摺動皮膜の形成方法および摺動部材
【課題】 設備や材料の制約が少なく、カーボンナノファイバの配向を揃えることができる摺動皮膜の形成方法を提供すること。また、コストの増加および機械的物性の低下を抑制することができながら、摺動性を向上させることのできる摺動部材を提供すること。
【解決手段】 カーボンナノファイバおよび熱硬化性樹脂を含有するインクを、長手方向に延びる円状溝10が形成された版ロール6上に供給し、インクの供給後、長手方向に交差する方向に配置されたスキージ7を、長手方向に沿って版ロール6に対して相対的に移動させることによって、円状溝10内にカーボンナノファイバの配向したインクを充填する。そのインクを摺動部材23の摺動面24に転写することによって、摺動皮膜のコート層26を得る。
【解決手段】 カーボンナノファイバおよび熱硬化性樹脂を含有するインクを、長手方向に延びる円状溝10が形成された版ロール6上に供給し、インクの供給後、長手方向に交差する方向に配置されたスキージ7を、長手方向に沿って版ロール6に対して相対的に移動させることによって、円状溝10内にカーボンナノファイバの配向したインクを充填する。そのインクを摺動部材23の摺動面24に転写することによって、摺動皮膜のコート層26を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動皮膜の形成方法およびそれにより得られる摺動皮膜を有する摺動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノカーボン材料は、靭性、低摩擦性などの物性に優れることから、摺動部材の摺動皮膜材料として注目されており、摺動部材の摺動方向にナノカーボン材料を配向させることによって、摺動皮膜の摺動性のさらなる向上が期待されている。
従来、ナノカーボン材料の配向を揃える方法として、摺動皮膜とは異なる工業製品に関する方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、シート状の導電コネクタの製造工程において、成形中のマトリックス成分とカーボンナノチューブとの配合物に均一平行磁場を与えることによって、その平行磁場に沿ってカーボンナノチューブを配向させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、部材表面に熱伝導皮膜を形成する工程において、ナノカーボン材料と樹脂との混合粉末を部材表面に溶射することによって衝突させ、衝突後に部材表面を流れる溶融樹脂の流れを利用して、その流れ方向に沿ってナノカーボン材料を配向させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−255600号公報
【特許文献2】特開2004−188286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、平行磁場を利用する方法は、磁場を発生させるための装置が必要となるため、設備に制約される。さらに、金属フィラーなどの磁性材料がカーボンナノチューブとともに配合される場合があるため、平行磁場の影響によって磁性材料の磁化現象が生じるおそれがある。そのため、上記方法を利用して摺動皮膜を形成する場合には、皮膜材料にも制約される。
【0006】
一方、溶融樹脂の流れを利用する方法では、部材表面に衝突した溶融樹脂が、外力を受けずに流れる。そのため、溶射条件が異なる溶融樹脂を、様々な形状の部材表面に規則的に流動させ、ナノカーボン材料の配向を揃えることはやはり困難である。これに対して、ナノカーボン材料の含有量を増加させれば、配向のばらつきが多少生じていても摺動皮膜の摺動性を向上させることができる。しかし、ナノカーボン材料の含有量が多すぎると、コストの増加、機械特性の低下などの不具合が生じる。
【0007】
本発明の目的は、設備や材料の制約が少なく、カーボンナノファイバの配向を揃えることができる摺動皮膜の形成方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、コストの増加および機械的物性の低下を抑制することができながら、摺動性を向上させることのできる摺動部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の摺動皮膜の形成方法は、カーボンナノファイバおよび熱硬化性樹脂を含有するインクを、長手方向に延びる溝が形成された基版上に供給する工程と、インクの供給後、前記長手方向に交差する方向に配置されたスキージを、前記長手方向に沿って前記基版に対して相対的に移動させる工程とを備えることを特徴としている。
【0009】
この方法によれば、スキージを、溝の長手方向に沿って基版に対して相対的に移動させることによって、溝の長手方向に沿うインクの流れを発生させることができる。そして、その流れを利用してインクが溝に送り込まれるので、インク中のカーボンナノファイバを溝の長手方向に沿って配向させることができる。しかも、その流れを発生させるために磁場の発生が不要なので、設備や材料の制約が少なく、カーボンナノファイバの配向を溝の長手方向に沿って揃えることができる。
【0010】
また、本発明の摺動皮膜の形成方法では、前記溝の幅が、前記カーボンナノファイバの繊維長に対して2〜3倍であることが好適である。
この方法では、溝の幅をカーボンナノファイバの繊維長に対して2〜3倍とすることによって、カーボンナノファイバを除くインクの含有成分の収容スペースを溝に十分確保しながら、溝の長手方向に対するカーボンナノファイバの配向度合を向上させることができる。
【0011】
さらに、本発明の摺動部材は、相手部材に対して摺動する摺動部材であって、前記摺動部材の摺動面には、上記摺動皮膜の形成方法によって得られる摺動皮膜が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、摺動皮膜が上記摺動皮膜の形成方法によって得られるので、摺動面には、カーボンナノファイバの配向の揃った摺動皮膜が形成される。そのため、摺動皮膜におけるカーボンナノファイバの含有量を増加させなくても、カーボンナノファイバの配向と摺動部材の摺動方向とを一致させることによって、コストの増加および機械的物性の低下を抑制することができながら、摺動部材の摺動性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の摺動皮膜の形成方法によれば、インク中のカーボンナノファイバを溝の長手方向に沿って配向させることができる。しかも、その流れを発生させるために磁場の発生が不要なので、設備や材料の制約が少なく、カーボンナノファイバの配向を溝の長手方向に沿って揃えることができる。
また、本発明の摺動部材によれば、摺動皮膜におけるカーボンナノファイバの含有量を増加させなくても、カーボンナノファイバの配向と摺動部材の摺動方向とを一致させることによって、コストの増加および機械的物性の低下を抑制することができながら、摺動部材の摺動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る方法に使用される摺動皮膜形成装置の概略構成図である。
【図2】(a)版ロールを斜め上方から見た斜視図、(b)b−bで示される切断線によって版ロールを切断したときの断面図である。
【図3】版ロールに対するスキージの配置形態を説明するための図である。
【図4】インクを供給する工程における摺動皮膜形成装置の動作図である。
【図5】版ロールへインクを充填する工程における摺動皮膜形成装置の動作図であって、(a)全体図(b)版ロールの拡大図である。
【図6】ブランケットへインクを受理させる工程における摺動皮膜形成装置の動作図である。
【図7】摺動部材へインクを転写する工程における摺動皮膜形成装置の動作図である。
【図8】摺動部材を焼成する工程における摺動皮膜形成装置の動作図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る方法に使用される摺動皮膜形成装置の概略構成図であって(a)全体図(b)CNFの配向状態を示す直線溝の拡大図である。
【図10】実施例1の摺動皮膜シートの透過顕微鏡写真である。
【図11】実施例2の摺動皮膜シートの透過顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
1.装置構成
図1は、本発明の第1の実施形態に係る方法に使用される摺動皮膜形成装置の概略構成図である。図2(a)は、版ロールを斜め上方から見た斜視図、(b)は、b−bで示される切断線によって版ロールを切断したときの断面図である。図3は、版ロールに対するスキージの配置形態を説明するための図である。
【0015】
摺動皮膜形成装置1は、上流側から下流側へ摺動部材を移送するためのベルトコンベア2と、ベルトコンベア2の途中に設けられた皮膜形成部3と、ベルトコンベア2の下流端よりも後側に設けられたヒータ4とを備えている。
皮膜形成部3は、例えば、オフセット印刷機構によって摺動部材に皮膜を形成するものであって、インク供給部5と、基版としての版ロール6と、スキージ7と、ブランケット8とを備えている。
【0016】
インク供給部5には、カーボンナノファイバ(CNF)、熱硬化性樹脂および溶剤を含有するインクが充填される。
カーボンナノファイバとは、例えば、繊維長5μm以上、好ましくは、6〜10μmのカーボン繊維である。また、繊維径は、例えば、80nm以上、好ましくは、100〜150nmである。具体的な市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製 VGCF、VGCF−Hなどが挙げられる。
【0017】
熱硬化性樹脂としては、例えば、一般的な熱硬化性樹脂、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フルフラール樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、キシレン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらは単独使用または2種以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0018】
溶剤としては、使用する熱硬化性樹脂に適したものが用いられ、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、イソホロン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、フタル酸ジメチルなどのエステル類、エタノール、メタノール、ブタノールなどのアルコール類が挙げられる。これらは単独使用または2種以上併用することができる。熱硬化性樹脂と溶剤との組み合わせとしては、例えば、ポリアミドイミド樹脂に対してNMPおよび/またはDMF、エポキシ樹脂に対してブタノールおよび/またはMIBKなどが挙げられる。
【0019】
また、インクは、必要により固体潤滑剤などの添加剤を含有することができる。
固体潤滑剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、二硫化モリブデン(MoS2)などが挙げられる。
そして、インクを調製するには、例えば、カーボンナノファイバ、熱硬化性樹脂および必要により添加剤(以上、固形分)を、溶剤に投入する。固形分の投入量は、インク全量に対する固形分の重量割合が、例えば、30〜80重量%である。また、固形分全量に対する各成分の重量割合は、例えば、カーボンナノファイバが0.1〜20重量%であり、好ましくは、1〜10重量%である。また、熱硬化性樹脂が60〜99.9重量%である。
【0020】
上記の方法によって、固形分が分散したインクを得ることができる。得られるインクのJIS Z8803によって測定される粘度ηは、例えば、1〜20Pa・s、好ましくは、1.5〜10Pa・sである。
版ロール6は、円柱状に形成され、その周面9には、版ロール6を周方向に一周する円状溝10が版ロール6の軸方向に間隔を隔てて複数形成されている。円状溝10の数は、摺動部材の用途などに応じて適宜定められる。なお、図2では、図解し易くする目的で数本の円状溝10だけを示している。
【0021】
各円状溝10は、1本の稜線11を形成する2つの合同な傾斜面12が切り出されることによって、断面V字状に形成されている。2つの傾斜面12の挟角α(溝挟角α)は、例えば、90〜120°である。
円状溝10の幅(溝幅w)は、例えば、インク供給部5に充填されるインクによって異なるが、例えば、カーボンナノファイバの繊維長に対して、2〜3倍である。具体的な幅の一例は、例えば、10〜30μm、好ましくは、12〜18μmである。溝幅wが上記した大きさであれば、カーボンナノファイバの配向性を向上できるとともに、調製するインクの選択肢を増加させることができる。例えば、溝幅wが3倍以下のとき、カーボンナノファイバが円状溝10の長手方向に沿って配列しやすくなるので、配向性を向上させることができる。一方、溝幅wが2倍以上のとき、インクが多種類の成分を含有していても、インクを円状溝10に効率よく送り込むことができる。そのため、インクの含有物に制約が少なく、多種多様のインクを調製して使用することができる。
【0022】
また、円状溝10の深さd(円状溝10の稜線11から版ロール6の周面9までの距離)は、例えば、3〜15μmである。
そして、複数の円状溝10は、版ロール6の軸方向に沿って等しい溝ピッチpで設けられている。溝ピッチp(一の円状溝10の稜線11とその円状溝10に隣接する円状溝10の稜線11との距離)は、例えば、10〜100μmである。また、版ロール6の直径D1は、例えば、10〜30cmであり、版ロール6の軸長さL1は、例えば、10〜30cmである。
【0023】
上記のような版ロール6は、円柱軸がベルトコンベア2の移送方向と直交するように(円状溝10の長手方向が移送方向と平行となるように)配置され、円柱軸を回転軸として一方向(例えば、右回り)に回転可能に設けられている。
スキージ7は、長方形平板状に形成され、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの弾性材料、SUSなどの金属、プラスチック、セラミックスなどを用いて形成されている。これらの材料は、インクの粘度ηなどに合わせて適したものが用いられる。
【0024】
スキージ7は、その長辺が円状溝10の長手方向(版ロール6の周方向)に直交するように配置され、円状溝10全体を横切るように長辺側の縁部13が版ロール6の周面9に当接した状態で固定されている。周面9におけるスキージ7の当接位置は、例えば、図3に示すように、版ロール6の周面9がその最頂部14を起点にして周方向に4等分され、各部分が最頂部14から回転方向に第1部分15(右上部分)、第2部分16(右下部分)、第3部分17(左下部分)および第4部分18(左上部分)と定められる場合、第1部分15もしくは第2部分16であることが好ましい。
【0025】
また、その当接位置における接線lと、スキージ7の上面19とがなす回転方向上流側の角度β(当接角β)は、摺動部材の用途などに応じて適宜定められる。
ブランケット8は、円柱状に形成され、その周面20が、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの絶縁ゴムからなるシートによって形成されている。
ブランケット8は、その円柱軸が版ロール6の円柱軸と平行な状態で配置され、その周面20が版ロール6の周面9に対して線接触している。そして、円柱軸を回転軸として他方向(例えば、左回り)に回転可能とされている。そのため、版ロール6の回転数とブランケット8の回転数とを等しく制御することによって、周面9,20同士を密着させた状態でこれらを同期回転させることができる。
【0026】
また、版ロール6の周面9におけるブランケット8の接触位置は、スキージ7よりも下流側かつ周面9の最下部21よりも上流側であることが好ましく、具体的には、版ロール6の周面9の第2部分16であることが好ましい。これにより、インクが版ロール6の円状溝10から落下することが少なく、インクを効率よくブランケット8の周面20で受理することができる。
【0027】
また、ブランケット8の直径D2および軸長さL2は、例えば、版ロール6と同じ(直径D2:10〜30cm、軸長さL2:10〜30cm)である。
上記のような皮膜形成部3全体としての位置は、例えば、摺動部材23の大きさ・形状に合わせて、版ロール6、スキージ7およびブランケット8を一体的に移動させることによって、摺動部材23の摺動面24(後述)とブランケット8の最下部22とが接触可能な大きさの空間が設けられるように調節される。
【0028】
ヒータ4としては、摺動皮膜を乾燥するための公知の加熱炉を適用できる。
2.摺動皮膜の形成方法
次いで、図1に示す摺動皮膜形成装置1によって摺動部材に摺動皮膜を形成する方法を説明する。
まず、図4に示すように、ベルトコンベア2上に摺動部材23を載置するとともに、インクを供給する。
【0029】
摺動部材23としては、各種動力機構において相手部材に対して摺動する部材であって、例えば自動車用としては、ピストン、ピストンリング、カムシャフト、バルブリフター、シリンダライナ、コンロッド、クランクシャフト、ベアリング、軸受けメタル、チェーン、スプロケット、チェーンガイド、ギヤなどが挙げられる。また、摺動部材23と相手部材との組み合わせとしては、例えば、ピストンとシリンダライナ、軸受けメタルとクランクシャフトなどの組み合わせが挙げられる。
【0030】
そして、摺動部材23は、相手部材に対して摺動する方向(摺動方向)がベルトコンベア2の移送方向に平行となるように、かつ、相手部材に対する摺動面24を上方に向けた姿勢で載置する。
インクは、スキージ7の上面19に乗るようにインク供給部5から供給され、供給後、スキージ7の傾斜を利用して版ロール6の周面9に達して滞留する。
【0031】
次いで、図5に示すように、ベルトコンベア2を駆動させるとともに、版ロール6およびブランケット8を回転させる。
ベルトコンベア2の速度(移送速度)は、版ロール6およびブランケット8の回転数によって異なるが、例えば、0.5〜3m/sである。
版ロール6およびブランケット8は、例えば、摺動部材の用途などに応じて適宜定められる回転数によって、互いに密着状態を保持した状態で同期回転する。
【0032】
版ロール6の右回り回転によって、固定状態のスキージ7が、版ロール6の周方向に沿って、版ロール6に対して相対的に上記回転数で他方向(左回り)に移動するので、版ロール6の周方向一方向(右回り)へ向かうインクの流れが発生する。そのため、周面9付近に滞留するインクは、その一部が流れを利用して円状溝10に送り込まれ、円状溝10に入り切らない残りがスキージ7によって摺り切られる。
【0033】
版ロール6の円状溝10にインクの流れが生じ、そのインクの流れによってカーボンナノファイバ(CNF)が流れ方向と平行に配向するので、スキージ7の下流側では、円状溝10の長手方向に沿って配向したカーボンナノファイバを含有するインクが、円状溝10に充填される(図5(b)参照)。
その後、版ロール6の回転とともに充填されたインクが回転し、版ロール6とブランケット8との密着部分に達すると、図6に示すように、カーボンナノファイバの配向状態を維持したまま、インクがブランケット8の周面20に受理される。
【0034】
インクの受理後、摺動部材23がブランケット8の下方に達し、摺動面24とブランケット8の最下部22とが接触すると、図7に示すように、カーボンナノファイバの配向状態を維持したまま、インクがブランケット8から摺動面24に転写されてインク層25が形成される。
その後、図8に示すように、摺動部材23をヒータ4に搬入し、例えば、80〜100℃で5〜15分間仮焼成し、例えば、180〜240℃で60〜120分間本焼成する。これにより、インク層25中の溶剤成分が蒸発し、摺動面24には固形分からなる摺動皮膜のコート層26が形成される。
【0035】
以上のように、上記の方法によれば、版ロール6を右回り回転させることによって、固定状態のスキージ7を、版ロール6の周方向に沿って、版ロール6に対して相対的に上記回転数で他方向(左回り)に移動させる。そのため、版ロール6の周方向一方向(右回り)へ向かうインクの流れが発生させることができる。そして、その流れを利用してインクの一部が円状溝10に送り込まれるので、インク中のカーボンナノファイバを円状溝10の長手方向に沿って配向させることができる。しかも、オフセット印刷機構を利用してその流れを発生できるため、磁場の発生が不要である。その結果、設備や材料の制約が少なく、カーボンナノファイバの配向を円状溝10の長手方向に沿って揃えることができる。
【0036】
そして、上記の形成方法によって得られる摺動部材23の摺動面24には、カーボンナノファイバの配向の揃った摺動皮膜のコート層26が形成される。
カーボンナノファイバの配向性は、例えば、コート層26に含まれる全カーボンナノファイバ中、摺動方向に対する傾斜角度が+−(プラスマイナス)20°未満のカーボンナノファイバが占める割合(%)で判断することができ、このコート層26では、例えば、60〜90%である。
【0037】
このように、摺動皮膜(コート層26)におけるカーボンナノファイバの含有量を増加させなくても、カーボンナノファイバの配向と摺動部材23の摺動方向とを一致させることによって、コストの増加および機械的物性の低下を抑制することができながら、摺動部材23の摺動性を向上させることができる。
(第2の実施形態)
1.装置構成
図9は、本発明の第2の実施形態に係る方法に使用される摺動皮膜形成装置の概略構成図であって(a)全体図(b)CNFの配向状態を示す直線溝の拡大図である。
【0038】
摺動皮膜形成装置31は、皮膜形成部33を備えている。
皮膜形成部33は、例えば、オフセット印刷機構によって摺動部材に皮膜を形成するものであって、インク供給部35と、基版36と、スキージ37と、ブランケット38とを備えている。
インク供給部35には、第1の実施形態と同様のインクが充填される。
【0039】
基版36は、四角平板状に形成され、その上面39には、一の辺からそれに対向する辺に至るまで直線状に延びる直線溝40が互いに間隔を隔てて複数形成されている。直線溝40の数は、摺動部材の用途などに応じて適宜定められる。なお、図9では、図解し易くする目的で数本の直線溝40だけを示している。
各直線溝40は、例えば、第1の実施形態と同様に断面V字状に形成されている。また、溝幅w、溝の深さd、溝ピッチpなども第1の実施形態と同様である。また、基版36は、滑らないように固定されている。
【0040】
スキージ37は、三角柱状に形成され、例えば、第1の実施形態と同様の材料を用いて形成されている。スキージ37は、その長手方向が直線溝40の長手方向に直交するように配置され、2つの側面41によって形成される稜線42が、直線溝40全体を横切るように基版36の上面39に当接している。また、スキージ37は、基版36の上面39と平行な方向にスライド自在とされている。
【0041】
ブランケット38は、円柱状に形成され、その周面43が、例えば、第1の実施形態と同様のシートによって形成されている。
ブランケット38は、その円柱軸が直線溝40の長手方向と直交するように配置され、その周面43が基版36の上面39に対して線接触している。そして、円柱軸を回転軸として一方向(例えば、右回り)に回転可能、かつ、基版36の上面39と平行な方向にスライド自在とされている。そのため、ブランケット38を回転させながらスライドさせることによって、ブランケット38の周面43を基版36の上面39全体に接触させることができる。
2.摺動皮膜の形成方法
次いで、摺動皮膜形成装置31によって摺動部材に摺動皮膜を形成する方法を説明する。
【0042】
この摺動皮膜形成装置31では、基版36の上面39におけるスキージ37の配置位置よりも下流側にインクを供給し、その後、スキージ37を、直線溝40の長手方向に沿って、固定状態の基版36に対して相対的に下流側へスライドさせる。これによって、基版36の上流側へ向かうインクの流れが発生する。そのため、上面39に供給されたインクは、その一部が流れを利用して直線溝40に送り込まれ、直線溝40に入り切らない残りがスキージ37によって摺り切られる。
【0043】
基版36の直線溝40にインクの流れが生じ、そのインクの流れによってカーボンナノファイバ(CNF)が流れ方向と平行に配向するので、スキージ37の上流側では、直線溝40の長手方向に沿って配向したカーボンナノファイバを含有するインクが、直線溝40に充填される(図9(b)参照)。
次いで、ブランケット38を回転させながら基版36の上流側から下流側へスライドさせることによって、直線溝40に充填されたインクが、カーボンナノファイバの配向状態を維持したまま、ブランケット38の周面43に受理される。その後は、第1の実施形態の方法にしたがって、ブランケット38に受理されたインクを、摺動部材23の摺動面24に転写し、摺動部材23をヒータ34で仮焼成・本焼成することによって、摺動面24に摺動皮膜のコート層26(図9では図示を省略)を形成することができる。
【0044】
この第2の実施形態によれば、スキージ37のスライド動作によって、基版36の上流側へ向かうインクの流れを発生させることができる。そして、その流れを利用してインクの一部が直線溝40に送り込まれるので、インク中のカーボンナノファイバを直線溝40の長手方向に沿って配向させることができる(図9(b)参照)。しかも、オフセット印刷機構を利用してその流れを発生させることができるため、磁場の発生が不要である。その結果、設備や材料の制約が少なく、カーボンナノファイバの配向を直線溝40の長手方向に沿って揃えることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜設計を変形することができる。
例えば、摺動皮膜は、摺動部材23に直接形成するコート層26である必要はなく、摺動皮膜形成装置1,31を利用してガラス板などの基材上に皮膜を形成し、基材から剥離することによって、皮膜シートとして得ることもできる。
【0046】
また、第1の実施形態において、コート層26が形成された摺動部材23をベルトコンベア2の上流端に戻し、皮膜形成部3およびヒータ4を繰返し通過させることによって、複数層の皮膜コート層を形成することができる。
また、第1の実施形態において、版ロール6の周囲長をブランケット8の周囲長の倍数に定め、これらを同期回転させてブランケット8の周面20に複数のインク層を形成し、そのインクを一度に摺動部材23に転写することによって、複数層の皮膜コート層を摺動部材23に形成することもできる。
【0047】
また、版ロール6に形成される溝は、版ロール6の周面9を一周していなくてもよく、版ロール6の周方向に沿って断続的に形成されていてもよい。
【実施例】
【0048】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
実施例1
(1)装置構成
図1に示した構成を有するオフセット印刷機(手動)を用いた。ただし、各部の条件を以下のように設計した。
【0049】
版ロール:直径D1=20cm 軸長さL1=15cm
溝の本数=約4000本 溝幅w=15μm 溝ピッチp=50μm
溝の深さd=4.3μm 溝挟角α=120°
スキージ:SUS製 当接角β=80°
ブランケット:シリコンゴムシートによって周面が形成された汎用ブランケット
直径D2=20cm 軸長さL2=15cm
(2)インクの調製
カーボンナノファイバ(昭和電工株式会社製 VGCF−H 繊維長6μm 繊維径150nm)およびポリアミドイミド樹脂(以上、固形分)を、N−メチルピロリドン(NMP)に投入することによってインクを調製した(粘度η=1.5Pa・s)。
【0050】
ただし、インク全量に対する固形分およびNMPの重量割合は、固形分30重量%、NMP70重量%とした。また、固形分全量に対する各成分の重量割合は、カーボンナノファイバ10重量%、ポリアミドイミド樹脂90重量%とした。
(3)摺動皮膜の形成
(2)で調製したインクをスキージ上に供給した。次いで、摺動部材(厚さ2mm、サイズ100mm×100mmのガラス板)を移送速度1m/sで移送するとともに、版ロールおよびブランケットの回転を開始し、95rpmの回転数で同期回転させた。これによって、版ロールの円状溝に充填されたインクをブランケットの周面で受理させ、その後、ブランケット周面とガラス板の表面との接触によって、インクをガラス板の表面に転写した。
【0051】
その後、ガラス板を加熱炉に搬入した。加熱炉では、90℃で5分間仮焼成した後、200℃で90分間本焼成した。
以上の工程を経ることによって、ガラス板の表面にカーボンナノファイバを含有する皮膜シートを形成した。
実施例2
版ロールの溝幅w=30μmに設計したこと以外は、実施例1と同様の装置およびインクを用い、また、同様の工程を実行することによって、ガラス板の表面に皮膜シートを形成した。
配向性評価
実施例1および2で得られた皮膜シートに対して、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて電子線をあて、それによって作り出される像を撮影した。撮影された写真を図10(実施例1)および図11(実施例2)に示す。
【0052】
図10および図11によると、実施例1および2のいずれにおいても、多数のカーボンナノファイバ(CNF)が摺動方向に沿って配向していることが確認された。とりわけ、実施例1の方が配向性に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0053】
6 版ロール
7 スキージ
10 円状溝
23 摺動部材
24 摺動面
25 コート層
36 基版
37 スキージ
40 直線溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動皮膜の形成方法およびそれにより得られる摺動皮膜を有する摺動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノカーボン材料は、靭性、低摩擦性などの物性に優れることから、摺動部材の摺動皮膜材料として注目されており、摺動部材の摺動方向にナノカーボン材料を配向させることによって、摺動皮膜の摺動性のさらなる向上が期待されている。
従来、ナノカーボン材料の配向を揃える方法として、摺動皮膜とは異なる工業製品に関する方法が種々提案されている。
【0003】
例えば、シート状の導電コネクタの製造工程において、成形中のマトリックス成分とカーボンナノチューブとの配合物に均一平行磁場を与えることによって、その平行磁場に沿ってカーボンナノチューブを配向させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、部材表面に熱伝導皮膜を形成する工程において、ナノカーボン材料と樹脂との混合粉末を部材表面に溶射することによって衝突させ、衝突後に部材表面を流れる溶融樹脂の流れを利用して、その流れ方向に沿ってナノカーボン材料を配向させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−255600号公報
【特許文献2】特開2004−188286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、平行磁場を利用する方法は、磁場を発生させるための装置が必要となるため、設備に制約される。さらに、金属フィラーなどの磁性材料がカーボンナノチューブとともに配合される場合があるため、平行磁場の影響によって磁性材料の磁化現象が生じるおそれがある。そのため、上記方法を利用して摺動皮膜を形成する場合には、皮膜材料にも制約される。
【0006】
一方、溶融樹脂の流れを利用する方法では、部材表面に衝突した溶融樹脂が、外力を受けずに流れる。そのため、溶射条件が異なる溶融樹脂を、様々な形状の部材表面に規則的に流動させ、ナノカーボン材料の配向を揃えることはやはり困難である。これに対して、ナノカーボン材料の含有量を増加させれば、配向のばらつきが多少生じていても摺動皮膜の摺動性を向上させることができる。しかし、ナノカーボン材料の含有量が多すぎると、コストの増加、機械特性の低下などの不具合が生じる。
【0007】
本発明の目的は、設備や材料の制約が少なく、カーボンナノファイバの配向を揃えることができる摺動皮膜の形成方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、コストの増加および機械的物性の低下を抑制することができながら、摺動性を向上させることのできる摺動部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の摺動皮膜の形成方法は、カーボンナノファイバおよび熱硬化性樹脂を含有するインクを、長手方向に延びる溝が形成された基版上に供給する工程と、インクの供給後、前記長手方向に交差する方向に配置されたスキージを、前記長手方向に沿って前記基版に対して相対的に移動させる工程とを備えることを特徴としている。
【0009】
この方法によれば、スキージを、溝の長手方向に沿って基版に対して相対的に移動させることによって、溝の長手方向に沿うインクの流れを発生させることができる。そして、その流れを利用してインクが溝に送り込まれるので、インク中のカーボンナノファイバを溝の長手方向に沿って配向させることができる。しかも、その流れを発生させるために磁場の発生が不要なので、設備や材料の制約が少なく、カーボンナノファイバの配向を溝の長手方向に沿って揃えることができる。
【0010】
また、本発明の摺動皮膜の形成方法では、前記溝の幅が、前記カーボンナノファイバの繊維長に対して2〜3倍であることが好適である。
この方法では、溝の幅をカーボンナノファイバの繊維長に対して2〜3倍とすることによって、カーボンナノファイバを除くインクの含有成分の収容スペースを溝に十分確保しながら、溝の長手方向に対するカーボンナノファイバの配向度合を向上させることができる。
【0011】
さらに、本発明の摺動部材は、相手部材に対して摺動する摺動部材であって、前記摺動部材の摺動面には、上記摺動皮膜の形成方法によって得られる摺動皮膜が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、摺動皮膜が上記摺動皮膜の形成方法によって得られるので、摺動面には、カーボンナノファイバの配向の揃った摺動皮膜が形成される。そのため、摺動皮膜におけるカーボンナノファイバの含有量を増加させなくても、カーボンナノファイバの配向と摺動部材の摺動方向とを一致させることによって、コストの増加および機械的物性の低下を抑制することができながら、摺動部材の摺動性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の摺動皮膜の形成方法によれば、インク中のカーボンナノファイバを溝の長手方向に沿って配向させることができる。しかも、その流れを発生させるために磁場の発生が不要なので、設備や材料の制約が少なく、カーボンナノファイバの配向を溝の長手方向に沿って揃えることができる。
また、本発明の摺動部材によれば、摺動皮膜におけるカーボンナノファイバの含有量を増加させなくても、カーボンナノファイバの配向と摺動部材の摺動方向とを一致させることによって、コストの増加および機械的物性の低下を抑制することができながら、摺動部材の摺動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る方法に使用される摺動皮膜形成装置の概略構成図である。
【図2】(a)版ロールを斜め上方から見た斜視図、(b)b−bで示される切断線によって版ロールを切断したときの断面図である。
【図3】版ロールに対するスキージの配置形態を説明するための図である。
【図4】インクを供給する工程における摺動皮膜形成装置の動作図である。
【図5】版ロールへインクを充填する工程における摺動皮膜形成装置の動作図であって、(a)全体図(b)版ロールの拡大図である。
【図6】ブランケットへインクを受理させる工程における摺動皮膜形成装置の動作図である。
【図7】摺動部材へインクを転写する工程における摺動皮膜形成装置の動作図である。
【図8】摺動部材を焼成する工程における摺動皮膜形成装置の動作図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る方法に使用される摺動皮膜形成装置の概略構成図であって(a)全体図(b)CNFの配向状態を示す直線溝の拡大図である。
【図10】実施例1の摺動皮膜シートの透過顕微鏡写真である。
【図11】実施例2の摺動皮膜シートの透過顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
1.装置構成
図1は、本発明の第1の実施形態に係る方法に使用される摺動皮膜形成装置の概略構成図である。図2(a)は、版ロールを斜め上方から見た斜視図、(b)は、b−bで示される切断線によって版ロールを切断したときの断面図である。図3は、版ロールに対するスキージの配置形態を説明するための図である。
【0015】
摺動皮膜形成装置1は、上流側から下流側へ摺動部材を移送するためのベルトコンベア2と、ベルトコンベア2の途中に設けられた皮膜形成部3と、ベルトコンベア2の下流端よりも後側に設けられたヒータ4とを備えている。
皮膜形成部3は、例えば、オフセット印刷機構によって摺動部材に皮膜を形成するものであって、インク供給部5と、基版としての版ロール6と、スキージ7と、ブランケット8とを備えている。
【0016】
インク供給部5には、カーボンナノファイバ(CNF)、熱硬化性樹脂および溶剤を含有するインクが充填される。
カーボンナノファイバとは、例えば、繊維長5μm以上、好ましくは、6〜10μmのカーボン繊維である。また、繊維径は、例えば、80nm以上、好ましくは、100〜150nmである。具体的な市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製 VGCF、VGCF−Hなどが挙げられる。
【0017】
熱硬化性樹脂としては、例えば、一般的な熱硬化性樹脂、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フルフラール樹脂、シリコーン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、キシレン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらは単独使用または2種以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0018】
溶剤としては、使用する熱硬化性樹脂に適したものが用いられ、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性極性溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、イソホロン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)などのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、フタル酸ジメチルなどのエステル類、エタノール、メタノール、ブタノールなどのアルコール類が挙げられる。これらは単独使用または2種以上併用することができる。熱硬化性樹脂と溶剤との組み合わせとしては、例えば、ポリアミドイミド樹脂に対してNMPおよび/またはDMF、エポキシ樹脂に対してブタノールおよび/またはMIBKなどが挙げられる。
【0019】
また、インクは、必要により固体潤滑剤などの添加剤を含有することができる。
固体潤滑剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、二硫化モリブデン(MoS2)などが挙げられる。
そして、インクを調製するには、例えば、カーボンナノファイバ、熱硬化性樹脂および必要により添加剤(以上、固形分)を、溶剤に投入する。固形分の投入量は、インク全量に対する固形分の重量割合が、例えば、30〜80重量%である。また、固形分全量に対する各成分の重量割合は、例えば、カーボンナノファイバが0.1〜20重量%であり、好ましくは、1〜10重量%である。また、熱硬化性樹脂が60〜99.9重量%である。
【0020】
上記の方法によって、固形分が分散したインクを得ることができる。得られるインクのJIS Z8803によって測定される粘度ηは、例えば、1〜20Pa・s、好ましくは、1.5〜10Pa・sである。
版ロール6は、円柱状に形成され、その周面9には、版ロール6を周方向に一周する円状溝10が版ロール6の軸方向に間隔を隔てて複数形成されている。円状溝10の数は、摺動部材の用途などに応じて適宜定められる。なお、図2では、図解し易くする目的で数本の円状溝10だけを示している。
【0021】
各円状溝10は、1本の稜線11を形成する2つの合同な傾斜面12が切り出されることによって、断面V字状に形成されている。2つの傾斜面12の挟角α(溝挟角α)は、例えば、90〜120°である。
円状溝10の幅(溝幅w)は、例えば、インク供給部5に充填されるインクによって異なるが、例えば、カーボンナノファイバの繊維長に対して、2〜3倍である。具体的な幅の一例は、例えば、10〜30μm、好ましくは、12〜18μmである。溝幅wが上記した大きさであれば、カーボンナノファイバの配向性を向上できるとともに、調製するインクの選択肢を増加させることができる。例えば、溝幅wが3倍以下のとき、カーボンナノファイバが円状溝10の長手方向に沿って配列しやすくなるので、配向性を向上させることができる。一方、溝幅wが2倍以上のとき、インクが多種類の成分を含有していても、インクを円状溝10に効率よく送り込むことができる。そのため、インクの含有物に制約が少なく、多種多様のインクを調製して使用することができる。
【0022】
また、円状溝10の深さd(円状溝10の稜線11から版ロール6の周面9までの距離)は、例えば、3〜15μmである。
そして、複数の円状溝10は、版ロール6の軸方向に沿って等しい溝ピッチpで設けられている。溝ピッチp(一の円状溝10の稜線11とその円状溝10に隣接する円状溝10の稜線11との距離)は、例えば、10〜100μmである。また、版ロール6の直径D1は、例えば、10〜30cmであり、版ロール6の軸長さL1は、例えば、10〜30cmである。
【0023】
上記のような版ロール6は、円柱軸がベルトコンベア2の移送方向と直交するように(円状溝10の長手方向が移送方向と平行となるように)配置され、円柱軸を回転軸として一方向(例えば、右回り)に回転可能に設けられている。
スキージ7は、長方形平板状に形成され、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの弾性材料、SUSなどの金属、プラスチック、セラミックスなどを用いて形成されている。これらの材料は、インクの粘度ηなどに合わせて適したものが用いられる。
【0024】
スキージ7は、その長辺が円状溝10の長手方向(版ロール6の周方向)に直交するように配置され、円状溝10全体を横切るように長辺側の縁部13が版ロール6の周面9に当接した状態で固定されている。周面9におけるスキージ7の当接位置は、例えば、図3に示すように、版ロール6の周面9がその最頂部14を起点にして周方向に4等分され、各部分が最頂部14から回転方向に第1部分15(右上部分)、第2部分16(右下部分)、第3部分17(左下部分)および第4部分18(左上部分)と定められる場合、第1部分15もしくは第2部分16であることが好ましい。
【0025】
また、その当接位置における接線lと、スキージ7の上面19とがなす回転方向上流側の角度β(当接角β)は、摺動部材の用途などに応じて適宜定められる。
ブランケット8は、円柱状に形成され、その周面20が、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどの絶縁ゴムからなるシートによって形成されている。
ブランケット8は、その円柱軸が版ロール6の円柱軸と平行な状態で配置され、その周面20が版ロール6の周面9に対して線接触している。そして、円柱軸を回転軸として他方向(例えば、左回り)に回転可能とされている。そのため、版ロール6の回転数とブランケット8の回転数とを等しく制御することによって、周面9,20同士を密着させた状態でこれらを同期回転させることができる。
【0026】
また、版ロール6の周面9におけるブランケット8の接触位置は、スキージ7よりも下流側かつ周面9の最下部21よりも上流側であることが好ましく、具体的には、版ロール6の周面9の第2部分16であることが好ましい。これにより、インクが版ロール6の円状溝10から落下することが少なく、インクを効率よくブランケット8の周面20で受理することができる。
【0027】
また、ブランケット8の直径D2および軸長さL2は、例えば、版ロール6と同じ(直径D2:10〜30cm、軸長さL2:10〜30cm)である。
上記のような皮膜形成部3全体としての位置は、例えば、摺動部材23の大きさ・形状に合わせて、版ロール6、スキージ7およびブランケット8を一体的に移動させることによって、摺動部材23の摺動面24(後述)とブランケット8の最下部22とが接触可能な大きさの空間が設けられるように調節される。
【0028】
ヒータ4としては、摺動皮膜を乾燥するための公知の加熱炉を適用できる。
2.摺動皮膜の形成方法
次いで、図1に示す摺動皮膜形成装置1によって摺動部材に摺動皮膜を形成する方法を説明する。
まず、図4に示すように、ベルトコンベア2上に摺動部材23を載置するとともに、インクを供給する。
【0029】
摺動部材23としては、各種動力機構において相手部材に対して摺動する部材であって、例えば自動車用としては、ピストン、ピストンリング、カムシャフト、バルブリフター、シリンダライナ、コンロッド、クランクシャフト、ベアリング、軸受けメタル、チェーン、スプロケット、チェーンガイド、ギヤなどが挙げられる。また、摺動部材23と相手部材との組み合わせとしては、例えば、ピストンとシリンダライナ、軸受けメタルとクランクシャフトなどの組み合わせが挙げられる。
【0030】
そして、摺動部材23は、相手部材に対して摺動する方向(摺動方向)がベルトコンベア2の移送方向に平行となるように、かつ、相手部材に対する摺動面24を上方に向けた姿勢で載置する。
インクは、スキージ7の上面19に乗るようにインク供給部5から供給され、供給後、スキージ7の傾斜を利用して版ロール6の周面9に達して滞留する。
【0031】
次いで、図5に示すように、ベルトコンベア2を駆動させるとともに、版ロール6およびブランケット8を回転させる。
ベルトコンベア2の速度(移送速度)は、版ロール6およびブランケット8の回転数によって異なるが、例えば、0.5〜3m/sである。
版ロール6およびブランケット8は、例えば、摺動部材の用途などに応じて適宜定められる回転数によって、互いに密着状態を保持した状態で同期回転する。
【0032】
版ロール6の右回り回転によって、固定状態のスキージ7が、版ロール6の周方向に沿って、版ロール6に対して相対的に上記回転数で他方向(左回り)に移動するので、版ロール6の周方向一方向(右回り)へ向かうインクの流れが発生する。そのため、周面9付近に滞留するインクは、その一部が流れを利用して円状溝10に送り込まれ、円状溝10に入り切らない残りがスキージ7によって摺り切られる。
【0033】
版ロール6の円状溝10にインクの流れが生じ、そのインクの流れによってカーボンナノファイバ(CNF)が流れ方向と平行に配向するので、スキージ7の下流側では、円状溝10の長手方向に沿って配向したカーボンナノファイバを含有するインクが、円状溝10に充填される(図5(b)参照)。
その後、版ロール6の回転とともに充填されたインクが回転し、版ロール6とブランケット8との密着部分に達すると、図6に示すように、カーボンナノファイバの配向状態を維持したまま、インクがブランケット8の周面20に受理される。
【0034】
インクの受理後、摺動部材23がブランケット8の下方に達し、摺動面24とブランケット8の最下部22とが接触すると、図7に示すように、カーボンナノファイバの配向状態を維持したまま、インクがブランケット8から摺動面24に転写されてインク層25が形成される。
その後、図8に示すように、摺動部材23をヒータ4に搬入し、例えば、80〜100℃で5〜15分間仮焼成し、例えば、180〜240℃で60〜120分間本焼成する。これにより、インク層25中の溶剤成分が蒸発し、摺動面24には固形分からなる摺動皮膜のコート層26が形成される。
【0035】
以上のように、上記の方法によれば、版ロール6を右回り回転させることによって、固定状態のスキージ7を、版ロール6の周方向に沿って、版ロール6に対して相対的に上記回転数で他方向(左回り)に移動させる。そのため、版ロール6の周方向一方向(右回り)へ向かうインクの流れが発生させることができる。そして、その流れを利用してインクの一部が円状溝10に送り込まれるので、インク中のカーボンナノファイバを円状溝10の長手方向に沿って配向させることができる。しかも、オフセット印刷機構を利用してその流れを発生できるため、磁場の発生が不要である。その結果、設備や材料の制約が少なく、カーボンナノファイバの配向を円状溝10の長手方向に沿って揃えることができる。
【0036】
そして、上記の形成方法によって得られる摺動部材23の摺動面24には、カーボンナノファイバの配向の揃った摺動皮膜のコート層26が形成される。
カーボンナノファイバの配向性は、例えば、コート層26に含まれる全カーボンナノファイバ中、摺動方向に対する傾斜角度が+−(プラスマイナス)20°未満のカーボンナノファイバが占める割合(%)で判断することができ、このコート層26では、例えば、60〜90%である。
【0037】
このように、摺動皮膜(コート層26)におけるカーボンナノファイバの含有量を増加させなくても、カーボンナノファイバの配向と摺動部材23の摺動方向とを一致させることによって、コストの増加および機械的物性の低下を抑制することができながら、摺動部材23の摺動性を向上させることができる。
(第2の実施形態)
1.装置構成
図9は、本発明の第2の実施形態に係る方法に使用される摺動皮膜形成装置の概略構成図であって(a)全体図(b)CNFの配向状態を示す直線溝の拡大図である。
【0038】
摺動皮膜形成装置31は、皮膜形成部33を備えている。
皮膜形成部33は、例えば、オフセット印刷機構によって摺動部材に皮膜を形成するものであって、インク供給部35と、基版36と、スキージ37と、ブランケット38とを備えている。
インク供給部35には、第1の実施形態と同様のインクが充填される。
【0039】
基版36は、四角平板状に形成され、その上面39には、一の辺からそれに対向する辺に至るまで直線状に延びる直線溝40が互いに間隔を隔てて複数形成されている。直線溝40の数は、摺動部材の用途などに応じて適宜定められる。なお、図9では、図解し易くする目的で数本の直線溝40だけを示している。
各直線溝40は、例えば、第1の実施形態と同様に断面V字状に形成されている。また、溝幅w、溝の深さd、溝ピッチpなども第1の実施形態と同様である。また、基版36は、滑らないように固定されている。
【0040】
スキージ37は、三角柱状に形成され、例えば、第1の実施形態と同様の材料を用いて形成されている。スキージ37は、その長手方向が直線溝40の長手方向に直交するように配置され、2つの側面41によって形成される稜線42が、直線溝40全体を横切るように基版36の上面39に当接している。また、スキージ37は、基版36の上面39と平行な方向にスライド自在とされている。
【0041】
ブランケット38は、円柱状に形成され、その周面43が、例えば、第1の実施形態と同様のシートによって形成されている。
ブランケット38は、その円柱軸が直線溝40の長手方向と直交するように配置され、その周面43が基版36の上面39に対して線接触している。そして、円柱軸を回転軸として一方向(例えば、右回り)に回転可能、かつ、基版36の上面39と平行な方向にスライド自在とされている。そのため、ブランケット38を回転させながらスライドさせることによって、ブランケット38の周面43を基版36の上面39全体に接触させることができる。
2.摺動皮膜の形成方法
次いで、摺動皮膜形成装置31によって摺動部材に摺動皮膜を形成する方法を説明する。
【0042】
この摺動皮膜形成装置31では、基版36の上面39におけるスキージ37の配置位置よりも下流側にインクを供給し、その後、スキージ37を、直線溝40の長手方向に沿って、固定状態の基版36に対して相対的に下流側へスライドさせる。これによって、基版36の上流側へ向かうインクの流れが発生する。そのため、上面39に供給されたインクは、その一部が流れを利用して直線溝40に送り込まれ、直線溝40に入り切らない残りがスキージ37によって摺り切られる。
【0043】
基版36の直線溝40にインクの流れが生じ、そのインクの流れによってカーボンナノファイバ(CNF)が流れ方向と平行に配向するので、スキージ37の上流側では、直線溝40の長手方向に沿って配向したカーボンナノファイバを含有するインクが、直線溝40に充填される(図9(b)参照)。
次いで、ブランケット38を回転させながら基版36の上流側から下流側へスライドさせることによって、直線溝40に充填されたインクが、カーボンナノファイバの配向状態を維持したまま、ブランケット38の周面43に受理される。その後は、第1の実施形態の方法にしたがって、ブランケット38に受理されたインクを、摺動部材23の摺動面24に転写し、摺動部材23をヒータ34で仮焼成・本焼成することによって、摺動面24に摺動皮膜のコート層26(図9では図示を省略)を形成することができる。
【0044】
この第2の実施形態によれば、スキージ37のスライド動作によって、基版36の上流側へ向かうインクの流れを発生させることができる。そして、その流れを利用してインクの一部が直線溝40に送り込まれるので、インク中のカーボンナノファイバを直線溝40の長手方向に沿って配向させることができる(図9(b)参照)。しかも、オフセット印刷機構を利用してその流れを発生させることができるため、磁場の発生が不要である。その結果、設備や材料の制約が少なく、カーボンナノファイバの配向を直線溝40の長手方向に沿って揃えることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜設計を変形することができる。
例えば、摺動皮膜は、摺動部材23に直接形成するコート層26である必要はなく、摺動皮膜形成装置1,31を利用してガラス板などの基材上に皮膜を形成し、基材から剥離することによって、皮膜シートとして得ることもできる。
【0046】
また、第1の実施形態において、コート層26が形成された摺動部材23をベルトコンベア2の上流端に戻し、皮膜形成部3およびヒータ4を繰返し通過させることによって、複数層の皮膜コート層を形成することができる。
また、第1の実施形態において、版ロール6の周囲長をブランケット8の周囲長の倍数に定め、これらを同期回転させてブランケット8の周面20に複数のインク層を形成し、そのインクを一度に摺動部材23に転写することによって、複数層の皮膜コート層を摺動部材23に形成することもできる。
【0047】
また、版ロール6に形成される溝は、版ロール6の周面9を一周していなくてもよく、版ロール6の周方向に沿って断続的に形成されていてもよい。
【実施例】
【0048】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
実施例1
(1)装置構成
図1に示した構成を有するオフセット印刷機(手動)を用いた。ただし、各部の条件を以下のように設計した。
【0049】
版ロール:直径D1=20cm 軸長さL1=15cm
溝の本数=約4000本 溝幅w=15μm 溝ピッチp=50μm
溝の深さd=4.3μm 溝挟角α=120°
スキージ:SUS製 当接角β=80°
ブランケット:シリコンゴムシートによって周面が形成された汎用ブランケット
直径D2=20cm 軸長さL2=15cm
(2)インクの調製
カーボンナノファイバ(昭和電工株式会社製 VGCF−H 繊維長6μm 繊維径150nm)およびポリアミドイミド樹脂(以上、固形分)を、N−メチルピロリドン(NMP)に投入することによってインクを調製した(粘度η=1.5Pa・s)。
【0050】
ただし、インク全量に対する固形分およびNMPの重量割合は、固形分30重量%、NMP70重量%とした。また、固形分全量に対する各成分の重量割合は、カーボンナノファイバ10重量%、ポリアミドイミド樹脂90重量%とした。
(3)摺動皮膜の形成
(2)で調製したインクをスキージ上に供給した。次いで、摺動部材(厚さ2mm、サイズ100mm×100mmのガラス板)を移送速度1m/sで移送するとともに、版ロールおよびブランケットの回転を開始し、95rpmの回転数で同期回転させた。これによって、版ロールの円状溝に充填されたインクをブランケットの周面で受理させ、その後、ブランケット周面とガラス板の表面との接触によって、インクをガラス板の表面に転写した。
【0051】
その後、ガラス板を加熱炉に搬入した。加熱炉では、90℃で5分間仮焼成した後、200℃で90分間本焼成した。
以上の工程を経ることによって、ガラス板の表面にカーボンナノファイバを含有する皮膜シートを形成した。
実施例2
版ロールの溝幅w=30μmに設計したこと以外は、実施例1と同様の装置およびインクを用い、また、同様の工程を実行することによって、ガラス板の表面に皮膜シートを形成した。
配向性評価
実施例1および2で得られた皮膜シートに対して、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて電子線をあて、それによって作り出される像を撮影した。撮影された写真を図10(実施例1)および図11(実施例2)に示す。
【0052】
図10および図11によると、実施例1および2のいずれにおいても、多数のカーボンナノファイバ(CNF)が摺動方向に沿って配向していることが確認された。とりわけ、実施例1の方が配向性に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0053】
6 版ロール
7 スキージ
10 円状溝
23 摺動部材
24 摺動面
25 コート層
36 基版
37 スキージ
40 直線溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノファイバおよび熱硬化性樹脂を含有するインクを、長手方向に延びる溝が形成された基版上に供給する工程と、
インクの供給後、前記長手方向に交差する方向に配置されたスキージを、前記長手方向に沿って前記基版に対して相対的に移動させる工程とを備えることを特徴とする摺動皮膜の形成方法。
【請求項2】
前記溝の幅が、前記カーボンナノファイバの繊維長に対して2〜3倍であることを特徴とする、請求項1に記載の摺動皮膜の形成方法。
【請求項3】
相手部材に対して摺動する摺動部材であって、
前記摺動部材の摺動面には、請求項1および2に記載の摺動皮膜の形成方法によって得られる摺動皮膜が形成されていることを特徴とする、摺動部材。
【請求項1】
カーボンナノファイバおよび熱硬化性樹脂を含有するインクを、長手方向に延びる溝が形成された基版上に供給する工程と、
インクの供給後、前記長手方向に交差する方向に配置されたスキージを、前記長手方向に沿って前記基版に対して相対的に移動させる工程とを備えることを特徴とする摺動皮膜の形成方法。
【請求項2】
前記溝の幅が、前記カーボンナノファイバの繊維長に対して2〜3倍であることを特徴とする、請求項1に記載の摺動皮膜の形成方法。
【請求項3】
相手部材に対して摺動する摺動部材であって、
前記摺動部材の摺動面には、請求項1および2に記載の摺動皮膜の形成方法によって得られる摺動皮膜が形成されていることを特徴とする、摺動部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−194466(P2010−194466A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42825(P2009−42825)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】
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