説明

携帯可能電子装置、携帯可能電子装置の処理装置、及び携帯可能電子装置の処理システム

【課題】より利便性の高い携帯可能電子装置、携帯可能電子装置の処理装置、及び携帯可能電子装置の処理システムを提供する。
【解決手段】一実施形態に係る携帯可能電子装置は、外部機器と非接触通信を行う携帯可能電子装置であって、前記外部機器から送信された初期応答要求コマンドを受信する受信部と、所定コードを予め記憶する記憶部と、受信された前記初期応答要求コマンドから所定コードを認識し、前記認識された所定コードと、前記記憶部により記憶されている所定コードとを比較する比較部と、前記比較部の比較結果が一致である場合、前記初期応答要求コマンドに対するレスポンスを生成するコマンド処理部と、前記コマンド処理部により生成された前記レスポンスを前記外部機器に送信する送信部と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、携帯可能電子装置、携帯可能電子装置の処理装置、及び携帯可能電子装置の処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、携帯可能電子装置として用いられるICカードは、プラスチックなどで形成されたカード状の本体と本体に埋め込まれたICモジュールとを備えている。ICモジュールは、ICチップを有している。ICチップは、電源が無い状態でもデータを保持することができるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)またはフラッシュROMなどの不揮発性メモリと、種々の演算を実行するCPUとを有している。
【0003】
ICカードは、例えば、国際標準規格ISO/IEC7816、及びISO/IEC14443に準拠したICカードである。ICカードは、携帯性に優れ、且つ、外部装置との通信及び複雑な演算処理を行う事ができる。また、偽造が難しい為、ICカードは、機密性の高い情報などを格納してセキュリティシステム、電子商取引などに用いられることが想定される。
【0004】
また、近年、非接触通信によりデータの送受信を行うことができるICカードが一般的に普及している。上記したような非接触通信を行うICカードは、ICチップとアンテナとを備えている。ICカードは、ICカードを処理するICカード処理装置のリーダライタから発せられる磁界を受けて、カード内のアンテナを電磁誘導により起電させることにより動作する。また、ICカードは、非接触通信により処理装置からコマンドを受信した場合、受信したコマンドに応じてアプリケーションを実行する。これにより、ICカードは、種々の機能を実現することができる。
【0005】
ICカードの処理装置は、一定間隔で無線通信により初期応答要求コマンドを送信する。ICカードは、初期応答要求コマンドを受信する場合、初期応答要求コマンドに対するレスポンスを生成し、生成したレスポンスを処理装置に送信する。処理装置は、レスポンスを受け取ることにより、通信可能範囲にICカードが存在することを認識することができる。
【0006】
また、ICカードは、応用分野識別子(AFI)を保持している。AFIは、ICカードの処理装置が応用分野に応じたICカードを選ぶ為に用いられる。例えば、処理装置は、初期応答要求コマンドにAFIとして応用分野に応じた値を設定する。ICカードは、初期応答要求コマンドに設定されているAFIの値と、自身が保持するAFIの値とを比較し、一致する場合にレスポンスを処理装置に送信する。これにより、処理装置は、所望のICカードに対して処理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3488166号公報
【特許文献2】特開平4−155486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、処理装置の通信可能範囲にAFIが一致するICカードが複数存在する場合、処理装置は、処理を行うICカードを特定することができない可能性がある。例えば、入国許可証(ビザ)などがICカードとして発行される場合、同じAFIを有するICカードが複数枚重なった状態で利用者に所持されることが想定される。このような場合、処理装置は、所望のICカードを特定することが困難であるという課題がある。
【0009】
そこで、より利便性の高い携帯可能電子装置、携帯可能電子装置の処理装置、及び携帯可能電子装置の処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態に係る携帯可能電子装置は、外部機器と非接触通信を行う携帯可能電子装置であって、前記外部機器から送信された初期応答要求コマンドを受信する受信部と、所定コードを予め記憶する記憶部と、受信された前記初期応答要求コマンドから所定コードを認識し、前記認識された所定コードと、前記記憶部により記憶されている所定コードとを比較する比較部と、前記比較部の比較結果が一致である場合、前記初期応答要求コマンドに対するレスポンスを生成するコマンド処理部と、前記コマンド処理部により生成された前記レスポンスを前記外部機器に送信する送信部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、一実施形態に係るICカード処理システムの構成例について説明するための図である。
【図2】図2は、一実施形態に係るICカードの構成例について説明するための図である。
【図3】図3は、一実施形態に係る応用分野識別子の例について説明するための図である。
【図4】図4は、一実施形態に係る国記号の例について説明するための図である。
【図5】図5は、一実施形態に係るICカード処理システムによる処理の例について説明するための図である。
【図6】図6は、一実施形態に係るICカード処理システムによる処理の例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る携帯可能電子装置、携帯可能電子装置の処理装置、及び携帯可能電子装置の処理システムについて詳細に説明する。
【0013】
本実施形態に係る携帯可能電子装置(ICカード)20及びICカードを処理する処理装置(端末装置)10は、例えば、ISO/IEC14443などにより規定されている非接触通信の機能を備える。これにより、ICカード20及び端末装置10は、互いにデータの送受信を行うことができる。
【0014】
図1は、一実施形態に係るICカード処理システム1の構成例を示す。
ICカード処理システム1は、ICカード20を処理する端末装置10と、ICカード20と、を備える。端末装置10とICカード20とは、上記したように非接触通信により互いに種々のデータを送受信する。
【0015】
端末装置10は、CPU11、ROM12、RAM13、不揮発性メモリ14、送受信部15、共振部16、ロジック部17、上位インターフェース18、及び電源部19を備える。CPU11、ROM12、RAM13、不揮発性メモリ14、送受信部15、共振部16、ロジック部17、及び上位インターフェース18は、それぞれバスを介して互いに接続されている。
【0016】
CPU11は、端末装置10全体の制御を司る制御部として機能する。CPU11は、ROM12又は不揮発性メモリ14に記憶されている制御プログラム及び制御データに基づいて種々の処理を行う。例えば、CPU11は、送受信部15及び共振部16を介してICカード20とコマンド及びレスポンスの送受信を行う。
【0017】
ROM12は、予め制御用のプログラム及び制御データなどを記憶する不揮発性のメモリである。RAM13は、ワーキングメモリとして機能する揮発性のメモリである。RAM13は、CPU11の処理中のデータなどを一時的に格納する。例えば、RAM13は、送受信部15及び共振部16を介して外部の機器と送受信するデータを一時的に格納する。また、RAM13は、CPU11が実行するプログラムを一時的に格納する。
【0018】
不揮発性メモリ14は、例えばEEPROM、FRAMなどを備える。不揮発性メモリ14は、例えば、制御用のプログラム、制御データ、アプリケーション、及びアプリケーションに用いられるデータなどを記憶する。
【0019】
送受信部15及び共振部16は、ICカード20と通信を行うためのインターフェース装置である。
【0020】
送受信部15は、共振部16により送受信するデータに対して信号処理を施す。例えば、送受信部15は、符号化、復号、変調、及び復調を行なう。送受信部15は、符号化及び変調を施したデータを共振部16に供給する。
【0021】
共振部16は、例えば所定の共振周波数を有するアンテナを有する。共振部16は、送受信部15から供給されるデータに応じて磁界を発生させる。これにより、端末装置10は、通信可能範囲に存在するICカード20に対してデータを非接触で送信することができる。
【0022】
また、共振部16は、磁界を検知し、検知した磁界に応じてデータを生成する。これにより、共振部16は、データを非接触で受信することができる。共振部16は、受信したデータを送受信部15に供給する。送受信部15は、共振部16により受信したデータに対して復調及び復号を行う。これにより、端末装置10は、ICカード20から送信された元のデータを取得することができる。
【0023】
ロジック部17は、所定の演算処理を行う。例えば、ロジック部17は、CPU11の制御に基づいて、データの暗号化、復号、及び乱数生成などの演算処理を行う。
【0024】
上位インターフェース18は、上位端末と通信するためのインターフェースである。上位端末は、例えば操作部及び表示部などを備える。操作部は、例えば操作キーなどを備え、操作者により入力される操作に基づいて、操作信号を生成する。表示部は、種々の情報を表示する。上位インターフェース18は、上位端末からデータを受け取り、CPU11に伝送する。また、上位インターフェース18は、送受信部15及び共振部16によりICカード20から取得したデータを上位端末に伝送する構成であってもよい。
【0025】
電源部19は、端末装置10の各部に電力を供給する。
【0026】
また、不揮発性メモリ14は、国記号(country code:CC)を記憶する国記号記憶部14aを有する。国記号記憶部14aは、例えば、上位インターフェース18を介して上位端末から入力される国記号を記憶する。また、端末装置10が操作入力を受け付ける操作部を有する場合、国記号記憶部14aは、操作部に入力される操作に応じた国記号を記憶する構成であってもよい。また、ROM12が国記号記憶部14aを備える構成であってもよい。なお、国記号については後述する。
【0027】
図2は、一実施形態に係るICカード20の構成例を示す。
図2に示すように、ICカード20は、例えば、矩形状の本体21と、本体21内に内蔵されたICモジュール22とを備える。ICモジュール22は、ICチップ23と、共振部(アンテナ)24とを備える。ICチップ23と共振部24とは、互いに接続された状態でICモジュール22内に形成されている。
【0028】
なお、本体21は、少なくとも共振部24が配設されるICモジュール22を設置可能な形状であれば、矩形状に限らず如何なる形状であっても良い。
【0029】
ICチップ23は、CPU25、ROM26、RAM27、不揮発性メモリ28、送受信部29、電源部31、及びロジック部32などを備える。CPU25、ROM26、RAM27、不揮発性メモリ28、送受信部29、電源部31、及びロジック部32は、バスを介して互いに接続されている。
【0030】
共振部24は、端末装置(外部機器)10の共振部16と通信を行うためのインターフェースである。共振部24は、例えば、ICモジュール22内に所定の形状で配設される金属線により構成されるアンテナを備える。
【0031】
ICカード20は、端末装置10に送信するデータに応じてアンテナにより磁界を発生させる。これにより、ICカード20は、端末装置10に対してデータを送信することができる。また、ICカード20は、電磁誘導によりアンテナに発生する誘導電流に基づいて端末装置10から送信されるデータを認識する。
【0032】
CPU25は、ICカード20全体の制御を司る制御部として機能する。CPU25は、ROM26あるいは不揮発性メモリ28に記憶されている制御プログラム及び制御データに基づいて種々の処理を行う。例えば、端末装置10から受信したコマンドに応じて種々の処理を行い、処理結果としてのレスポンスなどのデータの生成を行なう。
【0033】
ROM26は、予め制御用のプログラム及び制御データなどを記憶する不揮発性のメモリである。ROM26は、製造段階で制御プログラム及び制御データなどを記憶した状態でICカード20内に組み込まれる。即ち、ROM26に記憶される制御プログラム及び制御データは、予めICカード20の仕様に応じて組み込まれる。
【0034】
RAM27は、ワーキングメモリとして機能する揮発性のメモリである。RAM27は、CPU25の処理中のデータなどを一時的に格納する。例えば、RAM27は、共振部24を介して端末装置10から受信したデータを一時的に格納する。またRAM27は、共振部24を介して端末装置10に送信するデータを一時的に格納する。またさらに、RAM27は、CPU25が実行するプログラムを一時的に格納する。
【0035】
不揮発性メモリ28は、例えば、EEPROMあるいはフラッシュROMなどのデータの書き込み及び書換えが可能な不揮発性のメモリを備える。不揮発性メモリ28は、ICカード20の運用用途に応じて制御プログラム及び種々のデータを格納する。
【0036】
たとえば、不揮発性メモリ28では、プログラムファイル及びデータファイルなどが創成される。創成された各ファイルには、制御プログラム及び種々のデータなどが書き込まれる。CPU25は、不揮発性メモリ28、または、ROM26に記憶されているプログラムを実行することにより、種々の処理を実現することができる。
【0037】
送受信部29は、端末装置10に送信するデータに対して符号化、負荷変調などの信号処理を行う。例えば、送受信部29は、端末装置10に送信するデータの変調(増幅)を行う。送受信部29は、信号処理を施したデータを共振部24に送信する。
【0038】
また、送受信部29は、共振部24により受信する信号に対して復調、及び復号を行う。例えば、送受信部29は、共振部24により受信する信号の解析を行う。これにより、送受信部29は、2値の論理データを取得する。送受信部29は、解析したデータをバスを介してCPU25に送信する。
【0039】
電源部31は、共振部24により受け取られた電波(例えばキャリア波)に基づいて電力を生成する。さらに、電源部31は、動作クロックを生成する。電源部31は、生成した電力及び動作クロックをICカード20の各部に供給する。ICカード20の各部は、電力の供給を受けた場合、動作可能な状態になる。
【0040】
ロジック部32は、演算処理をハードウエアにより行う演算部である。例えば、ロジック部32は、端末装置10からのコマンドに基づいて、暗号化、復号、及び乱数の生成などの処理を行う。例えば、端末装置10から相互認証コマンドを受信する場合、ロジック部32は、乱数を生成し、生成した乱数をCPU25に伝送する。
【0041】
また、不揮発性メモリ28は、国記号を記憶する国記号記憶部28aを備えている。国記号記憶部28aは、例えば、ICカード20のファイルの創成時に外部から入力される国記号を記憶する。また、ROM26が国記号記憶部28aを備える構成であってもよい。この場合、ROM26は、国記号を記憶した状態でICチップ23に組み込まれる。また、不揮発性メモリ28が、複数のアプリケーションを記憶する場合、国記号記憶部28aは、各アプリケーション毎に国記号を記憶する構成であってもよい。なお、国記号については後述する。
【0042】
ICカードの処理装置は、一定間隔で無線通信により初期応答要求コマンドを送信する。ICカードは、初期応答要求コマンドを受信する場合、初期応答要求コマンドに対するレスポンスを生成し、生成したレスポンスを処理装置に送信する。処理装置は、レスポンスを受け取ることにより、通信可能範囲にICカードが存在することを認識することができる。
【0043】
また、ICカードは、応用分野識別子(AFI)を保持している。AFIは、ICカードの処理装置が応用分野に応じたICカードを選ぶ為に用いられる。例えば、処理装置は、初期応答要求コマンドにAFIとして応用分野に応じた値を設定する。ICカードは、初期応答要求コマンドに設定されているAFIの値と、自身が保持するAFIの値とを比較し、一致する場合にレスポンスを処理装置に送信する。これにより、処理装置は、所望のICカードに対して処理を行うことができる。
【0044】
図1に示す端末装置10は、共振部16により一定間隔で無線通信により初期応答要求コマンドを送信する。これにより、端末装置10は、通信可能範囲内に存在するICカード20を認識し、通信に関する設定を行う。なお、端末装置10は、初期応答要求コマンドに、応用分野識別子(AFI)、及び国記号(CC)を付加する。
【0045】
図3は、一実施形態に係る応用分野識別子の例を示す。
AFIは、端末装置10が応用分野を特定する為に用いられる識別子である。AFIは、例えば8bit(1byte)で表現される値である。端末装置10は、端末装置10が用いられる分野に応じたAFIの値を例えばROM12、または不揮発性メモリ14などにより予め記憶する。端末装置10は、初期応答要求コマンドに自身が記憶しているAFIの値を設定する。
【0046】
また、ICカード20は、ICカード20が用いられる分野に応じたAFIの値を例えばROM26、または不揮発性メモリ28などにより予め記憶する。ICカード20は、初期応答要求コマンドを受信する場合、初期応答要求コマンドのAFIの値と、自身が記憶しているAFIの値とを比較し、一致する場合に後段の処理を行う。即ち、ICカード20は、初期応答要求コマンドのAFIの値と、自身が記憶しているAFIの値とが一致しない場合、処理を終了する。これにより、端末装置10は、端末装置10に対応するICカード20を絞り込むことが出来る。
【0047】
図3に示すように、例えば、端末装置10が、輸送分野(Transport)に用いられる場合、端末装置10は、AFIとして「10」または、「1Y」を記憶する。端末装置10は、初期応答要求コマンドにAFIとして「10」または、「1Y」の値を設定し、初期応答要求コマンドを送信する。ICカード20は、初期応答要求コマンドを受信した場合、自身が記憶しているAFIの値が「10」または、「1Y」であるか確認する。ICカード20は、自身が記憶しているAFIの値が「10」または、「1Y」である場合、後段の処理を行う。
【0048】
また、例えば、端末装置10が、金融分野(Financial)に用いられる場合、端末装置10は、AFIとして「20」または、「2Y」を記憶する。端末装置10は、初期応答要求コマンドにAFIとして「20」または、「2Y」の値を設定し、初期応答要求コマンドを送信する。ICカード20は、初期応答要求コマンドを受信した場合、自身が記憶しているAFIの値が「20」または、「2Y」であるか確認する。ICカード20は、自身が記憶しているAFIの値が「20」または、「2Y」である場合、後段の処理を行う。
【0049】
図4は、一実施形態に係る国記号(CC)の例を示す。
CCは、国名(地域名を含む)を示す識別子である。CCは、例えば、ISO/IEC3166−1に規定されるように、16bit(2byte)で表現される値である。ICカード処理システム1は、CCの値と国名とを予め対応付け、図4に示すような国記号テーブルを設定する。これにより、CCの値から国名を特定することができる。
【0050】
端末装置10は、国記号テーブルに基づいてCCの値を例えば国記号記憶部14aにより予め記憶する。端末装置10は、例えば、端末装置10が運用される国に応じたCCの値を予め記憶する。端末装置10は、初期応答要求コマンドに自身が記憶しているCCの値を設定する。
【0051】
また、ICカード20は、国記号テーブルに基づいてCCの値を国記号記憶部28aにより予め記憶する。ICカード20は、初期応答要求コマンドを受信する場合、初期応答要求コマンドのCCの値と、国記号記憶部28aにより記憶されているCCの値とを比較し、一致する場合に後段の処理を行う。即ち、ICカード20は、初期応答要求コマンドのCCの値と、国記号記憶部28aにより記憶されているCCの値とが一致しない場合、処理を終了する。これにより、端末装置10は、端末装置10に対応するICカード20をさらに絞り込むことが出来る。
【0052】
図4に示すように、例えば、端末装置10が、アメリカ合衆国(United States)で用いられる場合、端末装置10は、CCの値として「840」を記憶する。端末装置10は、初期応答要求コマンドにCCの値として「840」を設定し、初期応答要求コマンドを送信する。ICカード20は、初期応答要求コマンドを受信した場合、自身が記憶しているCCの値が「840」であるか確認する。ICカード20は、自身が記憶しているCCの値が「840」である場合、後段の処理を行う。
【0053】
また、例えば、端末装置10が、アイスランド(Iceland)で用いられる場合、端末装置10は、CCの値として「352」を記憶する。端末装置10は、初期応答要求コマンドにCCの値として「352」を設定し、初期応答要求コマンドを送信する。ICカード20は、初期応答要求コマンドを受信した場合、自身が記憶しているCCの値が「352」であるか確認する。ICカード20は、自身が記憶しているCCの値が「352」である場合、後段の処理を行う。
【0054】
図5は、端末装置10が送信する初期応答要求コマンドの例を示す。
図5に示すように、初期応答要求コマンドは、「APf」、「AFI」、「CC」、「PARAM」、及び「CRC_B」を有する。
【0055】
APfは、初期応答要求コマンドで使用されるパラメータである。APfは、例えば1byteのデータである。
【0056】
AFIは、上記したように、端末装置10が応用分野を特定する為に用いられる識別子である。AFIは、例えば8bit(1byte)で表現される値である。即ち、端末装置10は、初期応答要求コマンドの先頭から9bit乃至16bit目にAFIの値を設定する。
【0057】
CCは、上記したように、国名(地域名を含む)を示す識別子である。CCは、例えば、16bit(2byte)で表現される値である。即ち、端末装置10は、初期応答要求コマンドの先頭から17bit乃至32bit目にCCの値を設定する。
【0058】
PARAMは、属性情報のパラメータである。PARAMは、例えば8bit(1byte)のデータである。PARAMは、コマンドの種類、及び、スロットマーカー方式またはタイムスロット方式などのアンチコリジョンで使用されるスロットの数などを示す。
【0059】
CRC_Bは、巡回冗長検査符号である。CRC_Bは、例えば、16bit(2byte)で表現される値である。CRC_Bは、CRC_Bを含むコマンドをキャラクタとして有するフレーム内のデータビットから計算される値である。ICカード20は、受信したコマンドのCRC_Bを用いて、受信したコマンドが正常に伝送されたものであるか否かを判断する。
【0060】
図6は、一実施形態に係るICカード20の動作の例を示す。
まず、端末装置10は、ICカード20の検知を行なう為に、共振部16により初期応答要求コマンドを繰り返し通信可能範囲に送信する。
【0061】
ICカード20は、端末装置10の共振部16の通信可能範囲内に進入する場合、活性化されてアイドル状態になる(ステップS11)。さらに、ICカード20は、初期応答要求コマンドを受信する(ステップS12)。
【0062】
ICカード20のCPU25は、受信した初期応答要求コマンドを解析する。これにより、CPU25は、初期応答要求コマンドの「APf」、「AFI」、「CC」、「PARAM」、及び「CRC_B」のそれぞれの値を認識する。
【0063】
CPU25は、認識した初期応答要求コマンドのAFIの値と、ICカード20のROM26、または不揮発性メモリ28により記憶されているAFIの値とが一致するか否か判定する(ステップS13)。
【0064】
認識したAFIの値と、ICカード20に記憶されているAFIの値とが一致しない場合、CPU25は、ステップS12に移行し、初期応答要求コマンドの受信を待つ状態になる。これにより、端末装置10により特定される応用分野に該当しないICカード20が処理対象から除外される。
【0065】
認識したAFIの値と、ICカード20に記憶されているAFIの値とが一致する場合、CPU25は、認識した初期応答要求コマンドのCCの値と、国記号記憶部28aにより記憶されているCCの値とが一致するか否か判定する(ステップS14)。
【0066】
認識したCCの値と、ICカード20に記憶されているCCの値とが一致しない場合、CPU25は、ステップS12に移行し、初期応答要求コマンドの受信を待つ状態になる。これにより、端末装置10により特定される国記号に該当しないICカード20が処理対象から除外される。
【0067】
認識したCCの値と、ICカード20に記憶されているCCの値とが一致した場合、CPU25は、初期応答要求コマンドに対するレスポンスを生成し、端末装置10に送信する(ステップS15)。これ以降、ICカード20及び端末装置10は、通常の処理を行う(ステップS16)。即ち、ICカード20及び端末装置10は、互いにコマンド及びレスポンスを送受信することにより、アンチコリジョン処理、相互認証処理、及び通常のコマンド処理などを行う。
【0068】
上記した実施形態に係るICカード処理システム1は、国記号記憶部14aを備える端末装置と、国記号記憶部28aを備えるICカード20とを備える。端末装置10は、国記号記憶部14aにより記憶されている国記号(CC)を初期応答要求コマンドに設定し、送信する。ICカード20は、初期応答要求コマンドに設定されているCCの値と、国記号記憶部28aにより記憶されている国記号とを比較する。ICカード20は、比較結果が一致である場合に、端末装置10にレスポンスを送信する。
【0069】
これにより、端末装置10により特定されるCCに該当しないICカード20が処理対象から除外される。この為、特定の応用分野に用いられるICカード20が、端末装置10の共振部16の通信可能範囲に複数枚存在する場合であっても、端末装置10は、所望のICカードを特定することができる。この結果、衝突などを抑えることができ、より利便性の高い携帯可能電子装置、携帯可能電子装置の処理装置、及び携帯可能電子装置の処理システムを提供することができる。
【0070】
なお、上記の実施形態では、CCは、16bit(2byte)で表現される値としたが、この構成に限定されない。CCのデータ量は、識別する国名の数に応じて適宜設定される。例えば、CCが8bit(1byte)であれば256通りの値を表現することができる。この為、単に国名で区分する場合、CCは、1byteのデータであってもよい。また、ヨーロッパ、北米、南米、アジア、アフリカなどで区分する場合、4bit程度でも表現可能である。
【0071】
さらに、CCを2byteよりも大きなデータにすることで、国の中の細かな地域でも区分することができる。この場合、端末装置10は、例えば、日本の関西地域で用いられる交通ICカードと、日本の関東地域で用いられる交通ICカードとを識別することができる。これにより、より衝突の機会を減らす事ができる。
【0072】
なお、上述の各実施の形態で説明した機能は、ハードウエアを用いて構成するに留まらず、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現することもできる。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0073】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…ICカード処理システム、10…端末装置、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…不揮発性メモリ、14a…国記号記憶部、15…送受信部、16…共振部、17…ロジック部、18…上位インターフェース、19…電源部、20…ICカード、21…本体、22…ICモジュール、23…ICチップ、24…共振部、25…CPU、26…ROM、27…RAM、28…不揮発性メモリ、28a…国記号記憶部、29…送受信部、31…電源部、32…ロジック部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器と非接触通信を行う携帯可能電子装置であって、
前記外部機器から送信された初期応答要求コマンドを受信する受信部と、
所定コードを予め記憶する記憶部と、
受信された前記初期応答要求コマンドから所定コードを認識し、前記認識された所定コードと、前記記憶部により記憶されている所定コードとを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果が一致である場合、前記初期応答要求コマンドに対するレスポンスを生成するコマンド処理部と、
前記コマンド処理部により生成された前記レスポンスを前記外部機器に送信する送信部と、
を具備する携帯可能電子装置。
【請求項2】
前記記憶部は、国記号を所定コードとして予め記憶し、
前記比較部は、前記初期応答要求コマンドから国記号を認識し、前記認識された国記号と、前記記憶部により記憶されている国記号とを比較する、
請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項3】
前記記憶部は、国名または地域名に対応する値を国記号として記憶し、
前記比較部は、受信された前記初期応答要求コマンドから国記号の値を認識し、前記認識された値と、前記記憶部により記憶されている国記号の値とを比較する、
請求項2に記載の携帯可能電子装置。
【請求項4】
応用分野識別子を記憶する応用分野識別子記憶部をさらに具備し、
前記比較部は、受信された前記初期応答要求コマンドから応用分野識別子を認識し、前記認識された応用分野識別子と、前記応用分野識別子記憶部により記憶されている応用分野識別子とを比較する、
請求項3に記載の携帯可能電子装置。
【請求項5】
前記各部を備えるICモジュールと、
前記ICモジュールが配設される本体と、
を具備する請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項6】
携帯可能電子装置と非接触通信を行う携帯可能電子装置の処理装置であって、
所定コードを予め記憶する記憶部と、
前記記憶部により所定コードを含む初期応答要求コマンドを生成するコマンド生成部と、
前記コマンド生成部により生成された前記初期応答要求コマンドを前記携帯可能電子装置に送信する送信部と、
前記携帯可能電子装置から送信されたレスポンスを受信する受信部と、
を具備する携帯可能電子装置の処理装置。
【請求項7】
携帯可能電子装置と、前記携帯可能電子装置と非接触通信を行う携帯可能電子装置の処理装置とを備える携帯可能電子装置処理システムであって、
前記処理装置は、
所定コードを予め記憶する第1の記憶部と、
前記第1の記憶部により所定コードを含む初期応答要求コマンドを生成するコマンド生成部と、
前記コマンド生成部により生成された前記初期応答要求コマンドを前記携帯可能電子装置に送信する第1の送信部と、
前記携帯可能電子装置から送信されたレスポンスを受信する第1の受信部と、
を具備し、
前記携帯可能電子装置は、
前記処理装置から送信された前記初期応答要求コマンドを受信する第2の受信部と、
所定コードを予め記憶する第2の記憶部と、
受信された前記初期応答要求コマンドから所定コードを認識し、前記認識された所定コードと、前記第2の記憶部により記憶されている所定コードとを比較する比較部と、
前記比較部の比較結果が一致である場合、前記初期応答要求コマンドに対するレスポンスを生成するコマンド処理部と、
前記コマンド処理部により生成された前記レスポンスを前記外部機器に送信する第2の送信部と、
を具備する携帯可能電子装置処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−194916(P2012−194916A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59822(P2011−59822)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】