説明

摩擦力測定装置

【課題】紙葉類媒体との間に発生するローラの摩擦力を測定する装置において、ローラを容易に交換でき、紙葉類媒体をローラに押し付ける圧力を容易に設定することができるようにする。
【解決手段】測定ローラ設置部34のローラ装着部36には、測定ローラ12を着脱自在に装着して測定するときにはロックされ、取り外すときにはロックが解除されるロックレバー38が設けられている。測定ローラ設置部34およびモータ40を含むブロックは、スライドプレート46に上下方向にスライド可能に装着され、任意の高さに固定できるようになっている。紙葉類媒体を測定ローラ12に押し付けるピンチローラ50は、ブラケットに揺動自在に取り付けられ、そのブラケットを、ワイヤを介して移動調整可能な接触圧調整部材54で引っ張り、測定ローラ12の方向に揺動させることで任意の接触圧を得ている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は摩擦力測定装置に関し、特に紙葉類媒体を搬送するためのローラの摩擦力を測定してローラの材料、硬度、形状などを評価するのに好適な摩擦力測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現金自動取引装置、複写機、プリンタ、スキャナなどでは、紙幣、通帳、普通紙、感熱紙などの紙葉類媒体を搬送するために、ゴムローラ、プラスチックローラなどのローラが広く使用されている。
【0003】
紙葉類媒体の搬送は、紙葉類媒体に回転するローラを接触させたときにローラと紙葉類媒体との間に発生する摩擦力に依存している。摩擦力が小さい場合においては、ローラと紙葉類媒体との間に滑りが生じて紙葉類媒体を所定の速度で移動することはもちろん、搬送そのものが不可になることがある。逆に、摩擦力が大きい場合には、搬送に必要な力以上の駆動力を紙葉類媒体に与えて紙葉類媒体との間に滑りが生じなくなるので、紙葉類媒体を破損してしまう危険性がある。
【0004】
そのため、ローラは、これが組み込まれる装置の適用場所に応じて、紙葉類媒体との間に適切な摩擦力が得られるように設計される。ローラの摩擦力は、実際の装置に取り付けて運転しながら測定するのが好ましい。しかし、ローラは、装置内に複数搭載されていることが多く、1つのローラの摩擦力を測定するのに他のすべてのローラも含めて、測定のたびに、取り外して別のローラに交換しなければならないため、現実には、装置に取り付けた状態で摩擦力を測定することは現実的ではない。
【0005】
そこで、一般には、ローラ単体で摩擦力を測定することができる摩擦力測定装置が利用されている(たとえば、特許文献1参照)。この摩擦力測定装置は、ベース板上に一方にサーボモータおよびゴムローラを載せ、他方にカウンターウエイトを載せた天秤ばかりを設置し、ベース板上に固定した用紙にサーボモータにより回転されるゴムローラを接触させる構成にしている。さらに、ゴムローラの回転速度は、速度調整部により可変でき、ゴムローラの用紙に対する接触圧も、その上に重さの異なる錘を載せることにより可変できるようにしている。このように可変可能なゴムローラの回転速度および接触圧の条件のもとに、回転するゴムローラと固定されている用紙との間に発生する動摩擦力をカウンターウエイト側に設置したロードセルにより測定するようにしている。したがって、この特許文献1に記載の摩擦力測定装置は、ローラと紙葉類媒体との間に発生する摩擦力を各種の条件下で測定できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−228077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の摩擦力測定装置は、特定のローラに対して接触される紙葉類媒体との滑り速度を速度調整部により可変して諸条件での測定を可能にしているが、大きさの異なる複数のローラを容易に交換して測定することができないという問題点があった。また、ローラの紙葉類媒体に対する接触圧は、重さの異なる錘をローラの上に載せることにより可変しているが、複数の錘をあらかじめ用意し、それらを組み合わせて加圧条件を設定しているので、条件の変更が容易でないという問題点があった。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、材料、大きさ、形状の異なるローラを容易に交換でき、紙葉類媒体をローラに押し付ける圧力を容易に設定することができる摩擦力測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では上記の課題を解決するために、回転するローラを紙葉類媒体に接触させることで生じる摩擦力を測定する摩擦力測定装置において、一端に前記紙葉類媒体を固定する媒体クランパが設けられた連結部材と、前記連結部材の他端に接続されたロードセルと、前記紙葉類媒体の上方に設置されて前記ローラを着脱自在に装着するローラ装着部、前記ローラ装着部に装着された前記ローラを回転駆動するモータ、および前記ローラ装着部および前記モータの昇降および固定を行う高さ調整部を有する測定ローラ設置部と、前記紙葉類媒体を前記ローラに接触させる方向に付勢されるよう前記紙葉類媒体の下方に設置されたピンチローラと、前記ピンチローラに接続されて前記紙葉類媒体が前記ローラへ任意の接触圧にて接触するよう調整可能な接触圧調整部材と、を備えていることを特徴とする摩擦力測定装置が提供される。
【0010】
このような摩擦力測定装置によれば、測定ローラ設置部は、ローラを着脱自在に装着でき、高さを調整できるようにしてあることで、材料、大きさ、形状の異なるローラの交換が容易になっている。また、ピンチローラのローラへの接触圧を引っ張り力の設定変更が容易な接触圧調整部材で生成するようにしたことで、接触圧を容易に調整することができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
上記構成の摩擦力測定装置は、測定対象のローラの交換が容易な構成であるため、多くの種類のローラを測定して摩擦力の相対的な比較を行うことが容易になる。また、引っ張り力を容易に変更できる接触圧調整部材を使用してピンチローラが紙葉類媒体をローラへ押し付ける接触圧を調整できる構成にしたことで、測定条件を容易に変更することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】摩擦力測定装置の概要を示す平面図である。
【図2】摩擦力測定装置の概要を示す斜視図である。
【図3】測定ローラ設置部を示す説明図であって、(A)は測定ローラ装着状態を示す部分断面側面図、(B)は1対のローラ保持板の一方を示す図である。
【図4】ピンチローラおよびピンチローラセット部の構成を示す図であって、(A)はピンチローラおよびピンチローラセット部の平面図、(B)はピンチローラおよびピンチローラセット部の側面図である。
【図5】摩擦ローラを装着するときの操作状態を説明する測定ローラ設置部の斜視図である。
【図6】紙葉類媒体を装着するときの操作状態を説明する測定ローラ設置部の斜視図である。
【図7】ピンチローラによる接触圧の調整を行うときの操作状態を説明する接触圧調整部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は摩擦力測定装置の概要を示す平面図、図2は摩擦力測定装置の概要を示す斜視図である。
【0014】
本発明による摩擦力測定装置は、ベースフレーム10に紙葉類媒体と測定対象の測定ローラ12との間の摩擦力を測定するための各種要素が取り付けられて構成されている。すなわち、測定ローラ12が滑り回転しながら紙葉類媒体に接触しているときの動摩擦力を検出するセンサとしてロードセル14がベースフレーム10に固定され、カバー16によって覆われ、保護されている。ロードセル14は、起歪体に貼り付けられた歪みゲージが荷重によって変形されることによる歪みを電気抵抗の変化に置き換え、その電気抵抗の変化を電圧の変化に置き換えて出力する。
【0015】
ロードセル14は、連結部材18に結合されている。連結部材18は、ロードセル14に引っ張り荷重をかける方向に長く形成されたベース部20を有し、そのベース部20に揺動部材22が揺動自在に取り付けられている。この揺動部材22は、ベース部20の先端部と協働して紙葉類媒体を固定するための媒体クランパを構成している。そのため、揺動部材22には、紙葉類媒体をクランプして測定するときに滑りが生じないようゴム製の滑り防止部材24が取り付けられ、好ましくは、ベース部20の先端部の対向面にも滑り防止用のシートを貼付しておくのがよい。揺動部材22は、また、紙葉類媒体のクランプ状態を維持するための固定部材26を有している。この固定部材26は、そのポストに雄ねじが形成され、それに対応するベース部20の位置に雌ねじが形成されていて、紙葉類媒体をクランプした後は、ねじ止めすることにより紙葉類媒体を連結部材18に固定することができる。
【0016】
この連結部材18の先端部には、紙葉類媒体を載置するトッププレート28がベースフレーム10に固定されている。このトッププレート28は、紙葉類媒体を載置したときの上面がロードセル14の連結部材18との連結位置と同じ高さになるような高さを有している。トッププレート28は、また、紙葉類媒体を載置するときに基準となるよう媒体ストッパ30がロードセル14の側の辺縁に立設され、中央部には、所定の大きさの開口部32が形成されている。
【0017】
トッププレート28に隣接して、測定ローラ設置部34がベースフレーム10に固定されている。この測定ローラ設置部34は、トッププレート28の開口部32の上方に測定対象の測定ローラ12を回転自在に装着するローラ装着部36を有している。このローラ装着部36は、測定ローラ12を着脱できるようになっていて、測定しているときは、測定ローラ12が外れないようにロックし、取り外すときにはロックを解除するロックレバー38を有している。このローラ装着部36に装着された測定ローラ12は、その上部に設置されたモータ40によって駆動される。このモータ40と測定ローラ12とは、径の大きな測定ローラの設置に対応するよう所定間隔離間して設置されている。モータ40から測定ローラ12への動力伝達は、モータ40の回転出力に固着されたギヤ、モータ40と測定ローラ12との間に設置されたアイドルギヤ42および測定ローラ12の回転軸に固着されたギヤを介して行われる。測定ローラ設置部34は、さらに、ローラ装着部36およびモータ40を任意の高さに移動して固定できる高さ調整部44を有している。この高さ調整部44は、測定ローラ設置部34およびモータ40を固定しているブロックの基部がベースフレーム10に立設されたスライドプレート46に上下方向にスライド可能に装着され、高さ調整ノブ48によってブロックを任意の高さに固定できるようになっている。
【0018】
トッププレート28の開口部32に位置する測定ローラ12の下方には、ピンチローラ50が設置されている。このピンチローラ50は、トッププレート28に載せられた紙葉類媒体を測定ローラ12に所定の接触圧で押し付けるものである。ピンチローラ50は、また、セットレバー52が連結されていて、測定ローラ12または紙葉類媒体の設置または交換のときに、開口部32からその下方へ待避させることができるようにしている。
【0019】
ピンチローラ50を測定ローラ12に所定の接触圧で押し付ける力は、ベースフレーム10に固定された接触圧調整部材54によって生成される。接触圧調整部材54は、その操作性および設置スペースの関係で、ベースフレーム10の上面に、ロードセル14、連結部材18および測定ローラ設置部34の並び方向とは直交する方向に設置されている。ここで、ピンチローラ50は、ベースフレーム10の下面に設置されているので、接触圧調整部材54およびピンチローラ50は、プーリ56によって方向転換され、ベースフレーム10を貫通して延びるよう設置されたワイヤ58によって連結されている。
【0020】
接触圧調整部材54は、テンションブラケット60に長手方向に移動自在に設置され、テンション値調整ノブ62によって任意の位置にテンションブラケット60に固定することができる。その位置の調整は、ピンチローラ50の所望の接触圧に相当するテンション値の分だけ接触圧調整部材54を移動させることになる。
【0021】
なお、ベースフレーム10の空いている領域64には、図示はしないが、ロードセル14の出力を増幅する信号増幅器、モータ40の回転速度を制御するモータ制御部、およびこれらの電源部が搭載される。また、この摩擦力測定装置を移動するのに使用される把手66がベースフレーム10に固定されている。
【0022】
図3は測定ローラ設置部を示す説明図であって、(A)は測定ローラ装着状態を示す部分断面側面図、(B)は1対のローラ保持板の一方を示す図である。
測定ローラ設置部34のローラ装着部36は、平行に配置された1対のローラ保持板36a,36bを有している。測定ローラ12は、回転軸68に固定されており、その回転軸68には、軸受70a,70bが固定され、軸受70bの外側の回転軸68には、アイドルギヤ42と噛合されるギヤ72が固定されている。軸受70a,70bは、ギヤ72のある側にそれぞれフランジ部71a,71bを有している。これら軸受70a,70bは、ローラ保持板36a,36bに回転自在に保持される。すなわち、図3の(B)に示したように、たとえば一方のローラ保持板36aを見てみると、そのローラ保持板36aには、軸受70aが嵌合される軸受嵌合孔74と、幅が回転軸68の径より大きく軸受70aの径よりは小さくて下端部から延びて軸受嵌合孔74に連結している溝76とが穿設されている。また、ローラ保持板36aには、ロックレバー38を回動自在に保持するロックレバー保持部78が一体に形成され、ロックレバー38の係止部を揺動可能に貫通配置する開口部80と、ばね82の一端を掛止する掛止孔84とが穿設されている。ばね82は、図3の(A)に示したように、ロックレバー38を、ロックレバー保持部78に保持された軸86を中心に反時計回りに方向に回転するよう付勢して、ロックレバー38の係止部と軸受70aのフランジ部71aとの係止状態を維持させるためのものである。
【0023】
なお、1対のローラ保持板36a,36bは、それぞれ軸受嵌合孔74および溝76を有している場合について説明したが、ロックレバー38が設けられている側のローラ保持板36aについては、必ずしも回転軸68を通過させるための溝76は必要ではなく、軸受70aを嵌合する軸受嵌合孔74だけでよい。
【0024】
図4はピンチローラおよびピンチローラセット部の構成を示す図であって、(A)はピンチローラおよびピンチローラセット部の平面図、(B)はピンチローラおよびピンチローラセット部の側面図である。
【0025】
ピンチローラ50は、ブラケット88に回転自在に保持され、このブラケット88は、ピンチローラセット部90のブラケット92に軸94を中心に回動自在に取り付けられている。ブラケット88は、その一部が軸94よりも下方へ延出されていて、その延出部96にワイヤ掛止バー98が横架されている。ワイヤ掛止バー98の中央部には、ワイヤ58を掛止させる溝100が周設されている。この構成により、図4の(B)において、ワイヤ58がワイヤ掛止バー98を図の左方向に引っ張ると、ブラケット88は、軸94を中心に時計回り方向に回転し、その結果、ピンチローラ50は、図の上方へ押し上げられることになる。
【0026】
ピンチローラセット部90は、軸94よりもピンチローラ50のある側の斜め下方に軸102を有し、その軸102の一端にブラケット92が固着されている。このブラケット92は、これにブラケット88を介して保持される重量のあるピンチローラ50が、図4の(B)において、軸102の左側にあるので、軸102には、反時計回り方向に回転する力が作用している。軸102の他端には、回動可能に操作するセットレバー52が連結されている。すなわち、軸102の他端には、レバー104の一端が固着され、レバー104の他端には、セットレバー52が水平方向に移動自在な態様で連結されている。セットレバー52には、水平方向に2つの係止部52a,52bが突設され、ガイドブラケット106と協働してセットレバー52が2つの水平位置で固定できるようにしている。すなわち、図4の(B)に示したように、セットレバー52の係止部52aがガイドブラケット106に係止している状態では、軸102は、ピンチローラ50の自重により反時計回り方向に回転して、ブラケット88の軸94は、軸102からの高さが最も高い位置に移動し、ピンチローラ50が測定ローラ12を加圧するときの測定位置に対応している。セットレバー52の係止部52bがガイドブラケット106に係止している状態では、軸102は、時計回り方向に回転され、ブラケット88の軸94は、軸102からの高さが最も低い位置に移動し、ピンチローラ50が上記の測定位置から待避しているときの状態に対応している。
【0027】
以上の構成の摩擦力測定装置において、測定対象である測定ローラ12の装着、紙葉類媒体の装着、紙葉類媒体を測定ローラ12に接触させる接触圧の調整などを行うときの操作について説明する。
【0028】
図5は摩擦ローラを装着するときの操作状態を説明する測定ローラ設置部の斜視図である。
測定ローラ12の摩擦力を測定するときの下準備としては、まず、回転軸68に測定対象の測定ローラ12、軸受70a,70bおよびギヤ72を取り付けたユニットを用意しておき、その測定ローラ12のユニットを測定ローラ設置部34のローラ装着部36に装着する。このとき、セットレバー52を操作して、ピンチローラ50を測定位置から下方位置へ待避させた状態で行う。すなわち、測定ローラ12と軸受70bとの間の回転軸68をローラ保持板36bの下側から溝76を介して軸受嵌合孔74まで上方へ移動し、次に、軸受70aがローラ保持板36aの軸受嵌合孔74に嵌合し、かつ軸受70bがローラ保持板36bの軸受嵌合孔74に嵌合するよう測定ローラ12のユニットをロックレバー38の方へ押し込む。このユニットの押し込みのとき、ギヤ72がアイドルギヤ42に噛合するようにする。これにより、軸受70aのフランジ部71aがローラ保持板36aに当接した時点で、ロックレバー38が軸受70aのフランジ部71aに係止され、測定ローラ12のユニットは、ローラ保持板36a,36bから離脱されることがないように測定ローラ設置部34にロックされることになる。その後、測定ローラ設置部34およびモータ40を含むブロックは、所定の高さに移動され、その高さに高さ調整ノブ48によって固定される。この所定の高さとは、トッププレート28の上面に載せられたときの紙葉類媒体の上面と測定ローラ12の外周の下端面とがほぼ一致するときのブロックの高さである。
【0029】
図6は紙葉類媒体を装着するときの操作状態を説明する測定ローラ設置部の斜視図である。
紙葉類媒体108の装着は、ピンチローラ50をその測定位置から下方位置へ待避させた状態で行う。すなわち、紙葉類媒体108を媒体ストッパ30に突き当てた状態でトッププレート28の上に載せ、連結部材18をロードセル14から離れる方向に引っ張りながら固定部材26を操作して紙葉類媒体108をクランプする。その後、セットレバー52を操作して、ピンチローラ50を待避位置から測定位置へセットする。
【0030】
図7はピンチローラによる接触圧の調整を行うときの操作状態を説明する接触圧調整部材の斜視図である。
ピンチローラ50による接触圧の調整は、接触圧調整部材54のフック110からワイヤ58を外して行われる。すなわち、接触圧調整部材54は、テンションブラケット60にその長手方向に摺動自在に載置されたブラケット112に固定されており、そのブラケット112を任意の位置まで移動してテンションブラケット60に固定する。この固定は、テンションブラケット60に設けられたスリットを介してテンション値調整ノブ62をブラケット112にねじ止めすることにより行われる。ブラケット112の位置の調整は、ピンチローラ50の所望の接触圧に相当するテンション値の分だけ接触圧調整部材54をプーリ56から離れる方向に移動させることによって行われる。このとき、テンション値は、接触圧調整部材54に刻設された目盛から直接読み取ることができ、またはその目盛から換算することができる。これにより、ブラケット112に固定された接触圧調整部材54のフック110を引き出してワイヤ58に引っ掛けると、ピンチローラ50は、所望の接触圧にて測定ローラ12に接触することになる。
【0031】
以上の準備によって測定ローラ12の摩擦力測定が開始可能となる。摩擦力の測定は、モータ40の回転速度を図示しないモータ制御部で制御し、それにより紙葉類媒体108が引っ張られる力を検出したロードセル14の出力を、図示しない信号増幅器で増幅した後、たとえばシンクロスコープにて観測することによって行われる。モータ制御部では、モータ40の起動時におけるスルーイング特性を色々変化させることができ、これによってモータ40の起動条件と測定ローラ12の摩擦力との相関を求めることができる。また、測定ローラ12を材料、大きさ、形状の異なるものに交換することによって、摩擦力の相対的な比較を行うことができる。
【0032】
ここで、ローラ装着部36は、測定ローラ12のユニットを着脱自在に装着できるように構成されているので、測定ローラ12の交換は、比較的容易に行うことができる。すなわち、まず、高さ調整ノブ48を緩めて測定ローラ設置部34およびモータ40を含むブロックを上げておき、次に、ロックレバー38を操作してその係止部を軸受70aのフランジ部71aから外すことによって、測定ローラ12のユニットのロックを解除することができる。ロックが解除されたユニットは、これをロックレバー38から離れる方向に引くと、軸受70a,70bがローラ保持板36a,36bの軸受嵌合孔74から離脱し、回転軸68をローラ保持板36bの軸受嵌合孔74から溝76を通過させると、測定ローラ設置部34から取り外すことができる。その後、材料、大きさ、形状の異なる新たな測定ローラ12を取り付けた別のユニットを測定ローラ設置部34に装着し、ブロックの高さを調節すると、その新たな測定ローラ12の摩擦力を測定することが可能になる。
【符号の説明】
【0033】
10 ベースフレーム
12 測定ローラ
14 ロードセル
18 連結部材
20 ベース部
22 揺動部材
24 滑り防止部材
26 固定部材
28 トッププレート
30 媒体ストッパ
32 開口部
34 測定ローラ設置部
36 ローラ装着部
36a,36b ローラ保持板
38 ロックレバー
40 モータ
42 アイドルギヤ
44 高さ調整部
46 スライドプレート
48 高さ調整ノブ
50 ピンチローラ
52 セットレバー
52a,52b 係止部
54 接触圧調整部材
56 プーリ
58 ワイヤ
60 テンションブラケット
62 テンション値調整ノブ
66 把手
68 回転軸
70a,70b 軸受
71a,71b フランジ部
72 ギヤ
74 軸受嵌合孔
76 溝
78 ロックレバー保持部
88 ブラケット
90 ピンチローラセット部
92 ブラケット
94 軸
96 延出部
98 ワイヤ掛止バー
100 溝
102 軸
104 レバー
106 ガイドブラケット
108 紙葉類媒体
110 フック
112 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するローラを紙葉類媒体に接触させることで生じる摩擦力を測定する摩擦力測定装置において、
一端に前記紙葉類媒体を固定する媒体クランパが設けられた連結部材と、
前記連結部材の他端に接続されたロードセルと、
前記紙葉類媒体の上方に設置されて前記ローラを着脱自在に装着するローラ装着部、前記ローラ装着部に装着された前記ローラを回転駆動するモータ、および前記ローラ装着部および前記モータの昇降および固定を行う高さ調整部を有する測定ローラ設置部と、
前記紙葉類媒体を前記ローラに接触させる方向に付勢されるよう前記紙葉類媒体の下方に設置されたピンチローラと、
前記ピンチローラに接続されて前記紙葉類媒体が前記ローラへ任意の接触圧にて接触するよう調整可能な接触圧調整部材と、
を備えていることを特徴とする摩擦力測定装置。
【請求項2】
前記測定ローラ設置部の前記ローラ装着部は、前記ローラをその軸方向両端側にて保持する1対のローラ保持板と、前記ローラが前記ローラ保持板から外れないようにするロックレバーとを有し、前記ローラ保持板には、前記ローラの軸受が嵌合される軸受嵌合孔と幅が前記ローラの回転軸の径より大きく前記軸受の径よりは小さくて前記軸受嵌合孔に連結している溝とが穿設されており、前記ロックレバーは、前記軸受嵌合孔に嵌合された前記軸受のフランジ部に係止され、前記フランジ部との係止を解除することで、前記ローラを前記ローラ保持板から外すことができるようにしたことを特徴とする請求項1記載の摩擦力測定装置。
【請求項3】
前記軸受嵌合孔は、径の大きな測定ローラの設置に対応するよう前記モータの出力軸から離間して設置され、前記モータの回転出力は、アイドルギヤを介して前記ローラに伝達されていることを特徴とする請求項2記載の摩擦力測定装置。
【請求項4】
前記接触圧調整部材は、前記ピンチローラを揺動自在に支持しているブラケットを前記ピンチローラが前記ローラに近づく方向に揺動するよう引っ張ることで前記接触圧を生じさせるとともに、前記ピンチローラとの距離を変更することにより、前記接触圧を調整できるようにしたことを特徴とする請求項1記載の摩擦力測定装置。
【請求項5】
前記接触圧調整部材は、前記ロードセル、前記連結部材および前記測定ローラ設置部が直線状に並んで設置されているベースフレームの上面に、前記連結部材および前記測定ローラ設置部の並び方向とは直交する方向に設置され、プーリにより直角方向に方向転換されたワイヤによって前記ベースフレームの下面に設置された前記ピンチローラに接続されていることを特徴とする請求項1記載の摩擦力測定装置。
【請求項6】
前記ピンチローラを前記ローラに対して接離する方向に揺動自在に保持しているブラケットと、前記ブラケットを前記ローラに対して接離する方向に回動自在に操作して測定時は前記ピンチローラが前記紙葉類媒体に接触する位置に前記ブラケットをセットし、前記紙葉類媒体の着脱時には前記ピンチローラが前記ローラから離間した位置に前記ブラケットを待避させるセットレバーとを有するピンチローラセット部をさらに備えていることを特徴とする請求項1記載の摩擦力測定装置。
【請求項7】
前記モータの回転速度を制御するモータ制御部と、前記ロードセルの出力を増幅する信号増幅器と、前記モータ制御部および前記信号増幅器の電源部とをさらに備えていることを特徴とする請求項1記載の摩擦力測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−33365(P2011−33365A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177174(P2009−177174)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】