説明

搬送車システム

【構成】 可動の防火扉10,12の一方に、搬送車への給電線32を通すための切り欠き46を設ける。切り欠き46の側部や防火扉10,12の間に難燃剤44,48を設ける。
【効果】 搬送車システムの給電線を防火扉で分断する必要がないので、搬送車への給電や制御が容易になる。また切り欠きで防火扉の隙間を給電線が通過し、かつ難燃剤44,48で延焼を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は搬送車システムでの給電に関し、特に防火扉付近での給電に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送車システムでは、防火扉の下部の部分などで走行レールを分断するので、搬送車への給電線や通信線も防火扉などを境に分断される。このようにすると防火扉の下部で搬送車が停止した場合、給電が行われないため再起動できなくなることがある。また給電線や通信線を防火扉で分断すると、防火扉が搬送車の制御上の境界となり、防火扉を境に搬送車の制御コントローラを変更する必要がある。なお給電線は通信線に兼用でき、給電線を分断しないで良ければ、通信線も分断する必要がないので、以下では通信線よりも給電線を主として検討する。
【0003】
特許文献1は、地上走行の無人搬送車に関して、無人搬送車が防火扉の動作を妨げないようにすることを開示している。具体的には、火災時に無人搬送車が防火扉の下部を通過することを禁止し、所定の退避場所へ退避することを開示している。搬送車の走行路が防火扉で分断されることは本発明と同様である。
【特許文献1】特開平11−85281
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、防火扉により搬送車への給電線を分断する必要を無くすことにある。
請求項2の発明での追加の課題は、給電線が防火扉を容易に通過できるようにすることにある。
請求項3の発明での追加の課題は、給電線を通す切り欠きからの延焼を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の搬送車システムは、搬送車を走行させるための走行レールに沿って給電線を敷設すると共に、防火扉の位置で前記走行レールを分断するようにした搬送車システムにおいて、前記防火扉として複数の可動扉を設けて、火災時に該可動扉が互いに接触することにより、防火扉を閉じるようにし、かつ前記給電線を、防火扉が閉じた際に可動扉が互いに接触する位置の付近を通るようにし、敷設したことを特徴とする。
【0006】
好ましくは、少なくとも一方の可動扉に、給電線を通過させるための切り欠きを設ける。切り欠きは双方の可動扉に例えば半円状に設けても、一方の可動扉の端部に設けても良い。
【0007】
特に好ましくは、前記切り欠きの周囲に断熱材を配設する。断熱材は、シリカゲルやアルミナゲル、ガラスファイバーなどの熱伝導率の低い物質を用いたものでも、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの含水化合物をゴムや樹脂などと混合し、火災時に含水化合物から水蒸気を発生させて温度上昇を防止する難燃剤からなるものでも良い。シリカゲルやアルミナゲル、ガラスファイバーなど等を用いる場合、例えばこれらを切り欠きの側面などにフィットする形状に成形し、例えば樹脂や水ガラスなどの結着剤で結合する。
【発明の効果】
【0008】
この発明では、防火扉で給電線を分断する必要がないので、防火扉を境に給電や制御用のコントローラを変更する必要がなく、また防火扉の付近で搬送車が停止すると、給電線がないため再起動できなくなる位置がない。
【0009】
請求項2の発明では、切り欠きを介して可動扉の間を給電線が通ることができる。このため、給電線を可動扉の隙間を通すのが容易になる。
【0010】
請求項3の発明では、断熱材を介して防火扉の向こう側へ熱が伝わるのを遅らせることにより、切り欠きを介しての延焼を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最適実施例を、天井搬送車システムを例に示すが、他の搬送車を用いたシステムでも良い。
【実施例】
【0012】
図1〜図4に、実施例とその変形とを示す。これらの図において、2はクリーンルームなどの通路で、4はその壁面で、防火扉6を設けてある。8,8は防火扉の左右の固定扉で、10,12は左右の可動扉で、ワイヤ14が取り付けられ、火災時にはスイッチ16が動作して、可動扉10,12が自動的に閉じる。防火扉6の前後には固定レール18,20を設け、例えば固定レール18側にガイド22を設けて、可動レール24を可動扉10,12と干渉する位置から退避するようにガイドする。可動レール24は通常時は図1の鎖線の状態をとり、火災時にはガイド22に沿って実線の位置まで退避する。26は可動レール24を実線の位置へと退避させるためのワイヤである。28,30は踏面で、天井走行車などの搬送車の走行車輪を支持する面である。
【0013】
給電線32は例えば踏面28と重なるように設け、レール18,20,24のうちの左右の一方にのみ設ける。給電線32は例えば非接触給電により搬送車に給電し、ループ状に敷設するために、レール18,20,24に例えば上下2段に配置されている。実施例では給電線32を通信線に兼用するが、別途に通信線を設ける場合、給電線32と同様に一方の可動扉に設けた切り欠き46を通過させ、切り欠き46の側面に後述の難燃剤を配設して延焼を防止する。
【0014】
図2に、可動レール24と天井走行車34とを示すと、36は天井走行車の走行部である。38は走行部36の下方の左右に設けた受電部で、給電線32から非接触給電により受電すると共に、給電線32を用いて図示しないコントローラとの通信や天井走行車間の通信を行う。40は錘で、火災時に錘40の係止を外すことにより、図1のワイヤ26により可動レール24を退避させる。42はクリーンルームなどの天井である。
【0015】
図3に左右の可動扉10,12を互いに接触させて閉じた状態を示すと、例えば可動扉10の側に切り欠き46があり、この部分を給電線32が通過するようにしてある。切り欠き46の周囲には難燃剤48を配設し、また可動扉12の端部にも難燃剤44を配設して、可動扉10,12間の隙間を閉じるようにする。なお可動扉10,12を密着させ、図3の破線で示すように、難燃剤44は可動扉12の切り欠き46に面した位置にのみ設けても良い。またここでは切り欠き46を一方の可動扉に設けたが、切り欠き46を2つの半円に分割して、左右の可動扉10,12にそれぞれ設けても良い。
【0016】
難燃剤44,48は水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどをゴムなどの弾性体と混合したものから成り、絶縁性である。難燃剤44,48は火災時に昇温すると、分解して水蒸気を発生すると共に吸熱し、これによって防火扉の反対側へと熱が伝わって延焼するのを防止する。また給電線32は裸の撚り線から成るので、難燃剤44,48には給電線32と可動扉10,12とを絶縁する役割もある。難燃剤44,48に代えて、シリカゲルやアルミナゲル、ガラスファーバーなどの無機断熱材を用いても良い。
【0017】
図4に変形例を示すと、50,52は一対の固定レールで、防火扉6は固定レール50,52に対して斜めに設け、固定レール50,52の隙間を可動扉10,12が通れるようにしてある。可動レール50,52は斜めに切断されているので、分断部で天井走行車の例えば前後左右の走行輪の内で、踏面28,30から外れるのは一輪までで、残る3輪で天井走行車の姿勢を支持する。そしてこの場合も、可動扉10,12の境界部に切り欠き46を設けて、給電線32を通し、切り欠き46の周囲と可動扉10,12の隙間に難燃剤を配設する。
【0018】
実施例では可動扉10,12を左右に移動させるようにしたが、上下に移動させるようにしても良い。この場合、給電線32が上下の可動扉の境となり、給電線32を通すように例えば一方の可動扉に切り欠きを設けて、その周囲を難燃剤で被覆すると良い。また搬送車として天井走行車を示したが、走行レールが床面から突き出している地上走行の有軌道台車に対して適用しても良い。
【0019】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 防火扉の位置で給電線を分断する必要がないので、搬送車への給電が容易になる。また通信線兼用の給電線が防火扉で分断されないので、防火扉を境として別の搬送車コントローラを設ける必要がない。
(2) 防火扉の位置で天井走行車が停止しても、給電を絶たれないので再起動できる。
(3) 切り欠き46によって給電線32を容易に通過させることができ、難燃剤44,48により、切り欠き46を介して延焼するのを防止できる。

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例の搬送車システムで防火扉が閉じた状態を示す要部平面図
【図2】実施例でのガイドと可動レールとを示す要部断面図
【図3】実施例での可動扉に挟まれた給電線を示す要部正面図
【図4】変形例の搬送車システムで防火扉が閉じた状態を示す要部平面図
【符号の説明】
【0021】
2 通路
4 壁面
6 防火扉
8 固定扉
10,12 可動扉
14,26 ワイヤ
16 スイッチ
18,20 固定レール
22 ガイド
24 可動レール
28,30 踏面
32 給電線
34 天井走行車
36 走行部
38 受電部
40 錘
42 天井
46 切り欠き
44,48 難燃剤
50,52 固定レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車を走行させるための走行レールに沿って給電線を敷設すると共に、防火扉の位置で前記走行レールを分断するようにした搬送車システムにおいて、
前記防火扉として複数の可動扉を設けて、火災時に該可動扉が互いに接触することにより、防火扉を閉じるようにし、かつ前記給電線を、防火扉が閉じた際に可動扉が互いに接触する位置の付近を通るようにし、敷設したことを特徴とする、搬送車システム。
【請求項2】
少なくとも一方の可動扉に、給電線を通過させるための切り欠きを設けたことを特徴とする、請求項1の搬送車システム。
【請求項3】
前記切り欠きの周囲に断熱材を配設したことを特徴とする、請求項2の搬送車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−282140(P2006−282140A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108746(P2005−108746)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】