説明

携帯型情報コード読取装置

【課題】携帯性の向上とデータ表示部の大画面化とを同時に実現すること。
【解決手段】ハンディターミナル1は、前面に比較的大面積のデータ表示部3が配置された本体ユニット2と、この本体ユニット2に着脱可能に装着された光学ヘッド部4と、本体ユニット2を横断した形態で設けられた操作ユニット6とを備えて成る。操作ユニット6は、本体ユニット2を包囲した矩形枠状の断面形状とされており、データ表示部3上に重なった状態の第1の位置(図1(b))と、本体ユニット2から下方へ突出されてデータ表示部3の全体を露出させた状態の第2の位置(図1(a))との間で往復移動可能に設けられている。操作ユニット6の位置は電極8及び9により検知されるようになっており、第1の位置にあるときには省電力モードに切り換えられ、これ以外の位置へ移動されたときに光学ヘッド部4による情報コードの読取処理が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前面にデータ表示部が設けられ本体ユニットを備えた携帯型情報コード読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコードリーダや2次元コードリーダのような携帯型情報コード読取装置の一例として、画像を光学的にスキャンして読み込むための光学ヘッド及び画像読取処理などのための制御回路を内蔵した本体ケースの前面に、液晶ディスプレイパネルなどにより構成されたデータ表示部と、テンキースイッチなどの操作スイッチ群を備えた操作部とを並べた状態で配置する構成としたスキャナ一体型のハンディターミナルがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようハンディターミナルでは、それぞれ所定の占有面積が必要なデータ表示部と操作部とを並べた状態で配置する構成となっている関係上、全体形状がある程度大型化することが避けられず、このため携帯性に劣るという問題点があった。また、データ表示部の大画面化が困難になるという問題点もあった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、携帯性の向上とデータ表示部の大画面化とを同時に実現できる携帯型情報コード読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の手段によれば、本体ユニットに装着された操作ユニットは、本体ユニットの前面に設けられたデータ表示部上に重なった状態の第1の位置と、本体ユニットから突出されてデータ表示部の全体を露出させた状態の第2の位置との間で往復移動可能になっている。従って、操作ユニットが第1の位置にある状態では、当該操作ユニットが第2の位置にある状態に比べて全体の形状が小さくなる。この場合、操作ユニットが第1の位置にある状態時と第2の位置にある状態時とでは、制御手段による制御内容が変更される構成となっており、例えば、操作ユニットが第2の位置にあるとき(データ表示部の全体が露出された状態にあるとき)に、データ表示部での表示が必要な動作(例えば情報コードの読取・解析及びその表示動作)に関連した制御を行い、操作ユニットが第1の位置にあるとき(データ表示部上に操作ユニットが重なった状態にあるとき)に、データ表示部での表示に関与しない他の制御、或いは制御動作を停止するという使用形態が可能となる。このため、持ち運び時のようにデータ表示部による表示動作が不要な期間には全体の形状を小型化できるから、その携帯性の向上を実現できるようになる。また、本体ユニットには、従来構成のようにデータ表示部と並べた状態で操作部を設ける必要がなくなるから、本体ユニットの前面においてデータ表示部が占める面積の割合を拡大できて、そのデータ表示部の大画面化を実現できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。
図1(a)、(b)には、PDAとしての機能を備えたハンディターミナル1(携帯型情報コード読取装置に相当)の異なる状態での正面図が概略的に示され、図2には上記図1(a)にある状態でのハンディターミナル1の側面図が概略的に示されている。これら図1及び図2において、本体ユニット2は、扁平な矩形容器状に形成されたもので、その前面には、例えば液晶ディスプレイパネルより成るデータ表示部3が配置されている。尚、このデータ表示部3は、本体ユニット2のほぼ全域にわたった大きさに形成されている。
【0006】
本体ユニット2の上端部には、QRコードなどの情報コードを含んだ画像を光学的に読み込むための光学ヘッド部4が着脱可能に装着されている。この場合、光学ヘッド部4の着脱構造については具体的に図示しないが、例えば、光学ヘッド部4側に設けられた可動係合爪と本体ユニット2側に設けられた係合溝とを利用した手段など、周知の着脱手段を採用できる。そして、光学ヘッド部4が本体ユニット2に装着された状態では、当該光学ヘッド部4及び本体ユニット2間が図示しない接点を介して電気的に接続される構成となっている。尚、光学ヘッド部4には、後述するような発光ダイオード及びCCDエリアセンサなどが内蔵されている。
【0007】
また、本体ユニット2の左右両側面には、光学ヘッド部4による画像読込処理を開始させるときに操作されるトリガスイッチ5がそれぞれ設けられている。
本体ユニット2の下端部には、当該本体ユニット2を横断した形態で操作ユニット6が設けられている。この操作ユニット6は、本体ユニット2を包囲した矩形枠状の断面形状を備えており、データ表示部3上に重なった状態の第1の位置(図1(b)に示す位置)と、本体ユニット2から下方へ突出されてデータ表示部3の全体を露出させた状態の第2の位置(図1(a)に示す位置)との間で往復移動可能に設けられている。尚、このような往復移動を案内するために、本体ユニット2の左右両側面に対をなすガイド溝7が形成されていると共に、操作ユニット6の左右両側の内側面に当該ガイド溝7に嵌り込む突起(図示せず)が形成されている。
【0008】
また、操作ユニット6の移動位置を検知するために、操作ユニット6の内側面に電極8が設けられていると共に、本体ユニット2の一方の側面に、上記電極8の移動軌跡と対向するようにして電極9が配置されている。この場合、操作ユニット6が図1(b)に示す第1の位置へ移動された状態では、操作ユニット6側の電極8が本体ユニット2側の電極9と接触する構成となっており、本体ユニット2には、上記のような電極8及び9間の接触に基づいて操作ユニット6が第1の位置へ移動されたことを検知するスライド検知部(本発明でいう位置検知手段に相当、図4に符号10を付して示す)が内蔵されている。
【0009】
操作ユニット6の上面には、テンキースイッチやメール確認スイッチなどを含むキーボード11が設けられていると共に、周囲に発光ダイオードを光源としたリング状発光部12が配置された円形状の多方向操作スイッチ13が設けられている。この多方向操作スイッチ13は、周知の十字キースイッチ機能を有したもので、図3に示すように、中心部が傾動支点とされた円形の操作盤13aを備えている。多方向操作スイッチ13は、操作盤13aの上下左右の4方向及びこれら各方向に対して45°の角度を存した4方向の合計8方向(図3に矢印を付して示す)への傾動操作に応じて8種類のスイッチ出力を発生すると共に、操作盤13aの中心部の押圧操作に応じてもスイッチ出力を発生する構成となっている。
【0010】
図4には、ハンディターミナル1の電気的構成が示されており、以下これについて説明する。
即ち、図4において、光学ヘッド部4は、読取対象領域Aに光を照射するための発光ダイオード14群と、その読取対象領域Aからの反射光を撮像光学系15を通じて受けるCCDエリアセンサ16と、増幅回路17とにより構成されている。CCDエリアセンサ16は、二次元的に配列された複数の受光素子を備えており、制御回路18(本発明でいう制御手段に相当)から制御インタフェース19を介して与えられる制御信号に基づいて読取対象領域Aを撮像し、その撮像に応じた各受光素子の受光信号を電気的な画像信号に変換して出力する構成となっている。そして、このCCDエリアセンサ16からの画像信号は、増幅回路17により増幅された後にAD変換回路20及び信号インタフェース21を通じてメモリ22に格納されるようになっている。
【0011】
上記制御回路18は、CPU、ROM、RAMなどを含んで構成されたもので、メモリ22との間でデータ授受及び予め設定されたプログラムに基づいて種々の制御を行うようになっている。また、制御回路18は、トリガスイッチ5、スライド検知部10、キーボード11及び多方向操作スイッチ13からの操作信号を制御インタフェース19を通じて受ける機能、並びにデータ表示部3及びリング状発光部12の動作を制御インタフェース19を通じて制御する機能も備えている。さらに、制御回路18は、図示しない外部装置(例えばホストコンピュータ)との間の通信動作を、信号インタフェース21を介して行う構成となっている。
尚、ハンディターミナル1には、電池を含んで構成された電源回路23が内蔵されている。
【0012】
ここで、以下においては多方向操作スイッチ13の機能について説明しておく。
即ち、前述したように、多方向操作スイッチ13は、操作盤13aの傾動操作に応じて8種類のスイッチ出力を発生すると共に、操作盤13aの中心部の押圧操作に応じてもスイッチ出力を発生する構成となっている。この場合、図3に示すように、上記8種類のスイッチ出力に対応した操作盤13aの8方向の傾動操作方向に対してそれぞれ2種類ずつのキーファンクションF1〜F16が割り当てられており、各キーファンクショングループのどちらが有効化されるかは制御回路18により決定される構成となっている。
【0013】
制御回路18は、操作盤13aの中心部の押圧操作に応じたスイッチ出力を、ワンクリック、ダブルクリック、長押しの3種類に区分して認識できるようになっている。この場合、操作盤13aの中心部のワンクリックに対しては、2種類のキーファンクションF17、F18(図3には示さず)が割り当てられており、また、操作盤13aの中心部のダブルクリックに対しても、2種類のキーファンクションF19、F20(図3には示さず)が割り当てられている。そして、操作盤13aの中心部が長押しされる毎に、前記キーファンクションF1〜F8、F17、F19を有効化した第1の状態とキーファンクションF9〜F16、F18、F20を有効化し第2の状態とに交互に切り換える構成となっている。従って、占有面積が比較的小さくて済む多方向操作スイッチ13を設けるだけで、20種類のキーファンクションF1〜F20に対応した動作を選択できることになり、全体の小型化を図る上で有益になる。
尚、この場合、制御回路18は、例えば、キーファンクションF9〜F16、F18、F20を有効化した第2の状態時にリング状発光部13を点灯させることにより、現在時点で有効化されているキーファンクションを表示するようになっている。
【0014】
また、上述した例では、操作盤13aの中心部がワンクリックされたときにキーファンクションF17、F18の何れかが有効化され、操作盤13aの中心部がダブルクリックされたときにキーファンクションF19、F20の何れかが有効化される構成例で説明したが、そのワンクリックに応じて、例えばキーファンクションF1〜F4に対応した動作が同時に実行され、ダブルクリックに応じて、例えばキーファンクションF9〜F12に対応した動作が同時に実行される構成とすることも可能である。さらに、リング状発光部13を、操作盤13aの8方向の傾動操作方向と対応付けて8個の単位表示部に分割し、操作盤13aの操作時には、その傾動操作方向に位置する単位表示部を点滅或いは異なる色で発光させる構成とすることもできる。
【0015】
図5には、制御回路18による制御内容のうち本発明の要旨に直接関係した部分が示されている。この図5は、ハンディターミナル1の動作モードを決定するためのモードチェック割り込み処理ルーチンの内容を示すものであり、このルーチンでは、モードチェック処理を開始した後にスライド検知部10が電極8及び9間の接触を検知したか否かを判断する(ステップA1、A2)。電極8及び9間が接触していない場合、つまり操作ユニット6が第1の位置(図1(b)参照)以外の位置にある場合には、動作モードを情報コード読取モードに設定するステップA3を実行した後にリターンする。これに対して、電極8及び9間が接触していた場合、つまり操作ユニット6が第1の位置にある場合には、トリガスイッチ5の操作を無効化するステップA4、動作モードを省電力モードに設定して待機状態へ移行するステップA5を順次実行した後にリターンする。
【0016】
制御回路18は、上記情報コード読取モードに設定された状態では、トリガスイッチ5の操作に応じて光学ヘッド部4によるスキャニング動作を制御インタフェース19を通じて実行させて読取対象領域Aの撮像動作を実行させ、以て情報コードの読取処理を開始させる。そして、制御回路18は、このような情報コード読取処理の実行後には、その処理に伴いメモリ22に格納された画像信号を解析するためのデコード処理などを行う。また、制御回路18は、上記省電力モードに設定された状態では、例えば、データ表示部3の電源を遮断して消費電力を低減させる構成となっている。尚、この省電力モード時において、制御回路18をスリープ状態へ移行させるなどの制御を行うことにより、消費電力をさらに低減させることも可能である。また、このような省電力モードは、その後に操作ユニット6が第1の位置以外へ移動されたとき、つまり、モードチェック割り込み処理ルーチンの実行に応じて前記ステップA2で「NO」と判断され、以て情報コード読取モードを設定するステップA3が実行されたときに解除される。
【0017】
以上要するに、上記した本実施例の構成によれば、以下に述べるような作用・効果が得られるものである。
即ち、本実施例によるハンディターミナル1は、本体ユニット2に対して光学ヘッド部4及び操作ユニット6を装着して構成されており、特に、操作ユニット6は、本体ユニット2の前面に設けられたデータ表示部3上に重なった状態の第1の位置(図1(b)参照)と、本体ユニット2から突出されてデータ表示部3の全体を露出させた状態の第2の位置(図1(a)参照)との間で往復移動可能になっている。従って、操作ユニット6が第1の位置にある状態では、当該操作ユニット6が第2の位置にある状態に比べて全体の形状が小さくなる。この場合、操作ユニット6が第1の位置にある状態時と第2の位置にある状態時とでは、制御回路18による制御内容が変更される構成、具体的には、操作ユニット6が第1の位置以外の位置(例えば第2の位置)へ移動されたときに、光学ヘッド部4による情報コードの読取処理及び制御回路18によるデコード処理を行い、操作ユニット6が第1の位置にあるときに、省電力モードに切り換えて待機状態を保持する制御を行う構成となっている。このため、ハンディターミナル1の持ち運び時のようにデータ表示部3による表示動作が不要な期間には全体の形状を小型化できるから、その携帯性の向上を実現できるようになる。また、本体ユニット2には、従来構成のようにデータ表示部3と並べた状態で操作部であるキーボード11を設ける必要がなくなるから、本体ユニット2の前面においてデータ表示部3が占める面積の割合を拡大できて、そのデータ表示部3の大画面化を実現できるようになる。また、データ表示部3による表示動作が不要な状態時には、省電力モードへ自動的に移行されるから無駄な電力消費を抑制できるようになる。
【0018】
この場合、操作ユニット6を第1の位置へ移動させた状態時には、光学ヘッド部4による画像読込処理を開始させるためのトリガスイッチ5の操作が無効化される構成となっているから、例えば持ち運び時のように操作ユニット6を第1の位置へ移動させた状態において、トリガスイッチ4が誤って操作された場合でも支障を生ずることがない。さらに、本体ユニット2から光学ヘッド部4を取り外すことができるから、その取り外し状態でハンディターミナル1をPDAとして機能させる場合にさらなる小型化を実現できるようになる。
【0019】
その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例に限定されるものではなく、以下に述べるような変形や拡張が可能である。
光学ヘッド部4は着脱可能な構成とする必要はなく、また、当該光学ヘッド部4内に通信モジュールを内蔵する構成も可能である。操作ユニット6が第1の位置へ移動された状態時に全体の電源を遮断する構成、つまりスライド検知部10を電源スイッチとして機能させる構成も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例によるハンディターミナルを異なる状態で示す正面図
【図2】側面図
【図3】要部の正面図
【図4】電気的構成図
【図5】制御回路による制御内容の要部を示すフローチャート
【符号の説明】
【0021】
1はハンディターミナル(携帯型情報コード読取装置)、2は本体ユニット、3はデータ表示部、4は光学ヘッド部、5はトリガスイッチ、6は操作ユニット、10はスライド検知部(位置検知手段)、11はキーボード、13は多方向操作スイッチ、18は制御回路(制御手段)、22はメモリを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報コードを含んだ画像を光学的に読み込むための光学ヘッド部を所定位置に備え、前面にデータ表示部が配置された矩形状の本体ユニットと、
この本体ユニットに対し当該本体ユニットを横断した形態で装着され、前記データ表示部上に重なった状態の第1の位置と、本体ユニットから突出されて前記データ表示部の全体を露出させた状態の第2の位置との間で往復移動可能に設けられた操作ユニットと、
前記操作ユニットに設けられ、複数のスイッチ出力を発生する多方向操作スイッチと、
この操作ユニットの位置を検知する位置検知手段と、
前記本体ユニット及び操作ユニットの何れかに内蔵され、前記光学ヘッド部による画像読み取り処理及び前記データ表示部によるデータ表示処理を予め記憶したソフトウエアに基づいて制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記位置検知手段が検知した前記操作ユニットの位置に応じて制御内容を変更するとともに、前記多方向スイッチの一部または全部を点灯させることにより有効なキーファンクションを表示するように構成されていることを特徴とする携帯型情報コード読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−280434(P2007−280434A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199108(P2007−199108)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【分割の表示】特願2002−169931(P2002−169931)の分割
【原出願日】平成14年6月11日(2002.6.11)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】