摺動式トリポード型等速ジョイント
【課題】保持器に転動体が導入された状態において、転動体の脱落を防止できるニードルユニットを備える摺動式トリポード型等速ジョイントを提供することを目的とする。
【解決手段】
等速ジョイント1の保持器60は、循環する転動体50の軌跡である循環路を形成し、転動体50の軸方向両端部をそれぞれ支持するように対向して連結された一対の循環路形成部材70,80からなる。そして、少なくとも一方の循環路形成部材70(80)は、転動体50を循環方向の側方から循環路に導入可能に開口した窓部75(85)と、窓部75(85)の周縁から転動体50の導入方向へ延伸するように形成された鍔部76(86)と、を有する。この鍔部76(86)は、転動体50を循環路に導入した後、当該転動体50が窓部75(85)を通過しないように窓部75(85)の開口側にかしめられる。
【解決手段】
等速ジョイント1の保持器60は、循環する転動体50の軌跡である循環路を形成し、転動体50の軸方向両端部をそれぞれ支持するように対向して連結された一対の循環路形成部材70,80からなる。そして、少なくとも一方の循環路形成部材70(80)は、転動体50を循環方向の側方から循環路に導入可能に開口した窓部75(85)と、窓部75(85)の周縁から転動体50の導入方向へ延伸するように形成された鍔部76(86)と、を有する。この鍔部76(86)は、転動体50を循環路に導入した後、当該転動体50が窓部75(85)を通過しないように窓部75(85)の開口側にかしめられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動式トリポード型等速ジョイントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
摺動式トリポード型等速ジョイントは、外輪の軌道溝とシャフトに連結されたトリポードとの間を回転可能に配置されたローラユニットを備えている。例えば、特許文献1に記載された摺動式トリポード型等速ジョイントのローラユニットは、外輪の軌道溝に挿入されるローラと、トリポードのトリポード軸部に外嵌されローラを回転自在に支持する中間部材(リング)と、ローラと中間部材との間に転動可能に介在される複数の転動体(ボール)と、を有している。このローラユニットは転動体を球体としているため、このような構成により動力を伝達した場合に、転動体と中間部材、および転動体と軌道溝の間には転がり抵抗の他に、滑りによる抵抗が発生する。
【0003】
そこで、この抵抗を低減するために、例えば、特許文献2に記載されたものがある。特許文献2に記載の摺動式トリポード型等速ジョイントは、転動体を軸状からなるニードルとしたニードルユニットを備えている。さらに、このニードルユニットは、ニードルが中間部材(ブロック)の外周を循環可能となるように支持する保持器を有している。これにより、転動体と中間部材、および転動体と軌道溝の間の滑りによる抵抗を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−98402号公報
【特許文献2】特許第2763624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、転動体をニードルとするニードルユニットは、例えば、複数の部品からなる保持器に転動体を導入しながら連結固定して組み付けられる。これに対して、ニードルユニットの組み付けを簡易化するために、複数の部品を連結して予め保持器を形成しておくことがある。このような場合に、ニードルは、保持器に設けられた窓部から導入されることになる。しかし、このような構成では、ニードルユニットをトリポード軸部に外嵌する前に、ニードルを保持器に導入した窓部からニードルが抜け落ちるおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、保持器に転動体が導入された状態において、転動体の脱落を防止できるニードルユニットを備える摺動式トリポード型等速ジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、
筒状部を有し、内周面に外輪回転軸方向に延びる3本の軌道溝が形成された外輪と、
シャフトに連結されるボス部、および、前記ボス部の外周面からそれぞれ前記ボス部の径方向外方に延びるように立設されそれぞれの前記軌道溝に挿入される3本のトリポード軸部を備えるトリポードと、
前記トリポード軸部の外周に前記トリポード軸部に対して揺動可能に設けられ、前記軌道溝の側面と対向する動力伝達面を有する中間部材と、
軸状からなり、前記軌道溝の側面と前記動力伝達面との間に、前記軌道溝の側面に沿って転動可能に設けられる複数の転動体と、
前記転動体が前記中間部材の外周を循環可能となるように前記転動体を支持する保持器と、
を備える摺動式トリポード型等速ジョイントであって、
前記保持器は、循環する前記転動体の軌跡である循環路を形成し、前記転動体の軸方向両端部をそれぞれ支持するように対向して連結された一対の循環路形成部材からなり、
少なくとも一方の前記循環路形成部材は、前記転動体を循環方向の側方から前記循環路に導入可能に開口した窓部と、前記窓部の周縁から前記転動体の導入方向へ延伸するように形成された鍔部と、を有し、
前記鍔部は、前記転動体を前記循環路に導入した後、当該転動体が前記窓部を通過しないように前記窓部の開口側にかしめられることである。
【0008】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、一対の前記循環路形成部材は、前記窓部および前記鍔部をそれぞれ有し、一方の前記循環路形成部材の前記窓部および他方の前記循環路形成部材の前記窓部が前記循環路における同一の周方向位置となるように配置されていることである。
【0009】
請求項3に係る発明の特徴は、請求項1または2において、前記鍔部は、前記転動体の循環方向にかしめられることである。
【0010】
請求項4に係る発明の特徴は、請求項1または2において、前記鍔部は、連結された一対の前記循環路形成部材の対向方向にかしめられることである。
【0011】
請求項5に係る発明の特徴は、請求項1〜4の何れか一項において、前記窓部および前記鍔部は、前記循環路形成部材の外周側に位置するように形成されていることである。
【0012】
請求項6に係る発明の特徴は、請求項1〜5の何れか一項において、
それぞれの前記循環路形成部材は、周回する前記循環路を形成し、
前記保持器は、同形状からなる前記循環路形成部材を連結することにより構成されることである。
【0013】
請求項7に係る発明の特徴は、請求項6において、
一対の前記循環路形成部材は、前記保持器の中心に対して非面対称形状となるように形成された第一連結部および第二連結部をそれぞれ有し、
一方の前記循環路形成部材の前記第一連結部および前記第二連結部は、他方の前記循環路形成部材の前記第二連結部および前記第一連結部とそれぞれ連結されることである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、保持器は、一対の循環路形成部材から構成され、少なくとも一方の循環路形成部材に形成された窓部から転動体を導入している。そして、所定数の転動体を循環路に導入した後、窓部の周縁に形成された鍔部を窓部の開口側にかしめる構成となっている。また、本発明において「かしめる」とは、押し潰すように折り曲げることの他、断面形状をL字状または円弧状に形成するように鍔部を塑性変形させることを含むものとする。
【0015】
このように、鍔部を窓部の開口側にかしめると、循環路に導入された転動体は、窓部から循環路の外部方向への移動をかしめられた鍔部により規制される。これにより、転動体が窓部を通過不能となるため、保持器から転動体が脱落することを防止できる。また、保持器は、予め一対の循環路形成部材を連結固定することにより形成されている。よって、複数の部品からなる保持器に転動体を導入しながら連結固定して組み付ける場合と比較して、組み付けを容易にすることができる。従って、さらに中間部材を保持器の内周側に配置してニードルユニットとし、トリポード軸部に外嵌する工程を簡易化することができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、一対の循環路形成部材は、窓部および鍔部をそれぞれ有する構成となっている。この時、各窓部は、循環路における同一の周方向位置となるように配置されている。つまり、転動体は、各窓部を同時に転動体の両端部が通過するように導入される。これにより、窓部における転動体の軸方向の開口量を小さくできる。また、転動体を傾斜させることなく循環路に導入できるように窓部を形成することにより、転動体を導入しやすくすることができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、鍔部は、転動体の循環方向にかしめられる構成となっている。つまり、例えば、鍔部の幅方向を転動体の循環方向とし、この鍔部を幅方向両端から窓部の開口側にかしめられる。これにより、確実に転動体の脱落を防止することができる。また、鍔部をかしめることにより、かしめた後の鍔部が押し潰されることになり鍔部の強度を向上させることができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、鍔部は、連結された一対の循環路形成部材の対向方向にかしめられる構成となっている。ここで、「一対の循環路形成部材の対向方向」とは、転動体の循環方向に垂直な方向であり、導入された転動体の軸方向である。そして、例えば、鍔部の幅方向を一対の循環路形成部材の対向方向とし、この鍔部を厚み方向から窓部の開口側にかしめられる。これにより、確実に転動体の脱落を防止することができる。また、鍔部をかしめることにより、かしめた後の鍔部が押し潰されることになり鍔部の強度を向上させることができる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、窓部および鍔部は循環路形成部材の外周側に位置するので、転動体は循環路の外周側から導入される構成となっている。従来、転動体を導入する窓部は、循環路形成部材の内周側に形成されることがあった。そうすると、保持器に転動体を導入した後、保持器の内周側に中間部材を配置した時点で転動体の脱落のおそれがなくなるからである。これに対して、本手段では、転動体を保持器に導入した後、転動体が鍔部により循環路の外部側への移動を規制され窓部を通過不能となるため、中間部材の有無に係わらず転動体の脱落を防止できる。そこで、転動体を循環路の外周側から導入する構成とすることが可能となり、これにより転動体の導入が容易となる。よって、組み付け時の作業性を向上させることができる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、保持器は、同形状からなる循環路形成部材を連結することにより構成される。また、一対の循環路形成部材は、転動体の軸方向両端部をそれぞれ支持し、周回する循環路をそれぞれ形成している。このような一対の循環路形成部材を連結させることにより、別形状からなる循環路形成部材を連結する場合と比較して、保持器の組み付け工程を簡易にすることができる。さらに、循環路形成部材が同形状であることから、当該部材の管理を簡易化することができる。よって、保持器の生産コストを低減することができる。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、一対の循環路形成部材は、第一連結部および第二連結部をそれぞれ有する構成となっている。この第一連結部と第二連結部は、保持器の中心を通る平面に対して非面対称形状となっている。そして、一方の循環路形成部材の第一連結部と、他方の循環路形成部材の第二連結部とを連結する。さらに、一方の循環路形成部材の第二連結部と、他方の循環路形成部材の第一連結部とを連結する。これにより、保持器は、転動体の循環路を形成しつつ、循環路形成部材を同形状の部材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第一実施形態:等速ジョイント1の斜視図であり、外輪10を軸方向に切断した状態を示す図である。
【図2】等速ジョイント1の一部の組み付け状態における外輪10の開口側から見た図である。
【図3】等速ジョイント1の一部の径方向断面図である。
【図4】中間部材40を除いたニードルユニット30の斜視図である。
【図5】中間部材40の分割部材41(42)の斜視図である。
【図6】分割部材41(42)を示す図である。(a)は、分割部材41(42)の平面図である。(b)は、分割部材41(42)の側面図である。(c)は、(a)のA方向矢視図である。
【図7】保持器60の三面図である。(a)は、保持器60の正面図である。(b)は、(a)のB−B断面図である。(c)は、(a)のC−C断面図である。
【図8】保持器60に転動体50を導入した後における鍔部76,86のかしめ前後のニードルユニット30の拡大図である。(a)はかしめ前の図であり、(b)はかしめ後の図である。
【図9】変形態様:保持器60に転動体50を導入した後における鍔部76,86のかしめ後のニードルユニット30の拡大図である。
【図10】第二実施形態:保持器160に転動体50を導入した後における鍔部176,186のかしめ前後のニードルユニット130の拡大図である。(a)はかしめ前の図であり、(b)はかしめ後の図である。
【図11】変形態様:保持器160に転動体50を導入する前後のニードルユニット30を転動体50の循環方向から見た拡大図である。(a)は転動体50を導入している状態の図であり、(b)は転動体50を導入した後における鍔部76のかしめ後の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の摺動式トリポード型等速ジョイント(以下、単に「等速ジョイント」と称する。)を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。ここで、本実施形態の等速ジョイントは、車両の動力伝達シャフトの連結に用いる場合を例に挙げて説明する。例えば、ディファレンシャルギヤに連結された軸部とドライブシャフトの中間シャフトとの連結部位に用いる場合である。
【0024】
<第一実施形態>
(等速ジョイント1の構成)
等速ジョイント1は、図1〜図3に示すように、外輪10と、トリポード20と、ニードルユニット30とから構成される。
外輪10は、図1に示すように、筒状部11と、連結軸部12とから構成される。筒状部11は、有底筒状に形成されている。連結軸部12は、筒状部11の底部から軸方向外方に延びるように、筒状部11と同軸的に且つ一体に形成されている。この連結軸部12は、図示しないディファレンシャルギヤに連結されている。
【0025】
そして、筒状部11の内周面には、図1〜図3に示すように、外輪回転軸方向(図2の前後方向)に延びる3本の軌道溝13が形成されている。これら3本の軌道溝13は、筒状部11の内周面において、外輪10の回転軸の周方向に等間隔(120deg間隔)に形成されている。各軌道溝13の溝延伸方向に直交する断面形状は、外輪10の回転軸中心に向かって開口するコの字形状をなしている。つまり、各軌道溝13は、ほぼ平面状に形成された溝底面13aと、ほぼ平面状に形成された側面13b,13cとを有している。この側面13b,13cは、溝底面13aとほぼ直交するとともに、側面13bと側面13cが対向するように平行に形成されている。
【0026】
それぞれの側面13b,13cには、外輪10の回転軸方向に延びる軌道凹部14,15がそれぞれ形成されている。この軌道凹部14,15は、軌道溝13の側面13b,13cのうち、外輪10の径方向のほぼ中央部に形成されている。この軌道凹部14,15の開口幅(図2,図3の上下方向幅)は、開口側(図2,図3の左右中央側)に向かって徐々に大きくなるように形成されている。つまり、軌道凹部14,15は、ほぼ平面状の底面14a,15aと、傾斜した側面14b,15bと、を有している。
【0027】
トリポード20は、図1および図3に示すように、外輪10の筒状部11の内側に配置されている。トリポード20は、ボス部21と、3本のトリポード軸部22とから構成される。ボス部21は、環状であり、その内周側には内歯スプライン21aが形成されている。この内歯スプライン21aは、中間シャフト2の端部に形成された外歯スプラインに嵌合連結される。また、ボス部21の外周面は、ほぼ球面凸状に形成されている。
【0028】
それぞれのトリポード軸部22は、ボス部21の外周面からそれぞれボス部21の径方向外方に延びるように立設されている。これらのトリポード軸部22は、ボス部21の周方向に等間隔(120deg間隔)に形成されている。そして、それぞれのトリポード軸部22の少なくとも先端部は、外輪10の筒状部11のそれぞれの軌道溝13内に挿入されている。それぞれのトリポード軸部22の外周面は、球面凸状に形成されている。ここで、当該球面凸状の曲率中心を通り、且つ、トリポード20の回転軸(中間シャフト2の回転軸)に直交する直線が、トリポード軸部22の中心軸(以下、「トリポード軸」とも称する)とは直交する。
【0029】
ニードルユニット30は、図1に示すように、全体形状としては環状であり、トリポード軸部22の外周側に配置されている。さらに、ニードルユニット30は、軌道溝13が延びる方向に移動可能となるように、軌道溝13に嵌合されている。このニードルユニット30は、中間部材40と、複数の転動体50と、保持器60とから構成される。
【0030】
中間部材40は、一対の分割部材41,42から構成されている。一対の分割部材41,42を一体的に見た場合に、中間部材40の全体形状としての外径は、ほぼ矩形に形成されている。さらに、中間部材40を全体として見た場合に、中間部材40の中央には、円形孔に相当する部分が形成されている。
【0031】
一対の分割部材41,42は、トリポード軸(図3の上下方向)および中間シャフト2の回転軸(図3の前後方向)を通る平面に対して、面対称な形状からなるように別体で構成され、それぞれ独立している。そして、一対の分割部材41,42は、図1および図3に示すように、軌道溝13の側面13b,13cの両側からトリポード軸部22を挟むように配置されている。つまり、両分割部材41,42は、動力伝達方向(外輪10の回転軸回りの方向、または、中間シャフト2の回転軸回りの方向)の両側からトリポード軸部22を挟むように配置されている。そして、一対の分割部材41,42は、トリポード軸部22の軸直交方向の何れの方向から見て、トリポード軸部22に対して揺動可能に設けられている。
【0032】
ここで、図5,図6を参照して、中間部材40の一方である分割部材41について説明する。なお、他方の分割部材42は、上述したように、一方の分割部材41を対称としたものであるため、図中に括弧書きで符号を付すのみとして、詳細な説明を省略する。
【0033】
分割部材41は、図5,図6(a)に示すように、矩形ブロック状に形成されている。この分割部材41の周面は、中間シャフト2の回転軸方向の端面41a,41bと、トリポード軸部22と接触するトリポード接触面41cと、動力伝達面41dとを有している。ここで、中間部材40(分割部材41および分割部材42)を一体としてみた場合に、端面41a,42a,41b,42bおよび動力伝達面41d,42dが外周面を形成し、トリポード接触面41c、42cが内周面を形成している。
【0034】
端面41a,41bは、図5の上側および下側、図6(c)の奥側および手前側、即ち分割部材41の長手方向の両端に位置する端面である。この両端面41a,41bは、動力伝達面41dにほぼ直交する平面からなる。つまり、両端面41a,41bは、軌道溝13の側面13bにほぼ直交する平面からなる。
【0035】
トリポード接触面41cは、トリポード軸部22に対して、外輪10の軸方向および外輪10の周方向と揺動可能に接触するように部分球面凹状に形成されている。トリポード接触面41cにおける球面中心は、図6(a)におけるトリポード接触面41cの左右方向幅(中間部材40の厚み)の中央と、図6(b)におけるトリポード接触面41cの上下方向幅(中間部材40における外輪10の軸方向幅)の中央と、を通る直線上に位置している。つまり、トリポード接触面41cは、トリポード軸部22の外周面に嵌合され、嵌合された状態でトリポード軸部22の軸方向に離脱しない形状をなしている。このようなトリポード接触面41cは、トリポード軸部22に接触して動力伝達を可能としている。
【0036】
動力伝達面41dは、図6(b)に示すように、トリポード接触面41cの背面側に位置している。この動力伝達面41dは、外輪10の側面13b(より具体的には、軌道凹部14の底面14a)と対向し、軌道溝13の延伸方向に延びるように形成されている。この動力伝達面41dは、平面状で矩形状に形成され、図6(b)の上下方向のうち中央部分に位置している。また、動力伝達面41dの外輪10の回転軸方向の両端側は、僅かに湾曲するように形成されている。つまり、動力伝達面41dの中央部が、図3の左右方向の外方に最も突出している。
【0037】
そして、一方の分割部材41は、その動力伝達面41dが軌道溝13の一方の側面13bに対向するように配置される。なお、他方の分割部材42についても同様に、その動力伝達面42dが軌道溝13の他方の側面13cに対向するように配置される。つまり、外輪10の回転軸と中間シャフト2の回転軸が一致している姿勢(ジョイント角0deg)において、動力伝達面41d,42dは、トリポード軸部22の中心軸と中間シャフト2の回転軸を通る平面にほぼ平行となる。そして、動力伝達面41d,42dは、複数(本実施形態では3〜4個)の軸状の転動体50に接触し得る範囲を有している。
【0038】
転動体50は、図1〜図4に示すように、軸状からなるニードルである。そして、図4に示すように、複数の転動体50が、中間部材40を一体として見た場合の外周を循環するように配置されている。複数の転動体50のうち一部(本実施形態においては、3〜4個)は、軌道溝13の軌道凹部14,15の底面14a,15aと一対の分割部材41,42の動力伝達面41d,42dとの間に、底面14a,15aおよび動力伝達面41d,42dに沿って転動可能に設けられている。つまり、転動体50を介して動力伝達面41d,42dと軌道溝13の底面14a,15aとの間で動力が伝達される。
【0039】
この転動体50は、転動面部51と、斜面部52と、突起部53とから構成されている。転動面部51は、外周に転動面を有する円柱状部材である。斜面部52は、転動面部51の両端においてテーパー状に形成された部位である。突起部53は、転動体50の柱延伸交方向(図2の左右方向)の断面が円形で、斜面部52の端面から突出するように形成されている。転動面部51の外周に形成される転動面の柱延伸方向の長さは、軌道凹部14,15の底面14a,15aおよび分割部材41,42の動力伝達面41d,42dの幅と同程度、もしくは、底面14a,15aの幅よりも僅かに短くなるように設定されている。
【0040】
また、この斜面部52は、軌道凹部14,15の側面14b,15bと同様の形状となっている。つまり、転動面部51は、軌道凹部14,15に嵌め込まれるように設けられている。これにより、転動体50の斜面部52は、軌道凹部14,15の側面14b,15bに対して、転動体50の軸方向に係合し得ることになる。つまり、転動体50は、軌道凹部14,15により転動体50の軸方向への移動が規制される。そして、転動面部51の外周の転動面が軌道凹部14,15の底面14a,15aおよび動力伝達面41d,42dに沿って転動可能となる。これにより、転動体50を介して動力伝達面42cと軌道溝13の側面13b,13cとの間で動力が伝達される。
【0041】
突起部53は、転動面部51の外径よりも小径に形成されている。そして、両側の突起部53の先端間距離、即ち転動体50の軸方向の長さは、軌道凹部14,15の底面14a,15aおよび動力伝達面41d,42dよりも大きく形成されている。つまり、突起部53は、軌道凹部14,15および動力伝達面41d,42dよりもトリポード軸方向の外側に位置している。この転動体の軸方向両側に位置する突起部53は、本発明の「転動体の軸方向の両端部」に相当する。
【0042】
保持器60は、図4,図7に示すように、全体形状としては環状の部材である。保持器60は、転動体50が中間部材40の外周を循環可能となるように、転動体50を支持している。そして、保持器60は、軌道溝13の内部にほぼ収容されている。この保持器60は、循環する転動体50の軌跡である循環路を形成する一対の循環路形成部材70,80により構成されている。一対の循環路形成部材70,80は、転動体50をその軸方向に挟むように、対向して連結されている。一対の循環路形成部材70,80の対向方向は、転動体50の循環方向に垂直な方向であり、且つ、導入された転動体50の基本姿勢における軸方向である。
【0043】
この一対の循環路形成部材70,80には、それぞれ転動体50の突起部53が挿入される。また、循環路形成部材70,80の断面形状は、図7(b),(c)に示すように、転動体50の斜面部52に係合するようなコの字形状に形成されている。このようにして、一対の循環路形成部材70,80は、両突起部53を支持している。つまり、一対の循環路形成部材70,80における内周縁と外周縁との距離は、転動体50の突起部53より大きく、且つ、転動面部51の最大径よりも小さくなるように形成されている。従って、転動体50の転動面部51は、一対の循環路形成部材70,80の外周縁から外側に突出し、且つ、内周縁から内側に突出している。
【0044】
そして、それぞれの循環路形成部材70,80のコの字形状の開口側が、転動体50の軸方向の長さより僅かに長い距離だけ離間した状態で、対向するように設けられている。従って、一対の循環路形成部材70,80の対向方向の最大幅は、軌道凹部14,15の底面14a,15aおよび動力伝達面41d,42dより大きく設定されている。そして、一対の循環路形成部材70,80は、外輪10の軌道溝13の内部に収容され、且つ、軌道凹部14,15および動力伝達面41d,42dよりもトリポード軸方向の外側に位置している。
【0045】
さらに、一方の循環路形成部材70は、直線部71,72と、湾曲部73,74とにより、周回する循環路を形成している。直線部71,72間の距離は、軌道溝13の溝幅(軌道凹部14の開口部と軌道凹部15の開口部との距離)よりも小さく設定されている。そして、他方の循環路形成部材80は、一方の循環路形成部材70と同様に、直線部81,82と、湾曲部83,84とにより、周回する循環路を形成している。また、直線部81,82間の距離は、直線部71,72間の距離と等しい。つまり、一対の循環路形成部材70,80は、軌道溝13の側面13b,13cに対して所定の隙間を隔てて配置されている。これにより、保持器60により支持される転動体50の循環方向は、周回する循環路において、直線部71,72,81,82および湾曲部73,74,83,84の形状に倣う方向となっている。
【0046】
また、循環路形成部材70は、直線部71,72の延伸方向の中央部における外周縁に窓部75と、窓部75の周縁に形成された鍔部76とが形成されている。窓部75は、一対の循環路形成部材70,80を連結してなる保持器60に複数の転動体50を導入するために、循環路形成部材70の循環路に形成された部位である。この窓部75は、図8(a)に示すように、転動体50を循環方向の側方から周回する循環路に導入可能に開口している。具体的には、循環方向とする直線部71,72の延伸方向に対して、その側方である循環路形成部材70の外周側から転動体50を導入可能としている。
【0047】
鍔部76は、窓部75の周縁から転動体50の導入方向へ延伸するように形成されている。この鍔部76の断面形状は、図8(a)に示すように、転動体50の斜面部52に係合するようなコの字形状に形成されている。そして、鍔部76は、図8(b)に示すように、保持器60に所定数の転動体50を循環路に導入した後、転動体50の循環方向の両側から加圧されて折り曲げられる。これにより、鍔部76は、窓部75の開口側に押し潰されるようにかしめられることになり、導入した転動体50が窓部75を通過して抜け出ることを防止している。
【0048】
一方の循環路形成部材70と同様に、他方の循環路形成部材80は、直線部81,82の延伸方向の中央部における外周縁に窓部85と、窓部85の周縁に形成された鍔部86とが形成されている。窓部85および鍔部86については、一方の循環路形成部材70に形成された窓部75および鍔部76とそれぞれ同一に形成されているため詳細な説明を省略する。
【0049】
また、直線部71および直線部81にそれぞれ形成された窓部75および窓部85は、循環路における同一の周方向位置となるように配置されている。つまり、転動体50が循環路に導入される際に、転動体50の両端の突起部53は、窓部75および窓部85をそれぞれ通過することになる。これは、直線部72および直線部82にそれぞれ形成された窓部75および窓部85についても同様である。
【0050】
そして、保持器60に所定数の転動体50を循環路に導入し、鍔部76,86を窓部75,85の開口側に折り曲げるかしめ工程を行うことにより、鍔部76,86が押し潰されることになる。このように、鍔部76,86を窓部75,85の開口側にかしめると、循環路に導入された転動体50は、かしめられた鍔部76,86により窓部75,85から循環路の外部方向への移動を規制される。これにより、循環路に導入された何れの転動体50も窓部75,85を通過不能となる。従って、保持器60に所定数の転動体50が導入された状態において、転動体50の脱落を確実に防止することができる。
【0051】
ここで、循環路形成部材70は、第一連結部77および第二連結部78が形成されている。同様に、循環路形成部材80は、対向する循環路形成部材70と連結される第一連結部87および第二連結部88が形成されている。一方の循環路形成部材70の第一、第二連結部77,78は、湾曲部73,74の内周縁から直線部71,72の延伸方向に延びる平面部と、その平面部の端部から一対の循環路形成部材70,80の対向方向(転動体50の軸方向)に延びる連結面部とからなるL字形状に形成されている。他方の循環路形成部材80の第一、第二連結部87,88は、一方の循環路形成部材70と同様に、湾曲部83,84の内周縁から直線部81,82の延伸方向に延びる平面部と、その平面部の端部から転動体50の軸方向に延びる連結面部とからなるL字形状に形成されている。
【0052】
そして、図7(c)に示すように、一方の循環路形成部材70の第一連結部77は、その連結面部のうち保持器60の外側の面を、他方の循環路形成部材80の第二連結部88の連結面部と当接させて連結される。この時、他方の循環路形成部材80の第二連結部88は、その連結面部のうち保持器60の内側の面が第一連結部77の連結面部と当接させて連結されている。つまり、一方の循環路形成部材70の第一連結部77の連結面部は、他方の循環路形成部材80の第二連結部87の連結面部と重ね合わせるように当接して連結される。
【0053】
これに対して、一方の循環路形成部材70の第二連結部78は、その連結面部のうち保持器60の内側の面を、他方の循環路形成部材80の第一連結部87の連結面部と当接させて連結される。この時、他方の循環路形成部材80の第一連結部87は、その連結面部のうち保持器60の外側の面が第二連結部78の連結面部と当接させて連結されている。つまり、一方の循環路形成部材70の第二連結部78の連結面部は、他方の循環路形成部材80の第一連結部87の連結面部とそれぞれ重ね合わせるように当接して連結される。
【0054】
これにより、一方の循環路形成部材70の第一連結部77および他方の循環路形成部材80の第二連結部88は、図7(c)に示すように、基準面P1を合わせ面として連結される。同様に、一方の循環路形成部材70の第二連結部78および他方の循環路形成部材80の第一連結部87は、基準面P2を合わせ面として連結される。この基準面P1,P2は、保持器60の中心に対称な平面である。このように、保持器60を構成する一対の循環路形成部材70,80は、何れも周回する循環路を形成するとともに、同形状からなる部材である。
【0055】
このように、保持器60は、循環路形成部材70に、同形状からなる循環路形成部材80を対向させて連結している。この時、循環路形成部材70に対して、循環路形成部材80は、循環路の中心において直線部81,82および湾曲部83,84がそれぞれ入れ替わるように反転させている。つまり、循環路形成部材70の第一連結部77における連結部位と、第二連結部78における連結部位とは、組み付けられた保持器60の中心に対して点対称の位置となっている。
【0056】
さらに、第一連結部77,87と第二連結部78,88は、保持器60の中心に対して非面対称形状となっている。具体的には、図7(c)に示すように、第一連結部77,87は、その連結面部が循環路の内周側となるように形成されている。これに対して、第二連結部78,88は、その連結面部が循環路の外周側となるように形成されている。つまり、図7(c)における循環路形成部材70の上下方向幅の中央から第一連結部77の連結面部までの距離は、第二連結部78の連結面部までの距離よりも連結面部の板厚分だけ大きくなっている。これは、循環路形成部材80の第一連結部87および第二連結部88においても同様である。
【0057】
また、第一連結部77および第二連結部88、第二連結部78および第一連結部87は、図7(c)に示すように、それぞれ連結されると保持器60の外側に開口するコの字形状となる。当該コの字形状の底部反開口側の面(保持器60の内側であり、以下、「底部内側面」という)は、平面状に形成されている。そして、それぞれの連結によるコの字形状の底部内側面同士が、平行に且つ対向するように設けられている。さらに、底部内側面同士の離間距離は、分割部材41(42)の中間シャフト2の回転軸方向の端面41a,41b(42a,42b)間の距離とほぼ一致している。また、各連結によるコの字形状の底部開口側の面は、底部内側面に平行な平面状に形成されている。
【0058】
そして、転動体50が軌道凹部14,15および動力伝達面41d,42dにおいて最も軌道溝13の溝底側(図3の上側)に位置し、且つ、保持器60が転動体50に対して最も軌道溝13の溝底側に位置する状態において、保持器60と軌道溝13の溝底面13aとの間に隙間を設けるように設定されている。これは、軌道凹部14,15および動力伝達面41d,42dと転動体50の転動面部51との軸方向移動量、転動体50と保持器60との軸方向移動量、保持器60を構成する一対の循環路形成部材70,80の軸方向厚みなどに基づいて決定される。
【0059】
さらに、保持器60の外輪10の径方向内方には、軌道溝13の開口部が位置するように設けられている。つまり、保持器60の径方向内方に位置する循環路形成部材80は、外輪10の径方向外方には転動体50に当接するが、外輪10の径方向内方には何ら規制されない。
【0060】
(等速ジョイント1の動作)
上述した等速ジョイント1の動作について説明する。一端側である連結軸部12がディファレンシャルギヤに連結された外輪10が動力を受けて回転すると、外輪10から、軌道溝13の軌道凹部14,15に嵌合しているニードルユニット30の転動体50に動力が伝達される。そして、転動体50から一対の分割部材41,42のうち動力を伝達する当該転動体50に接触している方の動力伝達面41dまたは動力伝達面42dに動力が伝達される。そして、動力伝達する分割部材41のトリポード接触面41cまたは分割部材42のトリポード接触面42cから、トリポード軸部22に動力が伝達される。
【0061】
そして、転動体50は、中間部材40の外周を循環可能に支持されている。従って、転動体50は、分割部材41および分割部材42のうち動力伝達側を分割部材41とした場合に、分割部材41の動力伝達面41dと、軌道凹部14の底面14aとの間にて、軌道溝13の延伸方向への滑りを生じることなく転動する。これにより、誘起スラスト力の発生を抑制し、滑り抵抗による動力損失や振動の発生を低減している。また、分割部材41および分割部材42のうち動力伝達側を分割部材42とした場合も同様である。
【0062】
また、一対の分割部材41,42のうち複数の転動体50を介して動力を受けた分割部材は、トリポード接触面41c,42cが当接するトリポード軸部22に動力伝達する。この時、上述したようにジョイント角が付加されていると、トリポード軸部22が外輪10の回転軸方向に往復運動(首振り運動)する。この時、トリポード軸部22に外嵌しているニードルユニット30も追従し、ニードルユニット30も同様に往復運動する。また、中間部材40の分割部材41,42のトリポード接触面41c,42cがトリポード軸部22と当接する分割部材41,42は、トリポード軸部22の外輪10の径方向への動きに追従するので、転動体50に対して外輪10の径方向に摺動する。これにより、分割部材41,42の動力伝達面41d,42dにおける最も動力の加わる荷重位置は、転動体の軸方向に往復移動するように変化する。
【0063】
しかし、一対の分割部材41,42は、動力伝達側とその背面側でそれぞれ独立している。これにより、動力伝達側で発生するトリポード軸部22による荷重位置が変化したとしても、一対の分割部材41,42のうち動力伝達側の分割部材の動作が、その背面側の分割部材の動作へ影響を及ぼすことがない。従って、背面側に位置する分割部材41,42が軌道溝13に大きな力を付与することを防止できるので、これによる誘起スラスト力の発生を抑制している。
【0064】
さらに、上述した等速ジョイント1によれば、転動体50は軌道凹部14,15に嵌め込まれている。これにより、スキューにより転動体50にその軸方向へ移動しようとする力が発生した場合には、転動体50は、軌道凹部14,15によりこの軸方向移動を規制される。ところで、一対の循環路形成部材70,80のうち循環路を構成する部位は、軌道凹部14,15および動力伝達面41d,42dに対して、トリポード軸方向の外側に位置している。従って、軌道凹部14,15および動力伝達面41d,42dが、スキューによる転動体50の移動を規制する効果を発揮し、保持器60は当該移動規制効果を発揮しないような構成とされている。つまり、保持器60の一対の循環路形成部材70,80は、転動体50のスキューによる軸方向移動を規制していない。
【0065】
特に、転動体50が軌道凹部14,15および動力伝達面41d,42dにおいて最も軌道溝13の溝底面13a側に位置し、且つ、保持器60が転動体50に対して最も軌道溝13の溝底面13a側に位置する状態において、保持器60と軌道溝13の溝底面13aとの間に隙間が設けられている。これにより、スキューが生じた場合であっても、保持器60が外輪10の軌道溝13の溝底面13aに接触することを防止ししている。
【0066】
さらには、保持器60は、軌道溝13の側面13b,13cに対して隙間を隔てて配置されている。これにより、保持器60が、軌道溝13の側面13b,13cと接触することを防止している。また、保持器60の外周側に位置し、かしめられた鍔部76,86は、当該隙間に収まるように設定されているため、同様にスキューが生じた場合であっても、鍔部76,86が外輪10の軌道溝13の溝底面13aまたは側面13b,13cと接触することを防止している。
【0067】
(等速ジョイント1の効果)
以上説明した等速ジョイント1によれば、保持器60を構成する一対の循環路形成部材70,80は、窓部75,85および鍔部76,86をそれぞれ有する構成となっている。そして、保持器60は、この窓部75,85から転動体50を導入し、所定数の転動体50を循環路に導入した後、窓部75,85の周縁に形成された鍔部76,86をその幅方向両端から折り曲げることにより、鍔部76,86は窓部75,85の開口側にかしめられることになる。このように、鍔部76,86を窓部75,85の開口側にかしめると、循環路に導入された転動体50は、かしめられた鍔部76,86により窓部75,85から循環路の外部方向への移動を規制される。これにより、転動体50が窓部75,85を通過不能となるため、保持器60から転動体50が脱落することを防止できる。
【0068】
また、保持器60は、予め一対の循環路形成部材70,80を連結固定することにより形成されている。よって、複数の部品からなる保持器60に転動体50を導入しながら連結固定して組み付ける場合と比較して、組み付けを容易にすることができる。従って、さらに中間部材40を保持器60の内周側に配置してニードルユニット30とし、トリポード軸部22に外嵌する工程を簡易化することができる。
【0069】
さらに、一対の循環路形成部材70,80にそれぞれ形成された各窓部75,85は、循環路における同一の周方向位置となるように配置されている。つまり、転動体50は、各窓部75,85を同時に転動体50の両端部である突起部53が通過するように導入される。これにより、窓部75,85における転動体50の軸方向の開口量を小さくできる。また、転動体50を傾斜させることなく循環路に導入できるように窓部75,85を形成することにより、転動体50を導入しやすくすることができる。
【0070】
一対の循環路形成部材70,80の鍔部76,86は、転動体50の循環方向にかしめられる構成となっている。つまり、鍔部76,86の幅方向を転動体50の循環方向とし、この鍔部76,86を幅方向両端からかしめることにより、鍔部76,86は窓部75,85の開口側にかしめられることになる。これにより、かしめた後の鍔部76,86が押し潰されることになり、鍔部76,86の強度を向上させることができる。よって、確実に転動体50の脱落を防止できる。
【0071】
また、従来、転動体50を導入する窓部75,85は、循環路形成部材70,80の内周側に形成されていた。そうすると、保持器60に転動体50を導入した後、保持器60の内周側に中間部材40を配置し、ニードルユニット30とした時点で転動体50の脱落のおそれがなくなるからである。これに対して、本実施形態では、窓部75,85および鍔部76,86は循環路形成部材70,80の外周側にそれぞれ位置する構成となっている。
【0072】
これにより、転動体50は循環路の外周側から導入されることになる。このような構成において、転動体50を保持器60に導入した後、転動体50が鍔部76,86により循環路の外部側への移動を規制され窓部75,85を通過不能となるため、中間部材40の有無に係わらず転動体50の脱落を防止できる。そこで、転動体50を循環路の外周側から導入する構成とすることが可能となり、これにより転動体50の導入が容易となる。よって、組み付け時の作業性を向上させることができる。
【0073】
また、保持器60は、同形状からなる循環路形成部材70,80を連結することにより構成される。また、一対の循環路形成部材70,80は、転動体50の軸方向の両端部である突起部53をそれぞれ支持し、周回する循環路をそれぞれ形成している。ここで、一対の循環路形成部材70,80の両部材に対して共通の基準面P1,P2を設け、当該基準面P1,P2において連結するようにそれぞれの連結面を延伸させるように形成する。つまり、それぞれの循環路形成部材70(80)は、対向する循環路形成部材80(70)と連結させる第一連結部77(87)および第二連結部78(88)を有する構成としている。
【0074】
これにより、保持器60を構成する一対の循環路形成部材70,80は、同形状の部材からなるようにすることができる。このようにして保持器60を構成することにより、別形状からなる循環路形成部材を連結する場合と比較して、保持器60の組み付け工程を簡易にすることができる。さらに、循環路形成部材70,80が同形状であることから、当該部材の管理を簡易化することができる上、同一の工程により生産できるので生産コストを低減することができる。
【0075】
さらに、一対の循環路形成部材70,80の第一連結部77,87と第二連結部78,88は、保持器60の中心に対して非面対称形状となっている。そして、一方の循環路形成部材70の第一連結部77は、他方の循環路形成部材80の第二連結部88と重ね合わせるように連結される。さらに、一方の循環路形成部材70の第二連結部78は、他方の循環路形成部材80の第一連結部87と重ね合わせるように連結される。これにより、保持器60は、転動体50の循環路を形成しつつ、循環路形成部材70,80を同形状の部材とすることができる。
【0076】
<第一実施形態の変形態様>
第一実施形態において、一対の循環路形成部材70,80の鍔部76,86は、その幅方向を転動体50の循環方向とし、幅方向両端からかしめられる構成となっていた。これにより、鍔部76,86は窓部75,85の開口側にかしめられるものとしていた。これに対して、図9に示すように、鍔部76,86は、幅方向片端のみからかしめられる構成としてもよい。これにより、鍔部76,86は、窓部75,85の開口側にかしめられることになる。よって、転動体50が鍔部76,86により循環路の外部側への移動を規制され窓部75,85を通過不能となるため、保持器60から転動体50が脱落することを防止できる。
【0077】
<第二実施形態>
第二実施形態の構成について、図10を参照して説明する。ここで、第二実施形態の構成は、主に、第一実施形態の保持器60における鍔部76,86をかしめる方向が相違する。なお、その他の構成については、第一実施形態と同一であるため、詳細な説明を省略する。以下、相違点のみについて説明する。
【0078】
保持器160は、循環する転動体50の軌跡である循環路を形成する一対の循環路形成部材170,180により構成されている。一対の循環路形成部材170,180は、転動体50をその軸方向に挟むように、対向して配置されている。さらに、一方の循環路形成部材170は、直線部71,72の延伸方向の中央部における外周縁に窓部175と、窓部175の周縁に形成された鍔部176とが形成されている。窓部175は、一対の循環路形成部材170,180を連結された保持器160に複数の転動体50を導入するために、循環路形成部材170の循環路に形成された部位である。この窓部175は、図10(a)に示すように、転動体50を循環方向の側方から周回する循環路に導入可能に開口している。具体的には、循環方向とする直線部71,72の延伸方向に対して、その側方である循環路形成部材170の外周側から転動体50を導入可能としている。
【0079】
鍔部176は、窓部175の周縁から転動体50の導入方向へ延伸するように形成されている。この鍔部176の断面形状は、図10(a)に示すように、ほぼ平面状に形成されている。そして、鍔部176は、図10(b)に示すように、保持器160に所定数の転動体50を循環路に導入した後、転動体50の軸方向の両側から加圧され、折り曲げられるようにかしめられる。これにより、鍔部176は、窓部175の開口側に押し潰されるようにかしめられることになり、導入した転動体50が窓部175を通過することを防止している。
【0080】
一方の循環路形成部材170と同様に、他方の循環路形成部材180は、直線部81,82の延伸方向の中央部における外周縁に窓部185と、窓部185の周縁に形成された鍔部186とが形成されている。窓部185および鍔部186については、一方の循環路形成部材170に形成された窓部175および鍔部176とそれぞれ同一に形成されているため詳細な説明を省略する。
【0081】
また、直線部71および直線部81にそれぞれ形成された窓部175および窓部185は、循環路における同一の周方向位置となるように配置されている。つまり、転動体50が循環路に導入される際に、転動体50の両端の突起部53は、窓部175および窓部185をそれぞれ通過することになる。これは、直線部72および直線部82にそれぞれ形成された窓部175および窓部185についても同様である。
【0082】
このような構成においても第一実施形態と同様の効果を奏する。また、鍔部176,186は、転動体50の軸方向で、且つ、窓部175,185の開口側にかしめられることになる。これにより、確実に転動体の脱落を防止できるとともに、かしめた後の鍔部176,186が押し潰されることになり、鍔部176,186の強度を向上させることができる。
【0083】
<第一、第二実施形態の変形態様>
第一、第二実施形態において、保持器60,160の窓部75,85,175,185および鍔部76,86,176,186は、循環路における同一の周方向位置となるように配置されている。これに対して、片側のみに窓部および鍔部を設けるものとしてもよい。このような構成では、例えば、図11(a)に示すように、まず転動体50の下側の突起部53を循環路形成部材80の直線部81に挿入する。次に、転動体50の上側の突起部53が窓部75を通過するように、転動体50を下側の突起部53を基点に回転させ、循環路形成部材70の直線部71に挿入する。これを所定回数繰り返すことにより、複数の転動体50は循環路に導入される。そして、図11(b)に示すように、鍔部76を転動体50の軸方向にかしめることにより転動体50が鍔部76により循環路の外部側への移動を規制され窓部75を通過不能となる。
【0084】
このような構成においても第一、第二実施形態と同様の効果を奏する。また、循環路における所定の周方向位置に窓部75を片側のみに設けることにより、組み付けにおいて鍔部76をかしめる工程を簡易にすることができる。但し、このような構成では転動体50を循環路に導入する際に、転動体50を傾斜させてから、転動体50の下側の突起部53を基点に回転させる必要がある。そのため、同一の周方向位置に窓部75,85を配置する構成と比べると、転動体50を導入する際の工数が増えることになる。従って、ニードルユニット30,130に必要とされる強度や使用形態などを鑑みて窓部の構成を適宜設定することが望ましい。
【0085】
また、鍔部76,86,176,186は、押し潰すように折り曲げることによりかしめられるものとした。これに対して、例えば、鍔部76,86,176,186の断面形状をL字状または円弧状に形成するように鍔部を塑性変形させ、循環路形成部材70,80,170,180の外形に倣うようにしてもよい。これにより、保持器60,160と外輪10の軌道溝13の溝底面13aに干渉するなど、他の部材と干渉することをより確実に防止できる。
【0086】
その他に、第一、第二実施形態において、保持器60,160の窓部75,85,175,185および鍔部76,86,176,186は、循環路形成部材70,80,170,180の外周側にそれぞれ位置するものとした。これに対して、循環路形成部材70,80,170,180の内周側に位置するものとしてもよい。このような構成では、窓部75などが外周側にある場合と比較して、循環路に転動体50を導入しにくくなる。しかし、窓部75,85,175,185の開口側にかしめられた鍔部76,86,176,186が保持器60,160の内周側にあることで、例えば、保持器60,160が外輪10の軌道溝13の溝底面13aに接触するなど、他の部材と干渉することをより確実に防止できる。よって、外輪10または保持器60,160の設計自由度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0087】
1:等速ジョイント、 2:中間シャフト
10:外輪、 11:筒状部、 12:連結軸部
13:軌道溝、 13a:溝底面、 13b,13c:側面
14,15:軌道凹部、 14a,15a:底面、 14b,15b:側面
20:トリポード、 21:ボス部、 21a:内歯スプライン
22:トリポード軸部
30,130:ニードルユニット
40:中間部材、 41,42:分割部材、 41a,42a,41b,42b:端面
41c,42c:トリポード接触面、 41d、42d:動力伝達面
50:転動体、 51:転動面部、 52:斜面部、 53:突起部
60,160:保持器、
70,80,170,180:循環路形成部材
71,72,81,82:直線部、 73,74,83,84:湾曲部
75,85,175,185:窓部、 76,86,176,186:鍔部
77,87:第一連結部、 78,88:第二連結部
P1,P2:基準面
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動式トリポード型等速ジョイントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
摺動式トリポード型等速ジョイントは、外輪の軌道溝とシャフトに連結されたトリポードとの間を回転可能に配置されたローラユニットを備えている。例えば、特許文献1に記載された摺動式トリポード型等速ジョイントのローラユニットは、外輪の軌道溝に挿入されるローラと、トリポードのトリポード軸部に外嵌されローラを回転自在に支持する中間部材(リング)と、ローラと中間部材との間に転動可能に介在される複数の転動体(ボール)と、を有している。このローラユニットは転動体を球体としているため、このような構成により動力を伝達した場合に、転動体と中間部材、および転動体と軌道溝の間には転がり抵抗の他に、滑りによる抵抗が発生する。
【0003】
そこで、この抵抗を低減するために、例えば、特許文献2に記載されたものがある。特許文献2に記載の摺動式トリポード型等速ジョイントは、転動体を軸状からなるニードルとしたニードルユニットを備えている。さらに、このニードルユニットは、ニードルが中間部材(ブロック)の外周を循環可能となるように支持する保持器を有している。これにより、転動体と中間部材、および転動体と軌道溝の間の滑りによる抵抗を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−98402号公報
【特許文献2】特許第2763624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、転動体をニードルとするニードルユニットは、例えば、複数の部品からなる保持器に転動体を導入しながら連結固定して組み付けられる。これに対して、ニードルユニットの組み付けを簡易化するために、複数の部品を連結して予め保持器を形成しておくことがある。このような場合に、ニードルは、保持器に設けられた窓部から導入されることになる。しかし、このような構成では、ニードルユニットをトリポード軸部に外嵌する前に、ニードルを保持器に導入した窓部からニードルが抜け落ちるおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、保持器に転動体が導入された状態において、転動体の脱落を防止できるニードルユニットを備える摺動式トリポード型等速ジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、
筒状部を有し、内周面に外輪回転軸方向に延びる3本の軌道溝が形成された外輪と、
シャフトに連結されるボス部、および、前記ボス部の外周面からそれぞれ前記ボス部の径方向外方に延びるように立設されそれぞれの前記軌道溝に挿入される3本のトリポード軸部を備えるトリポードと、
前記トリポード軸部の外周に前記トリポード軸部に対して揺動可能に設けられ、前記軌道溝の側面と対向する動力伝達面を有する中間部材と、
軸状からなり、前記軌道溝の側面と前記動力伝達面との間に、前記軌道溝の側面に沿って転動可能に設けられる複数の転動体と、
前記転動体が前記中間部材の外周を循環可能となるように前記転動体を支持する保持器と、
を備える摺動式トリポード型等速ジョイントであって、
前記保持器は、循環する前記転動体の軌跡である循環路を形成し、前記転動体の軸方向両端部をそれぞれ支持するように対向して連結された一対の循環路形成部材からなり、
少なくとも一方の前記循環路形成部材は、前記転動体を循環方向の側方から前記循環路に導入可能に開口した窓部と、前記窓部の周縁から前記転動体の導入方向へ延伸するように形成された鍔部と、を有し、
前記鍔部は、前記転動体を前記循環路に導入した後、当該転動体が前記窓部を通過しないように前記窓部の開口側にかしめられることである。
【0008】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、一対の前記循環路形成部材は、前記窓部および前記鍔部をそれぞれ有し、一方の前記循環路形成部材の前記窓部および他方の前記循環路形成部材の前記窓部が前記循環路における同一の周方向位置となるように配置されていることである。
【0009】
請求項3に係る発明の特徴は、請求項1または2において、前記鍔部は、前記転動体の循環方向にかしめられることである。
【0010】
請求項4に係る発明の特徴は、請求項1または2において、前記鍔部は、連結された一対の前記循環路形成部材の対向方向にかしめられることである。
【0011】
請求項5に係る発明の特徴は、請求項1〜4の何れか一項において、前記窓部および前記鍔部は、前記循環路形成部材の外周側に位置するように形成されていることである。
【0012】
請求項6に係る発明の特徴は、請求項1〜5の何れか一項において、
それぞれの前記循環路形成部材は、周回する前記循環路を形成し、
前記保持器は、同形状からなる前記循環路形成部材を連結することにより構成されることである。
【0013】
請求項7に係る発明の特徴は、請求項6において、
一対の前記循環路形成部材は、前記保持器の中心に対して非面対称形状となるように形成された第一連結部および第二連結部をそれぞれ有し、
一方の前記循環路形成部材の前記第一連結部および前記第二連結部は、他方の前記循環路形成部材の前記第二連結部および前記第一連結部とそれぞれ連結されることである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、保持器は、一対の循環路形成部材から構成され、少なくとも一方の循環路形成部材に形成された窓部から転動体を導入している。そして、所定数の転動体を循環路に導入した後、窓部の周縁に形成された鍔部を窓部の開口側にかしめる構成となっている。また、本発明において「かしめる」とは、押し潰すように折り曲げることの他、断面形状をL字状または円弧状に形成するように鍔部を塑性変形させることを含むものとする。
【0015】
このように、鍔部を窓部の開口側にかしめると、循環路に導入された転動体は、窓部から循環路の外部方向への移動をかしめられた鍔部により規制される。これにより、転動体が窓部を通過不能となるため、保持器から転動体が脱落することを防止できる。また、保持器は、予め一対の循環路形成部材を連結固定することにより形成されている。よって、複数の部品からなる保持器に転動体を導入しながら連結固定して組み付ける場合と比較して、組み付けを容易にすることができる。従って、さらに中間部材を保持器の内周側に配置してニードルユニットとし、トリポード軸部に外嵌する工程を簡易化することができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、一対の循環路形成部材は、窓部および鍔部をそれぞれ有する構成となっている。この時、各窓部は、循環路における同一の周方向位置となるように配置されている。つまり、転動体は、各窓部を同時に転動体の両端部が通過するように導入される。これにより、窓部における転動体の軸方向の開口量を小さくできる。また、転動体を傾斜させることなく循環路に導入できるように窓部を形成することにより、転動体を導入しやすくすることができる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、鍔部は、転動体の循環方向にかしめられる構成となっている。つまり、例えば、鍔部の幅方向を転動体の循環方向とし、この鍔部を幅方向両端から窓部の開口側にかしめられる。これにより、確実に転動体の脱落を防止することができる。また、鍔部をかしめることにより、かしめた後の鍔部が押し潰されることになり鍔部の強度を向上させることができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、鍔部は、連結された一対の循環路形成部材の対向方向にかしめられる構成となっている。ここで、「一対の循環路形成部材の対向方向」とは、転動体の循環方向に垂直な方向であり、導入された転動体の軸方向である。そして、例えば、鍔部の幅方向を一対の循環路形成部材の対向方向とし、この鍔部を厚み方向から窓部の開口側にかしめられる。これにより、確実に転動体の脱落を防止することができる。また、鍔部をかしめることにより、かしめた後の鍔部が押し潰されることになり鍔部の強度を向上させることができる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、窓部および鍔部は循環路形成部材の外周側に位置するので、転動体は循環路の外周側から導入される構成となっている。従来、転動体を導入する窓部は、循環路形成部材の内周側に形成されることがあった。そうすると、保持器に転動体を導入した後、保持器の内周側に中間部材を配置した時点で転動体の脱落のおそれがなくなるからである。これに対して、本手段では、転動体を保持器に導入した後、転動体が鍔部により循環路の外部側への移動を規制され窓部を通過不能となるため、中間部材の有無に係わらず転動体の脱落を防止できる。そこで、転動体を循環路の外周側から導入する構成とすることが可能となり、これにより転動体の導入が容易となる。よって、組み付け時の作業性を向上させることができる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、保持器は、同形状からなる循環路形成部材を連結することにより構成される。また、一対の循環路形成部材は、転動体の軸方向両端部をそれぞれ支持し、周回する循環路をそれぞれ形成している。このような一対の循環路形成部材を連結させることにより、別形状からなる循環路形成部材を連結する場合と比較して、保持器の組み付け工程を簡易にすることができる。さらに、循環路形成部材が同形状であることから、当該部材の管理を簡易化することができる。よって、保持器の生産コストを低減することができる。
【0021】
請求項7に係る発明によれば、一対の循環路形成部材は、第一連結部および第二連結部をそれぞれ有する構成となっている。この第一連結部と第二連結部は、保持器の中心を通る平面に対して非面対称形状となっている。そして、一方の循環路形成部材の第一連結部と、他方の循環路形成部材の第二連結部とを連結する。さらに、一方の循環路形成部材の第二連結部と、他方の循環路形成部材の第一連結部とを連結する。これにより、保持器は、転動体の循環路を形成しつつ、循環路形成部材を同形状の部材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第一実施形態:等速ジョイント1の斜視図であり、外輪10を軸方向に切断した状態を示す図である。
【図2】等速ジョイント1の一部の組み付け状態における外輪10の開口側から見た図である。
【図3】等速ジョイント1の一部の径方向断面図である。
【図4】中間部材40を除いたニードルユニット30の斜視図である。
【図5】中間部材40の分割部材41(42)の斜視図である。
【図6】分割部材41(42)を示す図である。(a)は、分割部材41(42)の平面図である。(b)は、分割部材41(42)の側面図である。(c)は、(a)のA方向矢視図である。
【図7】保持器60の三面図である。(a)は、保持器60の正面図である。(b)は、(a)のB−B断面図である。(c)は、(a)のC−C断面図である。
【図8】保持器60に転動体50を導入した後における鍔部76,86のかしめ前後のニードルユニット30の拡大図である。(a)はかしめ前の図であり、(b)はかしめ後の図である。
【図9】変形態様:保持器60に転動体50を導入した後における鍔部76,86のかしめ後のニードルユニット30の拡大図である。
【図10】第二実施形態:保持器160に転動体50を導入した後における鍔部176,186のかしめ前後のニードルユニット130の拡大図である。(a)はかしめ前の図であり、(b)はかしめ後の図である。
【図11】変形態様:保持器160に転動体50を導入する前後のニードルユニット30を転動体50の循環方向から見た拡大図である。(a)は転動体50を導入している状態の図であり、(b)は転動体50を導入した後における鍔部76のかしめ後の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の摺動式トリポード型等速ジョイント(以下、単に「等速ジョイント」と称する。)を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。ここで、本実施形態の等速ジョイントは、車両の動力伝達シャフトの連結に用いる場合を例に挙げて説明する。例えば、ディファレンシャルギヤに連結された軸部とドライブシャフトの中間シャフトとの連結部位に用いる場合である。
【0024】
<第一実施形態>
(等速ジョイント1の構成)
等速ジョイント1は、図1〜図3に示すように、外輪10と、トリポード20と、ニードルユニット30とから構成される。
外輪10は、図1に示すように、筒状部11と、連結軸部12とから構成される。筒状部11は、有底筒状に形成されている。連結軸部12は、筒状部11の底部から軸方向外方に延びるように、筒状部11と同軸的に且つ一体に形成されている。この連結軸部12は、図示しないディファレンシャルギヤに連結されている。
【0025】
そして、筒状部11の内周面には、図1〜図3に示すように、外輪回転軸方向(図2の前後方向)に延びる3本の軌道溝13が形成されている。これら3本の軌道溝13は、筒状部11の内周面において、外輪10の回転軸の周方向に等間隔(120deg間隔)に形成されている。各軌道溝13の溝延伸方向に直交する断面形状は、外輪10の回転軸中心に向かって開口するコの字形状をなしている。つまり、各軌道溝13は、ほぼ平面状に形成された溝底面13aと、ほぼ平面状に形成された側面13b,13cとを有している。この側面13b,13cは、溝底面13aとほぼ直交するとともに、側面13bと側面13cが対向するように平行に形成されている。
【0026】
それぞれの側面13b,13cには、外輪10の回転軸方向に延びる軌道凹部14,15がそれぞれ形成されている。この軌道凹部14,15は、軌道溝13の側面13b,13cのうち、外輪10の径方向のほぼ中央部に形成されている。この軌道凹部14,15の開口幅(図2,図3の上下方向幅)は、開口側(図2,図3の左右中央側)に向かって徐々に大きくなるように形成されている。つまり、軌道凹部14,15は、ほぼ平面状の底面14a,15aと、傾斜した側面14b,15bと、を有している。
【0027】
トリポード20は、図1および図3に示すように、外輪10の筒状部11の内側に配置されている。トリポード20は、ボス部21と、3本のトリポード軸部22とから構成される。ボス部21は、環状であり、その内周側には内歯スプライン21aが形成されている。この内歯スプライン21aは、中間シャフト2の端部に形成された外歯スプラインに嵌合連結される。また、ボス部21の外周面は、ほぼ球面凸状に形成されている。
【0028】
それぞれのトリポード軸部22は、ボス部21の外周面からそれぞれボス部21の径方向外方に延びるように立設されている。これらのトリポード軸部22は、ボス部21の周方向に等間隔(120deg間隔)に形成されている。そして、それぞれのトリポード軸部22の少なくとも先端部は、外輪10の筒状部11のそれぞれの軌道溝13内に挿入されている。それぞれのトリポード軸部22の外周面は、球面凸状に形成されている。ここで、当該球面凸状の曲率中心を通り、且つ、トリポード20の回転軸(中間シャフト2の回転軸)に直交する直線が、トリポード軸部22の中心軸(以下、「トリポード軸」とも称する)とは直交する。
【0029】
ニードルユニット30は、図1に示すように、全体形状としては環状であり、トリポード軸部22の外周側に配置されている。さらに、ニードルユニット30は、軌道溝13が延びる方向に移動可能となるように、軌道溝13に嵌合されている。このニードルユニット30は、中間部材40と、複数の転動体50と、保持器60とから構成される。
【0030】
中間部材40は、一対の分割部材41,42から構成されている。一対の分割部材41,42を一体的に見た場合に、中間部材40の全体形状としての外径は、ほぼ矩形に形成されている。さらに、中間部材40を全体として見た場合に、中間部材40の中央には、円形孔に相当する部分が形成されている。
【0031】
一対の分割部材41,42は、トリポード軸(図3の上下方向)および中間シャフト2の回転軸(図3の前後方向)を通る平面に対して、面対称な形状からなるように別体で構成され、それぞれ独立している。そして、一対の分割部材41,42は、図1および図3に示すように、軌道溝13の側面13b,13cの両側からトリポード軸部22を挟むように配置されている。つまり、両分割部材41,42は、動力伝達方向(外輪10の回転軸回りの方向、または、中間シャフト2の回転軸回りの方向)の両側からトリポード軸部22を挟むように配置されている。そして、一対の分割部材41,42は、トリポード軸部22の軸直交方向の何れの方向から見て、トリポード軸部22に対して揺動可能に設けられている。
【0032】
ここで、図5,図6を参照して、中間部材40の一方である分割部材41について説明する。なお、他方の分割部材42は、上述したように、一方の分割部材41を対称としたものであるため、図中に括弧書きで符号を付すのみとして、詳細な説明を省略する。
【0033】
分割部材41は、図5,図6(a)に示すように、矩形ブロック状に形成されている。この分割部材41の周面は、中間シャフト2の回転軸方向の端面41a,41bと、トリポード軸部22と接触するトリポード接触面41cと、動力伝達面41dとを有している。ここで、中間部材40(分割部材41および分割部材42)を一体としてみた場合に、端面41a,42a,41b,42bおよび動力伝達面41d,42dが外周面を形成し、トリポード接触面41c、42cが内周面を形成している。
【0034】
端面41a,41bは、図5の上側および下側、図6(c)の奥側および手前側、即ち分割部材41の長手方向の両端に位置する端面である。この両端面41a,41bは、動力伝達面41dにほぼ直交する平面からなる。つまり、両端面41a,41bは、軌道溝13の側面13bにほぼ直交する平面からなる。
【0035】
トリポード接触面41cは、トリポード軸部22に対して、外輪10の軸方向および外輪10の周方向と揺動可能に接触するように部分球面凹状に形成されている。トリポード接触面41cにおける球面中心は、図6(a)におけるトリポード接触面41cの左右方向幅(中間部材40の厚み)の中央と、図6(b)におけるトリポード接触面41cの上下方向幅(中間部材40における外輪10の軸方向幅)の中央と、を通る直線上に位置している。つまり、トリポード接触面41cは、トリポード軸部22の外周面に嵌合され、嵌合された状態でトリポード軸部22の軸方向に離脱しない形状をなしている。このようなトリポード接触面41cは、トリポード軸部22に接触して動力伝達を可能としている。
【0036】
動力伝達面41dは、図6(b)に示すように、トリポード接触面41cの背面側に位置している。この動力伝達面41dは、外輪10の側面13b(より具体的には、軌道凹部14の底面14a)と対向し、軌道溝13の延伸方向に延びるように形成されている。この動力伝達面41dは、平面状で矩形状に形成され、図6(b)の上下方向のうち中央部分に位置している。また、動力伝達面41dの外輪10の回転軸方向の両端側は、僅かに湾曲するように形成されている。つまり、動力伝達面41dの中央部が、図3の左右方向の外方に最も突出している。
【0037】
そして、一方の分割部材41は、その動力伝達面41dが軌道溝13の一方の側面13bに対向するように配置される。なお、他方の分割部材42についても同様に、その動力伝達面42dが軌道溝13の他方の側面13cに対向するように配置される。つまり、外輪10の回転軸と中間シャフト2の回転軸が一致している姿勢(ジョイント角0deg)において、動力伝達面41d,42dは、トリポード軸部22の中心軸と中間シャフト2の回転軸を通る平面にほぼ平行となる。そして、動力伝達面41d,42dは、複数(本実施形態では3〜4個)の軸状の転動体50に接触し得る範囲を有している。
【0038】
転動体50は、図1〜図4に示すように、軸状からなるニードルである。そして、図4に示すように、複数の転動体50が、中間部材40を一体として見た場合の外周を循環するように配置されている。複数の転動体50のうち一部(本実施形態においては、3〜4個)は、軌道溝13の軌道凹部14,15の底面14a,15aと一対の分割部材41,42の動力伝達面41d,42dとの間に、底面14a,15aおよび動力伝達面41d,42dに沿って転動可能に設けられている。つまり、転動体50を介して動力伝達面41d,42dと軌道溝13の底面14a,15aとの間で動力が伝達される。
【0039】
この転動体50は、転動面部51と、斜面部52と、突起部53とから構成されている。転動面部51は、外周に転動面を有する円柱状部材である。斜面部52は、転動面部51の両端においてテーパー状に形成された部位である。突起部53は、転動体50の柱延伸交方向(図2の左右方向)の断面が円形で、斜面部52の端面から突出するように形成されている。転動面部51の外周に形成される転動面の柱延伸方向の長さは、軌道凹部14,15の底面14a,15aおよび分割部材41,42の動力伝達面41d,42dの幅と同程度、もしくは、底面14a,15aの幅よりも僅かに短くなるように設定されている。
【0040】
また、この斜面部52は、軌道凹部14,15の側面14b,15bと同様の形状となっている。つまり、転動面部51は、軌道凹部14,15に嵌め込まれるように設けられている。これにより、転動体50の斜面部52は、軌道凹部14,15の側面14b,15bに対して、転動体50の軸方向に係合し得ることになる。つまり、転動体50は、軌道凹部14,15により転動体50の軸方向への移動が規制される。そして、転動面部51の外周の転動面が軌道凹部14,15の底面14a,15aおよび動力伝達面41d,42dに沿って転動可能となる。これにより、転動体50を介して動力伝達面42cと軌道溝13の側面13b,13cとの間で動力が伝達される。
【0041】
突起部53は、転動面部51の外径よりも小径に形成されている。そして、両側の突起部53の先端間距離、即ち転動体50の軸方向の長さは、軌道凹部14,15の底面14a,15aおよび動力伝達面41d,42dよりも大きく形成されている。つまり、突起部53は、軌道凹部14,15および動力伝達面41d,42dよりもトリポード軸方向の外側に位置している。この転動体の軸方向両側に位置する突起部53は、本発明の「転動体の軸方向の両端部」に相当する。
【0042】
保持器60は、図4,図7に示すように、全体形状としては環状の部材である。保持器60は、転動体50が中間部材40の外周を循環可能となるように、転動体50を支持している。そして、保持器60は、軌道溝13の内部にほぼ収容されている。この保持器60は、循環する転動体50の軌跡である循環路を形成する一対の循環路形成部材70,80により構成されている。一対の循環路形成部材70,80は、転動体50をその軸方向に挟むように、対向して連結されている。一対の循環路形成部材70,80の対向方向は、転動体50の循環方向に垂直な方向であり、且つ、導入された転動体50の基本姿勢における軸方向である。
【0043】
この一対の循環路形成部材70,80には、それぞれ転動体50の突起部53が挿入される。また、循環路形成部材70,80の断面形状は、図7(b),(c)に示すように、転動体50の斜面部52に係合するようなコの字形状に形成されている。このようにして、一対の循環路形成部材70,80は、両突起部53を支持している。つまり、一対の循環路形成部材70,80における内周縁と外周縁との距離は、転動体50の突起部53より大きく、且つ、転動面部51の最大径よりも小さくなるように形成されている。従って、転動体50の転動面部51は、一対の循環路形成部材70,80の外周縁から外側に突出し、且つ、内周縁から内側に突出している。
【0044】
そして、それぞれの循環路形成部材70,80のコの字形状の開口側が、転動体50の軸方向の長さより僅かに長い距離だけ離間した状態で、対向するように設けられている。従って、一対の循環路形成部材70,80の対向方向の最大幅は、軌道凹部14,15の底面14a,15aおよび動力伝達面41d,42dより大きく設定されている。そして、一対の循環路形成部材70,80は、外輪10の軌道溝13の内部に収容され、且つ、軌道凹部14,15および動力伝達面41d,42dよりもトリポード軸方向の外側に位置している。
【0045】
さらに、一方の循環路形成部材70は、直線部71,72と、湾曲部73,74とにより、周回する循環路を形成している。直線部71,72間の距離は、軌道溝13の溝幅(軌道凹部14の開口部と軌道凹部15の開口部との距離)よりも小さく設定されている。そして、他方の循環路形成部材80は、一方の循環路形成部材70と同様に、直線部81,82と、湾曲部83,84とにより、周回する循環路を形成している。また、直線部81,82間の距離は、直線部71,72間の距離と等しい。つまり、一対の循環路形成部材70,80は、軌道溝13の側面13b,13cに対して所定の隙間を隔てて配置されている。これにより、保持器60により支持される転動体50の循環方向は、周回する循環路において、直線部71,72,81,82および湾曲部73,74,83,84の形状に倣う方向となっている。
【0046】
また、循環路形成部材70は、直線部71,72の延伸方向の中央部における外周縁に窓部75と、窓部75の周縁に形成された鍔部76とが形成されている。窓部75は、一対の循環路形成部材70,80を連結してなる保持器60に複数の転動体50を導入するために、循環路形成部材70の循環路に形成された部位である。この窓部75は、図8(a)に示すように、転動体50を循環方向の側方から周回する循環路に導入可能に開口している。具体的には、循環方向とする直線部71,72の延伸方向に対して、その側方である循環路形成部材70の外周側から転動体50を導入可能としている。
【0047】
鍔部76は、窓部75の周縁から転動体50の導入方向へ延伸するように形成されている。この鍔部76の断面形状は、図8(a)に示すように、転動体50の斜面部52に係合するようなコの字形状に形成されている。そして、鍔部76は、図8(b)に示すように、保持器60に所定数の転動体50を循環路に導入した後、転動体50の循環方向の両側から加圧されて折り曲げられる。これにより、鍔部76は、窓部75の開口側に押し潰されるようにかしめられることになり、導入した転動体50が窓部75を通過して抜け出ることを防止している。
【0048】
一方の循環路形成部材70と同様に、他方の循環路形成部材80は、直線部81,82の延伸方向の中央部における外周縁に窓部85と、窓部85の周縁に形成された鍔部86とが形成されている。窓部85および鍔部86については、一方の循環路形成部材70に形成された窓部75および鍔部76とそれぞれ同一に形成されているため詳細な説明を省略する。
【0049】
また、直線部71および直線部81にそれぞれ形成された窓部75および窓部85は、循環路における同一の周方向位置となるように配置されている。つまり、転動体50が循環路に導入される際に、転動体50の両端の突起部53は、窓部75および窓部85をそれぞれ通過することになる。これは、直線部72および直線部82にそれぞれ形成された窓部75および窓部85についても同様である。
【0050】
そして、保持器60に所定数の転動体50を循環路に導入し、鍔部76,86を窓部75,85の開口側に折り曲げるかしめ工程を行うことにより、鍔部76,86が押し潰されることになる。このように、鍔部76,86を窓部75,85の開口側にかしめると、循環路に導入された転動体50は、かしめられた鍔部76,86により窓部75,85から循環路の外部方向への移動を規制される。これにより、循環路に導入された何れの転動体50も窓部75,85を通過不能となる。従って、保持器60に所定数の転動体50が導入された状態において、転動体50の脱落を確実に防止することができる。
【0051】
ここで、循環路形成部材70は、第一連結部77および第二連結部78が形成されている。同様に、循環路形成部材80は、対向する循環路形成部材70と連結される第一連結部87および第二連結部88が形成されている。一方の循環路形成部材70の第一、第二連結部77,78は、湾曲部73,74の内周縁から直線部71,72の延伸方向に延びる平面部と、その平面部の端部から一対の循環路形成部材70,80の対向方向(転動体50の軸方向)に延びる連結面部とからなるL字形状に形成されている。他方の循環路形成部材80の第一、第二連結部87,88は、一方の循環路形成部材70と同様に、湾曲部83,84の内周縁から直線部81,82の延伸方向に延びる平面部と、その平面部の端部から転動体50の軸方向に延びる連結面部とからなるL字形状に形成されている。
【0052】
そして、図7(c)に示すように、一方の循環路形成部材70の第一連結部77は、その連結面部のうち保持器60の外側の面を、他方の循環路形成部材80の第二連結部88の連結面部と当接させて連結される。この時、他方の循環路形成部材80の第二連結部88は、その連結面部のうち保持器60の内側の面が第一連結部77の連結面部と当接させて連結されている。つまり、一方の循環路形成部材70の第一連結部77の連結面部は、他方の循環路形成部材80の第二連結部87の連結面部と重ね合わせるように当接して連結される。
【0053】
これに対して、一方の循環路形成部材70の第二連結部78は、その連結面部のうち保持器60の内側の面を、他方の循環路形成部材80の第一連結部87の連結面部と当接させて連結される。この時、他方の循環路形成部材80の第一連結部87は、その連結面部のうち保持器60の外側の面が第二連結部78の連結面部と当接させて連結されている。つまり、一方の循環路形成部材70の第二連結部78の連結面部は、他方の循環路形成部材80の第一連結部87の連結面部とそれぞれ重ね合わせるように当接して連結される。
【0054】
これにより、一方の循環路形成部材70の第一連結部77および他方の循環路形成部材80の第二連結部88は、図7(c)に示すように、基準面P1を合わせ面として連結される。同様に、一方の循環路形成部材70の第二連結部78および他方の循環路形成部材80の第一連結部87は、基準面P2を合わせ面として連結される。この基準面P1,P2は、保持器60の中心に対称な平面である。このように、保持器60を構成する一対の循環路形成部材70,80は、何れも周回する循環路を形成するとともに、同形状からなる部材である。
【0055】
このように、保持器60は、循環路形成部材70に、同形状からなる循環路形成部材80を対向させて連結している。この時、循環路形成部材70に対して、循環路形成部材80は、循環路の中心において直線部81,82および湾曲部83,84がそれぞれ入れ替わるように反転させている。つまり、循環路形成部材70の第一連結部77における連結部位と、第二連結部78における連結部位とは、組み付けられた保持器60の中心に対して点対称の位置となっている。
【0056】
さらに、第一連結部77,87と第二連結部78,88は、保持器60の中心に対して非面対称形状となっている。具体的には、図7(c)に示すように、第一連結部77,87は、その連結面部が循環路の内周側となるように形成されている。これに対して、第二連結部78,88は、その連結面部が循環路の外周側となるように形成されている。つまり、図7(c)における循環路形成部材70の上下方向幅の中央から第一連結部77の連結面部までの距離は、第二連結部78の連結面部までの距離よりも連結面部の板厚分だけ大きくなっている。これは、循環路形成部材80の第一連結部87および第二連結部88においても同様である。
【0057】
また、第一連結部77および第二連結部88、第二連結部78および第一連結部87は、図7(c)に示すように、それぞれ連結されると保持器60の外側に開口するコの字形状となる。当該コの字形状の底部反開口側の面(保持器60の内側であり、以下、「底部内側面」という)は、平面状に形成されている。そして、それぞれの連結によるコの字形状の底部内側面同士が、平行に且つ対向するように設けられている。さらに、底部内側面同士の離間距離は、分割部材41(42)の中間シャフト2の回転軸方向の端面41a,41b(42a,42b)間の距離とほぼ一致している。また、各連結によるコの字形状の底部開口側の面は、底部内側面に平行な平面状に形成されている。
【0058】
そして、転動体50が軌道凹部14,15および動力伝達面41d,42dにおいて最も軌道溝13の溝底側(図3の上側)に位置し、且つ、保持器60が転動体50に対して最も軌道溝13の溝底側に位置する状態において、保持器60と軌道溝13の溝底面13aとの間に隙間を設けるように設定されている。これは、軌道凹部14,15および動力伝達面41d,42dと転動体50の転動面部51との軸方向移動量、転動体50と保持器60との軸方向移動量、保持器60を構成する一対の循環路形成部材70,80の軸方向厚みなどに基づいて決定される。
【0059】
さらに、保持器60の外輪10の径方向内方には、軌道溝13の開口部が位置するように設けられている。つまり、保持器60の径方向内方に位置する循環路形成部材80は、外輪10の径方向外方には転動体50に当接するが、外輪10の径方向内方には何ら規制されない。
【0060】
(等速ジョイント1の動作)
上述した等速ジョイント1の動作について説明する。一端側である連結軸部12がディファレンシャルギヤに連結された外輪10が動力を受けて回転すると、外輪10から、軌道溝13の軌道凹部14,15に嵌合しているニードルユニット30の転動体50に動力が伝達される。そして、転動体50から一対の分割部材41,42のうち動力を伝達する当該転動体50に接触している方の動力伝達面41dまたは動力伝達面42dに動力が伝達される。そして、動力伝達する分割部材41のトリポード接触面41cまたは分割部材42のトリポード接触面42cから、トリポード軸部22に動力が伝達される。
【0061】
そして、転動体50は、中間部材40の外周を循環可能に支持されている。従って、転動体50は、分割部材41および分割部材42のうち動力伝達側を分割部材41とした場合に、分割部材41の動力伝達面41dと、軌道凹部14の底面14aとの間にて、軌道溝13の延伸方向への滑りを生じることなく転動する。これにより、誘起スラスト力の発生を抑制し、滑り抵抗による動力損失や振動の発生を低減している。また、分割部材41および分割部材42のうち動力伝達側を分割部材42とした場合も同様である。
【0062】
また、一対の分割部材41,42のうち複数の転動体50を介して動力を受けた分割部材は、トリポード接触面41c,42cが当接するトリポード軸部22に動力伝達する。この時、上述したようにジョイント角が付加されていると、トリポード軸部22が外輪10の回転軸方向に往復運動(首振り運動)する。この時、トリポード軸部22に外嵌しているニードルユニット30も追従し、ニードルユニット30も同様に往復運動する。また、中間部材40の分割部材41,42のトリポード接触面41c,42cがトリポード軸部22と当接する分割部材41,42は、トリポード軸部22の外輪10の径方向への動きに追従するので、転動体50に対して外輪10の径方向に摺動する。これにより、分割部材41,42の動力伝達面41d,42dにおける最も動力の加わる荷重位置は、転動体の軸方向に往復移動するように変化する。
【0063】
しかし、一対の分割部材41,42は、動力伝達側とその背面側でそれぞれ独立している。これにより、動力伝達側で発生するトリポード軸部22による荷重位置が変化したとしても、一対の分割部材41,42のうち動力伝達側の分割部材の動作が、その背面側の分割部材の動作へ影響を及ぼすことがない。従って、背面側に位置する分割部材41,42が軌道溝13に大きな力を付与することを防止できるので、これによる誘起スラスト力の発生を抑制している。
【0064】
さらに、上述した等速ジョイント1によれば、転動体50は軌道凹部14,15に嵌め込まれている。これにより、スキューにより転動体50にその軸方向へ移動しようとする力が発生した場合には、転動体50は、軌道凹部14,15によりこの軸方向移動を規制される。ところで、一対の循環路形成部材70,80のうち循環路を構成する部位は、軌道凹部14,15および動力伝達面41d,42dに対して、トリポード軸方向の外側に位置している。従って、軌道凹部14,15および動力伝達面41d,42dが、スキューによる転動体50の移動を規制する効果を発揮し、保持器60は当該移動規制効果を発揮しないような構成とされている。つまり、保持器60の一対の循環路形成部材70,80は、転動体50のスキューによる軸方向移動を規制していない。
【0065】
特に、転動体50が軌道凹部14,15および動力伝達面41d,42dにおいて最も軌道溝13の溝底面13a側に位置し、且つ、保持器60が転動体50に対して最も軌道溝13の溝底面13a側に位置する状態において、保持器60と軌道溝13の溝底面13aとの間に隙間が設けられている。これにより、スキューが生じた場合であっても、保持器60が外輪10の軌道溝13の溝底面13aに接触することを防止ししている。
【0066】
さらには、保持器60は、軌道溝13の側面13b,13cに対して隙間を隔てて配置されている。これにより、保持器60が、軌道溝13の側面13b,13cと接触することを防止している。また、保持器60の外周側に位置し、かしめられた鍔部76,86は、当該隙間に収まるように設定されているため、同様にスキューが生じた場合であっても、鍔部76,86が外輪10の軌道溝13の溝底面13aまたは側面13b,13cと接触することを防止している。
【0067】
(等速ジョイント1の効果)
以上説明した等速ジョイント1によれば、保持器60を構成する一対の循環路形成部材70,80は、窓部75,85および鍔部76,86をそれぞれ有する構成となっている。そして、保持器60は、この窓部75,85から転動体50を導入し、所定数の転動体50を循環路に導入した後、窓部75,85の周縁に形成された鍔部76,86をその幅方向両端から折り曲げることにより、鍔部76,86は窓部75,85の開口側にかしめられることになる。このように、鍔部76,86を窓部75,85の開口側にかしめると、循環路に導入された転動体50は、かしめられた鍔部76,86により窓部75,85から循環路の外部方向への移動を規制される。これにより、転動体50が窓部75,85を通過不能となるため、保持器60から転動体50が脱落することを防止できる。
【0068】
また、保持器60は、予め一対の循環路形成部材70,80を連結固定することにより形成されている。よって、複数の部品からなる保持器60に転動体50を導入しながら連結固定して組み付ける場合と比較して、組み付けを容易にすることができる。従って、さらに中間部材40を保持器60の内周側に配置してニードルユニット30とし、トリポード軸部22に外嵌する工程を簡易化することができる。
【0069】
さらに、一対の循環路形成部材70,80にそれぞれ形成された各窓部75,85は、循環路における同一の周方向位置となるように配置されている。つまり、転動体50は、各窓部75,85を同時に転動体50の両端部である突起部53が通過するように導入される。これにより、窓部75,85における転動体50の軸方向の開口量を小さくできる。また、転動体50を傾斜させることなく循環路に導入できるように窓部75,85を形成することにより、転動体50を導入しやすくすることができる。
【0070】
一対の循環路形成部材70,80の鍔部76,86は、転動体50の循環方向にかしめられる構成となっている。つまり、鍔部76,86の幅方向を転動体50の循環方向とし、この鍔部76,86を幅方向両端からかしめることにより、鍔部76,86は窓部75,85の開口側にかしめられることになる。これにより、かしめた後の鍔部76,86が押し潰されることになり、鍔部76,86の強度を向上させることができる。よって、確実に転動体50の脱落を防止できる。
【0071】
また、従来、転動体50を導入する窓部75,85は、循環路形成部材70,80の内周側に形成されていた。そうすると、保持器60に転動体50を導入した後、保持器60の内周側に中間部材40を配置し、ニードルユニット30とした時点で転動体50の脱落のおそれがなくなるからである。これに対して、本実施形態では、窓部75,85および鍔部76,86は循環路形成部材70,80の外周側にそれぞれ位置する構成となっている。
【0072】
これにより、転動体50は循環路の外周側から導入されることになる。このような構成において、転動体50を保持器60に導入した後、転動体50が鍔部76,86により循環路の外部側への移動を規制され窓部75,85を通過不能となるため、中間部材40の有無に係わらず転動体50の脱落を防止できる。そこで、転動体50を循環路の外周側から導入する構成とすることが可能となり、これにより転動体50の導入が容易となる。よって、組み付け時の作業性を向上させることができる。
【0073】
また、保持器60は、同形状からなる循環路形成部材70,80を連結することにより構成される。また、一対の循環路形成部材70,80は、転動体50の軸方向の両端部である突起部53をそれぞれ支持し、周回する循環路をそれぞれ形成している。ここで、一対の循環路形成部材70,80の両部材に対して共通の基準面P1,P2を設け、当該基準面P1,P2において連結するようにそれぞれの連結面を延伸させるように形成する。つまり、それぞれの循環路形成部材70(80)は、対向する循環路形成部材80(70)と連結させる第一連結部77(87)および第二連結部78(88)を有する構成としている。
【0074】
これにより、保持器60を構成する一対の循環路形成部材70,80は、同形状の部材からなるようにすることができる。このようにして保持器60を構成することにより、別形状からなる循環路形成部材を連結する場合と比較して、保持器60の組み付け工程を簡易にすることができる。さらに、循環路形成部材70,80が同形状であることから、当該部材の管理を簡易化することができる上、同一の工程により生産できるので生産コストを低減することができる。
【0075】
さらに、一対の循環路形成部材70,80の第一連結部77,87と第二連結部78,88は、保持器60の中心に対して非面対称形状となっている。そして、一方の循環路形成部材70の第一連結部77は、他方の循環路形成部材80の第二連結部88と重ね合わせるように連結される。さらに、一方の循環路形成部材70の第二連結部78は、他方の循環路形成部材80の第一連結部87と重ね合わせるように連結される。これにより、保持器60は、転動体50の循環路を形成しつつ、循環路形成部材70,80を同形状の部材とすることができる。
【0076】
<第一実施形態の変形態様>
第一実施形態において、一対の循環路形成部材70,80の鍔部76,86は、その幅方向を転動体50の循環方向とし、幅方向両端からかしめられる構成となっていた。これにより、鍔部76,86は窓部75,85の開口側にかしめられるものとしていた。これに対して、図9に示すように、鍔部76,86は、幅方向片端のみからかしめられる構成としてもよい。これにより、鍔部76,86は、窓部75,85の開口側にかしめられることになる。よって、転動体50が鍔部76,86により循環路の外部側への移動を規制され窓部75,85を通過不能となるため、保持器60から転動体50が脱落することを防止できる。
【0077】
<第二実施形態>
第二実施形態の構成について、図10を参照して説明する。ここで、第二実施形態の構成は、主に、第一実施形態の保持器60における鍔部76,86をかしめる方向が相違する。なお、その他の構成については、第一実施形態と同一であるため、詳細な説明を省略する。以下、相違点のみについて説明する。
【0078】
保持器160は、循環する転動体50の軌跡である循環路を形成する一対の循環路形成部材170,180により構成されている。一対の循環路形成部材170,180は、転動体50をその軸方向に挟むように、対向して配置されている。さらに、一方の循環路形成部材170は、直線部71,72の延伸方向の中央部における外周縁に窓部175と、窓部175の周縁に形成された鍔部176とが形成されている。窓部175は、一対の循環路形成部材170,180を連結された保持器160に複数の転動体50を導入するために、循環路形成部材170の循環路に形成された部位である。この窓部175は、図10(a)に示すように、転動体50を循環方向の側方から周回する循環路に導入可能に開口している。具体的には、循環方向とする直線部71,72の延伸方向に対して、その側方である循環路形成部材170の外周側から転動体50を導入可能としている。
【0079】
鍔部176は、窓部175の周縁から転動体50の導入方向へ延伸するように形成されている。この鍔部176の断面形状は、図10(a)に示すように、ほぼ平面状に形成されている。そして、鍔部176は、図10(b)に示すように、保持器160に所定数の転動体50を循環路に導入した後、転動体50の軸方向の両側から加圧され、折り曲げられるようにかしめられる。これにより、鍔部176は、窓部175の開口側に押し潰されるようにかしめられることになり、導入した転動体50が窓部175を通過することを防止している。
【0080】
一方の循環路形成部材170と同様に、他方の循環路形成部材180は、直線部81,82の延伸方向の中央部における外周縁に窓部185と、窓部185の周縁に形成された鍔部186とが形成されている。窓部185および鍔部186については、一方の循環路形成部材170に形成された窓部175および鍔部176とそれぞれ同一に形成されているため詳細な説明を省略する。
【0081】
また、直線部71および直線部81にそれぞれ形成された窓部175および窓部185は、循環路における同一の周方向位置となるように配置されている。つまり、転動体50が循環路に導入される際に、転動体50の両端の突起部53は、窓部175および窓部185をそれぞれ通過することになる。これは、直線部72および直線部82にそれぞれ形成された窓部175および窓部185についても同様である。
【0082】
このような構成においても第一実施形態と同様の効果を奏する。また、鍔部176,186は、転動体50の軸方向で、且つ、窓部175,185の開口側にかしめられることになる。これにより、確実に転動体の脱落を防止できるとともに、かしめた後の鍔部176,186が押し潰されることになり、鍔部176,186の強度を向上させることができる。
【0083】
<第一、第二実施形態の変形態様>
第一、第二実施形態において、保持器60,160の窓部75,85,175,185および鍔部76,86,176,186は、循環路における同一の周方向位置となるように配置されている。これに対して、片側のみに窓部および鍔部を設けるものとしてもよい。このような構成では、例えば、図11(a)に示すように、まず転動体50の下側の突起部53を循環路形成部材80の直線部81に挿入する。次に、転動体50の上側の突起部53が窓部75を通過するように、転動体50を下側の突起部53を基点に回転させ、循環路形成部材70の直線部71に挿入する。これを所定回数繰り返すことにより、複数の転動体50は循環路に導入される。そして、図11(b)に示すように、鍔部76を転動体50の軸方向にかしめることにより転動体50が鍔部76により循環路の外部側への移動を規制され窓部75を通過不能となる。
【0084】
このような構成においても第一、第二実施形態と同様の効果を奏する。また、循環路における所定の周方向位置に窓部75を片側のみに設けることにより、組み付けにおいて鍔部76をかしめる工程を簡易にすることができる。但し、このような構成では転動体50を循環路に導入する際に、転動体50を傾斜させてから、転動体50の下側の突起部53を基点に回転させる必要がある。そのため、同一の周方向位置に窓部75,85を配置する構成と比べると、転動体50を導入する際の工数が増えることになる。従って、ニードルユニット30,130に必要とされる強度や使用形態などを鑑みて窓部の構成を適宜設定することが望ましい。
【0085】
また、鍔部76,86,176,186は、押し潰すように折り曲げることによりかしめられるものとした。これに対して、例えば、鍔部76,86,176,186の断面形状をL字状または円弧状に形成するように鍔部を塑性変形させ、循環路形成部材70,80,170,180の外形に倣うようにしてもよい。これにより、保持器60,160と外輪10の軌道溝13の溝底面13aに干渉するなど、他の部材と干渉することをより確実に防止できる。
【0086】
その他に、第一、第二実施形態において、保持器60,160の窓部75,85,175,185および鍔部76,86,176,186は、循環路形成部材70,80,170,180の外周側にそれぞれ位置するものとした。これに対して、循環路形成部材70,80,170,180の内周側に位置するものとしてもよい。このような構成では、窓部75などが外周側にある場合と比較して、循環路に転動体50を導入しにくくなる。しかし、窓部75,85,175,185の開口側にかしめられた鍔部76,86,176,186が保持器60,160の内周側にあることで、例えば、保持器60,160が外輪10の軌道溝13の溝底面13aに接触するなど、他の部材と干渉することをより確実に防止できる。よって、外輪10または保持器60,160の設計自由度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0087】
1:等速ジョイント、 2:中間シャフト
10:外輪、 11:筒状部、 12:連結軸部
13:軌道溝、 13a:溝底面、 13b,13c:側面
14,15:軌道凹部、 14a,15a:底面、 14b,15b:側面
20:トリポード、 21:ボス部、 21a:内歯スプライン
22:トリポード軸部
30,130:ニードルユニット
40:中間部材、 41,42:分割部材、 41a,42a,41b,42b:端面
41c,42c:トリポード接触面、 41d、42d:動力伝達面
50:転動体、 51:転動面部、 52:斜面部、 53:突起部
60,160:保持器、
70,80,170,180:循環路形成部材
71,72,81,82:直線部、 73,74,83,84:湾曲部
75,85,175,185:窓部、 76,86,176,186:鍔部
77,87:第一連結部、 78,88:第二連結部
P1,P2:基準面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部を有し、内周面に外輪回転軸方向に延びる3本の軌道溝が形成された外輪と、
シャフトに連結されるボス部、および、前記ボス部の外周面からそれぞれ前記ボス部の径方向外方に延びるように立設されそれぞれの前記軌道溝に挿入される3本のトリポード軸部を備えるトリポードと、
前記トリポード軸部の外周に前記トリポード軸部に対して揺動可能に設けられ、前記軌道溝の側面と対向する動力伝達面を有する中間部材と、
軸状からなり、前記軌道溝の側面と前記動力伝達面との間に、前記軌道溝の側面に沿って転動可能に設けられる複数の転動体と、
前記転動体が前記中間部材の外周を循環可能となるように前記転動体を支持する保持器と、
を備える摺動式トリポード型等速ジョイントであって、
前記保持器は、循環する前記転動体の軌跡である循環路を形成し、前記転動体の軸方向両端部をそれぞれ支持するように対向して連結された一対の循環路形成部材からなり、
少なくとも一方の前記循環路形成部材は、前記転動体を循環方向の側方から前記循環路に導入可能に開口した窓部と、前記窓部の周縁から前記転動体の導入方向へ延伸するように形成された鍔部と、を有し、
前記鍔部は、前記転動体を前記循環路に導入した後、当該転動体が前記窓部を通過しないように前記窓部の開口側にかしめられることを特徴とする摺動式トリポード型等速ジョイント。
【請求項2】
請求項1において、
一対の前記循環路形成部材は、前記窓部および前記鍔部をそれぞれ有し、
一方の前記循環路形成部材の前記窓部および他方の前記循環路形成部材の前記窓部が前記循環路における同一の周方向位置となるように配置されていることを特徴とする摺動式トリポード型等速ジョイント。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記鍔部は、前記転動体の循環方向にかしめられることを特徴とする摺動式トリポード型等速ジョイント。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記鍔部は、連結された一対の前記循環路形成部材の対向方向にかしめられることを特徴とする摺動式トリポード型等速ジョイント。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記窓部および前記鍔部は、前記循環路形成部材の外周側に位置するように形成されていることを特徴とする摺動式トリポード型等速ジョイント。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項において、
それぞれの前記循環路形成部材は、周回する前記循環路を形成し、
前記保持器は、同形状からなる前記循環路形成部材を連結することにより構成されることを特徴とする摺動式トリポード型等速ジョイント。
【請求項7】
請求項6において、
一対の前記循環路形成部材は、前記保持器の中心に対して非面対称形状となるように形成された第一連結部および第二連結部をそれぞれ有し、
一方の前記循環路形成部材の前記第一連結部および前記第二連結部は、他方の前記循環路形成部材の前記第二連結部および前記第一連結部とそれぞれ連結されることを特徴とする摺動式トリポード型等速ジョイント。
【請求項1】
筒状部を有し、内周面に外輪回転軸方向に延びる3本の軌道溝が形成された外輪と、
シャフトに連結されるボス部、および、前記ボス部の外周面からそれぞれ前記ボス部の径方向外方に延びるように立設されそれぞれの前記軌道溝に挿入される3本のトリポード軸部を備えるトリポードと、
前記トリポード軸部の外周に前記トリポード軸部に対して揺動可能に設けられ、前記軌道溝の側面と対向する動力伝達面を有する中間部材と、
軸状からなり、前記軌道溝の側面と前記動力伝達面との間に、前記軌道溝の側面に沿って転動可能に設けられる複数の転動体と、
前記転動体が前記中間部材の外周を循環可能となるように前記転動体を支持する保持器と、
を備える摺動式トリポード型等速ジョイントであって、
前記保持器は、循環する前記転動体の軌跡である循環路を形成し、前記転動体の軸方向両端部をそれぞれ支持するように対向して連結された一対の循環路形成部材からなり、
少なくとも一方の前記循環路形成部材は、前記転動体を循環方向の側方から前記循環路に導入可能に開口した窓部と、前記窓部の周縁から前記転動体の導入方向へ延伸するように形成された鍔部と、を有し、
前記鍔部は、前記転動体を前記循環路に導入した後、当該転動体が前記窓部を通過しないように前記窓部の開口側にかしめられることを特徴とする摺動式トリポード型等速ジョイント。
【請求項2】
請求項1において、
一対の前記循環路形成部材は、前記窓部および前記鍔部をそれぞれ有し、
一方の前記循環路形成部材の前記窓部および他方の前記循環路形成部材の前記窓部が前記循環路における同一の周方向位置となるように配置されていることを特徴とする摺動式トリポード型等速ジョイント。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記鍔部は、前記転動体の循環方向にかしめられることを特徴とする摺動式トリポード型等速ジョイント。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記鍔部は、連結された一対の前記循環路形成部材の対向方向にかしめられることを特徴とする摺動式トリポード型等速ジョイント。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記窓部および前記鍔部は、前記循環路形成部材の外周側に位置するように形成されていることを特徴とする摺動式トリポード型等速ジョイント。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項において、
それぞれの前記循環路形成部材は、周回する前記循環路を形成し、
前記保持器は、同形状からなる前記循環路形成部材を連結することにより構成されることを特徴とする摺動式トリポード型等速ジョイント。
【請求項7】
請求項6において、
一対の前記循環路形成部材は、前記保持器の中心に対して非面対称形状となるように形成された第一連結部および第二連結部をそれぞれ有し、
一方の前記循環路形成部材の前記第一連結部および前記第二連結部は、他方の前記循環路形成部材の前記第二連結部および前記第一連結部とそれぞれ連結されることを特徴とする摺動式トリポード型等速ジョイント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−58532(P2011−58532A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207100(P2009−207100)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
[ Back to top ]