説明

携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法

【課題】より利用者の利便性を向上させることができる携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法を提供することができる。
【解決手段】外部機器と無線通信によりデータの送受信を行う携帯可能電子装置2であって、前記携帯可能電子装置2は、前記外部機器1から無線により電力を受け取り、当該携帯可能電子装置2の各部に電力を供給する。前記携帯可能電子装置2は、前記外部機器1とデータの送受信を行う送受信部24と、前記送受信部24により送受信するデータに対してそれぞれ異なる通信プロトコルにより信号処理を施す複数の信号処理部243と、を具備する。前記携帯可能電子装置2は、前記送受信部24により受信したデータに基づいて通信プロトコルを判定し、判定結果に基づいて前記複数の信号処理部243のうちの1つを選択し、選択した信号処理部243を用いて前記送受信部24によりデータの送受信を行うように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、外部装置からのコマンドに応じて処理を行う携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、携帯可能電子装置として用いられるICカードは、プラスチックなどで形成されたカード状の本体と本体に埋め込まれたICモジュールとを備えている。ICモジュールは、ICチップを有している。ICチップは、電源が無い状態でもデータを保持することができるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)またはフラッシュROMなどの不揮発性メモリと、種々の演算を実行するCPUとを有している。
【0003】
ICカードは、例えば、国際標準規格ISO/IEC7816−1part1,2に準拠したICカードである。ICカードは、携帯性に優れ、且つ、外部装置との通信及び複雑な演算処理を行う事ができる。また、偽造が難しい為、ICカードは、機密性の高い情報などを格納してセキュリティシステム、電子商取引などに用いられることが想定される。
【0004】
また、近年、非接触通信によりデータの送受信を行うことができるICカードが一般的に普及している(例えば、特許文献1参照)。上記したような非接触ICカードは、ICチップとアンテナとを備えている。この非接触ICカードは、リーダライタから発せられる磁界を受けて、カード内のアンテナを電磁誘導により起電させることにより、動作する。
【0005】
非接触ICカードは、アンテナにより送受信するデータの復調、及び変調を行う。非接触ICカードと、非接触ICリーダライタとでは、周波数、変調方式、符号化方式などが所定の通信プロトコルにより規定されている。
【0006】
通信プロトコルは、例えば、ISO/IEC14443により規定されているTypeA及びTypeB、ISO/IEC18092により規定されているTypeCなどが存在する。上記したような複数の通信プロトコルに対応することができる非接触式ICリーダライタが提供されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−123121号公報
【特許文献2】特開2001−312699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
通常、非接触ICカードは、上記のいずれかの通信プロトコルに対応するように構成される。なお、ICカードが使用する通信プロトコルは、ICカードの発行時に固定される。この為、利用者は、それぞれの通信プロトコルに対応するために、複数枚のICカードを所持する必要があるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、より利用者の利便性を向上させることができる携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態としての携帯可能電子装置は、外部機器と無線通信によりデータの送受信を行う携帯可能電子装置であって、前記外部機器から無線により電力を受け取り、当該携帯可能電子装置の各部に電力を供給する電源部と、前記外部機器とデータの送受信を行う送受信部と、前記送受信部により送受信するデータに対してそれぞれ異なる通信プロトコルにより信号処理を施す複数の信号処理部と、前記送受信部により受信したデータに基づいて通信プロトコルを判定する判定部と、前記判定手段の判定結果に基づいて前記複数の信号処理部のうちの1つを選択する選択部と、前記選択部により選択した信号処理部を用いて前記送受信部によりデータの送受信を行うように制御する制御部と、を具備する。
【0011】
また、本発明の一実施形態としての携帯可能電子装置の制御方法は、それぞれ異なる通信プロトコルにより信号処理を施す複数の信号処理部を具備し、外部機器と無線通信によりデータの送受信を行う携帯可能電子装置の制御方法であって、前記外部機器から受信したデータに基づいて通信プロトコルを判定し、前記判定結果に基づいて前記複数の信号処理部のうちの1つを選択し、前記選択した信号処理部を用いて前記外部機器とデータの送受信を行うように制御する。
【発明の効果】
【0012】
この発明の一形態によれば、より利用者の利便性を向上させることができる携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法の構成の例について説明するためのブロック図である。
【図2】図2は、図1に示すICカードの構成例について説明するためのブロック図である。
【図3】図3は、図2に示す通信部の構成例について説明するためのブロック図である。
【図4】図4は、図2に示すICカードの処理について説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は、図2に示すICカードの処理の他の例について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法の構成の例について説明するためのブロック図である。
図1は、本実施形態に係るICカード2と通信を行うICカード処理装置1の構成例について説明するためのブロック図である。
図1に示すようにICカード処理装置1は、端末装置11、ディスプレイ12、キーボード13、及びカードリーダライタ14などを有している。
【0016】
端末装置11は、CPU、種々のメモリ、及び各種インターフェースなどを備える。端末装置11は、ICカード処理装置1全体の動作を制御する。
【0017】
ディスプレイ12は、端末装置11の制御により種々の情報を表示する。キーボード13は、ICカード処理装置1の操作者による操作を操作信号として受け取る。
【0018】
カードリーダライタ14は、ICカード2と通信を行うためのインターフェース装置である。カードリーダライタ14は、ICカード2に対して、電源供給、クロック供給、リセット制御、及びデータの送受信を行う。
【0019】
端末装置11は、カードリーダライタ14によりICカード2に対して種々のコマンドを入力する。ICカード2は、例えば、カードリーダライタ14からデータの書き込みコマンドを受信した場合、受信したデータを内部の不揮発性メモリに書き込む処理を行う。
【0020】
また、端末装置11は、ICカード2に読み取りコマンドを送信することにより、ICカード2からデータを読み出す。端末装置11は、ICカード2から受信したデータに基づいて種々の処理を行う。
【0021】
上記のカードリーダライタ14は、無線通信によりICカード2とデータの送受信を行う。この為に、カードリーダライタ14は、図示しない信号処理部、送受信回路、及びアンテナなどを備えている。
【0022】
信号処理部は、ICカード2との間で送受信するデータの符号化、復号、変調、及び復調を行なう。ICカード2は、TypeA、B、及びCなどの各通信プロトコルに対応した複数の信号処理部を備えている。
【0023】
送受信回路は、変調回路により変調されたデータ、及び、アンテナにより受信したデータを増幅する。アンテナは、送信するデータに応じて磁界を発生させることにより、ICカード2に対してデータを送信する。また、アンテナは、電磁誘導により発生した誘導電流に基づいてICカード2から送信されるデータを認識する。なお、各通信プロトコルTypeA、B、及びCに分類される近接型非接触ICカードは、通信可能な距離が10cm程度である。カードリーダライタ14は、この通信可能距離(通信可能範囲)内に存在するICカード2を検知し、処理を行う。
【0024】
ICカード2の検知を行なう為に、カードリーダライタ14は、上記の通信プロトコルの規定に準じた起動コマンド(例えば、リクエストコマンド、ウェークアップコマンドなど)を繰り返し通信可能範囲に送信する。
【0025】
ICカード2が存在する場合、ICカード2からの起動コマンドに対する返答がカードリーダライタ14に返る。これにより、カードリーダライタ14は、ICカード2を検知する。
【0026】
図2は、図1に示すICカード2の構成例について説明するためのブロック図である。
図2に示すように、ICカード2は、カード状の本体21と、本体21内に内蔵されたICモジュール22とを備えている。ICモジュール22は、1つ又は複数のICチップ23と、通信部24とを備える。ICチップ23と通信部24とは、互いに接続された状態でICモジュール22に形成されている。
【0027】
ICチップ23は、通信部24、CPU25、ROM26、RAM27、不揮発性メモリ28、及び電源部29などを備えている。
【0028】
通信部24は、ICカード処理装置1のカードリーダライタ14と非接触通信を行うためのインターフェースである。通信部24は、送受信部として機能する。
また、通信部24は、例えば、ICカード処理装置1のカードリーダライタ14と非接触通信を行うアンテナを備える。またさらに、通信部24は、送受信データの増幅を行う送受信回路、各通信プロトコルに対応する復調回路、及び変調回路を備える。なお、通信部24の構成については、後で詳細に説明する。
【0029】
CPU25は、ICカード2全体の制御を司る制御部として機能する。CPU25は、ROM26あるいは不揮発性メモリ28に記憶されている制御プログラム及び制御データに基づいて種々の処理を行う。例えば、カードリーダライタ14から受信したコマンドに応じて種々の処理を行い、処理結果としてのレスポンスなどのデータの生成を行なう。
【0030】
ROM26は、予め制御用のプログラム及び制御データなどを記憶する不揮発性のメモリである。ROM26は、製造段階で制御プログラム及び制御データなどを記憶した状態でICカード2内に組み込まれる。即ち、ROM26に記憶される制御プログラム及び制御データは、予めICカード2の仕様に応じて組み込まれる。
【0031】
RAM27は、ワーキングメモリとして機能する揮発性のメモリである。RAM27は、CPU25の処理中のデータなどを一時的に格納する。例えば、RAM27は、通信部24を介してICカード処理装置1から受信したデータを一時的に格納する。また、RAM27は、CPU25が実行するプログラムを一時的に格納する。
【0032】
不揮発性メモリ28は、例えば、EEPROMあるいはフラッシュROMなどのデータの書き込み及び書換えが可能な不揮発性のメモリにより構成される。不揮発性メモリ28は、ICカード2の運用用途に応じて制御プログラム及び種々のデータを格納する。
【0033】
たとえば、不揮発性メモリ28では、プログラムファイル及びデータファイルなどが創成される。創成された各ファイルには、制御プログラム及び種々のデータなどが書き込まれる。CPU25は、不揮発性メモリ28、または、ROM26に記憶されているプログラムを実行することにより、種々の処理を実現することができる。
【0034】
電源部29は、カードリーダライタ14から電波を受信し、起電力及び動作クロックを発生させる。電源部29は、発生させた電力及び動作クロックをICカード2の各部に電力を供給する。ICカード2の各部は、電力の供給を受けた場合、動作可能な状態になる。なお、電源部29により動作クロックを発生させるとして説明したが、外部からクロックを受給する構成であってもよい。また、クロックを生成するクロック部を電源部29とは別に備える構成であってもよい。
【0035】
図3は、図2に示す通信部24の構成例について説明するためのブロック図である。
図3に示すように、通信部24は、アンテナ241、送受信回路242、信号処理部243、及び選択部244を備えている。
【0036】
アンテナ241は、例えばコイルなどにより構成される。アンテナ241は、カードリーダライタ14のアンテナとデータの送受信を行う。
【0037】
送受信回路242は、データの増幅を行なう。送受信回路242は、アンテナ241に接続されている。送受信回路242は、カードリーダライタ14から受信したデータ、及びカードリーダライタ14に送信するデータの増幅を行う。
【0038】
信号処理部243は、カードリーダライタ14との間で送受信するデータの符号化、復号、変調、及び復調を行なう。各通信プロトコルは、それぞれ符号化方式、及び変調方式が異なる。ICカード2は、TypeA、B、及びCなどの各通信プロトコルに対応した複数の信号処理部243A乃至243Cを備えている。
【0039】
信号処理部243Aは、TypeAの通信プロトコルに対応する信号処理部である。TypeAの変調方式は、Amplitude Shift Keying(ASK)100%変調方式である。また、TypeAの符号化方式は、Modified Millerである。
【0040】
信号処理部243Bは、TypeBの通信プロトコルに対応する信号処理部である。TypeBの変調方式は、ASK10%変調方式である。また、TypeBの符号化方式は、Non Return to Zero(NRZ)である。
【0041】
信号処理部243Cは、TypeCの通信プロトコルに対応する信号処理部である。TypeCの変調方式は、ASK10%変調方式である。また、TypeCの符号化方式は、Manchesterである。
【0042】
信号処理部243は、受信する起動コマンドの通信プロトコルに対応する信号処理部により送受信するデータの処理を行う。
【0043】
選択部244は、送受信するデータの処理に用いる信号処理部を信号処理部243A乃至243Cの中から選択する。選択部244は、CPU25の制御に基づいて、信号処理部の選択を行う。
【0044】
CPU25は、受信する起動コマンドに基づいて通信に用いられた通信プロトコルを判定する。例えば、CPU25は、受信したコマンドのフォーマットに基づいて、通信プロトコルを判定する。即ち、CPU25は、判定部として機能する。なお、CPU25は、通信対象、即ち、送信側の装置の通信プロトコルに関するフラグ情報などに基づいて通信プロトコルを判定する構成であってもよい。
【0045】
通信プロトコルを判定すると、CPU25は、判定した通信プロトコルを示す情報(プロトコル情報)をRAM27に格納する。選択部244は、RAM27に記憶されている情報に基づいて、送受信するデータの処理に用いる信号処理部を選択する。
【0046】
CPU25は、受信したコマンドに応じて処理を行い、レスポンスのデータを作成し、通信部24に供給する。通信部24は、レスポンスデータに対して、選択した信号処理部により符号化、及び変調を行い、アンテナ241によりカードリーダライタ14に送信する。
【0047】
また、RAM27にプロトコル情報を記憶している状態で、RAM27に記憶しているプロトコル情報が示す通信プロトコルとは異なる通信プロトコルのデータを受信した場合、ICカード2は、エラーをレスポンスとして送信する。また、RAM27は、電源部29からの電源の供給が断たれた時点で、記憶内容をリセットする。この場合、再び電源が供給されることで、プロトコル情報の書き換えが可能になる。即ち、実質的に、RAM27は、電源部29から電源の供給を受け続けている状態で、記憶しているプロトコル情報の書き換えを制限する。
【0048】
この構成により、ICカード2は、ICカード2がカードリーダライタ14の通信可能範囲内にいる間、常に同じ通信プロトコルを用いて処理を行う。即ち、ICカード2は、最初に受信したコマンドに基づいて、その後に利用する通信プロトコルを決定する。
【0049】
図4は、図2に示すICカード2の処理について説明するためのフローチャートである。
カードリーダライタ14から磁界を受け、起電力を発生させると、ICカード2は、起動コマンド(リクエストコマンド)の受信を待つ状態となる(ステップS11)。この状態において、リクエストコマンドを受信すると(ステップS12)、ICカード2のCPU25は、通信プロトコルの判定を行う(ステップS13)。また、CPU25は、判定した通信プロトコルを示す情報(プロトコル情報)をRAM27に格納する。RAM27は、プロトコル情報の記憶部として機能する。
【0050】
通信プロトコルがTypeAである場合、選択部244は、TypeAの通信プロトコルに対応する信号処理部243Aを選択する(ステップS14)。通信プロトコルがTypeBである場合、選択部244は、TypeBの通信プロトコルに対応する信号処理部243Bを選択する(ステップS15)。通信プロトコルがTypeCである場合、選択部244は、TypeCの通信プロトコルに対応する信号処理部243Cを選択する(ステップS16)。
【0051】
CPU25は、リクエストコマンドに応じてリクエスト応答コマンドを作成する。リクエスト応答コマンドには、例えば、識別子、アプリケーションデータ、及びプロトコル情報などが含まれる。通信部24は、リクエスト応答コマンドに対して選択部244により選択した信号処理部を用いて信号処理を施し、カードリーダライタ14に対して送信する(ステップS17)。
【0052】
ICカード2は、選択コマンドまたは停止コマンドの受信を待つ状態となる(ステップS18)。ステップS18において、選択コマンド この状態において、ICカード2は、通常の処理を行う(ステップS19)。即ち、CPU25は、この状態においてカードリーダライタ14からコマンドを受信した場合、受信したコマンドに応じた処理を行い、カードリーダに対してレスポンスを送信する。
【0053】
また、チャネルが確率されている状態において、解除コマンドを受信した場合(ステップS20)、ICカード2は、チャネルを解消し、停止状態に移行する(ステップS21)。即ち、チャネルが確立されている場合、ICカード2は、解除コマンドを受信するまで通常の処理を繰り返し行う。
【0054】
また、ステップS18において、停止コマンドを受信した場合も、ICカード2は停止状態に移行する(ステップS21)。
【0055】
停止状態に移行すると、ICカード2は、再び起動コマンド(ウェークアップコマンド)の受信を待つ状態となる(ステップS22)。
【0056】
ステップS22において、起動コマンドを受信した場合(ステップS23、YES)、ICカード2は、ステップS17に移行する。これにより、ICカード2がカードリーダライタ14の通信可能範囲内に存在する間、常に同じ通信プロトコルにより処理が行われる。
【0057】
上記した実施形態によると、ICカード2は、各通信プロトコルに対応する複数の信号処理部を備えている。ICカード2は、最初に受信したコマンドに基づいて受信したデータに用いられている通信プロトコルを判定する。ICカード2は、判定した通信プロトコルに基づいて、処理に用いる信号処理部を選択する。これにより、1枚のICカードで複数の通信プロトコルに対応することができる。
【0058】
即ち、本実施形態によると、通信プロトコルの切替、製造段階及び発行段階では固定化せず、ユーザが利用する段階で臨機応変に切り替えることができる。この結果、より利用者の利便性を向上させることができる携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法を提供することができる。
【0059】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。上記した実施形態では、カードリーダライタ14の通信可能範囲内にICカード2が存在する間、常に同じ通信プロトコルを用いて処理を行う構成として説明したが、この構成に限定されない。例えば、処理途中の所定の段階で、通信プロトコルを切り替えることができる構成であってもよい。
【0060】
図5は、図2に示すICカード2の処理の他の例について説明するためのフローチャートである。なお、図5に示すステップS31乃至ステップS43は、図4に示すステップS11乃至ステップS23と同様の処理である。図5に示すICカード2の動作は、停止状態において起動コマンドを受信した場合の処理の遷移が異なる。
即ち、ステップS38において停止コマンドを受信した場合、または、ステップS40において解除コマンドを受信した場合、ICカード2のCPU25は、停止状態に移行する(ステップS41)。
【0061】
停止状態に移行すると、ICカード2は、再び起動コマンド(リクエストコマンド、またはウェークアップコマンド)の受信を待つ状態となる(ステップS42)。
【0062】
ステップS42において、起動コマンドを受信した場合(ステップS43、YES)、CPU25は、ステップS33に移行する。CPU25は、受信したコマンドに基づいて通信プロトコルの判定を行う(ステップS33)。また、CPU25は、既にRAM27に格納されているプロトコル情報の書き換えを行う。即ち、CPU25は、停止状態において受信したコマンドの通信プロトコルを示す情報をRAM27に書き込む。
【0063】
この場合、特定のアプリケーションの動作を行い、その後、連続して、他の通信プロトコルの他のアプリケーションを実行することができる。即ち、他の通信プロトコルの処理を行う場合に、ICカード2をOFFする必要がなくなる。この結果、より利用者の利便性を向上させることができる。
【0064】
また、さらに、通信プロトコルとアプリケーションとを対応付けることもできる。通常、アプリケーションは不揮発性メモリ28に格納される。この場合、不揮発性メモリ28は、複数のアプリケーションと各アプリケーションの管理情報を記憶する記憶部として機能する。
【0065】
例えば、不揮発性メモリ28に格納されているアプリケーションの管理情報に、動作条件を追加する。この動作条件に、例えば、「通信プロトコルTypeA選択時」、「通信プロトコルTypeB選択時」などの情報を追加する。
【0066】
例えば、アプリケーションAの管理情報の動作条件に、「通信プロトコルTypeA選択時」という情報を追加した場合、CPU25は、アプリケーションAの実行時にRAM27にTypeAを示すプロトコル情報が格納されているか否か判定する。CPU25は、RAM27にTypeAを示すプロトコル情報が格納されている場合にのみ、アプリケーションAを実行する。
【0067】
上記したように設定することにより、各通信プロトコル毎に実行することができるアプリケーションを制限することができる。
【0068】
また、各通信プロトコル毎にチャネルを割り当てることにより、複数の通信プロトコルで同時に動作を実行する構成を実現することができる。例えば、通信プロトコルTypeAにチャネルAを割り当てた状態で、例えば、通信プロトコルTypeBのコマンドが入力された場合、ICカード2は、通信プロトコルTypeBにチャネルBを割り当てる。
【0069】
これにより、ICカード2は、例えば、チャネルAの処理がアプリケーション上の任意のコマンドまで移行した状態で、チャネルBにより他のアプリケーションを実行することができる。
【0070】
上記したように、ICカード2内に処理の経過を示すステータス情報、及び選択している通信プロトコルを示すプロトコル情報を各チャネル毎に設定することにより、ICカード2は、それぞれ独立した状態で各処理を実行することができる。これにより、さらに利用者の利便性を向上させることができる携帯可能電子装置、及び携帯可能電子装置の制御方法を提供することができる。
【0071】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0072】
上記した実施形態では、信号処理部243は、TypeA、B、及びCの通信プロトコルに対応した構成であるとして説明したが、この構成に限定されない。さらに他の通信方式に対応する構成であってもよい。この場合、信号処理部243は、さらに他の通信プロトコルに対応する信号処理部を備える。
【符号の説明】
【0073】
1…ICカード処理装置、2…ICカード、11…端末装置、12…ディスプレイ、13…キーボード、14…カードリーダライタ、21…本体、22…ICモジュール、23…ICチップ、24…通信部、25…CPU、26…ROM、27…RAM、28…不揮発性メモリ、241…アンテナ、242…送受信回路、243…信号処理部、244…選択部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器と無線通信によりデータの送受信を行う携帯可能電子装置であって、
前記外部機器から無線により電力を受け取り、当該携帯可能電子装置の各部に電力を供給する電源部と、
前記外部機器とデータの送受信を行う送受信部と、
前記送受信部により送受信するデータに対してそれぞれ異なる通信プロトコルにより信号処理を施す複数の信号処理部と、
前記送受信部により受信したデータに基づいて通信プロトコルを判定する判定部と、
前記判定手段の判定結果に基づいて前記複数の信号処理部のうちの1つを選択する選択部と、
前記選択部により選択した信号処理部を用いて前記送受信部によりデータの送受信を行うように制御する制御部と、
を具備することを特徴とする携帯可能電子装置。
【請求項2】
前記判定部により判定した通信プロトコルを示すプロトコル情報を格納する第1の記憶部をさらに具備し、
前記選択部は、前記第1の記憶部に記憶されているプロトコル情報を参照して選択する信号処理部を決定することを特徴とする請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項3】
前記第1の記憶部は、前記電源部から電力を受け取っている状態でプロトコル情報の書き換えを制限することを特徴とする請求項2に記載の携帯可能電子装置。
【請求項4】
前記第1の記憶部は、停止コマンドまたは解除コマンドを受信することにより当該携帯可能電子装置が停止状態である場合にプロトコル情報の書き換えの制限を解除することを特徴とする請求項3に記載の携帯可能電子装置。
【請求項5】
複数のアプリケーションと前記各アプリケーションの管理情報を記憶する第2の記憶部をさらに具備し、
前記第2の記憶部に記憶されている前記管理情報は、前記各通信プロトコル毎に前記アプリケーションの実行の可否を制限する情報を備えることを特徴とする請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記各通信プロトコル毎にチャネルを割り当て、各チャネル毎に処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項7】
それぞれ異なる通信プロトコルにより信号処理を施す複数の信号処理部を具備し、外部機器と無線通信によりデータの送受信を行う携帯可能電子装置の制御方法であって、
前記外部機器から受信したデータに基づいて通信プロトコルを判定し、
前記判定結果に基づいて前記複数の信号処理部のうちの1つを選択し、
前記選択した信号処理部を用いて前記外部機器とデータの送受信を行うように制御する、
ことを特徴とする携帯可能電子装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−218453(P2010−218453A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67009(P2009−67009)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】