説明

搬送装置及び搬送方法

【課題】搬送対象を適切に巻き取ることのできる技術を提供する。
【解決手段】用紙Pを初期状態からたるみセンサ7の検出位置までたるませることが可能であると想定される搬送量以上であり、且つ前記搬送対象が下方において有害物に接触することのない搬送量である第1搬送量を記憶するNVRAM5と、紙送りローラ18による搬送量が第1搬送量に到達する以前に、たるみセンサ7により用紙Pが検出された場合には、たるみセンサ7により用紙Pが検出された時点を基準として、用紙Pを巻き取り軸19により巻き取らせ、第1搬送量に到達する以前にたるみセンサ7により用紙Pが検出されていない場合には、第1搬送量に到達した時点を基準として、用紙Pを巻き取り軸19により巻き取らせる搬送制御部2bとを備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象の巻き取りを行う搬送装置及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送対象の巻き取りを行う搬送装置の一例としてプリンタが知られている。このようなプリンタにおいては、例えば、搬送対象の長尺の用紙を搬送して印刷を行い、印刷後の用紙がたるんでたるみセンサにより検出され、一定時間たるみセンサによる検出状態が保持されたときに、巻き取り軸により用紙を巻き取るようにしている。
【0003】
このようなプリンタにおいては、用紙を搬送する機構と、用紙を巻き取る機構とが独立しているものが知られている。このような構成のプリンタにおいて、良好に用紙を巻き取るための技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−167933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したようなプリンタにおいて、例えば、薄い用紙に印刷をした場合には、多量のインクで用紙が折れてしまい、うまくたるまないことが起こるおそれがある。この場合には、たるみセンサが検知できる検知範囲に用紙がたれずに、長い用紙が存在するのに関わらず、用紙の巻き取りが行われない虞がある。このような場合には、用紙が床についてしまって汚れてしまったり、用紙にしわがよってしまったりという問題を引き起こす虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、搬送対象を適切に巻き取ることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的達成のため、本発明の一の観点に係る搬送装置は、搬送対象を搬送する搬送手段と、搬送手段により搬送されてたるんだ状態の搬送対象を巻き取る巻き取り手段と、搬送対象が所定の検出位置までたるんだことを検出するセンサと、センサにより搬送対象が検出されたことに基づいて、巻き取り手段により搬送対象の巻き取りを制御する巻き取り制御手段とを有する搬送装置において、搬送対象を所定の状態から検出位置までたるませることが可能であると想定される搬送量以上であり、且つ搬送対象が下方において有害物に接触することのない搬送量である第1搬送量を記憶する第1搬送量記憶手段と、巻き取り制御手段は、搬送手段による搬送量が第1搬送量に到達する以前に、センサにより搬送対象が検出された場合には、センサにより搬送対象が検出された時点を基準として、搬送対象を巻き取り手段により巻き取らせ、第1搬送量に到達する以前にセンサにより搬送対象が検出されていない場合には、第1搬送量に到達した時点を基準として、前記搬送対象を巻き取り手段により巻き取らせる。
【0008】
係る装置によると、センサによって搬送対象が検出されていない場合であっても、搬送対象の搬送量が第1搬送量に到達した時点を基準として、搬送対象を巻き取り手段により適切に巻き取らせることができる。このため、例えば、搬送対象がセンサにより検出し辛いものである場合や、搬送対象が適切にたるんでいない場合であっても適切に巻き取りを行うことができる。
【0009】
また、上記搬送装置において、巻き取り制御手段は、搬送手段による搬送量が第1搬送量に到達する以前に、センサにより搬送対象が検出された場合には、センサにより検出された時点から搬送対象を所定の第2搬送量搬送させた後に、搬送対象を巻き取り手段により巻き取らせるようにしてもよい。係る装置によると、センサによる搬送対象を検出した時点から、搬送対象を第2搬送量搬送して更にたるませた後に搬送対象を巻き取ることができる。
【0010】
また、上記搬送装置において、巻き取り制御手段は、搬送手段による搬送量が第1搬送量に到達する以前に、前記センサにより搬送対象が検出された場合において、センサにより検出された時点から搬送対象を第2搬送量搬送させる前に、所定の状態からの搬送量が所定の限度搬送量に到達したときには、その時点において、搬送対象を巻き取り手段により巻き取らせるようにしてもよい。係る装置によると、センサによって搬送対象が検出された場合であっても、搬送対象が限度搬送量に到達したときには、適切に巻き取ることができる。
【0011】
また、上記搬送装置において、搬送量が第1搬送量又は限度搬送量に到達したことにより、巻き取り手段による搬送対象の巻き取りが行われたエラー巻き取り回数をカウントするカウント手段と、エラー巻き取り回数が所定の回数以上である場合にエラー処理を実行するエラー処理手段とを更に有するようにしてもよい。係る装置によると、センサにより搬送対象が検出されないことに対して適切にエラー処理を行うことができる。このため、例えば、ユーザに報知することができ、センサ自体に不具合が発生している可能性があることをユーザが把握することができる。
【0012】
また、上記目的達成のため、本発明の他の観点に係る搬送方法は、搬送対象を搬送する搬送手段と、搬送手段により搬送されてたるんだ状態の搬送対象を巻き取る巻き取り手段と、搬送対象が所定の検出位置までたるんだことを検出するセンサと、センサにより搬送対象が検出されたことに基づいて、巻き取り手段により搬送対象の巻き取りを制御する巻き取り制御手段とを有する搬送装置による搬送方法において、搬送装置の巻き取り制御手段が、搬送手段による搬送量が、搬送対象を所定の状態から検出位置までたるませることが可能であると想定される搬送量以上であり、且つ搬送対象が下方において有害物に接触することのない搬送量である第1搬送量に到達する以前に、センサにより搬送対象が検出された場合に、センサにより搬送対象が検出された時点を基準として、搬送対象を巻き取り手段により巻き取らせる第1巻き取りステップと、搬送装置の前記巻き取り制御手段が、第1搬送量に到達する以前に前記センサにより搬送対象が検出されていない場合に、第1搬送量に到達した時点を基準として、搬送対象を巻き取り手段により巻き取らせる第2巻き取りステップとを有する。
【0013】
係る方法によると、センサによって搬送対象が検出されていない場合であっても、搬送対象の搬送量が第1搬送量に到達した時点を基準として、搬送対象を適切に巻き取り手段により巻き取らせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
本発明の一実施形態に係る搬送装置の一例としてのプリンタを説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るプリンタの一部の構成及び用紙の搬送を説明する図である。
【0017】
プリンタ1には、長尺用紙(搬送対象:用紙)Pを搬送するための搬送手段の一例としての紙送りローラ18と、用紙Pに印刷するヘッド17と、印刷された用紙Pを巻き取る巻き取り手段の一例としての巻き取り軸19と、用紙Pのたるみを検出するたるみセンサ7とが設けられている。たるみセンサ7は、例えば、光学式センサであり、発光する発光部7aと、発光部7aからの光を受ける受光部7bとを有し、受光部7bが発光部7aからの光を受けていない場合に、CPU2(図2参照)に供給する信号をON(オン)する。
【0018】
プリンタ1により印刷を行う際には、ユーザは、用紙Pを巻回した図示しない用紙ロールを、図示しないロール装着部に装着し、用紙ロールから用紙Pを引き伸ばし、紙送りローラ18を介し、ヘッド17に対向する印刷領域を通過させて、巻き取り軸19に装着し、用紙Pを所定のたるみ状態、すなわち、初期たるみ状態(初期状態)S1にする必要がある。
【0019】
このように設定した後に、プリンタ1においては、用紙Pを搬送しつつ、ヘッド17を走査させて用紙Pに印刷を行うことができる。
【0020】
プリンタ1において、用紙Pを搬送しつつ、印刷を行うと、用紙Pは、初期状態S1よりも下方に徐々にたるむようになる。そこで、プリンタ1では、基本的には、用紙Pがたるんで床(有害物)に接触しないように、床までの距離l(初期状態からの距離)よりも短い距離j(基準たるみ量)のたるみとなった状態(基準たるみ状態S2)で用紙Pの巻き取りを行うようにしている。このために、本実施形態では、基準たるみ状態S2となる前に用紙を検出できるように、距離jの位置よりも上方の位置において用紙Pを検出できるようにたるみセンサ7が設けられている。本実施形態では、基本的には、たるみセンサ7が用紙Pを検知してから、基準たるみ状態S2になるまでの差分たるみ量kに対応する搬送量Xだけ用紙Pを搬送させた場合に、用紙Pを巻き取るようにしている。
【0021】
用紙Pは、初期状態S1から搬送されると、基本的には、基準たるみ状態S2に至るので、上記した方法により用紙Pを適切に巻き取ることができる。しかしながら、用紙Pの材質や、印刷におけるインク量等の影響により、基準たるみ状態S2となるはずであるのに、異常たるみ状態S4となるおそれもある。
【0022】
このように、用紙Pが異常たるみ状態S4なると、たるみセンサ7の検出時点を基準とした用紙巻き取り方法では、用紙Pを巻き取ることができない。そこで、本実施形態では、このような異常たるみ状態S4が発生した場合にでも、適切に用紙Pを巻き取ることができるようになっている。以下、この点を含めて、本実施形態のプリンタ1を詳細に説明する。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態に係るプリンタの機能構成図である。
【0024】
プリンタ1は、CPU(Central Processing Unit)2と、ROM(Read Only Memory)3と、RAM(Random Access Memory)4と、第1搬送量記憶手段の一例としてのNVRAM(Non Volatile Random Access Memory)5とを有する。CPU2と、ROM3と、RAM4と、NVRAM5は、バス6を介して接続されている。また、CPU2には、用紙Pが所定の位置までたるんでいることを検出するたるみセンサ7が接続されている。
【0025】
ROM3は、ブートプログラム等のプログラムを記憶する。本実施形態では、ROM3は、紙送り処理等のプログラムを記憶する。RAM4は、プログラムやデータを記憶する領域として、或いは、CPU2による処理に使用しているデータ(パラメータ等)を格納する作業領域として利用される。NVRAM5は、書き換え可能な不揮発性メモリであり、プリンタ1の電源が入っていない場合でも記憶しておく必要がある各種情報を記憶する。本実施形態では、NVRAM5は、例えば、搬送量X、搬送量Y,後述する前回PFCNT1等のデータを記憶する。たるみセンサ7は、用紙Pを検出した場合に、CPU2に供給する信号をON(オン)にし、用紙Pを検出していない場合に、CPU2に供給する信号をOFFにする。
【0026】
更に、プリンタ1は、CR(キャリッジ)モータドライバ8と、紙送りモータドライバ9と、巻き取りモータドライバ10と、ヘッドドライバ11と、ロジック回路12とを有する。CPU2と、CRモータドライバ8と、紙送りモータドライバ9と、巻き取りモータドライバ10と、ヘッドドライバ11と、ロジック回路12とは、バス20を介して接続されている。
【0027】
CRモータドライバ8は、CPU2の制御に基づいて、CRモータ14を駆動する。CRモータ14は、図示しないキャリッジを走査移動させる。紙送りモータドライバ9は、CPU2の制御に基づいて、紙送りモータ15を駆動する。紙送りモータ15は、紙送りローラ18を回転させて、用紙Pを搬送させる。巻き取りモータドライバ10は、CPU2の制御に基づいて、巻き取りモータ16を駆動する。巻き取りモータ16は、巻き取り軸19を回転させて、用紙Pを巻き取らせる。ヘッドドライバ11は、ヘッド17を駆動して、用紙Pへの印刷を実行させる。ロジック回路12には、紙送りエンコーダ13が接続されており、紙送りエンコーダ13から受信した紙送りモータ15の回転量をCPU2に通知する。紙送りエンコーダ13は、紙送りモータ15の回転量(例えば、単位回転量を検出したステップ数)を検出し、回転量をロジック回路12に出力する。ここで、回転量は、紙送りローラ18による用紙Pの搬送量に対応する。
【0028】
CPU2は、各部3〜5、8〜12の動作を制御する。また、CPU2は、ROM3からプログラムをRAM4に読み出して実行することにより、エラー処理手段の一例としての印刷制御部2a及び巻き取り制御手段及びカウント手段の一例としての搬送制御部2bを構成する。
【0029】
印刷制御部2aは、印刷処理に係る各種制御を行う。また、印刷制御部2aは、RAM4に格納されたERRCNT(エラーカウント:エラー巻き取り回数)が所定の値より大きい場合には、エラー処理を実行する。エラー処理としては、例えば、プリンタ1をエラー停止する処理や、ユーザにエラーが発生したことを報知する処理等がある。
【0030】
搬送制御部2bは、用紙の搬送処理及び用紙の巻き取り処理を制御する。搬送制御部2bは、所定の状態(例えば、用紙Pをプリンタ1に装着して調整した状態、又は、用紙Pを巻き取り軸19により巻き取らせた直後の状態:初期状態S1)からの紙送りローラ18による用紙Pの搬送量が、用紙Pが限度たるみ状態S3(図1参照)になると想定される搬送量(第1搬送量:限度搬送量)に到達する以前に、たるみセンサ7により用紙Pが検出された場合には、たるみセンサ7により用紙Pが検出された時点を基準として、巻き取りモータドライバ10を制御することにより、巻き取り軸19に用紙Pを巻き取らせる。本実施形態では、搬送制御部2bは、初期状態S1からの搬送量が第1搬送量に到達する以前に、たるみセンサ7により用紙Pが検出された場合において、たるみセンサ7により検出された時点から用紙Pを所定の搬送量(例えば、差分たるみ量kに対応する搬送量X:第2搬送量)だけ搬送させた後に、巻き取りモータドライバ10を制御することにより、巻き取り軸19に用紙Pを巻き取らせる。また、搬送制御部2bは、たるみセンサ7により検出された時点から用紙を第2搬送量搬送させる前に、第1搬送量(限度搬送量)に到達したときには、その時点において、巻き取りモータドライバ10を制御することにより、巻き取り軸19に用紙Pを巻き取らせる。ここで、限度搬送量とは、用紙Pが初期状態S1からのたるみ量が限度たるみ量iである限度たるみ状態S3になると想定される搬送量である。
【0031】
また、搬送制御部2bは、第1搬送量に到達する以前にたるみセンサ7により用紙Pが検出されていない場合には、第1搬送量に到達した時点を基準として、巻き取り軸19により、用紙Pを巻き取らせる。本実施形態では、第1搬送量に到達した時点に、巻き取りモータドライバ10を制御することにより、巻き取り軸19に用紙Pを巻き取らせる。また、搬送制御部2bは、たるみセンサ7により検出された時点から用紙Pを第2搬送量搬送させる前に、初期状態からの搬送量が第1搬送量に到達したとき、又は、第1搬送量に到達する以前にたるみセンサ7により用紙Pが検出されていない場合に、初期状態からの搬送量が第1搬送量に到達したときには、RAM4のERRCNTに1を加算する。
【0032】
次に、本発明の一実施形態に係るプリンタ1における各種処理について説明する。
【0033】
図3は、本発明の一実施形態に係るプリンタの初期処理のフローチャートである。初期処理は、プリンタ1の電源がオンされた場合に実行が開始される。まず、初期処理が開始されると、印刷制御部2aが、各機能部8、9、10、11等の機構部分を初期化し(ステップS1)、RAM4にPFCNT1と、PFCNT2との領域を確保し、それぞれに0を設定する(ステップS2)。ここで、PFCNT1は、初期状態S1からの搬送量を格納するためのカウンタであり、PFCNT2は、たるみセンサ6により検出された後の搬送量を格納するためのカウンタである。
【0034】
図4は、本発明の一実施形態に係るプリンタのメイン処理のフローチャートである。メイン処理は、初期処理終了後に実行が開始され、まず、印刷制御部2aが、コマンドを実行するか否かを判定し(ステップS11)、コマンドを実行しない場合(ステップS11:NO)には、印刷データをイメージに展開し(ステップS12)、イメージを格納したバッファ(例えば、RAM4の一部の記憶領域)がフルになったか否かを判定し(ステップS13)、バッファがフルになっていない場合には、ステップS11に戻る。一方、コマンドを実行する場合(ステップS11:YES)には、コマンドが印刷起動か否かを判定する(ステップS14)。
【0035】
そして、ステップS13でバッファがフルになった場合(ステップS13:YES)、又はステップS14でコマンドが印刷起動であると判定した場合(ステップS14:YES)には、印刷制御部2aは、タイマスタートして割り込みを許可し(ステップS15)、用紙Pに画像を印刷する印刷処理を実行し(ステップS16)、ステップS11に戻る。
【0036】
ステップS14で、コマンドが印刷起動でない場合(ステップS14:NO)には、印刷制御部2aは、更に、コマンドが紙送りか否かを判定し(ステップS17)、コマンドが紙送りである場合(ステップS17:YES)には、タイマスタートして割り込みを許可し(ステップS18)、紙送り処理を実行し(ステップS19)、ステップS11に戻る。一方、コマンドが紙送りでない場合(ステップS17:NO)には、印刷制御部2aは、コマンドがJOB終了であるか否かを判定し(ステップS20)、JOB終了でない場合には、ステップS11に戻る。
【0037】
ステップS20で、JOB終了であると判定した場合(ステップS20:YES)には、印刷制御部2aはRAM4のERRCNTが6より大きいか否かを判定し、6より大きい場合には、エラー処理を実行する(ステップS22)一方、6以下の場合には、ステップS11に戻る。
【0038】
図5は、本発明の一実施形態に係るプリンタの紙送り処理のフローチャートである。まず、用紙Pが目標位置に到達したか否かを搬送制御部2bが判定し(ステップS31)、目標位置に到達している場合には、タイマストップして割り込みを禁止し(ステップS32)、処理を終了する。一方、目標位置に到達していない場合(ステップS31:NO)には、搬送制御部2bは、自動巻き取りがON(オン)に設定されているか否かを判定する(ステップS33)。なお、自動巻き取りをONにする設定は、ユーザが図示しない入力装置により設定できるようになっている。
【0039】
判定の結果、自動巻き取りがONに設定されていない場合(ステップS33:NO)には、搬送制御部2bは、紙送りモータドライバ9により紙送りモータ15に電力を印加させ(ステップS34)、ステップS31に戻る。これにより、紙送りモータ15により紙送りローラ18が回転され、用紙Pが搬送される。一方、自動巻き取りがONに設定されている場合(ステップS33:ON)には、搬送制御部2bは、たるみセンサ7がONか否かを判定する(ステップS35)。
【0040】
たるみセンサ7がONの場合には、搬送制御部2bは、たるみセンサ7がOFFからONに変わったか否かを判定し(ステップS36)、OFFからONに変わった場合には、NVRAM5の前回PFCNT1に現在のPFCNT1の値を格納する(ステップS37)。ここで、前回PFCNT1は、初期状態S1からたるみセンサ7により検出されるまでの搬送量を示している。一方、たるみセンサ7がOFFからONに変わっていない場合には、そのまま次のステップS38に進む。
【0041】
ステップS38では、RAM4のPFCNT1に用紙Pを搬送した搬送量n(例えば、搬送時に紙送りエンコーダ13により検出された回転量を示すステップ数)を加算し、PFCNT2に、搬送量nを加算する。次いで、搬送制御部2bは、PFCNT1の値が前回PFCNT1+搬送量Y(搬送量Yは、図1に示すたるみセンサ7による検出位置から限度たるみ状態S3になるまでに想定される搬送量である。)よりも大きいか否かを判定する(ステップS39)。ここで、前回PFCNT1は、初期状態S1からたるみセンサ7に検出位置までの搬送量に相当するので、これに搬送量Yを加算すると、初期状態から限度たるみ量iだけ下方の位置までたるんだ限度たるみ状態S3になるまでに想定される搬送量(第1搬送量:限度搬送量)となる。この結果、PFCNT1の値が前回PFCNT1+搬送量Yより大きくない場合(ステップS39:NO)には、搬送制御部2bは、PFCNT2が搬送量Xより大きいか否かを判定する(ステップS40)。
【0042】
PFCNT2が搬送量Xより大きい場合(ステップS40:YES)には、用紙Pが基準たるみ状態S2になったことを意味するので、搬送制御部2bは、RAM4のPFCNT1と、PFCNT2を0に設定し(ステップS41)、タイマスタートして割り込みを許可し(ステップS42)、第1巻き取り処理(図6参照)を実行し(ステップS43)、ステップS34に進む。一方、ステップS40で、PFCNT2が搬送量X以下である場合(ステップS40:NO)には、ステップS34に進む。
【0043】
一方、PFCNT1の値が前回PFCNT1+搬送量Yより大きい場合(ステップS39:YES)には、初期状態S1から限度たるみ状態S3となる搬送量分搬送したことを意味するので、搬送制御部2bは、ERRCNTに1を加算し(ステップS44)、PFCNT1と、PFCNT2とを0に設定し(ステップS45)、タイマスタートして割り込みを許可し(ステップS46)、第2巻き取り処理(図7参照)を実行し(ステップS47)、ステップS34に進む。
【0044】
一方、ステップS35において、たるみセンサ7がONではない場合(ステップS35:NO)には、搬送制御部2bは、PFCNT1に用紙Pを搬送した搬送量nを加算し(ステップS48)、PFCNT1の値が前回PFCNT1+搬送量Yよりも大きいか否かを判定する(ステップS49)。
【0045】
この結果、PFCNT1の値が前回PFCNT1+搬送量Yより大きくない場合(ステップS49:NO)には、ステップS34に進む一方、PFCNT1の値が前回PFCNT1+搬送量Yより大きい場合(ステップS49:YES)には、初期状態S1から限度たるみ状態S3となる搬送量分搬送したことを意味するので、搬送制御部2bは、ERRCNTに1を加算し(ステップS50)、PFCNT1と、PFCNT2とを0に設定し(ステップS51)、タイマスタートして割り込みを許可し(ステップS52)、第2巻き取り処理(図7参照)を実行し(ステップS53)、ステップS34に進む。これにより、たるみセンサ7によって検出されない場合であっても、適切に用紙Pを巻き取ることができる。
【0046】
図6は、本発明の一実施形態に係る第1巻き取り処理のフローチャートである。第1巻き取り処理においては、搬送制御部2bがたるみセンサ7がオンであるか否かを判定し(ステップS61)、オンである場合には、巻き取りモータドライバ10により巻き取りモータ16に電力を印加させる(ステップS62)。これにより、巻き取りモータ16により巻き取り軸19が回転され、用紙Pの巻き取りが行われる。次いで、搬送制御部2bは、巻き取りモータ16の第1巻き取り処理における駆動時間Tを計測し(ステップS63)、ステップS61に戻る。
【0047】
一方、たるみセンサ7がオフの場合(ステップS61:NO)には、搬送制御部2bがNVRAM5に計測している駆動時間Tを保持させ(ステップS64)、タイマストップして割り込みを禁止し(ステップS65)、処理を終了する。この処理により、NVRAM5には、巻き取りを開始してから終了するまで、すなわち、用紙Pを基準たるみ状態S2から初期状態S1となるまで巻き取ったと考えられる場合における巻き取りモータ16の駆動時間Tが格納されることとなる。
【0048】
図7は、本発明の一実施形態に係る第2巻き取り処理のフローチャートである。第2巻き取り処理においては、搬送制御部2bは、処理開始からの巻き取りモータ16の駆動時間が、NVRAM5に格納した駆動時間Tを経過したか否かを判定し(ステップS71)、駆動時間Tを経過していない場合には、巻き取りモータドライバ10により巻き取りモータ16に電力を印加させ(ステップS72)、ステップS71に戻る。これにより、巻き取りモータ16により巻き取り軸19が回転され、用紙Pの巻き取りを行われる。
【0049】
一方、駆動時間Tを経過している場合(ステップS71:YES)には、用紙Pが初期状態S1に近い状態となるまで巻き取られたと考えられるので、タイマストップして割り込みを禁止し(ステップS73)、処理を終了する。この処理によると、たるみセンサ7の検出できた場合において、巻き取りモータ16を駆動した駆動時間Tを用いて用紙Pを巻き取るようにしているので、たるみセンサ7による用紙Pの検出が行えない場合であっても、基準たるみ状態S2から初期状態S1となるまでに相当する長さ分だけ用紙Pを巻き取ることができ、用紙Pを限度たるみ状態S3から略初期状態S1にすることができる。
【0050】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態に限られず、他の様々な態様に適用可能である。例えば、上記実施形態では、たるみセンサ7がオンしてから、所定の搬送量を搬送した場合に、用紙Pを巻き取るようにしていたが、本発明はこれに限られず、たるみセンサ7がオンしてから所定時間搬送した場合に用紙Pを巻き取るようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、初期状態S1から、たるみセンサ7がOFFからONになるまでの搬送量であるPFCNT1の値を前回PFCNT1とし、前回PFCNT1と搬送量Yとを加算して第1搬送量としていたが、本発明はこれに限られず、初期状態からたるみセンサ7に検出されるまでの搬送量を予め把握してNVRAM5等に記憶しておき、当該搬送量と搬送量Yとを加算したものを第1搬送量として用いるようにしてもよい。この場合には、把握した搬送量及び搬送量Y、又は、これらを加算した搬送量を第1搬送量としてNVRAM5に記憶させておくようにすればよい。
【0052】
また、上記実施形態では、初期状態からの現時点の搬送量(PFCNT1)が、前回の初期状態からたるみセンサ7がオンまでの搬送量(前回PFCNT1)に搬送量Yを加算した値を超えた場合に、用紙Pを巻き取るようにしていたが、本発明はこれに限られず、例えば、現時点の初期状態からの搬送量が、前回PFCNT1より所定の割合(例えば、10パーセント)を超えた場合に、用紙Pを巻き取るようにしてもよく、要は、初期状態からの搬送量が、初期状態からたるみセンサ7の検出位置までたるませることが可能であると想定される搬送量以上であり、且つ用紙Pが下方において床等の有害物に接触することのない搬送量を超える場合に用紙Pを巻き取るようにすればよい。
【0053】
また、上記実施形態では、たるみセンサ7がオンとなった後に、用紙Pを巻き取る前に限度搬送量を超えた場合に、用紙Pを巻き取るようにしていたが、本発明はこれに限られず、たるみセンサ7がオンとなった後においては、第2搬送量を超えた場合にのみ用紙Pを巻き取るようにしてもよい。また、上記実施形態では、搬送対象として用紙を用いていたが、これに限られず、例えば、ビニールシートや、布シートであってもよく、要は、巻き取ることのできるものであればよい。したがって、本発明は、上記したプリンタに限られず、搬送対象を巻き取る搬送装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの一部の構成及び用紙の搬送を説明する図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るプリンタの機能構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るプリンタの初期処理のフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係るプリンタのメイン処理のフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係るプリンタの紙送り処理のフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る第1巻き取り処理のフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係る第2巻き取り処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1 プリンタ、2 CPU、3 ROM、4 RAM、5 NVRAM、6 バス、7 たるみセンサ、8 CRモータドライバ、9 紙送りモータドライバ、10 巻き取りモータドライバ、11 ヘッドドライバ、12 ロジック回路、13 紙送りエンコーダ、14 CRモータ、15 紙送りモータ、16 巻き取りモータ、17 ヘッド、18 紙送りローラ、19 巻き取り軸、20 バス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象を搬送する搬送手段と、搬送手段により搬送されてたるんだ状態の前記搬送対象を巻き取る巻き取り手段と、前記搬送対象が所定の検出位置までたるんだことを検出するセンサと、前記センサにより前記搬送対象が検出されたことに基づいて、前記巻き取り手段により前記搬送対象の巻き取りを制御する巻き取り制御手段とを有する搬送装置において、
前記搬送対象を所定の状態から前記検出位置までたるませることが可能であると想定される搬送量以上であり、且つ前記搬送対象が下方において有害物に接触することのない搬送量である第1搬送量を記憶する第1搬送量記憶手段と、
前記巻き取り制御手段は、前記搬送手段による搬送量が前記第1搬送量に到達する以前に、前記センサにより前記搬送対象が検出された場合には、前記センサにより前記搬送対象が検出された時点を基準として、前記搬送対象を前記巻き取り手段により巻き取らせ、前記第1搬送量に到達する以前に前記センサにより前記搬送対象が検出されていない場合には、前記第1搬送量に到達した時点を基準として、前記搬送対象を前記巻き取り手段により巻き取らせる
搬送装置。
【請求項2】
前記巻き取り制御手段は、前記搬送手段による搬送量が前記第1搬送量に到達する以前に、前記センサにより前記搬送対象が検出された場合には、前記センサにより検出された時点から前記搬送対象を所定の第2搬送量搬送させた後に、前記搬送対象を前記巻き取り手段により巻き取らせる
請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記巻き取り制御手段は、前記搬送手段による搬送量が前記第1搬送量に到達する以前に、前記センサにより前記搬送対象が検出された場合において、前記センサにより検出された時点から前記搬送対象を前記第2搬送量搬送させる前に、前記所定の状態からの搬送量が所定の限度搬送量に到達したときには、その時点において、前記搬送対象を前記巻き取り手段により巻き取らせる
請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送量が前記第1搬送量に到達したこと又は前記限度搬送量に到達したことにより、前記巻き取り手段による前記搬送対象の巻き取りが行われたエラー巻き取り回数をカウントするカウント手段と、
前記エラー巻き取り回数が所定の回数以上である場合にエラー処理を実行するエラー処理手段とを更に有する
請求項3記載の搬送装置。
【請求項5】
搬送対象を搬送する搬送手段と、搬送手段により搬送されてたるんだ状態の前記搬送対象を巻き取る巻き取り手段と、前記搬送対象が所定の検出位置までたるんだことを検出するセンサと、前記センサにより前記搬送対象が検出されたことに基づいて、前記巻き取り手段により前記搬送対象の巻き取りを制御する巻き取り制御手段とを有する搬送装置による搬送方法において、
前記搬送装置の前記巻き取り制御手段が、前記搬送対象を所定の状態から前記検出位置までたるませることが可能であると想定される搬送量以上であり、且つ前記搬送対象が下方において有害物に接触することのない搬送量である第1搬送量に、前記搬送手段による前記搬送量が到達する以前に、前記センサにより前記搬送対象が検出された場合に、前記センサにより前記搬送対象が検出された時点を基準として、前記搬送対象を前記巻き取り手段により巻き取らせる第1巻き取りステップと、
前記搬送装置の前記巻き取り制御手段が、前記第1搬送量に到達する以前に前記センサにより前記搬送対象が検出されていない場合に、前記第1搬送量に到達した時点を基準として、前記搬送対象を前記巻き取り手段により巻き取らせる第2巻き取りステップとを有する搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−227423(P2009−227423A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76385(P2008−76385)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】