説明

携帯電話機および通信モード設定方法

【課題】 MBMSによるユーザ情報の配信を確実に受けることのできる携帯電話機を実現する。
【解決手段】 ネットワークとの間で電波を送受信するアンテナと、前記アンテナにより送受信される電波を変復調する無線部と、前記無線部により復調されたMBMS関連を含むLayer3メッセージを解析、処理する機能を有し、PtMモードでのMBMSサービスによるユーザ情報を受けているときに、PtPモードでのMBMSサービスを行う要求を前記無線部を介して前記ネットワークへ送信する制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式による携帯電話機に関し、特に、MBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)サービスを受ける携帯電話機に関する。
【背景技術】
【0002】
W−CDMA方式による携帯電話機では、共通チャネルを用いて1つのネットワークと複数の携帯電話機とが通信するPtM(Point to Multipoint)モードによる通信や、個別チャネルを用いて1つのネットワークと1つの携帯電話機とが通信するPtP(Point To Point)モードによる通信が行われる。
【0003】
特許文献1(特表2005−525065号公報)や特許文献2(特表2005−536142号公報)に開示されるMBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)は、3GPP仕様書TS25.331などに定義されるもので、ビデオや画像、音声などのマルチメディアデータを配信する機能である。MBMSによるユーザ情報の配信では、ネットワークの無線電力の有効使用のために、PtMモードの使用が基本とされているが、PtPモードも使用できる。
【0004】
特許文献3(特開2002−368684号公報)には、移動局はPtMモードに相当する共通チャネル(FACH)によるマルチキャストデータの受信誤りが所定回数以上連続すると、基地局に対してPtPモードに相当する個別チャネル(DCH)を再送用として設定することを要求し、基地局は移動局の要求に応じて再送用のDCHを設定し、再送対象のデータを再送用DCHを用いて再送し、その後の受信状態を監視して共通チャネルによる受信を再開することが開示されている。
【特許文献1】特表2005−525065号公報
【特許文献2】特表2005−536142号公報
【特許文献3】特開2002−368684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、MBMSによるユーザ情報の配信では、PtMモードの使用が基本とされる。PtMモードによるMBMS通信中に、トンネルに入ることなどにより携帯電話機が圏外状態になった場合、通信が一時的に不可能になり、ネットワークから送信された情報は得られない。
【0006】
その後、携帯電話機が圏内状態に戻っても、既にネットワークからのユーザ情報の再送期間が終わっていると、現在の3GPP規定ではPtMモードによるMBMS通信中では移動機から主導的に再送を要求することはできないこととされているため、最終的にユーザ情報を受信できないことになるという問題点がある。
【0007】
また、特許文献3に記載の技術を3GPP規定に適用した場合、PtPモードに移行することとなり、再送の要求を行うことができることとなる。しかしながら、このような構成とした場合、PtPモードに移行してデータを取得することができるものの、その後PtMモードに移行することから、トンネルが連続するような山間部ではモードの切り替えが頻繁に行われることとなり、携帯電話機とネットワークとの間での通信量が増加し、これにより輻輳状態を招来する危険性もある。
【0008】
本発明は上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、MBMSによるユーザ情報の配信を確実に受けることのできる携帯電話機を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の携帯電話機は、ネットワークとの間で電波を送受信するアンテナと、
前記アンテナにより送受信される電波を変復調する無線部と、
前記無線部により復調されたMBMS関連を含むLayer3メッセージを解析、処理する機能を有し、PtMモードでのMBMSサービスによるユーザ情報を受けているときに、PtPモードでのMBMSサービスを行う要求を前記無線部を介して前記ネットワークへ送信し、その後PtPモードでのMBMSサービスを受ける状態を維持する制御部と、を有する。
【0010】
この場合、制御部は、RRC IDLEモードとして、PtMモードでのMBMSサービス通信状態とし、受信できていないユーザ情報があることを認識すると、RRC Connection Requestメッセージをネットワークへ送信し、そのメッセージの情報要素Establishment causeにMBMS ptp RB requestを設定することとしてもよい。
【0011】
また、制御部は、Cell_PCH, URA_PCH, Cell_FACHモードとして、PtMモードでのMBMSサービス通信状態とし、受信できていないユーザ情報があることを認識すると、Cell Updateメッセージをネットワークへ送信し、そのメッセージの情報要素としてCell update causeにMBMS ptp RB requestを設定することとしてもよい。
【0012】
本発明の通信モード設定方法は、ネットワークからのMBMSサービスを受ける携帯電話機で行われる通信モード設定方法であって、
PtMモードでのMBMSサービスを受信する状態とする受信ステップと、
前記MBMSサービスによるユーザ情報を受けているときに、PtPモードでのMBMSサービスを行う要求を前記ネットワークへ送信するモード変更ステップと、
を有する。
【0013】
この場合、受信ステップでは、RRC IDLEモードとして、PtMモードでのMBMSサービス通信状態とし、モード変更ステップでは、RRC Connection Requestメッセージをネットワークへ送信し、そのメッセージの情報要素Establishment causeにMBMS ptp RB requestを設定することとしてもよい。
【0014】
また、受信ステップでは、Cell_PCH, URA_PCH, Cell_FACHモードとして、PtMモードでのMBMSサービス通信状態とし、モード変更ステップでは、Cell Updateメッセージをネットワークへ送信し、そのメッセージの情報要素としてCell update causeにMBMS ptp RB requestを設定することとしてもよい。
【0015】
上記のように構成される本発明においては、PtMモードで取得できなかった分のユーザ情報を、圏内状態に復帰した時に、PtPモードでの通信をネットワークへ要求してPtPモードとし、さらにPtPモードを維持することから確実かつ迅速に受信することができ、またこの状態を通信料の増加を招来すること無く連続して行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による携帯電話機の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】ネットワークと携帯電話機によるシステムの構成を示す図である。
【図3A】本発明の実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【図3B】本発明の実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は本発明による携帯電話機の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【0019】
本実施形態の携帯電話機11は、電波を受信するアンテナ1と、電波を変復調する無線部2と、変調されるデータ及び復調されたデータを制御する制御部3と、データを表示するディスプレイ5と、データを保存・読み出しできるメモリ101と、ユーザからの入力を受け付けるキーボード102と、音声を出力できるスピーカ103と、音声を入力できるマイク104から構成されている。
【0020】
無線部2は複数の基地局によるネットワーク20からの電波を監視し、受信状態を制御部3に通知できる機能を持つ。
【0021】
制御部3はMBMS関連を含むRRC・MMなどのLayer3メッセージを解析・処理する機能を持つ。
【0022】
これらの各部は以下のように動作する。ネットワーク20から送信された電波をアンテナ1で受信して、RF(高周波)信号に変調されている受信電波を無線部2で復調し、制御部3でネットワーク20とのメッセージを解析・処理をする。ディスプレイ5は制御部3による制御に応じてユーザに視覚的にわかるように表示する。
【0023】
図2において、ネットワーク20はセル21の範囲で電波を送信することができる。携帯電話機11はセル21の内部または外部を自由に移動できる。携帯電話機11はセル21の内部にあればネットワーク20からの電波を受信できる圏内状態となり、セル21の外部にあればネットワーク20からの電波を受信できない圏外状態となる。
【0024】
図3Aおよび図3Bは、本実施形態において、ネットワーク20が4分割したユーザ情報をMBMSのPtMモードで送信するが、携帯電話機11が一部のユーザ情報を受信できなく、携帯電話機11からPtPモードによる送信をネットワーク20に要求し、受信できなかったユーザ情報を再送により受信を要求する手順を示すシーケンス図であり、携帯電話機11を構成する無線部2、制御部3およびディスプレイ5とネットワーク20の動作を示している。
【0025】
以下に、図3Aおよび図3Bを参照して本実施形態の動作について説明する。
【0026】
ステップ30において、携帯電話機11の制御部3はRRC idle modeとし、ステップ31において、PtMモードでMBMSのユーザ情報できる状態に既になっているとする。
【0027】
ステップ31でネットワーク20は新たなSessionを開始する。ステップ32でセル21のMBMSサービスの変更を知らせるMBMS MODIFY SERVICES INFOMATIONメッセージを、ステップ33でセル21の変更の無い利用可能なMBMSサービスについて知らせるMBMS UNMODIFIED SERVICES INFORMATIONメッセージを、ステップ34でMBMS受信に関する一般的な情報を知らせるMBMS GENERAL INFORMATIONメッセージを、ステップ35でセル21及び隣接セルで提供されるサービス間で共通かもしれないPtM Radio Bearer configuration情報を知らせるMBMS COMMON P-T-M RB INFORMATIONメッセージを、ステップ36でセル21で使われるPtM Radio Bearer configurationを知らせるMBMS CURRENT CELL P-T-M RB INFORMATIONメッセージを、ステップ37でセル21の隣接セルで使われるPtM Radio Bearer configurationを知らせるMBMS NEIGHBOURING CELL P-T-M RB INFORMATIONメッセージを携帯電話機11に送信する。
【0028】
ステップ38で4分割されたユーザ情報の1番目が送信され、携帯電話機11で受信する。ステップ39で4分割されたユーザ情報の2番目が送信され、携帯電話機11で受信する。ステップ40において、携帯電話機11がネットワーク20からの電波を受信できなくなり、圏外状態になる。
【0029】
ステップ41で4分割されたユーザ情報の3番目が送信されるが、携帯電話機11は圏外状態で受信できない。ステップ42で4分割されたユーザ情報の4番目が送信されるが、携帯電話機11は圏外状態で受信できない。
【0030】
ステップ43でネットワーク20は現在のSessionを終了する。ステップ44において携帯電話機11がネットワーク20から電波を受信できるようになり、圏内状態になり、制御部3は受信できていないユーザ情報があることを認識する。
【0031】
ステップ45で、携帯電話機11の制御部3は受信できなかったユーザ情報を要求するため、まず、RRC CONNECTION REQUESTメッセージをネットワーク20に送信する。この時、メッセージ中の情報要素であるEstablishment causeにMBMS ptp RB requestを設定する(現在の3GPP仕様では、ネットワークから指示されない場合、PtPの通信を要求することはできないことになっている)。
【0032】
ネットワーク20はEstablishment causeからユーザ情報の再送信要求だと判断する。ステップ46でネットワーク20がRRC CONNECTION SETUPメッセージを送信し、ステップ47で携帯電話機11がRRC CONNECTION SETUP COMPLETEメッセージを送信し、携帯電話機11とネットワーク20間でRRC CONNECTIONが確立される。
【0033】
ステップ48でネットワーク20はユーザ情報を送信するため、RADIO BEARER SETUPメッセージを送信し、ステップ49で携帯電話機11はRADIO BEARER SETUP COMPLETEを送信し、携帯電話機11とネットワーク20間でPtPのRADIO BEARERが確立される。
【0034】
携帯電話機11はMBMS PtP通信状態に遷移する。ステップ50において、携帯電話機11はPtPモードでMBMSのユーザ情報を受信できる状態になる。ステップ51からステップ54において、ネットワーク20は確立されたPtPのRADIO BEARERを使用して4分割されたユーザ情報を再送信する。ステップ55において、携帯電話機11の制御部3は4分割されていたユーザ情報を全て受信できたことを認識し、ユーザ情報を1つに組み立てる。ステップ56において携帯電話機11の制御部3はディスプレイ5にユーザ情報を送信し、ステップ57においてディスプレイは受信したユーザ情報を表示する。
【0035】
なお、携帯電話機11の制御部3はステップ30でRRC IDLEモードとし、ステップ45において、RRC Connection Requestメッセージを送信し、そのメッセージの情報要素Establishment causeにMBMS ptp RB requestを設定するものとして説明したが、携帯電話機11の制御部3はステップ30にて、Cell_PCH, URA_PCH, Cell_FACHモードを設定し、ステップ45においてCell Updateメッセージを送信し、そのメッセージの情報要素としてCell update causeにMBMS ptp RB requestを設定することとしてもよい。
【0036】
この出願は、2006年3月10日に出願された日本出願特願2006−065778を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。
【符号の説明】
【0037】
1 アンテナ
2 無線部
3 制御部
5 ディスプレイ
11 携帯電話機
20 ネットワーク
21 セル
101 メモリ
102 キーボード
103 スピーカ
104 マイク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークとの間で電波を送受信するアンテナと、
前記アンテナにより送受信される電波を変復調する無線部と、
前記無線部により復調されたMBMS関連を含むLayer3メッセージを解析、処理する機能を有し、PtMモードでのMBMSサービスによるユーザ情報を受けているときに、PtPモードでのMBMSサービスを行う要求を前記無線部を介して前記ネットワークへ送信し、その後PtPモードでのMBMSサービスを受ける状態を維持する制御部と、
を有する携帯電話機。
【請求項2】
請求項1記載の携帯電話機において、
制御部は、RRC IDLEモードとして、PtMモードでのMBMSサービス通信状態とし、受信できていないユーザ情報があることを認識すると、RRC Connection Requestメッセージをネットワークへ送信し、そのメッセージの情報要素Establishment causeにMBMS ptp RB requestを設定する携帯電話機。
【請求項3】
請求項1記載の携帯電話機において、
制御部は、Cell_PCH, URA_PCH, Cell_FACHモードとして、PtMモードでのMBMSサービス通信状態とし、受信できていないユーザ情報があることを認識すると、Cell Updateメッセージをネットワークへ送信し、そのメッセージの情報要素としてCell update causeにMBMS ptp RB requestを設定する携帯電話機。
【請求項4】
ネットワークからのMBMSサービスを受ける携帯電話機で行われる通信モード設定方法であって、
PtMモードでのMBMSサービスを受信する状態とする受信ステップと、
前記MBMSサービスによるユーザ情報を受けているときに、PtPモードでのMBMSサービスを行う要求を前記ネットワークへ送信するモード変更ステップと、
を有する通信モード設定方法。
【請求項5】
請求項4記載の通信モード設定方法において、
受信ステップでは、RRC IDLEモードとして、PtMモードでのMBMSサービス通信状態とし、モード変更ステップでは、RRC Connection Requestメッセージをネットワークへ送信し、そのメッセージの情報要素Establishment causeにMBMS ptp RB requestを設定する通信モード設定方法。
【請求項6】
請求項5記載の通信モード設定方法において、
受信ステップでは、Cell_PCH, URA_PCH, Cell_FACHモードとして、PtMモードでのMBMSサービス通信状態とし、モード変更ステップでは、Cell Updateメッセージをネットワークへ送信し、そのメッセージの情報要素としてCell update causeにMBMS ptp RB requestを設定する通信モード設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公開番号】特開2012−199968(P2012−199968A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−115622(P2012−115622)
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【分割の表示】特願2008−504997(P2008−504997)の分割
【原出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】