説明

搬送装置

【課題】複数のステーションに跨がって1台のコンベアを設けたものにおいて、ローディングタイムを大幅に短縮する。
【解決手段】3つのステーション11〜13に跨がって1台のコンベア14を設け、各ステーション11〜13にそれぞれリフタ16〜18を設ける。メインステーション12まで搬送した回路基板15をリフタ17で持ち上げてコンベア14から浮かせてクランプし、スクリーン印刷等の作業を行う。この作業中に、コンベア14を回転させて搬入ステーション11まで次の回路基板15’を搬入して、リフタ16で当該回路基板15’を持ち上げてコンベア14から浮かせた状態で待機させる。メインステーション12の回路基板15に対する作業を完了した時点で、搬入ステーション11とメインステーション12の両方のリフタ16,17を同時に下降動作させて両方のステーション11,12の回路基板15,15’を同時に搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のステーションに跨がって1台のコンベアを設けた搬送装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、スクリーン印刷装置においては、特許文献1(特開2003−62971号公報)に記載されているように、搬入コンベアとメインコンベアと搬出コンベアを一列に配列し、回路基板を前記搬入コンベアから前記メインコンベアに搬入し、このメインコンベア上で当該回路基板に配線パターンをスクリーン印刷した後、印刷済みの回路基板を前記メインコンベアから前記搬出コンベアへ搬出するようにしたものがある。
【特許文献1】特開2003−62971号公報(第3頁〜第5頁、図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記構成では、スクリーン印刷装置の搬送装置を3つのコンベア(搬入コンベア、メインコンベア、搬出コンベア)で構成しているため、搬送装置の構成が複雑化するという欠点がある。
【0004】
そこで、スクリーン印刷装置の搬入ステーションと作業ステーション(メインステーション)とステーションに跨がって1台のコンベアを設けると共に、各ステーションに、それぞれ、コンベア上の回路基板を持ち上げて該コンベアから浮かせた状態に保持するためのリフト装置を設けたものがある。このものは、1台のコンベアと3つのリフト装置の昇降動作の組み合わせで、従来の搬入コンベアとメインコンベアと搬出コンベアと同等の搬送機能を次のようにして実現するようにしている。
【0005】
例えば、作業ステーションに搬送された回路基板を該作業ステーションのリフト装置(以下「メインリフタ」という)で持ち上げてコンベアから浮かせた状態にして該回路基板に対するスクリーン印刷等の作業を行うと共に、この作業中に、コンベアを回転させて搬入ステーションに次の回路基板を搬送して該搬入ステーションのリフト装置(以下「搬入側リフタ」という)で当該次の回路基板を持ち上げて該コンベアから浮かせた状態で待機させる。その後、作業ステーションの回路基板に対する作業が完了すると、図4に示すように、先にメインリフタのみを下降動作(アンクランプ)させた後、コンベアを回転させて作業済み回路基板を排出ステーション側へ搬送する。これにより、作業済み回路基板が所定距離だけ搬送されたことをセンサにより確認した時点で、一旦、コンベアを停止させて搬入側リフタを下降動作させた後、再度、コンベアを回転させて、搬入側の回路基板と作業済み回路基板を同時に搬送する。
【0006】
しかし、この搬送方法では、作業ステーションの回路基板に対する作業が完了してメインリフタを下降動作させてから、搬入側の回路基板の搬送を開始するまでに、作業済み回路基板を所定距離搬送するまでの時間T1 と、コンベアを停止させて搬入側リフタを下降動作させる時間T2 とが必要となり、その結果、作業ステーションから作業済み回路基板を搬出してから、次の回路基板を作業ステーションに搬入するまでの時間(ローディングタイム)が長くなり、生産能率が低下するという問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、複数のステーションに跨がって1台のコンベアを設けたものにおいて、ローディングタイムを大幅に短縮して生産能率を向上できる搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、少なくとも第1ステーションとその下流側の第2ステーションに跨がって1台のコンベアを設けると共に、各ステーションに、それぞれ、前記コンベア上の搬送物を持ち上げて該コンベアから浮かせた状態に保持するためのリフト装置を設けた搬送装置において、前記コンベアの搬送動作と前記リフト装置の昇降動作を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記第1ステーションと前記第2ステーションの両方のリフト装置がそれぞれ搬送物を持ち上げて前記コンベアから浮かせた状態に保持し、且つ、前記第2ステーションの搬送物に対する作業を完了したときに、前記第1ステーションと前記第2ステーションの両方のリフト装置を同時に下降動作させて、前記第1ステーションと前記第2ステーションの両方の搬送物を前記コンベア上に載せて同時に搬送するようにしたものである。この構成では、第2ステーションの搬送物に対する作業を完了した時点で、第1ステーションと第2ステーションの両方のリフト装置を同時に下降動作させて、第1ステーションと第2ステーションの両方の搬送物を同時に搬送するようにしたので、ローディングタイムを大幅に短縮することができ、生産能率を向上することができる。
【0009】
この場合、請求項2のように、第2ステーションの搬送物を該第2ステーションのリフト装置で持ち上げて該コンベアから浮かせた状態にして該搬送物に対する作業を行うと共に、この作業中に、コンベアを回転させて第1ステーションに次の搬送物を搬入して該第1ステーションのリフト装置で当該次の搬送物を持ち上げて該コンベアから浮かせた状態で待機させるようにすると良い。このようにすれば、第2ステーションの搬送物に対する作業を行っている期間に、第1ステーションに次の搬送物を搬入して待機させることができる。
【0010】
また、請求項3のように、第2ステーションの下流側に第3ステーションを配置して、第1、第2、第3の各ステーションに跨がって1台のコンベアを設けると共に、第3ステーションにも、前記コンベア上の搬送物を持ち上げて該コンベアから浮かせた状態に保持するためのリフト装置を設け、前記第3ステーションのリフト装置は、前記第3ステーションに搬送物が搬送されてきたときにその下流側の装置が搬送物を受け取れる状態になっていない場合は、当該下流側の装置が搬送物を受け取れる状態になるまで前記第3ステーションの搬送物を持ち上げて前記コンベアから浮かせた状態で待機させるようにしても良い。この場合、第3ステーションに搬送物が搬送されてきたときにその下流側の装置が搬送物を受け取れる状態になっている場合は、第3ステーションのリフト装置を上昇動作(クランプ)させずに、そのまま搬送物を第3ステーションからその下流側の装置に搬出すれば良い。これにより、第3ステーションの搬送物の搬出/待機(第3ステーションのリフト装置の下降/上昇)を下流側の装置の動作状態に応じて適切に切り換えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体化した一実施例を説明する。
本実施例では、搬入ステーション11(第1ステーション)、メインステーション12(第2ステーション)及び搬出ステーション13(第3ステーション)に跨がって1台のコンベア14が設けられている。各ステーション11〜13には、それぞれ、コンベア14上の搬送物である回路基板15を持ち上げて該コンベア14から浮かせた状態に保持するためのリフタ16〜18(リフト装置)が設けられている。
【0012】
図示はしないが、コンベア14は、例えば、2本のコンベアベルトを互いに平行で且つ3つのステーション11〜13に跨がって水平に延びるように設けると共に、該コンベアベルトをモータによって回転駆動するように構成されている。また、各リフタ16〜18は、エアシリンダ等のアクチュエータ16a〜18aによって昇降動作するように構成されている。この場合、各リフタ16〜18を最下位置(アンクランプ位置)まで下降させると、各リフタ16〜18の上面の高さ位置がコンベア14の搬送面(上面)よりも低くなってコンベア14上の回路基板15から下方に離れた状態となり、コンベア14上の回路基板15をコンベア14の回転により搬送できる状態となる。一方、各リフタ16〜18を最上位置(クランプ位置)まで上昇させると、コンベア14上の回路基板15をリフタ16〜18で持ち上げてコンベア14から浮かせた状態となる。この状態では、コンベア14が回転しても、リフタ16〜18で持ち上げられた回路基板15は搬送されないが、コンベア14上に新たに供給された回路基板15は搬送される。
【0013】
このコンベア14の搬送動作と各ステーション11〜13のリフタ16〜18の昇降動作は、コンピュータ(制御手段)によって次のように制御される。
図1(a)に示すように、まず、各ステーション11〜13のリフタ16〜18が最下位置(アンクランプ位置)で待機し、コンベア14を回転させて、新たに供給されてくる回路基板15を搬入ステーション11に搬送し、その時点で、メインステーション12に回路基板15が無ければ、搬入ステーション11のリフタ16(搬入側リフタ)を上昇させることなく、図1(b)に示すように、メインステーション12まで搬送して、コンベア14を停止させる。
【0014】
そして、図1(c)に示すように、メインステーション12のリフタ17(メインリフタ)を最上位置(クランプ位置)まで上昇させて、コンベア14上の回路基板15をリフタ17で持ち上げてコンベア14から浮かせてクランプした状態とする。この状態で、メインステーション12の回路基板15に対してスクリーン印刷等の作業を行うと共に、この作業中に、コンベア14を回転させて、図1(d)に示すように、搬入ステーション11まで次の回路基板15’を搬入して、コンベア14を停止させる。この後、図2(e)に示すように、搬入ステーション11のリフタ16で当該次の回路基板15’を持ち上げてコンベア14から浮かせた状態で待機させる。
【0015】
その後、メインステーション12の回路基板15に対するスクリーン印刷等の作業が完了した時点で、図2(f)に示すように、搬入ステーション11とメインステーション12の両方のリフタ16,17を同時に最下位置(アンクランプ位置)まで下降させて、搬入ステーション11とメインステーション12の両方の回路基板15,15’を同時にコンベア14に載せた状態に戻す。この状態で、コンベア14を回転させて、図2(g)に示すように、搬入ステーション11とメインステーション12の両方の回路基板15,15’を次のステーション12,13まで搬送して、コンベア14を停止させる。
【0016】
この後、図2(h)に示すように、メインステーション12のリフタ17でコンベア14上の回路基板15’を持ち上げてコンベア14から浮かせてクランプし、この回路基板15’に対してスクリーン印刷等の作業を行う。
【0017】
また、メインステーション12から搬出ステーション13に回路基板15が搬送されてきた時点で、その下流側の装置が回路基板15を受け取れる状態になっていない場合は、当該下流側の装置が回路基板15を受け取れる状態になるまで搬出ステーション13のリフタ18(搬出側リフタ)でコンベア14上の回路基板15を持ち上げてコンベア14から浮かせた状態で待機させる。このとき、メインステーション12と搬出ステーション13の両方のリフタ17,18が回路基板15,15’を持ち上げてコンベア14から浮かせた状態になっていれば、コンベア14を回転させて、新たに供給されてくる回路基板を搬入ステーション11まで搬送して、コンベア14を停止させ、搬入ステーション11のリフタ16で当該回路基板を持ち上げて該コンベア14から浮かせた状態で待機させる。
【0018】
これに対して、メインステーション12から搬出ステーション13に回路基板15が搬送されてきた時点で、その下流側の装置が回路基板15を受け取れる状態になっている場合は、搬出ステーション13のリフタ18を上昇動作(クランプ)させずに、そのままコンベア14を回転させて回路基板15を搬出ステーション13からその下流側の装置に搬出する。これと同時に、新たに供給されてくる回路基板を搬入ステーション11まで搬送して、コンベア14を停止させ、搬入ステーション11のリフタ16で当該回路基板を持ち上げて該コンベア14から浮かせた状態で待機させる。
【0019】
尚、メインステーション12の回路基板15’に対するスクリーン印刷等の作業が完了した時点で、他のステーション11,13のリフタ16,18が最上位置(クランプ位置)に位置している場合は、これら全てのステーション11〜13のリフタ16〜18を同時に最下位置(アンクランプ位置)まで下降させて、3つの回路基板15,15’をコンベア14に載せた状態に戻す。そして、搬出ステーション13の下流側の装置が回路基板15を受け取れる状態になっていれば、コンベア14を回転させて3つの回路基板15,15’を同時に搬送する。一方、搬出ステーション13の下流側の装置が回路基板15を受け取れる状態になっていなければ、当該下流側の装置が回路基板15を受け取れる状態になるまで待機する。
【0020】
図4に示すように、従来システムでは、メインステーションの回路基板に対する作業が完了すると、先にメインステーションのリフタ(メインリフタ)のみを下降動作させた後、コンベアを回転させて、作業済み回路基板を排出ステーション側へ搬送する。これにより、作業済み回路基板が所定距離だけ搬送されたことをセンサにより確認した時点で、一旦、コンベアを停止させて搬入ステーションのリフタ(搬入側リフタ)を下降動作させた後、再度、コンベアを回転させて、搬入側の回路基板と作業済み回路基板を同時に搬送する。しかし、この搬送方法では、メインステーションの回路基板に対する作業が完了してメインリフタを下降動作させてから、搬入側の回路基板の搬送を開始するまでに、作業済み回路基板を所定距離搬送するまでの時間T1 と、コンベアを停止させて搬入側リフタを下降動作させる時間T2 とが必要となり、その結果、メインステーションから作業済み回路基板を搬出してから、次の回路基板をメインステーションに搬入するまでの時間(ローディングタイム)が長くなり、生産能率が低下するという問題がある。
【0021】
これに対して、本実施例では、図3に示すように、メインステーション12の回路基板15に対する作業を完了した時点で、搬入側リフタ16とメインリフタ17の両方を同時に下降動作させて、搬入ステーション11とメインステーション12の両方の回路基板15,15’を同時にコンベア14に載せた状態に戻し、直ちにコンベア14を回転させて搬入ステーション11とメインステーション12の両方の回路基板15,15’を同時に搬送する。これにより、ローディングタイムを大幅に短縮することができ、生産能率を向上することができる。
【0022】
また、従来の搬送方式では、1枚目の回路基板の搬送途中に2枚目の回路基板の搬送を開始する場合は、一旦、コンベアを停止させる必要があるため、コンベアの搬送速度を上げるのには限界があった。
【0023】
これに対して、本実施例の搬送方式では、1枚目の回路基板15の搬送途中に上記のようなコンベア14の停止処理が割り込むことがないため、コンベア14の搬送速度を従来よりも上げることが可能となり、更なるローディングタイムの短縮と生産能率向上を実現することができる。
【0024】
尚、本実施例では、搬出ステーション13(第3ステーション)を設けたが、搬入ステーション11(第1ステーション)とメインステーション12(第2ステーション)のみの構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施例における搬送装置の動作を説明する図である(その1)。
【図2】本発明の一実施例における搬送装置の動作を説明する図である(その1)。
【図3】本発明の一実施例における搬送装置の動作を説明するタイムチャートである。
【図4】従来の搬送装置の動作を説明するタイムチャートである。
【符号の説明】
【0026】
11…搬入ステーション(第1ステーション)、12…メインステーション(第2ステーション)、13…搬出ステーション(第3ステーション)、14…コンベア、15,15’…回路基板(搬送物)、16…搬入側リフタ(リフト装置)、17…メインリフタ(リフト装置)、18…搬出側リフタ(リフト装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1ステーションとその下流側の第2ステーションに跨がって1台のコンベアを設けると共に、各ステーションに、それぞれ、前記コンベア上の搬送物を持ち上げて該コンベアから浮かせた状態に保持するためのリフト装置を設けた搬送装置において、
前記コンベアの搬送動作と前記リフト装置の昇降動作を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記第1ステーションと前記第2ステーションの両方のリフト装置がそれぞれ搬送物を持ち上げて前記コンベアから浮かせた状態に保持し、且つ、前記第2ステーションの搬送物に対する作業を完了したときに、前記第1ステーションと前記第2ステーションの両方のリフト装置を同時に下降動作させて、前記第1ステーションと前記第2ステーションの両方の搬送物を前記コンベア上に載せて同時に搬送することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2ステーションの搬送物を該第2ステーションのリフト装置で持ち上げて該コンベアから浮かせた状態にして該搬送物に対する作業を行うと共に、この作業中に、前記コンベアを回転させて前記第1ステーションに次の搬送物を搬送して該第1ステーションのリフト装置で当該次の搬送物を持ち上げて該コンベアから浮かせた状態で待機させることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第2ステーションの下流側に第3ステーションが配置され、前記第1、第2、第3の各ステーションに跨がって前記1台のコンベアが設けられると共に、前記第3ステーションにも、前記コンベア上の搬送物を持ち上げて該コンベアから浮かせた状態に保持するためのリフト装置が設けられ、
前記第3ステーションのリフト装置は、前記第3ステーションに搬送物が搬送されてきたときにその下流側の装置が搬送物を受け取れる状態になっていない場合は、当該下流側の装置が搬送物を受け取れる状態になるまで前記第3ステーションの搬送物を持ち上げて前記コンベアから浮かせた状態で待機させることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−24448(P2008−24448A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199310(P2006−199310)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】