、本発明の搬送装置では、前記ローラに挿通され、外周面に溝部が形成された軸体を有し、前記位置決め部が、前記溝部に嵌合する突部を有する構成を好適に採用できる。
また、この構成では、前記保持体は、前記分割体が一体化されたときに前記突部が前記溝部に嵌合し、前記分割体が前記付勢部材の付勢力に抗して分離されたときに前記突部と溝部との嵌合が解除される構成を採用できる。
従って、本発明では、分割体が一体化されたときに、保持体の突部が軸体の溝部に嵌合することにより、保持体が軸体に対して位置決めされる。
この溝部としては、前記ワークの幅に応じて複数設けられる構成が好適である。
従って、本発明では、変更されるワークの幅に対応する溝部に保持体の突部を嵌合させることにより、保持体によりワークを幅方向に保持することが可能になる。
【0012】
また、本発明では、前記溝部及び前記突部が互いに交差する嵌合面で嵌合する構成も好適である。
従って、本発明では、軸体と保持体とが、いわゆるテーパ合わせにて位置決めされるため、保持体を軸体に対してがたつきなく、取り付けることが可能になり、ワークを精度よく保持することが可能になる。
また、この構成においては、前記嵌合面の少なくとも一つは、前記幅方向と略直交して設けられることが好ましい。
これにより、本発明では、保持体のワークの幅方向の位置を、前記幅方向と略直交する嵌合面により規定することができる。
【0013】
一方、本発明の描画装置は、帯状のワークを搬送する搬送装置と、搬送された前記ワークに対して液滴を吐出して描画する吐出ヘッドとを備えた描画装置であって、前記搬送装置として先に記載の搬送装置が用いられることを特徴とするものである。
従って、本発明の描画装置では、上述した搬送装置を備えているため、簡便にワーク幅の変更に対応でき、クリーン度の低下も防止できる描画装置を提供することができる。
【0014】
また、本発明の搬送方法は、帯状のワークを幅方向で保持し軸体が挿通するローラにより搬送する方法であって、前記ローラを、前記幅方向で分割され、それぞれが前記ワークを保持する一対の保持体で構成し、前記一対の保持体のそれぞれを、分離一体可能で、且つ一体化する方向に付勢され、前記軸体と嵌合したときに前記幅方向に位置決めされる複数の分割体で構成し、前記複数の分割体を付勢される力に抗して分割して、前記軸体との嵌合を解除する工程と、前記ワークに応じた位置で前記分割体を前記軸体に嵌合させる工程とを有することを特徴とするものである。
【0015】
従って、本発明では、複数の分割体を付勢される力に抗して分割して、前記軸体との嵌合を解除した後に、ワークの幅に応じた位置で軸体と嵌合させることにより、工具等を用いることなく、簡便にワーク幅の変更に対応することができる。また、本発明では、付勢力に抗して分割体を分離させる方向に力を加えればよいため、プランジャ等による摺接が生じず、クリーン度の低下も防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る描画装置の平面図である。
【図2】吸着装置及びアライメントユニットの外観斜視図である。
【図3】テープ押さえ装置の構成及び動作を示す図である。
【図4】ガイド軸に挿通されるフランジ体の外観斜視図である。
【図5】図4における一部断面図である。
【図6】フランジ体の平面図である。
【図7】液滴吐出ヘッドの側面断面図である。
【図8】様々なTABテープの部分平面図である。
【図9】液晶表示装置の分解斜視図である。
【図10】電子機器の例を示す図である。
【図11】フランジ体の突部とガイド軸の溝部との別の嵌合形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の搬送装置及び搬送方法並びに描画装置の実施の形態を、図1ないし図11を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0018】
図1は描画装置1の平面図である。
描画装置1は、Y方向に沿って送られる帯状のテープ(ワーク)80に対して配線等のパターンを描画形成するものであって、テープ80を吸着保持する吸着装置50、吸着装置の上方にX方向に延びて設けられる一対のフレーム20、フレーム20に架設され、それぞれ図示しないリニアモータ等の駆動装置によりX方向に独立して駆動される描画ユニット22、アライメントユニット24およびUV照射ユニット26、図2に示すように、ガイドローラ(ローラ)61を介してテープ80を繰り出す繰出しローラ84およびガイドローラ62を介してテープ80を巻き取る巻取りローラ85を主体に構成されている。
これらガイドローラ61、62、繰出しローラ84、巻取りローラ85により、本発明に係る搬送装置が構成される。
テープ80は、ガイドローラ61、62の間に掛け渡され、両者間において吸着装置50の上面に載置されるようになっている。
【0019】
図2は、吸着装置50及びアライメントユニット24の外観斜視図である。
吸着装置50は、定盤60の表面に多孔質板51を配置(埋設)して構成され、その多孔質板51の表面に上述したテープ80を吸着しうるようになっている。なお80テープの吸着位置は、多孔質板51の幅方向中央部であり、テープの中心線が多孔質板51の中心線と一致する位置に設定されている。これにより、テープサイズの変更にともなう描画装置の段取り換えを最小限にとどめることができるようになっている。
【0020】
この多孔質板51は、樹脂材料を焼結成形した樹脂焼結材で構成されている。焼結成形は、原料粉末を金型内に充填して加熱し、原料粉末の表層同士を融着(焼結)させることにより、粉末間の空間を残したまま成形する手法である。その原料粉末として、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、アクリル樹脂(PMMA)、フッ素樹脂(PVDF、PTFE)等の熱可塑性樹脂材料を採用することが可能である。このように多孔質板51を樹脂材料で構成することにより、多孔質板51の表面に吸着されるテープの損傷を防止することができる。
【0021】
多孔質板51には、図示しない負圧吸引装置が接続されており、多孔質板51の表面全体に亘ってほぼ均一に負圧が供給される。従って、幅の異なる複数種のテープに対しても、一様に吸着保持可能な構成となっている。
【0022】
また、吸着装置50は、その下方に配置された中間プレート18に固定されている。この中間プレート18は、モータ16によりθz方向(z軸周りの回転方向)に回動しうるようになっている。そのモータ16はスライダ14に固定されている。このスライダ14は、ベースプレート12の表面をY方向に移動しうるようになっている。これにより吸着装置50は、ベースプレート12に対してθz方向およびY方向に移動しうるようになっている。
【0023】
アライメントユニット24は、上述したフレーム20に沿って移動する移動フレーム31、移動フレーム31に搭載されたカメラ(撮像装置)32、カメラ(第2撮像装置)33及びテープ押さえ装置34から構成されている。カメラ32、33は、CCDカメラ等で構成されるものであり、テープ80に形成されたマーク(後述)を計測し、制御部99に出力する。制御部99は、カメラ32、33の計測結果に基づいて、モータ16、スライダ14、繰出しローラ84及び巻取りローラ85の駆動を制御する。
【0024】
また、カメラ32は、移動フレーム31に一体的に固定されているが、カメラ33は、移動フレーム31に対してY軸方向に移動自在に設けられたスライダ35に搭載されることにより、制御部99の制御下でカメラ32に対してY軸方向に移動する。
【0025】
図3は、主としてテープ押さえ装置34に関する図2における右側面図である。
テープ押さえ装置34は、Y軸方向に延在する一対の押さえ部36と、Y軸方向に延び、支持柱37を介して押さえ部36の一方(−Y側)を上方から支持する支持フレーム38、支持柱39を介して押さえ部36の他方(+Y側)を上方から支持するとともに、支持フレーム38をY軸方向に伸縮自在に支持する支持フレーム40とを有している。
【0026】
支持フレーム38は、制御部99の制御により駆動する直動モータ等の駆動装置により支持フレーム40に対してY軸方向に移動する構成となっている。
支持フレーム40は、制御部99の制御により駆動する直動モータ等の駆動装置により、移動フレーム31にZ方向に延びて設けられたガイドフレーム41に沿ってZ軸方向に移動する構成となっている。
【0027】
図1に戻り、ガイドローラ61、62は、ポリプロピレン(PP)等の樹脂材で形成されており、X軸方向に延びX軸と平行な軸周りに回転するガイド軸(軸体)63、64が挿通し、テープ80の幅方向(X軸方向)に分割して設けられた一対のフランジ体(保持体)65、65及び一対のフランジ体(保持体)66、66からそれぞれ構成されている。
なお、フランジ体65、66は同様の構成を有しているため、以下フランジ体65についてのみ説明する。
【0028】
図4は、ガイド軸63に挿通されるフランジ体65、65の外観斜視図であり、図5は一部断面図であり、図6はフランジ体65の平面図である。
各フランジ体65は、内周面でガイド軸63に嵌合する筒状に形成されており、外周面でテープ80の裏面(液滴で描画される面と逆側の面)を支持する円筒部67と、テープ80の幅方向の側縁を保持するフランジ部68とを有している。また、各フランジ体65は、直径方向に沿って分離一体可能に2分割された分割体65A、65Aから構成されている。
【0029】
また、各フランジ体65には、各分割体65A同士の各接合面と直交して延びる溝部69が対をなす分割体65Aに跨って連通して設けられている。各溝部69の両端部には、ポスト材70が圧入等によりそれぞれ固定されている。このポスト材70には、引張バネ(付勢部材)71の端部がそれぞれ係合している。各引張バネ71は、端部において係合するポスト材70が接近する方向に、すなわち、一対の分割体65Aが接近して一体化する方向に付勢する。
また、各分割体65Aには、図5及び図6に示すように、内周面からほぼ同じ高さで垂直に突出する突部72が位置決め部として設けられている。
【0030】
そして、ガイド軸63の外周面には、フランジ体65の突部72とそれぞれ嵌合可能な複数(ここでは各分割体65A毎に3つ、合計6つ)の溝部73A〜73Cが軸周り(周方向)に形成されている(図5では、右側のフランジ体65に対応する溝部73A〜73C、及び左側のフランジ体65に対応する溝部73B、73Cのみ図示)。
溝部73A〜73Cは、フランジ体65の突部72が嵌合したときに、対向するフランジ部68間の距離Lがテープ80の種類に応じた所定幅となる位置に形成されている。
なお、フランジ体65の突部72は、各分割体65Aの接合面近傍まで設けられた場合には、溝部73A〜73Cから外す(嵌合解除させる)ためのストロークが大きくなるため、各分割体65Aの中央部のみに設けられている。
【0031】
図1に戻り、描画ユニット22には、液滴吐出ヘッド(吐出ヘッド)90が搭載されている。図7は、液滴吐出ヘッドの側面断面図である。吐出ヘッド90は、ヘッド本体90Aと、ヘッド本体90Aの一方面に装着されたノズルプレート92と、ヘッド本体90Aの他方面に装着されたピエゾ素子98とを主として構成されている。
【0032】
インク吐出面を構成するノズルプレート92には、液滴を吐出するための複数のノズル91が整列配置されている。またヘッド本体90Aには、各ノズル91と連通する複数の圧力室93が形成されている。各圧力室93はリザーバ95に接続され、リザーバ95はインク導入口96に接続されている。そしてインク9は、インク導入口96からリザーバ95を通って各圧力室93に供給されるようになっている。一方、ヘッド本体90Aの上端面には、可撓性を有する振動板94が装着されている。その振動板94を挟んで各圧力室93の反対側には、それぞれピエゾ素子98が設けられている。ピエゾ素子98は、PZT等の圧電材料を電極で挟持したものである。その電極は、制御部99に接続されている。
【0033】
そして制御部99からピエゾ素子98に駆動電圧を印加すると、ピエゾ素子98が膨張変形または収縮変形する。ピエゾ素子98が収縮変形すると、圧力室93内の圧力が低下して、リザーバ95から圧力室93にインク9が流入する。またピエゾ素子98が膨張変形すると、圧力室93内の圧力が増加して、ノズル91からインク9の液滴が吐出される。なお、ピエゾ素子98に印加する駆動電圧を制御することにより、液滴の吐出条件を制御しうるようになっている。
【0034】
なお液滴吐出方式として、ピエゾ素子の変形により圧力室内の圧力を変化させる上記ピエゾ方式の他に、インクを加熱して気泡(バブル)を発生させることにより圧力室内の圧力を変化させる方式など、公知の種々の技術を適用することができる。このうちピエゾ方式は、インクを加熱しないので材料の組成に悪影響を与えないなどの点で優れている。
【0035】
UV照射ユニット26には、UVランプ等のUV照射装置27が搭載されている。
本実施形態の描画装置1は、以上のように構成されている。
【0036】
次に、上記の描画装置1により液滴が吐出されてパターンが形成されるテープ80について説明する。
図8は、様々なテープ(TABテープ;ワーク)81〜83の部分平面図である。テープ81の幅方向両端部には、テープを巻き取るためのスプロケット孔86が連続形成され、テープ81の幅方向中央部には、半導体装置を形成するための作業領域88が連続形成されている。この作業領域88は、例えばデバイス毎に設定されるものである。
【0037】
そして、上記の描画装置1は、この作業領域88に金属配線パターンを描画形成するものであり、本実施形態の吸着装置は、金属配線パターンを描画すべきテープを吸着保持するものである。
上述した作業領域88の大きさに対応して、また幅方向における作業領域88の配列数に応じて、幅寸法の異なる複数種類のテープ81,82,83が存在する。
【0038】
各テープ81〜83における各作業領域88には、テープ81〜83を位置決めする際に観察されるアライメントマークAMが、例えばそれぞれ3個ずつ形成されている。なお、アライメントマークAMの形状は、計測方法等によって各種存在するが、ここでは円形のマークとし、矩形の作業領域88の3つのコーナー部に配置されるものとして図示している。
【0039】
次に、上記のガイドローラ61(62)の使用方法について説明する。
フランジ体65をガイド軸63に取り付ける際には、まず、引張バネ71を装着していない状態で、一対の分割体65Aによりガイド軸63を挟み込む。
このとき、使用するテープ80の幅に対応する溝部73A〜73Cにフランジ体65の突部72を嵌合させる。
【0040】
次いで、各分割体65Aの溝部69に引張バネ71を挿入し、ポスト材70に引張バネ71を係合させる。これにより、引張バネ71の付勢力が分割体65Aを一体化させる方向に作用し、フランジ体65はフランジ部68間の距離Lがテープ80の幅に設定された状態でガイド軸63にX軸方向に位置決めされて取り付けられる。
【0041】
また、機種変更等によりテープ80の幅が変更される場合には、引張バネ71の付勢力に抗して分割体65A、65Aを分離する(離間させる)方向に引っ張る。
そして、フランジ体65の突部72と、ガイド軸63の溝部(73A〜73Cのいずれか)との嵌合が解除される位置まで分割体65Aを離間させると、分割体65AをX軸方向に移動させて、変更されるテープの幅に対応する溝部(例えば73B)にフランジ体65の突部72を嵌合させる。
そして、分割体65Aへの引張を解除すると、引張バネ71の付勢力により、フランジ体65は、フランジ部68間の距離Lが変更されたテープ幅に設定された状態でガイド軸63にX軸方向に位置決めされて取り付けられる。
【0042】
次に、上述した描画装置1の使用方法について説明する。
ここでは、上述したテープ81を用いるものとして説明する。
また、本実施形態では、4つの作業領域88からなる作業領域88’に対して、一括して描画処理を行うものとし、作業領域88’における一端側(+Y側)に位置するアライメントマークAM1と、他端側(−Y側)に位置し、アライメントマークAM1と同列(同じX位置)に位置するアライメントマーク(第2マーク)AM2とを計測することにより、テープ81を位置決めするものとする。
【0043】
まず、図2に示す繰出しローラ84と巻取りローラ85との間にテープ80(ここではテープ81)を掛け渡し、両者間に配置された吸着装置50(多孔質板51)の表面にテープ81を載置する。
次に、描画ユニット22またはUV照射ユニット26が吸着装置50と対向する位置にある場合は、当該ユニットを吸着装置50との対向位置から予め退避させておく。
【0044】
続いて、アライメントユニット24をフレーム20に沿って移動させ、図3(a)に示すように、吸着装置50と対向する位置に位置決めする。
このとき、カメラ32の計測範囲にアライメントマークAM1が位置するように、移動フレーム31のX方向の位置を調整する。また、アライメントマークAM1、AM2の相対位置関係は既知であるため、この相対位置関係に応じた距離、スライダ35を介してカメラ33をY軸方向に移動させる。
【0045】
次に、支持フレーム40をガイドフレーム41に沿って下降させることにより、図3(b)に示すように、押さえ部36をテープ81に当接させる。このとき、押さえ部36は、予め支持フレーム38を支持フレーム40に対してX軸方向に移動させることにより、テープ81の幅方向の側縁に当接するように調整されている。
この後、負圧吸引装置を作動させて、テープ81を多孔質板51の表面に吸着保持させる。テープ81の両側は、押さえ部36によって押さえられているため、テープに反り、撓みが生じていた場合も矯正されて、浮き等が生じることなく多孔質板51の表面に平滑に吸着保持される。
【0046】
テープ81が吸着装置50に吸着保持されると、カメラ32によりアライメントマークAM1を撮影・計測し、カメラ33によりアライメントマークAM2を撮影・計測する。これらの撮影結果から、制御部99はテープ81の作業領域の現在位置を算出し、さらに所定位置からのオフセット量を算出する。その算出結果に基づいて、スライダ14およびモータ16を駆動して吸着装置50をY方向およびθz方向に移動させ、吸着装置50の表面に吸着されたテープ81を(液滴吐出ヘッド90に対して)位置合わせする。なおテープ81のX方向の位置合わせは、描画ユニット22の移動量を調整することによって行われる。
【0047】
テープ81の位置合わせが完了すると、フレーム20に沿ってアライメントユニット24を移動させて、吸着装置50(すなわちテープ81)との対向位置から退避させるとともに、描画ユニット22をX方向に移動させて吸着装置50との対向位置に配置する。そして、液滴吐出ヘッド90からインクを吐出することにより、テープ81の作業領域88に所定パターンの金属配線等が、例えば既に形成されている配線パターンと接続させるように描画される。
【0048】
テープ81に対する液滴吐出処理が完了すると、フレーム20に沿って描画ユニット22を移動させて、吸着装置50(すなわちテープ81)との対向位置から退避させるとともに、UV照射ユニット26をX方向に移動させて吸着装置50との対向位置に配置する。そして、UV照射装置27からUVを照射することにより、テープ81に吐出されたインクを乾燥させる。
【0049】
なお、上述した液滴吐出工程およびUV照射工程を繰り返し行うことにより、同種または異種の被膜を積層形成することが可能である。異種の被膜を積層形成する場合には、1つの描画ユニットに異なるインクを吐出する複数の液滴吐出ヘッドを搭載してもよいし、異なるインクを吐出する液滴吐出ヘッドを備えた複数の描画ユニットを設けてもよい。
【0050】
以上により、作業領域に対する描画処理が終了したら、テープ81を送って未処理の作業領域を吸着装置50の表面に載置し、上述した描画処理を繰り返す。
また、テープ81の全ての作業領域に対する描画処理が終了したら、図2に示す繰出しローラ84および巻取りローラ85とともにテープ81を交換するとともに、上述した手順でフランジ体65を移動させて新たなテープ幅に対応させる。
なお、テープサイズ(幅寸法)を変更する場合でも、テープの幅方向の中心線を吸着装置50の中心線と一致させる。これにより、テープサイズの変更にともなう描画装置の段取り換えを最小限にとどめることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の搬送装置では、引張バネ71の付勢力に抗して分割体65Aを分離させた後に、所望のテープ幅に対応する溝部73A〜73Cに突部72を嵌合させるという簡単な作業でテープ幅の変更に対応することが可能であり、工具を用いることなく容易に作業を行うことができる。また、本実施形態では、フランジ体65の摺接等が生じないので、クリーン度を低下させることなく、テープ幅の変更に対応することができる。
【0052】
さらに、本実施形態では、ガイド軸63に形成する溝部を増加させることにより、種々のテープ幅に容易に対応することができ、汎用性を向上させることができる。
加えて、本実施形態では、ガイド軸63への溝部を追加形成するとともに、フランジ体65及び引張バネ71を用意することにより、既存の搬送装置に対しても、本発明を容易に適用することが可能である。
【0053】
また、本実施の形態では、テープ81を多孔質板51により吸着するので、幅の異なる種々のテープにも容易に対応することができ、テープの種類変更に伴う作業を一層効率化することができる。
加えて、本実施形態では、テープ押さえ装置34によりテープ81の側縁を押さえる構成としているので、テープ81に反り、撓みが生じていた場合も矯正されて、浮き等が生じることなく多孔質板51の表面に平滑に吸着保持することが可能になり、アライメントマークを精度よく計測でき、所定位置にパターンを高精度に形成することができる。
【0054】
(液晶表示装置)
続いて、上記描画装置1により配線パターンが形成されたテープを有する液晶表示装置について説明する。
図9は、電気光学装置である液晶表示装置の分解斜視図である。
この図に示す液晶表示装置(電気光学装置)101は、大別するとカラーの液晶パネル(電気光学パネル)102と、液晶パネル102に接続される回路基板103とを備えている。また、必要に応じて、バックライト等の照明装置、その他の付帯機器が液晶パネル102に付設されている。
【0055】
液晶パネル102は、シール材104によって接着された一対の基板105a及び基板105bを有し、これらの基板105bと基板105bとの間に形成される間隙、いわゆるセルギャップには液晶が封入されている。これらの基板105a及び基板105bは、一般には透光性材料、例えばガラス、合成樹脂等によって形成されている。基板105a及び基板105bの外側表面には偏光板106a及び偏光板106bが貼り付けられている。なお、図6においては、偏光板106bの図示を省略している。
【0056】
また、基板105aの内側表面には電極107aが形成され、基板105bの内側表面には電極107bが形成されている。これらの電極107a、107bはストライプ状または文字、数字、その他の適宜のパターン状に形成されている。また、これらの電極107a、107bは、例えばITO(Indium Tin Oxide:インジウムスズ酸化物)等の透光性材料によって形成されている。
基板105aは、基板105bに対して張り出した張り出し部を有し、この張り出し部に複数の端子108が形成されている。これらの端子108は、基板105a上に電極107aを形成するときに電極107aと同時に形成される。従って、これらの端子108は、例えばITOによって形成されている。これらの端子108には、電極107aから一体に延びるもの、及び導電材(不図示)を介して電極107bに接続されるものが含まれる。
【0057】
なお、実際の電極107a,107b及び端子108は、極めて狭い間隔をもって多数本が基板105a及び基板105b上にそれぞれ形成されているが、図9においては、液晶パネル102の構造の理解を容易にするために、それらの間隔を拡大して模式的に示すとともに、それらの内の数本のみを図示することにして他の部分を省略してある。また、端子108と電極107aとの接続状態及び端子108と電極107bとの接続状態も図9においては図示を省略している。
【0058】
また、回路基板103には、配線基板(配線)109上の所定位置に液晶駆動用ICとしての半導体素子(半導体装置)100が実装されている。配線基板109は、例えばポリイミド等の可撓性を有するベース基板(基板)111の上に形成されたCu等の金属膜をパターニングして配線パターン112を形成することによって製造されている。
なお、実際の配線パターン112は、極めて狭い間隔をもって多数本がベース基板111上に形成されているが、図9においては、構造の理解を容易にするために、それらの間隔を拡大して模式的に示すとともに、構造を簡略化して図示してある。また、図示は省略しているが、半導体素子100が実装される部位以外の部位の所定位置には抵抗、コンデンサ、その他のチップ部品が実装されていてもよい。
【0059】
本実施形態では、この回路基板103が、上述した描画装置1によりパターンが形成されたテープをデバイス毎に切断することにより製造される。
本実施形態に係る液晶表示装置は、上述した描画装置1を用いて回路基板3が製造されているため、高精度に配線パターンが形成された高品質の液晶表示装置を得ることができる。
【0060】
(電子機器)
図10(a)〜(c)は、前述した液晶表示装置を有する電子機器の実施の形態例を示す図である。
図10(a)は、携帯電話の一例を示した斜視図である。図10(a)において、符号1000は携帯電話本体(電子機器)を示し、符号1001は表示部を示している。
図10(b)は、腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図10(b)において、符号1100は時計本体(電子機器)を示し、符号1101は表示部を示している。
図10(c)は、ワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図10(c)において、符号1200は情報処理装置(電子機器)、符号1202はキーボードなどの入力部、符号1204は情報処理装置本体、符号1206は表示部を示している。
図10(a)〜(c)に示すそれぞれの電子機器は、本発明の描画装置及び描画方法を用いて製造された液晶表示装置を備えているので、配線パターンの描画精度が向上した高品質の電子機器となる。
【0061】
また、上記実施形態では、電子機器として、携帯電話機、腕時計、情報処理装置を例に挙げて説明したが、これらに限らず、液晶プロジェクタ、マルチメディア対応のパーソナルコンピュータ(PC)及びエンジニアリング・ワークステーション(EWS)、ページャ、ワードプロセッサ、テレビ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、電子手帳、電子卓上計算機、カーナビゲーション装置、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の電子機器に適用することが可能である。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0063】
例えば、上記実施形態では、テープ押さえ装置34によってテープ81を押さえた後に、負圧吸引装置を作動させて多孔質板51の表面に吸着保持する手順としたが、逆の手順であってもよい。
また、上記実施形態では、カメラ33がカメラ32に対してY軸方向の1軸で相対移動可能な構成としたが、これに限定されるものではなく、Y軸方向及びX軸方向の2軸で相対移動可能な構成であってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、突部72がテープの幅方向と直交する面でガイド軸63の溝部73A〜73Cと嵌合する構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば図11(a)に示すように、突部72における嵌合面72a、72a同士及び溝部73A〜73Cにおける嵌合面73a、73a同士が互いに交差する、いわゆるテーパ合わせで嵌合する構成であってもよい。この場合、フランジ体65をがたつきなくガイド軸63に取り付けることが可能になり、精度よくテープを保持することができる。
さらに、図11(b)に示すように、嵌合面の中、図中、左側の嵌合面72b、73bのように、テープの幅方向(テープ保持方向)と直交するように設ける構成も好適である。この構成では、テーパ合わせにより、がたつきがない状態でフランジ体65を取り付けられるとともに、嵌合面72b、73bによりフランジ体65のテープ幅方向の位置を高精度に位置決めすることができ、より高精度にテープを保持することが可能になる。
【符号の説明】
【0065】
AM,AM1…アライメントマーク(マーク)、AM2…アライメントマーク(第2マーク)、CONT…制御装置、1…描画装置、32…カメラ(撮像装置)、33…カメラ(第2撮像装置)、50…吸着装置、51…多孔質板、61,62…ガイドローラ(ローラ)、63,64…ガイド軸(軸体)、65…フランジ体(保持体)、71…引張バネ(付勢部材)、72…突部(位置決め部)、72a,73a…嵌合面、73A〜73C…溝部、80〜83…テープ(ワーク)、84…繰出しローラ、85…巻取りローラ、90…液滴吐出ヘッド(吐出ヘッド)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のワークを幅方向で保持するローラを備えた搬送装置であって、
前記ローラは、前記幅方向で分割されそれぞれが前記ワークを保持する一対の保持体を有し、
前記一対の保持体のそれぞれは、分離一体可能な複数の分割体と、
前記複数の分割体を一体化する方向に付勢する付勢部材と、
前記複数の分割体が一体化されたときに、当該保持体を前記幅方向に位置決めさせる位置決め部とを有することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の搬送装置において、
前記ローラに挿通され、外周面に溝部が形成された軸体を有し、
前記位置決め部は、前記溝部に嵌合する突部を有することを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項2記載の搬送装置において、
前記溝部は、前記ワークの幅に応じて複数設けられることを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の搬送装置において、
前記保持体は、前記分割体が一体化されたときに前記突部が前記溝部に嵌合し、前記分割体が前記付勢部材の付勢力に抗して分離されたときに前記突部と溝部との嵌合が解除されることを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれかに記載の搬送装置において、
前記溝部及び前記突部は、互いに交差する嵌合面で嵌合することを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項5記載の搬送装置において、
前記嵌合面の少なくとも一つは、前記幅方向と略直交して設けられることを特徴とする搬送装置。
【請求項7】
帯状のワークを搬送する搬送装置と、搬送された前記ワークに対して液滴を吐出して描画する吐出ヘッドとを備えた描画装置であって、
前記搬送装置として請求項1から6のいずれかに記載の搬送装置が用いられることを特徴とする描画装置。
【請求項8】
帯状のワークを幅方向で保持し軸体が挿通するローラにより搬送する方法であって、
前記ローラを、前記幅方向で分割され、それぞれが前記ワークを保持する一対の保持体で構成し、
前記一対の保持体のそれぞれを、分離一体可能で、且つ一体化する方向に付勢され、前記軸体と嵌合したときに前記幅方向に位置決めされる複数の分割体で構成し、
前記複数の分割体を付勢される力に抗して分割して、前記軸体との嵌合を解除する工程と、
前記ワークに応じた位置で前記分割体を前記軸体に嵌合させる工程とを有することを特徴とする搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−71990(P2012−71990A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244278(P2011−244278)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【分割の表示】特願2009−177451(P2009−177451)の分割
【原出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】