説明

携帯情報端末

【課題】パッシブ型タグのRFIDリーダ機能と、アクティブ型タグの機能を兼ね備えたR/Wデバイスを搭載した携帯情報端末を実現し、両方のサービスを享受したい。
【解決手段】携帯情報端末の実行モード切替手段は制御部に対して、R/Wデバイス部をアクティブ型、もしくはパッシブ型の実行モードでタグを読取るように実行指示を行う。制御部は記憶部に格納されている実行コマンド群を読み出し、R/Wデバイス部に前記実行モードに対応したコマンドを送信する。R/Wデバイス部によるID受信処理結果の成否に関わらず、制御部は元の実行モードで受信処理を継続して実行するか、異なる実行モードに切り替えて受信処理を実行し、どちらかのモードでさらに次のIDデータを受信できるまで受信処理を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯情報端末に係り、特にパッシブ型RFIDタグとアクティブ型RFIDタグの双方と通信を行う携帯情報端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物品管理の効率化を目的として無線ICタグを用いた管理システムが提案されている(非特許文献1)。該管理システムでは、オフィス等で使われるPCをはじめとする事務機器などの物品にRFIDタグを付けておき、RFIDリーダ(以下、携帯情報端末とも呼ぶ)をユーザがタグに近づけることにより、RFリーダはタグに格納されているデータを読取る。そして、読取った受信データと棚卸台帳にあるデータを突き合わせることによって、ユーザは物品の存在確認を行うことができる。このような業務においては、自ら電源を持たないパッシブ型のRFIDタグが使われることが多い。パッシブ型タグはRFIDリーダ等から射出される電波から電源を生成して作動し、タグ内部の記憶部に格納されたデータをRFIDリーダに送信する。
【0003】
一方、内部に電源を搭載し、自らタグ内部の記憶部に格納されたデータを送信したり、外部からデータを受信したりするアクティブ型タグという種別も存在する。このアクティブ型タグを用いたシステムの一例としては、集配センターにおける搬送用ボックスの個数管理、位置管理に用いたものがある(特許文献1)。
パッシブ型タグは読取り距離が数センチ〜数十センチであるのに対し、アクティブ型タグは数十メートル離れていても送受信が可能であり、使い勝手やコストも異なるため、用途によってタグの種別を使い分けることが通例となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−226434号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】松田礼子,辻利之;「業務効率化を実現する資産管理ソリューション」,NEC技報,Vol.59,No.2/2006,p.76−79
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した携帯情報端末であるRFIDリーダにおいては、これまでパッシブ型タグか前記アクティブ型タグのいずれか一方と通信するように構成されていた。前記アクティブ型タグは比較的最近になって増加しているが、いずれのタグと通信するかに応じ、別のRFIDリーダを準備する必要があり、ユーザにとって不便な場合があった。
本発明の目的は、前記した問題に鑑み、パッシブ型タグのRFIDリーダ機能と、アクティブ型タグの送受信機能を兼ね備えた携帯情報端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明は、外部のRFIDタグと通信して該RFIDタグが有するIDデータを受信し、受信した前記IDデータに基づき外部のサーバと通信して該サーバから前記IDデータに関わる詳細情報を受信する携帯情報端末であって、
パッシブ型タグである前記RFIDタグ、及びアクティブ型タグである前記RFIDタグと通信して前記IDデータを受信するR/Wデバイス部と、前記サーバと通信して前記詳細情報を受信する通信部と、前記R/Wデバイス部で受信した前記IDデータを含めデータを格納する記憶部と、該記憶部に格納されたデータを表示する表示部と、前記R/Wデバイス部、通信部、記憶部と表示部を含め携帯情報端末の全体の動作を制御し、前記R/Wデバイス部の実行モードをパッシブ型タグと通信する実行モードとアクティブ型タグと通信する実行モードの間で交互に切替る実行モード切替手段を備える制御部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、携帯情報端末においてパッシブ型タグとアクティブ型タグの機能を切り替えて使うことができ、異なるサービスの双方を享受することができるため、ユーザにとっての利便性が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1に関わる携帯情報端末の機能ブロック図。
【図2】実施例1、2に関わるRFIDタグの機能ブロック図。
【図3】実施例1、2に関わるサーバの機能ブロック図。
【図4】実施例1、2に関わるIDデータ読取り処理のシーケンス図。
【図5】実施例1、2に関わるパッシブ実行モードにおける全体処理フロー図。
【図6】実施例1、2に関わるアクティブ実行モードにおける全体処理フロー図。
【図7】実施例2に関わる携帯情報端末の機能ブロック図。
【図8】実施例2に関わる動作検出判定処理フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に本発明の実施例につき、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明に係わる第一の実施例について図1乃至図6を用いて説明する。
まず、図1は、本発明の第一の実施例に係わる携帯情報端末1の構成例である。ここで言う携帯情報端末1は、前記したRFIDリーダの機能を含んでいる。また携帯情報端末1は、後に図2で説明するRFIDタグ2と図3で説明するサーバ3を仲介する機能を含んでいる。
図1に示すように、携帯情報端末1は、制御部101、記憶部102、R/Wデバイス部103、通信部104、表示部105、出力部106、入力部107、実行モード切替手段110、ID問合せ手段111、詳細情報受信手段112、実行タイミング調整手段113、IDフィルタ手段114、R/Wデバイス設定手段116、を備える。
【0012】
制御部101は、後述する記憶部102、R/Wデバイス部103や通信部104、表示部105、出力部106、入力部107等を要求に従って制御する機能を持つ。例えば、R/Wデバイス部103で取得したIDデータを記憶部102に格納したり、記憶部102から制御コマンドを読み出してR/Wデバイスに対して送信してR/Wデバイス部103の実行モードを切り替えたりする機能を持つ。
【0013】
記憶部102は、情報を格納する機能を備え、半導体メモリやハードディスク等で構成される。ここには、サーバ3のURLや読取ったIDデータ、受信した詳細情報、R/Wデバイスを制御するためのコマンド群等が格納されている。
R/Wデバイス部103は、図2のRFIDタグ2と無線通信を行うためのインタフェースであって、RFIDのタグを読むことができるタグリーダ/ライタである。1つのデバイスでパッシブ型とアクティブ型の両方に対応する構成でもよいし、2つのデバイスで2つの方式に対応する構成でもよい。このデバイスの中には、R/W制御ICの他に、タグの記憶部に含まれるIDデータを送受信するためのアンテナを含む。
【0014】
通信部104は、図3のサーバ3が備える通信部301とデータを送受信する機能を備えた通信モジュールである。サーバ3との通信は有線、無線のいずれを経由しても良いし、双方を直列に経由しても良い。前述の記憶部102に格納されているサーバのURLや、読取り済みIDデータを送信したり、そのIDデータに関する詳細情報をサーバ3から受信する。
表示部105は、例えば液晶ディスプレイや有機EL等を用いたディスプレイパネルである。文字や画像等を表示できるパネルであれば、表示方式や材質は特に限定されない。
【0015】
出力部106は、例えばLEDやバイブレータ、音声出力用スピーカなどである。ユーザに対してIDデータが読取れた旨の通知ができれば、特に上記に限定されない。
入力部107は、ユーザ要求を制御部101へ入力するためのボタンやキーボードである。ユーザインタフェース画面を遷移したり、デバイス制御やサーバ通信を開始するタイミングを知らせるためにユーザが用いる。
【0016】
実行モード切替手段110は、現在実行中の実行モードを取得して、実行中の処理を完結させた後に、異なる実行モードに遷移するための初期化を行う機能を持つ。
ID問合せ手段111は、記憶部102から受信済みのIDデータ、サーバ3のURLを読み出して、通信部104を用いて問合せコマンドを送信するように制御部101に指示する機能を持つ。
【0017】
詳細情報受信手段112は、通信部104がID問合せ手段111の問合せの結果を受信した際、記憶部102に格納して詳細情報の種別等を判定する機能を持つ。
実行タイミング調整手段113は、記憶部104から通信継続時間、成功時通信継続時間、切替え待ち時間を読み出して、取得した時間が経過するのを待って、前記実行モード切替手段110に対してモードの切替え処理開始の実行タイミングや通信処理終了の実行タイミングを通知する機能を持つ。なお、記憶部104から読出した情報が前記実行モードの切替を禁止していることを示す場合は、前記実行モード切替手段110は切替動作をしないように機能する。
【0018】
IDフィルタ手段114は、記憶部102に格納されている受信済みIDデータとの照合を行って、重複して受信したものを削除したり、受信時の信号強度が最も大きいIDデータのみを抽出する機能を持つ。
R/Wデバイス設定手段116は、前記詳細情報受信手段112によって受信した詳細情報の種別がR/W設定情報であった場合に、前記R/Wデバイス部103に対してその詳細情報を用いて設定を反映する機能を持つ。
【0019】
図2は、RFIDタグ2の構成例である。図2に示すように、RFIDタグ2は、アンテナ部201、記憶部202、を備える。
アンテナ部201は、携帯情報端末1のR/Wデバイス部103に含まれるアンテナから射出される電波を受信する機能を持つ。また、後述の記憶部202に格納されているIDデータを反射波に乗せて送信するためにも用いられる。
記憶部202は、IDデータ等を保持するためのメモリであるが、メモリモジュールはどのようなもので構成されていてもよい。
【0020】
図3は、サーバ3の構成例である。図3に示すように、サーバ3は、通信部301、制御部302、記憶部303、を備える。
通信部301は、携帯情報端末2の通信部104とデータの送受信を行うための通信モジュールである。携帯情報端末2からIDデータに関して問合せを受信したり、そのIDデータに関連する詳細情報を返送する機能を持つ。サーバ3の記憶部303に関連する情報がない場合に応じて、通信をリダイレクトして他のサーバに接続させる機能を持ってもよい。
【0021】
制御部302は、携帯情報端末2からIDデータの問合せ要求があった場合に、前記通信部301が受信したIDデータをもとに、後述の記憶部303から関連するデータを取得する機能を持つ。
記憶部303は、IDデータとそれに関連する詳細情報が格納されるメモリやハードディスクである。この詳細情報には、タグが貼付してある商品等の一般情報や、R/W設定を行うためのR/W設定情報の種別を付与してもよい。また、詳細情報に携帯情報端末2の実行モード切替可否を示す情報を含めてもよい。
【0022】
図4は、IDデータ読取り処理のシーケンス図である。このシーケンス図は、UML (Unified Modeling Language)の記法に基づいて記載している。最初に、携帯情報端末2の制御部101は次の読取り処理に関する実行モードを取得する(S400)。実行モードがパッシブモードである場合にはS401へ進み、アクティブモードである場合にはS403へ進む。
【0023】
実行モードがパッシブモードである場合には、制御部101は、記憶部102に格納されているパッシブモードの実行コマンド群を読み出して、そのコマンドに従ってR/Wデバイス部103に送信する(S401)。コマンドを受信したR/Wデバイス部103は、RFIDタグ2に対して電波を射出し、RFIDタグ2からの反応を待つ(S402)。ここで正しくRFIDタグ2からIDデータが受信できた場合には、S405へ進み、IDを受信できなかった場合にはS409へ進む。
【0024】
続いて、実行タイミング調整手段113は記憶部102から取得した切替待ち時間の分だけ待機した後、実行モード切替手段110に実行モードのアクティブモードへの切替を行うための通知を行う。通知を受けた実行モード切替手段110は、制御部101を経てR/Wデバイス部103に対して実行モードの切替を行わせる。
【0025】
一方、実行モードがアクティブモードの場合も同様に、制御部101は、記憶部102に格納されているアクティブモードの実行コマンド群を読み出して、そのコマンドに従ってR/Wデバイス部103に送信する(S403)。コマンドを受信したR/Wデバイス部103は、RFIDタグ2から射出される電波を検知すべく、キャリアセンス処理を行う(S404)。RFIDタグ2からの電波を検知し、IDデータを正しく受信できた場合には、S405へ進む。また、IDデータを正しく受信できなかった場合にはS409へ進む。
【0026】
続いて、実行タイミング調整手段113は記憶部102から取得した切替待ち時間の分だけ待機した後、実行モード切替手段110に実行モードのパッシブモードへの切替を行うための通知を行う。通知を受けた実行モード切替手段110は、制御部101を経てR/Wデバイス部103に対して実行モードの切替を行わせる。
R/Wデバイス部103がRFIDタグ2のIDデータを正しく受信できた場合には、受信したIDデータを記憶部102へ格納し、制御部101へ受信成功の旨を通知する(S406)。制御部101は格納されたIDデータに基づき、サーバ3に対して通信部104を用いてIDデータの問合せ処理を行う(S407)。このとき、表示部105や出力部106を用いてユーザに対してID受信の通知を行ってもよい。
【0027】
サーバ3の通信部301は、携帯情報端末1の通信部104からのIDデータ問合せを受けると、制御部302が記憶部303に格納されているデータから、受信したIDデータに関連する詳細情報や実行モード切替可否情報を抽出し、通信部301を用いて詳細情報として返送する(S408)。携帯情報端末1の通信部104は詳細情報を受信すると、表示部105や出力部106を用いてユーザへの詳細情報の提示を行う。
【0028】
一方、先のS405でIDデータを正しく受信できなかった場合には、R/Wデバイス部103は制御部101に対して受信タイムアウトエラーを返す(S409)。制御部101はこのエラーに関して、表示部105や出力部106を用いてユーザに提示しなくても良い。
以上の処理を行った後、最初(S400)へ戻って連続実行を行う。
【0029】
以上述べたように、図4のシーケンス図によれば、携帯情報端末1は、RFIDタグ2がパッシブ型、アクティブ型のいずれである場合でも、RFIDタグ2との間で情報の通信を行うことができる。これにより、パッシブ型とアクティブ型の各々に対して、別な携帯情報端末を準備する必要がなくなる。さらに、パッシブ型とアクティブ型の実行モードの切替えは、前記したように自動的に行うことができるため、ユーザがRFIDタグの種類を把握して意識的に実行モードを切替える必要はない。このため、ユーザに対する携帯情報端末の使い勝手を向上することができる。なお、実行モードの切替えが自動であることは必須ではなく、ユーザが手動で切替えて設定する場合も本実施例に含まれるが、以下の説明は主に自動である場合を対象とする。
【0030】
図5は、パッシブ実行モードにおける処理フロー図である。
はじめに、パッシブ実行モードの処理はS500より開始する(S500)。まず、制御部101は記憶部102に格納されている通信継続時間を満了していないか判定する(S501)。ここで通信継続時間を満了している場合には(Yes)、S503へ進む。満了していない場合には(No)、読取り時間が残っていることを示すので、S502へ進む。
【0031】
通信継続時間が残っている場合には、パッシブタグの読取り処理を行ってS501へ戻る(S502)。この処理は図4のシーケンス図におけるS401が相当する。ここで、タグ読取り処理が成功した場合に、通信継続時間を0に更新してもよい。これにより、1回受信成功したときに速やかにS504以降のステップへ進むことができる。
一方、通信継続時間が満了した場合は、IDデータの読取り処理が成功したかどうか判定する(S503)。読取りが成功した場合には(Yes)S504へ進み、失敗した場合には(No)S512へ進む。
【0032】
読取りが成功した場合には、制御部101は出力部106や表示部105を制御して、ユーザにID受信成功の旨の通知を行う(S504)。例えば、表示パネルやLED、音声、バイブレーション機能による通知を行う。その後、S505へ進む。
受信タグ選別処理では、IDフィルタ手段114が既に受信済みのIDデータとの重複を判定する(S505)。重複がある場合にはそれを破棄し、重複が無い場合には記憶部102に格納し、S506へ進む。
【0033】
入力部107によってユーザからID問合せ要求が来た場合には(Yes)、S507へ進む(S506)。要求が来ていない場合には(No)、要求待ち状態としてS506へ戻る。ただし、ID受信後に自動的にサーバ問合せを行う設定になっている場合はS506の処理を省略してS507へ進む。
サーバへのID問合せ処理(S507)においてID問合せ手段111は、制御部101に記憶部102に格納されている、サーバ3の接続先情報(例えば、URLなど)、および問合せるIDデータを読出すよう指示した後、サーバ3に問合せるよう通信部104へ指示し、S508へ進む。
【0034】
詳細情報受信手段112は、サーバ3の通信部301から返送されてきた詳細情報を記憶部102へ格納した後、その詳細情報の種別を判定する(S508)。詳細情報がR/W設定情報である場合にはS510へ進み、一般情報である場合にはS509へ進む。
詳細情報の種別が一般情報である場合(S509)には、制御部101は表示部105を用いて詳細情報の表示を指示し、S511へ進む。
一方、詳細情報の種別がR/W設定情報である場合(S510)には、R/Wデバイス設定手段116がその詳細情報に従ってR/Wデバイス部103へ設定の反映を行い、S511へ進む。例えば、射出する電波の周波数チャネルやゲイン値、読取り時の実行回数等を設定する。
【0035】
切替可否取得処理では、制御部101は受信した詳細情報に含まれる切替可否に関する情報を取得する(S511)。アクティブへの切替えが認められている情報が含まれている場合には(Yes)、S512へ進む。切替え不可の場合は(No)S501へ戻り、パッシブ受信処理を継続する。なお、受信した詳細情報に切替可否に関する情報が含まれていない場合には、自動的にS512へ進んでもよい。
【0036】
切替待ち処理(S512)では、実行タイミング調整手段113は記憶部102に格納されている切替待ち時間が経過するまで待機し、S513へ進む。このとき、切替え待ち時間の計測開始タイミングは、タグ読取り処理の時点でもよいし、サーバ問合せや詳細情報受信が完了したタイミングでもよい。また切替え待ち時間は、S503でのIDデータの読取り処理が成功した場合には、成功しなかった場合と比べて長く延長されても良い。これにより、成功しなかった場合に、他の実行モードへの切替えを早めることができる。
最後に、実行モード切替手段110はパッシブ実行モードにおける処理が完了した後、アクティブ実行モードへ切り替えるよう制御部101へ指示する(S513)。アクティブ実行モードにおける通信等の初期化処理をした後、次の図6のS600へ進む。
【0037】
図6は、アクティブ実行モードにおける処理フロー図である。
はじめに、アクティブ実行モードの処理はS600より開始する(S600)。まず、制御部101は記憶部102に格納されている通信継続時間を満了していないか判定する(S601)。ここで通信継続時間を満了している場合には(Yes)、S606へ進む。満了していない場合には(No)、読取り時間が残っていることを示すので、S602へ進む。
【0038】
ここでは、制御部101は成功時通信継続時間が満了しているかどうかを判定する(S602)。満了している場合には(Yes)S606へ進み、満了していない場合には(No)S603へ進む。成功時通信継続時間は、S601での通信継続時間よりも長くて良い。これにより、S604でのIDデータの読取り処理が成功しなかった場合に、他の実行モードへの切替えを早めることができる。
成功時通信継続時間も通信継続時間も両方残っている場合には、制御部101はアクティブタグの読取り処理を行ってS604へ進む(S603)。この処理は図4のシーケンス図におけるS403が相当する。S604で、タグ読取り処理が成功した場合には(Yes)、制御部101は成功時通信継続時間の測定を開始して(S605)、S602に戻るが、成功時通信継続時間や通信継続時間を0に更新してもよい。これにより、1回受信成功したときに速やかにS606以降のステップへ進むことができる。
【0039】
一方、通信継続時間が満了した場合は、制御部101はIDデータの読取り処理が成功したかどうか判定する(S606)。読取りが成功した場合には(Yes)S607へ進み、失敗した場合には(No)S615へ進む。
読取りが成功した場合には、制御部101は出力部106や表示部105を制御して、ユーザにID受信成功の旨の通知を行う(S607)。例えば、表示パネルやLED、音声、バイブレーション機能による通知を行う。その後、S608へ進む。
【0040】
受信タグ選別処理では、IDフィルタ手段114が既に受信済みのIDデータとの重複を判定し、重複がある場合にはそれを破棄し、重複が無い場合には記憶部102に格納し、S609へ進む(S608)。ここで、複数のIDデータを受信していた場合には、最も強い信号強度を持つIDデータを取得する処理を行ってもよい。
入力部107によってユーザからID問合せ要求が来た場合には(Yes)、S610へ進む(S609)。要求が来ていない場合には(No)、要求待ち状態としてS609へ戻る。ただし、ID受信後に自動的にサーバ問合せを行う設定になっている場合はS609の処理を省略してS610へ進む。
【0041】
サーバへのID問合せ処理(S610)においてID問合せ手段111は、制御部101に記憶部102に格納されている、サーバ3の接続先情報(例えば、URLなど)、および問合せるIDデータを読み出すよう指示した後、サーバ3に問合せるよう通信部104へ指示し、S611へ進む。
詳細情報受信手段112は、サーバ3の通信部301から返送されてきた詳細情報を記憶部102へ格納した後、その詳細情報の種別を判定する(S611)。詳細情報がR/W設定情報である場合にはS613へ進み、一般情報である場合にはS612へ進む。
【0042】
詳細情報の種別が一般情報である場合(S612)には、制御部101は表示部105を用いて詳細情報の表示を指示し、S614へ進む。
一方、詳細情報の種別がR/W設定情報である場合(S613)には、R/Wデバイス設定手段116がその詳細情報に従ってR/Wデバイス部103へ設定の反映を行い、S614へ進む。例えば、前述のように、射出する電波の周波数チャネルやゲイン値、読取り時の実行回数等を設定する。
切替可否取得処理では、制御部101は受信した詳細情報に含まれる切替可否に関する情報を取得する(S614)。パッシブへの切替えが認められている情報が含まれている場合には、S615へ進む。切替え不可の場合はS601へ戻り、アクティブ受信処理を継続する。なお、受信した詳細情報に切替可否に関する情報が含まれていない場合には、自動的にS615へ進んでもよい。
【0043】
切替待ち処理(S615)では、実行タイミング調整手段113は記憶部102に格納されている切替待ち時間が経過するまで待機し、S616へ進む。このとき、切替え待ち時間の計測開始タイミングは、タグ読取り処理の時点でもよいし、サーバ問合せや詳細情報受信が完了したタイミングでもよい。また切替え待ち時間は、S604でのIDデータの読取り処理が成功した場合には、成功しなかった場合と比べて長く延長されても良い。これにより、成功しなかった場合に、他の実行モードへの切替えを早めることができる。
最後に、実行モード切替手段110はアクティブ実行モードにおける処理が完了した後、パッシブ実行モードへ切り替えるよう制御部101へ指示する(S616)。パッシブ実行モードにおける通信等の初期化処理をした後、S500へ進む。
以上のように、パッシブ実行モード、アクティブ実行モードの双方にてIDデータの受信に成否に関わらず、異なる実行モードへ自動的に切り替わることによって、ユーザは現在の実行モードを意識することなく、IDデータを読取った結果として得られる様々なサービスを享受できるようになる。
【実施例2】
【0044】
以下、本発明に係わる第2の実施例について図7乃至図8を用いて、第1の実施例との差分のみを説明する。
まず、図7は、本発明の第2の実施例に係わる携帯情報端末1の携帯情報端末の機能構成例である。
【0045】
図7に示すように、携帯情報端末1は、第一の実施例で示した図1の構成に加え、さらにセンサー部108、動作検出手段115を備える。
制御部101は、前記記憶部102、R/Wデバイス部103や通信部104、表示部105、出力部106、入力部107に加え、さらにセンサー部108等を要求に従って制御する機能を持つ。
センサー部108は、ユーザが携帯情報端末2を所持したときの変位や速度、加速度等を計測するセンサーである。
【0046】
動作検出手段115は、前記センサー部108の出力をもとに、ユーザの動作を判定し、ユーザがパッシブ型タグに向かって前記携帯情報端末1やR/Wデバイス部103を近付ける動作をしていると判定した場合に、前記実行モード切替手段110や制御部101に通知する機能を持つ。
また、図2乃至図6に関しては構成や動作等は共通であるので、第一の実施例の説明を以って代える。
【0047】
前記したとおり、アクティブ型タグは携帯情報端末1との通信可能な距離が数十mと長いため、通信をするためにユーザが携帯情報端末を移動させることは稀である。これに対してパッシブ型タグは長くても数十cmであり、通信をするためにはユーザがRFIDタグの近くに携帯情報端末を移動させることが多い。実施例2では、この使い方の違いに着目して、センサー部108で変位、速度、加速度を検知した際に、ユーザがパッシブ型タグとの通信を望んでいるものと判断して、携帯情報端末1の実行モードを設定することを特徴としている。
【0048】
図8は、本発明の第2の実施例に係わる動作検出判定処理フロー図である。この処理は、前記図5や図6に示したパッシブ実行モードの処理やアクティブ実行モードの処理と並行して実行されているものとする。
まず、動作検出手段115は、前記センサー部108の出力をもとに、ユーザの動作を判定し、ユーザがパッシブ型タグに向かって前記携帯情報端末1やR/Wデバイス部103を近付ける動作をしていると判定した場合には(Yes)S702へ進む(S701)。特定の動作をしていない場合は(No)S701へ戻る。例えば、携帯情報端末1を手に持って突き出し、短時間のうちにタグの前で止める動作を加速度センサー等で検知したときに、特定動作をしたと判断してもよいし、方式はこれに限らない。
【0049】
動作検出手段115が特定動作を検出した場合、制御部101にその旨を通知すると、制御部101は現在の実行モードを取得する(S702)。ここで、現在の実行モードがパッシブ実行モードである場合には、S704へ進む。一方、アクティブ実行モードである場合にはS703へ進み、前記実行モード切替手段110がパッシブ実行モードへの切替え処理を行う(S703)。この処理はS500からのフローとして図5に既に定義してある。
【0050】
一方、現在の実行モードがパッシブ実行モードである場合には、制御部101にその旨を通知し、制御部101は現在の通信継続時間の値を一時的に延長し、その値を記憶部102に書き込む(S704)。
このようにして動作検出判定の処理を終える。
【0051】
以上のように、ユーザの動作検出処理を行い、通信継続時間の延長、もしくはアクティブ実行モードからパッシブ実行モードに速やかに切り替えることによって、パッシブタグの読取り効率を向上することができる。
ここまで述べた本発明の実施例は一例であって、本発明を限定するものではない。例えば、図1と図7のブロック構成図、図4〜図6、図8のフロー図にはいくつかの変形例を考えることができるが、いずれも本発明の範疇にある。
【符号の説明】
【0052】
1…携帯情報端末、2…RFIDタグ、3…サーバ、101…制御部、102…記憶部、103…R/Wデバイス部、104…通信部、105…表示部、106…出力部、107…入力部、108…センサー部、110…実行モード切替手段、111…ID問合せ手段、112…詳細情報受信手段、113…実行タイミング調整手段、114…IDフィルタ手段、115…動作検出手段、116…R/Wデバイス設定手段、201…アンテナ部、202…記憶部、301…通信部、302…制御部、303…記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部のRFIDタグと通信して該RFIDタグが有するIDデータを受信し、受信した前記IDデータに基づき外部のサーバと通信して該サーバから前記IDデータに関わる詳細情報を受信する携帯情報端末であって、
パッシブ型タグである前記RFIDタグ、及びアクティブ型タグである前記RFIDタグと通信して前記IDデータを受信するR/Wデバイス部と、
前記サーバと通信して前記詳細情報を受信する通信部と、
前記R/Wデバイス部で受信した前記IDデータを含めデータを格納する記憶部と、
該記憶部に格納されたデータを表示する表示部と、
前記R/Wデバイス部、通信部、記憶部と表示部を含め携帯情報端末の全体の動作を制御し、前記R/Wデバイス部の実行モードをパッシブ型タグと通信する実行モードとアクティブ型タグと通信する実行モードの間で交互に切替る実行モード切替手段を備える制御部
を有することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯情報端末において、前記制御部は、
前記R/Wデバイス部で受信され前記記憶部に格納された前記IDデータを前記サーバに前記通信部を用いて送信するID問合せ手段と、
前記通信部が送信したIDデータに対して前記サーバが応答して送信し前記通信部が受信した前記IDデータに関わる詳細情報を取得して前記記憶部に格納する詳細情報受信手段
を備え、
前記詳細情報受信手段が前記詳細情報を取得できた場合には、前記記憶部に格納された前記IDデータに関わる詳細情報を前記表示部に表示する
ように制御することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項3】
請求項1に記載の携帯情報端末において、
ユーザに対して前記IDデータの受信状況を通知する出力部を備え、
前記R/Wデバイス部が前記IDデータを受信した場合には、前記制御部は、IDデータが受信されたことを前記ユーザに報知するよう前記出力部を制御することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項4】
請求項2に記載の携帯情報端末において、
ユーザからの要求を受付ける入力部を備え、
前記入力部で受付けられた要求がIDデータの問合せである場合には、前記制御部のID問合せ手段は、前記記憶部に格納された前記IDデータを前記サーバに前記通信部を用いて送信することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項5】
請求項1に記載の携帯情報端末において、前記制御部は、
前記実行モード切替手段が前記実行モードを切替るタイミングを制御する実行タイミング調整手段を備え、
該実行タイミング調整手段は、前記記憶部に格納されたパッシブ型タグと通信する実行モードとアクティブ型タグと通信する実行モードの間で実行モードを切替るための切替待ち時間に基づき、他の実行モードへ切替るよう前記実行モード切替手段を制御することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項6】
請求項1に記載の携帯情報端末において、前記制御部は、
前記実行モード切替手段が前記実行モードを切替るタイミングを制御する実行タイミング調整手段を備え、
該実行タイミング調整手段は、前記記憶部に格納されたパッシブ型タグと通信する実行モードの通信継続時間とアクティブ型タグと通信する実行モードの通信継続時間のうち、現在実行中の実行モードの通信継続時間に基づき、現在実行中の実行モードを停止するよう前記実行モード切替手段を制御することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項7】
請求項5に記載の携帯情報端末において、前記待ち時間は、前記R/Wデバイス部が前記IDデータの受信に成功した際には、延長された成功時待ち時間であることを特徴とする携帯情報端末。
【請求項8】
請求項6に記載の携帯情報端末において、前記通信継続時間は、前記R/Wデバイス部が前記IDデータの受信に成功した際には、延長された成功時通信継続時間であることを特徴とする携帯情報端末。
【請求項9】
請求項6に記載の携帯情報端末において、前記制御部は、
前記R/Wデバイス部で受信したIDデータの選別をするIDフィルタ手段を備え、
該IDフィルタ手段は、前記R/Wデバイス部が前記通信継続時間内に受信したIDデータを前記記憶部に格納されたIDデータと比較して、前記受信したIDデータが前記記憶部に格納されていない場合には、前記受信したIDデータを前記記憶部に格納することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項10】
請求項9に記載の携帯情報端末において、前記IDフィルタ手段は、
受信したIDデータがアクティブ型のIDデータである場合には、前記通信継続時間内に受信した全てのIDデータの中から、前記R/Wデバイス部において最大の受信信号強度を有するIDデータを取得して前記記憶部に格納することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項11】
請求項1に記載の携帯情報端末において、
該携帯情報端末の移動を検出するセンサー部を備え、
該センサー部が前記携帯情報端末の移動を検出した場合には、前記制御部の前記実行モード切替手段は、前記実行モードをパッシブ型タグと通信する実行モードに設定するよう制御することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項12】
請求項6に記載の携帯情報端末において、
該携帯情報端末の移動を検出するセンサー部を備え、
該センサー部が前記携帯情報端末の移動を検出した場合には、前記実行モードがパッシブ型タグと通信する実行モードである際には前記通信継続時間を延長し、前記実行モードがアクティブ型タグと通信する実行モードである際には前記実行モードをパッシブ型タグと通信する実行モードに切替ることを特徴とする携帯情報端末。
【請求項13】
請求項2に記載の携帯情報端末において、
前記詳細情報受信手段により受信され前記記憶部に格納された詳細情報を用いて前記R/Wデバイス部の動作設定を行うR/Wデバイス設定手段を備えたことを特徴とする携帯情報端末。
【請求項14】
請求項6に記載の携帯情報端末において、
前記実行タイミング調整手段は、前記記憶部に格納された前記詳細情報が含む切替可否情報を取得し、該切替可否情報が切替不可を示している場合には、前記実行モード切替手段に対する他の実行モードへの切替要求を停止することを特徴とする携帯情報端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−93956(P2012−93956A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240737(P2010−240737)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度 総務省「ユビキタス・プラットフォーム技術の研究開発(ユビキタス端末技術の研究開発)に関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】