説明

携帯通信端末装置

【課題】本発明の目的は、携帯性を損なうこと無くパーソナルコンピュータ端末として使用できる携帯通信端末装置を提供することにある。
【解決手段】携帯通信端末装置は、無線通信を行う携帯端末アプリケーションプログラム(AP)と、携帯端末オペレーティングシステム(OS)と、データ処理を行うデータ処理APと、データ処理OSと、仮想マシン化ソフトウェアとを具備する。携帯端末OSは、携帯端末APから共通して利用される基本的な機能を提供し、携帯端末APを管理する基本ソフトウェアである。データ処理OSは、データ処理APから共通して利用される基本的な機能を提供し、データ処理APを管理する基本ソフトウェアである。仮想マシン化ソフトウェアは、データ処理OSを搭載するハードウェアを仮想マシンのハードウェアに模擬してデータ処理OSが実行可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯通信端末装置は、その分野の新規性ゆえに技術の標準化や規格の統一が遅れ、また携帯性にゆえに、小型化が推し進められてきたことにより、外部装置とのインターフェース変更が物理的に困難であった。現在では、共通インターフェースとして、無線LAN通信機能を備えた携帯通信端末装置が現れ、PCやサーバといった端末との接続性の向上が期待されている。しかし、内部データや各種OS(Operating System)については、製造メーカーおよび通信事業者の携帯通信端末装置毎の仕様の違いから相互接続性が低く、利用者側が使用するハードウェアをより強く意識する必要がある。したがって、携帯通信端末装置の利用者は、このような仕様の違いを意識することなく携帯通信端末装置を利用したいという要求がある。さらに、パーソナルコンピュータ(PC)やサーバと同様の機能を有するハードウェアとして利用したいという要求がある。一方、微細化技術の発展により、携帯通信端末装置は小型でかつ高性能化、多機能化が進んでいるという背景がある。
【0003】
現在、PDA(Personal Digital Assistant)や携帯電話といった携帯通信端末装置と、モバイルPCを含めたパーソナルコンピュータ(PC)やサーバとのデータ移動の双方向性、互換性が良くない。そのため、データ転送などの操作において、利用者は、その端末毎に特化したハードウェアおよびソフトウェアを利用し、特別な操作を行う必要がある。また、携帯通信端末装置は機種依存性も高く、携帯通信端末装置のメーカー毎およびインフラを提供する通信事業者毎にそれぞれの携帯通信端末装置に対応したハードウェアおよびソフトウェアがあるという状況である。そのため、利用者間のデータ転送や通信において、さまざまな弊害が生じている。
【0004】
また、携帯通信端末装置の利用形態からみると、携帯通信端末装置には個人情報が多く蓄積されている。そのため、携帯通信端末装置に蓄積される情報の漏洩や改ざんを防がねばならない。しかし、これらの情報の漏洩や改ざんを防ぐための機能的な制約が多く存在している。
【0005】
特開2003−9204号公報によれば、Java(登録商標)仮想マシンを利用した携帯電話を用いた地域データ・ダウンロードシステムが開示されている。このシステムは、携帯電話と、地域データ・サービスサーバーとを備える。携帯電話は、インターネットに接続可能で、Java(登録商標)仮想マシンを備えたブラウザを搭載し、地域データ・サービスサーバーから基地局を介してJava(登録商標)アプレットをダウンロードする。地域データ・サービスサーバーは、この携帯電話に位置データを与えるとともに、回線接続する基地局と携帯電話にインターネットを介して位置データに対応する地域データを提供する。Java(登録商標)アプレットは、基地局から与えられる位置データを地域データ・サービスサーバーに送信処理し、地域データ・サービスサーバーから位置データに対応する地域データを取得処理することを特徴とするものである。
【0006】
また、特開2001−282560号公報によれば、仮想計算機制御方法に関する技術が開示されている。この仮想計算機制御方法は、仮想的に複数のオぺレーティングシステムを動作させ、消費電力制御要求を受け付けるステップと、資源の割当てを行うステップとを有することを特徴とする。消費電力制御要求を受け付けるステップは、オペレーティングシステムの動作条件の変化に応じて発行された消費電力制御要求を受け付ける。資源の割当てを行うステップは、受け付けた消費電力制御要求の内容に応じて各オペレーティングシステムへの資源の割当てを行う。この消費電力制御要求は、オペレーティングシステムの負荷状況に応じて装置を低い動作クロックで動作させるための低速度状態移行要求、装置を停止させるための休止状態移行要求、または装置を通常状態に復帰させる通常状態復帰要求のいずれかであることを特徴とする。
【0007】
特開2002−351667号公報によれば、ネットワーク上のサーバからダウンロードしたアプリケーションの保管状況を保管済みアプリケーションリストによって管理することが可能な共用端末を1台以上備えたサービス提供システムが開示されている。このサービス提供システムは、リスト転送プロセスと、判定手段と、アプリケーション転送プロセスとを備えたことを特徴とする。リスト転送プロセスは、共用端末からユーザーがログインすると、このユーザーが使用可能なアプリケーションのリストを共用端末に転送する。判定手段は、上記リスト転送プロセスによって転送された使用可能アプリケーションリストから所望のアプリケーションの実行が指示されると、この実行対象アプリケーションが共用端末に保管されているか否かを保管済みアプリケーションリストに基づいて判定する。アプリケーション転送プロセスは、判定手段によって実行対象アプリケーションが保管されていないと判定された場合、この実行対象アプリケーションを共用端末に転送する。このアプリケーション転送プロセスは、判定手段によって実行対象アプリケーションが保管されていると判定された場合であっても、この実行対象アプリケーションのバージョンが最新でない場合は、最新バージョンの実行対象アプリケーションを共用端末に転送する。
【0008】
【特許文献1】特開2003−9204号公報
【特許文献2】特開2001−282560号公報
【特許文献3】特開2002−351667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、携帯性を損なうこと無くパーソナルコンピュータ端末として使用できる携帯通信端末装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、装置内に蓄積される情報の漏洩や改ざんが行われ難い携帯通信端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、[発明を実施するための最良の形態]で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための最良の形態]との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0011】
本発明の観点では、携帯通信端末装置(10)は、プログラムを格納するメモリ(12)と中央処理装置(CPU:11)とを備え、CPU(11)が実行する無線により他の無線端末と通信する携帯端末アプリケーションプログラム(112、212)と、携帯端末オペレーティングシステム(130、213)と、データ処理を行うデータ処理アプリケーションプログラム(122、222)と、データ処理オペレーティングシステム(123、223)と、仮想マシン化ソフトウェア(124、230)とを具備する。携帯端末オペレーティングシステム(130、213)は、携帯端末アプリケーションプログラム(112、212)から共通して利用される基本的な機能を提供し、携帯端末アプリケーションプログラム(112、212)を管理する基本ソフトウェアである。データ処理オペレーティングシステム(123、223)は、データ処理アプリケーションプログラム(122、222)から共通して利用される基本的な機能を提供し、データ処理アプリケーションプログラム(122、222)を管理する基本ソフトウェアである。仮想マシン化ソフトウェア(124、230)は、データ処理オペレーティングシステム(123、223)を搭載するハードウェア(10)を仮想マシンのハードウェアに模擬し、データ処理オペレーティングシステム(123、223)を実行可能とする。
【0012】
本発明の仮想マシン化ソフトウェア(124)は、携帯端末オペレーティングシステム(130)から提供される基本的な機能を利用し、携帯端末オペレーティングシステム(130)により管理される。即ち、携帯端末オペレーティングシステム(130)の1アプリケーションプログラムとして実行される。
【0013】
仮想マシン化ソフトウェア(124)は、データ処理アプリケーションプログラム(122)がLAN(Local Area Network)を介して外部装置(300)にアクセスする仮想LANインターフェース(125)を備える。仮想LANインターフェース(125)は、データ処理アプリケーションプログラム(122)と携帯端末アプリケーションプログラム(112)との間のアクセスを制限する。即ち、データ処理アプリケーションプログラムは、携帯端末アプリケーションプログラムが管理するデータにアクセスできない。携帯端末オペレーティングシステムは、外部装置から携帯端末アプリケーションプログラムに対するインターフェースを有していないため、携帯端末アプリケーションプログラムが管理するデータは外部装置からのアクセスに対しても保護される。
【0014】
また、本発明の携帯通信端末装置は、さらに仮想マシン化専用オペレーティングシステム(240)を具備する。仮想マシン化専用オペレーティングシステム(240)は、ハードウェア(10)上で他のオペレーティングシステムを介さず動作する。仮想マシン化専用オペレーティングシステム(240)は、仮想マシン化ソフトウェア(230)に利用される基本的な機能を提供し、仮想マシン化ソフトウェア(230)を管理する基本ソフトウェアである。このOS上で仮想マシン化ソフトウェア(230)が実行されて仮想マシンが構築される。この仮想マシン上で携帯端末オペレーティングシステム(213)とデータ処理オペレーティングシステム(223)が独立的に実行される。夫々のオペレーティングシステムが独立して実行されることにより、夫々のアプリケーションプログラムが管理するデータの隔離性が確保される。仮想マシン上で携帯端末オペレーティングシステム(213)とデータ処理オペレーティングシステム(223)とは並列に動作してもよい。
【0015】
本発明の仮想マシン化ソフトウェア(230)は、第1仮想LANインターフェース(231)と第2仮想LANインターフェース(232)とを含む。第1仮想LANインターフェース(231)は、携帯端末オペレーティングシステム(213)に提供する。第2仮想LANインターフェース(232)は、データ処理オペレーティングシステム(223)に提供する。この第1仮想LANインターフェース(231)と第2仮想LANインターフェース(232)との間のアクセスは制限される。そのため、装置内の情報を隔離しつつ、外部の端末との相互接続性を確保できる。
【0016】
本発明の第1仮想LANインターフェース(231)は、第2仮想LANインターフェース(232)がアクセスする外部装置(300)からの携帯端末アプリケーションプログラム(212)に対するアクセスを制限する。
【0017】
本発明の携帯通信端末装置は、着脱可能な記憶部(120、220)を備える。この記憶部(120、220)には、データ処理アプリケーションプログラム(122、222)とデータ処理オペレーティングシステム(123、223)とを格納する。また、この記憶部(120、220)にはデータ処理アプリケーションプログラム(122、222)が処理するデータ(121、221)が格納されてもよい。
【0018】
本発明の携帯通信端末装置は、動作モードを設定するスイッチを備える。このスイッチは、携帯端末アプリケーションプログラム(112、210)とデータ処理アプリケーションプログラム(122、222)とを動作させるか否かを設定する。したがって、CPU(11)は、このスイッチにより設定されるアプリケーションプログラムを実行することになる。このスイッチは、データ処理アプリケーションプログラム(122、222)が格納される記憶部が装着されるか否かにより実現されてもよい。
【0019】
本発明の携帯通信端末装置において、データ処理アプリケーションプログラム(122、222)とデータ処理オペレーティングシステム(123、223)とは、携帯端末アプリケーションプログラム(112、213)と携帯端末オペレーティングシステム(130、213)とにより外部からダウンロードされてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、携帯性を損なうこと無くパーソナルコンピュータ端末として使用できる携帯通信端末装置を提供することができる。また、本発明によれば、装置内の情報が隔離され、情報の漏洩や改ざんが行われ難い携帯通信端末装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。図1に携帯通信端末装置として例示される携帯電話の構成を示すブロック図が示される。この携帯通信端末装置10は、CPU(中央処理装置)11、メモリ12、操作部13、無線インターフェース部14、音声処理部15、マイク16、スピーカ17、表示部18、外部インターフェース部19を具備する。
【0022】
CPU11は、携帯通信端末装置10の全体を制御するためのプログラムを実行する。メモリ12は、CPU11が実行するプログラムや、データ等を格納する。操作部13は、キー入力などによってデータを入力する。無線インターフェース部14は、無線通信網を介して音声通信を行ったり、サーバなどと接続する。音声処理部15は、入出力音声の処理を行い、マイク16はその音声を入力し、スピーカ17はその音声を出力する。表示部18は、文字や画像を表示し、利用者に提供する。外部インターフェース部19は、必要に応じて外部機器と接続する。
【0023】
図2を参照して第1の実施の形態を説明する。携帯通信端末装置10の処理機能は、図2に示されるように、処理階層構造を有している。この処理階層構造の装置を携帯通信端末装置100とする。携帯通信端末装置100は、処理基盤として無線インターフェース150、携帯端末ファームウェア(FW)140、携帯端末オペレーティングシステム(OS)130を備え、その処理基盤の上に、携帯端末セグメント110とデータ処理セグメント120とを備える。携帯端末セグメント110は、携帯端末アプリケーションプログラム(AP)112と携帯端末データ111とを備える。データ処理セグメント120は、仮想マシン化ソフトウェア(SW)124とオペレーティングシステム(OS)123とアプリケーションプログラム(AP)122とデータ121とを備える。
【0024】
無線インターフェース150は、無線LAN(Local Area Network)インターフェースを含み、外部の無線通信環境に応じて通信する物理的階層である。携帯端末FW140は、ハードウェアに最も近い階層であり、ハードウェアを直接制御する。携帯端末OS130は、携帯端末FW140上で動作する携帯端末用のオペレーティングシステムである。
【0025】
この携帯端末OS130上で携帯端末セグメント110、即ち、携帯端末AP112が携帯端末データ111を使用して動作する。また、携帯端末OS130上では、データ処理セグメント120も同時に動作可能となっている。即ち、携帯端末OS130上で仮想マシン化SW124が携帯通信端末装置100のハードウェアを仮想化し、仮想マシンを構築する。その仮想マシン上でOS123が動作することになる。さらに、OS123により提供される動作環境において、AP122がデータ121を使用して動作する。仮想マシン化SW124には仮想LANインターフェース125が含まれる。仮想マシンは、仮想LANインターフェース125を介してサーバ等との通信を行う。即ち、これは従来から存在する携帯通信端末装置100およびその携帯端末OS130をそのまま利用し、仮想マシン化SW124を動作させる構成である。
【0026】
このような構成により、携帯端末セグメントとデータ処理セグメントとが独立して動作することが可能であり、データの隔離性にすぐれる。また、他方のセグメントからのデータアクセスを制限することが可能となる。また、このような構成は、従来の携帯通信端末装置の機能をそのまま流用することができる。したがって、仮想マシン化SW124を新規に作成するだけで、携帯通信端末装置以外のOSを利用することが可能となる。
【0027】
図4を参照して携帯通信端末装置100の動作を説明する。図4に示されるように、LANには、ルータ/ハブ420、サーバ300、アクセスポイント421が接続されている。携帯通信端末装置100は、無線でアクセスポイント421に接続する。ここでは携帯通信端末装置100の通信先としてサーバ300を例示するが、パーソナルコンピュータや他の携帯通信端末装置であってもよい。サーバ300は、その処理階層として、下層からLANインターフェース305、ファームウェア(FW)304、オペレーティングシステム(OS)303、アプリケーションプログラム(AP)302、データ301を備えている。
【0028】
携帯通信端末装置100とサーバ300との間で通信する場合について説明する。携帯通信端末装置100内のAP122は、非携帯通信端末装置であるサーバ300のAP302と相互に通信を行うことが可能である。物理的には、携帯通信端末装置100に存在する無線インターフェース150とサーバ300のLANインターフェース305とがアクセスポイント421を介して通信する。論理的には、仮想マシン化ソフトウェア124により提供される仮想LANインターフェース125とサーバ300のLANインターフェース305とが通信を行う。この論理的な通信が、携帯通信端末装置100の携帯端末AP112や携帯端末データ111に対する外部からのアクセスを制限し、携帯端末AP112や携帯端末データ111を保護することになる。
【0029】
即ち、同一携帯通信端末装置100内の異なるセグメントに属するAP122と携帯端末AP112とは、論理的なネットワーク接続が構成されない。つまり、仮想LANインターフェース125と、携帯端末AP112のLANインターフェースである無線インターフェース150との間の通信を不可とすることにより、アクセスを遮断することができる。したがって、携帯端末データ111とデータ121とを相互に保護することが可能となる。AP122と通信する他の携帯通信端末装置やサーバ300からも同様の理由で携帯通信端末装置100内の携帯端末AP112にアクセスできず、携帯端末データ111を保護することが可能である。
【0030】
携帯通信端末装置100の電話通信機能においても仮想的なネットワークを構成することができる。そのため、携帯端末AP112による無線インターフェースを介するIP電話網410との接続が可能である。IP電話網410は、物理的には上述のネットワークと同じネットワークを利用することができるため、携帯通信端末装置100は、通話やデータ通信においてそれぞれのアクセスポイント421に無線接続することで、仮想化されたネットワークによりそれぞれの通信を安全に行うことが可能となる。
【0031】
図3を参照して第2の実施の形態を説明する。携帯通信端末装置10は、図3に示されるように、処理階層構造を有している。この処理階層構造の装置を携帯通信端末装置200とする。携帯通信端末装置200は、処理基盤として無線インターフェース260、携帯端末ファームウェア(FW)250、仮想マシン化ソフトウェア専用オペレーティングシステム(OS)240、仮想マシン化ソフトウェア(SW)230を備え、その処理基盤の上に、携帯端末セグメント210とデータ処理セグメント220とを備える。携帯端末セグメント210は、携帯端末オペレーティングシステム(OS)213と携帯端末アプリケーションプログラム(AP)212と携帯端末データ211とを備える。データ処理セグメント220は、オペレーティングシステム(OS)223とアプリケーションプログラム(AP)222とデータ221とを備える。
【0032】
無線インターフェース260は、無線LANインターフェースを含み、外部の無線通信環境に応じて通信する物理的階層である。携帯端末FW250は、ハードウェアに最も近い階層であり、ハードウェアを直接制御する。仮想マシン化SW専用OS240は、携帯端末FW250上で仮想マシン化SW230が動作するための動作環境を提供する。この動作環境上で仮想マシン化SW230が動作し、仮想マシンが構築される。
【0033】
仮想マシン化SW230により提供される動作環境において、即ち、仮想マシン上で携帯端末セグメント210とデータ処理セグメント220とが動作する。携帯端末セグメント210では、この仮想マシンの上で携帯端末OS213が動作する。携帯端末OS213が提供する動作環境で携帯端末AP212が携帯端末データ211を使用して動作する。また、データ処理セグメント220では、この仮想マシンの上でOS223が動作する。OS223が提供する動作環境でAP222がデータ221を使用して動作する。携帯端末セグメント210とデータ処理セグメント220は、仮想マシン上で並行して動作可能であってもよい。
【0034】
また、仮想マシン化SW230には仮想LANインターフェース231、232が含まれる。仮想マシンは、仮想LANインターフェース231を介してIP電話網と通信する。また、仮想マシンは、仮想LANインターフェース232を介してサーバ300等と通信する。
【0035】
この構成においても、各セグメントが独立して動作することが可能であるため、データの隔離性にすぐれる。また、他方のセグメントからのデータアクセスを制限することが可能となる。また、この構成では、仮想マシン化SW専用OS240や仮想マシン化SW230を新規に作成する必要がある。しかし、仮想マシン化SW専用OS240を使用することにより、仮想マシン化SW230からの携帯通信端末装置200の制御を簡便化し、容易にすることは可能である。エミュレータを介してソフトウェアを動作させる場合、パフォーマンスが低下することは一般的に知られている。しかし、仮想マシン化SW専用OS240を使用することにより、その上で動作するソフトウェアのパフォーマンス低下を抑え、OS223やAP222といったソフトウェアのパフォーマンスを向上させることが可能になる。
【0036】
図4を参照して携帯通信端末装置200の動作を説明する。図4に示されるように、LANには、ルータ/ハブ420、サーバ300、アクセスポイント422が接続されている。携帯通信端末装置200は、無線でアクセスポイント422に接続する。第1の実施の形態と同様ここでは携帯通信端末装置100の通信先としてサーバ300を例示するが、パーソナルコンピュータや他の携帯通信端末装置であってもよい。
【0037】
携帯通信端末装置200内のAP222は、相互に非携帯通信端末装置であるサーバ300のAP302とそれぞれの通信を行うことが可能である。物理的には、携帯通信端末装置200に存在する無線インターフェース260とサーバ300のLANインターフェース305とが通信を行う。論理的には、仮想マシン化ソフトウェア230で提供されている仮想LANインターフェース232と、サーバ300のLANインターフェース305とが通信を行う。この論理的な通信が、携帯通信端末装置200の携帯端末AP212や携帯端末データ211に対する外部からのアクセスを制限し、携帯端末AP212や携帯端末データ211を保護することになる。
【0038】
即ち、同一携帯通信端末装置200内の異なるセグメントに属するAP222と携帯端末AP212とは、論理的なネットワーク接続が構成されない。つまり、仮想LANインターフェース232と携帯端末AP212のLANインターフェースである仮想LANインターフェース231との間の通信を不可とすることによりアクセスを遮断することができる。したがって、携帯端末データ211、データ221を相互に保護することが可能となる。AP222と通信する他の形態通信端末装置やサーバ300からも同様の理由で携帯通信端末装置200内の携帯端末AP212にアクセスできず、携帯端末データ211を保護することが可能である。
【0039】
電話通信機能においても携帯通信端末装置200は、仮想LANインターフェース231と無線インターフェース260を介したIP電話網410との接続も可能である。IP電話網410は物理的に上述のネットワークと同しネットワークを利用することができるため、携帯通信端末装置200は、アクセスポイント422に無線接続することで、仮想化されたネットワークを介して通話やデータ通信それぞれを安全に行うことが可能となる。
【0040】
このように、仮想マシン化ソフトウェア(PCエミュレータ)を基盤ソフトウェアとして組み込むことにより、パーソナルコンピュータ等のデータ処理装置において従来から使用されているOS(データ処理OS)を携帯通信端末装置に導入することが可能になる。そのため、各種アプリケーションプログラムも改造することなく使用可能となる。したがって、過去の電子データ資産をすべてそのままの状態で利用することが可能になる。
【0041】
さらに、携帯通信端末装置の入出力装置は、仮想化されたインターフェースが使用され、アクセス制限を施され、限定的に利用することが可能となる。そのため、他の外部装置(PCやサーバ)との通信を、仮想マシン上の仮想インターフェースを介して行うことで、携帯通信端末装置内の情報を隔離しつつも、安全性を確保したまま他端末との相互接続性を高めることができる。それとともに、OSの互換性も保持、データの転送においても共通のプロトコルを利用することが可能になる。つまり、端末の携帯性を損なうことなく従来のPC端末としても利用することが可能になる。
【0042】
また、仮想マシン化ソフトウェア上で動作するデータ処理OSと携帯端末OSが隔離されるため、携帯通信端末装置内の情報をデータ処理OSから隔離することが可能となる。したがって、携帯端末OSからのアクセスのみを可能とすることにより、携帯端末データはデータ処理系のアクセスから保護される。
【0043】
携帯通信端末装置に備わっている無線LANといった通信機能、および仮想化されたマシン上で動作するオペレーティングシステムおよび、そのアプリケーションの連携を行うことにより、オペレーティングシステムおよび、そのアプリケーションの変更を全く行うことなく実装できるため、従来パーソナルコンピュータ(PC)間で行われていたアプリケーション間通信を携帯通信端末装置の利用形態に合せて実施することが可能となる。その例として、買い物などによる電子決済で発生したデータの集計や、カメラ・ビデオ機能で蓄えられたマルチメディアデータの格納および編集、Webの閲覧および更新、家電製品を含めた各種コンピュータの遠隔操作、オフィスや自宅のオペレーティングシステムおよびデータの運搬がすべて携帯通信端末装置1台で行うことが可能となる。
【0044】
また、オフィスにパーソナルコンピュータ(PC)本体を設置せずに、キーボードやマウス、ディスプレイなどパーソナルコンピュータの入出力機器のみを設置しておく。これらの入出力機器は、携帯通信端末装置が提供する入出力機器よりも大きく使い易い。したがって、携帯通信端末装置とそれらの入出力機器とを接続することにより、マンマシンインターフェースを快適にすることが可能となる。したがって、オフィスではパーソナルコンピュータ(PC)の代わりとして、また、会議や出張では、携帯通信端末装置のみを携帯し、モバイルPCとして利用することも可能となる。また、自宅とオフィスで全く同じソフトウェア環境を提供することも可能となる。その場合、データの移行を考える必要はなく、バックアップのみを意識するだけでよくなる。
【0045】
また、仮想マシン/OS/AP/データ部を物理的に分離することが可能である。それは、セグメント120、210、220がファイルとして携帯通信端末装置内に存在するためである。大容量で高速な外部記憶装置にOS/AP/データ部を格納し、大容量で高速な外部記憶装置は携帯通信端末装置に着脱される。携帯通信端末装置がこの外部記憶装置を装着することにより、さまざまなOSを利用することもできる。また、このセグメント120、220をファイルとして扱うことができるため、これらは携帯端末AP112、210からは一種のデータと見なすことができる。そのため、セグメント120、220をファイルとして携帯端末AP112、210により外部からダウンロードすることも可能である。
【0046】
この実行OSの切替は外部記憶装置の着脱により行われてもよいし、スイッチを用意してその切替にしたがってOS実行を切り替えてもよい。それによって、利用者のニーズにあわせたOS/APを使用し、状況に応じてそれらを変えることも可能となる。
【0047】
以上述べたように、本発明は、現在、一般に広く普及している携帯通信端末装置に、仮想化技術の応用として携帯通信端末装置を仮想化するための基盤ソフトウェアを利用し、新しいネットワークコンピューティングを実現するものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施の形態に係る携帯通信端末装置として例示される携帯電話の構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に係る携帯通信端末装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【図3】第2の実施の形態に係る携帯通信端末装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【図4】第1および第2の実施の形態に係る携帯通信端末装置の動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0049】
10 携帯電話
11 CPU(中央処理装置)
12 メモリ
13 操作部
14 無線インターフェース部
15 音声処理部
16 マイク
17 スピーカ
18 表示部
19 外部インターフェース
100、200 携帯通信端末装置
110、210 携帯端末セグメント
111、211 携帯端末データ
112、212 携帯端末アプリケーションプログラム
120、220 データ処理セグメント
121、221 データ
122、222 アプリケーションプログラム(AP)
123、223 オペレーティングシステム(OS)
124、230 仮想マシン化ソフトウェア
125、231、232 仮想LANインターフェース
130、213 携帯端末オペレーティングシステム(携帯端末OS)
140、250 携帯端末ファームウェア(携帯端末FW)
150、260 無線インターフェース
240 仮想マシン化ソフトウェア専用オペレーティングシステム
300 サーバ
301 データ
302 アプリケーションプログラム(AP)
303 オペレーティングシステム(OS)
304 ファームウェア(FW)
305 LANインターフェース
410 IP電話網
420 ルータ/ハブ
421、422 アクセスポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線により他の無線端末と通信する携帯端末アプリケーションプログラムと、
前記携帯端末アプリケーションプログラムから共通して利用される基本的な機能を提供し、前記携帯端末アプリケーションプログラムを管理する携帯端末オペレーティングシステムと、
データ処理を行うデータ処理アプリケーションプログラムと、
前記データ処理アプリケーションプログラムから共通して利用される基本的な機能を提供し、前記データ処理アプリケーションプログラムを管理するデータ処理オペレーティングシステムと、
前記データ処理オペレーティングシステムを搭載するハードウェアを仮想マシンのハードウェアに模擬して前記データ処理オペレーティングシステムを実行可能とする仮想マシン化ソフトウェアと、
前記携帯端末アプリケーションプログラムと前記携帯端末オペレーティングシステムと前記データ処理アプリケーションプログラムと前記データ処理オペレーティングシステムと前記仮想マシン化ソフトウェアとを格納するメモリと、実行する中央処理装置(CPU)と
を具備する携帯通信端末装置。
【請求項2】
前記仮想マシン化ソフトウェアは、前記携帯端末オペレーティングシステムが提供する基本的な機能を利用し、前記携帯端末オペレーティングシステムに管理される
請求項1に記載の携帯通信端末装置。
【請求項3】
前記仮想マシン化ソフトウェアは、前記データ処理アプリケーションプログラムがLAN(Local Area Network)を介して外部装置にアクセスする仮想LANインターフェースを備え、
前記仮想LANインターフェースは、前記データ処理アプリケーションプログラムと前記携帯端末アプリケーションプログラムとの間のアクセスを制限する
請求項1または請求項2に記載の携帯通信端末装置。
【請求項4】
前記ハードウェア上で動作し、前記仮想マシン化ソフトウェアに利用される基本的な機能を提供し、前記仮想マシン化ソフトウェアを管理する仮想マシン化専用オペレーティングシステムをさらに具備し、
前記仮想マシン化ソフトウェアが実行されて構築される仮想マシン上で前記携帯端末オペレーティングシステムと前記データ処理オペレーティングシステムが独立に実行される
請求項1に記載の携帯通信端末装置。
【請求項5】
前記仮想マシン化ソフトウェアは、
前記携帯端末オペレーティングシステムに提供する第1仮想LANインターフェースと、
前記データ処理オペレーティングシステムに提供する第2仮想LANインターフェースと
を含み、
前記第1仮想LANインターフェースと前記第2仮想LANインターフェースとの間のアクセスを制限する
請求項1または請求項4に記載の携帯通信端末装置。
【請求項6】
前記第1仮想LANインターフェースは、前記第2仮想LANインターフェースがアクセスする外部装置からの前記携帯端末アプリケーションプログラムに対するアクセスを制限する
請求項5に記載の携帯通信端末装置。
【請求項7】
前記データ処理アプリケーションプログラムと前記データ処理オペレーティングシステムとを格納する記憶部を備え、
前記記憶部を着脱可能とする
請求項1から請求項6のいずれかに記載の携帯通信端末装置。
【請求項8】
前記携帯端末アプリケーションプログラムと前記データ処理アプリケーションプログラムとを動作するか否かを設定するスイッチを備え、
前記CPUが実行するアプリケーションプログラムを切り替える
請求項1から請求項7のいずれかに記載の携帯通信端末装置。
【請求項9】
前記データ処理アプリケーションプログラムと前記データ処理オペレーティングシステムとは、前記携帯端末アプリケーションプログラムと前記携帯端末オペレーティングシステムとにより外部からダウンロードされる
請求項1から請求項8のいずれかに記載の携帯通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−277204(P2006−277204A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−94030(P2005−94030)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】