説明

携帯端末

【課題】外部の情報に対する通信時の作業性を低下させることなく消費電力の低減を図り得る携帯端末を提供する。
【解決手段】RFIDタグ処理部32および制御部31が収容される筐体21がベルト22により作業者の手首11に巻き付けられて装着される。そして、圧電素子23により検出される装着時のベルト22に作用する張力に応じた検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超える状態が第1の時間t1継続すると、制御部31によりRFIDタグ処理部32が通信状態になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の情報に対して通信する携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、外部の情報に対して通信する携帯端末に関する技術として、下記特許文献1に示すリーダライタが知られている。このリーダライタは、作業者の手袋に装着されている。そして、作業者が非接触ICカードを取り付けた荷物を持ち上げる際に、リーダライタが非接触ICカードの近傍に位置する場合にこの非接触ICカードと無線通信することで、当該非接触ICカードに記憶されている商品情報が読み取られる。
【0003】
また、下記特許文献2に示すリーダライタは、アンテナが手袋に内蔵されており、リーダライタ本体が作業者の腰等に取り付けられる。そして、上記手袋をつけた作業者がRFIDタグを貼着した荷物を持ち上げる際に、アンテナを介してRFIDタグと無線通信することで、当該RFIDタグのメモリに記録されている情報が読み取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−296628号公報
【特許文献2】特開2002−347937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示すリーダライタのような構成では、常に非接触ICカード等の読取対象を読み取り可能な状態であるため、消費電力の低減が困難であるという問題がある。また、上記特許文献2に示すリーダライタのような構成では、ON/OFFスイッチがあるものの、消費電力の低減のために読取作業毎にスイッチを都度操作すると、作業性が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、外部の情報に対する通信時の作業性を低下させることなく消費電力の低減を図り得る携帯端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の携帯端末では、外部の情報に対して通信可能な通信手段とこの通信手段を制御する制御手段とが筐体内に収容されて成る携帯端末であって、前記筐体を作業者の手首に装着するために当該手首に巻き付けられるベルトと、装着時の前記ベルトに作用する張力に応じた検出値を出力する検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記検出手段からの前記検出値が手を開いたときの張力に応じて設定される所定の閾値を超える状態が第1の時間継続すると、前記通信手段を通信状態にすることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の携帯端末において、前記制御手段は、前記検出手段から出力される前記検出値が前記所定の閾値よりも小さく設定される他の閾値を超えた後に前記所定の閾値を超えるまでの時間が、第2の時間内であると、前記通信手段を通信状態にすることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の携帯端末において、前記制御手段は、前記検出手段から出力される前記検出値が、第3の時間内に所定回数前記所定の閾値を超えると、前記通信手段を通信状態にすることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の携帯端末において、前記検出手段は、前記張力に応じた電圧を前記検出値として出力可能に前記ベルトに取り付けられる圧電素子であることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載の携帯端末において、前記検出手段は、前記圧電素子が前記ベルトに対して複数取り付けられて構成されることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の携帯端末において、手首に前記ベルトが取り付けられた状態にて手を複数回開閉することで前記検出手段から出力される前記検出値に応じて前記所定の閾値を設定する閾値設定手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の携帯端末において、前記通信手段は、前記外部の情報としてRFIDタグに記憶される情報に対して無線通信するRFIDタグ読取装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明では、通信手段および制御手段が収容される筐体がベルトにより作業者の手首に巻き付けられて装着される。そして、検出手段により検出される装着時のベルトに作用する張力に応じた検出値が手を開いたときの張力に応じて設定される所定の閾値を超える状態が第1の時間継続すると、制御手段により通信手段が通信状態になる。
【0015】
これにより、上記ベルトを手首に装着した作業者が上記第1の時間継続して手を開くことで通信手段が通信状態になるため、作業者の意図に応じて手首の動きだけで通信手段を通信状態にすることができる。
したがって、常に通信手段を通信状態にする必要もないので、外部の情報に対する通信時の作業性を低下させることなく消費電力の低減を図ることができる。
【0016】
請求項2の発明では、検出手段から出力される検出値が上記所定の閾値よりも小さく設定される他の閾値を超えた後に上記所定の閾値を超えるまでの時間が、第2の時間内であると、制御手段により通信手段が通信状態になる。このため、上記第2の時間を両閾値に応じて短く設定する場合には、作業者が通信状態を意図することなく手を自然に開いたとき、上記検出値が上記閾値を超えても他の閾値を超えた後に上記所定の閾値を超えるまでの時間が第2の時間内になければ、通信手段が通信状態になることはない。これにより、通信状態を意図しない手首の動きで通信手段が通信状態になることを抑制することができる。
【0017】
請求項3の発明では、検出手段から出力される検出値が第3の時間内に所定回数だけ所定の閾値を超えると、制御手段により通信手段が通信状態になる。これにより、通信手段が通信状態にするためには、作業者は意図的に手首を繰り返し動かす必要があるので、通信状態を意図しない手首の動きで通信手段が通信状態になることを確実に抑制することができる。
【0018】
請求項4の発明では、検出手段は、張力に応じた電圧を検出値として出力可能にベルトに取り付けられる圧電素子であるため、当該検出値を容易かつ確実に検出することができる。
【0019】
請求項5の発明では、検出手段は圧電素子がベルトに対して複数取り付けられて構成されるため、圧電素子が取り付けられるベルトの部位ごとで作用する張力がばらつく場合でも、各圧電素子からの電圧値を平均化等することで、手首の動きを精度良く検出することができる。
【0020】
請求項6の発明では、閾値設定手段により、手首にベルトが取り付けられた状態にて手を複数回開閉することで検出手段から出力される検出値に応じて所定の閾値が設定される。これにより、作業者によって手首へのベルトの取り付け方がばらつく場合であっても、その取り付け状態に応じた適切な閾値が設定されるため、手首の動きを精度良く検出することができる。
【0021】
請求項7の発明のように、通信手段として、外部の情報としてRFIDタグに記憶される情報に対して無線通信するRFIDタグ読取装置を採用する場合であっても、RFIDタグの情報に対する通信時の作業性を低下させることなく消費電力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係る携帯端末を手首に装着した状態を示す説明図である。
【図2】第1実施形態に係る携帯端末の回路構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】手首に装着された携帯端末を示す説明図であり、図3(A)は、手を閉じた状態を示し、図3(B)は手を開いた状態を示す。
【図4】第1実施形態における通信処理の流れを例示するフローチャートである。
【図5】第1実施形態における検出電圧の時間変化を示すグラフである。
【図6】第2実施形態における通信処理の流れを例示するフローチャートである。
【図7】第2実施形態における検出電圧の時間変化を示すグラフである。
【図8】第3実施形態における通信処理の流れを例示するフローチャートである。
【図9】第3実施形態における検出電圧の時間変化を示すグラフである。
【図10】第4実施形態における通信処理の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
以下、本発明の携帯端末を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
本第1実施形態に係る携帯端末20は、作業者の手首11に装着されることで携帯されて、外部の情報であるRFIDタグ(無線タグ)12に記録された情報に対して無線通信により読み書きするRFIDタグリーダライタとしての機能を備えている。当該携帯端末20は、図1および図2に示すように、筐体21とこの筐体21を作業者の手首11に装着するために当該手首11に巻き付けられるベルト22とを備えている。ベルト22には、当該ベルト22に対して長手方向に作用する張力に応じた電圧を検出して検出値として出力可能な圧電素子23が取り付けられている。なお、圧電素子23は、特許請求の範囲に記載の「検出手段」の一例に相当し得る。
【0024】
筐体21には、全体的制御を司る制御部31および公知のRFIDタグ12と無線通信するためのRFIDタグ処理部32などの各種電気部品と、各種電気部品の電源として機能するバッテリ(図示略)とが収容されるように構成されている。制御部31は、マイコンを主体として構成されるものであり、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有し、メモリとともに情報処理装置として機能する。このメモリには、制御部31により後述する通信処理を実行可能な所定のプログラムなどが予め格納されている。なお、制御部31は、特許請求の範囲に記載の「制御手段」の一例に相当し得る。
【0025】
通信状態のRFIDタグ処理部32は、アンテナ36および制御部31と協働してRFIDタグ12との間で電磁波による通信を行ない、RFIDタグ12に記憶される情報の読取り、或いはRFIDタグ12への情報の書込みを行なうように機能する。なお、RFIDタグ処理部32は、特許請求の範囲に記載の「通信手段」および「RFIDタグ読取装置」の一例に相当し得る。
【0026】
RFIDタグ処理部32は、公知の電波方式で伝送を行う回路として構成されており、図2に示すように、送信回路33、受信回路34、整合回路35などを有している。送信回路33は、キャリア発振器、符号化部、増幅器、送信部フィルタ、変調部などによって構成されており、キャリア発振器から所定の周波数のキャリア(搬送波)が出力される構成をなしている。また、符号化部は、制御部31に接続されており、当該制御部31より出力される送信データを符号化して変調部に出力する構成をなしている。
【0027】
変調部は、キャリア発振器からのキャリア(搬送波)、及び符号化部からの送信データが入力されるものであり、キャリア発振器より出力されるキャリア(搬送波)に対し、通信対象へのコマンド送信時に符号化部より出力される符号化された送信符号(変調信号)によってASK(Amplitude Shift Keying)変調された被変調信号を生成し、増幅器に出力している。また、増幅器は、入力信号(変調部によって変調された被変調信号)を所定のゲインで増幅し、その増幅信号を送信部フィルタに出力しており、送信部フィルタは、増幅器からの増幅信号をフィルタリングした送信信号を整合回路35を介してアンテナ36に出力している。このようにしてアンテナ36に送信信号が出力されると、その送信信号が電磁波として当該アンテナ36より外部に放射される。
【0028】
一方、アンテナ36によって受信された電波信号は、整合回路35を介して受信回路34に入力される。この受信回路34は、受信部フィルタ、増幅器、復調部、二値化処理部、複号化部などによって構成されており、アンテナ36を介して受信された信号を受信部フィルタによってフィルタリングした後、増幅器によって増幅し、その増幅信号を復調部によって復調する。そして、その復調された信号波形を二値化処理部によって二値化し、復号化部にて復号化した後、その復号化された信号を受信データとして制御部31に出力している。
【0029】
図3は、手首11に装着された携帯端末20を示す説明図であり、図3(A)は、手10を閉じた状態を示し、図3(B)は手10を開いた状態を示す。
制御部31には、圧電素子23からの電圧を増幅して検出電圧Vとして制御部31に出力する増幅回路37が接続されている。これにより、制御部31には、図3(A)に例示するように手10を閉じたときにベルト22に作用する張力や、図3(B)に例示するように手10を開いたときにベルト22に作用する張力、すなわち手首11の動きに対応して作用する張力に応じて、検出電圧Vが圧電素子23および増幅回路37を介して入力されることとなる。なお、本第1実施形態では、手10を開くと検出電圧Vが増加し手10を閉じると検出電圧Vが減少するような圧電素子23が採用されているが、これに限らず、手10を開くと検出電圧Vが減少し手10を閉じると検出電圧Vが増加するような圧電素子を採用してもよい。
【0030】
次に、本第1実施形態において制御部31により実施される通信処理について図4に示すフローチャートを用いて説明する。図4は、第1実施形態における通信処理の流れを例示するフローチャートである。
作業者の手首11にベルト22が巻き付けられることで携帯端末20が装着されて通信処理が開始されると、まず、図4のステップS101にて検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超えるか否かについて判定される。ここで、第1電圧閾値Vth1は、図3(B)に例示するように、手10を開いたときの張力に応じてこの張力よりも僅かに小さくなるように設定設定されており、図3(A)に例示するように手10を閉じている場合には、ステップS101にてNoとの判定が繰り返される。なお、第1電圧閾値Vth1は、特許請求の範囲に記載の「所定の閾値」の一例に相当し得る。
【0031】
そして、作業者が当該携帯端末20を通信状態にするために、図3(B)に例示するように、手10を開くことで検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超えると、ステップS101にてYesと判定される。次に、ステップS103にて計時処理がなされ、制御部31が有するクロック装置等の計時装置(図略)により検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超えたと判定されてからの経過時間tが計時される。
【0032】
続いて、ステップS105にて、検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超えているか否かについて判定され、検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超えた状態を維持している場合にはYesと判定される。そして、ステップS107にて、経過時間tが第1の時間t1を越えるまでNoと判定されてステップS105からの処理が繰り返される。ここで、第1の時間t1は、当該携帯端末20を通信状態にするために手首11の状態が維持される時間に相当し、本第1実施形態では例えば1秒に設定されている。
【0033】
ここで、経過時間tが第1の時間t1を越える場合、すなわち、図5に例示するように検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超える状態が第1の時間t1継続すると、通信状態移行を意図した手首11の動きであるとして、ステップS107にてYesと判定される。次に、ステップS109において、通信状態移行処理がなされる。この処理では、RFIDタグ処理部32が通信状態となり、当該携帯端末20の周囲に位置するRFIDタグ12に記憶される情報が読み取られる。なお、この処理では、当該携帯端末20の周囲に位置するRFIDタグ12に対して所定の情報を書き込む処理がなされてもよい。
【0034】
一方、経過時間tが第1の時間t1を越えるまでに検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1以下になると、通信状態移行を意図した手首11の動きでないとして、ステップS105にてNoと判定されて、上記ステップS101からの処理がなされる。
【0035】
以上説明したように、本第1実施形態に係る携帯端末20では、RFIDタグ処理部32および制御部31が収容される筐体21がベルト22により作業者の手首11に巻き付けられて装着される。そして、圧電素子23により検出される装着時のベルト22に作用する張力に応じた検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超える状態が第1の時間t1継続すると、制御部31によりRFIDタグ処理部32が通信状態になる。
【0036】
これにより、上記ベルト22を手首11に装着した作業者が第1の時間t1継続して手10を開くことでRFIDタグ処理部32が通信状態になるため、作業者の意図に応じて手首11の動きだけでRFIDタグ処理部32を通信状態にすることができる。
したがって、常にRFIDタグ処理部32を通信状態にする必要もないので、運搬など他の作業中であっても外部の情報に対して通信時の作業性を低下させることなく消費電力の低減を図ることができる。
【0037】
また、本第1実施形態に係る携帯端末20では、ベルト22に作用する張力を検出する検出手段として、当該張力に応じた電圧を検出値として出力可能にベルト22に取り付けられる圧電素子23が設けられるため、当該検出値を容易かつ確実に検出することができる。
【0038】
[第2実施形態]
次に、本発明の携帯端末を具現化した第2実施形態について、図6および図7を参照して説明する。図6は、第2実施形態における通信処理の流れを例示するフローチャートである。図7は、第2実施形態における検出電圧Vの時間変化を示すグラフである。
【0039】
本第2実施形態に係る携帯端末20では、制御部31による通信処理を図4に示すフローチャートに代えて図6に示すフローチャートに基づいて実施する点が、上記第1実施形態に係る携帯端末と異なる。したがって、上述した第1実施形態の携帯端末と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0040】
以下、本第2実施形態における通信処理について図6および図7を用いて説明する。
作業者の手首11にベルト22が巻き付けられることで携帯端末20が装着されて通信処理が開始されると、まず、図6のステップS201にて検出電圧Vが第2電圧閾値Vth2を超えるか否かについて判定される。ここで、第2電圧閾値Vth2は、図7に例示するように第1電圧閾値Vth1よりも所定量だけ小さく設定されており、検出電圧Vが第2電圧閾値Vth2を超えるまで、ステップS201にてNoとの判定が繰り返される。なお、第2電圧閾値Vth2は、特許請求の範囲に記載の「他の閾値」の一例に相当し得る。
【0041】
そして、作業者が当該携帯端末20を通信状態にするために、図3(B)に例示するように、手10を開くことで検出電圧Vが第2電圧閾値Vth2を超えると、ステップS201にてYesと判定される。次に、ステップS203にて計時処理がなされ、検出電圧Vが第2電圧閾値Vth2を超えたと判定されてからの経過時間tが計時される。
【0042】
続いて、ステップS205にて、検出電圧Vが第2電圧閾値Vth2を超えているか否かについて判定され、検出電圧Vが第2電圧閾値Vth2を超えた状態を維持している場合にはYesと判定される。そして、ステップS207にて、検出電圧Vが上記第1電圧閾値Vth1を越えるまでNoと判定されてステップS205からの処理が繰り返される。
【0043】
ここで、検出電圧Vが上記第1電圧閾値Vth1を越えると(S207でYes)、ステップS209にて、経過時間tが第2の時間t2未満であるか否かについて判定される。ここで、第2の時間t2は、意識的な手首11の動きを検知するために手10を自然に開閉するときの時間よりも短く設定され、本第2実施形態では、例えば、1秒に設定されている。
【0044】
ここで、経過時間tが第2の時間t2未満である場合、すなわち、図7に例示するように検出電圧Vが第2電圧閾値Vth2を超えた後に第1電圧閾値Vth1を超えるまでの時間が第2の時間t2内である場合には、通信状態移行を意図した手首11の動きであるとして、ステップS209にてYesと判定される。次に、ステップS211において、上記第1実施形態と同様に通信状態移行処理がなされる。
【0045】
一方、検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を越えるまでに検出電圧Vが第2電圧閾値Vth2以下になると、通信状態移行を意図した手首11の動きでないとして、ステップS205にてNoと判定されて、上記ステップS201からの処理がなされる。また、検出電圧Vが第2電圧閾値Vth2を超えた後に第1電圧閾値Vth1を超えるまでの時間が第2の時間t2以上である場合には、通信状態移行を意図した手首11の動きでないとして、ステップS209にてNoと判定されて、上記ステップS211における通信状態移行処理を実施することなく当該通信処理を終了する。
【0046】
以上説明したように、本第2実施形態に係る携帯端末20では、検出電圧Vが第2電圧閾値Vth2を超えた後に第1電圧閾値Vth1を超えるまでの時間が第2の時間t2内であると、制御部31によりRFIDタグ処理部32が通信状態になる。このため、上記第2の時間t2を両閾値Vth1,Vth2に応じて短く設定する場合には、作業者が通信状態を意図することなく手10を自然に開いたとき、検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超えても第2電圧閾値Vth2を超えた後に第1電圧閾値Vth1を超えるまでの時間が第2の時間t2内になければ、RFIDタグ処理部32が通信状態になることはない。これにより、通信状態を意図しない手首11の動きでRFIDタグ処理部32が通信状態になることを抑制することができる。
【0047】
[第3実施形態]
次に、本発明の携帯端末を具現化した第3実施形態について、図8および図9を参照して説明する。図8は、第3実施形態における通信処理の流れを例示するフローチャートである。図9は、第3実施形態における検出電圧Vの時間変化を示すグラフである。
【0048】
本第3実施形態に係る携帯端末20では、制御部31による通信処理を図4に示すフローチャートに代えて図8に示すフローチャートに基づいて実施する点が、上記第1実施形態に係る携帯端末と異なる。したがって、上述した第1実施形態の携帯端末と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0049】
以下、本第3実施形態における通信処理について図8および図9を用いて説明する。
作業者の手首11にベルト22が巻き付けられることで携帯端末20が装着されて通信処理が開始されると、まず、図8のステップS301にてカウンタリセット処理がなされて後述するnが0(ゼロ)に設定される。次に、ステップS303にて検出電圧Vが上記第1電圧閾値Vth1を超えるか否かについて判定され、検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超えるまで、ステップS303にてNoとの判定が繰り返される。
【0050】
そして、検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超えるとステップS303にてYesと判定されて、ステップS305にてn=0(ゼロ)であるか否かについて判定される。ここで、後述するようにnがインクリメントされておらず上記ステップS301にてn=0に設定されたままの状態であれば(S305でYes)、ステップS307にて計時処理がなされ、最初に検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超えてからの経過時間tが計時される。
【0051】
次に、ステップS309にて検出電圧Vが上記第1電圧閾値Vth1を下回ったか否かについて判定され、検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を下回るまで、ステップS309にてNoとの判定が繰り返される。そして、検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を下回るとステップS309にてYesと判定されて、ステップS311にてインクリメント(n=n+1)された後に、ステップS313にてnがno以上であるか否かについて判定される。ここで、本第3実施形態では、nは、検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超えた後に第1電圧閾値Vth1を下回る状態の出現回数に相当し、noは、3回に設定されている。そのため、検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超えた後に第1電圧閾値Vth1を下回る状態の出現回数が3回以上になるまで、ステップS313にてNoと判定されて、ステップ303からの処理が繰り返される。
【0052】
そして、検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超えた後に第1電圧閾値Vth1を下回る状態の出現回数が3回以上になると(S313でYes)、ステップS315にて、経過時間tが第3の時間t3未満であるか否かについて判定される。ここで、第3の時間t3は、意識的な手首11の動きを検知するために手10を自然にno回だけ開閉するときの時間よりも短く設定され、本第3実施形態では、例えば、3秒に設定されている。
【0053】
ここで、経過時間tが第3の時間t3未満である場合、すなわち、図9に例示するように検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超えた後に第1電圧閾値Vth1を下回る状態の出現回数がno回以上になるまでの経過時間tが第3の時間t3内である場合には、通信状態移行を意図した手首11の動きであるとして、ステップS315にてYesと判定される。次に、ステップS317において、上記第1実施形態と同様に通信状態移行処理がなされる。
【0054】
一方、検出電圧Vが第1電圧閾値Vth1を超えた後に第1電圧閾値Vth1を下回る状態の出現回数がno回以上になるまでの経過時間tが第3の時間t3以上であると、通信状態移行を意図した手首11の動きでないとして、ステップS315にてNoと判定されて、上記ステップS317における通信状態移行処理を実施することなく当該通信処理を終了する。
【0055】
以上説明したように、本第3実施形態に係る携帯端末20では、検出電圧Vが第3の時間t3内に第1電圧閾値Vth1を超えた後に第1電圧閾値Vth1を下回る状態の出現回数がno回以上になると、制御部31によりRFIDタグ処理部32が通信状態になる。これにより、RFIDタグ処理部32を通信状態にするためには、作業者は意図的に手首11を繰り返し動かす必要があるので、通信状態を意図しない手首11の動きでRFIDタグ処理部32が通信状態になることを確実に抑制することができる。
【0056】
[第4実施形態]
次に、本発明の携帯端末を具現化した第4実施形態について、図10を参照して説明する。図10は、第4実施形態における通信処理の流れを例示するフローチャートである。
本第4実施形態に係る携帯端末20では、制御部31による通信処理を図4に示すフローチャートに代えて図10に示すフローチャートに基づいて実施する点が、上記第1実施形態に係る携帯端末と異なる。したがって、上述した第1実施形態の携帯端末と実質的に同一の構成部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0057】
以下、本第4実施形態における通信処理について図10を用いて説明する。
作業者の手首11にベルト22が巻き付けられることで携帯端末20が装着されて通信処理が開始されると、まず、図10のステップS401にて計測処理がなされ、検出電圧Vが計測されてメモリに記憶される。そして、所定数の検出電圧Vが計測されて記憶されるまでステップS403にてNoと判定されて、順次、検出電圧Vが計測されてメモリに記憶される。
【0058】
ここで、手首11にベルト22が取り付けられた状態にて手10を複数回開閉することで、手10の開閉に応じた検出電圧Vが所定数計測されてメモリに記憶されると、ステップS403にてYesと判定される。そして、ステップS405において閾値設定処理がなされ、メモリに記憶された各検出電圧Vに応じて電圧閾値Vth1が設定される。具体的には、例えば、各検出電圧Vの平均値に等しくなるように電圧閾値Vth1が設定される。このように電圧閾値Vth1が設定されると、以下、上記第1実施形態と同様に、ステップS101からの処理がなされる。なお、ステップS403では、所定数の検出電圧Vが計測されて記憶される場合にYesと判定することに限らず、例えば、検出電圧Vの計測中に手10が複数回(例えば5回)開閉するとYesと判定してもよいし、所定時間経過後にYesと判定してもよい。
【0059】
以上説明したように、本第4実施形態に係る携帯端末20では、手首11にベルト22が取り付けられた状態にて手10を複数回開閉することで計測される検出電圧Vに応じて電圧閾値Vth1が設定される。これにより、作業者によって手首11へのベルト22の取り付け方がばらつく場合であっても、その取り付け状態に応じた適切な閾値が設定されるため、手首11の動きを精度良く検出することができる。なお、上記第2,3実施形態において、本第4実施形態のように電圧閾値Vth1を設定しても、同様の作用効果を奏する。
【0060】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記各実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)ベルト22に対して長手方向に作用する張力を検出する検出手段として、上述した圧電素子23をベルト22に対して複数取り付けてもよい。これにより、圧電素子23が取り付けられるベルト22の部位ごとで作用する張力がばらつく場合でも、各圧電素子23からの電圧値を平均化等することで、手首11の動きを精度良く検出することができる。また、圧電素子23に代えて、ベルト22に対して作用する張力を検出する検出手段として機能するセンサ等を設けてもよい。
【0061】
(2)本発明は、RFIDタグ12に記録された情報に対して無線通信するRFIDタグリーダライタ機能を有する携帯端末に適用されることに限らず、例えば、光学的に情報を読み取る光学的情報読取装置等、外部の情報に対して通信可能な携帯端末に採用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…手
11…手首
12…RFIDタグ
20…携帯端末
21…筐体
22…ベルト
23…圧電素子
31…制御部
32…タグ処理部
t…経過時間
t1…第1の時間
t2…第2の時間
t3…第3の時間
V…検出電圧
Vth1…第1電圧閾値(所定の閾値)
Vth2…第2電圧閾値(他の閾値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の情報に対して通信可能な通信手段とこの通信手段を制御する制御手段とが筐体内に収容されて成る携帯端末であって、
前記筐体を作業者の手首に装着するために当該手首に巻き付けられるベルトと、
装着時の前記ベルトに作用する張力に応じた検出値を出力する検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記検出手段からの前記検出値が手を開いたときの張力に応じて設定される所定の閾値を超える状態が第1の時間継続すると、前記通信手段を通信状態にすることを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検出手段から出力される前記検出値が前記所定の閾値よりも小さく設定される他の閾値を超えた後に前記所定の閾値を超えるまでの時間が、第2の時間内であると、前記通信手段を通信状態にすることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記制御手段は、前記検出手段から出力される前記検出値が、第3の時間内に所定回数前記所定の閾値を超えると、前記通信手段を通信状態にすることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記検出手段は、前記張力に応じた電圧を前記検出値として出力可能に前記ベルトに取り付けられる圧電素子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記検出手段は、前記圧電素子が前記ベルトに対して複数取り付けられて構成されることを特徴とする請求項4に記載の携帯端末。
【請求項6】
手首に前記ベルトが取り付けられた状態にて手を複数回開閉することで前記検出手段から出力される前記検出値に応じて前記所定の閾値を設定する閾値設定手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の携帯端末。
【請求項7】
前記通信手段は、前記外部の情報としてRFIDタグに記憶される情報に対して無線通信するRFIDタグリーダライタであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−170660(P2011−170660A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34409(P2010−34409)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】