説明

携帯型電子機器

【課題】静電気から保護すべき回路に直接静電気が飛び込んで誤動作や回路破壊を引き起こす事態を有効に防止するとともに、そのためのコストおよび工数を僅かなものとした携帯型電子機器を提供する。
【解決手段】筐体3またはその筐体に嵌着される外装を構成する複数の部材3a,3b,3dと、筐体3内に収容された電子回路6,10,11,12と、筐体3内に収容されて複数の部材のうち互いに嵌合する二つの部材3aと3b、3bと3dのそれぞれの嵌合部の内側に配置され、電子回路に接続されたフレキシブル配線基板8とを備え、フレキシブル配線基板8が、電子回路のうち静電気から保護すべき回路11,12の近傍に配置されるグランド部G1,G2を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の部材から構成される筐体と、筐体内に収容された電子回路と、筐体内に収容されるとともに、当該筐体を構成する複数の部材のうち互いに嵌合する二つの部材の嵌合部の内側に配置され、電子回路に接続されたフレキシブル配線基板と、を備える携帯型電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記の如き携帯型電子機器としては例えば携帯電話機が知られており、従来の携帯電話機は、例えば液晶側筐体と、例えば文字入力側筐体とを備えて構成され、それら液晶側筐体と文字入力側筐体とがヒンジ部等の連結機構により連結されており、それら液晶側筐体や文字入力側筐体内に収容された回路基板上に実装された電子部品とその回路基板から離れた電子部品との電気的接続には、フレキシブル配線基板も用いられ(例えば特許文献1参照)、そのフレキシブル配線基板は、筐体を構成するフロントケースおよびリアケースや、筐体およびそこに嵌着される外装としてのカバー等の互いに嵌合する二つの部材の嵌合部の内側に配置される場合がある。
【0003】
ところで、かかる携帯電話機において、筐体を構成するフロントケースとリアケースとの嵌合部や筐体とそこに嵌着されるカバーとの嵌合部等の、筐体を構成する複数の部材のうち互いに嵌合する二つの部材の嵌合部の内側近辺に、筐体内の電子回路のうち静電気から保護すべき回路が存在する場合があり、このような場合の静電気対策としては、回路基板のエッジに沿ってグランドパターンを設け、回路基板の回路パターン面を保護するレジスト層を一部剥がしてそのグランドパターンを露出させたり、上記嵌合部付近の筐体裏面に蒸着や導電塗装等を施すか金属テープや板金部材等を配置して導電体を設け、筐体を構成するフロントケースとリアケースとを嵌合させた際にそれらの導電体を回路基板のグランドパターンに設けた弾性タブ等に接触させたりして、上記嵌合部を通過して外部から筐体内に進入する静電気をグランドパターンや上記導電体に誘導し、静電気から保護すべき回路への静電気の飛込みを防止していた。
【特許文献1】特開2005−051430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記前者のように、回路基板のエッジに沿ってグランドパターンを設ける場合には、嵌合部と回路基板のエッジとの高さが一致するかまたはそのエッジ付近の静電気から保護すべき回路の高さと比較して充分近ければ、想定通り静電気をグランドパターンに誘導できるが、構造上嵌合部と回路基板のエッジとの高さにずれがあったり、回路基板のエッジ付近に背の高い部品があってその部品が嵌合部に接近していたり、回路基板の上方に嵌合部が位置したりすると、回路基板のエッジに沿って設けたグランドパターンに静電気を誘導できず、静電気から保護すべき回路に直接静電気が飛び込んで、誤動作や回路破壊を引き起こすという問題があった。
【0005】
また、上記後者のように、嵌合部付近の筐体裏面に蒸着や導電塗装等を施すか金属テープや板金部材等を配置して導電体を設け、筐体を構成するフロントケースとリアケースとを嵌合させた際にそれらの導電体を回路基板のグランドパターンに設けた弾性タブ等に接触させる場合には、製造のためのコストおよび工数が嵩むという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、この発明の携帯型電子機器は、複数の部材から構成される筐体と、前記筐体内に収容された電子回路と、前記筐体内に収容されるとともに、当該筐体を構成する前記複数の部材のうち互いに嵌合する二つの部材の嵌合部の内側に配置され、前記電子回路に接続されたフレキシブル配線基板と、を備え、前記フレキシブル配線基板が、前記電子回路のうち静電気から保護すべき回路の近傍に配置されるグランド部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
この発明の携帯型電子機器にあっては、筐体を構成する複数の部材うち互いに嵌合する二つの部材の嵌合部の内側に配置され、筐体内の電子回路に接続されたフレキシブル配線基板が、その電子回路のうち静電気から保護すべき回路の近傍に配置されるグランド部を有するので、上記嵌合部を通過して外部から筐体内に進入する静電気が、そのフレキシブル配線基板のグランド部に誘導される。
【0008】
従って、この発明の携帯型電子機器によれば、静電気から保護すべき回路に直接静電気が飛び込んで誤動作や回路破壊を引き起こす事態を有効に防止することができる。しかも嵌合部付近の筐体裏面に蒸着や導電塗装等を施すか金属テープや板金部材等を配置して導電体を設けたり、回路基板のグランドパターンに弾性タブ等を設けてそれらの導電体を接触させたりする必要がないので、静電気を誘導する構造の製造のためのコストおよび工数を僅かなものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明の携帯型電子機器の一実施例としての折り畳み式携帯電話機の文字入力側筐体の構造を示す、図2中のA−A線に沿う断面図、図2は、上記実施例の携帯電話機の外観を液晶側筐体と文字入力側筐体とを相互に閉じた状態で文字入力側筐体側から見て示す斜視図、図3は、上記実施例の携帯電話機の文字入力側筐体の構造を示す分解斜視図、そして図4は、上記実施例の携帯電話機の文字入力側筐体内のキーFPCを展開して示す平面図であり、図中符号1は、上記実施例の携帯電話機を示す。
【0010】
この実施例の携帯電話機1は、液晶側筐体2と文字入力側筐体3とを備え、液晶側筐体2は、フロントケース2aとリアケース2bとが相互に嵌合固定されて構成され、文字入力側筐体3は、フロントケース3aとリアケース3bとが相互に嵌合されるとともにネジで固定されて構成されており、液晶側筐体2と文字入力側筐体3とは、連結機構としてのヒンジ部4を介して相互に開閉自在とされている。
【0011】
液晶側筐体2は、フロントケース2aとリアケース2bとの内部に図示しない基板を内蔵し、その基板の表面に設置された図示しない液晶表示ユニットがフロントケース2aから表出している。またその基板には、スピーカ等の各種電子部品が実装されて電気的に接続されている。一方、文字入力側筐体3は、フロントケース3aとリアケース3bとの内部に電池収納部5を持つとともに回路基板6を内蔵し、その回路基板6の表面(図1では下面)に金属フレーム7を介して、複数のキースイッチを搭載してキー基板を構成するキーフレキシブル基板(キーFPC)8が支持され、そのキーFPC8上に重ねて設置されたキーボタンシート9がフロントケース3aから表出している。またその回路基板6には、マイク等の各種電子部品が実装されて電気的に接続されている。
【0012】
文字入力側筐体3内には、回路基板6のリアケース3bに向く側の面(図1では上側の面)に重ねてサブ基板10が配置され、そのサブ基板10上には、例えば携帯電話機を用いた支払いサービスである「フェリカ(商標)」用等のRFIDチップ11が搭載されるとともに、赤外線通信(IrDA)用の発光部12aと受光部12bとを持つ赤外線通信チップ12も搭載されており、それらのチップ11,12は、文字入力側筐体3のフロントケース3aとリアケース3bとの嵌合部3cに近接して位置している。
【0013】
さらに文字入力側筐体3のリアケース3bの、サブ基板10に対向する位置(図1では上方の位置)には、図示しない開口部が設けられ、その開口部を覆うようにリアケース3bには、図1乃至図3に示す如く、外装としてのカバー3dが嵌着されており、このカバー3dには、赤外線通信チップ12の発光部12aと受光部12bとが外部の機器と赤外線通信を行うための赤外線透過窓3eが設けられている。なお、本明細書では、外装としてのカバー3dや赤外線透過窓3eも、携帯電話機の筐体を構成する部材と考える。
【0014】
さらにキーFPC8は、図4に展開して示すように、回路基板6との電気的接続用のコネクタ8aを持つ第1延長部8bの他、サブ基板10との電気的接続用のコネクタ8cを持つ屈曲部としての略逆L字状の第2延長部8dを有しており、図3に示すように、第1延長部8bは一回屈曲されてコネクタ8aを回路基板6に向けられ、そのコネクタ8aを回路基板6の図3では下面の図示しないコネクタに接続される。また第2延長部8dは逆L字の図4では水平な腕部の先端部を図4では向こう側に折曲されてコネクタ8cを向こう向きにされるとともに、逆L字の図4では垂直な脚部を図3に示すように二回屈曲されて断面コ字状にされることでコネクタ8cをサブ基板10に向けられて、そのコネクタ8cをサブ基板10の図3では上面上のコネクタ13に接続される。
【0015】
しかしてこの実施例の携帯電話機1では、このキーFPC8の第2延長部8dを利用して静電気を誘導する構造が構成されている。すなわち、キーFPC8の第2延長部8dの図4では向こう(紙面の下方)に向く側の面には、複数本の信号線を有する導電体のパターンからなる図示しない信号線層が形成され、またその第2延長部8dの図4では手前(紙面の上方)に向く側の面には、逆L字の図4では水平な腕部の基部を覆う略矩形のグランド部G1と、逆L字の図4では垂直な脚部の上部を覆う略矩形のグランド部G2とを有する導電体のパターンからなるグランド層が形成され、そのグランド層は上記複数本の信号線を覆う幅を有するとともに第2延長部8dの図示しないスルーホール内の導電体を介してそれらの信号線のうちのグランド線に電気的に接続されて、回路基板6のグランドパターンに電気的に接続される。
【0016】
さらに、キーFPC8の第2延長部8dの上記信号線層およびグランド層はそれぞれ、絶縁体からなる表層としてのレジスト層で覆われているものの、グランド部G1とグランド部G2とを覆う部分のみはそのレジスト層が除去されており、これによりグランド層のうちグランド部G1とグランド部G2とは露出している。そして、図1に示すように、グランド部G1はサブ基板10上のRFIDチップ11および赤外線通信チップ12よりもリアケース3bの上記開口部とカバー3dとの嵌合部、およびカバー3dと赤外線透過窓3eとの嵌合部に近接して位置し、またグランド部G2はサブ基板10上のRFIDチップ11および赤外線通信チップ12よりもフロントケース3aとリアケース3bとの嵌合部3cに近接して位置している。
【0017】
かかるこの実施例の携帯電話機1にあっては、それぞれ文字入力側筐体3を構成する、フロントケース3aとリアケース3bとの嵌合部3c、そのリアケース3bの開口部とカバー3dとの嵌合部、およびカバー3dと赤外線透過窓3eとの嵌合部の内側に配置され、文字入力側筐体3内の回路基板6およびサブ基板10に接続されたキーFPC8が、回路基板6から離間したサブ基板10上の、静電気から保護すべきRFIDチップ11および赤外線通信チップ12の近傍に、そのサブ基板10を囲むように屈曲された第2延長部8dのグランド部G1,G2を配置するので、上記各嵌合部を通過して外部から文字入力側筐体3内に進入する静電気が、そのキーFPC8のグランド部G1,G2に誘導される。また、カバー3dと赤外線透過窓3eとの間から進入する静電気も、キーFPC8のグランド部G1に誘導される。
【0018】
従って、この実施例の携帯電話機1によれば、静電気から保護すべきRFIDチップ11および赤外線通信チップ12やその近傍の回路に直接静電気が飛び込んで誤動作や回路破壊を引き起こす事態を有効に防止することができる。しかも上記各嵌合部付近の筐体裏面に蒸着や導電塗装等を施すか金属テープや板金部材等を配置して導電体を設けたり、回路基板6のグランドパターンに弾性タブ等を設けてそれらの導電体を接触させたりする必要がないので、静電気を誘導する構造の製造のためのコストおよび工数を僅かなものとすることができる。
【0019】
また、この実施例の携帯電話機1によれば、キーFPC8の、グランド部G1,G2が形成された面と反対の面側に、静電気から保護すべきRFIDチップ11および赤外線通信チップ12やその近傍の回路が位置しているので、上記各嵌合部を通過して外部から文字入力側筐体3内に進入する静電気を、そのキーFPC8のグランド部G1,G2に、より確実に誘導することができる。
【0020】
さらに、この実施例の携帯電話機1によれば、キーFPC8は、グランド部G1,G2が配置された屈曲部としての第2延長部8dを有し、その第2延長部8dは、静電気から保護すべきRFIDチップ11および赤外線通信チップ12やその近傍の回路を覆うように配置されているので、上記各嵌合部を通過して外部から文字入力側筐体3内に進入する静電気を、そのキーFPC8のグランド部G1,G2に、より確実に誘導することができる。
【0021】
さらに、この実施例の携帯電話機1によれば、キーFPC8の第2延長部8dは、信号線を有する信号線層と、グランド部G1,G2を有するグランド層と、表層としてのレジスト層とを有し、そのグランド層は、上記信号線を覆う幅を有し、レジスト層は、一部除去されて上記グランド層のグランド部G1,G2の部分を露出させているので、静電気を誘導する構造を簡易に構成することができる。
【0022】
そして、この実施例の携帯電話機1によれば、グランド部G1,G2は、キーFPC8の第2延長部8dの信号線を覆うようにその第2延長部8dの表面上に設けられた導電体パターンにより形成されているので、キーFPC8の第2延長部8dの信号線も、静電気から保護することができる。
【0023】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えば静電気から保護すべき回路は、回路基板6上に実装された背の高い部品でも良く、また液晶側筐体2のフロントケース2aとリアケース2bとの嵌合部の近傍の回路でも良い。
【0024】
そしてこの発明は、折り畳み式だけでなく水平回転式や二軸ヒンジ式の携帯電話機にも適用でき、さらには携帯電話機以外の、例えばパームトップコンピュータ等の携帯型電子機器にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
かくしてこの発明の携帯型電子機器によれば、静電気から保護すべき回路に直接静電気が飛び込んで誤動作や回路破壊を引き起こす事態を有効に防止することができる。しかも嵌合部付近の筐体裏面に蒸着や導電塗装等を施すか金属テープや板金部材等を配置して導電体を設けたり、回路基板のグランドパターンに弾性タブ等を設けてそれらの導電体を接触させたりする必要がないので、静電気を誘導する構造の製造のためのコストおよび工数を僅かなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の電子機器の一実施例としての折り畳み式携帯電話機の文字入力側筐体の構造を示す、図2中のA−A線に沿う断面図である。
【図2】上記実施例の携帯電話機の外観を液晶側筐体と文字入力側筐体とを相互に閉じた状態で文字入力側筐体側から見て示す斜視図である。
【図3】上記実施例の携帯電話機の文字入力側筐体の構造を示す分解斜視図である。
【図4】上記実施例の携帯電話機の文字入力側筐体内のキーFPCを展開して示す平面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 携帯電話機
2 液晶側筐体(筐体)
2a,3a フロントケース(筐体)
2b,3b リアケース(筐体)
3 文字入力側筐体(筐体)
3c 嵌合部
3d カバー(筐体)
3e 赤外線透過窓(筐体)
4 ヒンジ部
5 電池収納部
6 回路基板
7 金属フレーム
8 キーFPC(フレキシブル配線基板)
8a,8c コネクタ
8b 第1延長部
8d 第2延長部
9 キーボタンシート
10 サブ基板
11 RFIDチップ
12 赤外線通信チップ
12a 発光部
12b 受光部
13 コネクタ
G1,G2 グランド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材から構成される筐体と、
前記筐体内に収容された電子回路と、
前記筐体内に収容されるとともに、当該筐体を構成する前記複数の部材のうち互いに嵌合する二つの部材の嵌合部の内側に配置され、前記電子回路に接続されたフレキシブル配線基板と、
を備え、
前記フレキシブル配線基板が、前記電子回路のうち静電気から保護すべき回路の近傍に配置されるグランド部を有する、携帯型電子機器。
【請求項2】
前記フレキシブル配線基板の、前記グランド部が形成された面と反対の面側に、前記静電気から保護すべき回路が位置している、請求項1記載の携帯型電子機器。
【請求項3】
前記フレキシブル配線基板は、前記グランド部が配置された屈曲部を有し、
前記屈曲部は、前記静電気から保護すべき回路を覆うように配置されている、請求項1または2記載の携帯型電子機器。
【請求項4】
前記静電気から保護すべき回路は、RFIDチップを含む、請求項1から3までの何れか1項に記載の携帯型電子機器。
【請求項5】
前記静電気から保護すべき回路は、IrDAの発光部と受光部とを含む、請求項1から4までの何れか1項に記載の携帯型電子機器。
【請求項6】
前記フレキシブル配線基板は、信号線を有する信号線層と、グランド部を有するグランド層と、表層とを備え、
前記グランド層は、前記信号線を覆う幅を有し、
前記表層は、一部除去されて前記グランド層を少なくとも部分的に露出させている、請求項1から5までの何れか1項に記載の携帯型電子機器。
【請求項7】
前記グランド部は、前記フレキシブル配線基板の信号線を覆うようにそのフレキシブル配線基板の表面上に設けられた導電部により形成される、請求項1から6までの何れか1項に記載の携帯型電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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