説明

携帯通信端末

【課題】ドライブレコーダとして機能するとともに、交通事故が発生したか否かを判定する精度を向上させた携帯通信端末を提供する。
【解決手段】携帯通信端末1が車両に設置されることにより、加速度センサ15は、車両の加速度を計測する。カメラ16は、車両の前方の景色を撮影して撮影画像データ40を生成する。レコーダプログラム30は、加速度センサ15により計測された加速度が判定開始範囲内である否かを判定する。レコーダプログラム30は、判定開始範囲内にある加速度が計測された時刻(基準時刻)から所定時間を経過した時刻(動作確認時刻)における加速度が、車両が停止していることを示す停止範囲にあるか否かを確認する。レコーダプログラム30は、動作確認時刻に計測された加速度が停止範囲内である場合、基準時刻を含む期間に撮影された撮影画像データ40を、サーバ2に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯通信端末に関し、さらに詳しくは、ドライブレコーダとして機能する携帯通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライブレコーダは、自動車などの車両前方の景色の録画や、車内または車外の音声の録音などを行う装置である。ドライブレコーダが記録したデータを利用することにより、交通事故の原因の特定が容易となる。ドライブレコーダを車両に搭載することにより、安全運転に対する運転者の意識が向上するというメリットもある。
【0003】
スマートフォンなどの携帯通信端末は、カメラ機能を備えている。携帯通信端末のカメラ機能を利用することにより、携帯通信端末をドライブレコーダとして利用することが可能である。携帯通信端末は、ダッシュボードの上に固定される。携帯通信端末は、車両の前方の景色を撮影して画像データを生成し、予め設定された送信先に画像データを送信する。
【0004】
携帯通信端末が、撮影された画像データを全て送信した場合、通信帯域が圧迫される。そこで、特許文献1には、加速度センサを利用して、送信対象の画像データを特定する携帯通信端末が記載されている。特許文献1の携帯通信端末は、予め設定されたしきい値よりも大きい加速度を検出した場合、検出した時刻を含む期間に撮影された画像データを送信する。
【0005】
しかし、車両が橋の継ぎ目または急カーブを通過したときなどに、しきい値を超える加速度が検出されることがある。この結果、実際に事故が発生していないにもかかわらず、事故と関係のない画像データが誤って送信されるという問題がある。画像データの誤送信を防ぐために、大きな衝撃のみを検出するようにしきい値を変更した場合、接触事故のような、比較的衝撃の小さい交通事故の発生を検出することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−34215号公報
【特許文献2】特開2011−53744号公報
【特許文献3】特開2009−251866号公報
【特許文献4】特開2009−87204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ドライブレコーダとして機能するとともに、交通事故の判定精度を向上させた携帯通信端末を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の携帯通信端末は、車両に設置される。本発明の携帯通信端末は、内蔵カメラと、メモリと、加速度センサと、初期判定部と、送信判定部と、画像送信部とを備える。内蔵カメラは、車両の外側または内側の状況を撮影して撮影画像データを生成する。メモリは、内蔵カメラにより生成された撮影画像データを記憶する。加速度センサは、車両の加速度を計測する。初期判定部は、加速度センサにより計測された加速度が予め設定された第1範囲内であるか否かを判定する。送信判定部は、計測された加速度が第1範囲内であると判定された時刻から所定の期間内に計測された加速度が、予め設定された第2範囲内であるか否かを判定する。画像送信部は、所定の期間内に計測された加速度が第2範囲内であると判定された場合、メモリに記憶された撮影画像データのうち、第1範囲内であると判定された時刻を含む期間に撮影された撮影画像データを送信する。
【0009】
本発明によれば、計測された加速度が第1範囲内であると判定された時刻から所定の期間内に計測された加速度が、予め設定された第2範囲内であると判定された場合、画像送信部は、交通事故が発生したと判断して、撮影画像データを送信する。この結果、交通事故の判定精度を向上させることができる。
【0010】
好ましくは、第2範囲は、車両が停止していることを示す加速度の範囲である。
【0011】
本発明によれば、送信判定部が、所定期間内に計測された加速度が車両を停止していることを示す加速度の範囲内にあると判定した場合、画像送信部は、撮影画像データを送信する。車両が関与する交通事故が発生した場合、車両は、交通事故の発生後に停止すると考えられる。このため、所定期間内に計測された加速度を用いて車両が停止したか否かを判定することにより、判定精度をさらに向上させることができる。
【0012】
好ましくは、本発明の携帯通信端末は、さらに、記憶部を備える。記憶部は、初期判定部により使用される加速度の範囲が車種ごとに設定された第1範囲データと、送信判定部により使用される加速度の範囲が車種ごとに設定された第2範囲データとを記憶する。初期判定部は、車両の車種が指定された場合、指定された車種に対応する範囲を第1範囲データから選択し、第1範囲データから選択した範囲を前記第1範囲として設定する。送信判定部は、指定された車種に対応する範囲を第2範囲データから選択し、第2範囲データから選択した範囲を第2範囲として設定する。
【0013】
本発明によれば、指定された車種に応じた第1範囲データ及び第2範囲データが、第1範囲及び第2範囲としてそれぞれ設定される。車種ごとに第1範囲及び第2範囲を設定することができるため、判定精度をさらに向上させることができる。
【0014】
好ましくは、本発明の携帯通信端末は、さらに、車内通信部を備える。車内通信部は、車両に取り付けられた外部カメラにより撮影された撮影画像データを受信する。メモリは、車内通信部により受信された撮影画像データを記憶する。
【0015】
本発明によれば、車両に取り付けられた外部カメラにより撮影された画像データが、メモリに記憶される。これにより、携帯通信端末は、外部カメラにより撮影された撮影画像データを送信できる。
【0016】
本発明によるプログラムは、上述の携帯通信端末に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施の形態による携帯通信端末の機能ブロック図である。
【図2】車両に設置された図1に示す携帯通信端末を示す図である。
【図3】図1に示す加速度センサにより計測される加速度の方向を示す図である。
【図4】図1に示すレコーダプログラムのフローチャートである。
【図5】図1に示す判定テーブルの内容を示す図である。
【図6】図1に示す加速度センサにより計測される加速度の変化を示す図である。
【図7】図4に示す送信処理のフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施の形態による携帯通信端末の機能ブロック図である。
【図9】図1に示す判定テーブルの内容を示す図である。
【図10】図1に示すメモリに格納される範囲設定データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
[第1の実施の形態]
{全体構成}
図1は、第1の実施の形態に係る携帯通信端末1の機能ブロック図である。携帯通信端末1は、普通乗用車、トラック、バスなどの車両に設置される。携帯通信端末1は、スマートフォンなどの携帯電話または無線LANなどを利用可能な小型の端末である。携帯通信端末1は、携帯電話通信網を利用してインターネット2にアクセスして、サーバ3と通信することができる。
【0020】
携帯通信端末1は、車両に設置され、車両の前方の景色を撮影して撮影画像データ40を生成する。携帯通信端末1は、車両が交通事故に遭ったと判断した場合、撮影画像データ40をサーバ3へ送信する。すなわち、携帯通信端末1は、撮影画像データ40から、事故が発生したと判断した時刻を含む期間に撮影された撮影画像データ40を抽出し、抽出した撮影画像データを、送信画像データ43としてサーバ3に送信する。
【0021】
以下、携帯通信端末1の構成を説明する。図1を参照して、携帯通信端末1は、CPU(Central Processing Unit)11と、RAM(Random Access memory)12と、表示パネル13と、タッチパネル14と、加速度センサ15と、カメラ16と、メモリ17と、無線通信部18とを備える。
【0022】
CPU11は、RAM12にロードされたプログラムを実行して、携帯通信端末1を制御する。RAM12は、携帯通信端末1のメインメモリである。
【0023】
表示パネル13は、液晶パネルなどであり、カメラ16により撮影された映像を表示する。タッチパネル14は、表示パネル13の上に設置され、ユーザが触れた位置を操作情報として出力する。
【0024】
加速度センサ15は、携帯通信端末1の加速度を計測する。つまり、加速度センサ15は、携帯通信端末1が設置された車両の加速度を計測する。カメラ16は、車両の外側または内側の状況を撮影して、撮影画像データ40を作成する。
【0025】
メモリ17は、不揮発性のフラッシュメモリである。メモリ17は、レコーダプログラム30と、判定テーブル41と、撮影画像データ40とを格納する。レコーダプログラム30は、携帯通信端末1をドライブレコーダとして機能させるプログラムである。判定テーブル41は、撮影画像データ40を送信するか否かを判定するために用いられる加速度の範囲が設定されたテーブルである。
【0026】
なお、携帯通信端末1は、メモリカードを挿入可能な機器であってもよい。この場合、携帯通信端末1は、携帯通信端末1に挿入されたメモリカードに、撮影画像データ40を格納してもよい。
【0027】
無線通信部18は、携帯電話通信網を利用してインターネット2にアクセスし、管理サーバ3と通信を行う。無線通信部18は、無線LANなどの他の無線通信網を用いて、インターネット2にアクセスしてもよい。
【0028】
{携帯通信端末1の設置}
図2は、車両に固定された携帯通信端末1を示す図である。図2を参照して、クレードル52は、ダッシュボード51の上に固定される。クレードル52が固定される位置は、携帯通信端末1及びクレードル52が運転手の視界の妨げとならない位置である。携帯通信端末1は、ダッシュボード51上に固定されたクレードル52にはめ込まれることにより、車両に設置される。携帯通信端末1は、カメラ16が車両の前方を撮影できるようにはめ込まれる。
【0029】
カメラ16と表示パネル13とは、携帯通信端末1の筺体10の互いに反対側となる位置に取り付けられている。これにより、運転手は、シート53に座りながら、携帯通信端末1がドライブレコーダとして機能していることを容易に確認することができる。
【0030】
なお、車両の後部座席及び車両の後方の景色を撮影するために、カメラ16を車両の後方に向けるようにして、携帯通信端末1を設置してもよい。つまり、携帯通信端末1は、カメラ16が車両の外側又は内側の状況を撮影できるように、車両に設置されればよい。
【0031】
図3は、カメラ16が車両の前方を撮影するように設置されたときにおける、携帯通信端末1の加速度の検出方向を示す図である。図3を参照して、加速度センサ15は、車両の進行方向の加速度Ax、旋回方向の加速度Ay及び重力方向の加速度Azを検出する。
【0032】
{レコーダプログラム30の動作}
図4は、レコーダプログラム30のフローチャートである。以下、図4を参照して、レコーダプログラム30の動作を説明する。
【0033】
{レコーダプログラムの起動}
最初に、運転手が、クレードル52にはめ込まれた携帯通信端末1を操作して、レコーダプログラム30の起動を指示する。携帯通信端末1は、運転手の指示に応じて、レコーダプログラム30を起動する。これにより、図4に示す処理が開始される。
【0034】
レコーダプログラム30は、カメラ16を起動する(ステップS1)。レコーダプログラム30は、記録処理を開始する(ステップS2)。記録処理(ステップS2)は、カメラ16が前方の景色を撮影して生成した撮影画像データ40を符号化し、符号化した撮影画像データ40をメモリ17に記憶する処理である。以下、符号化された撮影画像データ40を、単に「撮影画像データ40」と呼ぶ。撮影画像データ40は、動画像データであり、撮影時刻と各ピクチャとが対応付けられている。撮影画像データ40は、複数の写真画像データであってもよい。この場合、各写真画像データと、撮影時刻とが対応付けて記録される。
【0035】
表示パネル13が、カメラ16により撮影された車両の前方の映像を表示することにより、運転手は、携帯通信端末1がドライブレコーダとして動作していることを確認することができる。運転手は、レコーダプログラム30の動作を確認後、車両を運転する。
【0036】
加速度センサ15は、ダッシュボード51上に固定された携帯通信端末1の加速度を計測する。つまり、加速度センサ15は、加速度Ax,Ay,Azをそれぞれ計測し、計測した加速度Ax,Ay,Azを一定の間隔で出力する。
【0037】
レコーダプログラム30は、計測された加速度Ax,Ay,Azと、判定テーブル41とを用いて、撮影画像データ40をサーバ3へ送信するか否かを判定する(ステップS3〜S6)。図5は、判定テーブル41の内容を示す図である。図5を参照して、判定テーブル41には、車両の方向ごとに、判定開始範囲、停止範囲及び異常範囲が記録されている。レコーダプログラム30は、異常範囲を用いて交通事故が発生したか否かを判定する処理(ステップS3)と、判定開始範囲及び停止範囲を用いて交通事故が発生したか否かを判定する処理とを実行する(ステップS4〜S6)。
【0038】
{異常範囲を用いた事故の判定}
レコーダプログラム30は、計測された加速度が異常範囲内であるか否かを確認する(ステップS3)。異常範囲は、車両が通常に走行しているときに検出されることのない加速度の範囲である。たとえば、車両が横転したり、車両が一時的に浮き上がったりした場合に検出されるような加速度が、異常範囲として設定される。
【0039】
図5を参照して、判定テーブル41では、加速度Axの異常範囲は、−2000<Ax≦−1000,1000<Ax≦2000に設定されている。加速度Ay,Azのそれぞれの異常範囲も、同様の範囲が設定されている。判定テーブル41の加速度の数値は、0.1G単位で記録されている。ここで、「G」は、重力加速度を示す。異常範囲は、方向ごとに異なる範囲が設定されていてもよい。
【0040】
加速度Ax,Ay,Azのうち少なくとも一つが異常範囲内である場合(ステップS3においてYes)、レコーダプログラム30は、交通事故が発生したと判断する。レコーダプログラム30は、撮影画像データ40をサーバ3に送信する送信処理(ステップS7)を実行する。送信処理(ステップS7)の詳細は、後述する。
【0041】
{判定開始範囲及び停止範囲を用いた事故の判定}
各方向の加速度が異常範囲内にない場合(ステップS3においてNo)、レコーダプログラム30は、判定開始範囲及び停止範囲を用いて、交通事故が発生したか否かを判定する(ステップS4〜S6)。
【0042】
図6は、交通事故が発生した場合における車両の加速度の変化を示す図である。図6を参照して、加速度Axの変化を例にして、ステップS4〜S6の処理を説明する。なお、図6に示す判定開始範囲、停止範囲、及び異常範囲は、図5に示す数値を正確に反映したものではない。
【0043】
時刻T0までの期間において、車両が道路を走行しているため、加速度Axは、判定開始範囲の境界値である加速度A1と加速度A4との間の範囲で検出される。すなわち、停止範囲と判定開始範囲との間の加速度の範囲は、通常の走行時に検出される範囲に相当する。また、加速度A2と加速度A3との間の範囲は、異常範囲及び判定開始範囲のいずれにも設定されていない。しかし、加速度A1から加速度A3までの範囲を判定開始範囲として設定することにより、判定開始範囲と異常範囲とが連続していてもよい。
【0044】
時刻T0において、判定開始範囲内にある加速度Axが計測される。判定開始範囲は、接触事故や、低速での追突事故など、比較的衝撃の小さい交通事故を検出するために設定される。しかし、判定開始範囲内にある加速度は、車両の通常走行時にも検出される可能性がある。たとえば、車両が接触事故を起こしたときと、車両が急カーブを通過するときとでは、計測される加速度に大きな差がない場合がある。車両が橋の継ぎ目を通過するとき、車両が凹凸のある道路を走行するときに計測される加速度なども、接触事故の発生時の加速度と大きな差異がない場合がある。
【0045】
したがって、レコーダプログラム30は、判定開始範囲内にある加速度Axを検出しただけでは、交通事故が発生したと判断することはできない。しかし、車両が関与する交通事故が発生した場合、運転手は、車両を停止させると考えられる。このため、レコーダプログラム30は、判定開始範囲内にある加速度Axが検出された時刻T0(基準時刻)から5秒経過したとき(時刻T1)に、車両が停止しているか否かを判定する。なお、基準時刻T0と時刻T1との間隔は、5秒に限定されない。また、基準時刻T0と時刻T1との間隔を適宜変更できるようにしてもよい。
【0046】
具体的には、レコーダプログラム30は、時刻T1に計測された加速度が停止範囲内にあるか否かを確認する。停止範囲は、車両が停止しているときに計測される加速度の範囲である。車両の停止中であっても、エンジンの振動などにより、車両の加速度はゼロとならない。つまり、加速度センサ15は、車両の停止中であっても、ゼロを中心とした一定の範囲の加速度を継続的に計測する。時刻T1に計測された加速度が停止範囲内にあるため、レコーダプログラム30は、時刻T0において交通事故が発生したと判断する。
【0047】
再び、図4〜図6を参照して、ステップS4〜S6の処理を詳しく説明する。レコーダプログラム30は、ステップS3の処理の後に、加速度Ax,Ay,Azのいずれか一つが判定開始範囲内であるか否かを確認する(ステップS4)。判定テーブル41では、加速度Axの判定開始範囲が、−200<Ax≦−100,100<Ax≦200に設定されている。加速度Ay及び加速度Azのそれぞれの判定開始範囲も、同様の範囲が設定されている。判定開始範囲は、方向ごとに異なる範囲が設定されていてもよい。
【0048】
加速度Ax,Ay,Azのうち少なくとも一つが判定開始範囲内である場合(ステップS4においてYes)、レコーダプログラム30は、基準時刻(時刻T0)から所定時間(5秒)を経過したか否かを確認する(ステップS5)。
【0049】
レコーダプログラム30は、所定時間を経過した場合(ステップS5においてYes)、基準時刻から所定時間を経過した時刻(時刻T1:動作確認時刻)に計測された加速度Ax,Ay,Azの全てが、停止範囲内にあるか否かを判定する(ステップS6)。判定テーブル41(図5参照)では、加速度Axの停止範囲が、−5≦Ax<5に設定されている。加速度Ay及び加速度Azについても、同様の範囲が設定されている。停止範囲は、各方向で異なってもよい。
【0050】
動作確認時刻に計測された加速度Ax,Ay,Azが停止範囲内でない場合(ステップS6においてNo)、レコーダプログラム30は、交通事故が発生していないと判断し、ステップS8に進む。この場合、基準時刻における加速度は、段差の通過、または急カーブの通過などにより計測されたと考えられる。一方、動作確認時刻に計測された加速度Ax,Ay,Azが停止範囲内にある場合(ステップS6においてYes)、レコーダプログラム30は、交通事故が基準時刻に発生したと判断し、送信処理(ステップS7)を実行する。送信処理(ステップS7)の詳細は、後述する。
【0051】
レコーダプログラム30は、送信処理の後に、終了指示があるか否かを確認する(ステップS8)。ステップS8の処理は、加速度Ax,Ay,Azが異常範囲内でない場合(ステップS3においてNo)、加速度Ax,Ay,Azが判定開始範囲内でない場合(ステップS4においてNo)にも実行される。終了指示があった場合(ステップS8においてYes)、レコーダプログラム30は、図4に示す処理を終了する。終了指示がない場合(ステップS8においてNo)、レコーダプログラム30は、ステップS3に戻り、加速度Ax,Ay,Azの監視を継続する。
【0052】
{送信処理(ステップS7)}
図7は、送信処理(ステップS7)のフローチャートである。図7を参照して、送信処理(ステップS7)の詳細を説明する。レコーダプログラム30は、送信対象期間を決定する(ステップS71)。たとえば、レコーダプログラム30は、基準時刻から10秒前の時刻T2と、基準時刻から10秒経過した時刻T3とを算出する。時刻T2から時刻T3までの期間が、送信対象期間に設定される。時刻T2,T3を算出するための時間(10秒)は、適宜変更できるようにしてもよい。
【0053】
レコーダプログラム30は、メモリ17に格納された撮影画像データ40の中から、送信対象期間に撮影された撮影画像データを抽出する(ステップS72)。レコーダプログラム30は、ステップS72の処理により抽出された撮影画像データ40を、送信画像データ43としてサーバ3に送信する(ステップS73)。サーバ3は、送信画像データ43を記憶装置31に格納する。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態に係る携帯通信端末1は、計測された加速度が判定開始範囲内である場合、基準時刻から所定時間を経過した動作確認時刻の加速度が停止範囲内であるか否かを確認する。すなわち、交通事故が発生した可能性の高い加速度を検出した場合、その後に車両が停止したか否かを確認することによって、交通事故が発生したか否かを判定する。これにより、交通事故の誤判定を防止することができる。
【0055】
[第2の実施の形態]
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る携帯通信端末1の機能ブロック図である。本実施の形態の携帯通信端末1は、携帯通信端末1に内蔵されたカメラ16により撮影された撮影画像データ40の他に、外部カメラ5a,5bにより撮影された撮影画像データ50a,50bを、送信画像データ43としてサーバ3に送信する。撮影画像データ50aは、カメラ5aにより撮影されたデータであり、撮影画像データ50bは、カメラ5bにより撮影されたデータである。
【0056】
本実施の形態における携帯通信端末1の構成を説明する。携帯通信端末1は、図1に示す構成の他に、車内通信部19を備える。車内通信部19は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)などの近距離無線通信を利用して、外部カメラ5a,5bと通信を行う。なお、車内通信部19は、外部カメラ5a,5bと有線通信を行ってもよい。
【0057】
外部カメラ5aは、運転席のヘッドレスト等に取り付けられ、車両の後部座席を撮影する。なお、外部カメラ5aは、運転手の様子を撮影するために、バックミラーに取り付けられたり、ダッシュボード上に固定されたりしてもよい。外部カメラ5bは、後部座席よりさらに後方に取り付けられ、車両の後方の景色を撮影する。外部カメラ5a,5bは、車両のバッテリ(図示省略)に接続されている。外部カメラ5a,5bは、車両のエンジンが駆動し、バッテリから電力の供給を受けた場合、自動的に駆動し、撮影を開始する。なお、車両に取り付けられる外部カメラの数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0058】
以下、図4を参照しながら、本実施の形態におけるレコーダプログラム30の動作について説明する。
【0059】
レコーダプログラム30は、記録処理を開始した(ステップS2)場合、車内通信部19を介して、撮影画像データ50a,50bの送信を指示する送信指示情報を外部カメラ5a,5bに送信する。外部カメラ5a,5bは、送信指示情報を受信した場合、撮影画像データ50a,50bの送信を開始する。撮影画像データ50a,50bは、撮影時刻が付与された上で、リアルタイムに送信される。カメラ5a,5bは、起動した後に、撮影画像データ50a,50bを自動的に送信するようにしてもよい。外部カメラ5a,5bは、送信指示情報を受信した場合、定期的に撮影画像データ50a,50bをしてもよい。たとえば、外部カメラ5a,5bは、撮影画像データ50a,50bを図示しないメモリにそれぞれ蓄積し、蓄積した撮影画像データを10秒おきに送信してもよい。
【0060】
レコーダプログラム30は、受信した撮影画像データ50aを、撮影時刻及び外部カメラ5aの識別番号に対応付けてメモリ17に記憶する。同様に、撮影画像データ50bは、撮影時刻及び外部カメラ5bの撮影時刻に対応付けられた後に、メモリ17に記憶される。撮影画像データ40は、撮影時刻及びカメラ16の識別情報に対応付けられた後に、メモリ17に記憶される。
【0061】
カメラの識別情報は、各カメラを一意に特定できれば、どのような情報であってもよい。例えば、レコーダプログラム40は、各カメラに対して、通し番号を割り当ててもよいし、ランダムな番号を割り当ててもよい。
【0062】
撮影画像データ40,50a,50bをサーバ3へ送信するか否かを判定する処理(ステップS3〜S6)は、第1の実施の形態と同様である。レコーダプログラム30は、ステップS3〜S6の処理により交通事故が発生したと判断した場合、送信処理(ステップS7)を実行する。
【0063】
図7を参照して、レコーダプログラム30は、メモリ17に格納された撮影画像データの中から、送信対象期間に撮影された撮影画像データ40,50a,50bを抽出する(ステップS72)。レコーダプログラム30は、ステップS72の処理により抽出された撮影画像データをサーバ3に送信する(ステップS73)。
【0064】
このように、携帯通信端末1は、車両に取り付けられた外部カメラ5a,5bにより撮影された撮影画像データ50a,50bをサーバに送信する。これにより、交通事故が発生したとしても,撮影画像データ50a、50bを用いて、交通事故の原因を容易に特定することができる。
【0065】
なお、本実施の形態において、携帯通信端末1は、カメラ16を起動しなくても良い。つまり、レコーダプログラム30は、記録処理(ステップS2)において、カメラ5a,5bから受信した撮影画像データ50a,50bをメモリ17に格納するが、カメラ16により撮影された撮影画像データ40をメモリ17に格納しない。これにより、携帯通信端末1の負荷を軽減することができる。
【0066】
[変形例1]
以下、上記第1及び第2実施の形態の変形例を説明する。上記実施の形態において、レコーダプログラム30は、交通事故が発生したか否かを判定した。レコーダプログラム30は、上記の判定処理の他に、運転手が危険な運転をしたか否かを判定する処理を実行してもよい。以下、上記第1の実施の形態を例にして、変形例1を説明する。図9は、危険な運転が行われているか否かを判定するために用いられる判定テーブル41を示す図である。
【0067】
図9を参照して、判定テーブル41には、進行方向、旋回方向、及び重力方向ごとに、走行範囲が設定されている。走行範囲は、車両が走行している間に計測される加速度の範囲を示す。レコーダプログラム30は、加速度Ax,Ay,Azが判定開始範囲内である場合(ステップS4においてYes)、ステップS6の処理に加えて、動作確認時刻に計測された加速度が走行範囲内であるか否かを確認する。動作確認時刻に計測された加速度Ax,Ay,Azが走行範囲内である場合、レコーダプログラム30は、危険な運転が行われたと判断し、送信処理を実行する(ステップS7)。
【0068】
たとえば、運転手が急ブレーキをかけた後に、通常の走行を続けた場合を考える。この場合、レコーダプログラム30は、判定開始範囲内にある加速度Axを検出した(ステップS4においてYes)後に、動作確認時刻の加速度Ax,Ay,Azが走行範囲内にあると判定する。その後、送信処理(ステップS7)が実行される。
【0069】
また、運転手が急にハンドルを切った後に、通常の走行を続けた場合を考える。この場合、レコーダプログラム30は、判定開始範囲内にある加速度Ayを検出した(ステップS4においてYes)後に、動作確認時刻の加速度Ax,Ay,Azが走行範囲内にあると判定する。その後、送信処理(ステップS7)が実行される。
【0070】
このように、判定テーブル41に走行範囲を設定することにより、運転手が危険な運転をした時であっても、撮影画像データ40をサーバ3へ送信することができる。したがって、安全運転に対する運転手の意識を高めることが可能となる。
【0071】
[変形例2]
また、レコーダプログラム30は、車両の車種に応じて設定された判定テーブル41を用いてもよい。以下、上記第1の実施の形態を例にして、変形例1を説明する。図10は、判定開始範囲、停止範囲、異常範囲が車種ごとに設定された範囲設定データ42を示す図である。レコーダプログラム30は、車両の車種が運転手により指定された場合、指定された車種に対応する判定テーブル41を設定する。レコーダプログラム30は、設定した判定テーブル41を使用して交通事故が発生したか否かを判定する。
【0072】
たとえば、バス及び普通乗用車が同じ衝撃を受けた場合を考える。バスの重量と普通乗用車の重量とが異なるため、バス及び普通乗用車がそれぞれ同じ衝撃を受けたとしても、バス及び普通乗用車で検出される加速度の大きさは異なる。このため、車両の車種に対応した判定テーブル41を使用することにより、交通事故が発生したか否かを判定するときの精度を向上させることができる。
【0073】
図10を参照して、範囲設定データ42は、範囲データ42A,42B,42Cを有する。範囲データ42Aは、普通乗用車、トラック及び大型バスの各車種の判定開始範囲が設定されたデータである。範囲データ42Bは、各車種の停止範囲が設定されたデータである。範囲データ42Cは、各車種の異常範囲が設定されたデータである。図10において、異常範囲の各加速度の表示を省略している。また、図10において、判定開始範囲及び停止範囲の加速度Ay,Azの表示を省略している。
【0074】
以下、レコーダプログラム30が、範囲設定データ42を利用して、運転手により指定された車種に対応した判定テーブル41を設定する動作を説明する。範囲設定データ42は、メモリ17に予め格納される。運転手は、レコーダプログラム30の起動を指示した後に、携帯通信端末1が設置された車両の車種を指定する。レコーダプログラム30は、範囲設定データ42に記録された各範囲データの中から、指定された車種に対応する範囲データを特定する。レコーダプログラム30は、特定した判定開始範囲、停止範囲、異常範囲の各範囲データを、判定テーブル41に登録する。これにより、ステップS3の処理で使用される異常範囲と、ステップS4の処理で使用される判定開始範囲と、ステップS6の処理で使用される停止範囲とが、範囲設定データ42及び車種を特定する情報に基づいて設定される。
【0075】
[その他の変形例]
以下、上記第1の実施の形態を例にして、その他の変形例について説明する。レコーダプログラム30は、加速度Ax,Ay,Azのいずれか一つが判定開始範囲内にある場合(ステップS4においてYes)、加速度Ax,Ay,Azの全てが停止範囲内にあるか否かを判定した(ステップS6)が、これに限られない。
【0076】
たとえば、レコーダプログラム30は、加速度Axのみを使用して、ステップS3,S4,S6の処理を実行してもよい。レコーダプログラム30は、加速度Ax,Ay,Azの合成加速度を使用して、ステップS3,S4,S6の処理を実行してもよい。レコーダプログラム30は、ステップS3,S4の処理では加速度Ax,Ay,Azを使用するとともに、ステップS6の処理では、加速度Axのみを使用してもよい。
【0077】
また、判定開始範囲内にあると判定された加速度の方向と、停止範囲内にあると判定された加速度の方向とは、一致しなくてもよい。たとえば、レコーダプログラム30は、ステップS3,S4の処理では加速度Azのみを使用し、ステップS6の処理では、加速度Axのみを使用してもよい。
【0078】
上記実施の形態において、レコーダプログラム30は、基準時刻から所定時間が経過した時刻(動作確認時刻)に計測された加速度が、停止範囲内にあるか否かを判定したが、これに限られない。たとえば、図6を参照して、レコーダプログラム30は、時刻T1〜T3の期間に計測された加速度Ax,Ay,Azのそれぞれの平均値を算出し、各方向の加速度の平均値が停止範囲内にあるか否かを確認してもよい。これにより、動作確認時刻に計測された加速度を用いるよりも、車両が停止しているか否かを判定する精度を向上させることができる。
【0079】
上記実施の形態において、停止範囲が、判定テーブル41に記録される例を説明したが、これに限られない。たとえば、停止範囲に代えて、車両が停止動作を行っていることを示す加速度の範囲(停止動作範囲)を判定テーブル41に記録してもよい。停止動作範囲として設定される加速度の絶対値は、停止範囲として設定される加速度の絶対値よりも大きい。この場合、携帯通信端末1は、時刻T1に計測された加速度が動作停止範囲内にあれば、撮影画像データをサーバ3へ送信する。
【0080】
これにより、基準時刻T0において車両が関与する交通事故が発生し、かつ、車両が時刻T1に停止できない場合であっても、携帯通信端末1は、撮影画像データをサーバ3へ送信することができる。また、上記実施の形態の場合と異なり、運転手が、急ブレーキをかけた場合であっても、携帯通信端末1は、撮影画像データをサーバ3へ送信できる。したがって、運転手が危険な運転をすることを防止することができる。
【0081】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 携帯通信端末
3 サーバ
11 CPU
12 RAM
13 表示パネル
15 加速度センサ
16 カメラ
17 メモリ
30 レコーダプログラム
41 判定テーブル
42 範囲設定データ
42A〜42C 範囲データ
50a,50b 外部カメラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置される携帯通信端末であって、
前記車両の外側または内側の状況を撮影して撮影画像データを生成する内蔵カメラと、
前記内蔵カメラにより生成された撮影画像データを記憶するメモリと、
前記車両の加速度を計測する加速度センサと、
前記加速度センサにより計測された加速度が予め設定された第1範囲内であるか否かを判定する初期判定部と、
計測された加速度が前記第1範囲内であると判定された時刻から所定の期間内に計測された加速度が、予め設定された第2範囲内であるか否かを判定する送信判定部と、
前記所定の期間内に計測された加速度が前記第2範囲内であると判定された場合、前記メモリに記憶された撮影画像データのうち、前記第1範囲内であると判定された時刻を含む期間に撮影された撮影画像データを送信する画像送信部とを備える携帯通信端末。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯通信端末であって、
前記第2範囲は、前記車両が停止していることを示す加速度の範囲である携帯通信端末。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の携帯通信端末であって、さらに、
前記初期判定部により使用される加速度の範囲が車種ごとに設定された第1範囲データと、前記送信判定部により使用される加速度の範囲が車種ごとに設定された第2範囲データとを記憶する記憶部を備え、
前記初期判定部は、前記車両の車種が指定された場合、指定された車種に対応する範囲を前記第1範囲データから選択し、前記第1範囲データから選択した範囲を前記第1範囲として設定し、
前記送信判定部は、前記指定された車種に対応する範囲を前記第2範囲データから選択し、前記第2範囲データから選択した範囲を前記第2範囲として設定する携帯通信端末。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の携帯通信端末であって、さらに、
前記車両に取り付けられた外部カメラにより撮影された撮影画像データを受信する車内通信部を備え、
前記メモリは、前記車内通信部により受信された撮影画像データを記憶する携帯通信端末。
【請求項5】
カメラを備えるとともに車両に設置される携帯通信端末に搭載されるコンピュータに、
前記車両の外側または内側の状況を前記カメラに撮影させることにより、撮影画像データを生成するステップと、
前記カメラにより生成された撮影画像データをメモリに記憶するステップと、
前記車両の加速度を計測するステップと、
前記加速度センサにより計測された加速度が予め設定された第1範囲内であるか否かを判定するステップと、
計測された加速度が前記第1範囲内であると判定された時刻から所定の期間内に計測された加速度が、予め設定された第2範囲内であるか否かを判定するステップと、
前記所定の期間内に計測された加速度が前記第2範囲内であると判定された場合、前記メモリに記憶された撮影画像データのうち、前記第1範囲内であると判定された時刻を含む期間に撮影された撮影画像データを送信するステップとを実行させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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