説明

搬送装置

【課題】倒立状態の容器を停止させる安価な機構を備える装置を提供する。
【解決手段】搬送装置は、空缶10を搬送路60に沿って搬送する。空缶10は、底部が絞られていて上部12がオーバーハングした形状を有する。搬送装置は、上部12が上方を向いた正立状態の空缶10の搬送を許し、上部12が下方を向いた倒立状態の空缶10を停止させる缶制御部材42を有する缶制御機40を備える。倒立状態の空缶10は、その上部12は、缶制御部材42に引っ掛かることによって停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空缶を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等の液体を包装するための缶は、典型的には、蓋を有しない本体部分と、蓋とからなり、本体部分にフィラー(充填機)によって液体が充填された後に、本体部分にシーマー(巻き締め機)によって蓋が付される。この明細書において、空缶とは、蓋が付されていない状態の缶、即ち、本体部分を意味する。
【0003】
搬送路を通してフィラーに空缶を搬送する際に、空缶は、その上部の開口部が上方を向いた正立状態で搬送されることが予定されており、フィラーでは、その姿勢のままで該開口部を通して液体が充填される。よって、フィラーに供給される空缶は、その上部が下方を向いた倒立状態であってはならない。倒立状態の空缶がフィラーに供給されると、例えば、充填ノズルが空缶の底部に突き刺さり、充填ノズルが破損する可能性がある。このような缶がフィラーから排出されて誤って更にシーマーに供給されると、シーマーが破損する可能性がある。
【0004】
更に、空缶は、フィラーに提供される前にリンサー(洗浄機)によって洗浄されるが、正立状態の空缶に倒立状態の空缶が混ざり合った状態で空缶がリンサーに提供されると、倒立状態でリンサーに提供された空缶は正常に洗浄がなされないことになる。
【特許文献1】特開平11−292259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リンサー、フィラーまたはシーマーに倒立状態の空缶が搬送されることを防止するために、倒立状態の空缶を光学的に検出して停止させる場合には、高額なセンサが必要になる。例えば、空缶の外表面に印刷された文字等の向きを読み取って当該空缶が正立状態であるか倒立状態であるかを判定するセンサでは、空缶の外表面を全周にわたって撮像するカメラ、該カメラによって撮像された画像を処理するプロセッサ、倒立状態であると判定された空缶を停止させる停止機構等が必要になる。
【0006】
本発明は、上記の課題認識を契機としてなされたものであり、例えば、倒立状態の容器を停止させる安価な機構を備える搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、底部が絞られていて上部がオーバーハングした形状を有し、蓋が付されていない状態の空缶を搬送路に沿って搬送する搬送装置に係り、前記搬送装置は、上部が上方を向いた正立状態の空缶の搬送を許し、上部が下方を向いた倒立状態の空缶を停止させる缶制御部材を有する缶制御機を備える。倒立状態の空缶は、その上部が前記缶制御部材に引っ掛かることによって停止する。
【0008】
本発明の好適な実施形態によれば、前記缶制御部材は、空缶を支持し搬送する搬送面との間に間隙が形成されるとともに前記搬送路に突出した突出部を有し、正立状態の空缶は、該空缶の底部が前記突出部に引っ掛からないために前記突出部によって搬送が妨げられることがなく、倒立状態の空缶は、該空缶の上部が前記突出部に引っ掛かることによって前記突出部によって搬送が妨げられとともに該空缶の最上端が前記間隙に挟まることによって姿勢が維持される。
【0009】
本発明の好適な実施形態によれば、前記搬送装置は、空缶が前記搬送路を通るように該空缶の両側方をガイドする第1ガイド部材および第2ガイド部材を更に備え、少なくとも前記第1ガイド部材は、前記搬送面との間に間隙を有し、前記突出部は、前記第1ガイド部材と前記搬送面との間の間隙を通して前記搬送路に突出している。
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、前記缶制御機は、前記缶制御部材を調整する調整機構を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えば、倒立状態の容器を停止させる安価な機構を備える搬送装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0013】
図1は、飲料等の液体を包装するための空缶(本体部分)を例示的に示す側面図である。空缶10は、上部12、胴部14および底部16を有する。底部16は、絞られた形状(テーパー形状)を有し、上部12は、オーバーハングした形状を有する。図2は、空缶10に液体を充填した後に該空缶10の上部12にシーマーによって蓋18を付した状態における缶を例示的に示している。この明細書では、一般常識に従って、上部12が上方を向いた状態を正立状態と言い、上部12が下方を向いた状態を倒立状態と言う。
【0014】
図3は、本発明の好適な実施形態の製造設備(包装設備)の構成を模式的に示す平面図である。空缶10は、第1搬送路60を通してリンサー20に搬送され、リンサー20において洗浄された後に、第2搬送路62を通してフィラー30に搬送される。フィラー30で飲料(例えば、ビール)等の液体が充填された空缶10は、その後、第3搬送路64を通してシーマー35に搬送され、シーマー35によって蓋18が付された後に第4搬送路66を通して次工程の装置(例えば、入味検査機、洗浄機、外観検査機等)に搬送される。
【0015】
以下では、第1搬送路60において倒立状態の空缶10を停止させるように缶制御機40を配置してなる搬送装置について説明するが、缶制御機40は、第1搬送路60、第2搬送路62、第3搬送路64、第4搬送路66の全部または一部に配置されてもよい。この明細書において、搬送装置とは、搬送路を備える他、明示的に特定された他の機構(例えば、缶制御機40)を備える装置をいう。
【0016】
図4は、第1搬送路60において倒立状態の空缶10を停止させるように缶制御機40を配置してなる搬送装置の構成を示す平面図である。図5は、図4におけるAA’線における断面図である。本発明の好適な実施形態の搬送装置は、底部16が絞られ上部12がオーバーハングした形状を有し、蓋18が付されていない状態の空缶10を搬送路60に沿って搬送する。搬送装置は、缶制御機40を備えている。缶制御機40は、上部12が上方を向いた正立状態の空缶10の搬送を許し、上部12が下方を向いた倒立状態の空缶10を停止させる缶制御部材42を有する。倒立状態の空缶10は、その上部12が缶制御部材42に引っ掛かることによって停止する。
【0017】
缶制御部材42は、空缶10を支持し搬送する搬送面(第1搬送路60を通して空缶10を搬送するコンベア65の表面)65Sとの間に間隙gが形成されるとともに第1搬送路60に突出した突出部42Pを有する。正立状態の空缶10は、下方を向いている底部16が絞られた形状を有するので、底部16が突出部42Pに引っ掛かることがなく、突出部42Pによって搬送が妨げられることはない。一方、倒立状態の空缶10は、下方を向いている上部12がオーバーハングした形状を有するので、上部12が突出部42Pに引っ掛かり、突出部42Pによって搬送が妨げられとともに空缶10の最上端が間隙gに挟まることによって姿勢が維持される。
【0018】
本発明の好適な実施形態の搬送装置は、典型的には、空缶10が第1搬送路60を通るように空缶10の両側方をガイドする第1ガイド部材52および第2ガイド部材54を更に備えうる。少なくとも第1ガイド部材52(典型的には、第1ガイド部材52および第2ガイド部材54の双方)は、搬送面65Sとの間に間隙Gを有する。突出部42Pは、第1ガイド部材52と搬送面65Sとの間の間隙Gを通して第1搬送路60に突出している。
【0019】
缶制御部材42は、例えば、缶制御部材42(典型的には、突出部42Pの突出量)を調整する調整機構40Aを含むことが好ましい。調整機構40Aは、例えば、缶制御部材42を回動可能に軸支する軸支部材44と、缶制御部材42に固定されたナット46と、支持体70に固定された固定部47と、固定部47によって回転可能に支持されたボルト48とを含みうる。ボルト48を回転させることによって、これに係合したナット46とともに缶制御部材42が軸支部材44を中心として回動し、突出部42Pの突出量が変更される。
【0020】
本発明の好適な実施形態によれば、極めて単純な構造を有する缶制御部材42によって倒立状態の空缶10を停止させることができるので、そのような停止機構を有する装置を安価に準備することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】飲料等の液体を包装するための空缶(本体部分)を例示的に示す側面図である。
【図2】空缶に液体を充填した後に蓋を付した状態の缶を例示的に示している。
【図3】本発明の好適な実施形態の製造設備(包装設備)の構成を模式的に示す平面図である。
【図4】本発明の好適な実施形態の搬送装置の構成を示す平面図である。
【図5】図4におけるAA’線における断面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 空缶
12 上部
14 胴部
16 底部
18 蓋
20 リンサー
30 フィラー
35 シーマー
40 缶制御機
40A 調整機構
42 缶制御部材
42P 突出部
44 軸支部材
46 ナット
47 固定部
48 ボルト
52 第1ガイド部材
54 第2ガイド部材
60 第1搬送路
62 第2搬送路
64 第3搬送路
66 第4搬送路
65 コンベア
65S 搬送面
70 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部が絞られていて上部がオーバーハングした形状を有し、蓋が付されていない状態の空缶を搬送路に沿って搬送する搬送装置であって、
上部が上方を向いた正立状態の空缶の搬送を許し、上部が下方を向いた倒立状態の空缶を停止させる缶制御部材を有する缶制御機を備え、倒立状態の空缶は、その上部が前記缶制御部材に引っ掛かることによって停止する、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記缶制御部材は、空缶を支持し搬送する搬送面との間に間隙が形成されるとともに前記搬送路に突出した突出部を有し、
正立状態の空缶は、該空缶の底部が前記突出部に引っ掛からないために前記突出部によって搬送が妨げられることがなく、
倒立状態の空缶は、該空缶の上部が前記突出部に引っ掛かることによって前記突出部によって搬送が妨げられとともに該空缶の最上端が前記間隙に挟まることによって姿勢が維持される、
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
空缶が前記搬送路を通るように該空缶の両側方をガイドする第1ガイド部材および第2ガイド部材を更に備え、
少なくとも前記第1ガイド部材は、前記搬送面との間に間隙を有し、前記突出部は、前記第1ガイド部材と前記搬送面との間の間隙を通して前記搬送路に突出している、
ことを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記缶制御機は、前記缶制御部材を調整する調整機構を含む、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate