説明

携帯容器の蓋体

【課題】現出される加飾作用を、動きに富んだ変化および立体感に富んだものとすることにより、携帯容器に対する加飾を、長期間に亘り飽きの来ないものとする。
【解決手段】携帯容器の蓋体2にモワレ模様を現出する固定フィルム18と可動フィルム19の組合せ物であるフィルム体15を視認可能に組付け、固定フィルム18に対して可動フィルム19を変位させることにより、現出されるモワレ模様を鮮明にかつダイナミックに変化させて、優れた装飾効果を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクト容器等の携帯容器の蓋体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンパクト容器等の携帯容器に対しては、表面的な装飾ではなく、光学的な作用により深みのある立体的な装飾効果を施す要望が多い。
【0003】
この要望に答える従来技術として、特許文献1に示されているように、携帯容器としてのコンパクト容器の蓋体を、基体と、この基体の上に載置された、立体的な模様が印刷されたホログラム加飾シートと、このホログラム加飾シートを覆って基体に固定される透明又は半透明の天面カバーとから構成したものがある。
【0004】
この特許文献1に示された従来技術にあっては、コンパクト容器の蓋体の表面に、透明な天面カバーを透して、ホログラム加飾シートの立体的な模様が表示されるので、ホログラム加飾シートの優れた装飾効果を得ることができる。
【0005】
また、天面カバーと基体とを、互いに係合爪により係合する構成とし、天面カバーやホログラム加飾シートを交換できる構成とし、これにより装飾を変更することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−065386号公報
【0007】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、得られる装飾表示は、メーカー側から与えられたホログラム加飾シートで得られるものであるので、お仕着せのものとなり、動きに富んだ変化および立体感に乏しく、飽きが来やすい、と云う問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、現出される加飾作用を、動きに富んだ変化および立体感に富んだものとすることを技術的課題とし、もって携帯容器に対する加飾を、長期間に亘り飽きの来ないものとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決するための本発明の主たる構成は、
携帯容器の蓋体であって、平板状の主体板を有する蓋本体と、この蓋本体上に組付けられ、平板状の頂壁を有する透明あるいは半透明な外枠体とから構成されること、
蓋本体の主体板と外枠体の頂壁との間に形成された隙間に、ベースフィルムの表面に多数の透明あるいは半透明なドットを配列形成した固定フィルムと可動フィルムとを重ねたフィルム体を配置すること、
このフィルム体の固定フィルムを不動に固定すると共に、固定フィルムに対して可動フィルムをスライド状に変位可能に取付けること、
にある。
【0010】
固定フィルムおよび可動フィルム共に、ベースフィルムの表面に多数の透明あるいは半透明なドットを配列形成して構成され、重ね合わせ姿勢で組付けられているので、この固定フィルムと可動フィルムの各ドットのレンズ効果および固定フィルムと可動フィルムの間の光の干渉作用により、モワレ模様状の3次元的な幾何学模様が現出される。
【0011】
このモワレ模様状の3次元的な幾何学模様は、見る角度の変化に従って変化すると共に、固定フィルムと可動フィルムの相互位置関係のスライド状の変位に従っても変化し、さらにその変化形態は現出される幾何学模様のパターンの変化にとどまらず、パターンを構成する一つ一つの模様の大きさが変化する。
【0012】
固定フィルムと可動フィルムは、蓋本体の主体板と外枠体の頂壁との間に形成された隙間に配置されているので、その重ね合わせ姿勢が安定的に維持されることになる。
【0013】
固定フィルムと可動フィルムの重ね合わせ姿勢は、両者を接触状態に限定されるものではなく、モアレ模様を現出させることができる範囲で、両者間にわずかな隙間が生じても良く、また外枠体およびドットの透明あるいは半透明は、有色透明が許容されることは云うまでもない。
【0014】
本発明の別の構成は、上記した主たる構成に加えて、固定フィルムを、外枠体側に不動に固定した、ものである。
【0015】
固定フィルムを外枠体側に不動に固定したものにあっては、現出されるモワレ模様が視覚される側である外枠体側を固定フィルムとしたので、モワレ模様の現出状態を安定させ易いことになる。
【0016】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成と、固定フィルムを外枠体側に不動に固定した構成に加えて、外枠体側への固定フィルムの固定を、この固定フィルムをインサート材とした外枠体のインサート成形により達成した、ものである。
【0017】
外枠体側への固定フィルムの固定を、インサート成形により達成したものにあっては、その固定が強固で密なものとなる。
【0018】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成と、固定フィルムを外枠体側に不動に固定した構成に加えて、外枠体側への固定フィルムの固定を、この固定フィルムを固定した取付けケースを外枠体に不動に固定することにより達成した、ものである。
【0019】
外枠体側への固定フィルムの固定を、取付けケースを用いて達成したものにあっては、フィルム体の交換が可能となる。
【0020】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に加えて、この枠体の前面の周壁中央部に開口欠部を形成し、この開口欠部に蓋体の係止機能部の構成部分であるフックピースを前後変位可能に設け、このフックピースに可動フィルムを結合させた、ものである。
【0021】
フックピースに可動フィルムを結合させたものにあっては、蓋体の開放操作の度に、可動フィルムを固定フィルムに対して大きくスライド状に変位させることができ、これによりフックピースの操作により、現出されるモワレ模様に大きな変化を生じさせることができる。
【0022】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に加えて、ベースフィルムに対するドットの付形を、シルク印刷による透明あるいは半透明なインクの印刷により達成した、ものである。
【0023】
ドットの付形を、シルク印刷による透明あるいは半透明なインクの印刷により達成したものにあっては、多数の細かいドットの、所望する配列での形成が容易である。
【0024】
また、本発明の別の構成は、上記した主たる構成に加えて、ベースフィルムに対するドットの付形を、ベースフィルムに塗付された透明あるいは半透明なインク層に対するプレス加工により達成した、ものである。
【0025】
ドットの付形を、プレス加工により達成したものにあっては、成形される各ドットの形状を任意に設定することが可能であり、これにより現出されるモワレ模様の形態を変化に富んだものとすることが可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明の主たる構成にあっては、現出されるモワレ模様は、見る角度の変化、固定フィルムと可動フィルムの相互位置関係の変化、さらに現出される幾何学模様のパターンの変化にとどまらず、パターンを構成する一つ一つの模様の大きさが変化するものであるので、ダイナミックで面白味に富んだ装飾効果を得ることができる。
【0027】
また、固定フィルムと可動フィルムは、その重ね合わせ姿勢が安定的に維持されるので、上記したダイナミックで面白味に富んだ装飾効果を安定して得ることができる。
【0028】
固定フィルムを外枠体側に不動に固定したものにあっては、モワレ模様の現出状態を安定させ易いので、モワレ模様による装飾効果を、安定して得ることができる。
【0029】
外枠体側への固定フィルムの固定を、インサート成形により達成したものにあっては、その固定が強固で密なものとなるので、現出されるモワレ模様を鮮明なものとすることができる。
【0030】
外枠体側への固定フィルムの固定を、取付けケースを用いて達成したものにあっては、フィルム体の交換が可能となるので、フィルム対の交換により、現出されるモワレ模様を、全く形態の異なるものとすることができる。
【0031】
フックピースに可動フィルムを結合させたものにあっては、現出されるモワレ模様に大きな変化を生じさせることができるので、モワレ模様に大きな変化を充分に楽しむことができる。
【0032】
ドットの付形を、シルク印刷による透明あるいは半透明なインクの印刷により達成したものにあっては、多数の細かいドットの、所望する配列での形成が容易であるので、固定フィルムおよび可動フィルムの製作が容易となる。
【0033】
ドットの付形を、プレス加工により達成したものにあっては、成形される各ドットの形状を任意に設定することが可能であり、これにより現出されるモワレ模様の形態を変化に富んだものとすることが可能であるので、よりダイナミックに変化するモワレ模様の現出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態例を示す、携帯容器の平面図である。
【図2】図1に示した実施形態例の、正面図である。
【図3】図1に示した実施形態例の、縦断側面図である。
【図4】図1に示した実施形態例の、閉状態時の要部拡大縦断側面図である。
【図5】図1に示した実施形態例の、開操作時の要部拡大縦断側面図である。
【図6】フィルム体の構成例を示す、一部拡大平面図である。
【図7】フィルム体の構成例を示す、一部拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図示実施形態例は、携帯容器1として、化粧料を収納した中皿体25を組付けた薄皿状の容器体21に対して蓋体2を、容器体21の後端の蝶番片23と蓋体2の後端の蝶番垂片6とを蝶番軸24で開閉可能に蝶番結合(図3参照)し、先端間に容器体21の係止突片22と蓋体2のフックピース11とで閉姿勢を保持する係止機能部(図3参照)を設けた化粧用コンパクト容器の蓋体2に実施した例を示すものである。
【0036】
蓋体2(特に、図3参照)は、下面に鏡5を貼り付けた平板状の主体板4の後端中央に、蝶番垂片6を垂下設した蓋本体3と、この蓋本体3を覆って組付き、平板状の頂壁8と周壁9とから伏した薄い皿状に構成された、透明あるいは半透明な外枠体7とを備えている。
【0037】
蓋本体3の主体板4と外枠体7の頂壁8との間には隙間S(図4、図5参照)が形成されていて、この隙間Sには、固定フィルム18と可動フィルム19を重ね合わせたフィルム体15(図4、図5参照)が、固定フィルム18を頂壁8側に位置させて配置されている。
【0038】
このフィルム体15における固定フィルム18および可動フィルム19(図6、図7参照)は、ベースフィルム16の表面に、シルク印刷により透明あるいは半透明なインクを厚盛り印刷して成形される透明あるいは半透明な球弧状の凸部であるドット17を、縦横に配列形成して構成されており、固定フィルム18のベースフィルム16は透明あるいは半透明となっている。
【0039】
ドット17の形成方法としては、上記したシルク印刷を利用した透明あるいは半透明なインクの厚盛り印刷手法の他に、ベースフィルム16の表面に透明あるいは半透明なインクを厚く塗付して層厚の大きい透明塗布層を形成し、この透明あるいは半透明な塗布層にプレス加工を施す方法が実施可能である。
【0040】
成形されるドット17は、その径が0.2〜2.0mm、突出高さが0.05〜0.5mm程度が適当である。
【0041】
図示実施形態例の場合、固定フィルム18は、中央を開放した窓枠状となった取付けケース20(図4、図5参照)に、貼着や嵌め込みさらには締付け等の手段により固定され、この取付けケース20の外枠体7に体する接着や嵌め込み、さらには係止等の手段による組付けにより外枠体7に固定されている。
【0042】
この取付けケース20は不透明に構成されており、透明あるいは半透明な外枠体7に組合さることにより、モワレ模様が現出されるフィルム体15を除く蓋体2の部分を隠して額縁のように機能する。
【0043】
固定フィルム18の外枠体7側への固定は、上記した取付けケース20に代えて、蓋本体3の主体板4の両側端縁部分に立ち上げ部分を一体に形成し、この立ち上げ部分に、固定フィルム18を固定することにより達成することもできる。
【0044】
固定フィルム18の外枠体7側への固定を、固定フィルム18をインサート材として外枠体7をインサート成形して達成する場合には、ドット17を固定フィルム18側に位置させた状態で可動フィルム19のベースフィルム16を不透明として、可動フィルム19がマスクとして機能することができるようにしても良い。
【0045】
固定フィルム18と可動フィルム19との組合せ姿勢は、図7に示すものに特定されることはなく、ドット17が上向きになっても、ドット17同士が対向する姿勢としても良い。
【0046】
外枠体7の前側の周壁9中央部分には、開口欠部10(図4、図5参照)が切欠き形成されていて、この開口欠部10に蓋本体3の主体板4に組付いて、前後にスライド変位するフックピース11(図4、図5参照)が設けられている。
【0047】
このフックピース11は、容器体21の係止突片22と組合さって係止機能部を構成するもので、蓋本体3の主体板4の先端部分に噛合い状に組付いて、この主体板4に前後方向にスライド移動可能に組付くフック本体12と、このフック本体12から、容器体21の係止突片22に下方から係止する突片を有する係止片13を垂下設して構成され、フック本体12には、係止状態に付勢するバネ片14(図1参照)が設けられている。
【0048】
このフックピース11のフック本体12には、隙間Sに配置されたフィルム体15の可動フィルム19の先端部が、接着テープ等を利用して接着、引っ掛け、挟持等の手段で結合(図4、図5参照)されており、これによりフックピース11を操作することにより、可動フィルム19を固定フィルム18に対して変位させることができる。
【0049】
すなわち、開口欠部10から露出しているフックピース11のフック本体12を、バネ片14の弾力に逆らって開口欠部10内に押し込むと、このフック本体12に結合された可動フィルム19が押し込み状に移動して、固定フィルム18に対して摺動変位し、これにより現出されるモワレ模様が、摺動変位している間も深みを伴ってダイナミックに変化する。
【0050】
この場合、可動フィルム19の固定フィルム18に対する変位は、摺接しながらの変位であるので、固定フィルム18と可動フィルム19との組付き姿勢が一定に維持されたままであり、これにより鮮明なモワレ模様を確実に現出させることができる。なお、上記した「摺接」とは、鮮明なモワレ模様を現出させることのできるわずかな間隙を有する場合を許容している。
【0051】
可動フィルム19の可動手段としては、上記したフックピース11を利用したものの他に、フックピース11に代わる専用の変位操作部材を設けるとか、隙間Sに対する可動フィルム19の組付きを充分にルーズとし、容器全体を振るとか傾ける等して、可動フィルム19を変位可能に収納する構成としても良い。
【0052】
図示実施形態例では、携帯容器1として化粧用コンパクト容器を示したが、携帯容器1は化粧用コンパクト容器に特定されることはなく、携帯電話や筆箱等の蓋付き携帯容器に対して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、本発明における携帯容器の蓋体は、携帯容器の最も目立つ蓋体部分に、ダイナミックに変化するモワレ模様を現出するものであり、携帯容器に対する装飾技術として、幅広い利用展開が期待できる。
【符号の説明】
【0054】
1 ;携帯容器
2 ;蓋体
3 ;蓋本体
4 ;主体板
5 ;鏡
6 ;蝶番垂片
7 ;外枠体
8 ;頂壁
9 ;周壁
10;開口欠部
11;フックピース
12;フック本体
13;係止片
14;バネ片
15;フィルム体
16;ベースフィルム
17;ドット
18;固定フィルム
19;可動フィルム
20;取付けケース
21;容器体
22;係止突片
23;蝶番片
24;蝶番軸
25;中皿体
S ;隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯容器の蓋体であって、平板状の主体板を有する蓋本体と、該蓋本体上に組付けられ、平板状の頂壁を有する透明あるいは半透明な外枠体とから構成され、前記主体板と頂壁との間に形成された隙間に、ベースフィルムの表面に多数の透明あるいは半透明なドットを配列形成した固定フィルムと可動フィルムとを重ねたフィルム体を配置し、該フィルム体の固定フィルムを不動に固定すると共に、該固定フィルムに対して可動フィルムをスライド状に変位可能に取付けた携帯容器の蓋体。
【請求項2】
固定フィルムを、外枠体側に不動に固定した請求項1に記載の携帯容器の蓋体。
【請求項3】
外枠体側への固定フィルムの固定を、該固定フィルムをインサート材とした外枠体のインサート成形により達成した請求項2に記載の携帯容器の蓋体。
【請求項4】
外枠体側への固定フィルムの固定を、該固定フィルムを固定した取付けケースを外枠体に不動に固定することにより達成した請求項2に記載の携帯容器の蓋体。
【請求項5】
外枠体の前面の周壁中央部に開口欠部を形成し、該開口欠部に蓋体の係止機能部の構成部分であるフックピースを前後変位可能に設け、該フックピースに可動フィルムを結合させた請求項1から4の何れか1項に記載の携帯容器の蓋体。
【請求項6】
ベースフィルムに対するドットの付形を、シルク印刷による透明あるいは半透明なインクの印刷により達成した請求項1から5の何れか1項に記載の携帯容器の蓋体。
【請求項7】
ベースフィルムに対するドットの付形を、前記ベースフィルムに塗付された透明あるいは半透明なインク層に対するプレス加工により達成した請求項1から5の何れか1項に記載の携帯容器の蓋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−260597(P2010−260597A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111624(P2009−111624)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】