携帯無線端末および基地局の選択方法
【課題】携帯無線端末の自端末位置の推定位置精度を改善すること。
【解決手段】携帯無線端末2は、無線通信部11と、受信信号強度検出部12と、複数の基地局3から受信した位置情報と検出した受信信号強度とを記憶する記憶部18と、記憶部18から基地局3を選択する選択部34と、選択された基地局3の位置情報および受信信号強度から前記携帯無線端末2の位置を演算する演算部35とを有する。記憶部18は、基地局3の情報として複数回分の電波による情報を記憶する。選択部34は、記憶されている基地局3の複数回分の情報から、電波環境が変化した基地局3以外の基地局3を優先して基地局3を選択する。
【解決手段】携帯無線端末2は、無線通信部11と、受信信号強度検出部12と、複数の基地局3から受信した位置情報と検出した受信信号強度とを記憶する記憶部18と、記憶部18から基地局3を選択する選択部34と、選択された基地局3の位置情報および受信信号強度から前記携帯無線端末2の位置を演算する演算部35とを有する。記憶部18は、基地局3の情報として複数回分の電波による情報を記憶する。選択部34は、記憶されている基地局3の複数回分の情報から、電波環境が変化した基地局3以外の基地局3を優先して基地局3を選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自端末位置を演算する携帯無線端末および、自端末位置演算のための基地局の選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、無線端末に接続される位置推定装置を開示する。
そして、位置推定装置は、無線端末から信号強度情報を受信する。
また、位置推定装置は、受信した信号強度情報に含まれる基地局の識別情報が記憶部に未登録である場合には、信号強度情報と基地局の位置情報とに基づいて無線端末の位置を推定する。
また、位置推定装置は、推定した無線端末の位置に応じた所定の位置情報と、基地局の識別情報とを対応付けて、記憶部に登録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−104029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、たとえば三角法により無線端末の位置を演算する場合、複数の基地局の位置情報と、複数の基地局から無線端末までの距離情報が必要である。
そして、特許文献1に開示されるように、無線端末では、この距離情報として受信信号強度を利用する。
【0005】
しかしながら、基地局からの受信信号強度を、基地局と無線端末との相対距離を示す値として用いた場合、電波障害物の存在などにより、演算位置に大きな誤差が含まれることがある。
たとえば無線端末の近くに、電波遮蔽物により遮られた基地局が存在する場合、基地局の送信電波についての強い反射波などが発生するため、その基地局についての受信信号強度は、遠くに位置する他の基地局よりも高くなる。
しかしながら、この電波遮蔽物により遮られた基地局の受信信号強度では、基地局から無線端末への直接波信号による強度ではなく、電波遮蔽物を迂回した反射波信号による強度が支配的である。
そして、電波遮蔽物により遮られた基地局の受信信号強度を用いて無線端末の位置を三角法などにより演算した場合、基地局に対する無線端末の相対距離を誤ることになる。
一般的には、実際の距離よりも遠くにあると仮定してしまうことになる。
その結果、演算した無線端末の位置は、現実の無線端末の位置に対して大きな誤差を含むことになる。
【0006】
このように無線端末の位置推定では、電波障害物が存在しても、位置推定誤差の精度を改善することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点の携帯無線端末は、複数の基地局から位置情報を含む電波を受信する無線通信部と、前記無線通信部が受信した電波の受信信号強度を検出する第1検出部と、受信した前記基地局の位置情報および検出した前記受信信号強度を含む、受信した複数の基地局の情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された複数の基地局の情報から、自端末の位置の演算に用いる複数の基地局を選択する選択部と、選択された前記複数の基地局の前記位置情報および前記受信信号強度から、前記自端末の位置を演算する演算部とを有し、前記記憶部は、前記基地局の情報として、該基地局から受信した複数回分の前記電波についての情報を記憶し、前記選択部は、前記記憶部に記憶されている複数の基地局についての複数回分の前記電波の情報に基づいて、前記自端末に対する電波環境が変化したと判断される基地局以外の基地局を優先して、複数の基地局を選択する。
【0008】
好適には、前記選択部は、最新回の前記電波の受信信号強度が、過去の前記電波の受信信号強度より下がった基地局以外の基地局を優先して選択してもよい。
【0009】
好適には、前記携帯無線端末は、前記無線通信部が受信した信号のエラーを検出する第2検出部と、前記第2検出部により検出されたエラーをカウントしてエラーレートを算出するエラーレート算出部とを有し、前記記憶部は、前記基地局の各回分の情報として、各回の受信電波についての前記エラーレートを記憶し、前記選択部は、最新回の受信信号のエラーレートが、過去の回の受信信号のエラーレートより上がった基地局以外の基地局を優先して選択してもよい。
【0010】
好適には、前記携帯無線端末は、前記無線通信部により複数の基地局を検索するオープンサーチを繰り返し実行するオープンサーチ部を有し、前記記憶部は、最新回のオープンサーチにより検出された複数の基地局の情報と、前回のオープンサーチにより検出された複数の基地局の情報とを記憶してもよい。
【0011】
好適には、前記携帯無線端末は、前記記憶部に記憶される最新回の情報と前回の情報とを比較し、電波環境が変化した基地局を判定する判定部を有し、前記記憶部は、前記判定部により前記電波環境が変化したと判断された基地局の情報が登録される非選択リストを記憶し、前記選択部は、最新回のオープンサーチにより検出された複数の基地局のうち、前記非選択リストに登録されていない基地局を、前記非選択リストに登録されている基地局より優先して選択してもよい。
【0012】
好適には、前記判定部は、前記基地局からの受信信号強度と信号のエラーレートとの組み合わせに基づいて、電波環境が変化した基地局を判定してもよい。
【0013】
好適には、前記判定部は、前記基地局の信号のエラーレートが所定の閾値内である場合、受信信号強度との組み合わせにより、前記基地局の第1電波環境を推定してもよい。
【0014】
好適には、前記判定部は、前記基地局の信号のエラーレートが所定の閾値外である場合、受信信号強度との組み合わせにより、前記基地局の第2電波環境を推定してもよい。
【0015】
好適には、前記選択部は、前記記憶部に記憶されている最新回の複数の基地局の情報に、前記非選択リストの登録情報に基づく受信環境の変化の有無を示す選択フラグを追加した合成リストを生成し、前記合成リストに含まれる複数の基地局の情報を、受信信号強度が高い基地局の順番にソートし、ソート後の前記合成リストにおいて、受信環境が変化したことを示す選択フラグに対応付けられていない上位の所定数の基地局を選択してもよい。
【0016】
好適には、前記非選択リストは、所定数の基地局をFIFO方式により登録可能であり、新たな基地局の登録時に、前記所定数を超えた古い基地局の情報が自動的に削除されてもよい。
【0017】
好適には、前記非選択リストは、電波環境が変化した基地局として登録された基地局の情報として、登録時点における前回のオープンサーチにより検出された該基地局の受信信号強度の情報を記憶し、前記携帯無線端末は、各回のオープンサーチにおいて検出される基地局の受信信号強度と、前記非選択リストに登録された基地局の受信信号強度とを比較し、前記非選択リストに登録されている基地局の電波環境が戻ったと判断した場合に、前記非選択リストから該基地局の情報を削除する削除部を有してもよい。
【0018】
好適には、前記選択部は、3台の基地局を選択し、前記演算部は、前記選択部により選択された前記3台の基地局の位置情報および受信信号強度から、三角法により前記携帯無線端末の位置を演算してもよい。
【0019】
本発明の第2の観点の基地局の選択方法は、携帯無線端末に設けられ、無線通信部および記憶部が接続された制御部が、前記携帯無線端末の位置を演算するために実行する基地局の選択方法であって、前記無線通信部により周辺の複数の基地局を繰り返しサーチするステップと、各回のサーチにより電波を受信した複数の基地局の情報として、受信した複数の基地局の位置情報および受信信号強度を含む情報を前記記憶部に保存し、前記記憶部に複数回分のサーチによる情報を蓄積するステップと、前記記憶部に記憶されている複数の基地局についての複数回分のサーチ情報に基づいて、前記携帯無線端末に対する電波環境が変化した基地局を判定するステップと、前記記憶部に記憶されている複数の基地局から、前記電波環境が変化したと判断された基地局以外の基地局を優先して、前記携帯無線端末の位置を演算するために使用する複数の基地局を選択するステップとを有する。
【0020】
本発明の第3の観点の基地局の選択方法は、携帯無線端末に設けられ、無線通信部および記憶部が接続された制御部が、前記携帯無線端末の位置を演算するために実行する基地局の選択方法であって、前記無線通信部により周辺の複数の基地局を繰り返しサーチするステップと、各回のサーチにより電波を受信した複数の基地局の情報として、受信した複数の基地局の位置情報、受信信号強度および信号のエラーレートを含む情報を前記記憶部に保存し、前記記憶部に複数回分のサーチによる情報を蓄積するステップと、前記記憶部に記憶されている複数の基地局についての複数回分のサーチ情報に基づいて、前記携帯無線端末に対する電波環境が変化した基地局を判定するステップと、前記記憶部に記憶されている複数の基地局から、前記電波環境が変化したと判断された基地局以外の基地局を優先して、前記携帯無線端末の位置を演算するために使用する複数の基地局を選択するステップとを有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、電波障害物が存在しても、携帯無線端末の位置を精度よく演算できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る携帯無線端末を利用した無線通信システムの構成図である。
【図2】図2は、図1の基地局とPHS端末との通信方式の説明図である。
【図3】図3は、図1のPHS端末の外観図である。
【図4】図4は、図3のPHS端末のハードウェア構成のブロック図である。
【図5】図5は、図3のPHS端末の現在位置を推定するための機能ブロック図である。
【図6】図6は、図5の第1サーチリストのデータ構造の一例の説明図である。
【図7】図7は、図5の非選択リストのデータ構造の一例の説明図である。
【図8】図8は、図5の合成リストのデータ構造の一例の説明図である。
【図9】図9は、図5の選択リストのデータ構造の一例の説明図である。
【図10】図10は、図5の位置データのデータ構造の一例の説明図である。
【図11】図11は、図5の演算部による三角法による自端末位置演算方法の説明図である。
【図12】図12は、図4のCPUが実行する現在位置の推定処理のフローチャートである。
【図13】図13は、複数回のオープンサーチ処理における合成リストおよび非選択リストの内容の遷移の一例を示す説明図である。
【図14】図14は、図8の合成リストの変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る携帯無線端末を利用した無線通信システム1の構成図である。
図1の無線通信システム1は、携帯無線端末としてのPHS端末2と、複数の基地局3とを有する。
図1には、PHS端末2と通信可能な複数の基地局3として、第1基地局3-1、第2基地局3-2、第3基地局3-3、第4基地局3-4および第5基地局3-5の5台の基地局3が図示されている。
この無線通信システム1において、PHS端末2は、複数の基地局3から電波を受信して自端末の位置を演算により推定する。
【0025】
第1基地局3-1、第2基地局3-2、第3基地局3-3、第4基地局3-4および第5基地局3-5は、図示しないメモリに、それぞれの設置地点を示す設置地点情報と、基地局3毎に固有のCS−ID(Cell Station IDentification number)とを記憶する。
たとえば、図1上部に描画された第1基地局3-1は、設置地点情報として、第1基地局3-1が設置された地点の緯度値「N1」および経度値「E1」を記憶する。
第2基地局3-2は、設置地点情報として、第2基地局3-2が設置された地点の緯度値「N2」および経度値「E2」を記憶する。
第3基地局3-3は、設置地点情報として、第3基地局3-3が設置された地点の緯度値「N3」および経度値「E3」を記憶する。
第4基地局3-4は、設置地点情報として、第4基地局3-4が設置された地点の緯度値「N4」および経度値「E4」を記憶する。
第5基地局3-5は、設置地点情報として、第5基地局3-5が設置された地点の緯度値「N5」および経度値「E5」を記憶する。
なお、基地局3が記憶する緯度値および経度値は、GPSなどで使用される世界測地系の緯度経度値であっても、日本工業規格で規定される緯度経度値であってもよい。また、緯度値および経度値は、無線通信システム1において独自に設定した値でもよい。
そして、基地局3は、設置地点情報およびCS−IDを含む電波を周期的に出力する。
【0026】
図1において、PHS端末2は、図面の中央の位置P1から、建物4内の位置P2へ移動している。
建物4内では、PHS端末2は、図面の右および上下の三方向が電波遮蔽物により遮蔽される。
なお、第1基地局3-1、第2基地局3-2、第3基地局3-3、第4基地局3-4および第5基地局3-5は、建物4外に設置されている。第4基地局3-4は、建物4に最も近い位置に設置されている。
【0027】
そして、PHS端末2が建物4外の地点P1に位置する場合、第1基地局3-1、第2基地局3-2、第3基地局3-3および第4基地局3-4は、PHS端末2と見通し電波で通信できる。
これに対して、第5基地局3-5の電波は、建物4により遮蔽される。
【0028】
また、PHS端末2が建物4内の地点P2に位置する場合、建物4の左側に設置された第1基地局3-1、第2基地局3-2および第3基地局3-3は、PHS端末2と見通し電波で通信できる。
これに対して、第4基地局3-4の電波および第5基地局3-5の電波は、建物4により遮蔽される。
そのため、建物4に最も近い位置にある第4基地局3-4の電波は、第4基地局3-4からPHS端末2への直接波ではなく、電波遮蔽物を迂回した反射波が支配的になる。
【0029】
図2は、基地局3とPHS端末2との通信方式の説明図である。図2において、横軸は時間である。
基地局3とPHS端末2とは、TDMA/TDD(時間分割多重アクセス/時間分割複信)方式の電波を用いて、互いに通信データを送受する。
複数の基地局3は、自律分散制御によりPHS端末2と送受する通信データを制御する。
TDD方式で通信データを送受する基地局3とPHS端末2とは、図2に示すように、4個の下りスロットと4個の上りスロットで構成されるフレーム単位で双方向通信する。
上りスロットは、PHS端末2が基地局3へ通信データを送信するスロットである。
下りスロットは、基地局3がPHS端末2へ通信データを送信するスロットである。
下りスロットの通信データには、たとえば基地局3の設置地点情報、CS−IDなどの情報が含まれる。
そして、PHS端末2は、1番目の下りスロットT1(制御チャネル)を受信することで、PHS端末2と通信可能な基地局3の設置地点情報とCS−IDとを取得する。
【0030】
なお、複数の基地局3のゾーン(マイクロセル:電波到達範囲の一部)は、互いに重ねて設定される。
そして、複数の基地局3は、図2に示すように、所定数の複数のフレームで構成されるスーパーフレーム毎に、自局の設置地点情報およびCS−IDを含む電波を出力する。
具体的には、基地局3は、各々の自律分散制御により、スーパーフレーム中に空きフレームを検出する。そして、基地局3は、検出した空きフレームの下りスロットT1において、自局の設置地点情報およびCS−IDを含む電波を出力する。
このように複数の基地局3は、複数のフレームによる複数の下りスロットT1を時分割に使用して、設置地点情報およびCS−IDを送信する。
また、複数の基地局3は、それらの複数のゾーンが互いに重なっていたとしても、互いの電波を干渉させることなく、それぞれの電波到達範囲内に存在する複数のPHS端末2に対して自局の設置地点情報およびCS−IDを送信できる。
【0031】
また、PHS端末2は、無線通信に最適な基地局3を検索するために、オープンサーチ処理を実行する。オープンサーチ処理では、PHS端末2は、オープンサーチ期間において、通信可能な基地局3の検出処理を実行する。
そして、PHS端末2は、オープンサーチ期間に図2のスーパーフレームを受信し、基地局3が送信した下りスロットの通信データを受信する。
たとえばPHS端末2は、図2のスーパーフレームにおいて、第1基地局3-1、第2基地局3-2、第3基地局3-3、第4基地局3-4および第5基地局3-5から、下りスロットの通信データを受信する。
なお、1フレームが5msであり、オープンサーチ期間が1.2sである場合、PHS端末2は、最大で240台の基地局3から下りスロットの通信データを受信可能である。
【0032】
図3は、図1のPHS端末2の外観図である。PHS端末2は、ストレート型の筐体101を有する。筐体101の前面には、表示部16と、操作部15の複数の操作キーとが配置される。図3の表示部16には、PHS端末2の現在位置が地図上に表示されている。
【0033】
図4は、図3のPHS端末2のハードウェア構成のブロック図である。
PHS端末2は、無線通信部(RF)11、受信信号強度検出部(RSSI)12、受信エラー検出部(ERR)13、エラーレート算出部(CAL)14、操作部(KEY)15、表示部(DISP)16、CPU(Central Processing Unit)17、記憶部18(MEM)、タイマ(TMR)19、音声モデム部(MODEM)20およびこれらを接続するシステムバス21を有する。
【0034】
無線通信部11は、基地局3と通信チャネルを確立し、基地局3から割り当てられたスロットを用いて基地局3と通信データを含む電波を送受する。
そして、無線通信部11は、CPU17からの入力信号に含まれる通信データを符号化し、符号化データを変調して基地局3へ無線送信する。
また、無線通信部11は、基地局3から受信した電波から符号化データを検出し、符号化データの誤り訂正をした復号データを生成し、この復号データを含む信号をCPU17へ出力する。
また、無線通信部11は、誤り訂正した量を示すエラーレートを含む信号をCPU17へ出力する。
なお、エラーレートは、誤り訂正するデータ量が多いほど大きい値になる。
【0035】
受信信号強度検出部12は、無線通信部11が受信した電波の波形信号が入力される。
そして、受信信号強度検出部12は、受信電波の波形信号から、受信信号強度を示すRSSI(Received Signal Strength Indicator)値を生成し、生成したRSSI値を含む信号をCPU17へ出力する。RSSI値の単位は、dBμVである。
【0036】
受信エラー検出部13は、無線通信部11が受信した電波の波形信号が入力される。
そして、受信エラー検出部13は、受信信号に含まれるエラービットを検出する。受信エラー検出部13は、エラービットを検出すると、エラー検出信号を出力する。
【0037】
エラーレート算出部14は、受信エラー検出部13に接続される。
そして、エラーレート算出部14は、たとえば受信信号毎にエラー検出信号の個数をカウントする。また、エラーレート算出部14は、カウントしたエラーレート値を含む信号をCPU17へ出力する。
【0038】
操作部15は、複数の操作キーを有する。
操作キーには、たとえばファンクションキー、電源キー、通話キー、数字キー、文字キー、発信キーなどがある。操作キーは、図3に示すように、PHS端末2の筐体101の表面に配置される。
そして、操作部15は、ユーザにより操作された操作キーに対応する信号をCPU17へ出力する。
【0039】
表示部16は、図示外のLCD(Liquid Crystal Display Device)や有機EL(Electro-Luminescence)デバイスなどを有する。
表示部16は、図3に示すように、PHS端末2の表面に配置される。
そして、表示部16は、CPU17から入力された信号に含まれる表示データを表示する。これにより、表示部16は、たとえばPHS端末2の現在位置を地図上に示す画像を表示する。
【0040】
音声モデム部20は、スピーカ22およびマイクロフォン23に接続される。
音声モデム部20は、マイクロフォン23に入力された音声をサンプリングし、音声データを含む信号をCPU17へ出力する。
また、音声モデム部20は、CPU17からの入力信号に含まれる音声データによりスピーカ22を駆動する。これにより、スピーカ22から音声データに対応する音声が出力される。
【0041】
タイマ19は、時間を計測する。
そして、タイマ19は、計測した時間情報を含む信号をCPU17へ出力する。
【0042】
記憶部18は、CPU17が読み込んで実行可能なプログラム、CPU17により読み書きされるデータなどを記憶する。
記憶部18に記憶されるデータには、後述する図5に示すように、第1サーチリスト41、第2サーチリスト42、非選択リスト43、合成リスト44、選択リスト45、位置データ46などがある。
これらのデータは、PHS端末2の自端末位置推定および表示のために一時的に生成されるデータである。
なお、記憶部18に記憶されるプログラムは、PHS端末2の出荷前に記憶されたものでも、出荷後に記憶されたものであってもよい。
そして、出荷後に記憶部18に記憶されるプログラムは、たとえばCD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたものをインストールしたものであればよい。
または、出荷後に記憶部18に記憶されるプログラムは、インターネットなどの伝送媒体を介してダウンロードしたものをインストールしたものであってもよい。
【0043】
CPU17は、記憶部18に記憶されるプログラムを読み込んで実行するコンピュータである。そして、CPU17は、PHS端末2の制御部として機能する。
【0044】
図5に、CPU17がプログラムを実行した場合にPHS端末2に実現される機能ブロックを示す。図5は、PHS端末2の現在位置を推定するための機能ブロック図である。
図5に示すように、PHS端末2には、オープンサーチ部31(CS_SCH)と、判定部32(NG_SEL)と、削除部33(GD_SEL)と、選択部34(CS_SEL)と、演算部35(P_CAL)と、表示制御部36(DP_CTRL)とが実現される。
また、CPU17は、記憶部18に、第1サーチリスト41(LST1)、第2サーチリスト42(LST2)、非選択リスト43(UN_LST)、合成リスト44(CBY_LST)、選択リスト45(SEL_LST)、位置データ46(P_DAT)を記憶させる。
【0045】
オープンサーチ部31は、無線通信部11を用いて上述した図2のオープンサーチ処理を、所定の周期で繰り返し実行する。
たとえば、オープンサーチ部31は、タイマ19に所定の周期を計測させ、タイマ19が所定の周期を計測すると、オープンサーチ処理を実行する。オープンサーチ処理により、オープンサーチ部31は、PHS端末2が通信可能な複数の基地局3を検索する。
また、オープンサーチ部31には、無線通信部11、受信信号強度検出部12およびエラーレート算出部14からデータが入力される。そして、オープンサーチ部31は、各回のオープンサーチ処理において電波を受信した複数の基地局3の情報を、記憶部18に保存する。
オープンサーチ部31が各回のオープンサーチ処理において取得する基地局3の情報には、基地局3から受信した受信信号強度を示すRSSI値、受信電波に含まれるCS−IDおよび基地局3の設置地点情報、受信信号のエラーレートが含まれる。
【0046】
図6は、図5中の第1サーチリスト41のデータ構造の説明図である。第2サーチリスト42も、同様のデータ構造を有する。
第1サーチリスト41は、1回のオープンサーチ処理においてオープンサーチ部31が取得した複数の基地局3のレコードを有する。また、第1サーチリスト41は、基地局3毎の複数のレコードを有する。
レコードには、基地局3のCS−ID、RSSI値、エラーレート値、基地局3の設置地点情報が含まれる。図6では、基地局3の設置地点情報として、緯度経度値が含まれている。
【0047】
そして、オープンサーチ部31は、オープンサーチ処理を実行する度に、第1サーチリスト41および第2サーチリスト42を交互に選択し、基地局3の情報を保存する。
これにより、第1サーチリスト41および第2サーチリスト42は、最後に実行した最新回のオープンサーチ処理で検出した複数の基地局3情報と、前回のオープンサーチ処理で検出した複数の基地局3の情報とを記憶する。
記憶部18は、第1サーチリスト41および第2サーチリスト42により、2回分の電波についての情報を記憶する。
【0048】
判定部32は、オープンサーチが実行される度に、記憶部18に記憶される第1サーチリスト41の情報および第2サーチリスト42の情報とを比較し、電波環境が変化した基地局3を判定する。
具体的には、判定部32は、最新回のサーチ結果を前回のサーチ結果と比較し、CS−IDが一致する基地局3について、最新回のRSSI値が前回のRSSI値より所定値(たとえば−15dB)以上下がったか否かを判定する。このRSSI値の変化量(差分)の単位はdBである。
また、判定部32は、RSSI値が所定値以上下がった基地局3の情報を、電波環境が変化した基地局3の情報として記憶部18に保存する。
【0049】
図7は、図5中の非選択リスト43のデータ構造の説明図である。
非選択リスト43は、予め設定された所定の固定数(たとえば100個)のレコードを有する。
そして、非選択リスト43には、判定部32により電波環境が変化したと判定された基地局3の情報が、FIFO(First In First Out)方式により登録される。
よって、101個目の基地局3が非選択リスト43に登録される場合、最初の1番目の基地局3の情報は、非選択リスト43から自動的に削除される。
また、非選択リスト43のレコードには、判定部32により電波環境が変化したと判定された基地局3の情報として、基地局3のCS−IDと、RSSI値と、エラーレート値とが保存される。
この非選択リスト43のレコードに保存されるRSSI値およびエラーレート値は、判定部32がその基地局3について判定した時点において、前回のサーチ結果に含まれているRSSI値およびエラーレート値である。
よって、非選択リスト43のレコードに保存されるRSSI値およびエラーレート値は、その基地局3の電波環境が変化する前の良好な状態での値となる。
【0050】
削除部33は、オープンサーチが実行される度に、非選択リスト43の情報と最新回のサーチ結果の情報とを比較し、電波環境が戻った基地局3を判定する。
具体的には、削除部33は、非選択リスト43に登録されている基地局3について、最新回のサーチ結果を検索する。
そして、非選択リスト43に登録されている基地局3とCS−IDが一致する基地局3が最新回のサーチ結果に含まれている場合、削除部33は、それらのRSSI値を比較する。
また、削除部33は、非選択リスト43のRSSI値を基準として、最新回のRSSI値の低下量が所定値(たとえば−15dB)以内であるか否かを判定する。
また、削除部33は、RSSI値の低下量が所定値以内である場合、基地局3の電波環境が戻ったと判定し、その基地局3の情報を非選択リスト43から削除する。
【0051】
選択部34は、オープンサーチが実行される度に、記憶部18に記憶されている最新回のサーチ結果から、PHS端末2の現在位置の演算に用いる複数の基地局3を選択する。
また、選択部34は、最新回のサーチ結果から、電波環境が変化したと判断される基地局3以外の基地局3を優先して選択する。
具体的には、選択部34は、まず、記憶部18に記憶されている最新回のサーチ結果に、非選択リスト43に登録されている基地局3であるか否かを示す選択フラグを付加した合成リスト44を生成する。非選択リスト43に登録されている基地局3は、受信環境が変化した基地局3である。
次に、選択部34は、合成リスト44に含まれる複数の基地局3のレコードを、RSSI値が大きい順番にソートする。
次に、選択部34は、ソート後の合成リスト44において、非選択リスト43に登録されていることを示す値の選択フラグが対応付けられていない上位の所定数の基地局3のレコードを選択する。
なお、合成リスト44において、非選択リスト43に登録されていることを示す値(たとえば「0」)の選択フラグが対応付けられていない基地局3が所定数含まれていない場合、選択部34は、不足する数の基地局3のレコードを合成リスト44の上位から更に選択する。
【0052】
図8は、図5中の合成リスト44のデータ構造の説明図である。図8の合成リスト44は、図6の第1サーチリスト41と、図7の非選択リスト43とに基づいて生成された合成リスト44である。
合成リスト44は、最新回のサーチ結果に含まれる複数の基地局3のレコードを有する。
レコードには、基地局3のCS−ID、RSSI値、エラーレート値、および非選択リスト43への登録の有無を示す選択フラグが含まれる。
図8の例では、図7の非選択リスト43に基地局3が登録されている場合には選択フラグの値が「0」となり、登録されていない場合には「1」となっている。
なお、選択部34は、図8の合成リスト44を生成した後、図8の合成リスト44をソートし、上位のたとえば3台の基地局3を選択する。図8の場合、選択部34は、第1基地局3-1と、第3基地局3-3と、第4基地局3-4とを選択することになる。
【0053】
図9は、図5中の選択リスト45のデータ構造の説明図である。図9の選択リスト45は、図8の合成リスト44に基づくリストである。
図9の選択リスト45は、3台の基地局3を選択した場合のリストである。
図9の選択リスト45には、第1基地局3-1と、第3基地局3-3と、第4基地局3-4とが登録されている。
選択リスト45は、PHS端末2の自端末位置演算に用いる複数の基地局3のレコードを有する。レコードには、選択された基地局3のCS−ID、RSSI値、基地局3の緯度経度値が含まれている。
【0054】
演算部35は、オープンサーチが実行される度に、更新された選択リスト45に含まれる複数の基地局3の情報を用いて、PHS端末2の現在位置を演算する。
具体的には、演算部35は、選択リスト45に含まれる3台の基地局3の緯度経度値とRSSI値とを用いて、三角法によりPHS端末2の現在位置を演算する。
また、演算部35は、演算したPHS端末2の現在位置の情報を、位置データ46として記憶部18に保存する。
【0055】
図10は、図5中の位置データ46のデータ構造の説明図である。
図10の位置データ46は、PHS端末2の現在位置を示す緯度値および経度値(N(P2),E(P2))を有する。
【0056】
図11は、演算部35による三角法による自端末位置演算方法の説明図である。
図11には、図1中の第1基地局3-1、第2基地局3-2、第3基地局3-3および第4基地局3-4が図示されている。また、基地局3の周囲には、基地局3を中心として、図6に示す基地局3のRSSI値に対応する半径の円が図示されている。
そして、図11に示すように、第1基地局3-1のRSSI値の円51と、第2基地局3-2のRSSI値の円52と、第3基地局3-3のRSSI値の円53とは、1点において重なる。
この3個の円の重なり位置が、三角法により演算される位置である。
また、このPHS端末2の演算位置は、図1の地点P1である。
これに対して、たとえば第1基地局3-1のRSSI値の円51と、第3基地局3-3のRSSI値の円53と、第4基地局3-4のRSSI値の円54とも、別の地点において重なる。
この地点は、図1のPHS端末2の地点P1とは異なる地点P1’である。
このように単純にRSSI値が高い第4基地局3-4を選択した場合には、三角法により演算さるPHS端末2の位置P1’は、PHS端末2の現実の位置P1とは異なる位置となる。
【0057】
表示制御部36は、PHS端末2の表示部16に、PHS端末2の現在位置を表示する。
具体的には、表示制御部36は、記憶部18から最新の位置データ46を読み込み、この位置データ46の周囲の地図データをさらに記憶部18などから取得する。
また、表示制御部36は、取得した地図の上に、位置データ46の地点を示すマークを合成した画像データを生成する。
また、表示制御部36は、生成した画像データを表示部16へ出力する。
これにより、PHS端末2の表示部16には、オープンサーチの結果に基づいて推定したPHS端末2の現在位置が表示される。
【0058】
図12は、図4のPHS端末2のCPU17により実行される現在位置の推定および表示処理のフローチャートである。
オープンサーチ部31は、タイマ19の計測時間に基づいて、オープンサーチ周期が経過したか否かを判断する(ステップST1)。
そして、タイマ19によりオープンサーチ周期の時間が計測されていない場合、オープンサーチ部31は、一端処理を終了する。
【0059】
オープンサーチ周期が計測されている場合、オープンサーチ部31は、オープンサーチ処理を実行する(ステップST2)。
これにより、無線通信部11は、複数の基地局3から電波を受信する。
【0060】
また、オープンサーチ部31は、電波を受信した基地局3の情報を記憶部18に保存する(ステップST3)。
このとき、オープンサーチ部31は、第1サーチリスト41および第2サーチリスト42のうち、前回に使用していない方のリストを選択し、選択したリストに情報を保存する。
オープンサーチ部31は、たとえば第1サーチリスト41を選択し、第1サーチリスト41に基地局3の情報を保存する。
これにより、記憶部18には、図6の第1サーチリスト41が生成される。
【0061】
オープンサーチ処理が終了すると、判定部32および削除部33は、非選択リスト43を更新する(ステップST4)。
たとえば第1サーチリスト41が今回更新された場合、判定部32は、第1サーチリスト41を今回の基地局3の情報を、前回の基地局3の情報を記憶する第2サーチリスト42と比較する。
そして、判定部32は、今回検出された複数の基地局3について、前回よりRSSI値が低下したか否かを判断する。
また、今回のRSSI値が所定値以上低下している場合、判定部32は、その基地局3の情報を非選択リスト43に登録する。
【0062】
また、削除部33は、非選択リスト43に登録された複数の基地局3について、RSSI値が復旧したか否かを判定する。
そして、今回更新された第1サーチリスト41においてRSSI値が復旧している場合、削除部33は、その基地局3の情報を非選択リスト43から削除する。
以上の処理により、記憶部18には、図7の非選択リスト43が記憶される。
【0063】
また、非選択リスト43が更新されると、選択部34は、PHS端末2の現在位置の演算に用いる複数の基地局3の選択処理を開始する。
具体的には、選択部34は、まず、今回更新された第1サーチリスト41に選択フラグを追加した合成リスト44を生成する(ステップST5)。
選択フラグの値は、非選択リスト43に登録されている基地局3については「0」となり、登録されてない基地局3については「1」となる。これにより、記憶部18には、図8の合成リスト44が生成される。
【0064】
合成リスト44を生成した後、選択部34は、合成リスト44の基地局3毎のレコードを、RSSI値の大きい順にソートする(ステップST6)。
図8の合成リスト44では、複数の基地局3の順番は、第1基地局3-1、第3基地局3-3、第4基地局3-4、第2基地局3-2、第5基地局3-5の順番にソートされる。
【0065】
合成リスト44をソートした後、選択部34は、ソート後の合成リスト44から上位3台の基地局3を選択する(ステップST7)。
このとき、選択部34は、選択フラグの値が「1」である上位3台の基地局3を選択する。
図8の合成リスト44をソートした場合、選択部34は、第1基地局3-1、第3基地局3-3および第4基地局3-4を選択する。
また、選択部34は、選択した複数の基地局3を記憶部18に保存する。
これにより、記憶部18には、図9の選択リスト45が生成される。
【0066】
基地局3の選択処理が終了すると、演算部35は、選択リスト45を用いて、PHS端末2の現在位置を三角法により演算する(ステップST8)。
また、演算部35は、演算により得たPHS端末2の現在位置を保存する。
これにより、記憶部18には、図10の位置データ46が記憶される。
【0067】
記憶部18に記憶される位置データ46が新たなオープンサーチ処理により更新されると、表示制御部36は、この位置データ46を読み込み、PHS端末2の現在位置を表示するための表示データを生成する。
具体的には、表示制御部36は、位置データ46が示す地点のマークを地図に合成した表示データを生成し、表示部16へ出力する。
これにより、PHS端末2の表示部16には、図3に示すように、PHS端末2の現在位置が表示される(ステップST9)。
【0068】
図13は、複数回のオープンサーチ処理における合成リストおよび非選択リスト43の内容の遷移を示す説明図である。
図13には、タイミングT1からT4の、連続する4回の合成リストおよび非選択リスト43が図示されている。
【0069】
1回目のオープンサーチ処理では、図13(A)に示すように、非選択リスト43には、基地局3が登録されてない。
そして、図13(B)に示すように、2回目のオープンサーチ処理において第5基地局3-5のRSSI値が「55(dBμV)」から「40」に低下すると、第5基地局3-5が非選択リスト43に登録される。
そのため、2回目の非選択リスト43には、第5基地局3-5のCS−IDと、直前の1回目のRSSI値「55」とが登録される。また、2回目の合成リスト44において、第5基地局3-5の選択フラグの値は「0」になる。
【0070】
また、図13(C)に示すように、3回目のオープンサーチ処理において第4基地局3-4のRSSI値が「60」から「45」に低下すると、第4基地局3-4が非選択リスト43に登録される。
そのため、3回目の非選択リスト43には、新たに第4基地局3-4のCS−IDと、直前の1回目のRSSI値「60」とが追加登録される。
非選択リスト43は、FIFO形式により所定数の基地局3の情報を記憶するので、前回のサーチにおいて登録された第5基地局3-5の情報は、上から2番目のレコードになる。
また、3回目の合成リスト44では、第4基地局3-4および第5基地局3-5の選択フラグの値が「0」になる。
この場合、第4基地局3-4のRSSI値および第5基地局3-5のRSSI値が第2基地局3-2のRSSI値より高いが、第1基地局3-1、第2基地局3-2および第3基地局3-3が、PHS端末2の現在位置演算に用いる3台の基地局3として選択される。
【0071】
さらに、図13(D)に示すように、4回目のオープンサーチ処理において、第4基地局3-4のRSSI値が「45」のままであり、かつ、第5基地局3-5のRSSI値が「50」まで復旧したとする。
この場合、非選択リスト43に登録された第4基地局3-4のRSSI値と比較して、第4基地局3-4のRSSI値は全く復旧していない。
また、非選択リスト43に登録された第5基地局3-5のRSSI値と比較して、第5基地局3-5のRSSI値も十分に復旧していない。
そのため、第4基地局3-4および第5基地局3-5は、非選択リスト43から削除されない。
その結果、4回目の合成リスト44では、第4基地局3-4および第5基地局3-5の選択フラグの値が「0」になる。
この場合、第4基地局3-4のRSSI値および第5基地局3-5のRSSI値が第2基地局3-2のRSSI値より高いが、第1基地局3-1、第2基地局3-2および第3基地局3-3が、PHS端末2の現在位置演算に用いる3台の基地局3として選択される。
【0072】
このように3回目の合成リスト44および4回目の合成リスト44では、第4基地局3-4および第5基地局3-5のRSSI値は共に、第2基地局3-2のRSSI値より高い。
しかしながら、第4基地局3-4および第5基地局3-5は、選択フラグの値が「0」であるため、PHS端末2の現在位置演算に用いる3台の基地局3として選択されない。
特に、2回目のオープンサーチ処理により非選択リスト43に登録された第5基地局3-5は、4回目のオープンサーチ処理においてRSSI値が「50」まで回復している。4回目のRSSI値は、3回目のRSSI値「45」より改善されている。
しかしながら、第5基地局3-5について良好と推定された1回目のRSSI値と比較して十分に回復していない。
そのため、第5基地局3-5は、非選択リスト43に登録されたままとなり、PHS端末2の現在位置演算に用いる基地局3として選択されない。
【0073】
このように本実施形態のPHS端末2では、前回のオープンサーチ処理時で判断した電波環境を含めて、PHS端末2の現在位置演算に用いる複数の基地局3を選択する。
そのため、本実施形態のPHS端末2は、たとえばマルチパス電波などにより偶発的にRSSI値が改善するような基地局3が発生したとしても、その基地局3以外の基地局3を優先的に選択することができる。
なお、RSSI値は、たとえばPHS端末2の使用者が移動したり、PHS端末2の周囲の電波環境が変化したりした場合に、マルチパス電波などにより偶発的に改善することがある。
【0074】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0075】
たとえば上記実施形態では、選択部34は、RSSI値を含む合成リスト44を生成し、RSSI値に基づいてPHS端末2の現在位置演算に用いる基地局3を選択している。
この他にも例えば、選択部34は、エラーレートを含む合成リスト44を生成し、エラーレート値に基づいてPHS端末2の現在位置演算に用いる基地局3を選択してもよい。
また、選択部34は、RSSI値およびエラーレート値に基づいて、PHS端末2の現在位置演算に用いる基地局3を選択してもよい。
【0076】
図14は、図8の合成リスト44の変形例の説明図である。
図14の合成リスト44は、判定部32により、RSSI値が「45」に低下し、かつエラーレート値が「4」となった第4基地局3-4および第5基地局3-5が非選択リスト43に登録されている場合の例である。
そのため、図14の合成リスト44では、第4基地局3-4の選択フラグと、第5基地局3-5の選択フラグとが「0」となっている。
図14の合成リスト44において、たとえば単にRSSI値が高い順番に複数の基地居を選択した場合、第1基地局3-1、第4基地局3-4および第5基地局3-5が選択される。
これに対して、本発明の選択部34は、選択フラグが立っていない第1基地局3-1、第2基地局3-2および第3基地局3-3を選択する。
これにより、本発明では、マルチパスなどの影響を受けていない良好な通信環境の基地局3を用いて、PHS端末2の位置を正確に演算することができる。
【0077】
なお、図14の合成リスト44が生成される場合、判定部32は、たとえば最新回での受信信号のエラーレートが、過去の受信信号のエラーレートより上がった基地局3については、RSSI値に関係なく、非選択リスト43に登録すればよい。
この判定方法では、判定部32は、エラーレートに基づいて、基地局3の電波環境を推定する。また、選択部34は、エラーレートが低い基地局3を選択することができる。
この他にも例えば、判定部32は、エラーレート値が所定閾値内である場合、RSSI値との組み合わせにより、基地局3の電波環境(第1電波環境)を推定してもよい。
さらに他にも例えば、判定部32は、エラーレート値が所定閾値外である場合においても、RSSI値との組み合わせにより、基地局3の電波環境(第2電波環境)を推定してもよい。
また、判定部32は、屋外における環境別に、閾値またはステップを可変するようにしてもよい。これにより、判定部32は、環境に応じて最適な基地局3を選択し、その結果として、選択部34は、現在位置を高精度に演算することができる。
【0078】
上記実施の形態では、複数の基地局3は、スーパーフレーム毎に空いている下りスロットTを時分割多重で用いて、基地局3の情報をPHS端末2へ送信している。
この他にも例えば、複数の基地局3は、周波数分割多重方式などによりそれぞれの基地局3の情報を多重化して送信してもよい。
この場合、PHS端末2では、無線通信部11が受信した電波の信号をバンドパスフィルタでフィルタリングし、受信信号強度検出部12がフィルタリング後の信号に基づいて基地局3の受信電波のRSSI値を生成すればよい。
これにより、受信信号強度検出部12は、基地局3毎の受信電波のRSSI値を得ることができる。
【0079】
上記実施の形態では、PHS端末2は、受信信号強度検出部12をハードウェアとして備え、基地局3情報取得部、ソート部、相互距離判定部32、基地局3選択部34、位置推定部、および地図表示制御部36がソフトウェアとして実現されている。
この他にも例えば、これらの全ての機能がハードウェアにより実現されていても、これらの全ての機能がソフトウェアにより実現されていてもよい。
【0080】
また、上記実施の形態は、PHS端末2の例である。
この他にも例えば、本発明は、PHS端末2以外の携帯無線端末の自端末位置演算にも適用できる。
このような携帯無線端末としては、たとえば携帯電話機がある。
また、無線通信機能を有する携帯ゲーム機器、PDA、パーソナルコンピュータ、携帯ナビゲーション機器、携帯再生機器などの携帯無線端末において、本発明の自端末位置演算を使用してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…無線通信システム、2…PHS端末(携帯無線端末)、3…基地局、11…無線通信部、12…受信信号強度検出部(第1検出部)、13…受信エラー検出部(第2検出部)、14…エラーレート算出部、18…記憶部、31…オープンサーチ部、32…判定部、33…削除部、34…選択部、35…演算部、41…第1サーチリスト、42…第2サーチリスト、43…非選択リスト、44…合成リスト
【技術分野】
【0001】
本発明は、自端末位置を演算する携帯無線端末および、自端末位置演算のための基地局の選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、無線端末に接続される位置推定装置を開示する。
そして、位置推定装置は、無線端末から信号強度情報を受信する。
また、位置推定装置は、受信した信号強度情報に含まれる基地局の識別情報が記憶部に未登録である場合には、信号強度情報と基地局の位置情報とに基づいて無線端末の位置を推定する。
また、位置推定装置は、推定した無線端末の位置に応じた所定の位置情報と、基地局の識別情報とを対応付けて、記憶部に登録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−104029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、たとえば三角法により無線端末の位置を演算する場合、複数の基地局の位置情報と、複数の基地局から無線端末までの距離情報が必要である。
そして、特許文献1に開示されるように、無線端末では、この距離情報として受信信号強度を利用する。
【0005】
しかしながら、基地局からの受信信号強度を、基地局と無線端末との相対距離を示す値として用いた場合、電波障害物の存在などにより、演算位置に大きな誤差が含まれることがある。
たとえば無線端末の近くに、電波遮蔽物により遮られた基地局が存在する場合、基地局の送信電波についての強い反射波などが発生するため、その基地局についての受信信号強度は、遠くに位置する他の基地局よりも高くなる。
しかしながら、この電波遮蔽物により遮られた基地局の受信信号強度では、基地局から無線端末への直接波信号による強度ではなく、電波遮蔽物を迂回した反射波信号による強度が支配的である。
そして、電波遮蔽物により遮られた基地局の受信信号強度を用いて無線端末の位置を三角法などにより演算した場合、基地局に対する無線端末の相対距離を誤ることになる。
一般的には、実際の距離よりも遠くにあると仮定してしまうことになる。
その結果、演算した無線端末の位置は、現実の無線端末の位置に対して大きな誤差を含むことになる。
【0006】
このように無線端末の位置推定では、電波障害物が存在しても、位置推定誤差の精度を改善することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点の携帯無線端末は、複数の基地局から位置情報を含む電波を受信する無線通信部と、前記無線通信部が受信した電波の受信信号強度を検出する第1検出部と、受信した前記基地局の位置情報および検出した前記受信信号強度を含む、受信した複数の基地局の情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された複数の基地局の情報から、自端末の位置の演算に用いる複数の基地局を選択する選択部と、選択された前記複数の基地局の前記位置情報および前記受信信号強度から、前記自端末の位置を演算する演算部とを有し、前記記憶部は、前記基地局の情報として、該基地局から受信した複数回分の前記電波についての情報を記憶し、前記選択部は、前記記憶部に記憶されている複数の基地局についての複数回分の前記電波の情報に基づいて、前記自端末に対する電波環境が変化したと判断される基地局以外の基地局を優先して、複数の基地局を選択する。
【0008】
好適には、前記選択部は、最新回の前記電波の受信信号強度が、過去の前記電波の受信信号強度より下がった基地局以外の基地局を優先して選択してもよい。
【0009】
好適には、前記携帯無線端末は、前記無線通信部が受信した信号のエラーを検出する第2検出部と、前記第2検出部により検出されたエラーをカウントしてエラーレートを算出するエラーレート算出部とを有し、前記記憶部は、前記基地局の各回分の情報として、各回の受信電波についての前記エラーレートを記憶し、前記選択部は、最新回の受信信号のエラーレートが、過去の回の受信信号のエラーレートより上がった基地局以外の基地局を優先して選択してもよい。
【0010】
好適には、前記携帯無線端末は、前記無線通信部により複数の基地局を検索するオープンサーチを繰り返し実行するオープンサーチ部を有し、前記記憶部は、最新回のオープンサーチにより検出された複数の基地局の情報と、前回のオープンサーチにより検出された複数の基地局の情報とを記憶してもよい。
【0011】
好適には、前記携帯無線端末は、前記記憶部に記憶される最新回の情報と前回の情報とを比較し、電波環境が変化した基地局を判定する判定部を有し、前記記憶部は、前記判定部により前記電波環境が変化したと判断された基地局の情報が登録される非選択リストを記憶し、前記選択部は、最新回のオープンサーチにより検出された複数の基地局のうち、前記非選択リストに登録されていない基地局を、前記非選択リストに登録されている基地局より優先して選択してもよい。
【0012】
好適には、前記判定部は、前記基地局からの受信信号強度と信号のエラーレートとの組み合わせに基づいて、電波環境が変化した基地局を判定してもよい。
【0013】
好適には、前記判定部は、前記基地局の信号のエラーレートが所定の閾値内である場合、受信信号強度との組み合わせにより、前記基地局の第1電波環境を推定してもよい。
【0014】
好適には、前記判定部は、前記基地局の信号のエラーレートが所定の閾値外である場合、受信信号強度との組み合わせにより、前記基地局の第2電波環境を推定してもよい。
【0015】
好適には、前記選択部は、前記記憶部に記憶されている最新回の複数の基地局の情報に、前記非選択リストの登録情報に基づく受信環境の変化の有無を示す選択フラグを追加した合成リストを生成し、前記合成リストに含まれる複数の基地局の情報を、受信信号強度が高い基地局の順番にソートし、ソート後の前記合成リストにおいて、受信環境が変化したことを示す選択フラグに対応付けられていない上位の所定数の基地局を選択してもよい。
【0016】
好適には、前記非選択リストは、所定数の基地局をFIFO方式により登録可能であり、新たな基地局の登録時に、前記所定数を超えた古い基地局の情報が自動的に削除されてもよい。
【0017】
好適には、前記非選択リストは、電波環境が変化した基地局として登録された基地局の情報として、登録時点における前回のオープンサーチにより検出された該基地局の受信信号強度の情報を記憶し、前記携帯無線端末は、各回のオープンサーチにおいて検出される基地局の受信信号強度と、前記非選択リストに登録された基地局の受信信号強度とを比較し、前記非選択リストに登録されている基地局の電波環境が戻ったと判断した場合に、前記非選択リストから該基地局の情報を削除する削除部を有してもよい。
【0018】
好適には、前記選択部は、3台の基地局を選択し、前記演算部は、前記選択部により選択された前記3台の基地局の位置情報および受信信号強度から、三角法により前記携帯無線端末の位置を演算してもよい。
【0019】
本発明の第2の観点の基地局の選択方法は、携帯無線端末に設けられ、無線通信部および記憶部が接続された制御部が、前記携帯無線端末の位置を演算するために実行する基地局の選択方法であって、前記無線通信部により周辺の複数の基地局を繰り返しサーチするステップと、各回のサーチにより電波を受信した複数の基地局の情報として、受信した複数の基地局の位置情報および受信信号強度を含む情報を前記記憶部に保存し、前記記憶部に複数回分のサーチによる情報を蓄積するステップと、前記記憶部に記憶されている複数の基地局についての複数回分のサーチ情報に基づいて、前記携帯無線端末に対する電波環境が変化した基地局を判定するステップと、前記記憶部に記憶されている複数の基地局から、前記電波環境が変化したと判断された基地局以外の基地局を優先して、前記携帯無線端末の位置を演算するために使用する複数の基地局を選択するステップとを有する。
【0020】
本発明の第3の観点の基地局の選択方法は、携帯無線端末に設けられ、無線通信部および記憶部が接続された制御部が、前記携帯無線端末の位置を演算するために実行する基地局の選択方法であって、前記無線通信部により周辺の複数の基地局を繰り返しサーチするステップと、各回のサーチにより電波を受信した複数の基地局の情報として、受信した複数の基地局の位置情報、受信信号強度および信号のエラーレートを含む情報を前記記憶部に保存し、前記記憶部に複数回分のサーチによる情報を蓄積するステップと、前記記憶部に記憶されている複数の基地局についての複数回分のサーチ情報に基づいて、前記携帯無線端末に対する電波環境が変化した基地局を判定するステップと、前記記憶部に記憶されている複数の基地局から、前記電波環境が変化したと判断された基地局以外の基地局を優先して、前記携帯無線端末の位置を演算するために使用する複数の基地局を選択するステップとを有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、電波障害物が存在しても、携帯無線端末の位置を精度よく演算できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る携帯無線端末を利用した無線通信システムの構成図である。
【図2】図2は、図1の基地局とPHS端末との通信方式の説明図である。
【図3】図3は、図1のPHS端末の外観図である。
【図4】図4は、図3のPHS端末のハードウェア構成のブロック図である。
【図5】図5は、図3のPHS端末の現在位置を推定するための機能ブロック図である。
【図6】図6は、図5の第1サーチリストのデータ構造の一例の説明図である。
【図7】図7は、図5の非選択リストのデータ構造の一例の説明図である。
【図8】図8は、図5の合成リストのデータ構造の一例の説明図である。
【図9】図9は、図5の選択リストのデータ構造の一例の説明図である。
【図10】図10は、図5の位置データのデータ構造の一例の説明図である。
【図11】図11は、図5の演算部による三角法による自端末位置演算方法の説明図である。
【図12】図12は、図4のCPUが実行する現在位置の推定処理のフローチャートである。
【図13】図13は、複数回のオープンサーチ処理における合成リストおよび非選択リストの内容の遷移の一例を示す説明図である。
【図14】図14は、図8の合成リストの変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る携帯無線端末を利用した無線通信システム1の構成図である。
図1の無線通信システム1は、携帯無線端末としてのPHS端末2と、複数の基地局3とを有する。
図1には、PHS端末2と通信可能な複数の基地局3として、第1基地局3-1、第2基地局3-2、第3基地局3-3、第4基地局3-4および第5基地局3-5の5台の基地局3が図示されている。
この無線通信システム1において、PHS端末2は、複数の基地局3から電波を受信して自端末の位置を演算により推定する。
【0025】
第1基地局3-1、第2基地局3-2、第3基地局3-3、第4基地局3-4および第5基地局3-5は、図示しないメモリに、それぞれの設置地点を示す設置地点情報と、基地局3毎に固有のCS−ID(Cell Station IDentification number)とを記憶する。
たとえば、図1上部に描画された第1基地局3-1は、設置地点情報として、第1基地局3-1が設置された地点の緯度値「N1」および経度値「E1」を記憶する。
第2基地局3-2は、設置地点情報として、第2基地局3-2が設置された地点の緯度値「N2」および経度値「E2」を記憶する。
第3基地局3-3は、設置地点情報として、第3基地局3-3が設置された地点の緯度値「N3」および経度値「E3」を記憶する。
第4基地局3-4は、設置地点情報として、第4基地局3-4が設置された地点の緯度値「N4」および経度値「E4」を記憶する。
第5基地局3-5は、設置地点情報として、第5基地局3-5が設置された地点の緯度値「N5」および経度値「E5」を記憶する。
なお、基地局3が記憶する緯度値および経度値は、GPSなどで使用される世界測地系の緯度経度値であっても、日本工業規格で規定される緯度経度値であってもよい。また、緯度値および経度値は、無線通信システム1において独自に設定した値でもよい。
そして、基地局3は、設置地点情報およびCS−IDを含む電波を周期的に出力する。
【0026】
図1において、PHS端末2は、図面の中央の位置P1から、建物4内の位置P2へ移動している。
建物4内では、PHS端末2は、図面の右および上下の三方向が電波遮蔽物により遮蔽される。
なお、第1基地局3-1、第2基地局3-2、第3基地局3-3、第4基地局3-4および第5基地局3-5は、建物4外に設置されている。第4基地局3-4は、建物4に最も近い位置に設置されている。
【0027】
そして、PHS端末2が建物4外の地点P1に位置する場合、第1基地局3-1、第2基地局3-2、第3基地局3-3および第4基地局3-4は、PHS端末2と見通し電波で通信できる。
これに対して、第5基地局3-5の電波は、建物4により遮蔽される。
【0028】
また、PHS端末2が建物4内の地点P2に位置する場合、建物4の左側に設置された第1基地局3-1、第2基地局3-2および第3基地局3-3は、PHS端末2と見通し電波で通信できる。
これに対して、第4基地局3-4の電波および第5基地局3-5の電波は、建物4により遮蔽される。
そのため、建物4に最も近い位置にある第4基地局3-4の電波は、第4基地局3-4からPHS端末2への直接波ではなく、電波遮蔽物を迂回した反射波が支配的になる。
【0029】
図2は、基地局3とPHS端末2との通信方式の説明図である。図2において、横軸は時間である。
基地局3とPHS端末2とは、TDMA/TDD(時間分割多重アクセス/時間分割複信)方式の電波を用いて、互いに通信データを送受する。
複数の基地局3は、自律分散制御によりPHS端末2と送受する通信データを制御する。
TDD方式で通信データを送受する基地局3とPHS端末2とは、図2に示すように、4個の下りスロットと4個の上りスロットで構成されるフレーム単位で双方向通信する。
上りスロットは、PHS端末2が基地局3へ通信データを送信するスロットである。
下りスロットは、基地局3がPHS端末2へ通信データを送信するスロットである。
下りスロットの通信データには、たとえば基地局3の設置地点情報、CS−IDなどの情報が含まれる。
そして、PHS端末2は、1番目の下りスロットT1(制御チャネル)を受信することで、PHS端末2と通信可能な基地局3の設置地点情報とCS−IDとを取得する。
【0030】
なお、複数の基地局3のゾーン(マイクロセル:電波到達範囲の一部)は、互いに重ねて設定される。
そして、複数の基地局3は、図2に示すように、所定数の複数のフレームで構成されるスーパーフレーム毎に、自局の設置地点情報およびCS−IDを含む電波を出力する。
具体的には、基地局3は、各々の自律分散制御により、スーパーフレーム中に空きフレームを検出する。そして、基地局3は、検出した空きフレームの下りスロットT1において、自局の設置地点情報およびCS−IDを含む電波を出力する。
このように複数の基地局3は、複数のフレームによる複数の下りスロットT1を時分割に使用して、設置地点情報およびCS−IDを送信する。
また、複数の基地局3は、それらの複数のゾーンが互いに重なっていたとしても、互いの電波を干渉させることなく、それぞれの電波到達範囲内に存在する複数のPHS端末2に対して自局の設置地点情報およびCS−IDを送信できる。
【0031】
また、PHS端末2は、無線通信に最適な基地局3を検索するために、オープンサーチ処理を実行する。オープンサーチ処理では、PHS端末2は、オープンサーチ期間において、通信可能な基地局3の検出処理を実行する。
そして、PHS端末2は、オープンサーチ期間に図2のスーパーフレームを受信し、基地局3が送信した下りスロットの通信データを受信する。
たとえばPHS端末2は、図2のスーパーフレームにおいて、第1基地局3-1、第2基地局3-2、第3基地局3-3、第4基地局3-4および第5基地局3-5から、下りスロットの通信データを受信する。
なお、1フレームが5msであり、オープンサーチ期間が1.2sである場合、PHS端末2は、最大で240台の基地局3から下りスロットの通信データを受信可能である。
【0032】
図3は、図1のPHS端末2の外観図である。PHS端末2は、ストレート型の筐体101を有する。筐体101の前面には、表示部16と、操作部15の複数の操作キーとが配置される。図3の表示部16には、PHS端末2の現在位置が地図上に表示されている。
【0033】
図4は、図3のPHS端末2のハードウェア構成のブロック図である。
PHS端末2は、無線通信部(RF)11、受信信号強度検出部(RSSI)12、受信エラー検出部(ERR)13、エラーレート算出部(CAL)14、操作部(KEY)15、表示部(DISP)16、CPU(Central Processing Unit)17、記憶部18(MEM)、タイマ(TMR)19、音声モデム部(MODEM)20およびこれらを接続するシステムバス21を有する。
【0034】
無線通信部11は、基地局3と通信チャネルを確立し、基地局3から割り当てられたスロットを用いて基地局3と通信データを含む電波を送受する。
そして、無線通信部11は、CPU17からの入力信号に含まれる通信データを符号化し、符号化データを変調して基地局3へ無線送信する。
また、無線通信部11は、基地局3から受信した電波から符号化データを検出し、符号化データの誤り訂正をした復号データを生成し、この復号データを含む信号をCPU17へ出力する。
また、無線通信部11は、誤り訂正した量を示すエラーレートを含む信号をCPU17へ出力する。
なお、エラーレートは、誤り訂正するデータ量が多いほど大きい値になる。
【0035】
受信信号強度検出部12は、無線通信部11が受信した電波の波形信号が入力される。
そして、受信信号強度検出部12は、受信電波の波形信号から、受信信号強度を示すRSSI(Received Signal Strength Indicator)値を生成し、生成したRSSI値を含む信号をCPU17へ出力する。RSSI値の単位は、dBμVである。
【0036】
受信エラー検出部13は、無線通信部11が受信した電波の波形信号が入力される。
そして、受信エラー検出部13は、受信信号に含まれるエラービットを検出する。受信エラー検出部13は、エラービットを検出すると、エラー検出信号を出力する。
【0037】
エラーレート算出部14は、受信エラー検出部13に接続される。
そして、エラーレート算出部14は、たとえば受信信号毎にエラー検出信号の個数をカウントする。また、エラーレート算出部14は、カウントしたエラーレート値を含む信号をCPU17へ出力する。
【0038】
操作部15は、複数の操作キーを有する。
操作キーには、たとえばファンクションキー、電源キー、通話キー、数字キー、文字キー、発信キーなどがある。操作キーは、図3に示すように、PHS端末2の筐体101の表面に配置される。
そして、操作部15は、ユーザにより操作された操作キーに対応する信号をCPU17へ出力する。
【0039】
表示部16は、図示外のLCD(Liquid Crystal Display Device)や有機EL(Electro-Luminescence)デバイスなどを有する。
表示部16は、図3に示すように、PHS端末2の表面に配置される。
そして、表示部16は、CPU17から入力された信号に含まれる表示データを表示する。これにより、表示部16は、たとえばPHS端末2の現在位置を地図上に示す画像を表示する。
【0040】
音声モデム部20は、スピーカ22およびマイクロフォン23に接続される。
音声モデム部20は、マイクロフォン23に入力された音声をサンプリングし、音声データを含む信号をCPU17へ出力する。
また、音声モデム部20は、CPU17からの入力信号に含まれる音声データによりスピーカ22を駆動する。これにより、スピーカ22から音声データに対応する音声が出力される。
【0041】
タイマ19は、時間を計測する。
そして、タイマ19は、計測した時間情報を含む信号をCPU17へ出力する。
【0042】
記憶部18は、CPU17が読み込んで実行可能なプログラム、CPU17により読み書きされるデータなどを記憶する。
記憶部18に記憶されるデータには、後述する図5に示すように、第1サーチリスト41、第2サーチリスト42、非選択リスト43、合成リスト44、選択リスト45、位置データ46などがある。
これらのデータは、PHS端末2の自端末位置推定および表示のために一時的に生成されるデータである。
なお、記憶部18に記憶されるプログラムは、PHS端末2の出荷前に記憶されたものでも、出荷後に記憶されたものであってもよい。
そして、出荷後に記憶部18に記憶されるプログラムは、たとえばCD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたものをインストールしたものであればよい。
または、出荷後に記憶部18に記憶されるプログラムは、インターネットなどの伝送媒体を介してダウンロードしたものをインストールしたものであってもよい。
【0043】
CPU17は、記憶部18に記憶されるプログラムを読み込んで実行するコンピュータである。そして、CPU17は、PHS端末2の制御部として機能する。
【0044】
図5に、CPU17がプログラムを実行した場合にPHS端末2に実現される機能ブロックを示す。図5は、PHS端末2の現在位置を推定するための機能ブロック図である。
図5に示すように、PHS端末2には、オープンサーチ部31(CS_SCH)と、判定部32(NG_SEL)と、削除部33(GD_SEL)と、選択部34(CS_SEL)と、演算部35(P_CAL)と、表示制御部36(DP_CTRL)とが実現される。
また、CPU17は、記憶部18に、第1サーチリスト41(LST1)、第2サーチリスト42(LST2)、非選択リスト43(UN_LST)、合成リスト44(CBY_LST)、選択リスト45(SEL_LST)、位置データ46(P_DAT)を記憶させる。
【0045】
オープンサーチ部31は、無線通信部11を用いて上述した図2のオープンサーチ処理を、所定の周期で繰り返し実行する。
たとえば、オープンサーチ部31は、タイマ19に所定の周期を計測させ、タイマ19が所定の周期を計測すると、オープンサーチ処理を実行する。オープンサーチ処理により、オープンサーチ部31は、PHS端末2が通信可能な複数の基地局3を検索する。
また、オープンサーチ部31には、無線通信部11、受信信号強度検出部12およびエラーレート算出部14からデータが入力される。そして、オープンサーチ部31は、各回のオープンサーチ処理において電波を受信した複数の基地局3の情報を、記憶部18に保存する。
オープンサーチ部31が各回のオープンサーチ処理において取得する基地局3の情報には、基地局3から受信した受信信号強度を示すRSSI値、受信電波に含まれるCS−IDおよび基地局3の設置地点情報、受信信号のエラーレートが含まれる。
【0046】
図6は、図5中の第1サーチリスト41のデータ構造の説明図である。第2サーチリスト42も、同様のデータ構造を有する。
第1サーチリスト41は、1回のオープンサーチ処理においてオープンサーチ部31が取得した複数の基地局3のレコードを有する。また、第1サーチリスト41は、基地局3毎の複数のレコードを有する。
レコードには、基地局3のCS−ID、RSSI値、エラーレート値、基地局3の設置地点情報が含まれる。図6では、基地局3の設置地点情報として、緯度経度値が含まれている。
【0047】
そして、オープンサーチ部31は、オープンサーチ処理を実行する度に、第1サーチリスト41および第2サーチリスト42を交互に選択し、基地局3の情報を保存する。
これにより、第1サーチリスト41および第2サーチリスト42は、最後に実行した最新回のオープンサーチ処理で検出した複数の基地局3情報と、前回のオープンサーチ処理で検出した複数の基地局3の情報とを記憶する。
記憶部18は、第1サーチリスト41および第2サーチリスト42により、2回分の電波についての情報を記憶する。
【0048】
判定部32は、オープンサーチが実行される度に、記憶部18に記憶される第1サーチリスト41の情報および第2サーチリスト42の情報とを比較し、電波環境が変化した基地局3を判定する。
具体的には、判定部32は、最新回のサーチ結果を前回のサーチ結果と比較し、CS−IDが一致する基地局3について、最新回のRSSI値が前回のRSSI値より所定値(たとえば−15dB)以上下がったか否かを判定する。このRSSI値の変化量(差分)の単位はdBである。
また、判定部32は、RSSI値が所定値以上下がった基地局3の情報を、電波環境が変化した基地局3の情報として記憶部18に保存する。
【0049】
図7は、図5中の非選択リスト43のデータ構造の説明図である。
非選択リスト43は、予め設定された所定の固定数(たとえば100個)のレコードを有する。
そして、非選択リスト43には、判定部32により電波環境が変化したと判定された基地局3の情報が、FIFO(First In First Out)方式により登録される。
よって、101個目の基地局3が非選択リスト43に登録される場合、最初の1番目の基地局3の情報は、非選択リスト43から自動的に削除される。
また、非選択リスト43のレコードには、判定部32により電波環境が変化したと判定された基地局3の情報として、基地局3のCS−IDと、RSSI値と、エラーレート値とが保存される。
この非選択リスト43のレコードに保存されるRSSI値およびエラーレート値は、判定部32がその基地局3について判定した時点において、前回のサーチ結果に含まれているRSSI値およびエラーレート値である。
よって、非選択リスト43のレコードに保存されるRSSI値およびエラーレート値は、その基地局3の電波環境が変化する前の良好な状態での値となる。
【0050】
削除部33は、オープンサーチが実行される度に、非選択リスト43の情報と最新回のサーチ結果の情報とを比較し、電波環境が戻った基地局3を判定する。
具体的には、削除部33は、非選択リスト43に登録されている基地局3について、最新回のサーチ結果を検索する。
そして、非選択リスト43に登録されている基地局3とCS−IDが一致する基地局3が最新回のサーチ結果に含まれている場合、削除部33は、それらのRSSI値を比較する。
また、削除部33は、非選択リスト43のRSSI値を基準として、最新回のRSSI値の低下量が所定値(たとえば−15dB)以内であるか否かを判定する。
また、削除部33は、RSSI値の低下量が所定値以内である場合、基地局3の電波環境が戻ったと判定し、その基地局3の情報を非選択リスト43から削除する。
【0051】
選択部34は、オープンサーチが実行される度に、記憶部18に記憶されている最新回のサーチ結果から、PHS端末2の現在位置の演算に用いる複数の基地局3を選択する。
また、選択部34は、最新回のサーチ結果から、電波環境が変化したと判断される基地局3以外の基地局3を優先して選択する。
具体的には、選択部34は、まず、記憶部18に記憶されている最新回のサーチ結果に、非選択リスト43に登録されている基地局3であるか否かを示す選択フラグを付加した合成リスト44を生成する。非選択リスト43に登録されている基地局3は、受信環境が変化した基地局3である。
次に、選択部34は、合成リスト44に含まれる複数の基地局3のレコードを、RSSI値が大きい順番にソートする。
次に、選択部34は、ソート後の合成リスト44において、非選択リスト43に登録されていることを示す値の選択フラグが対応付けられていない上位の所定数の基地局3のレコードを選択する。
なお、合成リスト44において、非選択リスト43に登録されていることを示す値(たとえば「0」)の選択フラグが対応付けられていない基地局3が所定数含まれていない場合、選択部34は、不足する数の基地局3のレコードを合成リスト44の上位から更に選択する。
【0052】
図8は、図5中の合成リスト44のデータ構造の説明図である。図8の合成リスト44は、図6の第1サーチリスト41と、図7の非選択リスト43とに基づいて生成された合成リスト44である。
合成リスト44は、最新回のサーチ結果に含まれる複数の基地局3のレコードを有する。
レコードには、基地局3のCS−ID、RSSI値、エラーレート値、および非選択リスト43への登録の有無を示す選択フラグが含まれる。
図8の例では、図7の非選択リスト43に基地局3が登録されている場合には選択フラグの値が「0」となり、登録されていない場合には「1」となっている。
なお、選択部34は、図8の合成リスト44を生成した後、図8の合成リスト44をソートし、上位のたとえば3台の基地局3を選択する。図8の場合、選択部34は、第1基地局3-1と、第3基地局3-3と、第4基地局3-4とを選択することになる。
【0053】
図9は、図5中の選択リスト45のデータ構造の説明図である。図9の選択リスト45は、図8の合成リスト44に基づくリストである。
図9の選択リスト45は、3台の基地局3を選択した場合のリストである。
図9の選択リスト45には、第1基地局3-1と、第3基地局3-3と、第4基地局3-4とが登録されている。
選択リスト45は、PHS端末2の自端末位置演算に用いる複数の基地局3のレコードを有する。レコードには、選択された基地局3のCS−ID、RSSI値、基地局3の緯度経度値が含まれている。
【0054】
演算部35は、オープンサーチが実行される度に、更新された選択リスト45に含まれる複数の基地局3の情報を用いて、PHS端末2の現在位置を演算する。
具体的には、演算部35は、選択リスト45に含まれる3台の基地局3の緯度経度値とRSSI値とを用いて、三角法によりPHS端末2の現在位置を演算する。
また、演算部35は、演算したPHS端末2の現在位置の情報を、位置データ46として記憶部18に保存する。
【0055】
図10は、図5中の位置データ46のデータ構造の説明図である。
図10の位置データ46は、PHS端末2の現在位置を示す緯度値および経度値(N(P2),E(P2))を有する。
【0056】
図11は、演算部35による三角法による自端末位置演算方法の説明図である。
図11には、図1中の第1基地局3-1、第2基地局3-2、第3基地局3-3および第4基地局3-4が図示されている。また、基地局3の周囲には、基地局3を中心として、図6に示す基地局3のRSSI値に対応する半径の円が図示されている。
そして、図11に示すように、第1基地局3-1のRSSI値の円51と、第2基地局3-2のRSSI値の円52と、第3基地局3-3のRSSI値の円53とは、1点において重なる。
この3個の円の重なり位置が、三角法により演算される位置である。
また、このPHS端末2の演算位置は、図1の地点P1である。
これに対して、たとえば第1基地局3-1のRSSI値の円51と、第3基地局3-3のRSSI値の円53と、第4基地局3-4のRSSI値の円54とも、別の地点において重なる。
この地点は、図1のPHS端末2の地点P1とは異なる地点P1’である。
このように単純にRSSI値が高い第4基地局3-4を選択した場合には、三角法により演算さるPHS端末2の位置P1’は、PHS端末2の現実の位置P1とは異なる位置となる。
【0057】
表示制御部36は、PHS端末2の表示部16に、PHS端末2の現在位置を表示する。
具体的には、表示制御部36は、記憶部18から最新の位置データ46を読み込み、この位置データ46の周囲の地図データをさらに記憶部18などから取得する。
また、表示制御部36は、取得した地図の上に、位置データ46の地点を示すマークを合成した画像データを生成する。
また、表示制御部36は、生成した画像データを表示部16へ出力する。
これにより、PHS端末2の表示部16には、オープンサーチの結果に基づいて推定したPHS端末2の現在位置が表示される。
【0058】
図12は、図4のPHS端末2のCPU17により実行される現在位置の推定および表示処理のフローチャートである。
オープンサーチ部31は、タイマ19の計測時間に基づいて、オープンサーチ周期が経過したか否かを判断する(ステップST1)。
そして、タイマ19によりオープンサーチ周期の時間が計測されていない場合、オープンサーチ部31は、一端処理を終了する。
【0059】
オープンサーチ周期が計測されている場合、オープンサーチ部31は、オープンサーチ処理を実行する(ステップST2)。
これにより、無線通信部11は、複数の基地局3から電波を受信する。
【0060】
また、オープンサーチ部31は、電波を受信した基地局3の情報を記憶部18に保存する(ステップST3)。
このとき、オープンサーチ部31は、第1サーチリスト41および第2サーチリスト42のうち、前回に使用していない方のリストを選択し、選択したリストに情報を保存する。
オープンサーチ部31は、たとえば第1サーチリスト41を選択し、第1サーチリスト41に基地局3の情報を保存する。
これにより、記憶部18には、図6の第1サーチリスト41が生成される。
【0061】
オープンサーチ処理が終了すると、判定部32および削除部33は、非選択リスト43を更新する(ステップST4)。
たとえば第1サーチリスト41が今回更新された場合、判定部32は、第1サーチリスト41を今回の基地局3の情報を、前回の基地局3の情報を記憶する第2サーチリスト42と比較する。
そして、判定部32は、今回検出された複数の基地局3について、前回よりRSSI値が低下したか否かを判断する。
また、今回のRSSI値が所定値以上低下している場合、判定部32は、その基地局3の情報を非選択リスト43に登録する。
【0062】
また、削除部33は、非選択リスト43に登録された複数の基地局3について、RSSI値が復旧したか否かを判定する。
そして、今回更新された第1サーチリスト41においてRSSI値が復旧している場合、削除部33は、その基地局3の情報を非選択リスト43から削除する。
以上の処理により、記憶部18には、図7の非選択リスト43が記憶される。
【0063】
また、非選択リスト43が更新されると、選択部34は、PHS端末2の現在位置の演算に用いる複数の基地局3の選択処理を開始する。
具体的には、選択部34は、まず、今回更新された第1サーチリスト41に選択フラグを追加した合成リスト44を生成する(ステップST5)。
選択フラグの値は、非選択リスト43に登録されている基地局3については「0」となり、登録されてない基地局3については「1」となる。これにより、記憶部18には、図8の合成リスト44が生成される。
【0064】
合成リスト44を生成した後、選択部34は、合成リスト44の基地局3毎のレコードを、RSSI値の大きい順にソートする(ステップST6)。
図8の合成リスト44では、複数の基地局3の順番は、第1基地局3-1、第3基地局3-3、第4基地局3-4、第2基地局3-2、第5基地局3-5の順番にソートされる。
【0065】
合成リスト44をソートした後、選択部34は、ソート後の合成リスト44から上位3台の基地局3を選択する(ステップST7)。
このとき、選択部34は、選択フラグの値が「1」である上位3台の基地局3を選択する。
図8の合成リスト44をソートした場合、選択部34は、第1基地局3-1、第3基地局3-3および第4基地局3-4を選択する。
また、選択部34は、選択した複数の基地局3を記憶部18に保存する。
これにより、記憶部18には、図9の選択リスト45が生成される。
【0066】
基地局3の選択処理が終了すると、演算部35は、選択リスト45を用いて、PHS端末2の現在位置を三角法により演算する(ステップST8)。
また、演算部35は、演算により得たPHS端末2の現在位置を保存する。
これにより、記憶部18には、図10の位置データ46が記憶される。
【0067】
記憶部18に記憶される位置データ46が新たなオープンサーチ処理により更新されると、表示制御部36は、この位置データ46を読み込み、PHS端末2の現在位置を表示するための表示データを生成する。
具体的には、表示制御部36は、位置データ46が示す地点のマークを地図に合成した表示データを生成し、表示部16へ出力する。
これにより、PHS端末2の表示部16には、図3に示すように、PHS端末2の現在位置が表示される(ステップST9)。
【0068】
図13は、複数回のオープンサーチ処理における合成リストおよび非選択リスト43の内容の遷移を示す説明図である。
図13には、タイミングT1からT4の、連続する4回の合成リストおよび非選択リスト43が図示されている。
【0069】
1回目のオープンサーチ処理では、図13(A)に示すように、非選択リスト43には、基地局3が登録されてない。
そして、図13(B)に示すように、2回目のオープンサーチ処理において第5基地局3-5のRSSI値が「55(dBμV)」から「40」に低下すると、第5基地局3-5が非選択リスト43に登録される。
そのため、2回目の非選択リスト43には、第5基地局3-5のCS−IDと、直前の1回目のRSSI値「55」とが登録される。また、2回目の合成リスト44において、第5基地局3-5の選択フラグの値は「0」になる。
【0070】
また、図13(C)に示すように、3回目のオープンサーチ処理において第4基地局3-4のRSSI値が「60」から「45」に低下すると、第4基地局3-4が非選択リスト43に登録される。
そのため、3回目の非選択リスト43には、新たに第4基地局3-4のCS−IDと、直前の1回目のRSSI値「60」とが追加登録される。
非選択リスト43は、FIFO形式により所定数の基地局3の情報を記憶するので、前回のサーチにおいて登録された第5基地局3-5の情報は、上から2番目のレコードになる。
また、3回目の合成リスト44では、第4基地局3-4および第5基地局3-5の選択フラグの値が「0」になる。
この場合、第4基地局3-4のRSSI値および第5基地局3-5のRSSI値が第2基地局3-2のRSSI値より高いが、第1基地局3-1、第2基地局3-2および第3基地局3-3が、PHS端末2の現在位置演算に用いる3台の基地局3として選択される。
【0071】
さらに、図13(D)に示すように、4回目のオープンサーチ処理において、第4基地局3-4のRSSI値が「45」のままであり、かつ、第5基地局3-5のRSSI値が「50」まで復旧したとする。
この場合、非選択リスト43に登録された第4基地局3-4のRSSI値と比較して、第4基地局3-4のRSSI値は全く復旧していない。
また、非選択リスト43に登録された第5基地局3-5のRSSI値と比較して、第5基地局3-5のRSSI値も十分に復旧していない。
そのため、第4基地局3-4および第5基地局3-5は、非選択リスト43から削除されない。
その結果、4回目の合成リスト44では、第4基地局3-4および第5基地局3-5の選択フラグの値が「0」になる。
この場合、第4基地局3-4のRSSI値および第5基地局3-5のRSSI値が第2基地局3-2のRSSI値より高いが、第1基地局3-1、第2基地局3-2および第3基地局3-3が、PHS端末2の現在位置演算に用いる3台の基地局3として選択される。
【0072】
このように3回目の合成リスト44および4回目の合成リスト44では、第4基地局3-4および第5基地局3-5のRSSI値は共に、第2基地局3-2のRSSI値より高い。
しかしながら、第4基地局3-4および第5基地局3-5は、選択フラグの値が「0」であるため、PHS端末2の現在位置演算に用いる3台の基地局3として選択されない。
特に、2回目のオープンサーチ処理により非選択リスト43に登録された第5基地局3-5は、4回目のオープンサーチ処理においてRSSI値が「50」まで回復している。4回目のRSSI値は、3回目のRSSI値「45」より改善されている。
しかしながら、第5基地局3-5について良好と推定された1回目のRSSI値と比較して十分に回復していない。
そのため、第5基地局3-5は、非選択リスト43に登録されたままとなり、PHS端末2の現在位置演算に用いる基地局3として選択されない。
【0073】
このように本実施形態のPHS端末2では、前回のオープンサーチ処理時で判断した電波環境を含めて、PHS端末2の現在位置演算に用いる複数の基地局3を選択する。
そのため、本実施形態のPHS端末2は、たとえばマルチパス電波などにより偶発的にRSSI値が改善するような基地局3が発生したとしても、その基地局3以外の基地局3を優先的に選択することができる。
なお、RSSI値は、たとえばPHS端末2の使用者が移動したり、PHS端末2の周囲の電波環境が変化したりした場合に、マルチパス電波などにより偶発的に改善することがある。
【0074】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0075】
たとえば上記実施形態では、選択部34は、RSSI値を含む合成リスト44を生成し、RSSI値に基づいてPHS端末2の現在位置演算に用いる基地局3を選択している。
この他にも例えば、選択部34は、エラーレートを含む合成リスト44を生成し、エラーレート値に基づいてPHS端末2の現在位置演算に用いる基地局3を選択してもよい。
また、選択部34は、RSSI値およびエラーレート値に基づいて、PHS端末2の現在位置演算に用いる基地局3を選択してもよい。
【0076】
図14は、図8の合成リスト44の変形例の説明図である。
図14の合成リスト44は、判定部32により、RSSI値が「45」に低下し、かつエラーレート値が「4」となった第4基地局3-4および第5基地局3-5が非選択リスト43に登録されている場合の例である。
そのため、図14の合成リスト44では、第4基地局3-4の選択フラグと、第5基地局3-5の選択フラグとが「0」となっている。
図14の合成リスト44において、たとえば単にRSSI値が高い順番に複数の基地居を選択した場合、第1基地局3-1、第4基地局3-4および第5基地局3-5が選択される。
これに対して、本発明の選択部34は、選択フラグが立っていない第1基地局3-1、第2基地局3-2および第3基地局3-3を選択する。
これにより、本発明では、マルチパスなどの影響を受けていない良好な通信環境の基地局3を用いて、PHS端末2の位置を正確に演算することができる。
【0077】
なお、図14の合成リスト44が生成される場合、判定部32は、たとえば最新回での受信信号のエラーレートが、過去の受信信号のエラーレートより上がった基地局3については、RSSI値に関係なく、非選択リスト43に登録すればよい。
この判定方法では、判定部32は、エラーレートに基づいて、基地局3の電波環境を推定する。また、選択部34は、エラーレートが低い基地局3を選択することができる。
この他にも例えば、判定部32は、エラーレート値が所定閾値内である場合、RSSI値との組み合わせにより、基地局3の電波環境(第1電波環境)を推定してもよい。
さらに他にも例えば、判定部32は、エラーレート値が所定閾値外である場合においても、RSSI値との組み合わせにより、基地局3の電波環境(第2電波環境)を推定してもよい。
また、判定部32は、屋外における環境別に、閾値またはステップを可変するようにしてもよい。これにより、判定部32は、環境に応じて最適な基地局3を選択し、その結果として、選択部34は、現在位置を高精度に演算することができる。
【0078】
上記実施の形態では、複数の基地局3は、スーパーフレーム毎に空いている下りスロットTを時分割多重で用いて、基地局3の情報をPHS端末2へ送信している。
この他にも例えば、複数の基地局3は、周波数分割多重方式などによりそれぞれの基地局3の情報を多重化して送信してもよい。
この場合、PHS端末2では、無線通信部11が受信した電波の信号をバンドパスフィルタでフィルタリングし、受信信号強度検出部12がフィルタリング後の信号に基づいて基地局3の受信電波のRSSI値を生成すればよい。
これにより、受信信号強度検出部12は、基地局3毎の受信電波のRSSI値を得ることができる。
【0079】
上記実施の形態では、PHS端末2は、受信信号強度検出部12をハードウェアとして備え、基地局3情報取得部、ソート部、相互距離判定部32、基地局3選択部34、位置推定部、および地図表示制御部36がソフトウェアとして実現されている。
この他にも例えば、これらの全ての機能がハードウェアにより実現されていても、これらの全ての機能がソフトウェアにより実現されていてもよい。
【0080】
また、上記実施の形態は、PHS端末2の例である。
この他にも例えば、本発明は、PHS端末2以外の携帯無線端末の自端末位置演算にも適用できる。
このような携帯無線端末としては、たとえば携帯電話機がある。
また、無線通信機能を有する携帯ゲーム機器、PDA、パーソナルコンピュータ、携帯ナビゲーション機器、携帯再生機器などの携帯無線端末において、本発明の自端末位置演算を使用してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…無線通信システム、2…PHS端末(携帯無線端末)、3…基地局、11…無線通信部、12…受信信号強度検出部(第1検出部)、13…受信エラー検出部(第2検出部)、14…エラーレート算出部、18…記憶部、31…オープンサーチ部、32…判定部、33…削除部、34…選択部、35…演算部、41…第1サーチリスト、42…第2サーチリスト、43…非選択リスト、44…合成リスト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局から位置情報を含む電波を受信する無線通信部と、
前記無線通信部が受信した電波の受信信号強度を検出する第1検出部と、
受信した前記基地局の位置情報および検出した前記受信信号強度を含む、受信した複数の基地局の情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された複数の基地局の情報から、自端末の位置の演算に用いる複数の基地局を選択する選択部と、
選択された前記複数の基地局の前記位置情報および前記受信信号強度から、前記自端末の位置を演算する演算部と
を有し、
前記記憶部は、
前記基地局の情報として、該基地局から受信した複数回分の前記電波についての情報を記憶し、
前記選択部は、
前記記憶部に記憶されている複数の基地局についての複数回分の前記電波の情報に基づいて、前記自端末に対する電波環境が変化したと判断される基地局以外の基地局を優先して、複数の基地局を選択する
携帯無線端末。
【請求項2】
前記選択部は、
最新回の前記電波の受信信号強度が、過去の前記電波の受信信号強度より下がった基地局以外の基地局を優先して選択する
請求項1記載の携帯無線端末。
【請求項3】
前記携帯無線端末は、
前記無線通信部が受信した信号のエラーを検出する第2検出部と、
前記第2検出部により検出されたエラーをカウントしてエラーレートを算出するエラーレート算出部と
を有し、
前記記憶部は、
前記基地局の各回分の情報として、各回の受信電波についての前記エラーレートを記憶し、
前記選択部は、
最新回の受信信号のエラーレートが、過去の回の受信信号のエラーレートより上がった基地局以外の基地局を優先して選択する
請求項1または2記載の携帯無線端末。
【請求項4】
前記携帯無線端末は、
前記無線通信部により複数の基地局を検索するオープンサーチを繰り返し実行するオープンサーチ部を有し、
前記記憶部は、
最新回のオープンサーチにより検出された複数の基地局の情報と、
前回のオープンサーチにより検出された複数の基地局の情報とを記憶する
請求項1から3のいずれか一項記載の携帯無線端末。
【請求項5】
前記携帯無線端末は、
前記記憶部に記憶される最新回の情報と前回の情報とを比較し、電波環境が変化した基地局を判定する判定部を有し、
前記記憶部は、
前記判定部により前記電波環境が変化したと判断された基地局の情報が登録される非選択リストを記憶し、
前記選択部は、
最新回のオープンサーチにより検出された複数の基地局のうち、前記非選択リストに登録されていない基地局を、前記非選択リストに登録されている基地局より優先して選択する
請求項4記載の携帯無線端末。
【請求項6】
前記判定部は、
前記基地局からの受信信号強度と信号のエラーレートとの組み合わせに基づいて、電波環境が変化した基地局を判定する
請求項5記載の携帯無線端末。
【請求項7】
前記判定部は、
前記基地局の信号のエラーレートが所定の閾値内である場合、受信信号強度との組み合わせにより、前記基地局の第1電波環境を推定する
請求項6記載の携帯無線端末。
【請求項8】
前記判定部は、
前記基地局の信号のエラーレートが所定の閾値外である場合、受信信号強度との組み合わせにより、前記基地局の第2電波環境を推定する
請求項6または7記載の携帯無線端末。
【請求項9】
前記選択部は、
前記記憶部に記憶されている最新回の複数の基地局の情報に、前記非選択リストの登録情報に基づく受信環境の変化の有無を示す選択フラグを追加した合成リストを生成し、
前記合成リストに含まれる複数の基地局の情報を、受信信号強度が高い基地局の順番にソートし、
ソート後の前記合成リストにおいて、受信環境が変化したことを示す選択フラグに対応付けられていない上位の所定数の基地局を選択する
請求項5から8のいずれか一項記載の携帯無線端末。
【請求項10】
前記非選択リストは、
所定数の基地局をFIFO方式により登録可能であり、
新たな基地局の登録時に、前記所定数を超えた古い基地局の情報が自動的に削除される
請求項5から9のいずれか一項記載の携帯無線端末。
【請求項11】
前記非選択リストは、
電波環境が変化した基地局として登録された基地局の情報として、登録時点における前回のオープンサーチにより検出された該基地局の受信信号強度の情報を記憶し、
前記携帯無線端末は、
各回のオープンサーチにおいて検出される基地局の受信信号強度と、前記非選択リストに登録された基地局の受信信号強度とを比較し、前記非選択リストに登録されている基地局の電波環境が戻ったと判断した場合に、前記非選択リストから該基地局の情報を削除する削除部を有する
請求項5から10のいずれか一項記載の携帯無線端末。
【請求項12】
前記選択部は、
3台の基地局を選択し、
前記演算部は、
前記選択部により選択された前記3台の基地局の位置情報および受信信号強度から、三角法により前記携帯無線端末の位置を演算する
請求項1から11のいずれか一項記載の携帯無線端末。
【請求項13】
携帯無線端末に設けられ、無線通信部および記憶部が接続された制御部が、前記携帯無線端末の位置を演算するために実行する基地局の選択方法であって、
前記無線通信部により周辺の複数の基地局を繰り返しサーチするステップと、
各回のサーチにより電波を受信した複数の基地局の情報として、受信した複数の基地局の位置情報および受信信号強度を含む情報を前記記憶部に保存し、前記記憶部に複数回分のサーチによる情報を蓄積するステップと、
前記記憶部に記憶されている複数の基地局についての複数回分のサーチ情報に基づいて、前記携帯無線端末に対する電波環境が変化した基地局を判定するステップと、
前記記憶部に記憶されている複数の基地局から、前記電波環境が変化したと判断された基地局以外の基地局を優先して、前記携帯無線端末の位置を演算するために使用する複数の基地局を選択するステップと
を有する基地局の選択方法。
【請求項14】
携帯無線端末に設けられ、無線通信部および記憶部が接続された制御部が、前記携帯無線端末の位置を演算するために実行する基地局の選択方法であって、
前記無線通信部により周辺の複数の基地局を繰り返しサーチするステップと、
各回のサーチにより電波を受信した複数の基地局の情報として、受信した複数の基地局の位置情報、受信信号強度および信号のエラーレートを含む情報を前記記憶部に保存し、前記記憶部に複数回分のサーチによる情報を蓄積するステップと、
前記記憶部に記憶されている複数の基地局についての複数回分のサーチ情報に基づいて、前記携帯無線端末に対する電波環境が変化した基地局を判定するステップと、
前記記憶部に記憶されている複数の基地局から、前記電波環境が変化したと判断された基地局以外の基地局を優先して、前記携帯無線端末の位置を演算するために使用する複数の基地局を選択するステップと
を有する基地局の選択方法。
【請求項1】
複数の基地局から位置情報を含む電波を受信する無線通信部と、
前記無線通信部が受信した電波の受信信号強度を検出する第1検出部と、
受信した前記基地局の位置情報および検出した前記受信信号強度を含む、受信した複数の基地局の情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された複数の基地局の情報から、自端末の位置の演算に用いる複数の基地局を選択する選択部と、
選択された前記複数の基地局の前記位置情報および前記受信信号強度から、前記自端末の位置を演算する演算部と
を有し、
前記記憶部は、
前記基地局の情報として、該基地局から受信した複数回分の前記電波についての情報を記憶し、
前記選択部は、
前記記憶部に記憶されている複数の基地局についての複数回分の前記電波の情報に基づいて、前記自端末に対する電波環境が変化したと判断される基地局以外の基地局を優先して、複数の基地局を選択する
携帯無線端末。
【請求項2】
前記選択部は、
最新回の前記電波の受信信号強度が、過去の前記電波の受信信号強度より下がった基地局以外の基地局を優先して選択する
請求項1記載の携帯無線端末。
【請求項3】
前記携帯無線端末は、
前記無線通信部が受信した信号のエラーを検出する第2検出部と、
前記第2検出部により検出されたエラーをカウントしてエラーレートを算出するエラーレート算出部と
を有し、
前記記憶部は、
前記基地局の各回分の情報として、各回の受信電波についての前記エラーレートを記憶し、
前記選択部は、
最新回の受信信号のエラーレートが、過去の回の受信信号のエラーレートより上がった基地局以外の基地局を優先して選択する
請求項1または2記載の携帯無線端末。
【請求項4】
前記携帯無線端末は、
前記無線通信部により複数の基地局を検索するオープンサーチを繰り返し実行するオープンサーチ部を有し、
前記記憶部は、
最新回のオープンサーチにより検出された複数の基地局の情報と、
前回のオープンサーチにより検出された複数の基地局の情報とを記憶する
請求項1から3のいずれか一項記載の携帯無線端末。
【請求項5】
前記携帯無線端末は、
前記記憶部に記憶される最新回の情報と前回の情報とを比較し、電波環境が変化した基地局を判定する判定部を有し、
前記記憶部は、
前記判定部により前記電波環境が変化したと判断された基地局の情報が登録される非選択リストを記憶し、
前記選択部は、
最新回のオープンサーチにより検出された複数の基地局のうち、前記非選択リストに登録されていない基地局を、前記非選択リストに登録されている基地局より優先して選択する
請求項4記載の携帯無線端末。
【請求項6】
前記判定部は、
前記基地局からの受信信号強度と信号のエラーレートとの組み合わせに基づいて、電波環境が変化した基地局を判定する
請求項5記載の携帯無線端末。
【請求項7】
前記判定部は、
前記基地局の信号のエラーレートが所定の閾値内である場合、受信信号強度との組み合わせにより、前記基地局の第1電波環境を推定する
請求項6記載の携帯無線端末。
【請求項8】
前記判定部は、
前記基地局の信号のエラーレートが所定の閾値外である場合、受信信号強度との組み合わせにより、前記基地局の第2電波環境を推定する
請求項6または7記載の携帯無線端末。
【請求項9】
前記選択部は、
前記記憶部に記憶されている最新回の複数の基地局の情報に、前記非選択リストの登録情報に基づく受信環境の変化の有無を示す選択フラグを追加した合成リストを生成し、
前記合成リストに含まれる複数の基地局の情報を、受信信号強度が高い基地局の順番にソートし、
ソート後の前記合成リストにおいて、受信環境が変化したことを示す選択フラグに対応付けられていない上位の所定数の基地局を選択する
請求項5から8のいずれか一項記載の携帯無線端末。
【請求項10】
前記非選択リストは、
所定数の基地局をFIFO方式により登録可能であり、
新たな基地局の登録時に、前記所定数を超えた古い基地局の情報が自動的に削除される
請求項5から9のいずれか一項記載の携帯無線端末。
【請求項11】
前記非選択リストは、
電波環境が変化した基地局として登録された基地局の情報として、登録時点における前回のオープンサーチにより検出された該基地局の受信信号強度の情報を記憶し、
前記携帯無線端末は、
各回のオープンサーチにおいて検出される基地局の受信信号強度と、前記非選択リストに登録された基地局の受信信号強度とを比較し、前記非選択リストに登録されている基地局の電波環境が戻ったと判断した場合に、前記非選択リストから該基地局の情報を削除する削除部を有する
請求項5から10のいずれか一項記載の携帯無線端末。
【請求項12】
前記選択部は、
3台の基地局を選択し、
前記演算部は、
前記選択部により選択された前記3台の基地局の位置情報および受信信号強度から、三角法により前記携帯無線端末の位置を演算する
請求項1から11のいずれか一項記載の携帯無線端末。
【請求項13】
携帯無線端末に設けられ、無線通信部および記憶部が接続された制御部が、前記携帯無線端末の位置を演算するために実行する基地局の選択方法であって、
前記無線通信部により周辺の複数の基地局を繰り返しサーチするステップと、
各回のサーチにより電波を受信した複数の基地局の情報として、受信した複数の基地局の位置情報および受信信号強度を含む情報を前記記憶部に保存し、前記記憶部に複数回分のサーチによる情報を蓄積するステップと、
前記記憶部に記憶されている複数の基地局についての複数回分のサーチ情報に基づいて、前記携帯無線端末に対する電波環境が変化した基地局を判定するステップと、
前記記憶部に記憶されている複数の基地局から、前記電波環境が変化したと判断された基地局以外の基地局を優先して、前記携帯無線端末の位置を演算するために使用する複数の基地局を選択するステップと
を有する基地局の選択方法。
【請求項14】
携帯無線端末に設けられ、無線通信部および記憶部が接続された制御部が、前記携帯無線端末の位置を演算するために実行する基地局の選択方法であって、
前記無線通信部により周辺の複数の基地局を繰り返しサーチするステップと、
各回のサーチにより電波を受信した複数の基地局の情報として、受信した複数の基地局の位置情報、受信信号強度および信号のエラーレートを含む情報を前記記憶部に保存し、前記記憶部に複数回分のサーチによる情報を蓄積するステップと、
前記記憶部に記憶されている複数の基地局についての複数回分のサーチ情報に基づいて、前記携帯無線端末に対する電波環境が変化した基地局を判定するステップと、
前記記憶部に記憶されている複数の基地局から、前記電波環境が変化したと判断された基地局以外の基地局を優先して、前記携帯無線端末の位置を演算するために使用する複数の基地局を選択するステップと
を有する基地局の選択方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−33357(P2011−33357A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177104(P2009−177104)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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