説明

携帯用冷却シート及びその製造方法

【課題】 冷却シートを収容容器に収容させた携帯用冷却シートにおいて、高い冷却効果が長い時間維持でき、簡単に剥がれないように身体の貼付部位に適切に貼付できる冷却シートが簡単に得られるようにする。
【解決手段】 非水溶性の粘着剤を用いた粘着層12により剥離シート13上に剥離可能に貼着された保持シート11の上に高含水率で低粘着性の含水ゲル体15が形成された冷却シート10を、剥離シートが収容容器20の収容凹部21の底部側に位置するように収容させ、収容凹部上面の開口部分を閉塞部材14より閉塞させた携帯用冷却シートにおいて、上記の収容凹部の底部に上方に突出した凸部23を設け、この凸部と対応するように、冷却シートに少なくとも剥離シート及び保持シートを貫通して含水ゲル体に至る穴部16を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯用冷却シート及びその製造方法に係り、特に、冷却シートを収容容器に収容させた携帯用冷却シートにおいて、高い冷却効果が長い時間維持できると共に、簡単に剥がれないように身体の貼付部位に適切に貼付できる冷却シートが簡単に得られるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発熱時や炎症部位等の冷却、また皮膚の保湿やリフレッシュ等を目的としてシート状になった冷却シートが用いられている。
【0003】
そして、このようなシート状になった冷却シートとしては、一般に、オレフィン系の不織布等にポリアクリル酸等の水溶性高分子に水を保有させた粘着性の含水ゲルを付与したものが使用されている。
【0004】
ここで、上記のような粘着性の含水ゲルを付与した冷却シートの場合、上記の粘着性の含水ゲルの部分を身体の貼付部位に直接貼付させるだけで、この粘着性の含水ゲルにより冷却シートが貼付部位に充分に貼付され、貼付部位からこの冷却シートが簡単に外れるということはなかった。
【0005】
しかし、上記のような粘着性の含水ゲルの場合、一般に水分を十分に保持させることができず、高い冷却効果を長い時間維持させることができないという問題があった。
【0006】
一方、上記のような含水ゲルにおける含水率を多くして冷却効果を高めるようにした場合、この含水ゲルにおける粘着性が大きく低下して、貼付部位に対する冷却シートの付着力が低下し、特に、長時間使用するために、含水ゲルの厚みを大きくした場合、冷却シートが貼付部位から簡単に外れるという問題があった。
【0007】
このため、近年においては、片面に粘着剤が塗布された不織布の繊維層中に水分が90重量%以上の水溶性高分子材料のゲルを含浸させた冷却シートを、収容容器に設けられた収容凹部内に収容させ、この収容凹部の開口部を閉塞部材により閉塞させた携帯用冷却シートが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
しかし、上記の携帯用冷却シートにおける冷却シートのように、上記のような水溶性高分子材料のゲルを不織布の繊維層中に含浸させる場合、繊維層中に含浸させることができるゲルの量には限界があり、依然として、高い冷却効果を長い時間維持させることは困難であった。
【特許文献1】特開2002−248121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、冷却シートにおける上記のような問題を解決することを課題とするものであり、冷却シートを収容容器に収容させた携帯用冷却シートにおいて、高い冷却効果が長い時間維持できると共に、簡単に剥がれないようにして身体の貼付部位に適切に貼付できる冷却シートが簡単に得られるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明における携帯用冷却シートにおいては、上記のような課題を解決するため、非水溶性の粘着剤を用いた粘着層により剥離シート上に剥離可能に貼着された保持シートの上に高含水率で低粘着性の含水ゲル体が形成された冷却シートを、収容容器に設けられた収容凹部内に上記の剥離シートが収容凹部の底部側に位置するように収容させ、上記の収容容器における収容凹部上面の開口部分を閉塞部材より閉塞させた携帯用冷却シートにおいて、上記の収容容器における収容凹部の底部に上方に突出した凸部を設け、この収容凹部の凸部に対応して、上記の冷却シートに、少なくとも剥離シート及び保持シートを貫通して含水ゲル体に至る穴部を形成するようにした。
【0011】
ここで、この発明における携帯用冷却シートにおいては、上記の収容容器における収容凹部の底部に上方に突出した凸部を複数設けると共に、この凸部を上方に向かって収縮した形状に形成することが好ましい。
【0012】
また、この発明における携帯用冷却シートにおいては、上記の冷却シートにおける穴部を上記の含水ゲル体を貫通するように形成することが好ましい。
【0013】
ここで、上記の含水ゲル体としては、高い冷却効果が長時間得られるようにするため、その含水率が65重量%以上であることが好ましく、より好ましくは含水率が90重量%以上のものを用いるようにする。なお、含水率の上限については、特に限定されないが、上記の含水ゲル体の保形性の点からは99重量%程度が限界になると考えられる。そして、このように含水ゲル体における含水率を高めると、含水ゲル体の粘着性が低下する。
【0014】
また、上記の含水ゲル体の材料としては、保水性が高く、保形性にも優れた水溶性高分子を用いるようにし、この水溶性高分子は合成及び天然の何れであってもよいが、特に、保水性及び保形性に優れている天然の水溶性高分子を用いることが好ましく、例えば、カラギーナン、ゼラチン、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、ジェランガム、アーネストガム、アガロース、デキストリン、グルコマンナン、ポリグルタミン酸及びその塩等を用いることができる。また、これらの天然高分子に合成高分子を混合して用いることもでき、好適な合成高分子としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、アーネストガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられるが、特にこれらに限定されるものでもない。
【0015】
また、上記の含水ゲル体にアロマオイルや薬理活性物質を含有させ、この冷却シートからこれらの物質が身体の貼付部位に徐々に伝わって、保冷・保湿効果と共にこれらの物質による効果が得られるようにすることもできる。
【0016】
ここで、上記のアロマオイルとしては、一般にアロマテラピーに用いられる精油成分(精油類)をそのまま用いることができる。この精油成分としては、例えばワンダー・セラー著「アロマテラピーのための84の精油成分」、フレグランスジャーナル社に記載されているものが挙げられる。具体的には、アニス、アンジェリカ、安息香、イモーテル、カモミール、ガーリック、カルダモン、ガルバナム、キャラウェイ、キャロットシード、グアヤックウッド、グレープフルーツ、サイブレス、シダーウッド、スターアニス、セージ、ゼラニウム、セロリ、タイム、タラゴン、テレピン、乳香、バイオレット、パイン、パセリ、フェンネル、ブラックペッパ、ボダイジュ花、レモン、レモングラス、ローズマリー、ローレル、シモツケギク、シモツケソウ、ヤグルマギク、アーモンド、アルニカ、ウイキョウ、エニシダ、クレソン、ゲンチアナ、ショウノウ、スモモ、セイヨウナシ、タイソウ、タンポポ、チモ、チョレイ、トウガシ、ノイバラ、ハッカ、トネリコ、ブクリョウ、メリッサ、モモ、ヤドリギ、ユーカリ、ヨクイニン、ラベンダ、レンギョウ等からの抽出物を挙げることができるが、別段これらに限定されない。また、その他の油成分としては、流動パラフィン、シリコーンオイル、ココナッツオイル、マカデミアオイル、スクラワン、オリーブオイル、オレンジオイル、ホホバオイル等を挙げることができる。
【0017】
また、薬理活性物質としては、上記のアロマオイルと重なってもよく、例えばメントール、カンフル、インドメタシン、ケトプロフェン、ジクロフェナック、オオバクエキス、グリチルリチン酸ジカリウム、ヒアルロン酸、アルブチン、酢酸トコフェロール、アラントイン、ビタミンC類、水溶性アズレン、アクリノール等が挙げられる。
【0018】
また、上記のもの以外に、ビタミンA,B,C,E等のビタミン類、セレニウム,亜鉛等のミネラル類、リンゴ,オレンジ,レモン,キウイ等の果実エキスや果汁等を適宜含有させることもできる。
【0019】
また、上記の保持シートは、上記の含水ゲル体が浸透して充分に保持されるものであればよく、例えば、各種の繊維を用いた不織布,織布等の繊維体や、紙等の繊維構造物を用いることができる。
【0020】
また、上記の粘着層に用いる非水溶性の粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤等の各種の非水溶性粘着剤を用いることができる。
【0021】
ここで、上記のアクリル系粘着剤としては、下記の主モノマーと副モノマーとを組み合わせたものが挙げられる。主モノマーとしては、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸デシル、メタアクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ドデシル等が挙げられる。また、副モノマーとしては、アクリル酸、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、無水マレイン酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。
【0022】
また、ゴム系粘着剤としては、下記のエラストマーと粘着付与剤とを組み合わせものが挙げられる。エラストマーとしては、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、ブチルゴム、SIS、SBR、SBRS等が挙げられる。また、粘着付与剤としては、ロジン、水添ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステル、ポリテルペン、テルペンフェノール、フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂、その他脂肪族系樹脂(C5系樹脂)、石油系樹脂、脂環式炭化水素樹脂(水添芳香族系樹脂)等が挙げられる。
【0023】
また、上記の粘着剤には、必要に応じて、軟化剤(可塑剤)、吸収促進剤、多価アルコール類、シリコーン油類、無機充填剤、酸化防止剤(紫外線吸収剤)等を添加させることができる。
【0024】
ここで、上記の軟化剤(可塑剤)としては、ポリブテン、ポリイソブチレン、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジエチルフタレート、液状ロジンエステル、塩素化パラフィン、プロセスオイル、ラノリン、IPM、シリコーン、ワセリン、固形パラフィン、流動パラフィン、プラステイペース、ミツロウ、メントール、リモネン、ピネン、ピペリトン、テルピノール、カルベオール、アーモンド油、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ハッカ油、ゴマ油、ダイズ油、ミンク油、綿実油、トウモロコシ油、サフラワー油、ブドウ油、マカデミアナッツ油、卵黄油、紅花油等が挙げられる。
【0025】
また、上記の吸収促進剤は、薬用成分や化粧成分等の有効成分の吸収を促進するものであり、上記の軟化剤と重複するものが多く、ラノリン、流動パラフィン、ミツロウ、メントール、リモネン、ピネン、ピペリトン、テルピノール、カルベオール、ホホバ油、アーモンド油、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ハッカ油、ゴマ油、ダイズ油、ミンク油、綿実油、トウモロコシ油、サフラワー油、ブドウ油、マカデミアナッツ油、卵黄油、紅花油等が挙げられる。
【0026】
また、上記の多価アルコール類としては、グリセリン、プロピレングリコール、オクタンジオール、ポリエチレングリコール、D−ソルビット、クロタミトン等が挙げられる。
【0027】
また、上記のシリコーン油としては、メチルシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0028】
また、上記の無機充填剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0029】
また、上記の酸化防止剤(紫外線吸収剤)としては、BHT、DTBHQ等が挙げられる。
【0030】
また、上記の粘着層としては、多数の開口部を有する熱伝導性の高いシート基材の開口部内に、上記の非水溶性の粘着剤を充填させたものを用いることが好ましい。
【0031】
ここで、上記の多数の開口部を有する熱伝導性の高いシート基材としては、網目状の開口部を有する金属製或いは表面が金属でメッキされたメッシュや、金属製或いは表面が金属でメッキされたシートに多数の貫通穴からなる開口部を設けたもの等を用いることができる。
【0032】
また、この発明における携帯用冷却シートの製造方法においては、収容凹部の底部に上方に突出した凸部が設けられた収容容器を用い、この収容凹部における凸部と対応するように、非水溶性の粘着剤を用いた粘着層により剥離シート上に剥離可能に貼着された保持シートに貫通穴を設け、この貫通穴に収容凹部の底部に設けられた上記の凸部を挿通させるようにして、上記の剥離シートが収容容器の収容凹部の底部側に位置するように保持シートを収容凹部に収容させた後、この収容容器の収容凹部内に流動性のゲル組成物を充填させ、このゲル組成物を硬化させて、上記の保持シートの上に高含水率で低粘着性の含水ゲル体を形成すると共に、上記の収容凹部上面の開口部分を閉塞部材より閉塞させるようにした。
【0033】
ここで、上記のように収容容器の収容凹部内に流動性のゲル組成物を充填させるにあたっては、この流動性のゲル組成物に少なくとも表面が親水性を有する繊維を混合させ、少なくとも表面が親水性を有する繊維が分散された含水ゲル体を形成することが好ましい。そして、このような繊維としては、例えば、パルプ、微小繊維状セルロース、木綿糸、レーヨン、その他の各種親水性樹脂繊維の他、表面が親水性処理された各種の疎水性樹脂繊維や、ガラス繊維・セラミックス繊維等が挙げられるが、これらに限定されない。
【発明の効果】
【0034】
この発明における携帯用冷却シートにおいては、上記の収容凹部の開口部を閉塞させている閉塞部材を除去し、この収容凹部の開口部から上記の冷却シートを取り出し、この冷却シートに設けられている剥離シートを剥離させ、上記の非水溶性の粘着剤を用いた粘着層により保持シートの上に高含水率で低粘着性の含水ゲル体が形成された冷却シートを身体の貼付部位に貼付させる。
【0035】
このようにすると、高含水率で低粘着性の含水ゲル体を用いた冷却シートであっても、この含水ゲル体が保持シートの上に保持されて、身体の貼付部位に適切に貼着されるようになり、この冷却シートが貼付部位から簡単に外れるということがなく、また上記の高含水率の含水ゲル体に含まれる水分が保持シートを通して非水溶性の粘着層に浸透し、水分による冷却効果が貼付部位に伝わって高い冷却効果が長時間得られるようになる。
【0036】
また、上記の冷却シートにおける穴部を上記の含水ゲル体を貫通するように形成すると、この貫通した穴部を通して含水ゲル体における水分の蒸発が促進されて、効率のよい放熱が行われ、さらに高い冷却効果が得られるようになる。
【0037】
また、上記の粘着層として、多数の開口部を有する熱伝導性の高いシート基材の開口部内に非水溶性の粘着剤を充填させたものを用いると、上記の高含水率の含水ゲル体に含まれる水分による冷却効果が、この熱伝導性の高いシート基材を通して貼付部位に伝わり、さらに高い冷却効果が得られるようになる。
【0038】
また、上記の含水ゲル体に少なくとも表面が親水性を有する繊維を分散させると、この繊維を通して含水ゲル体内部での水分の移動がスムーズに行われるようになり、さらに高い冷却効果が得られるようになる。
【0039】
また、この発明における携帯用冷却シートの製造方法のように、収容凹部の底部に上方に突出した凸部が設けられた収容容器を用い、この収容凹部における凸部と対応するようにして、非水溶性の粘着剤を用いた粘着層により剥離シート上に剥離可能に貼着された保持シートに貫通穴を設け、この貫通穴に収容凹部の底部に設けられた上記の凸部を挿通させるようにして、上記の保持シートを剥離シートが収容容器の収容凹部の底部側に位置するように収容させると、上記の貫通穴に挿通させた凸部によって保持シートが収容容器の収容凹部の底部に確実に保持されて、保持シートが収容凹部の底部から浮き上がったりするのが防止されるようになる。
【0040】
そして、この状態で、この収容容器の収容凹部内に流動性のゲル組成物を充填させると、保持シートの上にゲル組成物が適切に供給されるようになり、このゲル組成物が保持シートに浸透して硬化し、含水ゲル体が保持シートの上に強固に保持されるようになる。
【0041】
ここで、収容凹部の底部に設ける凸部を上方に向かって収縮した形状にすると、この凸部を貫通穴に挿通させて、保持シートを収容凹部の底部に保持させる作業が容易に行えるようになると共に、広がった凸部の底部が上記の貫通穴に密着するようになり、上記の保持シートが収容容器の収容凹部の底部により確実に保持されて、保持シートが収容凹部の底部から浮き上がったりするのが一層防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、この発明の実施形態に係る携帯用冷却シート及びその製造方法を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、この発明に係る携帯用冷却シート及びその製造方法は、特に下記の実施形態に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0043】
この実施形態においては、収容容器20として、図1(A),(B)に示すように、上面が開口された平面四角形状になった収容凹部21の周囲に鍔部22が形成されると共に、収容凹部21の底部から上方に向かって若干収縮した形状で、この収容凹部21の底部から開口された上面に至る凸部23を複数(図に示す例では5つ)設けたものを用いるようにした。
【0044】
また、図2(A),(B)に示すように、上記の収容凹部21の平面形状に対応する平面四角形状になった保持シート11を、非水溶性の粘着剤を用いた粘着層12により剥離シート13の上に剥離可能に貼着させると共に、収容凹部21の底部に設けられた凸部23と対応するようにして、この保持シート11及び剥離シート13を貫通する貫通穴14を複数(図に示す例では5つ)設けるようにした。
【0045】
そして、図3に示すように、このように設けた貫通穴14に上記の収容容器20における収容凹部21の底部に設けられた上記の凸部23を挿通させ、上記の剥離シート13が収容凹部21の底部側に位置するようにして、保持シート11を収容凹部21の底部に収容させるようにした。このようにすると、収容凹部21に設けられた凸部23が保持シート11及び剥離シート13を貫通する貫通穴14に密着して、保持シート11が収容凹部21の底部から浮き上がらないようにして保持されるようになった。
【0046】
その後、図4に示すように、収容凹部21の底部に保持された保持シート11の上に流動性のゲル組成物を供給して、流動性のゲル組成物を収容凹部21内に充填させ、この流動性のゲル組成物を硬化させて、保持シート11の上に高含水率で低粘着性の含水ゲル体15を形成し、上記剥離シート13と保持シート11とこの含水ゲル体15を連通する貫通した穴部16が形成された冷却シート10を得ると共に、上記の収容凹部21の周囲における鍔部22に気密性シートからなる閉塞部材24を貼着させて、この閉塞部材24により上記の収容凹部21上面の開口部分を閉塞させ、この実施形態の携帯用冷却シートを製造するようにした。なお、上記のように流動性のゲル組成物を収容凹部21の底部に保持された保持シート11の上に供給すると、このゲル組成物の一部が保持シート11内に浸透し、このように保持シート11内に浸透したゲル組成物も硬化されて、この保持シート11の上に形成される高含水率で低粘着性の含水ゲル体15が保持シート11に強固に保持されるようになった。
【0047】
そして、この実施形態の携帯用冷却シートにおいて、上記の冷却シート10を使用するにあたっては、収容凹部21上面の開口部分を閉塞させている上記の閉塞部材24を収容容器20の鍔部22から剥離させて、収容凹部21上面の開口部分を開口させ、収容凹部21内に収容された上記の冷却シート10をこの開口部分を通して収容凹部21内から取り出すようにする。
【0048】
ここで、取り出した冷却シート10は、図5(A),(B)に示すように、剥離シート13の上に非水溶性の粘着剤を用いた粘着層12によって剥離可能に貼着された保持シート11の上に高含水率で低粘着性の含水ゲル体15が形成されると共に、上記の剥離シート13及び保持シート11を貫通する貫通穴14の位置において、この含水ゲル体15に貫通した穴部16が形成された状態になっている
【0049】
そして、この冷却シート10に設けられている上記の剥離シート13を剥離させて、上記の非水溶性の粘着剤を用いた粘着層12により、この冷却シート10を身体の貼付部位に貼付させるようにする。
【0050】
このようにすると、上記の含水ゲル体15に含まれる水分が上記の保持シート11を通して非水溶性の粘着層12に浸透し、この非水溶性の粘着層12を介して水分による冷却効果が貼付部位に伝わると共に、上記の含水ゲル体15を貫通した穴部16を通して放熱が行われ、高い冷却効果が長時間得られるようになる。また、この冷却シート10においては、上記の含水ゲル体15が保持シート11に充分に保持されると共に、この含水ゲル体15が保持シート11に設けられた上記の非水溶性の粘着層12によって貼付部位に適切に貼着されるようになり、冷却シート10が貼付部位から簡単に外れるということもなくなる。
【0051】
なお、この実施形態においては、収容容器20として、平面四角形状になった収容凹部21の底部に上方に向かって若干収縮した形状になった凸部23を5つ設けたものを用いるようにしたが、収容容器20における収容凹部21の平面形状は上記のようなものに限定されず、冷却シート10を貼付させる身体の貼付部位等に対応させて変更することができ、またこの収容凹部21の底部に設ける凸部23の数も自由に設定することができる。
【0052】
例えば、図6に示すように、収容凹部21の平面形状を人の額に対応した形状に形成すると共に、収容凹部21の底部に3つの凸部23を設けた収容容器20を使用し、図7に示すような額に対応した形状になった冷却シート10を得ることができる。また、図8に示すように、収容凹部21の平面形状を中央部がくびれて両側部が広くなった略瓢箪形状に形成すると共に、収容凹部21の底部に5つの凸部23を設けた収容容器20を使用し、図9に示すような略瓢箪形状になった冷却シート10を得ることができる。なお、上記の略瓢箪形状になった冷却シート10の両側部がそれぞれけい動脈の部分を覆うようにして、この冷却シート10を首に貼付すると、首をねじった場合においても、この冷却シート10が簡単に外れるのが防止されると共に、広くなった両側部によってけい動脈の部分が冷却されて、急な発熱時等においても、充分な冷却効果が得られるようになる。
【0053】
また、上記の実施形態において、収容凹部21の底部に保持された保持シート11の上に流動性のゲル組成物を供給して冷却シート10を得るにあたり、図10に示すように、この流動性のゲル組成物に少なくとも表面が親水性を有する繊維17を分散させて収容凹部21内に充填させ、この流動性のゲル組成物を硬化させて、保持シート11の上に少なくとも表面が親水性を有する繊維17が分散された高含水率で低粘着性の含水ゲル体15を形成することも可能である。
【0054】
そして、このように高含水率で低粘着性の含水ゲル体15中に少なくとも表面が親水性を有する繊維17が分散された冷却シート10を身体の貼付部位に貼付させると、この含水ゲル体15に分散された上記の繊維17を通して含水ゲル体15に含まれる水分が効率よく移動し、より高い冷却効果が得られるようになる。
【0055】
また、この実施形態においては、保持シート11を非水溶性の粘着剤を用いた粘着層12によって剥離シート13の上に剥離可能に貼着させるようにしたが、この粘着層12として、図11(A),(B)に示すように、網目状になった開口部12bが形成された熱伝導性の高いシート基材12aにおける上記の開口部12b内に非水溶性の粘着剤12cを充填させたものを用いることも可能である。
【0056】
そして、このように熱伝導性の高いシート基材12aの網目状になった開口部12bに非水溶性の粘着剤12cが充填させた粘着層12により冷却シート10を身体の貼付部位に貼付させると、上記の含水ゲル体15に含まれる水分による冷却効果が上記の熱伝導性の高いシート基材12aを通して貼付部位に伝わり、より高い冷却効果が得られるようになる。
【0057】
また、この実施形態においては、収容容器20における収容凹部21の底部に凸部23を設けるにあたり、この凸部23が収容凹部21の底部から開口された上面に至るようにしたが、図12に示すように、この凸部23の高さを低くして、収容凹部21の開口された上面に至らない高さにすることも可能である。
【0058】
そして、このような凸部23が設けられた収容容器20の収容凹部21内に、図13に示すように、上記の凸部23を保持シート11及び剥離シート13を貫通する貫通穴14に挿通させ、上記の剥離シート13が収容容器20の収容凹部21の底部側に位置するようにして、保持シート11を収容容器20の収容凹部21の底部に収容させた後、収容凹部21の底部に保持された保持シート11の上に流動性のゲル組成物を充填させ、この流動性のゲル組成物を硬化させて、高含水率で低粘着性の含水ゲル体15を形成することも可能である。
【0059】
このようにすると、図14(A),(B)に示すように、上記の保持シート11及び剥離シート13を貫通する貫通穴14と連通するようにして含水ゲル体15に凹みが形成され、含水ゲル体15を貫通しない穴部16が形成された冷却シート10が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の一実施形態において、携帯用冷却シートに使用する収容容器の概略平面図及び概略断面図である。
【図2】上記の実施形態において、剥離シート上に非水溶性の粘着剤を用いた粘着層により保持シートを剥離可能に貼着させた状態を示した概略平面図及び概略断面図である。
【図3】上記の実施形態において、収容容器における収容凹部の底部側に剥離シートが位置するようにして、保持シートをこの収容凹部の底部に収容させた状態を示した概略断面図である。
【図4】上記の実施形態において製造した携帯用冷却シートの状態を示した概略断面図である。
【図5】上記の実施形態における携帯用冷却シートにおいて、収容容器から取り出した冷却シートの概略断面図及び概略平面図である。
【図6】上記の実施形態において、携帯用冷却シートに使用する収容容器の第1の変更例を示した概略平面図である。
【図7】上記の第1の変更例にかかる収容容器を用いて製造した冷却シートの概略平面図である。
【図8】上記の実施形態において、携帯用冷却シートに使用する収容容器の第2の変更例を示した概略平面図である。
【図9】上記の第2の変更例にかかる収容容器を用いて製造した冷却シートの概略平面図である。
【図10】上記の実施形態における携帯用冷却シートにおいて、高含水率で低粘着性の含水ゲル体中に少なくとも表面が親水性を有する繊維を分散させた状態を示した概略断面図である。
【図11】上記の実施形態において、剥離シート上に保持シートを剥離可能に貼着させる粘着層の変更例を示した概略平面図及び概略断面図である。
【図12】上記の実施形態において、携帯用冷却シートに使用する収容容器の第3の変更例を示した概略平面図である。
【図13】上記の第3の変更例にかかる収容容器を用いて携帯用冷却シートを製造した状態を示した概略断面図である。
【図14】上記の第3の変更例にかかる収容容器を用いて製造した冷却シートを示した概略断面図及び概略平面図である。
【符号の説明】
【0061】
10 冷却シート
11 保持シート
12 粘着層
12a シート基材
12b 開口部
12c 粘着剤
13 剥離シート
14 貫通穴
15 含水ゲル体
16 穴部
17 繊維
20 収容容器
21 収容凹部
22 鍔部
23 凸部
24 閉塞部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶性の粘着剤を用いた粘着層により剥離シート上に剥離可能に貼着された保持シートの上に高含水率で低粘着性の含水ゲル体が形成された冷却シートを、収容容器に設けられた収容凹部内に上記の剥離シートが収容凹部の底部側に位置するように収容させ、上記の収容容器における収容凹部上面の開口部分を閉塞部材より閉塞させた携帯用冷却シートにおいて、上記の収容容器における収容凹部の底部に上方に突出した凸部を設け、この収容凹部の凸部に対応して、上記の冷却シートに、少なくとも剥離シート及び保持シートを貫通して含水ゲル体に至る穴部を形成したことを特徴とする携帯用冷却シート。
【請求項2】
請求項1に記載した携帯用冷却シートにおいて、上記の収容容器における収容凹部の底部に上方に突出した凸部を複数設けると共に、この凸部を上方に向かって収縮した形状に形成したことを特徴とする携帯用冷却シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載した携帯用冷却シートにおいて、上記の冷却シートにおける穴部が上記の含水ゲル体を貫通するように形成したことを特徴とする携帯用冷却シート。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載した携帯用冷却シートにおいて、上記の含水ゲル体に、少なくとも表面が親水性を有する繊維を分散させたことを特徴とする携帯用冷却シート。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載した携帯用冷却シートにおいて、上記の冷却シートにおける粘着層が、多数の開口部を有する熱伝導性の高いシート基材の開口部内に非水溶性の粘着剤が充填されて構成されていることを特徴とする携帯用冷却シート。
【請求項6】
収容凹部の底部に上方に突出した凸部が設けられた収容容器を用い、この収容凹部における凸部と対応するように、非水溶性の粘着剤を用いた粘着層により剥離シート上に剥離可能に貼着された保持シートに貫通穴を設け、この貫通穴に収容凹部の底部に設けられた上記の凸部を挿通させるようにして、上記の剥離シートが収容容器の収容凹部の底部側に位置するように保持シートを収容凹部に収容させた後、この収容容器の収容凹部内に流動性のゲル組成物を充填させ、このゲル組成物を硬化させて、上記の保持シートの上に高含水率で低粘着性の含水ゲル体を形成すると共に、上記の収容凹部上面の開口部分を閉塞部材より閉塞させることを特徴とする携帯用冷却シートの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載した携帯用冷却シートの製造方法において、上記の流動性のゲル組成物に少なくとも表面が親水性を有する繊維を混合させて、少なくとも表面が親水性を有する繊維が分散された含水ゲル体を形成することを特徴とする携帯用冷却シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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