説明

搬送装置

【課題】リリース軸のガタつきを無くして、押圧部材を搬送ローラに圧接させる際に生じる音を軽減できる搬送装置を提供する。
【解決手段】テープ印刷装置1では、上カバー5を閉塞すると、リンクレバー34及びリリースレバー70が揺動してリリース軸48が回動する。そして、リリース軸48の切欠面が下部干渉部材の先端にかかる。このとき、下部干渉部材と切欠面とが衝突する。しかしながら、リリース軸48のギヤカバー77に設けられた膨出部が、リリース軸48の一端部に摺動する。これにより、リリース軸48を軸方向に付勢することができるので、軸方向のガタを無くすことができる。これにより、下部干渉部材と切欠面とが衝突する際の音が増大するのを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体を搬送する搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷媒体であるロールシートを着脱可能に収納するとともに、サーマルヘッド(本発明の「押圧部材」に相当)をプラテンローラ(本発明の「搬送ローラ」に相当)に圧接させるためのレバーを備えたラベルプリンタが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このラベルプリンタでは、サーマルヘッドの下面に放熱板(本発明の「サーマルヘッド支持部材」に相当)が固定され、その放熱板はばね等によって上方に常時付勢されている。これにより、サーマルヘッドはプラテンローラに圧接される。さらに、放熱板には下部干渉部材が設けられている。この下部干渉部材の先端には、一対の側板の間に支持されるとともに、レバーの操作によって回動するリリース軸の一端部が当接している。このリリース軸の一端部には切欠部が形成されている。
【0003】
このようなラベルプリンタでは、レバーを上方に回動させると、リリース軸が回動し、その一端部の円筒側面によって下部干渉部材が下方に付勢されて揺動する。これにより、サーマルヘッドはプラテンローラから離間するので、ロールシート挿入口からロールシートをサーマルヘッドとプラテンローラとの間に挿入できる。その反対に、レバーを下方に回動させると、リリース軸が反対回りに回動するので、リリース軸の切欠面が下部干渉部材にかかる。このとき、下部干渉部材にかけられていた加重が解除されるので、ばねの付勢によってサーマルヘッドはプラテンローラに再び圧接される。従って、サーマルヘッドとプラテンローラとの間に挟まれたロールシートに対して印刷可能な状態となる。
【特許文献1】特開2005−212139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、下部干渉部材は放熱板を介して常時バネで付勢されている。従って、リリース軸が回動して切欠面が下部干渉部材の先端にかかると、切欠面が下部干渉部材に勢いよく衝突する。このとき、一対の側板に対してリリース軸がガタついている場合、そのガタに相当する距離だけリリース軸が振動するので、切欠面が下部干渉部材に衝突する際に生じるわずかな衝突音を増大させるという問題点があった。また、リリース軸の一端部には、レバーの回動を伝達するギヤに噛合するリリースギヤが取付けられている。そのリリースギヤがリリース軸に対してガタついている場合、リリース軸がそのガタ分だけ突如回転するので、上述した衝突音をさらに増大させるという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、リリース軸のガタつきを無くして、押圧部材を搬送ローラに圧接させる際に生じる音を軽減できる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の搬送装置は、媒体を搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラに対して圧接状態及び離間状態に移動可能であって圧接する方向に付勢された押圧部材とを備えた搬送装置において、一端部にレバーギヤと、当該レバーギヤの軸線方向における一方の端面を覆っているギヤカバーとを備えたリリースレバーと、前記リリースレバーを軸支するレバー軸と、一端部に前記レバーギヤに噛合するリリースギヤを備え、且つ切欠面を備えたリリース軸と、前記押圧部材を前記搬送ローラに対して接離可能に支持する押圧部材支持部材に接続され、前記リリース軸が回動することで往復運動をする干渉部材とを備え、前記ギヤカバーは、前記リリース軸側に膨出した膨出部を備え、前記膨出部は、前記リリースレバーが前記押圧部材を前記搬送ローラに対して圧接する方向に回動することで、前記リリース軸に対して軸方向に付勢することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る発明の搬送装置は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記リリースギヤが前記リリース軸に対して圧入されたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る発明の搬送装置は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、開閉可能なカバー部材と、前記カバー部材に一端部が軸支されたリンクレバーとを備え、前記リリースレバーの他端部には、前記リンクレバーの他端部が接続され、前記カバー部材を閉じる方向に回動することで前記押圧部材を前記圧接状態にし、前記カバー部材を開ける方向に回動することで前記押圧部材を離間状態することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る発明の搬送装置は、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の構成に加え、前記押圧部材は前記媒体に印刷を行うサーマルヘッドであり、
前記搬送ローラはプラテンローラであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明の搬送装置では、リリースレバーが押圧部材を搬送ローラに対して圧接する方向に回動すると、ギヤカバーに設けられた膨出部がリリース軸に対して摺動する。これにより、リリース軸は軸方向に付勢されるので、リリース軸の軸方向のガタをなくすことができる。さらにリリース軸が軸方向から付勢されるので、リリース軸の切欠面と干渉部材とが衝突する際の勢いを抑えることができる。これにより、リリース軸の切欠面と干渉部材とが衝突する際に生じる音を軽減できる。
【0011】
また、請求項2に係る発明の搬送装置では、請求項1に記載の発明の効果に加え、リリースギヤがリリース軸に対して圧入されているので、リリース軸に対するリリースギヤのガタをなくすことができる。即ち、リリース軸とリリースギヤとは一体的に回動する。従って、リリース軸の切欠面が干渉部材に位置する際に、リリース軸がリリースギヤに対して勝手に回動しない。
【0012】
また、請求項3に係る発明の搬送装置では、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、リンクレバーの他端部には、リリースレバーの一端部が回動可能に接続されているので、カバー部材の開閉に連動させてリリースレバーを操作できる。そして、カバー部材を閉じる方向に回動することによって、押圧部材を圧接状態にし、カバー部材を開ける方向に回動することで押圧部材を離間状態にできるので、カバー部材を開閉するだけで、押圧部材の位置を操作することができる。
【0013】
また、請求項4に係る発明の搬送装置では、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の効果に加え、プラテンローラに対して、サーマルヘッドを圧接させることができるので、媒体に対して印刷することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態であるテープ印刷装置1について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態のテープ印刷装置1は、ロール状の印刷媒体であるロールシート3Aを収納すると共に、文字、図形等を印刷して所望の長さにカットできるものである。そして、図1に示すテープ印刷装置1が本発明の「搬送装置」に相当する。
【0015】
はじめに、テープ印刷装置1の概略構成について、図1乃至図6及び図8を参照して説明する。図1は、テープ印刷装置1の前側から見た斜視図である。図2は、テープ印刷装置1の正面図である。図3は、テープ印刷装置1の後ろ側から見た斜視図である。図4は、上カバー5が開いた状態のテープ印刷装置1の斜視図である。図5は、ロールシートホルダ3が装着された状態のテープ印刷装置1の斜視図である。図6は、図5に示すI−I線矢視方向断面図である。図8は、サーマルヘッド32の周辺の拡大図である(上カバー5:閉状態)。なお、図2の右側をテープ印刷装置1の右側とし、左側をテープ印刷装置1の左側とし、紙面手前側をテープ印刷装置1の前側とし、紙面奥行き側をテープ印刷装置1の後ろ側とする。
【0016】
図1乃至図3に示すように、テープ印刷装置1は、樹脂製の本体筐体2を備えている。その本体筐体2の後方上部には、側面視凹状に湾曲したロールシートホルダ収納部4(図4参照)が設けられている。このロールシートホルダ収納部4には、図5に示すように、所定幅のロールシート3Aが巻回されたロールシートホルダ3が装着される。さらに、本体筐体2の後側の上端縁部には、そのロールシートホルダ収納部4を覆うようにして、側面視略半円形状の透明樹脂製の上カバー5が開閉自在に取り付けられている。
【0017】
また、図1,図2に示すように、上カバー5の前側には、本体筐体2の前側を覆うための樹脂製のフロントカバー6が設けられている。このフロントカバー6の中段位置には、印刷されたロールシート3Aを外部に排出するためのシート排出口6Aが略水平に設けられている。そのシート排出口6Aの上側には、電源ボタン7Aと、シート排出口6Aの内側に設けられた後述するカッターユニット8(図6参照)を駆動させてロールシート3Aを切断するカットボタン7Bと、ロールシート3Aを搬送方向に排出するフィードボタン7Cとが略水平に並んで各々配置されている。また、本体筐体2の左右両側には、樹脂製の横カバー14,14が取り付けられている。
【0018】
そして、図1,図2に示すように、フロントカバー6の前側には、正面視長方形状の樹脂製のトレー部材9が開閉自在に設けられている。このトレー部材9の上端縁部には凹み部9Aが形成されている。この凹み部9Aに指を掛けて前側に回動させることによってトレー部材9を前方に開くことができる。これにより、シート排出口6Aから排出されたロールシート3Aをトレー部材9上に貯めることができる。
【0019】
一方、図3に示すように、本体筐体2の背面部には、電源コード(図示外)が接続されるインレット10が設けられている。そのインレット10の隣には、パーソナルコンピュータ等と接続されるUSB(Universal Serial Bus)コネクタ11が設けられている。
【0020】
次に、本体筐体2と上カバー5に設けられた各種部材、形状について説明する。図4,図5に示すように、上カバー5の開口端が当接する本体筐体2の左右側端縁部には、外側に向かって下方になだらかに傾斜する段部13,13が各々設けられている。さらに、ロールシートホルダ収納部4の左右側壁部の前側には、内側に弾性変形可能に形成された弾性係止片15,15が設けられている。
【0021】
これら弾性係止片15,15の外面には、外側に向かって突出する側断面三角形状の係止突起15Aが各々形成されている。これら係止突起15A,15Aは、上カバー5の開口側の両端縁部に各々形成された係合凹部16,16(図4,図5では、片方の係合凹部16が図示)に各々係合する。このような構造により、上カバー5を前側方向に回動させて段部13,13に各々当接させることによって、弾性係止片15,15と係合凹部16,16とが係合し、上カバー5が閉じられた状態で保持される。
【0022】
また、図1に示すように、上カバー5の前端部の中央には上方(外側)に向かってなだらかに湾曲する指掛け部5Aが設けられている。この指掛け部5Aの内側に指を掛けて後方に回動させることによって、弾性係止片15,15と係合凹部16,16との係合が外れるようになっている。また、指掛け部5Aに対向するフロントカバー6の上端部の中央部分には、下方に向かってなだらかに湾曲する凹部6Bが設けられている。これにより、指掛け部5Aの内側に指を掛け易くなるので、上カバー5を容易に開くことができる。
【0023】
また、図4,図5に示すように、上カバー5の指掛け部5Aの正面左側には、押し爪部5Bが突設されている。一方、上カバー5を閉じた際に、本体筐体2の押し爪部5Bに対向する位置には、上カバー5が閉じられたか否かを判別するための上カバー検出スイッチ18が設けられている。この上カバー検出スイッチ18はマイクロスイッチ等から構成されている。上カバー検出スイッチ18は、押し爪部5Bによって押下されたか否かを検出することによって、上カバー5が閉じられたか否かを判別するものである。
【0024】
また、図5,図6に示すように、ロールシートホルダ収納部4の右側縁部には、ロールシートホルダ3を保持するための柱状のホルダ支持部材23が立設されている。このホルダ支持部材23には、上方に開口する側面視縦長U字状の第1位置決め溝部24が形成されている。この第1位置決め溝部24に対して、図5に示すロールシートホルダ3を構成する位置決め保持部材20の外面に突設された断面略矩形状の取付部材21が嵌るようになっている。
【0025】
また、図6,図8に示すように、ロールシートホルダ収納部4の前側上端縁部から前方に向かって略水平に延出された載置部29が設けられている。その載置部29の前端部の上側には、ロールシート3Aを挿入する挿入口26が設けられている。さらに、載置部29の搬送方向後側の端縁角部には、ロールシート3Aの複数の幅寸法に対応して断面略L字状の5個の第2位置決め溝部30(図8では1つの第2位置決め溝部30のみ図示)が設けられている。この第2位置決め溝部30には、ロールシートホルダ3を構成するガイド部材28(図5参照)の載置部29に当接する先端下端部分が上方から差し込まれるようになっている。こうして、ロールシートホルダ3が、ロールシートホルダ収納部4の内側に位置決めされて装着される。
【0026】
また、図5に示すように、上カバー5の開口部周縁の内側であって、ロールシートホルダ収納部4のホルダ支持部材23と反対側の側端縁部に対向する位置には、係合軸33が突設されている。この係合軸33には、上カバー5を支持する長尺状のリンクレバー34の長手方向一端部が回動可能かつ着脱可能に取り付けられている。また、リンクレバー34の他端部は、複数のギヤを介して後述するサーマルヘッド32を上下動させる後述する揺動機構に連結されている。これにより、サーマルヘッド32は、上カバー5の開閉によって、後述するプラテンローラ35から離間する待機状態と、プラテンローラ35に対して圧接される圧接状態との間を往復移動するようになっている。
【0027】
次に、本体筐体2の内部機構について説明する。図6に示すように、挿入口26からシート排出口6Aに向かって、ロールシート3Aが搬送されるシート搬送経路が設けられている。このシート搬送経路の上側には、搬送手段としてのプラテンローラ35の回動軸35Aが回転自在に設けられている。そのプラテンローラ35に対向する位置であって、シート搬送経路を挟んだ下側には、サーマルヘッド32が設けられている。
【0028】
さらに、サーマルヘッド32の下流側には、カッターユニット8が設けられている。カッターユニット8は、シート搬送経路の上側に配置された固定刃8Aと、シート搬送経路の下側に配置され、固定刃8Aと対向する可動刃8Bと、DCモータ等で構成され、可動刃8Bを移動させる切断用モータ(図示外)とを備えている。そしてカットボタン7Bが押下された場合には、切断用モータ(図示外)の駆動によって可動刃8Bが上下方向に往復移動され、固定刃8Aと可動刃8Bとの間でロールシート3Aが切断される。さらに、切断されたロールシート3Aは、シート排出口6Aから排出される。
【0029】
また、ロールシートホルダ収納部4の下側には、仕切壁39を介して、制御基板40が設けられている。制御基板40には、外部のパーソナルコンピュータ等からの指令によってサーマルヘッド32等の各機構部を駆動制御する制御回路等が形成されている。さらに、サーマルヘッド32およびプラテンローラ35等からなる印刷機構の下方には、仕切壁39を介して、電源回路が形成された電源基板41が設けられている。そして、サーマルヘッド32は、図示外のフレキシブルフラットケーブル(FFC)によって、制御基板40の底面側に設けられたコネクタ(図示外)に接続されている。さらに、制御基板40及び電源基板41は、底面部にネジ止めされた薄い鋼板製の底面カバー45によって覆われている。
【0030】
なお、本実施形態のテープ印刷装置1で使用されるロールシート3Aは、例えば、自己発色性を有する長尺状の感熱シート(いわゆる、サーマルペーパー)や、その感熱シートの片面に粘着剤を介して離形紙が貼り合わされた長尺状のラベルシート等である。
【0031】
次に、サーマルヘッド32の揺動機構について、図7乃至図13を参照して説明する。図7は、本体筐体2の左側の横カバー14を除いた左側面図(上カバー5:開状態)でり、図8は、サーマルヘッド32の周辺の拡大図(上カバー5:開状態)であり、図9は、図8に示すリリース軸48周辺の拡大図である。図10は、リリースレバー70の上側から見た斜視図であり、図11は、リリースレバー70の底面側から見た斜視図であり、図12は、リリースレバー70の平面図であり、図13は、図12に示すII−II線矢視方向断面図である。図14は、本体筐体2の横カバー14を除いた左側面図(上カバー5:閉状態)であり、図15は、図14に示すリリース軸48周辺の拡大図であり、図16は、サーマルヘッド32の周辺の拡大図(上カバー5:閉状態)である。
【0032】
図7に示すように、本体筐体2の内部の左右両側には、互いに対向する一対の側板47(図7では左側の側板47のみ図示)が各々立設されている。これら一対の側板47の間には、プラテンローラ35の回動軸35Aの両端部と、サーマルヘッド32を揺動させるための金属製のリリース軸48の両端部とが回動可能に各々軸支されている。リリース軸48の左端部は、左側の側板47の外面から所定長さ(本実施形態では、約5mmである。)外側に突出している。その左端部には、樹脂製のリリースギヤ61が軸方向外側から圧入されている。このリリースギヤ61では、外周面の約半周部分にギヤが形成されている。そして、そのリリースギヤ61の後方には、側板47の厚さ方向に延設された金属製のレバー軸60が回動可能に軸支されている。
【0033】
また、図8に示すように、サーマルヘッド32の下面には、サーマルヘッド支持部材37が固定されている。このサーマルヘッド支持部材37は、一対の側板47の間に揺動可能に設けられている。即ち、サーマルヘッド支持部材37は、プラテンローラ35に対してサーマルヘッド32を接離可能に支持している。さらに、サーマルヘッド支持部材37は、図示外のばねによって、プラテンローラ35に対してサーマルヘッド32が圧接される方向に常時付勢されている。尚、サーマルヘッド支持部材37は金属からなり、サーマルヘッド32を冷却する放熱板としても機能している。
【0034】
また、図8に示すように、サーマルヘッド支持部材37の下面には、先端側が本体筐体2の前方に折り返された側面視略L字型の下部干渉部材57が設けられている。この下部干渉部材57の先端部の上面には、リリース軸48の左端部が位置している。このリリース軸48の左端部は側面視D型になるように軸の一部がカットされているので、その左端部の外周面の一部には切欠面58が形成されている。よって、リリース軸48の円筒側面が下部干渉部材57を下方に付勢するカムの働きをしている。
【0035】
また、図7に示すように、上カバー5の係合軸33(図5参照)には、長尺状のリンクレバー34の一端部が回動可能に連結されている。そのリンクレバー34の他端部には、本発明の特徴である長尺状のリリースレバー70の一端部が回動可能に連結されている。さらに、そのリリースレバー70の他端部に設けられた後述する貫通孔72には、左側の側板47の外面から突出するレバー軸60の左端部が嵌入している。これにより、上カバー5の開閉に伴ってリンクレバー34が揺動し、そのリンクレバー34の揺動に伴って、リリースレバー70が自身の他端部を中心に回動する。つまり、上カバー5の開閉に伴って、リリースレバー70の他端部に設けられた貫通孔72に嵌入するレバー軸60が軸周りに回動するようになっている。
【0036】
さらに、図9に示すように、そのリリースレバー70の他端部には、後述するレバーギヤ75が設けられている。このレバーギヤ75は、リリース軸48の左端部に圧入された上述のリリースギヤ61と噛合している。従って、リリースレバー70がリリース軸48を中心に回動すると、レバーギヤ75がリリースギヤ61を回動させるので、そのリリースギヤ61が圧入されたリリース軸48が軸周りに回動するようになっている。
【0037】
次に、本発明の特徴であるリリースレバー70の構造について、図10乃至図13を参照して説明する。なお、以下の説明では、図12に示す下側をリリースレバー70の正面側とし、上側をリリースレバー70の背面側とし、右側をリリースレバー70の右側とし、左側をリリースレバー70の左側として説明する。
【0038】
図10,図12に示すように、リリースレバー70は樹脂からなり、長尺状のレバー本体部71を備えている。このレバー本体部71は、横断面が長方形状の板部材である。その上面の幅方向両端部には、補強リブ71a,71bが各々設けられ、その間には、幅方向に延設された補強リブ71cが渡設されている。なお、レバー本体部71の内部は、軽量化のため底面側から凹状にくり抜かれている(図11参照)。
【0039】
このようなレバー本体部71の長手方向一端部には貫通孔72が設けられ、他端部には貫通孔73が設けられている。さらに、貫通孔73の正面の内周の一部には中心方向に膨出した軸止部材73aが設けられている。また、レバー本体部71の正面の貫通孔72が設けられた左側には、前方に向かって突出する係止部79が設けられている。一方、レバー本体部71の他端部には、貫通孔73の周囲を取り囲むようにして平面視扇型状のギヤ支持部74が設けられている。このギヤ支持部74の円弧部分は後方に向けられている。その円弧部分にはレバーギヤ75が設けられている。
【0040】
また、ギヤ支持部74の円弧部分の最右端側には当接片76が設けられている。この当接片76は、図9に示すようにリリースレバー70が左側面視時計方向(図12におけるリリースレバー70の平面視反時計方向)に回動する際に、リリースギヤ61に当接することで、リリースレバー70の回動を制限するものである。これにより、レバーギヤ75とリリースギヤ61との噛合いが外れるのを防止できる。また、図11乃至図13に示すように、レバー本体部71の他端部の背面の底面側には、ギヤ支持部74に近接すると共に、後方に向かって円弧を有する板状のギヤカバー77が設けられている。このギヤカバー77の上面の円弧方向一端側には、上方に向かって段状に膨出する膨出部78が設けられている。
【0041】
次に、上記構成からなるリリースレバー70の本体筐体2への組付構造について、図7,図9を参照して説明する。リリースレバー70は、図12における自身の上面側を本体筐体2の左側の側板47の外面に向け、図12における底面側を本体筐体2の外側に向けた状態で、レバー軸60の凹部にリリースレバー70の軸止部材73aが嵌ることにより組み付けられる。そして、リリースレバー70の一端部は、貫通孔72を介してリンクレバー34の他端部に回動可能に連結される。一方、リリースレバー70の他端部に設けられた貫通孔73には、本体筐体2の側板47に軸支されたレバー軸60の一端部が嵌入している(図9参照)。これにより、リリースレバー70はレバー軸60を中心に回動するようになっている。さらに、リリースレバー70の他端部に設けられたレバーギヤ75は、そのレバー軸60の前方に配置されたリリース軸48の左端部に圧入されたリリースギヤ61と噛合する。これにより、リリースレバー70が回動すると、レバーギヤ75に噛合するリリースギヤ61が回動し、リリース軸48が回動するようになっている。
【0042】
また、図9に示すように、レバー軸60に他端部が軸支されたリリースレバー70のギヤカバー77は、図12における上面側が側板47の外面側に向けられている。そして、上カバー5が本体筐体2に対して閉じられ、リリースレバー70のリンクレバー34に連結された一端部側が下方に回動した場合、図15に示すように、ギヤカバー77はリリース軸48の左端部を軸方向外側から覆うように調整されている。その反対に、上カバー5が本体筐体2に対して開かれ、リリースレバー70の一端部側が後方に回動した場合、図9に示すように、ギヤカバー77はリリース軸48の左端部から離れ、リリース軸48の左端部が露出されるようになっており、組み付け時にレバーギヤ75とリリースギヤ61との位相を合わせ易いようにしている。
【0043】
次に、上記構造からなるサーマルヘッド32の揺動機構の動作について説明する。まず、上カバー5が開かれた状態におけるサーマルヘッド32の位置について説明する。上カバー5が開かれた状態(図7参照)では、図8に示すように、サーマルヘッド支持部材37に設けられた下部干渉部材57の先端は、リリース軸48の円筒側面に当接されて下方に押下されている。つまり、サーマルヘッド支持部材37がバネ(図示外)の付勢力に抗して、下方に回動される。よって、サーマルヘッド32がプラテンローラ35から離間する。その結果、ロールシート3Aを挿入口26から挿通して、プラテンローラ35とサーマルヘッド32との間に挿通可能な状態になる。
【0044】
次に、上カバー5を開いた状態から閉じる際のサーマルヘッド32の揺動について説明する。図7に示す上カバー5を前方に向かって閉じると、図14に示すように、上カバー5に連結されたリンクレバー34は回動しながら略水平に寝かされて前側に移動する。次いで、図15に示すように、リンクレバー34の移動に伴って、リリースレバー70がレバー軸60を中心にして左側面視反時計方向に回動する。その回動に伴い、レバーギヤ75に噛合するリリースギヤ61が左側面視時計方向に約180度回転する。従って、リリース軸48も左側面視時計方向に約180度回転する。リリース軸48が回動すると、図16に示すように、下部干渉部材57の先端がリリース軸48の円筒側面から切欠面58の下方に位置する。このとき、下部干渉部材57の先端にかけられていた加重が突如抜けるため、サーマルヘッド支持部材37を上方に付勢するバネの付勢力が優勢になる。ここで、そのバネによる付勢により、下部干渉部材57が左側面視時計方向に急に回動しようとする。
【0045】
ところが、上述したように、上カバー5を閉じる際、即ち、リリースレバー70のリンクレバー34に連結された一端部側が下方に回動する際に、リリース軸48の左端部は、ギヤカバー77によって軸方向外側から覆われる(図15参照)。さらにそのギヤカバー77のリリース軸48の左端側に対向する面には膨出部78が設けられている。従って、リリースレバー70の回動に伴って、リリース軸48の左端部に対して膨出部78が摺動する。これにより、リリース軸48は軸方向外側から付勢されるので、一対の側板47に対してリリース軸48の軸方向のガタを無くすことができる。従って、リリース軸48の切欠面58が下部干渉部材57の先端に衝突する際に生じる音を増大させるのを防止できる。
【0046】
また、リリース軸48は軸方向に付勢されているので、一対の側板47に対して一方向に付勢されている。これにより、リリース軸48と側板47との摩擦がわずかに大きくなるので、上カバー5を閉じる際のリリース軸48の回動がやや遅くなる。よって、下部干渉部材57の先端にかけられていた加重が緩やかに抜けるので、リリース軸48の切欠面58が下部干渉部材57の先端に衝突する際に生じる音を軽減できる。
【0047】
そして、下部干渉部材57の先端には、リリース軸48の切欠面58が位置するので、下部干渉部材57の先端は、リリース軸48の円筒側面によって下方に押下されない。よって、バネ(図示外)によってサーマルヘッド支持部材37は上方に回動される。そして、サーマルヘッド32はロールシート3Aを介してプラテンローラ35に押圧付勢されるので、印字可能な状態になる。
【0048】
尚、上カバー5を閉じきったときにリリース軸48の左側部に対向するギヤカバー77の面において、当該リリース軸48の左端部に近接する位置には膨出部78の最も膨出した部分は当たらない。
【0049】
次に、上カバー5を閉じた状態から開く際のサーマルヘッド32の揺動について説明する。図14に示す上カバー5を後方に向かって開くと、図7に示すように、上カバー5に連結されたリンクレバー34は後方側に移動する。次いで、リンクレバー34の移動に伴って、リリースレバー70がレバー軸60を中心にして左側面視時計方向に回動する。その回動に伴い、レバーギヤ75に噛合するリリースギヤ61が左側面視反時計方向に約180度回転する。従って、リリース軸48も左側面視反時計方向に約180度回転する。リリース軸48が回動すると、図8に示すように、下部干渉部材57の先端がリリース軸48の切欠面58から円筒側面に位置する。このとき、下部干渉部材57の先端は下方に付勢される。
【0050】
そして、上述したように、上カバー5を開ききった際、即ち、リリースレバー70のリンクレバー34に連結された一端部側が上方に回動する際に、図9に示すように、ギヤカバー77はリリース軸48の左端部から離れ、リリース軸48の左端部が露出される。従って、リリース軸48の左端部から膨出部78が離間するので、ギヤカバー77に負荷は掛からない。ギヤカバー77の膨出部78は中央部が最も膨出した形状になっているため、上カバー5が回動中にのみリリース軸48に対して付勢がかかる。即ち、上カバー5が開ききった時、又は上カバー5が閉じきった時はリリース軸48に対しての付勢がなくなる。その結果、常時ギヤカバー77に負荷を掛けていると、樹脂でできているギヤカバー77が変形してリリース軸48に付勢する力が弱まるが、上カバー5の開閉動作中のみにギヤカバー77に負荷が掛かるようにすることでそれを防ぐことができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のテープ印刷装置1では、上カバー5の開閉に連動して、サーマルヘッドを揺動させる機構を備えている。上カバー5にはリンクレバー34を介してリリースレバー70の一端部が回動可能に連結されている。リリースレバー70の他端部は、側板47に軸支されたレバー軸60に連結されている。さらにリリースレバー70に設けられたレバーギヤ75は、一対の側板47に回動可能に支持されたリリース軸48の一端部に圧入されたリリースギヤ61と噛合している。そして、サーマルヘッド支持部材37に設けられた下部干渉部材57には、リリース軸48の円筒側面に位置している。上カバー5を閉塞すると、リリース軸48が回動すると共に、切欠面58が下部干渉部材57の先端にかかることによって、リリース軸48の円筒側面による付勢が解除され、サーマルヘッド支持部材37が上方に揺動してプラテンローラ35に対してサーマルヘッド32が圧接される。このとき、下部干渉部材57と切欠面58とが衝突するが、リリースレバー70に設けられたギヤカバー77の膨出部78が、リリース軸48の一端部に摺動するので、リリース軸48を軸方向に付勢することができる。これにより、リリース軸48の軸方向のガタを無くすことができるので、下部干渉部材57と切欠面58とが衝突する際の音を増大するのを防止できる。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、上記実施形態では、ロールシート3Aの上部を覆う上カバー5の開閉に連動させてサーマルヘッド32を揺動させているが、カバーの開閉方向、覆う対象物についてはこれに限定されない。また、プラテンローラ35とサーマルヘッド32との上下関係は、これに限定されない。例えば、上記実施形態のテープ印刷装置の印字機構及び揺動機構の構成をほぼ上下逆にしたような構成のテープ印刷装置であっても構わない。また、上記実施形態では、上カバー5の開閉にサーマルヘッド32の圧接・リリースを連動させているが、本発明の機構についてはこれに限定されない。例えば、圧接・リリース専用に手動のリリースレバーを設けるように構成してもよい。さらに、本発明は、テープ印刷装置に限らず一般的な印刷装置に対しても有効である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】テープ印刷装置1の前側から見た斜視図である。
【図2】テープ印刷装置1の正面図である。
【図3】テープ印刷装置1の後ろ側から見た斜視図である。
【図4】上カバー5が開いた状態のテープ印刷装置1の斜視図である。
【図5】ロールシートホルダ3が装着された状態のテープ印刷装置1の斜視図である。
【図6】図5に示すI−I線矢視方向断面図である。
【図7】本体筐体2の左側の横カバー14を除いた左側面図(上カバー5:開状態)である。
【図8】サーマルヘッド32の周辺の拡大図(上カバー5:開状態)である。
【図9】図8に示すリリース軸48周辺の拡大図である。
【図10】リリースレバー70の上側から見た斜視図である。
【図11】リリースレバー70の底面側から見た斜視図である。
【図12】リリースレバー70の平面図である。
【図13】図12に示すII−II線矢視方向断面図である。
【図14】本体筐体2の横カバー14を除いた左側面図(上カバー5:閉状態)である。
【図15】図14に示すリリース軸48周辺の拡大図である。
【図16】サーマルヘッド32の周辺の拡大図(上カバー5:閉状態)である。
【符号の説明】
【0054】
1 テープ印刷装置
2 本体筐体
3A ロールシート
5 上カバー
32 サーマルヘッド
34 リンクレバー
35 プラテンローラ
37 サーマルヘッド支持部材
48 リリース軸
57 下部干渉部材
58 切欠面
60 レバー軸
61 リリースギヤ
70 リリースレバー
75 レバーギヤ
77 ギヤカバー
78 膨出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラに対して圧接状態及び離間状態に移動可能であって圧接する方向に付勢された押圧部材とを備えた搬送装置において、
一端部にレバーギヤと、当該レバーギヤの軸線方向における一方の端面を覆っているギヤカバーとを備えたリリースレバーと、
前記リリースレバーを軸支するレバー軸と、
一端部に前記レバーギヤに噛合するリリースギヤを備え、且つ切欠面を備えたリリース軸と、
前記押圧部材を前記搬送ローラに対して接離可能に支持する押圧部材支持部材に接続され、前記リリース軸が回動することで往復運動をする干渉部材と
を備え、
前記ギヤカバーは、前記リリース軸側に膨出した膨出部を備え、
前記膨出部は、前記リリースレバーが前記押圧部材を前記搬送ローラに対して圧接する方向に回動することで、前記リリース軸に対して軸方向に付勢することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記リリースギヤが前記リリース軸に対して圧入されたことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
開閉可能なカバー部材と、
前記カバー部材に一端部が軸支されたリンクレバーとを備え、
前記リリースレバーの他端部には、前記リンクレバーの他端部が接続され、
前記カバー部材を閉じる方向に回動することで前記押圧部材を前記圧接状態にし、前記カバー部材を開ける方向に回動することで押圧部材を前記離間状態にすることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記押圧部材は前記媒体に印刷を行うサーマルヘッドであり、
前記搬送ローラはプラテンローラであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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