説明

摺動蓋付き注出容器

【課題】 摺動蓋付き注出容器において、容器本体内の内容物の残量が少なくなったことを判断できるようにして、使用の途中で内容物が無くなることによる不便の発生を、未然に防止することを目的とする。
【解決手段】 ノズルヘッド付きポンプ3を組付けた、遮光性を有する容器本体1の胴部2に、摺動蓋6を密摺動可能に内装すると共に、底蓋11を固定し、摺動蓋6と底蓋11との間に配置したコイルバネ体16の片方の端部を、摺動蓋6が上昇限度間近に達した位置で、離脱により揺動変位自在とし、このコイルバネ体16の揺動変位による周囲部分への突き当りによる衝撃音や衝撃触感により、内容物の残量が少なくなったことを、内容物が無くなる前に、確実に知ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収納した容器本体内に外気を吸い込むことなく、内容物を注出することのできる、摺動蓋付き注出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
嫌気性の化粧液とか歯磨き液等の内容物を収納して、ポンプに組付けられたノズルヘッドに対する押圧操作により、内容物を注出し、この注出した内容物の体積分だけ、容器本体内の内容物収納容積を減少させて、外気を吸い込むことなく、内容物の注出に伴う減圧の発生を防止して、良好な内容物注出動作を維持する注出容器がある。
【0003】
この注出容器の代表的な従来技術は、内容物の注出口を形成するノズルヘッドを有するポンプを、上端に組付けた容器本体内に、軸心方向に沿って密摺動可能に摺動蓋を嵌装組付けした構成となっており、摺動蓋の上位の容器本体内に内容物を収納するものとなっており、高粘度の内容物でも円滑に注出することができるように、摺動蓋を上方に付勢するバネが設けられている。
【特許文献1】特開2001−179139号公報
【0004】
上記従来技術の構成において、ノズルヘッドを押圧操作して内容物を注出し、ノズルヘッドの復帰動作により略定量の内容物が容器本体内からポンプ内に吸い上げられると、この内容物の吸い上げにより容器本体内に発生した減圧に従って、摺動蓋が上昇変位し、ポンプに吸い上げられた内容物の体積分だけ、容器本体内の内容物収納容積を減少させ、もって発生した減圧を消滅させ、これにより、以後の内容物の注出動作が円滑に達成できるようにする。
【0005】
この従来の注出容器は、容器の外観形状を一定に保持したまま、外気を吸い込むことなく、内容物の注出を達成することができるので、内容物の品質を劣化させることなく、一定した良好な使用状態を維持できる、と云う利点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、内容物を光から保護する等の目的から、容器本体遮光性を付与して容器本体を構成した場合、内容物の収納量の変化に関わりなく、容器本体の外観形状が一定不変であるので、内容物の残量を確認する手段が全くなく、このため使用の途中で内容物が無くなって、大いに不便する、と云う問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、容器本体に対する摺動蓋の密摺動により減圧発生を防止する、摺動蓋付き注出容器において、容器本体内の内容物の残量が一定量以下となったことを、確実に確認できるようにすることを技術的課題とし、もって使用の途中で内容物が無くなることによる不便の発生を、未然に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決する本発明の内、請求項1記載の発明の手段は、
内容物の注出口を形成するノズルヘッドを有するポンプを有すること、
このポンプを上端に組付けた、遮光性を有する容器本体を有すること、
この容器本体の胴部内に、軸心方向に沿って密摺動可能に嵌装する摺動蓋を有すること、
容器本体の胴部の下端開口部を、通気可能に強固に組付いて閉塞する底蓋を有すること、
この底蓋と摺動蓋の中央部分間に配置されたコイルバネ体を有すること、
このコイルバネ体の一端を、摺動蓋と底蓋の一方に離脱不能に結合する結合端とすると共に、反対側の端を、摺動蓋と底蓋の他方に離脱可能に当接する離脱端とすること、
コイルバネ体の自由長を、摺動蓋が上昇限度位置間近まで上昇変位した状態で、コイルバネ体の離脱端が、周囲部分に突き当たり可能に揺動変位する値に設定すること、
にある。
【0009】
この請求項1記載の発明においては、ノズルヘッドを押圧操作して、略一定量の内容物を注出すると共に、ポンプ内に容器本体内から略一定量の内容物を吸い上げると、容器本体内に減圧が発生し、この発生した減圧に従って、摺動蓋が容器本体内を上昇変位して、容器本体内の内容物収納空間の容積を、ポンプに吸い上げられた内容物の体積に相当する分だけ減少させ、これにより容器本体内の内容物収納空間に発生した減圧を消滅させる。
【0010】
このとき、コイルバネ体は、摺動蓋の上昇変位に従って延び変形する。
【0011】
このまま、内容物の注出が継続されて、摺動蓋が、容器本体の上端部分である、上昇限界位置間近に達すると、すなわち内容物の残量が少なくなる(数回の注出操作で無くなる程度)位置に達すると、コイルバネ体の離脱端が、摺動蓋または底蓋から離脱して、コイルバネ体の弾性変形により、自由に揺動変位することができる状態となる。
【0012】
それゆえ、この状態で、手に持った容器を振る等すると、コイルバネ体の離脱端が揺動変位して、胴部等の周囲部分に突き当たり、衝撃音や衝撃触感を発生するので、この衝撃音や衝撃触感を感知することにより、容器内の内容物の残量が少なくなったことを、正確に判断することができる。
【0013】
また、コイルバネ体は、摺動蓋の上側の内容物収納部分である容器本体内に位置するのではなく、内容物と全く接触することのない、摺動蓋の下側の容器本体内に位置するので、このコイルバネ体が、内容物に何らかの不都合を与える恐れは全くない。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に、コイルバネ体の径を、このコイルバネ体の自由長に対して、コイルバネ体の離脱端が、周囲部分である胴部に突き当たるまで揺動変位することができる値に設定した、ことを加えたものである。
【0015】
この請求項2記載の発明にあっては、コイルバネ体においては、基本的には、コイルバネ体の自由長寸法に対して、径寸法が小さいほど、コイルバネ体の離脱端を、大きく揺動変位させることができるので、コイルバネ体の自由長寸法に対して径寸法を適当に設定することにより、最も離れた周囲部分である胴部に対して、コイルバネ体の離脱端を、揺動変位により確実に突き当てることができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に、コイルバネ体の離脱端部分の径を、周囲部分である胴部の内径よりも少し小さい値に設定した、ことを加えたものである。
【0017】
この請求項3記載の発明にあっては、コイルバネ体の離脱端部分は、最も離れた周囲部分である胴部に近く位置した状態で、摺動蓋または底蓋に当接しているので、この摺動蓋または底蓋から離脱して揺動変位自在となると、コイルバネ体のわずかな弾性変形に従って、胴部に対して、確実に突き当たることになる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3記載の発明の構成に、コイルバネ体の反発力を、容器本体の胴部と摺動蓋との間の摺動抵抗力に比べて、充分に小さい値に設定した、ことを加えたものである。
【0019】
この請求項4記載の発明にあっては、コイルバネ体の反発力が、摺動蓋の動作に何らかの影響を与えることがなく、これにより摺動蓋を設定通りに作動させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
請求項1記載の発明にあっては、手に持った容器を振る等した際に、発生した衝撃音や衝撃触感を感知することにより、容器内の内容物の残量が少なくなったことを、正確に判断することができ、これにより内容物が使用し尽くされる前に、新たな容器を予め用意しておくことができ、使用中、内容物がなくなると云う、不都合の発生を未然に防止することができる。
【0021】
また、コイルバネ体は、内容物とは完全に分離されて設けられているので、内容物の安全な収納保持を保持でき、コイルバネ体により、内容物の安全な収納保持が劣化する、と云う恐れの発生は全くなく、内容物の安全な収納保持を維持することができる。
【0022】
請求項2記載の発明にあっては、径の等しい一般的なコイルバネ体を使用して、コイルバネ体の離脱端を、大きく揺動変位させて、最も離れた周囲部分である胴部に対して、確実に突き当てることができるので、安価なコイルバネ体を使用して、衝撃音や衝撃触感を確実に発生させることができる。
【0023】
請求項3記載の発明にあっては、コイルバネ体のわずかな弾性変形に従って、衝撃音や衝撃触感を発生させることができるので、容器内の内容物の残量が少なくなったことの感知を、より確実にかつ簡単に得ることができる。
【0024】
請求項4記載の発明にあっては、コイルバネ体の反発力が、摺動蓋の動作に影響を与えることがないので、摺動蓋の適正な動作を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0026】
本発明の摺動蓋付き注出容器は、吸い上げた内容物の注出口を形成するノズルヘッド4を組付けたポンプ3と、このポンプ3を上端に組付けた、遮光性を有する容器本体1と、この容器本体1の胴部2内に、軸心方向に沿って密摺動可能に嵌装する摺動蓋6と、容器本体1の胴部2下端を閉塞して、通気可能な状態で強固に嵌合組付きして、容器の「座」を形成する底蓋11と、この底蓋11と摺動蓋6との間に装着されたコイルバネ体16とから構成されている。
【0027】
ポンプ3は、容器本体1の上端の口筒部内に、組付きキャップ5により密に組付けられ、側方に注出口を開口したノズルヘッド4を、上端に突出させて組付け、下端に吸い上げ口を開口したシリンダ部17を、容器本体1の口筒部から胴部2の上端部内に、垂下状に突出させている。
【0028】
容器本体1は、胴部2の上端に、縮径段部状の肩部を介して、ポンプ3を組付け部分を形成する口筒部を起立連設して構成され、特に胴部2は、遮光性が付与されていると共に、内表面ができる限り平滑面に成形された、自己形状保持能力の高い、例えばポリプロピレン等の硬質合成樹脂材料等の硬質材料で成形されている。
【0029】
摺動蓋6は、低密度ポリエチレン等の比較的軟質な合成樹脂で一体成形されており、リング板状をした本体板7の内周縁から、有底円筒状の中央陥没筒片8を垂下連設し、また本体板7の外周縁から、外鍔状の連結部を介して、外周面の上下両端部を、胴部2内周面に密摺接させるシール筒片9を連設した構成となっている。
【0030】
胴部2下端開口部を閉塞して、容器の「座」を形成する底蓋11は、小さな通気孔13を開設した蓋板12の上面周端部に、胴部2の下端開口部に嵌入して、強固にアンダーカット結合する嵌合筒片15を立設すると共に、蓋板12の上面中央部に、摺動蓋6の下降限界位置を設定する、補強リブで補強された中央筒片14を立設した構成となっている。
【0031】
コイルバネ体16は、摺動蓋6の中央部と底蓋11の中央部との間に配置されており、その一端を、摺動蓋6と底蓋11の一方に離脱不能に結合する結合端とすると共に、反対側の端を、摺動蓋6と底蓋11の他方に離脱可能に当接する離脱端とし、その自由長を、摺動蓋6が上昇限度位置間近まで上昇変位した状態で、離脱端が、周囲部分に突き当たり可能に揺動変位する値に設定している。
【0032】
このため、コイルバネ体16は、摺動蓋6が上昇限度位置間近まで上昇変位して、残りの内容物の量が少なくなる(例えば、数回の使用量となる)と、その離脱端を、摺動蓋6または底蓋11から離脱させて揺動変位自在となり、これにより容器は、内容物が設定量まで低下したことを知らせることのできる、警告状態となる。
【0033】
それゆえ、この状態で、容器を手に持って振る等すると、コイルバネ体16は、その離脱端を大きく揺動変位させて周囲部分に突き当てるので、この突き当たりの衝撃音や衝撃触感により、内容物の残量が少なくなったことを、知ることができるのである。
【0034】
図1ないし図3に示した、本発明の第一実施形態例にあっては、コイルバネ体16は、底蓋11の中央筒片14に嵌入できる径寸法の、等径構造となっていて、その下端を、底蓋11の中央筒片14の下端部に、離脱不能に結合して結合端とし、その上端を、摺動蓋6の中央陥没筒片8の下面に垂下設された遊合突片9に離脱可能に遊合して当接する離脱端としている。
【0035】
図1の使用前の状態から、ノズルヘッド4の押し下げ操作により内容物を注出消費すると、図2に示すように、この内容物の消費に従って摺動蓋6が上昇変位して行く。
【0036】
この際、コイルバネ体16も摺動蓋6の上昇変位に従って延び変形するが、このコイルバネ体16の反発力は、胴部2と摺動蓋6との間の摺動抵抗力よりも、充分に小さい値に設定されているので、コイルバネ体16が摺動蓋6を押し上げる、と云う不良動作を生じることはない。
【0037】
内容物の消費が進んで、内容物の残量が、予め設定した値まで少なくなると、図3に示すように、摺動蓋6は、上昇限度位置間近に達し、その遊合突片9をコイルバネ体16の上端部から離脱させるので、コイルバネ体16の離脱端は、揺動により、胴部2に突き当たることが可能な、揺動変位自在な状態、すなわち警告状態となる。
【0038】
図4と図5に示した、本発明の第二の実施形態例にあっては、コイルバネ体16は、下方に拡径した構造をしていて、上端部を、摺動蓋6の中央陥没筒片8の下端に、離脱不能に外嵌結合させる結合端とし、胴部2の内径よりも少し小さい径の下端である離脱端を、底蓋11の嵌合筒片15に近い蓋板12上面に載置当接させている。
【0039】
図4の使用前の状態から、ノズルヘッド4の押し下げ操作により、内容物を注出消費すると、この内容物の消費に従って摺動蓋6が上昇変位して行くが、この際、コイルバネ体16は、上昇変位する摺動蓋6により引き上げられた状態で、自重により延び変形する。
【0040】
内容物の消費が進んで、内容物の残量が、予め設定した値まで少なくなると、図5に示すように、摺動蓋6は、上昇限度位置間近に達するが、この時、コイルバネ体16は、自重による延び変形の限界に達するので、その離脱端は、底蓋11の蓋板12から浮き上がって離脱し、揺動により、胴部2に突き当たることが可能な、揺動変位自在な、警告状態となる。
【0041】
なお、コイルバネ体16の離脱端と突き当たる周囲部分は、容器本体1の胴部2に限られることはなく、例えば、摺動蓋6または底蓋11の一部であっても良い。
【0042】
また、コイルバネ体16は、その成形材料が特定されることはないが、確実で明確な衝撃音もしくは衝撃触感を得ることができることから、硬質材料製とするのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第一実施形態例を示す、消費前状態の要部縦断全体側面図である。
【図2】図1に示した実施形態例の、消費途中状態の要部縦断全体側面図である。
【図3】図1に示した実施形態例の、警告状態の要部縦断全体側面図である。
【図4】本発明の第二実施形態例を示す、消費前状態の要部縦断全体側面図である。
【図5】図4に示した実施形態例の、警告状態の要部縦断全体側面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ; 容器本体
2 ; 胴部
3 ; ポンプ
4 ; ノズルヘッド
5 ; 組付きキャップ
6 ; 摺動蓋
7 ; 本体板
8 ; 中央陥没筒片
9 ; 遊合突片
10; シール筒片
11; 底蓋
12; 蓋板
13; 通気孔
14; 中央筒片
15; 嵌合筒片
16; コイルバネ体
17; シリンダ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物の注出口を形成するノズルヘッド(4)を有するポンプ(3)と、該ポンプ(3)を上端に組付けた、遮光性を有する容器本体(1)と、該容器本体(1)の胴部(2)内に、軸心方向に沿って密摺動可能に嵌装する摺動蓋(6)と、前記胴部(2)の下端開口部を、通気可能に強固に組付いて閉塞する底蓋(11)と、該底蓋(11)と摺動蓋(6)の中央部分間に配置されたコイルバネ体(16)と、から構成され、該コイルバネ体(16)の一端を、前記摺動蓋(6)と底蓋(11)の一方に離脱不能に結合する結合端とすると共に、反対側の端を、前記摺動蓋(6)と底蓋(11)の他方に離脱可能に当接する離脱端とし、前記コイルバネ体(16)の自由長を、前記摺動蓋(6)が上昇限度位置間近まで上昇変位した状態で、前記コイルバネ体(16)の離脱端が、周囲部分に突き当たり可能に揺動変位する値に設定して成る摺動蓋付き注出容器。
【請求項2】
コイルバネ体(16)の径を、該コイルバネ体(16)の自由長に対して、該コイルバネ体(16)の離脱端が、周囲部分である胴部(2)に突き当たるまで揺動変位することができる値に設定した請求項1記載の摺動蓋付き注出容器。
【請求項3】
コイルバネ体(16)の離脱端部分の径を、周囲部分である胴部(2)の内径よりも少し小さい値に設定した請求項1記載の摺動蓋付き注出容器。
【請求項4】
コイルバネ体(16)の反発力を、胴部(2)と摺動蓋(6)との間の摺動抵抗力に比べて、充分に小さい値に設定した請求項1〜3のいずれか1項に記載の摺動蓋付き注出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−153416(P2007−153416A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353092(P2005−353092)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】