説明

搬送装置

【課題】簡単な構造で、たとえば、無段変速機用ベルトのリング搬送に適用できる低コストな搬送装置を提供する。
【解決手段】一対の搬送爪(14、23)は、それぞれ被搬送部品(2)に当接可能な搬送当接面(14a、23a)を有すると共に、該搬送当接面が前記被搬送部品に当接していないときに該搬送当接面を傾斜状態に維持する一方、一対の搬送爪のそれぞれの搬送当接面が前記被搬送部品に当接したときには、その当接圧を受けて前記傾斜の量を減少させるように構成したので、一対の搬送爪のそれぞれの搬送当接面の傾斜量が減少する過程において、一対の搬送爪のそれぞれの搬送当接面で前記被搬送部品を保持することができると共に、当該搬送当接面の傾斜量の減少程度に対応した量だけ前記被搬送部品を持ち上げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関し、たとえば、無段変速機用ベルトの製造工程に適用できる搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無段変速機用ベルトは、薄板状の金属リングを複数枚積層し、そのリング積層体に多数の金属エレメントをはめ込んで組み立てられている。上記リングは、マルエージング鋼等の超強靱薄板鋼の端部同士を溶接して形成された円筒状のドラムを所定幅ずつ裁断して作られたものであり、裁断後のリングは、圧延工程、容体化処理工程、周長補正工程、時効及び窒化処理工程等の様々な工程を経て、無段変速機用ベルトの組み立て工程に投入される。
【0003】
上記の各工程間におけるリングの搬送装置の従来技術としては、たとえば、下記の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0004】
この従来技術の搬送装置は、基台に立設されたポールと、このポールの上下に水平方向に張り出して取着されたアームと、このアームの先端に取着された上下各一対の係止部材とを備え、上下各一対の係止部材にリングを掛け渡した状態で、当該リングの搬送を行うというものである。
【0005】
【特許文献1】特許第3640849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、従来技術の搬送装置は、上下各一対の係止部材にリングを掛け渡した状態で当該リングの搬送を行うことができるため、搬送の際にリングが揺動せず、リングの脱落を防止できる。また、搬送時、リング同士は互いに接触せず、且つ、他部材とも干渉しないため、リング表面の損傷を回避することもできる等の点で優れているが、上下各一対の係止部材にリングを掛け渡す際にロボットハンドを使用する仕組みになっており、したがって、構造の複雑化を否めず、装置のコストが嵩むという問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は、簡単な構造で、たとえば、無段変速機用ベルトのリング搬送に適用できる低コストな搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る搬送装置は、被搬送部品の搬送方向に沿って配設された一対の搬送爪と、前記一対の搬送爪の間隔を調節可能な間隔調整手段とを備え、前記間隔調整手段によって前記一対の搬送爪の間隔を調整することにより、該一対の搬送爪で前記被搬送部品を保持しつつ所定方向に搬送する搬送装置であって、前記一対の搬送爪は、それぞれ前記被搬送部品に当接可能な搬送当接面を有すると共に、該搬送当接面が前記被搬送部品に当接していないときに該搬送当接面を傾斜状態に維持する傾斜維持手段を備え、該傾斜維持手段は、前記一対の搬送爪のそれぞれの搬送当接面が前記被搬送部品に当接したときに、その当接圧を受けて前記傾斜の量を減少させることを特徴とするものである。
また、好ましい態様は、前記傾斜維持手段は、バネの付勢力を用いて前記一対の搬送爪のそれぞれの搬送当接面の傾斜を維持することを特徴とするものであり、又は、前記傾斜維持手段は、前記一対の搬送爪の自重を利用して前記一対の搬送爪のそれぞれの搬送当接面の傾斜を維持することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る搬送装置によれば、一対の搬送爪は、それぞれ被搬送部品に当接可能な搬送当接面を有すると共に、該搬送当接面が前記被搬送部品に当接していないときに該搬送当接面を傾斜状態に維持する一方、一対の搬送爪のそれぞれの搬送当接面が前記被搬送部品に当接したときには、その当接圧を受けて前記傾斜の量を減少させるように構成したので、一対の搬送爪のそれぞれの搬送当接面の傾斜量が減少する過程において、一対の搬送爪のそれぞれの搬送当接面で前記被搬送部品を保持することができると共に、当該搬送当接面の傾斜量の減少に対応させて前記被搬送部品を持ち上げることができる。
したがって、搬送の際に被搬送部品が揺動せず、被搬送部品の脱落を防止でき、また、搬送時、被搬送部品と他部材との干渉を防止し、被搬送部品表面の損傷を回避することもできる。加えて、従来技術のロボットハンドを不要にすることができ、簡単な構造で、たとえば、無段変速機用ベルトのリング搬送等に適用できる低コストな搬送装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明における様々な細部の特定ないし実例および数値や文字列その他の記号の例示は、本発明の思想を明瞭にするための、あくまでも参考であって、それらのすべてまたは一部によって本発明の思想が限定されないことは明らかである。また、周知の手法、周知の手順、周知のアーキテクチャおよび周知の回路構成等(以下「周知事項」)についてはその細部にわたる説明を避けるが、これも説明を簡潔にするためであって、これら周知事項のすべてまたは一部を意図的に排除するものではない。かかる周知事項は本発明の出願時点で当業者の知り得るところであるので、以下の説明に当然含まれている。
【0011】
<第一実施形態>
図1は、第一実施形態の搬送装置の構成図であり、(a)は側面図、(b)は要部平面図である。これらの図において、搬送装置1は、無段変速機用ベルトの構成部品の一つであるリング2の搬送方向(図では水平方向)に延設された搬送レール3と、この搬送レール3の延設方向に沿って滑動可能な主移動機構4と、この主移動機構4の下側に一体的に取り付けられた基台部5と、基台部5の一端側(以下、右端側)に垂設された右方保持部6と、基台部5の他端側(以下、左端側)に垂設された左方保持部7とを備えている。
【0012】
右方保持部6は、基台部5の右端側下面に取り付けられた第一部材8と、この第一部材8に取り付けられた第二部材9と、これらの第一部材8と第二部材9の間にボルト10及びナット11で挟装されると共に、バネ12で付勢され、且つ、第一部材8の下端部に設けられた支点13の周りを揺動可能に支持された右方搬送爪14とを備えている。
【0013】
左方保持部7は、基台部5の左端側下面に取り付けられた副移動機構15と、この副移動機構15の動作に伴って図面の左右方向(つまりリング2の搬送方向)に移動するシャフト16の先端に取り付けられた第一部材17と、この第一部材17に取り付けられた第二部材18と、これらの第一部材17と第二部材18の間にボルト19及びナット20で挟装されると共に、バネ21で付勢され、且つ、第一部材17の下端部に設けられた支点22の周りを揺動可能に支持された左方搬送爪23とを備えている。
【0014】
したがって、このような構成によれば、図示の搬送装置1は、主移動機構4の動きに伴って、その全体が、搬送レール3の延設方向、すなわち、リング2の搬送方向(図面の左右方向)に移動する。
【0015】
ここで、基台部5の右端側に設けられた右方保持部6は、主移動機構4の動きに一対一に対応した動き(移動)を呈するが、基台部5の左端側に設けられた左方保持部7は、主移動機構4と副移動機構15の双方の動きに対応した運動(移動)を呈する。
【0016】
今、右方搬送爪14と左方搬送爪23の搬送当接面14a及び搬送当接面23aの間隔を便宜的に“Da”とする。この間隔Daは、副移動機構15の動きによって調節可能である。たとえば、副移動機構15を動かしてシャフト16を図示位置よりも後退(図面の右方向へ移動)させた場合には、その後退分だけ間隔Daは小さくなり、逆にシャフト16を図示位置よりも前進(図面の左方向へ移動)させた場合には、その前進分だけ間隔Daは大きくなる。
【0017】
このように、左方保持部7の左方搬送爪23の位置は、主移動機構4の動きだけでなく、副移動機構15の動きによっても調節可能になっている。
【0018】
右方搬送爪14と左方搬送爪23の搬送当接面14a及び搬送当接面23aは、(b)に示すように、その平面形状が所定曲率の凸状曲面に成形されている。そして、リング2の直径よりも狭い間隔で平行する一対のガイドレール24及びガイドレール25の間に挟み込まれたリング2の内面側に、右方搬送爪14と左方搬送爪23を差し入れて、上記の間隔Daを増大方向に調節することにより、それらの右方搬送爪14と左方搬送爪23の搬送当接面14a及び搬送当接面23aでリング2の内面を対向二箇所で拡径しつつ保持できるようになっている。
【0019】
図2は、左方保持部7の拡大構成図である。なお、右方保持部6と左方保持部7は左右の向きが逆である点を除き、その構成は同一である。ここでは、説明の簡単化のために左方保持部7を代表として説明することにする。
【0020】
先に説明したとおり、左方保持部7は、基台部5の左端側下面に取り付けられた副移動機構15と、この副移動機構15の動作に伴って図面の左右方向(つまりリング2の搬送方向)に移動するシャフト16の先端に取り付けられた第一部材17と、この第一部材17に取り付けられた第二部材18と、これらの第一部材17と第二部材18の間にボルト19及びナット20で挟装されると共に、バネ21で付勢され、且つ、第一部材17の下端部に設けられた支点22の周りを揺動可能に支持された左方搬送爪23とを備えている。
【0021】
より詳細には、ボルト19は、左方搬送爪23に形成されたボルト穴26に若干の遊びを持って挿通されており、さらに、バネ21は、このボルト穴26の一部を拡大して形成された拡径部27と第一部材17との間に圧縮状態で挿入されている。
【0022】
さて、上記のとおり、左方搬送爪23は、第一部材17の下端部に設けられた支点22の周りを揺動可能に支持されているので、バネ21の付勢力は、支点22を中心にして左方搬送爪23を“反時計回り方向”に揺動させるように作用する。同様に、右方搬送爪14のバネ12の付勢力は、支点13を中心にして右方搬送爪14を“時計回り方向”に揺動させるように作用する。
【0023】
したがって、リング2を保持していないときの左方搬送爪23は、図示のように、その搬送当接面23aを若干下側に傾けた状態にあり、同様に、リング2を保持していないときの右方搬送爪14も、その搬送当接面14aを若干下側に傾けた状態にある。
【0024】
図3は、左方保持部7の動作の様子を示す図である。この図において、(a)はリング2を保持していないときの様子を示し、(b)はリング2を保持しているときの様子を示している。
【0025】
リング2を保持していないとき、左方保持部7の左方搬送爪23は、上記のとおり、その搬送当接面23aを若干下側に傾けた状態になっている。この状態で、テーブル28に載置されたリング2の内面側に、右方保持部6の右方搬送爪14と左方保持部7の左方搬送爪23とを差し入れ、副移動機構15を動かして前記の間隔Daを拡大させていく(矢印29参照)と、右方搬送爪14と左方搬送爪23のそれぞれの搬送当接面14a及び搬送当接面23aがリング2の内周面に当接し、右方搬送爪14と左方搬送爪23のそれぞれの搬送当接面14a及び搬送当接面23aに、上記の矢印29と逆向きの力Pa(矢印30参照)が加えられる。
【0026】
力Paの作用点は、右方搬送爪14と左方搬送爪23のそれぞれの搬送当接面14a及び搬送当接面23aの面内に位置するが、この作用点をより子細に観察すると、右方搬送爪14と左方搬送爪23のそれぞれの搬送当接面14a及び搬送当接面23aにリング2の内周面が当接する「初期の段階」では、(a)のように右方搬送爪14と左方搬送爪23が若干傾いているため、搬送当接面14a及び搬送当接面23aの高さ方向のほぼ中間部付近(図中の符号Aa参照)が力Paの「最初の作用点」となる。
【0027】
重要なことは、力Paの最初の作用点、つまり、図中の符号Aaで示す部分が支点22よりも上に位置していることにある。たとえば、図示の例では、力Paの最初の作用点(Aa)は、支点22よりも距離Laだけ上に位置している。ここで、“上”とはバネ21に近づく方向をいう。距離Laは、原理的には0よりも大きい値であればよいが、この距離Laは、後述のリフト量Lbにも関係するため、実際の距離Laは、必要とするリフト量Lbを勘案して適切な値に設定すればよい。
【0028】
さて、支点22よりも距離Laだけ上に位置する作用点(Aa)に力Paが加えられると、左方搬送爪23は、支点22を中心にして時計回り方向(矢印Ba参照)に揺動を開始し、同様に、右方搬送爪14も、支点13を中心にして反時計回り方向に揺動を開始する。
【0029】
右方搬送爪14及び左方搬送爪23の揺動は、それらの搬送当接面14a及び搬送当接面23aとリング2の内周面とがほぼ平行に揃った時点で終了する。そして、その揺動終了時点の右方搬送爪14及び左方搬送爪23は、リング2の内面を対向二箇所で拡径しつつ保持すると共に、リング2を保持したままテーブル28から若干持ち上がった状態になる。図中のリフト量Lbは、右方搬送爪14及び左方搬送爪23のリフト量、すなわち、テーブル28からのリング2の持ち上がり量を表している。
【0030】
このように、リング2を右方搬送爪14と左方搬送爪23でしっかりと保持できるため、搬送の際のリング2の揺れを防止して脱落を回避できる。また、リフト量Lbの分だけリング2をテーブル28から浮かして搬送できるため、リング2の表面への損傷を回避することもできる。
【0031】
しかも、この搬送装置1では、図1(b)に示すように、リング2の直径よりも狭い間隔で平行する一対のガイドレール24、ガイドレール25の間に挟み込まれたリング2の内面側に、右方搬送爪14と左方搬送爪23を差し入れ、副移動機構15を動かして、右方搬送爪14と左方搬送爪23の搬送当接面14a及び搬送当接面23aの間隔Daを増大方向に調節するだけで、それらの右方搬送爪14と左方搬送爪23の搬送当接面14a及び搬送当接面23aでリング2の内面を対向二箇所で拡径しつつしっかりと保持することができる。
【0032】
したがって、冒頭で説明した従来技術のようなロボットハンドを必要としないから、構成を簡素化して装置コストを削減できるという格別有益な効果が得られる。
【0033】
なお、本発明は、前記の第一実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において様々な変形例や発展例を包含することはもちろんであり、たとえば、以下のようにしてもよい。
【0034】
前記の第一実施形態では、リング2を保持していないときの右方搬送爪14及び左方搬送爪23の傾きを維持するために、バネ12及びバネ21の力を利用しているが、この態様(バネ12及びバネ21の使用)は実用上のベストモードである。発明の原理上はバネ12及びバネ21を使用しない構成とすることも可能である。
【0035】
すなわち、第一実施形態の構成では、バネ12の力によって右方搬送爪14の傾きを積極的に維持すると共に、バネ21の力によって左方搬送爪23の傾きを積極的に維持しているが、原理上は、この構成からバネ12及びバネ21を取り除くことも可能である。バネ12及びバネ21がない状態でも、右方搬送爪14と左方搬送爪23の自重により、右方搬送爪14は支点13の周りを時計回り方向に揺動し、左方搬送爪23は支点22の周りを反時計回り方向に揺動して図示のとおりの傾いた状態を維持するからである。
【0036】
また、前記の第一実施形態では、無段変速機用ベルトの構成部品の一つであるリング2に適用する搬送装置1を例にしているが、これに限定されない。たとえば、任意の円筒状部品の搬送にも適用できる。
【0037】
<第二実施形態>
図4は、第二実施形態の搬送装置の構成図であり、(a)は側面図、(b)は要部平面図である。これらの図において、搬送装置31は、任意の円筒状部品32の搬送方向(図では水平方向)に延設された搬送レール33と、この搬送レール33の延設方向に沿って滑動可能な主移動機構34と、この主移動機構34の下側に一体的に取り付けられた基台部35と、基台部35の一端側(以下、右端側)に垂設された右方保持部36と、基台部35の他端側(以下、左端側)に垂設された左方保持部37とを備えている。
【0038】
右方保持部36は、基台部35の右端側下面に取り付けられた第一部材38と、この第一部材38に取り付けられた第二部材39と、これらの第一部材38と第二部材39の間にボルト40及びナット41で挟装されると共に、バネ42で付勢され、且つ、第一部材38の下端部に設けられた支点43の周りを揺動可能に支持された右方搬送爪44とを備えている。
【0039】
左方保持部37は、基台部35の左端側下面に取り付けられた副移動機構45と、この副移動機構45の動作に伴って図面の左右方向(つまり円筒状部品32の搬送方向)に移動するシャフト46の先端に取り付けられた第一部材47と、この第一部材47に取り付けられた第二部材48と、これらの第一部材47と第二部材48の間にボルト49及びナット50で挟装されると共に、バネ51で付勢され、且つ、第一部材47の下端部に設けられた支点52の周りを揺動可能に支持された左方搬送爪53とを備えている。
【0040】
したがって、このような構成によれば、図示の搬送装置31は、主移動機構34の動きに伴って、その全体が、搬送レール33の延設方向、すなわち、円筒状部品32の搬送方向(図面の左右方向)に移動する。
【0041】
ここで、基台部35の右端側に設けられた右方保持部36は、主移動機構34の動きに一対一に対応した動き(移動)を呈するが、基台部35の左端側に設けられた左方保持部37は、主移動機構34と副移動機構45の双方の動きに対応した運動(移動)を呈する。
【0042】
今、右方搬送爪44と左方搬送爪53の搬送当接面44a及び搬送当接面53aの間隔を便宜的に“Db”とする。この間隔Dbは、副移動機構45の動きによって調節可能である。たとえば、副移動機構45を動かしてシャフト46を図示位置よりも後退(図面の左方向へ移動)させた場合には、その後退分だけ間隔Dbは大きくなり、逆にシャフト46を図示位置よりも前進(図面の右方向へ移動)させた場合には、その前進分だけ間隔Dbは小さくなる。
このように、左方保持部37の左方搬送爪53の位置は、主移動機構34の動きだけでなく、副移動機構45の動きによっても調節可能になっている。
【0043】
右方搬送爪44と左方搬送爪53の搬送当接面44a及び搬送当接面53aは、(b)に示すように、その平面形状が円筒状部品32の外形にほぼ一致する所定曲率の凹状曲面に成形されている。そして、それらの右方搬送爪44と左方搬送爪53の搬送当接面44a及び搬送当接面53aで円筒状部品32の外周面を両側から挟装しつつ保持できるようになっている。
【0044】
図5は、左方保持部37の構成図である。なお、右方保持部36と左方保持部37は左右の向きが逆である点を除き、その構成は同一である。ここでは、説明の簡単化のために左方保持部37を代表として説明することにする。
【0045】
先に説明したとおり、左方保持部37は、基台部35の左端側下面に取り付けられた副移動機構45と、この副移動機構45の動作に伴って図面の左右方向(つまり円筒状部品32の搬送方向)に移動するシャフト46の先端に取り付けられた第一部材47と、この第一部材47に取り付けられた第二部材48と、これらの第一部材47と第二部材48の間にボルト49及びナット50で挟装されると共に、バネ51で付勢され、且つ、第一部材47の下端部に設けられた支点52の周りを揺動可能に支持された左方搬送爪53とを備えている。
【0046】
より詳細には、ボルト49は、左方搬送爪53に形成されたボルト穴56に若干の遊びを持って挿通されており、さらに、バネ51は、このボルト穴56の一部を拡大して形成された拡径部57と第一部材47との間に圧縮状態で挿入されている。
【0047】
さて、上記のとおり、左方搬送爪53は、第一部材47の下端部に設けられた支点52の周りを揺動可能に支持されているので、バネ51の付勢力は、支点52を中心にして左方搬送爪53を“時計回り方向”に揺動させるように作用する。同様に、右方搬送爪44のバネ42の付勢力は、支点43を中心にして右方搬送爪44を“反時計回り方向”に揺動させるように作用する。
【0048】
したがって、円筒状部品32を保持していないときの左方搬送爪53は、図示のように、搬送当接面53aを若干下側に傾けた状態にあり、同様に、円筒状部品32を保持していないときの右方搬送爪44も、搬送当接面44aを若干下側に傾けた状態にある。
【0049】
図5(a)に示すように、円筒状部品32を保持していないときの左方搬送爪53は、その搬送当接面53aを若干下側に傾けた状態になっている。この状態で、副移動機構45を動かして前記の間隔Dbを減少させていくと、テーブル58に載置された円筒状部品32の外周面に、右方保持部36の右方搬送爪44と左方保持部37の左方搬送爪53とが当接し、右方搬送爪44と左方搬送爪53のそれぞれの搬送当接面44a及び搬送当接面53aに、力Pbが加えられる。
【0050】
力Pbの作用点は、右方搬送爪44と左方搬送爪53のそれぞれの搬送当接面44a及び搬送当接面53aとの面内に位置するが、この作用点をより子細に観察すると、右方搬送爪44と左方搬送爪53のそれぞれの搬送当接面44a及び搬送当接面53aに円筒状部品32の外周面が当接する「初期の段階」では、図5(a)のように右方搬送爪44と左方搬送爪53が若干傾いているため、搬送当接面44a及び搬送当接面53aの高さ方向のほぼ中間部付近(図中の符号Ab参照)が、力Pbの「最初の作用点」となる。
【0051】
重要なことは、力Pbの最初の作用点、つまり、図中の符号Abで示す部分が支点52よりも上に位置していることにある。たとえば、図示の例では、力Pbの最初の作用点(Ab)は、支点52よりも距離Lcだけ上に位置している。ここで、“上”とはバネ51に近づく方向をいう。距離Lcは、原理的には0よりも大きい値であればよいが、この距離Lcは、後述のリフト量Ldにも関係するため、実際の距離Lcは、必要とするリフト量Ldを勘案して適切な値に設定すればよい。
【0052】
さて、支点52よりも距離Lcだけ上に位置する作用点に力Pbが加えられると、左方搬送爪53は、支点52を中心にして反時計回り方向に揺動を開始し、同様に、右方搬送爪44も、支点43を中心にして時計回り方向に揺動を開始する。
【0053】
右方搬送爪44及び左方搬送爪53の揺動は、それらの搬送当接面44a及び搬送当接面53aと円筒状部品32の外周面がほぼ平行に揃った時点で終了する。そして、その揺動終了時点の右方搬送爪44及び左方搬送爪53は、円筒状部品32の外周面を対向二箇所で挟装しつつ保持すると共に、円筒状部品32を保持したままテーブル58から若干持ち上がった状態になる。図中のリフト量Ldは、右方搬送爪44及び左方搬送爪53のリフト量、すなわち、テーブル58からの円筒状部品32の持ち上がり量を表している。
【0054】
このように、右方搬送爪44と左方搬送爪53で円筒状部品32をしっかりと保持できるため、搬送の際の円筒状部品32の揺れを防止して脱落を回避できる。また、リフト量Ldの分だけ円筒状部品32をテーブル58から浮かして搬送できるため、円筒状部品32の表面への損傷を回避することもできる。
【0055】
なお、この第二実施形態においても、円筒状部品32を保持していないときの右方搬送爪44及び左方搬送爪53の傾きを維持するために、バネ42及びバネ51の力を利用しているが、この態様(バネ42及びバネ51の使用)は実用上のベストモードである。発明の原理上はバネ42及びバネ51を使用しない構成とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】第一実施形態の搬送装置の構成図である。
【図2】第一実施形態の左方保持部7の構成図である。
【図3】第一実施形態の左方保持部7の動作の様子を示す図である。
【図4】第二実施形態の搬送装置の構成図である。
【図5】第二実施形態の左方保持部37の構成図である。
【符号の説明】
【0057】
1 搬送装置
2 リング(被搬送部品)
12 バネ(傾斜維持手段)
13 支点(傾斜維持手段)
14 右方搬送爪(搬送爪)
14a 搬送当接面
15 副移動機構(間隔調整手段)
21 バネ(傾斜維持手段)
22 支点(傾斜維持手段)
23 左方搬送爪(搬送爪)
23a 搬送当接面
31 搬送装置
32 円筒状部品(被搬送部品)
42 バネ(傾斜維持手段)
43 支点(傾斜維持手段)
44 右方搬送爪(搬送爪)
44a 搬送当接面
45 副移動機構(間隔調整手段)
51 バネ(傾斜維持手段)
52 支点(傾斜維持手段)
53 左方搬送爪(搬送爪)
53a 搬送当接面
Pa 力(当接圧)
Pb 力(当接圧)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送部品の搬送方向に沿って配設された一対の搬送爪と、
前記一対の搬送爪の間隔を調節可能な間隔調整手段とを備え、
前記間隔調整手段によって前記一対の搬送爪の間隔を調整することにより、該一対の搬送爪で前記被搬送部品を保持しつつ所定方向に搬送する搬送装置であって、
前記一対の搬送爪は、それぞれ前記被搬送部品に当接可能な搬送当接面を有すると共に、該搬送当接面が前記被搬送部品に当接していないときに該搬送当接面を傾斜状態に維持する傾斜維持手段を備え、
該傾斜維持手段は、前記一対の搬送爪のそれぞれの搬送当接面が前記被搬送部品に当接したときに、その当接圧を受けて前記傾斜の量を減少させることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記傾斜維持手段は、バネの付勢力を用いて前記一対の搬送爪のそれぞれの搬送当接面の傾斜を維持することを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記傾斜維持手段は、前記一対の搬送爪の自重を利用して前記一対の搬送爪のそれぞれの搬送当接面の傾斜を維持することを特徴とする請求項1記載の搬送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−302405(P2007−302405A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132298(P2006−132298)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【出願人】(398052210)西島株式会社 (20)
【Fターム(参考)】