説明

携帯型エンジン発電機

【課題】軽量化をしつつ、側壁の強度が保たれた携帯型エンジン発電機を提供する。
【解決手段】燃料タンク7の上方には、ハンドル9が右側壁5の上面と左側壁6の上面とを掛け渡されている。右側壁5および左側壁6の前端部にて各側壁と燃料タンク7の側面に設けられたフランジ7aとが締結される。ハンドル9の端部とフランジ7aと各側壁とを一緒に締結する。前脚部が直線状に形成されている。ハンドル9を燃料タンク7の天板に取り付けずに、ハンドル9と燃料タンク7と各側壁とを一緒に締結することで、燃料タンク7の補強材が必要無くなり、従来よりも軽量化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンによって駆動される携帯型エンジン発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型エンジン発電機は、人が手で持ち運びできるように設計された発電機である。携帯型エンジン発電機には、様々な用途がある。
業務用としては、例えば、土木・建築現場用の電源、電動工具用の電源、野外コンサートやお祭り等の比較的大規模・中規模の野外イベント用の電源、緊急非常用電源等の用途がある。
個人用としては、例えば、家庭での簡易作業用の電源、自動車等のバッテリの充電のための電源、キャンプ等の比較的小規模の野外イベント用の電源、夜釣り用の電源等の用途がある。
用途によって、必要な出力の大きさは異なっており、業務用の携帯型エンジンの出力は、一般的に、個人用の携帯型エンジンより大きい。出力が大きいほど重量が増えるので、業務用の携帯型エンジンは、一般的に、個人用の携帯型エンジンより重い。
業務用の携帯型エンジン発電機の定格出力は、例えば、2000VA以上(50Hz/60Hz)であり、その重量は、例えば、25kg以上となる。30kgを超える発電機も存在する。このような携帯型エンジン発電機を一人で持ち運ぶことは、困難である。
これに対し、個人用の携帯型エンジン発電機の定格出力は、例えば、2000VA未満であり、その重量は、例えば、25kg未満となる。20kg以下の発電機や、10数kgの発電機も存在する。この程度の重量の携帯型エンジン発電機であれば、1人で持ち運ぶことができる。
このように、携帯型エンジン発電機では、一般的に、用途によって、重量(出力)が異なっている。そして、重量によって、ハンドルの数及び位置が異なる。
まず、比較的重量の大きい携帯型発電機(例えば、業務用の携帯型エンジン発電機等)について説明する。
比較的重量の大きい携帯型エンジン発電機には、例えば、発電機の四方をパイプフレームで囲んだパイプ型発電機がある。パイプ型発電機に関する文献としては、例えば、特許文献1がある。
特許文献1に示すパイプ型発電機では、上パイプ45が、パイプ型発電機の上面の短手方向の左右の側辺に沿って設けられている(特許文献1の図2参照)。この左右の上パイプ45が、ハンドルとなる。一方の上パイプ45が、1人又は複数人によって把持され、他方の上パイプ45も、1人又は複数人によって把持される。これにより、このパイプ型発電機は持ち運ばれる。従って、パイプ型発電機は、通常、少なくとも2人によって持ち運ばれる。
なお、比較的力の強い人であれば、両手でそれぞれの上パイプ45を把持することにより、一人でこのパイプ型発電機を持ち運ぶことが可能である。そのように持った場合、身体の前にパイプ型発電機が位置する。そのため、直立した姿勢でパイプ型発電機を持つと、太ももや膝等にパイプ型発電機が接触するため、歩き難い。一方、前屈みの姿勢でパイプ型発電機を持つと、膝や脛等とパイプ型発電機との接触を防止することができる。しかし、腰に負担が掛かってしまうので、長距離の持ち運びが困難である。
このように、パイプ型発電機は、1人での持ち運びを想定して設計されておらず、複数人での持ち運びを想定して設計されているため、1人での携帯に適していない。
また、パイプ型発電機に限らず、比較的重量の大きい携帯型エンジン発電機では、複数のハンドルが、本体上面の側辺に沿って配置されている。これらの携帯型エンジン発電機も、パイプ型発電機と同様に、複数人での持ち運びに適している。
次に、比較的重量の小さい携帯型発電機(例えば、個人用の携帯型エンジン発電機等)について説明する。
比較的重量の小さい携帯型エンジン発電機には、カバード(covered)型発電機と、オープン型発電機とがある。カバード型発電機では、装置全体がカバーによって覆われるので、消音性に優れるが、装置が大きくなってしまう。オープン型発電機では、装置全体を覆うカバーが存在しないので、比較的小型化が可能である。
オープン型発電機としては、例えば、図10に示すような発電機本体およびエンジン本体の構成部品の一部と携帯型発電機71の側壁76とを一体成形したダイカストフレームを備えたダイカスト型発電機がある。このダイカスト型発電機では、1つのハンドル72が、本体上面の長手方向に沿うように、本体上面の中央部分に配置されている。このようなハンドル72の配置は、1人での持ち運びに適している。
また、上述したパイプ型発電機も、ダイカスト型と同様に、オープン型発電機である。
しかし、ダイカスト型発電機の場合、構成部品の一部と側壁とを一体成形することができるので、パイプ型発電機よりも部品数を削減することができる。また、パイプ型発電機よりも部品数が少ないので組み立てやすい。更に、ダイカスト型発電機では、本体の周囲にパイプが配置されていない。そのため、ダイカスト型発電機は、パイプ型発電機より小さく、持ち運びに適している。
なお、上述した例では、携帯型エンジン発電機を、比較的重量の大きい業務用の携帯型エンジン発電機と、比較的重量の小さい個人用の携帯型エンジン発電機とに大別して説明を行った。しかし、実際には、両者を厳密に区別することは困難である。業務用の携帯型エンジン発電機を個人用途に用いることは可能であり、個人用の携帯型エンジン発電機を業務用途に用いることも可能である。
ただし、ハンドルの配置によって、携帯型エンジン発電機を、1人携帯型エンジン発電機と、複数人携帯型エンジン発電機とに分類することはできる。ここでいう1人携帯型エンジン発電機は、1人での携帯に適した携帯型エンジン発電機を意味しており、1人でなければ携帯できないことを意味していない。複数人携帯型エンジン発電機は、複数人での携帯に適した携帯型エンジン発電機を意味しており、複数人でなければ携帯できないことを意味していない。
【0003】
特許文献2の技術
特許文献2に記載の技術の場合、発電機本体の構成部品と側壁とが一体的に形成されたダイカストフレームを採用しているので、パイプの突出量を無くすことができ、パイプ型発電機よりも幅方向の長さを短くすることができる。また、携帯型エンジン発電機を持ち運びするハンドルが、上部に設けられた燃料タンクの中央部に取り付けられているので、一人でも持ち運びやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】2002−54453号公報
【特許文献2】特許第3194565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、1人携帯型エンジン発電機におけるハンドルの配置は、1人での持ち運びに適しており、この点で、1人携帯型エンジン発電機は、複数人携帯型エンジン発電機と明らかに異なっている。また、1人携帯型エンジン発電機は、一般的に、複数人携帯型エンジン発電機よりも軽い。しかしながら、それでも、1人携帯型エンジン発電機は、少なくとも10数kgの重量を有している。1人携帯型エンジン発電機には、20kgを超えるものも存在する。従って、1人携帯型エンジン発電機は、1人で持ち運ぶ場合に軽いと感じられるものではない。そのため、1人での持ち運び易さを考慮すると、従来の携帯型エンジン発電機には、未だ改善の余地があった。
更に、特許文献2に記載の技術および図10に示す携帯型エンジン発電機71では、持ち運ぶ際にハンドル72に集中する力に耐えられるように、燃料タンク73の上面に補強材74を取り付けなければならない。また、燃料タンク73と接続されるフランジ75の直下の側壁部分76aは、携帯型エンジン発電機71を持ち上げる時に集中する力に耐えられるように十分厚みを持たせていた。また、ハンドル72と燃料タンク73との締結と、燃料タンク73と側壁76とをそれぞれ締結する為に、一側面に対して3本のボルト締めが必要であった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ダイカスト型発電機であって、持ち運びしやすいように軽量化がなされた携帯型エンジン発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成をとる。
すなわち、本発明に係る携帯型エンジン発電機は、操作パネルが前面に設けられた携帯型エンジン発電機であって、エンジンと、前記エンジンの回転駆動によって電気を発生する発電機と、前記操作パネルの両側にそれぞれ配置された側壁と、前記側壁の上面と接するフランジを側面に有する燃料タンクと、前記燃料タンクの上方で、前記操作パネルの両側にそれぞれ配置された前記側壁のうちの一方の前記側壁の上面と他方の前記側壁の上面とを掛け渡すハンドルとを備え、前記側壁は、前記側壁の前端部において前記側壁と前記フランジとを締結する第1締結部と、前記ハンドルの端部と前記フランジと前記側壁とを一緒に締結する第2締結部と、前記側壁の下部に形成され、前記エンジンもしくは前記発電機のいずれか一方の一部を覆うケース部と、前記第1締結部から下方に形成された直線状の前脚部と、前記ケース部の後方に形成された後脚部とを有する携帯型エンジン発電機である。
【0008】
本発明によれば、携帯型エンジン発電機は、エンジンを備え、エンジンの回転駆動によって発電機が電気を発生する。また、操作パネルが前面に設けられており、操作パネルの両側に側壁が配置されている。燃料タンクはその側面にフランジを有し、フランジと側壁の上面とが接している。燃料タンクの上方には、ハンドルが一方の側壁の上面と他方の側壁の上面とを掛け渡されている。側壁は、第1締結部、第2締結部、ケース部、前脚部および後脚部を有する。第1締結部では側壁の前端部にて側壁とフランジとを締結する。第2締結部では、ハンドルの端部とフランジと側壁とを一緒に締結する。ケース部は、エンジンもしくは発電機のいずれか一方の一部を覆うもので側壁の下部に形成されている。前脚部は第1締結部から下方に直線状に形成されている。後脚部はケース部の後方に形成されている。
【0009】
ハンドルを燃料タンクの上面に取り付けるよりも、ハンドルと燃料タンクと側壁とを一緒に締結することで、燃料タンクの補強材が必要無くなり、従来よりも携帯型エンジン発電機を軽量化することができる。また、ハンドルと側壁および燃料タンクと側壁とそれぞれ個別に締結するよりも、ハンドルと燃料タンクと側壁とを一緒に締結することで、一組の締結部材を削減することができる。締結部材の削減により、携帯型エンジン発電機を軽量化することができる。その結果、1人での持ち運び易さを向上させることができる。
【0010】
直線状に形成された前脚部は、一本の剛体として機能し、携帯型エンジン発電機が地面に下ろされる際の衝撃を吸収する。前脚部が一本の剛体として機能するので、側壁の構造的な強度が高くなる。
【0011】
上述した発明において、前記前脚部は、前記第1締結部を通る縦軸線を中心とする柱形状を有することが好ましい。これによれば、前脚部が第1締結部を通る縦軸線を中心として柱形状を有することで、前脚部の強度を高くすることができる。また、側壁の前方端部に配置される前脚部が柱状に形成されていることで、携帯型エンジン発電機の前方の角の強度を上げることができる。
【0012】
上述した発明において、前記前脚部の側面には、窪みが形成されており、窪みは、前脚部の長手方向と平行な直線状を有することが好ましい。これによれば、強度を保ちながら側壁を軽量化することができる。
【0013】
上述した発明において、前記側壁には、前記第2締結部から前記ケース部にかけて側壁面が膨出した軸部が形成されており、前記軸部は、前記前脚部と平行な直線状を有することが好ましい。これによれば、側壁は側壁面が膨出した前脚部と軸部とを有する。側壁の強度が前脚部、軸部およびケース部で保たれるので、前脚部、軸部およびケース部以外の側壁の厚さを薄くすることができ、全体として軽量化することができる。
【0014】
上述した発明において、前記軸部は、前記第2締結部を通る縦軸線を中心とする半柱形状を有することが好ましい。これによれば、前記軸部が、第2締結部を通る縦軸線を中心として半柱形状を有することで、強度を高くすることができる。
【0015】
上述した発明において、前記軸部の側面には、窪みが形成されており、前記窪みは、前記軸部の長手方向と平行な直線状を有することが好ましい。これによれば、側壁の強度を維持しつつ側壁を軽量化することができる。
【0016】
上述した発明において、前記燃料タンクの高さの半分以上が、前記側壁の上面より低いことが好ましい。これによれば、燃料タンクの露出部分を従来より低減することができるので、携帯型エンジン発電機の側壁上面よりも上側に突出する部分の高さを低く抑えることができる。
【0017】
上述した発明において、前記燃料タンクから前記エンジンに供給する燃料の量を調節するコックを備え、前記側壁の一方には、前記前脚部と前記軸部との間に窓が設けられ、前記窓を通じて操作可能に前記コックが配置されることが好ましい。これによれば、側壁に窓を形成することにより、側壁が軽量化される。さらには、窓を通してコックの操作をすることができるので、燃料量を調節する操作の利便性が向上される。
【0018】
上述した発明において、前記軸部の中心軸は前記エンジンのクランク軸の軸中心より後方で前記後脚部より前方に配置されることが好ましい。これによれば、軸部の中心軸線が後脚部の前方に配置されることで、後脚部の上部の空間を有効に使うことができ、エンジン発電機の幅を縮小することができる。
【発明の効果】
【0019】
ハンドルを燃料タンクの上面に取り付けるよりも、ハンドルと燃料タンクと側壁とを一緒に締結することで、燃料タンクの補強材が必要無くなり、従来よりも携帯型エンジン発電機を軽量化することができる。また、ハンドル及び燃料タンクをそれぞれ個別に側壁と締結するよりも、ハンドルと燃料タンクと側壁とを一緒に締結することで、一組の締結部材を削減することができる。締結部材の削減により、携帯型エンジン発電機を軽量化することができる。
【0020】
さらに、直線状に形成された前脚部は、一本の剛体として機能し、携帯型エンジン発電機が地面に下ろされる際の衝撃を吸収する。前脚部が一本の剛体として機能するので、側壁の構造的な強度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例に係る携帯型エンジン発電機の正面図である。
【図2】実施例に係る携帯型エンジン発電機の平面図である。
【図3】図1の矢視A方向の図である。
【図4】図1の矢視B方向の図である。
【図5】実施例に係る操作パネルをはずした携帯型エンジン発電機の正面配置図である。
【図6】実施例に係る携帯型エンジン発電機の側壁の図1における矢視A方向の図である。
【図7】実施例に係る携帯型エンジン発電機の側壁の図1における矢視B方向の図である。
【図8】実施例に係る携帯型エンジン発電機の燃料タンクの断面図である。
【図9】(a)は、フランジが比較的高い位置に配置された携帯型エンジン発電機を模式的に示す側面図であり、(b)は、フランジが比較的低い位置に配置された携帯型エンジン発電機を模式的に示す側面図である。
【図10】従来例に係る携帯型エンジン発電機の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
なお、以下の説明で、前後および左右上下とは携帯型エンジン発電機の操作パネルを正面視した場合を基準としている。
【0023】
1.携帯型エンジン発電機の概略構成
図1は、本実施例に係る携帯型エンジン発電機の概略構成を示す正面図である。図2は、携帯型エンジン発電機の平面図であり、図3は図1の矢視A方向の図であり、図4は図1の矢視B方向の図である。
【0024】
本実施例に係る携帯型エンジン発電機1は、正面視して右半分にエンジン2を配置し、左半分に発電機3を配置している。エンジン発電機1の正面には操作パネル4が配置されている。操作パネル4は正面視矩形状を有する。操作パネル4を挟んで、右側壁5と左側壁6が互いに対向して配置されている。操作パネル4の左右の側辺と、右側壁5及び左側壁6の前側の側辺とが互いに隣接している。右側壁5および左側壁6の上面には、フランジ7aを有する燃料タンク7が載置されている。また、右側壁5と左側壁6とには、燃料タンク7の上方を架け渡されたハンドル9がフランジ7aを介して取り付けられている。本実施例において、フランジ7aは水平なフランジ面を有する。すなわち、フランジ7aのフランジ面は、1つの水平な平面(仮想の平面)上に位置する。また、図2に示すように、フランジ7aは、平面視で、燃料タンク7の外縁全周に沿う環状(矩形環状)を有する。ハンドル9より前方に、燃料タンク7の上面にはタンクキャップ10が設けられている。ハンドル9は本願発明におけるハンドルに相当する。図2に示すように、平面視において、上部ハンドル部9aとタンクキャップ10との位置を前後方向に異ならせることにより、ハンドル9を握るためのスペースを確保しつつ、ハンドル9の上方への突出を抑制することができる。
【0025】
更に、携帯型エンジン発電機1のエンジン2側の側端部には、ファンカバー11が取り付けられている。ファンカバー11からは、エンジン始動用のリコイルスタータのハンドル12が露出している。
【0026】
操作パネル4には、右からエンジンスイッチ15、DC12V用コンセント16、およびAC220V用コンセント17、18がそれぞれ取り付けられている。また、操作パネル4とフランジ7aとの間には樹脂製カバー19が右側壁5および左側壁6に取り付けられている。
【0027】
携帯型エンジン発電機1の背面側には、マフラーカバー21が配設され、その内部に排気マフラーが配設されている。また、マフラーカバー21のエンジン2側の端部にはエアクリ―ナ22が配設されている。
【0028】
次に、図5も参照する。図5は、操作パネル4および樹脂製カバー19をはずした携帯型エンジン発電機の正面配置図である。エンジン2はエンジンカバー2aとエンジンカバー32とで覆われている。エンジンカバー32と右側壁5とは一体成形されている。エンジンカバー32は、右側壁5から突出している。エンジンカバー2aおよびエンジンカバー32の内部には、エンジン2の駆動によって回転するクランク軸24が収納されている。すなわち、エンジン2は、クランク軸24を備えている。エンジン2のシリンダは、前後方向に斜めに傾斜して配置されており、エンジンカバー2aおよびエンジンカバー32は、操作パネル4の下部から燃料タンク7の背面側へ傾斜して配置されている。
【0029】
発電機3は、発電機カバー3aと発電機カバー52によって覆われている。発電機カバー52と左側壁6とは一体成形されている。発電機カバー3aは、左側壁6から突出している。発電機3は、クランク軸24と接続されたロータ軸25と、ロータ軸25と共に回転するロータ26と、回転するロータ26の周囲に設けられたステータ27とを有する。エンジン2の駆動によりクランク軸24が回転する。発電機3のロータ軸25がクランク軸24と共に回転し、ロータ軸25に取り付けられたロータ26がステータ(stator)27内で回転することで電気を発生させ発電することができる。
【0030】
次に、図8も参照する。図8は燃料タンク7の断面図である。燃料タンク7は、図5および図8に示すように、フランジ7dを有する上半体7bと、フランジ7eを有する下半体7cとで構成される。上半体7bのフランジ7dと下半体7cのフランジ7eとが合わせられることにより、燃料タンク7の側周面にフランジ7aが形成される。上半体7bのフランジ7dと下半体7cのフランジ7eとの接触面(フランジ面)は、1つの平面(仮想の平面)上に位置する。上半体7bの高さh1は、下半体7cの高さh2よりも短い。ここで高さh2は、フランジ7aのフランジ面から下半体7cの底面までの鉛直方向の距離を指す。なお、底面として、複数の平面が存在する場合には、面積の広い平面を用いて、フランジ7aのフランジ面から下半体7cの底面までの鉛直方向の距離を定める。フランジ7dおよびフランジ7eはそれぞれ複数の孔を有する。フランジ7dおよびフランジ7eを合わせて燃料タンク7を構成した際に、フランジ7aには4つのボルト孔が構成される。フランジ7aが右側壁5および左側壁6の上面に固定されることで、燃料タンク7の高さの半分以上が右側壁5および左側壁6の上面より低くなるように配置される。これにより、燃料タンク7の露出部分を従来より低減することができるので、右側壁5および左側壁6の上面より携帯型エンジン発電機1の上部の出っ張りを低く抑えることができる。
【0031】
2.携帯型エンジン発電機のハンドル
携帯型エンジン発電機のハンドル9は、持ち運びの際に握られる上部ハンドル部9aと上部ハンドル部9aの端部が下方に折れ曲がった側部ハンドル部9bとを有する。上部ハンドル9aと側部ハンドル部9bとは一体的に成形されている。上部ハンドル部9aは燃料タンクの上方を横切って配置されている。側部ハンドル部9bの側面の一部に窪みが形成されている。側部ハンドル部9bは、窪み内において、ボルト47、59によりフランジ7aおよび両側壁の上面と接続されている。上部ハンドル部9aは燃料タンク7の上方を囲むように形成されているので、棒または板状のものが携帯型エンジン発電機1上に倒れた際に、燃料タンク1を保護する機能を有する。
【0032】
3.携帯型エンジン発電機の右側壁
図3および図6を参照して、右側壁5の構成について説明する。図6は右側壁5の図1の矢視A方向の図および一部上面図である。
【0033】
右側壁5は、前脚部31、エンジンカバー32、側壁部33、後脚部34及び、側壁部35及び軸部45を有する。前脚部31、エンジンカバー32、側壁部33、後脚部34、側壁部35及び軸部45はダイカストで一体成形されている。
【0034】
右側壁5の前端部に形成された前脚部31の上部には、ボルト孔41が形成されている。燃料タンク7のフランジ7aと右側壁5の前脚部31とが、ボルト42にて締結されている。ボルト孔41とボルト42とは、本発明における第1締結部に相当する。つまり、右側壁5の前端部である前脚部31の上面にて燃料タンク7と右側壁5とが固定される。このボルト42の縦軸線を中心軸線として、円柱状の前脚部31が固定位置から床面まで直線状に形成されている。前脚部31の下端には、ゴムマウント31aが取り付けられている。
前脚部31の最前面は、操作パネル4(図1参照)の前面よりも前方に位置している。従って、操作パネル4に物が接触する可能性を低減することができる。その結果、操作パネル4の破損等を防止することができる。
【0035】
また、前脚部31は、円柱形状を有する。前脚部31には、直線状の窪み31bが形成されている。窪み31bは、前脚部31の側面の一部が直線状に削られた形状を有する。窪み31bは、前脚部31の長手方向と平行である。このように、前脚部31は完全な円柱でなくてもよく、円柱の一部が削られた形状でもよい。円柱の一部が削られた形状の方が、右側壁5を軽量化することができる。本願発明における円柱形状とは、前脚部31の断面の外周であって露出面に該当する部分が円弧状であり、円弧の中心角が180度以上であることをいう。また、右側壁5の前方端部に配置される前脚部31が円柱状に形成されることで、携帯型エンジン発電機1の前方の角の強度を上げることができる。これにより、携帯型エンジン発電機1の前方の角の破損を防止することができる。また、携帯型エンジン発電機1の前方の角と衝突した対象物への衝撃を緩和することができる。
【0036】
エンジンカバー32は、エンジン2の一部を構成するものである。エンジンカバー32は、側壁部33より左側壁6側に突出している。右側壁5のエンジンカバー32が形成された部分から後方に向かって側壁部35が延びており、その端部には後脚部34が形成されている。後脚部34には、携帯型エンジン発電機1が床面に下ろされた際の衝撃を吸収するゴムマウント34aが取り付けられている。
【0037】
右側壁5の上部後端には、軸部45が形成されている。軸部45の側壁面が側壁部33よりも膨出している。軸部45は、側壁部33よりエンジンカバー32と反対側に突出している。軸部45の上部には、ボルト孔46が形成されている。ハンドル9の右側の側部ハンドル部9bと燃料タンク7のフランジ7aと右側壁5の軸部45とがボルト孔46とボルト47により共に締結されている。ボルト孔46とボルト47は本発明における第2締結部に相当する。
【0038】
軸部45は、ボルト47の縦軸線を中心軸線として、半円柱状の形状を有しており、ハンドル9および燃料タンク7との締結部から下方に向けて形成され、エンジンカバー32に接続されている。軸部45には、直線状の窪み45bが形成されている。窪み45bは、半円柱が一部削られた形状を有する。直線状の窪み45bは、軸部45と平行である。このように、軸部45は完全な半円柱でなくてもよく、半円柱の一部が削られた形状でもよい。半円柱の一部が削られた形状の方が右側壁5を軽量化することができる。本願発明における半円柱状とは、軸部45の断面の外周であって露出面に該当する部分が円弧状であり、円弧の中心角が90度以上270度以下であることをいう。
【0039】
軸部45の下端は、エンジンカバー32に接続されている。エンジンカバー32は、右側壁5より左側壁6側に突出して形成されているので、剛性が高い。軸部45は、右側壁部5よりエンジンカバー32と反対側に突出して形成されているので、剛性が高い。エンジンカバー32と軸部45は、右側壁5よりそれぞれ反対側に突出して形成されているので、それぞれが単独で形成されるよりもさらに剛性が高い。このエンジンカバー32と軸部45とを接続する形状にすることにより右側壁5の剛性を高くすることで、エンジンカバー32よりも上方に位置する構成部品の重量による負荷を、軸部45を介して、エンジンカバー32へ伝達することができる。これにより、携帯型エンジン発電機1を地面に置く際の衝撃により右側壁5が割れるのを防止することができる。また、携帯型エンジン発電機1を地面から持ち上げる際に、携帯型エンジン発電機1の荷重がハンドル9とフランジ7aと軸部45との締結部へ集中しても、右側壁5が割れるのを防止することができる。
【0040】
また、前脚部31は、燃料タンク7との接続部から直線状に下方に形成されているので、剛性が高い。このように、剛性が高い前脚部31と軸部45およびエンジンカバー32とにより囲まれる側壁部33は高い剛性を必要としないので、厚みを薄くすることができる。これにより、右側壁5の軽量化をすることができる。
【0041】
また、軸部45の中心軸線は、クランク軸の軸中心24aより後方で、かつ後脚部34より前方に配置されているので、後脚部34の上方の空間を有効に使うことができる。例えば、エンジン2の上部を後脚部34の上方に配置することができ、エンジン発電機1の幅を縮小することができる。
【0042】
前脚部31と軸部45との間の側壁部33には、貫通孔である窓49が形成されている。窓49の延長上には、燃料タンク7の下部と接続されたコック50が配置されている。コック50は、燃料タンク7からエンジン2へ供給する燃料量を調節するものである。操作者は、窓49に手を挿入してコック50を調節することが可能である。また、右側壁5に窓49を形成することで右側壁5を軽量化することができる。
【0043】
4.携帯型エンジン発電機の左側壁
図4および図7を参照して、左側壁6の構成について説明する。図7は左側壁6の図1の矢視B方向の図および一部上面図である。
【0044】
左側壁6は、前脚部51、発電機カバー52、側壁部53、後脚部54、側壁部60及び軸部57を有する。前脚部51、発電機カバー52、側壁部53、後脚部54、側壁部60及び軸部57はダイカストで一体成形されている。左側壁6の後端にはマフラーカバー21が取り付けられている。
【0045】
左側壁6の前端部に形成された前脚部51の上部にはボルト孔55が形成されている。燃料タンク7のフランジ7aと左側壁6の前脚部51とがボルト56にて締結されている。ボルト孔55とボルト56は、本発明における第1締結部に相当する。つまり、左側壁6の前端部である前脚部51の上面にて燃料タンク7と左側壁6とが固定される。このボルト56の縦軸線を中心軸線として、円柱状の前脚部51が固定位置から床面まで直線状に形成されている。前脚部51の下端には、ゴムマウント51aが取り付けられている。
【0046】
また、前脚部51は、円柱形状を有する。前脚部51には、直線状の窪み51bが形成されている。窪み51bは、前脚部51の側面の一部が直線状に削られた形状を有する。窪み51bは、前脚部51の長手方向と平行である。このように、前脚部51は完全な円柱でなくてもよく、円柱の一部が削られた形状でもよい。円柱の一部が削られた形状の方が、左側壁6を軽量化することができる。また、左側壁6の前方端部に配置される前脚部51が円柱状に形成されることで、携帯型エンジン発電機1の前方の角の強度を上げることができる。これにより、携帯型エンジン発電機1の前方の角の破損を防止することができる。また、携帯型エンジン発電機1の前方の角と衝突した対象物への衝撃を緩和することができる。
【0047】
発電機カバー52は、発電機3の一部を構成するものである。発電機カバー52は、側壁部53より右側壁5側およびその反対側に突出して形成されている。左側壁6から右側壁5側に向かって突出するように発電機カバー52が形成された部分から、後方に向かって側壁部60が延びている。側壁部60の端部には後脚部54が形成されている。後脚部54には、携帯型エンジン発電機1が床面に下ろされる際の衝撃を吸収するゴムマウント54aが取り付けられている。
【0048】
発電機カバー52の上方には、軸部57が形成されている。軸部57の側壁面は、側壁部53よりも膨出している。軸部57は、側壁部53より右側壁5側の反対側に突出している。軸部57の上部には、ボルト孔58が形成されている。ハンドル9の左側の側部ハンドル部9bと燃料タンク7のフランジ7aと左側壁6の軸部57とがボルト孔58とボルト59により共に締結されている。ボルト孔58とボルト59は本発明における第2締結部に相当する。
【0049】
軸部57は、ボルト59の縦軸線を中心軸線として、半円柱状の形状を有しており、ハンドル9および燃料タンク7との締結部から下方に形成され、発電機カバー52に接続されている。軸部57には、直線状の窪み57bが形成されている。窪み57bは、半円柱が一部削られた形状を有する。このように、軸部57は完全な半円柱でなくてもよく、半円柱の一部が削られた形状でもよい。半円柱の一部が削られた形状の方が左側壁6を軽量化することができる。
【0050】
軸部57の下端は、発電機カバー52に接続されている。左側壁6より右側壁5側に突出して形成されている発電機カバー52は、剛性が高い。軸部57は、左側壁部6より右側壁5側の反対側に突出して形成されているので、剛性が高い。発電機カバー52と軸部57は、左側壁6よりそれぞれ反対側に突出して形成されているので、それぞれが単独で形成されるよりもさらに剛性が高い。この発電機カバー52と軸部57とを接続する形状にすることにより左側壁6の剛性を高くすることで、発電機カバー52よりも上方に位置する構成部品の重量による負荷を、軸部57を介して、発電機カバー52へ伝達することができる。これにより、携帯型エンジン発電機1を地面に置く際の衝撃により左側壁6が割れるのを防止することができる。また、携帯型エンジン発電機1を地面から持ち上げる際に、携帯型エンジン発電機1の荷重がハンドル9とフランジ7aと軸部57との締結部へ集中しても、左側壁6が割れるのを防止することができる。
【0051】
また、前脚部51は、燃料タンク7との接続部から直線状に下方に形成されているので、剛性が高い。このように、剛性が高い前脚部51と軸部57および発電機カバー52とにより囲まれる側壁部53は高い剛性を必要としないので、厚みを薄くすることができる。これにより、左側壁6の軽量化をすることができる。
【0052】
また、軸部57の中心軸線は、クランク軸の軸中心24aより後方で、かつ後脚部54より前方に配置されているので、後脚部54の上方の空間を有効に使うことができる。例えば、後脚部54の上方にマフラーカバー21を配置することができ、エンジン発電機1の幅を縮小することができる。
【0053】
本実施例の携帯型エンジン発電機1によれば、ハンドル9を燃料タンク7の上面に取り付けない。ハンドル9と燃料タンク7と各側壁とを一緒に締結することで、燃料タンク7の補強材を省くことができ、従来よりも携帯型エンジン発電機1が軽量化される。また、ハンドル9と各側壁とを締結し、かつ燃料タンク7と各側壁とを締結するよりも、ハンドル9と燃料タンク7と各側壁とを一緒に締結することで、片側の側壁において一組の締結部材を削減することができる。締結部材の削減により、携帯型エンジン発電機1を軽量化することができる。
【0054】
直線状に形成された前脚部31、51は、一本の剛体として機能し、携帯型エンジン発電機1が地面に下ろされる際の衝撃を吸収する。前脚部31、51が一本の剛体として機能するので、右側壁5および左側壁6の構造的な強度が高くなる。また、従来、図10に示す側壁部分76の厚みを全体的に厚くしなければならなかったが、上記実施例では、前脚部31、51と軸部45、57の断面形状を円柱状または半円柱状に形成すればよい。これにより、右側壁5、左側壁6の厚みの大きい部分を少なくすることができる。従って、携帯型エンジン発電機1を軽量化することができる。
【0055】
本実施例の携帯型エンジン発電機1では、直線状の前脚部31、51が第1締結部から鉛直下方に延びている。直線状の軸部45、57が第2の締結部から鉛直下方に延びている。フランジ7aは水平なフランジ面を有する。前脚部31、51及び軸部45、57とフランジ7aのフランジ面とは直角をなす。携帯型エンジン発電機1では、前脚部31、51、軸部45、57及びフランジ7aが組合せられることにより、携帯型エンジン発電機1のフレーム(frame)を構成している。
上述した携帯型エンジン発電機1の構造はモノコック(monocoque)構造と称することもできる。本体を構成するダイカスト部材が、前脚部31、51及び軸部45、57を有する。前脚部31、51及び軸部45、57が、携帯型エンジン発電機1の骨格となっている。
従来の携帯型エンジン発電機では、本実施例における前脚部31、51及び軸部45、57に相当する複数の脚は、単に、携帯型エンジン発電機1を地面に設置する機能を有していた。また、本実施例におけるフランジ7aに相当する燃料タンクのフランジは、単に、燃料タンク7の強度を確保し、燃料タンク7の変形・破損を防止する機能を有していた。
これに対し、本実施例における前脚部31、51、軸部45、57及びフランジ7aは、従来の機能に加え、携帯型エンジン発電機1のフレームとしての機能を有する。これにより、パイプ型発電機が有するようなパイプを有さなくても、携帯型エンジン発電機の強度を確保することができる。
また、前脚部31の最前面は、操作パネル4の前面よりも前方に位置している(図1、3)。前脚部31及び軸部45は、側壁部33の表面よりも側方(右側方)に膨出している(図3、6)。前脚部51及び軸部57は、側壁部53の表面よりも側方(左側方)に膨出している(図4、7)。フランジ7aは、操作パネル4の前面よりも前方に突出している。フランジ7aは、側壁部33、53の表面より側方(左右側方)に突出している(図2)。これにより、前脚部31、51、軸部45、57及びフランジ7aにより構成されるフレームは、操作パネル4及び側壁部33、53を保護する機能も有する。従って、操作パネル4及び側壁部33、53に物が接触する可能性を低減することができる。その結果、操作パネル4及び側壁部33、53の破損等を防止することができる。
本実施例の携帯型エンジン発電機1では、2本の側部ハンドル部9bが、第2締結部から鉛直上方に延びている。2本の側部ハンドル部9bの間には、上部ハンドル部9aが設けられている。上部ハンドル9aは水平方向に延びている。上部ハンドル部9aと、フランジ7aのフランジ面とは略平行である。これにより、ハンドル9も、携帯型エンジン発電機1のフレームを構成している。
図10に示す従来の携帯型エンジン発電機71では、本実施例におけるハンドル9に相当するハンドル72は、単に、携帯型エンジン発電機を持ち運ぶための機能を有していた。
これに対し、本実施例におけるハンドル9は、従来の機能に加え、前脚部31、51、軸部45、57及びフランジ7aと組合せられることにより、携帯型エンジン発電機1のフレームとしての機能を有する。これにより、携帯型エンジン発電機の強度を更に高めることができる。
平面視において上部ハンドル部9aは、タンクキャップ10と重ならないように設けられている(図2)。つまり、上部ハンドル部9aは、燃料タンク7の上面から上方に突出しているタンクキャップ10を避けるように配置されている。これにより、上部ハンドル部9aを把持する際に、タンクキャップ10が邪魔にならないため、上部ハンドル部9aを低い位置に配置でき、2本の側部ハンドル部9bを短くできる。2本の側部ハンドル部9bを短くすることにより、第2締結部に力がかかる場合に、上部ハンドル部9aに発生する曲げモーメントが小さくなる。これにより、携帯型エンジン発電機のフレームとしての強度を高めることができる。さらに、2本の側部ハンドル部9bを短くすることにより、携帯型エンジン発電機を軽量化することができる。
エンジンカバー32は、側壁部33及び軸部45の下方で且つ前脚部31の後方に位置し、前脚部31と接触する(又は間隔をあけて配置される)とともに、軸部45と後脚部34との間に配置されている。また、発電機カバー52は、側壁部53及び軸部57の下方で且つ前脚部51の後方に位置し、前脚部51と接触する(又は間隔をあけて配置される)とともに、軸部57と後脚部54との間に配置されている。このように配置されたエンジンカバー32、発電機カバー52も、上述したフレームを構成している。エンジンカバー32、発電機カバー52は、本発明におけるケース部に相当する。
更に、側部ハンドル部9bは、燃料タンク7の上側部分の側面よりも外側に位置している。
図10に示す従来の携帯型エンジン発電機71では、燃料タンク73の側面が露出しているが、本実施例では、燃料タンク7の上側部分の側面よりも外側に、ハンドル側部9bが位置している。従って、本実施例7のハンドル7は、燃料タンク7の上側部分の側面を保護する機能を有する。このように、本実施例の携帯型エンジン発電機1では、前脚部31、51、軸部45、57、フランジ7a及びハンドル9が、携帯型エンジン発電機1の強度を確保する機能と、携帯型エンジン発電機1の構成要素を保護する機能とを有する。
また、本実施例の携帯型エンジン発電機1では、燃料タンク7の高さの半分以上が、側壁5、6の上面より低くなるように配置されている。すなわち、フランジ7aのフランジ面から燃料タンク7の上面までの高さ(上半体7bの高さ)h1は、フランジ7aのフランジ面から燃料タンク7の下面までの高さ(下半体7cの高さ)h2よりも短い。
燃料タンク7の下半体7cは、前脚部31、51、軸部45、57及びフランジ7aにより構成されるフレームに囲われる。携帯型エンジン発電機1では、下半体7cの容積が大きいので、燃料タンク7の保護に優れている。
また、フランジ7aの水平なフランジ面が、燃料タンク7の高さの半分より高い位置に位置するので、フランジ7aとマフラーカバー21との間の間隔Gを高い位置に確保することができる(図3)。これにより、携帯型エンジン発電機1の1人での持ち運び易さを向上させることができる。この点について、図9を用いて説明する。
図9(a)は、フランジが比較的高い位置に配置された携帯型エンジン発電機を模式的に示す側面図である。図9(b)は、フランジが比較的低い位置に配置された携帯型エンジン発電機を模式的に示す側面図である。
図中の各符号は、以下の通りである。
F(F1、F2) フランジ
H(H1、H2) フランジFのフランジ面までの高さ
L(L1、L2) フランジFのフランジ面から燃料タンクの上面までの高さ
C(C1、C2) エンジンのシリンダ(図示せず)の向き
A(A1、A1) シリンダの傾斜角
P(P1、P2) 点火プラグのキャップ
G(G1、G2) 点火プラグのキャップPの着脱及び点火プラグのメンテナンス作業を行うためのギャップ
D(D1、D2) 携帯型エンジン発電機の奥行き
図9(a)と図9(b)とを対比すると、フランジF1は、フランジF2よりも高い位置に配置されている。H1はH2より大きい。L1はL2より小さい。従って、ギャップG1の位置は、ギャップG2より高い。
ギャップG1の位置が高いので、点火プラグのキャップP1を高位置に配置することが可能となる。キャップP1の位置は、ギャップP2より高い。
点火プラグのキャップP1を高位置に配置するためには、シリンダの向きC1を変える必要がある。具体的には、シリンダを、より立てて配置しなければならない。C1はC2より立っている。A1はA2より大きい。その結果、シリンダの奥行き方向への突出量が減少するので、携帯型エンジン発電機の奥行きD1が小さくなる。D1はD2より小さい。すなわち、フランジF1を高位置に配置することにより、点火プラグのメンテナンス作業を行うためのギャップG1を狭めることなく、携帯型エンジン発電機の奥行きD1を小さくすることができるのである。
本実施例の携帯型エンジン発電機において、奥行きを小さくすることにより得られるメリットは大きい。
本実施例の携帯型エンジン発電機は、1人携帯型エンジン発電機である。ハンドルは、本体上面の長手方向に沿うように、本体上面の中央部分に配置される。従って、1人でハンドルを持って、携帯型エンジン発電機を持ち上げると、奥行き方向の面(正面又は背面)が身体と向き合う。片手で持ち上げれば、携帯型エンジン発電機の奥行き方向の面が、太ももや膝等の側面と向き合う。両手で持ち上げれば、携帯型エンジン発電機の奥行き方向の面が、太ももや膝等の前面と向き合う。
携帯型エンジン発電機の奥行きを小さくすることにより、太ももや膝等への携帯型エンジン発電機の接触を弱めることができるので、歩き易くなる。片手で持っても、脇が開き難くなるので、手が疲れ難い。両手で持つ場合でも、脇が開いたり腰が曲がったりし難くなるので、手の疲れや腰への負担を低減することができる。従って、携帯性を高めることができる。
本発明は、上記実施例のものに限らず、次のように変形実施することができる。
【0056】
上記実施例では、携帯型エンジン発電機1の右側にエンジン2を配置し、左側に発電機3を配置する構成であったが、携帯型エンジン発電機1の左側にエンジン2を配置し、右側に発電機3を配置する構成でもよい。すなわち、本発明は、上記実施例における各構成の左右方向の位置関係によって限定されない。上記実施例における各構成の左右方向の位置を右と左とで入れ換えても、上記実施例と同じように、本発明の効果を奏し、本発明の課題を解決することができる。
上記実施例では、フランジ7aは水平であるが、本発明は、この例に限定されず、フランジが傾斜していてもよい。
上記実施例では、前脚部が円柱形状である場合について説明したが、本発明は、この例に限定されない。前脚部は、柱形状であればよい。柱形状としては、例えば、円柱形状、角柱状、楕円形状等を挙げることができる。
上記実施例では、軸部が半円柱形状である場合について説明したが、本発明は、この例に限定されない。軸部は、半柱形状であればよい。半柱形状としては、例えば、半円柱形状、半楕円形状等を挙げることができる。また、半柱形状は、多角柱を該多角柱の長手方向に沿って切断することによって得られる形状であってもよい。なお、半柱形状は、柱を該柱の長手方向に沿って切断することによって得られる形状であればよく、必ずしも厳密に柱形状の半分である必要はない。
【符号の説明】
【0057】
1 … 携帯型エンジン発電機
2 … エンジン
3 … 発電機
4 … 操作パネル
5 … 右側壁
6 … 左側壁
7 … 燃料タンク
7a … フランジ
9 … ハンドル
31、51 … 前脚部
31b、51b … 窪み
32 … エンジンカバー
34、54 … 後脚部
41、46、55、58 … ボルト孔
42、47、56、59 … ボルト
45、57 … 軸部
49 … 窓
50 … コック


【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作パネルが前面に設けられた携帯型エンジン発電機であって、
エンジンと、
前記エンジンの回転駆動によって電気を発生する発電機と、
前記操作パネルの両側にそれぞれ配置された側壁と、
前記側壁の上面と接するフランジを側面に有する燃料タンクと、
前記燃料タンクの上方で、前記操作パネルの両側にそれぞれ配置された前記側壁のうちの一方の前記側壁の上面と他方の前記側壁の上面とを掛け渡すハンドルと
を備え、
前記側壁は、
前記側壁の前端部において前記側壁と前記フランジとを締結する第1締結部と、
前記ハンドルの端部と前記フランジと前記側壁とを一緒に締結する第2締結部と、
前記側壁の下部に形成され、前記エンジンもしくは前記発電機のいずれか一方の一部を覆うケース部と、
前記第1締結部から下方に形成された直線状の前脚部と、
前記ケース部の後方に形成された後脚部と
を有する携帯型エンジン発電機。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯型エンジン発電機において、
前記前脚部は、前記第1締結部を通る縦軸線を中心とする柱形状を有する
携帯型エンジン発電機。
【請求項3】
請求項2に記載の携帯型エンジン発電機において、
前記前脚部の側面には、窪みが形成されており、
前記窪みは、直線状であり、前記前脚部の長手方向と平行である
携帯型エンジン発電機。
【請求項4】
請求項1に記載の携帯型エンジン発電機において、
前記側壁には、前記第2締結部から前記ケース部にかけて側壁面が膨出した軸部が形成されており、
前記軸部は、直線状であり、前記前脚部と平行である
携帯型エンジン発電機。
【請求項5】
請求項4に記載の携帯型エンジン発電機において、
前記軸部は、前記第2締結部を通る縦軸線を中心とする半柱形状を有する
携帯型エンジン発電機。
【請求項6】
請求項5に記載の携帯型エンジン発電機において、
前記軸部の側面には、窪みが形成されており、
前記窪みは、直線状であり、前記軸部の長手方向と平行である
携帯型エンジン発電機。
【請求項7】
請求項1に記載の携帯型エンジン発電機において、
前記燃料タンクの高さの半分以上が、前記側壁の上面より低い携帯型エンジン発電機。
【請求項8】
請求項1に記載の携帯型エンジン発電機において、
前記燃料タンクから前記エンジンに供給する燃料の量を調節するコックを備え、
前記側壁の一方には、前記前脚部と前記軸部との間に窓が設けられ、
前記窓を通じて操作可能に前記コックが配置される
携帯型エンジン発電機。
【請求項9】
請求項4に記載の携帯型エンジン発電機において、
前記軸部の中心軸線は前記エンジンのクランク軸の軸中心より後方で前記後脚部より前方に配置される
携帯型エンジン発電機。
【請求項10】
請求項1に記載の携帯型エンジン発電機において、
前記フランジは、平面視環状を有し、前記燃料タンクの外縁全周に沿い、
前記フランジのフランジ面は、水平であり、
前記前脚部は、前記第1締結部から鉛直下方に延び、
前記軸部は、前記第2締結部から鉛直下方に延び、
前記前脚部、前記軸部、前記フランジが、前記携帯型エンジン発電機のフレームを構成している
携帯型エンジン発電機。
【請求項11】
請求項10に記載の携帯型エンジン発電機において、
前記前脚部の最前面は、前記操作パネルの前面よりも前方に位置している
携帯型エンジン発電機。
【請求項12】
請求項10に記載の携帯型エンジン発電機において、
前記フランジは、前記操作パネルの前面よりも前方に突出している
携帯型エンジン発電機。
【請求項13】
請求項10に記載の携帯型エンジン発電機において、
前記ハンドルは、2本の側部ハンドル部と、2本の側部ハンドル部の間に設けられた上部ハンドル部とからなり、
前記側部ハンドル部は、前記第2締結部から鉛直上方に延び、
前記上部ハンドル部は、水平方向に延び、
前記ハンドルも、前記携帯型エンジン発電機のフレームを構成している
携帯型エンジン発電機。
【請求項14】
請求項10に記載の携帯型エンジン発電機において、
前記ケース部は、前記軸部の下方で且つ前記前脚部の後方に位置し、前記前脚部と接触し、前記軸部と前記後脚部との間に配置されており、
前記ケース部も、前記携帯型エンジン発電機のフレームを構成している
携帯型エンジン発電機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−153620(P2011−153620A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290062(P2010−290062)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000201766)ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社 (39)