説明

摩耗量測定器

【課題】レールのテーパ面の摩耗量を素早く且つ精度よく測定させることができる摩耗量測定器を提供する。
【解決手段】レールRの上面に当接した状態で略水平方向に延びる上側部位1aと、レールRの側面Rbに当接した状態で略垂直方向に延びる側方部位1bとを有して上側部位1aと側方部位1bとが略L字状に連結され、それぞれがレールRの上面Ra及び側面Rbと当接した状態とされ得る当接部材1と、テーパ面Rcにおける基準高さAで略水平方向に摺動可能とされるとともに、先端がテーパ面Rcに当接可能とされた測定子3と、測定子3の先端がテーパ面Rcに当接した状態となるまでの当該測定子3の摺動量を測定し得る測定手段5と、測定手段5による測定値を数字にて表示する表示手段6とを具備し、表示手段6の表示によりテーパ面Rcの摩耗量を把握し得るよう構成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車の車輪が転動可能とされた上面、略垂直方向に延びる側面、及び当該車輪の内側に形成されたフランジが当接するとともに上面及び側面を繋ぐテーパ面で構成されたレールの当該テーパ面の摩耗量を測定し得る摩耗量測定器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
列車が通過するレールは、通常、車輪が転動可能とされた上面、垂直方向に延びる側面、及び当該車輪の内側に形成されたフランジが当接するとともに上面及び側面を繋ぐテーパ面で構成されている。このうち、テーパ面は、車輪が転動する際に当該車輪のフランジが当接するため、他の部位に比べて摩耗が激しく、その摩耗量を逐次測定して点検を頻繁に行う必要がある。かかるレールの点検においては、従来、テーパ面における基準高さの位置に汎用の物差しを当て、その目盛りを目視にて測定することにより、当該テーパ面の摩耗量を測定していた。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術においては、汎用の物差しをテーパ面に当てて、その摩耗量を測定するものであるため、常に精度よく測定を行うことができないとともに、目盛りを目視して測定する必要があることから、素早い摩耗量の測定を行うのが困難とされていた。特に、テーパ面の基準高さにて測定を行うのが難しいことから、素早く且つ精度よくテーパ面の摩耗量を測定するには、熟練を要するという問題があった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、レールのテーパ面の摩耗量を素早く且つ精度よく測定させることができる摩耗量測定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、列車の車輪が転動可能とされた上面、略垂直方向に延びる側面、及び当該車輪の内側に形成されたフランジが当接するとともに前記上面及び側面を繋ぐテーパ面で構成されたレールの当該テーパ面の摩耗量を測定し得る摩耗量測定器において、前記レールの上面に当接した状態で略水平方向に延びる上側部位と、当該レールの側面に当接した状態で略垂直方向に延びる側方部位とを有するとともに、当該上側部位と側方部位とが略L字状に連結され、それぞれがレールの上面及び側面と当接した状態とされ得る当接部材と、前記レールのテーパ面における基準高さで略水平方向に摺動可能とされるとともに、先端が当該レールのテーパ面に当接可能とされた測定子と、該測定子の先端がテーパ面に当接した状態となるまでの当該測定子の摺動量を測定し得る測定手段と、該測定手段による測定値を数字にて表示する表示手段とを具備し、当該表示手段の表示により前記レールのテーパ面の摩耗量を把握し得るよう構成されたことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の摩耗量測定器において、前記測定子の位置を零点とし得るスペーサを具備し、当該零点からの前記測定子の摺動量を前記テーパ面の摩耗量として前記表示手段にて表示させ得ることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の摩耗量測定器において、前記測定子、測定手段及び表示手段を具備したセンサ本体が前記側方部位に固定されるとともに、当該側方部位における基準高さに貫通孔を設け、当該貫通孔を介して前記測定子が摺動可能とされたことを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載の摩耗量測定器において、前記上側部位におけるレールの上面との当接面には、磁石が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、当接部材の上側部位及び側方部位をレールの上面及び側面と当接させつつ測定子の先端をレールのテーパ面に当接するまで摺動させれば、表示手段の表示によりレールのテーパ面の摩耗量を把握し得るので、レールのテーパ面の摩耗量を素早く且つ精度よく測定させることができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、測定子を零点とし得るスペーサを具備し、当該零点からの測定子の摺動量をテーパ面の摩耗量として表示手段にて表示させ得るので、当該表示手段で直接摩耗量を表示させることができ、より素早くレールのテーパ面の摩耗量を測定させることができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、測定子、測定手段及び表示手段を具備したセンサ本体が側方部位に固定されるとともに、当該側方部位における基準高さに貫通孔を設け、当該貫通孔を介して測定子が摺動可能とされたので、摩耗量測定器の小型化を図ることができ、持ち運びを容易とすることができる。
【0012】
請求項4の発明によれば、上側部位におけるレールの上面との当接面には、磁石が形成されたので、当接部材の上側部位及び側方部位がレールの上面及び側面と当接させた状態を磁石の磁力にて保持させることができ、摩耗量測定の際の作業性をより向上させることができるとともに、摩耗量測定時に当接部材1がずれてしまうのを抑制でき、より正確な摩耗量の測定を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る摩耗量測定器を示す正面図
【図2】同摩耗量測定器を示す平面図
【図3】同摩耗量測定器を示す左側面図
【図4】同摩耗量測定器にて摩耗の測定を行う対象としてのレールを示す断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る摩耗量測定器は、レールのテーパ面の摩耗量を測定し得るものであり、図1〜3で示すように、略L字状の当接部材1と、測定子3、測定手段5及び表示手段6が形成されたセンサ本体2とから主に構成されている。然るに、当接部材1をレールRに当接させた状態にて当該レールRのテーパ面Rcに測定子3の先端を当接させることにより、当該テーパ面Rcの摩耗量を測定し得るよう構成されている。
【0015】
測定対象としてのレールRは、図4に示すように、列車の車輪Dが転動可能とされた上面Ra、略垂直方向に延びる側面Rb、及び当該車輪Dの内側に形成されたフランジDaが当接するとともに上面Ra及び側面Rbを繋ぐテーパ面Rcで構成されており、本実施形態における摩耗量測定器は、比較的摩耗が激しいテーパ面Rcの摩耗量を測定し得るものとされている。具体的には、テーパ面Rcにおける上面Raから所定寸法t下方の基準高さAの位置に測定子3の先端を当接させ、その当接位置から側面Rbまでの寸法sと基準寸法(摩耗がないレールRの寸法)とを比べることにより、摩耗量を測定し得るのである。
【0016】
当接部材1は、例えば樹脂製部品から成るもので、図1に示すように、レールRの上面Raに当接した状態で略水平方向に延びる上側部位1aと、当該レールRの側面Rbに当接した状態で略垂直方向に延びる側方部位1bとを有するとともに、当該上側部位1aと側方部位1bとが略L字状に連結され(本実施形態においては一体成形にて連結されている)、それぞれがレールRの上面Ra及び側面Rbと当接した状態とされ得るものである。
【0017】
即ち、上側部位1aの下面がレールRの上面Raと当接する当接面1aaを構成すべく平坦とされるとともに、側方部位1bの内面(図1中左側の面)がレールRの側面Rbと当接する当接面1baを構成すべく平坦とされており、当接面1aaをレールRの上面Raに当接させつつ当接面1baをレールRの側面Rbに当接可能とされているのである。尚、図中符号1bbは、側方部位1bから一体的に延設されたフランジ部を示しており、当該フランジ部1bbに対してネジNにてセンサ本体2が取り付けられている。
【0018】
センサ本体2は、フランジ部1bbを介して側方部位1bに固定されたものであり、図示しない電源(本実施形態においてはボタン電池などの乾電池)を内蔵しつつオン、オフを切り換える操作ボタン2a、零点設定するための操作ボタン2b等が形成されている。このセンサ本体2には、測定子3、測定手段5及び表示手段6が配設されており、このうち測定子3は、センサ本体2から先端側が突出しつつ基準高さAにおいて図1中左右方向に略直線状に摺動可能とされている。
【0019】
具体的には、かかる測定子3は、レールRのテーパ面Rcにおける基準高さAで略水平方向に摺動可能とされており、図1、2で示すように、センサ本体2の一端(図中左端)側に突出して進退可能とされるとともに、当該センサ本体2の他端(図中右端)から突出した操作部4と連結されている。而して、当該操作部4を図中左右方向に移動させることにより測定子3がセンサ本体2内の図示しないガイドレールに沿って同方向に摺動し得るようになっている。また、側方部位1bにおける基準高さAに貫通孔7が設けられており、当該貫通孔7を介して測定子3が摺動して前進及び後退が可能とされている。
【0020】
測定手段5は、センサ本体2内に配設されたリニアセンサなどの変位センサ(例えば穴の深さを測るためのデプスセンサ等)から成るもので、測定子3の先端がテーパ面Rcに当接した状態となるまでの当該測定子3の摺動量(変位量)を測定し得るものである。かかる測定手段5により、測定子3の摺動量を電気的に測定することができ、当該測定値に基づいて表示手段6にて表示させることができる。
【0021】
表示手段6は、測定手段5による測定値を数字にて表示(ディジタル表示)するためのものであり、例えば測定手段5と電気的に接続された液晶画面や7セグメント(所謂7セグと称されるもの)から成る。かかる表示手段6の表示(ディジタル表示)によりレールRのテーパ面Rcの摩耗量を把握し得るようになっている。例えば、側方部位1bにおける当接面1baの位置(貫通孔7におけるレールR側の開口位置)を零点とし、そこからの測定子3の摺動量を測定手段5にて測定するようにすれば、寸法s(図4参照)を表示手段6にて表示させることができるので、摩耗がないレールRにおける寸法s(基準寸法)と比べれば、摩耗量を把握することができるのである。
【0022】
然るに、測定子3の位置を零点とし得る(即ち、測定子3の先端が摩耗がないレールRにおける基準寸法の位置となるように設定)スペーサ(不図示)を具備し、当該零点からの測定子3の摺動量をテーパ面Rcの摩耗量として表示手段6にて表示させ得るよう構成してもよい。より具体的には、例えば貫通孔7のレールR側の開口を覆う如きスペーサを取り付けておき、当該スペーサに測定子3の先端を当接させると、当該測定子3が摩耗がないレールRにおける寸法s(基準寸法)の位置になるよう零点設定する。その後、当該スペーサを外してレールRに本摩耗量測定器をセットすれば、摩耗量自体を測定することができ、その摩耗量を直接表示手段6にて表示させることができるのである。
【0023】
本実施形態においては、センサ本体2に零点設定するための操作ボタン2bが形成されているので、操作部4を操作しつつ所望位置にて当該操作ボタン2bを押圧操作することにより、上記の如き零点設定(貫通孔7におけるレールR側の開口位置を零点とするもの、或いは摩耗がないレールRにおける寸法s(基準寸法)の位置を零点とするもの)を容易に行わせることができる。
【0024】
更に、本実施形態においては、当接部材1の上側部位1aにおけるレールRの上面Raとの当接面1aaには、磁石Mが形成されている。この磁石Mの磁力により当接部材1をレールRの上面Raに吸着させることができるので、当接部材1の上側部位1a及び側方部位1bがレールRの上面Ra及び側面Rbと当接させた状態を当該磁石Mの磁力にて保持させることができ、摩耗量測定の際の作業性をより向上させることができるとともに、摩耗量測定時に当接部材1がずれてしまうのを抑制でき、より正確な摩耗量の測定を行わせることができる。
【0025】
上記実施形態によれば、当接部材1の上側部位1a及び側方部位1bをレールRの上面Ra及び側面Rbと当接させつつ測定子3の先端をレールRのテーパ面Rcに当接するまで摺動させれば、表示手段6の表示によりレールRのテーパ面Rcの摩耗量を直接的(摩耗量自体を表示)或いは間接的(貫通孔7におけるレールR側の開口位置からの寸法sを表示させ、それに基づいて摩耗量を計算)に把握し得るので、レールRのテーパ面Rcの摩耗量を素早く且つ精度よく測定させることができる。
【0026】
また、上記したように、測定子3を零点とし得るスペーサを具備し、当該零点からの測定子3の摺動量をテーパ面Rcの摩耗量として表示手段6にて表示させ得るようにすれば、当該表示手段6で直接摩耗量を表示させることができ、より素早くレールRのテーパ面Rcの摩耗量を測定させることができる。特に、本実施形態においては、表示手段6が数字にて表示(ディジタル表示)するので、作業者が目盛りを読み取るものに比べ、測定精度をより向上させることができる。
【0027】
更に、測定子3、測定手段5及び表示手段6を具備したセンサ本体2が側方部位1bに固定されるとともに、当該側方部位1bにおける基準高さAに貫通孔7を設け、当該貫通孔7を介して測定子3が摺動して進退可能とされたので、摩耗量測定器の小型化を図ることができ、持ち運びを容易とすることができる。尚、表示手段6は、センサ本体2に配設されるものに限定されず、他の位置(例えば、上側部位1aの上面或いは側面等)に配設されるものとしてもよい。
【0028】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば樹脂製の当接部材1に代えて、他の材質(例えばステンレスなどの軽金属等)から成る当接部材としてもよく、或いは上側部位1a及び側方部位1bを近接又は離間可能として折りたたみ式とすることにより、持ち運びをより容易とした摩耗量測定器としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
レールの上面に当接した状態で略水平方向に延びる上側部位と、当該レールの側面に当接した状態で略垂直方向に延びる側方部位とを有するとともに、当該上側部位と側方部位とが略L字状に連結され、それぞれがレールの上面及び側面と当接した状態とされ得る当接部材と、レールのテーパ面における基準高さで略水平方向に摺動可能とされるとともに、先端が当該レールのテーパ面に当接可能とされた測定子と、該測定子の先端がテーパ面に当接した状態となるまでの当該測定子の摺動量を測定し得る測定手段と、該測定手段による測定値を数字にて表示する表示手段とを具備し、当該表示手段の表示によりレールのテーパ面の摩耗量を把握し得るよう構成された摩耗量測定器であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 当接部材
1a 上側部位
1b 側方部位
2 センサ本体
3 測定子
4 操作部
5 測定手段
6 表示手段
7 貫通孔
M 磁石
R レール
Ra 上面
Rb 側面
Rc テーパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の車輪が転動可能とされた上面、略垂直方向に延びる側面、及び当該車輪の内側に形成されたフランジが当接するとともに前記上面及び側面を繋ぐテーパ面で構成されたレールの当該テーパ面の摩耗量を測定し得る摩耗量測定器において、
前記レールの上面に当接した状態で略水平方向に延びる上側部位と、当該レールの側面に当接した状態で略垂直方向に延びる側方部位とを有するとともに、当該上側部位と側方部位とが略L字状に連結され、それぞれがレールの上面及び側面と当接した状態とされ得る当接部材と、
前記レールのテーパ面における基準高さで略水平方向に摺動可能とされるとともに、先端が当該レールのテーパ面に当接可能とされた測定子と、
該測定子の先端がテーパ面に当接した状態となるまでの当該測定子の摺動量を測定し得る測定手段と、
該測定手段による測定値を数字にて表示する表示手段と、
を具備し、当該表示手段の表示により前記レールのテーパ面の摩耗量を把握し得るよう構成されたことを特徴とする摩耗量測定器。
【請求項2】
前記測定子の位置を零点とし得るスペーサを具備し、当該零点からの前記測定子の摺動量を前記テーパ面の摩耗量として前記表示手段にて表示させ得ることを特徴とする請求項1記載の摩耗量測定器。
【請求項3】
前記測定子、測定手段及び表示手段を具備したセンサ本体が前記側方部位に固定されるとともに、当該側方部位における基準高さに貫通孔を設け、当該貫通孔を介して前記測定子が摺動可能とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の摩耗量測定器。
【請求項4】
前記上側部位におけるレールの上面との当接面には、磁石が形成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の摩耗量測定器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−47861(P2011−47861A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198026(P2009−198026)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(592124344)株式会社協栄製作所 (17)
【Fターム(参考)】