説明

携帯用切断工具

【課題】別部品の追加によるコストアップを招くことなく、粉塵の付着による切断刃周辺の照明低下を防ぐことができる携帯用切断工具を提供すること。
【解決手段】モータを駆動源として切断刃4を駆動するとともに、前記切断刃4の周囲をダストカバー14で覆い、前記切断刃4付近に光を照射を照射するライト17を設けて成る携帯用切断工具1において、前記ダストカバー14を透明な樹脂で構成し、前記ライト17から照射される光をダストカバー14の樹脂内に取り込んで透過させることによって前記切断刃4付近を照明する。又、前記ダストカバー14を左右2分割構造とするとともに、その分割面上に前記ライト17を配置する。更に、前記ダストカバー14の前記ライト17の下方の部位に、前記ライト17から照射された光をダストカバー14の樹脂内に取り込むためのリブ14aを光の照射方向に沿って形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断刃付近を光を照射するライトを備えた携帯用切断工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯用切断工具を用いて木材や石膏ボード等の被切断材を切断する作業においては、粉塵が周囲に飛散して作業環境を汚染するため、切断刃の周囲をダストカバーによって覆う構成が採用されていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
又、切断箇所の視認性を高めるためにライトを設け、該ライトによって切断刃の周辺を照明したり、ダストカバーに光ファイバー等の光伝達部品を設けることが行われていた。
【特許文献1】実公平1−026402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、切断作業時に粉塵を発生する携帯用切断工具に切断刃の周辺を照明するライトを設けた場合、粉塵がダストカバーやライトに付着し、ライトから照射される光が粉塵によって遮られて切断刃まで到達せず、切断刃の周辺を十分照明することができないという問題があった。又、ダストカバーに光ファイバー等の光伝達部品を設けるとコストアップを招くという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、別部品の追加によるコストアップを招くことなく、粉塵の付着による切断刃周辺の照明低下を防ぐことができる携帯用切断工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、モータを駆動源として切断刃を駆動するとともに、前記切断刃の周囲をダストカバーで覆い、前記切断刃付近に光を照射するライトを設けて成る携帯用切断工具において、前記ダストカバーを透光性を有する樹脂で構成し、前記ライトから照射される光をダストカバーの樹脂内に取り込んで透過させることによって前記切断刃付近を照明することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ダストカバーを左右2分割構造とするとともに、その分割面上に前記ライトを配置したことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記ダストカバーの前記ライトの下方の部位に、前記ライトから照射された光をダストカバーの樹脂内に取り込むためのリブを光の照射方向に沿って形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記ダストカバーの屈曲部をR形状又は斜面形状としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、ダストカバーを透光性を有する樹脂で構成し、ライトから照射される光をダストカバーの透光性を有する樹脂内に取り込んで透過させることによって切断刃付近を照明するようにしたため、切断箇所の視認性が粉塵の付着によって低下することがなく、切断作業を正確且つ能率良く行うことができる。そして、この効果は光ファイバー等の別部品を追加することなく得られるため、コストアップを招くことがない。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、ダストカバーを左右2分割構造とするとともに、その分割面上にライトを配置したため、ライトから出射される光をダストカバーの左右の分割片に均等に振り分けて該分割片の透光性を有する樹脂内を透過させることができ、切断刃の周辺を均一に照明して切断箇所の視認性を高めることができる。又、分割面にライトを配置したため、ライトの通路を簡単に構成することができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、ダストカバーのライトの下方の部位にリブを形成したため、ライトから照射された光をリブによってダストカバーの透光性を有する樹脂内に取り込むことができる。又、リブによってライトの光を無駄なく効率良く利用することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、ダストカバーの屈曲部をR形状又は斜面形状としたため、該ダストカバーの透光性を有する樹脂内に取り込まれたライトの光を屈曲部のR形状又は斜面形状で反射させて該屈曲部に沿って透過させることができ、透過した光をダストカバーの端面から出射させて切断刃の周辺を効率良く照明することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明に係る携帯用切断工具の左側面図、図2は同携帯用切断工具の破断左側面図、図3は同携帯用切断工具の正面図、図4は同携帯用切断工具前部の底面図、図5は同携帯用切断機前部の右側面図、図6は同携帯用切断機前部の左側面図、図7は図6のA−A線断面図である。
【0016】
図示の携帯用切断工具1は、左右2分割構造のハウジング2を備えており、図2に示すように、このハウジング2内には駆動源であるモータ3と、該モータ3の回転を減速する減速機及びモータ3の減速された回転をナイフ状の切断刃4の揺動及び上下運動に変換するクランク機構等が収納されている。
【0017】
又、ハウジング2の前端下部(図1及び図2の左方を前方とする)には案内定盤5が取り付けられており、ハウジング2の後端には充電可能なバッテリ6が着脱可能に装着され、ハウジング2のハンドル部2Aの下面にはトリガスイッチ7が設けられている。
【0018】
ところで、図2に示すように、前記モータ3から前方に向かって延びる出力軸(モータ軸)3aの先端には小径のベベルギヤ8が結着されている。又、ハウジング2の前部には回転軸9がモータ軸3aに対して直角(図2の紙面垂直方向)に配されており、この回転軸9には大径のベベルギヤ10と不図示の偏心カムが結着されており、ベベルギヤ10はモータ軸3aの先端に結着された前記ベベルギヤ8に噛合している。尚、ベベルギヤ8,10によって前記減速機構が構成されている。
【0019】
更に、ハウジング2内の前部には、その上端部が前記偏心カムに係合する切断刃取付ロッド11が設けられており、この切断刃取付ロッド11の下部は不図示の揺動支点を中心として前後に揺動及び上下に移動可能であって、その下端部には保持具12及びこれに挿通する2本のボルト13によって前記切断刃4が取り付けられている。ここで、図7に示すように、前記案内定盤5には前後方向に長いスリット状の刃口5aが貫設されており、切断刃4は刃口5aを貫通してその一部が案内定盤5の下方へ突出している。尚、偏心カムとこれに係合する切断刃取付ロッド11によって前記クランク機構が構成されている。
【0020】
又、ハウジング2の前部には、粉塵の飛散を防ぐための箱状のダストカバー14が図5に示すボルト15によって取り付けられており、このダストカバー14によって切断刃4の周囲が覆われている。ここで、ダストカバー14は、ポリカーボネイト(PC)等の透明又は半透明等の透光性を有する樹脂で構成されており、図3に示すように、ハウジング2の分割面と同じ面で左右に2分割され、該ダストカバー14の左右の分割片14A,14Bは、図5に示す2本の固定ねじ16によって結合一体化されている。
【0021】
ところで、本実施の形態では、図6及び図7に示すように、ハウジング2の前面上部には、該ハウジング2の左右の分割面に沿って側面視円弧状の凸部2aが突設されており、この凸部2aの下面はダストカバー14の左右の分割面14A,14Bに向かって開口している。そして、ハウジング2の凸部2a内には、図7に示すように、LED等のライト17が収容されており、このライト17から延びる不図示のリード線は、ハウジング2の凸部2a内及びハウジング2内を通って前記バッテリ6に接続されている。
【0022】
他方、透光性を有する樹脂によって構成されたダストカバー14は、前述のように左右の分割片14A,14Bが2本の固定ねじ16によって結合一体化されているが、図7に示すように、該ダストカバー14の分割面上に前記ライト17が配置されている。又、図7に示すように、ダストカバー14のライト14の下方の部位には、ライト14から照射された光を当該ダストカバー14の樹脂内に取り込むための幅の狭いリブ14aが光の照射方向(上下方向)に沿って形成されている。即ち、ダストカバー14の左右の分割片14A,14Bのライト17の下方に部位に凹部(窪み)14bがそれぞれ形成されることによって、その分割面に沿うリブ14aが形成されており、このリブ14aから下方において左右の分割片14A,14Bには水平部14cと各水平部14cから垂直下方に延びる垂直部14dがそれぞれ形成されている。
【0023】
そして、ダストカバー14の左右の分割片14A,14Bのリブ14aよりも下方の部位においては、図7に示すように、リブ14aと水平部14cとの接続部である直角の屈曲部14eはR形状に成形され、又、水平部14cと垂直部14dとの接続部である直角の屈曲部14fもR形状に成形されている。
【0024】
次に、以上のように構成された携帯用切断工具1の動作について説明する。
【0025】
作業者がハウジング2のハンドル部2Aを把持して指でトリガスイッチ7を引いてこれをONすると、バッテリ6からモータ3に通電されて該モータ3が起動され、このモータ3の出力軸(モータ軸)3aが回転駆動される。そして、このモータ軸3aの回転は、ベベルギヤ8,10によって減速及び回転方向が直角に切り換えられて回転軸9に伝達され、該回転軸9とこれに結着された不図示の偏心カムが所定の速度で回転駆動される。
【0026】
上述のように偏心カムが回転すると、この偏心カムにその上部が係合する切断刃取付ロッド11が下部の不図示の支点を中心として揺動しつつ上下運動をするため、その下端に取り付けられたナイフ状の切断刃4も同様の運動を行い、この切断刃4によって石膏ボード等の不図示の被切断材が切断される。そして、この切断によって粉塵が発生するが、前述のように切断刃4の周囲はダストカバー14によって覆われているため、粉塵の周囲への飛散はダストカバー14によって防がれる。
【0027】
而して、上述のように切断によって粉塵が発生すると、この粉塵はダストカバー14の内面に付着して切断箇所の視認性が低下するが、このような場合には不図示のスイッチをONしてバッテリ6からライト17に給電することによって該ライト17を点灯させれば、このライト17から照射される光がダストカバー14の透明な樹脂内に取り込まれ、この取り込まれた光は樹脂内を透過して切断刃4の周辺を照明するため、切断箇所の視認性が粉塵の付着によって低下することがなく、切断作業を正確且つ能率良く行うことができる。
【0028】
即ち、図7に矢印にて示すように、ライト17から垂直下方に出射される光は、その下部に形成されたダストカバー14のリブ14aによって該ダストカバー14の透明な樹脂の内部に取り込まれ、その一部は照射光L1として切断刃4を上方から照らし、残りの光はダストカバー14のR形状を成す屈曲部14eに沿って直角に屈曲してダストカバー14の左右の分割片14A,14Bの各水平部14cの内部を水平に透過した後、R形状を成す屈曲部14fに沿って直角に屈曲してダストカバー14の左右の分割片14A,14Bの各垂直部14dの内部を垂直下方に透過し、最後に各垂直部14dの下端面から照射光L2,L3として大気中に出射して切断刃4の周辺を照らす。尚、本実施の形態では、ダストカバー14の左右の分割片14A,14Bの各屈曲部14e,14fをR形状としたが、斜面形状とすることによって樹脂内を透過する光を反射させ、その光の透過方向を直角に曲げるようにしても良い。
【0029】
以上のように、本実施の形態では、ダストカバー14を透明な樹脂で構成し、該ダストカバー14のライト17の下方の部位にリブ14aを形成したため、ライト17から照射される光をリブ14aからダストカバー14の透明な樹脂内に取り込んで透過させることによって切断刃4付近を照明することができる。この結果、切断箇所の視認性が粉塵のダストカバー14内面への付着によって低下することがなく、切断作業を正確且つ能率良く行うことができる。そして、この効果は光ファイバー等の別部品を追加することなく得られるため、コストアップを招くことがない。
【0030】
又、本実施の形態では、ダストカバー14を左右2分割構造とするとともに、その分割面上にライト17を配置したため、ライト17から出射される光をダストカバー14の左右の分割片14A,14Bに均等に振り分けて該分割片14A,14Bの透明な樹脂内を透過させることができ、切断刃4の周辺を均一に照明して切断箇所の視認性を高めることができる。又、ダストカバー14の分割面にライト17を配置したため、該ライト17の通路を管単に構成することができる。
【0031】
更に、本実施の形態では、ダストカバー14の左右の分割片14A,14Bの屈曲部14e,14fをR形状としたため、左右の分割片14A,14Bの透明な樹脂内に取り込まれたライト17の光を屈曲部14e,14fのR形状で反射させて該屈曲部14e,14fに沿って透過させることができ、透過した光を左右の分割片14A,14Bの下端面から出射させて切断刃4の周辺を効率良く照明することができる。又、凹部14bを形成することによりライト17からの光がリブ14aに集中するため、ダストカバー14の上側で光が分散することがなく、切断刃4付近を確実に照射することができる。
【0032】
尚、以上は本発明をナイフ状の切断刃を揺動及び上下運動させることによって切断を行う携帯用切断工具に適用した形態について説明したが、本発明は、円板状の回転刃を回転させて切断を行うディスクグラインダ等の他の任意の携帯用切断工具に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る携帯用切断工具の左側面図である。
【図2】本発明に係る携帯用切断工具の破断左側面図である。
【図3】本発明に係る携帯用切断工具の正面図である。
【図4】本発明に係る携帯用切断工具前部の底面図である。
【図5】本発明に係る携帯用切断工具前部の右側面図である。
【図6】本発明に係る携帯用切断工具前部の左側面図である。
【図7】図6のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 携帯用切断工具
2 ハウジング
2A ハウジングのハンドル部
2a ハウジングの凸部
3 モータ
3a モータの出力軸(モータ軸)
4 切断刃
5 案内常盤
5a 案内常盤の刃口
6 バッテリ
7 トリガスイッチ
8 ベベルギヤ
9 回転軸
10 ベベルギヤ
11 切断刃取付ロッド
12 保持具
13 ボルト
14 ダストカバー
14A,14B ダストカバーの分割片
14a ダストカバーのリブ
14b ダストカバーの凹部(窪み)
14c ダストカバーの水平部
14d ダストカバーの垂直部
14e,14f ダストカバーの屈曲部
15 ボルト
16 固定ねじ
17 ライト
L1,L2 照射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動源として切断刃を駆動するとともに、前記切断刃の周囲をダストカバーで覆い、前記切断刃付近に光を照射するライトを設けて成る携帯用切断工具において、
前記ダストカバーを透光性を有する樹脂で構成し、前記ライトから照射される光をダストカバーの樹脂内に取り込んで透過させることによって前記切断刃付近を照明することを特徴とする携帯用切断工具。
【請求項2】
前記ダストカバーを左右2分割構造とするとともに、その分割面上に前記ライトを配置したことを特徴とする請求項1記載の携帯用切断工具。
【請求項3】
前記ダストカバーの前記ライトの下方の部位に、前記ライトから照射された光をダストカバーの樹脂内に取り込むためのリブを光の照射方向に沿って形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の携帯用切断工具。
【請求項4】
前記ダストカバーの屈曲部をR形状又は斜面形状としたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の携帯用切断工具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−240466(P2009−240466A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89352(P2008−89352)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】