説明

摺動式トリポード型等速ジョイント

【課題】非負荷側の軌道溝とローラとの接触荷重の大きさを低減することにより、結果として誘起スラスト力を低減することができる摺動式トリポード型等速ジョイントを提供する。
【解決手段】軌道溝11の溝側面には、ローラ30の外周面との間でトルク伝達を行う負荷伝達点Pf2が設定される。軌道溝11の溝側面のうち負荷伝達点Pf2より溝開口端E側に位置する溝開口部は、溝開口端Eに向かって、対向するローラ30の外周面に対して相対的に凹所11aから凸所11bに変化するように形成される。軌道溝11が非負荷側となる場合に、ローラ30の外周面は、凹所11aに接触せずに凸所11bに接触するように、凹所11aおよび凸所11bが設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動式トリポード型等速ジョイントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
摺動式トリポード型等速ジョイントとして、例えば、特開平10−246241号公報(特許文献1)、特開2004−125175号公報(特許文献2)、特開2006−162056号公報(特許文献3)およびなどに記載されたものがある。特許文献1〜3に記載の摺動式トリポード型等速ジョイントは、トリポード軸部がローラに対して首振り揺動可能となるように構成されている。これにより、ローラが軌道溝を転動しようとする方向と軌道溝の延びる方向とが一致するため、ローラと軌道溝との間に滑りが発生しないようにできる。その結果、誘起スラスト力の発生を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−246241号公報
【特許文献2】特開2004−125175号公報
【特許文献3】特開2006−162056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1〜3に記載の摺動式トリポード型等速ジョイントにおいては、ジョイント角をとったときには、トリポード軸部がローラに対して、トリポード軸部の軸方向に摺動する。そのため、ローラがトリポード軸部から力を受ける位置がローラの軸方向に変化する。これにより、特許文献3に記載されているように、外輪の軌道溝の延びる方向からローラを見た場合に、ローラが首振り揺動する。そのため、ローラのうち外輪の軌道溝とトルク伝達を行っている負荷側の反対側である非負荷側(背面側)が、軌道溝に接触し、ローラと軌道溝との間にて摩擦力が発生するおそれがある。このことが、誘起スラスト力の発生に影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、非負荷側の軌道溝とローラとの接触荷重の大きさを低減することにより、結果として誘起スラスト力を低減することができる摺動式トリポード型等速ジョイントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1)摺動式トリポード型等速ジョイントに係る本発明は、筒状に形成され、内周面に外輪回転軸方向に延びる3本の軌道溝が形成された外輪と、シャフトに連結されるボス部、および、前記ボス部の外周面からそれぞれ前記ボス部の径方向外方に延びるように立設されそれぞれの前記軌道溝に挿入される3本のトリポード軸部を備えるトリポードと、凸弧状の外周面を有する環状に形成され、それぞれの前記トリポード軸部の外周側に回転可能且つ首振り揺動可能に軸支され、且つ、前記軌道溝に転動可能に配置されるローラと、を備えるトリポード型等速ジョイントであって、前記軌道溝の溝側面には、前記ローラの外周面との間でトルク伝達を行う負荷伝達点が設定され、前記軌道溝の溝側面のうち前記負荷伝達点より溝開口端側に位置する溝開口部は、前記溝開口端に向かって、対向する前記ローラの外周面に対して相対的に凹所から凸所に変化するように形成され、前記軌道溝が非負荷側となる場合に、前記ローラの外周面は、前記凹所に接触せずに前記凸所に接触するように、前記凹所および前記凸所が設定される。
【0007】
(請求項2)本発明において、前記凹所には、前記軌道溝の延びる方向に形成される非接触溝であり、前記凸所は、前記非接触溝のうち前記溝開口端側の肩部を形成する部位としてもよい。
(請求項3)本発明において、前記凸所の曲率および曲率中心は、前記負荷伝達点の曲率および曲率中心に一致するように設定されているようにしてもよい。
(請求項4)本発明において、前記凹所は、前記負荷伝達点の曲率に連続して曲面状に形成され、前記凸所は、前記凹所の曲面に対して前記軌道溝の溝内部に向かって突出して形成されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
(請求項1)本発明によれば、ローラがトリポード軸部から力を受ける位置がローラの軸方向に摺動して、ローラが非負荷側の軌道溝の開口部に接触するようなモーメントがローラに発生した場合には、非負荷側の軌道溝の溝開口部において、ローラの外周面は凸所に接触する。本発明においては、軌道溝の溝側面の溝開口部は、溝開口端に向かって、対向するローラの外周面に対して相対的に凹所から凸所に変化するように形成されている。つまり、凹所よりも凸所が、溝開口端側に位置している。また、ローラのうち凸所が対向する位置は、ローラのうち凹所に対向する位置に比べて、ローラの外周面のうち軸方向端面側に位置している。
【0009】
ここで、本発明において、ローラの外周面は、凸弧状に形成されている。従って、ローラの凸弧状のうちローラの軸方向端面側ほど、ローラの外周面の法線とローラの軸方向とのなす鋭角は、小さくなっていく。つまり、ローラのうち凸所が対向する位置の法線とローラの軸方向とのなす鋭角は、凹所が対向する位置の法線とローラの軸方向とのなす鋭角より小さい。
【0010】
つまり、凹所と凸所を上述したように設けることで、凹凸を有しない従来の構成と比較すると、非負荷側の軌道溝においてローラに接触する点の法線とローラの軸方向に対するなす鋭角が小さくなる。当該なす鋭角が小さくなることにより、ローラと軌道溝との接触荷重のうちローラの軸方向成分が大きくなり、かつ、当該接触荷重のうちローラの軸直交方向成分が小さくなる。その結果、ローラと軌道溝との接触荷重の大きさが小さくなる。従って、誘起スラスト力が低減する。
【0011】
(請求項2)本発明によれば、非接触溝の溝幅を設定することで、凸所の位置、すなわちローラに接触する位置を決定することができる。従って、本発明によれば、容易に凹所および凸所を形成することができ、誘起スラスト力の低減を確実に実現できる。
(請求項3)本発明によれば、凸所と負荷伝達点の成形は同時に行い、その後に凹所としての非接触溝を加工することで実現できる。このように、凸所の成形が非常に容易となる。
(請求項4)本発明によれば、凹所が非接触溝のように両肩部を有する形状ではなく、負荷伝達点に連続した形状の場合であっても、凸所を凹所に対して突出させることで、確実に凸所にローラが接触するようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一実施形態:摺動式トリポード型等速ジョイントの径方向部分断面図であって、3本の軌道溝のうち1本の軌道溝の部分を示す。
【図2】第一実施形態:図1のA部分の外輪の拡大図、すなわち、外輪の非負荷側の軌道溝における外ローラとの接触位置付近を示す拡大断面図である。
【図3】第二実施形態:図1のA部分に相当する外輪の拡大図、すなわち、外輪の非負荷側の軌道溝における外ローラとの接触位置付近を示す拡大断面図である。
【図4】比較例:図1のA部分に相当する外輪の拡大図、すなわち、外輪の非負荷側の軌道溝における外ローラとの接触位置付近を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の摺動式トリポード型等速ジョイントを具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0014】
<第一実施形態>
第一実施形態の摺動式トリポード型等速ジョイントについて、図1および図2を参照して説明する。ここで、本実施形態の摺動式トリポード型等速ジョイントは、車両の動力伝達シャフトの連結に用いる場合を例に挙げて説明する。例えば、自動車のドライブシャフトのインボードジョイントとして好適に使用されるものである。すなわち、この場合には、当該等速ジョイントは、ディファレンシャルギヤに連結された軸部とドライブシャフトシャフトの中間シャフトとの連結部位に用いる場合である。
【0015】
(摺動式トリポード型等速ジョイントの全体構成)
この摺動式トリポード型等速ジョイントは、ディファレンシャルギヤ側の軸部(図示せず)に連結される外輪10と、他方側の中間シャフト(図示せず)に連結されるトリポード20と、外輪10とトリポード20との間に介在するローラユニット30とを備えて構成される。
【0016】
外輪10は、筒状(例えば、有底筒状)に形成されており、一端側がディファレンシャルギヤに連結されている。そして、外輪10の筒状部分の内周面には、外輪軸方向(図1の前後方向)に延びる軌道溝11が、外輪軸の周方向に等間隔に3本形成されている。この軌道溝11断面形状は、ゴシックアーチ形状に形成されている。この外輪10の軌道溝11の詳細については後述する。
【0017】
トリポード20は、外輪10の筒状部分の内側に配置されている。このトリポード20は、ボス部21と、3本のトリポード軸部22とを備える。ボス部21は、円環状に形成されており、ボス部21の内周側には内歯スプライン21aが形成されている。この内歯スプライン21aは、中間シャフトの端部の外歯スプライン(図示せず)に連結される。それぞれのトリポード軸部22は、ボス部21の外周面からそれぞれのボス部21の径方向外方に向かって延びるように立設されている。これらのトリポード軸部22は、ボス部21の周方向に等間隔(120°間隔)に形成されている。そして、それぞれのトリポード軸部22の少なくとも先端部は、外輪10のそれぞれの軌道溝11内に挿入されている。それぞれのトリポード軸部22は、全体としては円柱状に近似した形状に形成されている。詳細には、トリポード軸部22の外周面は、部分球面状をなしている。
【0018】
ローラユニット30は、全体としては、円環状となるように構成されている。ローラユニット30は、トリポード軸部22の外周側に、トリポード軸回りに回転可能に、且つ、トリポード軸方向に摺動可能に軸支されている。さらに、ローラユニット30は、トリポード軸部22に対して首振り揺動可能である。さらに、ローラユニット30は、軌道溝11の溝側面に沿って転動可能に配置されている。このローラユニット30は、外ローラ31と、内ローラ32と、ニードルローラ33と、止め輪34,35とから構成される。
【0019】
外ローラ31は、円環状に形成されている。外ローラ31の外周面の軸方向断面形状は、大凡、軌道溝11の溝側面に対応する形状、すなわち軌道溝11の溝側面を反転した形状に形成されている。詳細には、外ローラ31の外周面の軸方向断面形状は、単一の曲率半径により表される凸円弧形状に形成されている。そして、外ローラ31は、その中心軸が外輪回転軸に直交する姿勢で、軌道溝11に転動可能に嵌挿されている。また、外ローラ31の内周面は、円筒内周面形状、すなわち、外ローラ31の軸方向に亘ってほぼ同径に形成されている。ただし、外ローラ31の内周面のうち両開口側には、全周に亘って止め輪溝31a,31bが形成されている。
【0020】
内ローラ32は、円筒状に形成されている。内ローラ32の軸方向長さは、外ローラ31に形成された両側の止め輪溝31a,31b間の離間距離に相当する。この内ローラ32の外径は、外ローラ31の内径より小さく形成されている。そして、内ローラ32は、外ローラ31の径方向内方に離隔して配置されている。この内ローラ32と外ローラ31との径方向隙間には、全周に亘って、複数のニードルローラ33が配置されている。そして、このニードルローラ33を介することで、内ローラ32は、外ローラ31に対して相対回転可能とされている。さらに、内ローラ32は、外ローラ31に対して、径方向内方に同軸上に配置されている。この内ローラ32は、トリポード軸部22に対して回転且つ首振り揺動可能に、且つ、トリポード軸部22のトリポード軸方向に摺動可能となるように、トリポード軸部22に軸支されている。
【0021】
止め輪34,35は、縮径可能となるように、切り込み部分を有するC字型形状に形成されている。これらの止め輪34,35は、外ローラ31の止め輪溝31a,31bにそれぞれ嵌め込まれる。そして、止め輪34,35は、内ローラ32およびニードルローラ33に対して、ローラユニット30の軸方向に引っ掛かるようにされている。つまり、止め輪34,35は、内ローラ32およびニードルローラ33が、外ローラ31に対して、軸方向に相対的に移動することを規制している。
【0022】
(外輪10の軌道溝11の詳細構成)
次に、上述した外輪10の軌道溝11のうち特に溝側面の詳細形状について、図1および図2を参照して説明する。ここで、図1において、トリポード20が図1の右回りに回転した場合に、外輪10の軌道溝11のうち図1の右側の溝側面がトルクの負荷側となり、軌道溝11のうち図1の左側の溝側面がトルクの非負荷側となる。
【0023】
上述したように、軌道溝11をゴシックアーチ形状に形成し、外ローラ31の外周面を単一の曲率半径からなる凸円弧形状に形成している。従って、図1に示すように、軌道溝11の溝側面には、ローラユニット30の外ローラ31の外周面との間でトルク伝達を行う負荷伝達点Pf1,Pf2が設定されている。このように、本実施形態においては、軌道溝11と外ローラ31との接触箇所が2箇所となるアンギュラコンタクトを採用している。
【0024】
また、図1および図2に示すように、軌道溝11の溝側面のうち負荷伝達点Pf2より溝開口端E側(図1の下側)に位置する溝開口部は、溝開口端Eに向かって、対向する外ローラ31の外周面に対して相対的に凹所11aから凸所11bに変化するように形成されている。ここでは、凹所11aには、外輪10の軌道溝11の延びる方向に形成される非接触溝である。一方、凸所11bは、非接触溝としての凹所11aのうち溝開口端E側の肩部を形成する部位である。この凸所11bの曲率および曲率中心は、負荷伝達点Pf2の曲率および曲率中心に一致するように設定されている。
【0025】
(トルク伝達時に非負荷側の軌道溝11に発生する荷重)
次に、トルク伝達時に非負荷側の軌道溝11に発生する荷重について図1、図2および図4を参照して説明する。なお、図2において、負荷伝達点Pf2を図示しているが、これは図示している軌道溝11が負荷側となる場合における負荷伝達点Pf2となる位置を示している。また、図2において、点Pb2を図示しているが、これは図4に示す比較例における点Pb2に対応する位置を示している。
【0026】
トリポード20が図1の右回りに回転して、外輪10の軌道溝11のうち図1の右側の溝側面がトルクの負荷側となる場合として説明する。また、トリポード軸部22は、内ローラ32に対してローラ軸方向に摺動することは上述したとおりである。つまり、トリポード軸部22の外周面が内ローラ32の内周面に対して与える荷重点Ptは、内ローラ32の軸方向に移動する。ここでは、非負荷側の軌道溝11に発生する荷重が最大となる状態、すなわち、荷重点Ptがアンギュラコンタクトにおける旋回中心Oaから外輪10の回転中心側(図1の下側)へ最も遠くなる位置にある場合を考える。
【0027】
この場合、ローラユニット30は、トリポード軸部22から受ける荷重Fによって旋回中心Oaを中心とした図1の左回りのモーメントが発生する。そうすると、ローラユニット30は、軌道溝11のトルクの非負荷側において、溝開口部付近において接触する。軌道溝11の溝側面の溝開口部は、上述したように、溝開口端Eに向かって、対向する外ローラ31の外周面に対して相対的に凹所11aから凸所11bに変化するように形成されている。従って、非負荷側の軌道溝11において、ローラユニット30の外周面は、軌道溝11の凹所11aに接触せずに凸所11bの点Pbに接触する。
【0028】
このとき、本実施形態における非負荷側の軌道溝11の凸所11bの点Pbに発生する荷重Nの大きさについて検討する。図2に示すように、点Pbにおける荷重Nの法線方向は、点Pbの法線方向、および、凸所11bの点Pbに接触する外ローラ31の外周面の法線方向に一致する。この法線方向と図1および図2の水平方向とのなす鋭角をαとする。なお、図1および図2の水平方向とは、外輪10の回転軸に直交すると共に外輪10の径方向に直交する方向である。
【0029】
そして、ローラユニット30の旋回中心Oa回りのモーメントの釣り合いを考える。つまり、ローラユニット30がトリポード軸部22から受ける荷重Fにより発生するモーメントと、非負荷側の軌道溝11の凸所11bから受ける荷重Nにより発生するモーメントとは釣り合う。このことは、式(1)により表される。この式(1)を荷重Nについて変換すると、式(2)のように表される。この式(2)から明らかなように、角度αが大きくなるほど、式(2)の分母が大きくなるために、荷重Nの大きさは小さくなる。
【0030】
【数1】

【0031】
ここで、本実施形態と比較するため、図4に示すように、本実施形態の凹所11aが形成されていない軌道溝211の場合を例に挙げる。つまり、図4に示す軌道溝211の溝側面は、図2の破線にて示す凹所11aが形成されていない形状、すなわち、図2の負荷伝達点Pf2と凸所11bとを同一の曲率および曲率中心の曲線にて繋いだ形状に形成されているものとする。
【0032】
このとき、比較例における非負荷側の軌道溝211の点Pb2に発生する荷重N2の大きさについて検討する。図4に示すように、点Pb2における荷重N2の法線方向は、点Pb2の法線方向、および、点Pb2に接触する外ローラ31の外周面の法線方向に一致する。この法線方向と図4の水平方向とのなす鋭角をβとする。また、図1に示す距離LxおよびLyは、両者において異なるが、非常に僅かな差であるため、同一と考えることができる。従って、比較例における荷重N2は、式(2)における角度αを角度βに置換した式(3)により表される。
【0033】
【数2】

【0034】
図2と図3とを比較することより明らかなように、この比較例における角度βは、本実施形態における角度αよりも小さくなる。そうすると、式(2)により導き出される荷重Nと式(3)により導き出される荷重N2とを比較すると、相対的に大きな角度αにより表される荷重Nが、相対的に小さな角度βにより表される荷重N2より小さくなる。このように、本実施形態によれば、凹所11aを形成し、凹所11aよりも溝開口端E側における凸所11bにて外ローラ31に接触させることで、非負荷側の軌道溝11の溝側面において発生する荷重Nを小さくすることができる。従って、誘起スラスト力が低減する。
【0035】
<第二実施形態>
第二実施形態における外輪10の軌道溝11の溝開口部について図3を参照して説明する。なお、図3において、負荷伝達点Pf2を図示しているが、これは図示している軌道溝11が負荷側となる場合における負荷伝達点Pf2となる位置を示している。また、図3において、点Pb2を図示しているが、これは図4に示す比較例における点Pb2に対応する位置を示している。
【0036】
第一実施形態においては、凸所11bの曲率および曲率半径を負荷伝達点Pf2の曲率および曲率半径と一致するようにして、凹所11aとしての非負荷溝を形成した。この他に、図3に示すように、本実施形態において、軌道溝111の溝開口部は、次のように形成される。すなわち、軌道溝111の凹所111aは、負荷伝達点Pf2の曲率に連続して曲面状に形成される。例えば、当該凹所111aの曲率および曲率半径は、負荷伝達点Pf2の曲率および曲率半径に一致するようにする。また、軌道溝111の凸所111bは、凹所111aの曲面に対して軌道溝111の溝内部に向かって突出して形成される。つまり、凸所111bは、凹所111aの曲面の延長線Hよりも、溝内部に向かって突出している。そして、凸所111bの点Pbにて、外ローラ31の外周面と接触する。この場合にも、第一実施形態と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0037】
10:外輪、 11,111,211:軌道溝
11a,111a:凹所、 11b,111b:凸所
20:トリポード、 21:ボス部、 21a:内歯スプライン
22:トリポード軸部
30:ローラユニット、 31:外ローラ、 31a,31b:輪溝
32:内ローラ、 33:ニードルローラ、 34,35:止め輪
211:軌道溝
E:溝開口端、 N,N2:非負荷側の荷重、 Oa:モーメント旋回中心
Pb,Pb2:非負荷側の接触点、 Pf1,Pf2:負荷伝達点
α,β:接触角度、 H:凹所の曲面の延長線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成され、内周面に外輪回転軸方向に延びる3本の軌道溝が形成された外輪と、
シャフトに連結されるボス部、および、前記ボス部の外周面からそれぞれ前記ボス部の径方向外方に延びるように立設されそれぞれの前記軌道溝に挿入される3本のトリポード軸部を備えるトリポードと、
凸弧状の外周面を有する環状に形成され、それぞれの前記トリポード軸部の外周側に回転可能且つ首振り揺動可能に軸支され、且つ、前記軌道溝に転動可能に配置されるローラと、
を備えるトリポード型等速ジョイントであって、
前記軌道溝の溝側面には、前記ローラの外周面との間でトルク伝達を行う負荷伝達点が設定され、
前記軌道溝の溝側面のうち前記負荷伝達点より溝開口端側に位置する溝開口部は、前記溝開口端に向かって、対向する前記ローラの外周面に対して相対的に凹所から凸所に変化するように形成され、
前記軌道溝が非負荷側となる場合に、前記ローラの外周面は、前記凹所に接触せずに前記凸所に接触するように、前記凹所および前記凸所が設定される摺動式トリポード型等速ジョイント。
【請求項2】
請求項1において、
前記凹所には、前記軌道溝の延びる方向に形成される非接触溝であり、
前記凸所は、前記非接触溝のうち前記溝開口端側の肩部を形成する部位である摺動式トリポード型等速ジョイント。
【請求項3】
請求項2において、
前記凸所の曲率および曲率中心は、前記負荷伝達点の曲率および曲率中心に一致するように設定されている摺動式トリポード型等速ジョイント。
【請求項4】
請求項1において、
前記凹所は、前記負荷伝達点の曲率に連続して曲面状に形成され、
前記凸所は、前記凹所の曲面に対して前記軌道溝の溝内部に向かって突出して形成される摺動式トリポード型等速ジョイント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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