説明

撓み振動型アクチュエータ

【課題】音響振動用と触覚振動用とを兼用し、小型で、振動特性も優れており、しかも簡単な構造の撓み振動型アクチュエータを提供する。
【解決手段】本発明の撓み振動型アクチュエータは、細長くて薄い形状の音響用圧電素子を保持するシムからなる音響用振動子と、細長くて薄い形状の触覚用圧電素子を保持するベースプレートからなる触覚用振動子とを備え、前記ベースプレートの一端側は、撓み振動子保持部を保持するとともに、該撓み振動子保持部は、前記音響用振動子のシムの一端側を保持する構成としたこと、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、携帯端末機などの小型電子機器のパネル型スピーカに利用されるアクチュエータに関するものであり、特に、表示パネル部前面のタッチパネルなどを振動板とする分布振動(Distributed Mode)方式の撓み振動型アクチュエータにおいて、音響振動だけでなく触覚振動も発生することができる撓み振動型アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルを入力インタフェースとする携帯電話機や携帯端末機などの小型電子機器で、使用者が入力操作を行った時の出力方法として画面表示や音による警告の他に、触覚振動(フォースフィードバック)を与える方法が提案されている。触覚振動とは、小型電子機器などの入力装置についている機能の一つで、入力に反応して振動や力を、入力機器から使用者の手などの身体に加えることをいう。
【0003】
特許文献1は、スイッチがONされたときに、音声振動と共に触覚振動を伝えるパターンをCPUで生成する方法が開示されている。また、特許文献2は、音響用と触覚振動をそれぞれ別の振動板で行う構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−122501号公報
【特許文献2】特開2008−59027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のものは、音響振動は効果音程度の音質が限界であり、音響特性が優れた音とは言えない。また、特許文献2に記載のものは、電子装置において振動板が2個必要となり、装置が複雑な構造になっている。また、従来の撓み振動型アクチュエータの最低周波数としては、300Hzを超えており、触覚振動としては十分なものとは言えなかった。すなわち、触覚振動としては、特に指先で振動を感じやすい100Hz〜200Hz付近の振動が得られることが望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、音響振動用と触覚振動用とを兼用し、小型で、振動特性も優れており、しかも簡単な構造の撓み振動型アクチュエータ(DMA:Distributed Mode Actuator)を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の撓み振動型アクチュエータは、細長くて薄い形状の音響用圧電素子を保持するシムからなる音響用振動子と、細長くて薄い形状の触覚用圧電素子を保持するベースプレートからなる触覚用振動子とを備え、前記ベースプレートの一端側は、撓み振動子保持部を保持するとともに、該撓み振動子保持部は、前記音響用振動子のシムの一端側を保持する構成としたこと、を特徴とする。
【0008】
前記ベースプレートの他端側は折曲部を有し、該折曲部に形成された開口に、前記ベースプレートの一端側の撓み振動子保持部に保持された前記音響用振動子のシムの先端が、前記開口の空間内で揺動できるように挿入されて構成したこと、を特徴とする。
【0009】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおいて、前記シムの一方の側に設けられた前記音響用圧電素子と、前記ベースプレートで保持された触覚用圧電素子との間に板状弾性体を設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおいて、前記触覚用圧電素子は、接着剤を介して弾性板状体が設けられたことを特徴とする。
【0011】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおいて、前記ベースプレートは、振動板に取り付けられてなることを特徴とする。
【0012】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおいて、前記音響用振動子のシムには、おもりが設けられてなることを特徴とする。
【0013】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおいて、前記音響用圧電素子、前記触覚用圧電素子、前記撓み振動子保持部、前記板状弾性体、前記弾性板状体の各々の幅は、前記ベースプレートの幅内で形成されてなることを特徴とする。
【0014】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおいて、前記触覚用振動子の出力による振動周波数は、300Hz以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおいて、前記触覚用振動子は、AM変調及び/又はFM変調した電気信号を印可することによって振動を発生するようにしたことを特徴とする。
【0016】
本発明の撓み振動型アクチュエータにおいて、前記触覚用振動子は、印可する直流電圧の制御によって振動を発生するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータは、音響用振動子に加え、触覚用振動子を備え、その振動子である圧電素子をベースプレートに設けることで、触覚振動も簡単な構成で、かつ振動特性も優れた撓み振動型アクチュエータを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る撓み振動型アクチュエータの側面図である。
【図2】本発明に係る撓み振動型アクチュエータの斜視図である。
【図3】本発明に係る撓み振動型アクチュエータの分解斜視図である。
【図4】本発明に係る撓み振動型アクチュエータの音響振動子に電圧を加えたときの図である。
【図5】本発明に係る撓み振動型アクチュエータの触覚用振動子に電圧を加えたときの図である。
【図6】本発明に係る撓み振動型アクチュエータを携帯端末機に組み込んだ図である。
【図7】図6のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータの音響用振動子は、金属片からなるシム11の一方の側におもりを設け、他方の側に音響用圧電素子を設けたユニモルフ型振動子で、ベースプレート30上の撓み振動子保持部20で保持される。ユニモルフ型とは、アクチュエータの構造であり、薄手の圧電素子1枚と金属板を貼り合わせた構造のものをいう。圧電素子に電圧をかけることにより、圧電素子が伸縮すると貼り合わせた金属板の寸法は変わらないため、反りが生ずる。この反りにより発生する振動や変位を利用する。この音響用振動子に電圧を供給すると、シム11の撓み振動が撓み振動子保持部20とベースプレート30を介して振動板40に伝播される。また、圧電素子に加える電圧よって振動の強度や変位が変化する。このとき振動を効率よく広域に渡り伝達するために、音響用圧電素子12の撓み振動子保持部20側に弾性板状体34を挿入することによって慣性振動となり音響特性が優れる。
【0020】
また、本発明に係る撓み振動型アクチュエータの触覚用振動子13は、触覚用圧電素子13をベースプレート30と弾性板状体35との間に設け、この触覚用圧電素子13をベースプレート30に直接接着する構成としている。こうすることによって、低い周波数の撓みを直接振動板40に伝達することができ、触覚振動を効率よく伝播することができる。
【0021】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータを実施するための形態について、図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本発明に係る撓み振動型アクチュエータの側面図、図2は、撓み振動型アクチュエータの斜視図、図3は、撓み振動型アクチュエータの分解斜視図である。
【0022】
図1乃至図3に示すように、本発明に係る撓み振動型アクチュエータ1は、シム11と音響用圧電素子12でなる音響用振動子14と、触覚用圧電素子13とベースプレート30でなる触覚用振動子15と、撓み振動子保持部20と、おもり23と、給電用端子16及び17と、弾性板状体34と、板状弾性体35を有している。
【0023】
音響用振動子14のシム11は、全体が細長くて薄い矩形形状の金属板からなり、音響用圧電素子12は、図3などに示すように、シム11の裏面に接着される。音響用振動子14のシム11は、図1及び図3に示すように、長手方向の一方の端部に凸状に切り欠きが形成された凸部19と、凸部19の他方の端部の先端近傍には円形孔を有する凸状の入力端子18が形成されている。この入力端子18は、撓み振動子保持部20側に嵌挿される。このシム11の材質は、ステンレス鋼やアルミ合金などの硬めの材質が好適であり、摩擦損失が少なく、高Q値の素材を使用することが望ましい。これらの材質を用いることによって、音響特性、励振効率が良好となる。
【0024】
また、音響用振動子14の音響用圧電素子12は、図1乃至図3に示すように、シム11の裏面側に長手方向に沿って接着される。この音響用圧電素子12は、薄く細長い矩形形状で形成されており、上面、すなわちシム11の裏面側の接着面には接着剤(図示せず)が塗布されて接着される。
【0025】
次に、触覚用振動子15の触覚用圧電素子13は、細長くて薄い矩形形状をしており、触覚用圧電素子13の上面には、長手方向に沿って板状に形成された板状弾性体35が両面接着テープ(図示せず)で接着され、また、略コ字状に形成された弾性板状体34が図1及び図2に示す接着剤38により長手方向に沿って接着配置される。この接着剤38は、硬化時には弾性板状体34と触覚用圧電素子13との間の高さ調整を行う機能を有するので、組み立て時に使用量を調整する。
【0026】
また、触覚用振動子15のベースプレート30は、細長くて薄い矩形形状で真鍮などの金属からなる金属板で構成されており、長手方向の一端側には、図1乃至図3に示すように、幅方向の両側部から直立して上端が内側に折り曲げられた係止爪31及び係止爪32が形成され、また他端側は、前記係止爪31及び係止爪32と直交する方向、すなわちベースプレート30の長手方向側に起立する折曲部39に幅広の開口33が形成されている。
【0027】
この開口33には、音響用振動子14のシム11の凸部19が挿入され、シム11とベースプレート30とが開口33の開口以上にずれないように規制する作用を有している。この開口33は、音響用圧電素子12の過大な振幅を抑制するためのものである。
【0028】
また、触覚用振動子15のベースプレート30の上面には、触覚用圧電素子13が接着されており、裏面は、離間配置された2枚の両面接着テープ36及び37を用いて振動板40に接着される。このように、両面接着テープ36及び37が離間配置される理由は、両面接着テープ36及び37がベースプレート30の底面の全面にわたって配置されると、撓み振動に対する剛性が強くなり過ぎ、振動板40への撓み振動の励振能率が低下するおそれがある。そのため、両面接着テープ36及び37を離間配置することによって撓み易い構成としている。
【0029】
上記のような音響用圧電素子12及び触覚用圧電素子13は、チタン酸バリウムなどの圧電セラミックの薄板で、電極層で挟みながら複数枚積層した構造などが好適であり、また、チタン酸バリウムなどは比較的脆い圧電材料であるため、過大な撓み振動が発生すると、破損するおそれがある。この過大な振動は、信号よりも、むしろ、このアクチュエータが装着された携帯電話機などの小型電子機器が、コンクリートなどの硬い床に落下した時の衝撃によって発生する場合が多い。この過大な振動を抑制するため、板状弾性体35で衝撃を吸収すると共に、開口33によってシム11の凸部19の動きを規制することで保護する構成としている。
【0030】
次に、撓み振動子保持部20について説明する。
図1乃至図3に示すように、撓み振動子保持部20は、樹脂を主成分とする略柱状体で1つ形成されており、音響用振動子14のシム11の一方の端部である入力端子18が挿入されてこの入力端子18を保持するシム孔28が形成されている。この撓み振動子保持部20は、1つに限らず、2以上で構成してもよい。また、図2に示すように、入力端子18は、撓み振動子保持部20のシム孔28内に挿入されて図1及び図3に示す撓み振動子保持部20のシム孔28の反対面に露出する。
【0031】
また、図3に示すように、撓み振動子保持部20の底面側には、長手方向に沿って凹状に給電用端子溝26及び給電用端子溝27が形成されており、給電用端子溝26には、給電用端子16が組み込まれ、給電用端子溝27には、給電用端子17が組み込まれるようになっている。
【0032】
給電用端子溝26に組み込まれた給電用端子16は、触角用圧電素子13と接続されて給電できるようになっており、また、給電用端子溝27に組み込まれた給電用端子17は、音響用圧電素子12と接続されて給電できるようになっている。
【0033】
また、撓み振動子保持部20の側面には、図2から明らかなように、係止爪31、32と係合する凸部が形成されている。
【0034】
次に、図1乃至図3に示すように、おもり23は、音響用振動子14のシム11の凸部19側近傍の上面に設けられている。このおもり23は、両面接着テープ24によってシム11に接着される。このおもり23は、重量があるものであればよく、例えばタングステン粉末入りの樹脂や鉛等の材質が好適である。このおもり23は、音響用振動子の撓みを慣性振動に変える役目をする。また、シム11と音響振用圧電素子12が撓む時に撓み過ぎたり、シム11が上方に反り返る癖を防止する作用を有する。
【0035】
次に、弾性板状体34は、図3に示すように、略コ字状に形成されており、触覚用圧電素子13と接着剤38(図1及び図2に図示)で接着される。この接着剤38は、硬化時には弾性板状体34と触覚用圧電素子13との間の高さ調整を行う機能を有するので、組み立て時に使用量を調整する。この弾性板状体34の素材としては、ポリウレタン、発泡樹脂、軟質ゴムなどの弾性体を使用することができる。
【0036】
また、板状弾性体35は、触覚用圧電素子13の長手方向に沿って薄くかつ長手板状に形成されており、触覚用圧電素子13の上面に両面接着テープ(図示せず)を用いて接着される。この板状弾性体35の素材としては、弾性板状体34よりも柔らかい素材を使用している。つまり、この板状弾性体35は、落下などの衝撃で音響用圧電素子12と触覚用圧電素子13とが衝突すると、圧電素子が破壊されやすいので、音響用圧電素子12と触覚用圧電素子13とが接触して衝突しないように衝撃を緩和するためのものである。
【0037】
図1及び図3に示す振動板40は、主に、携帯電話機や携帯端末機の表示パネルの保護板を使用することができ、撓み振動子保持部20から音響用振動子14を振動させて音を出力する。また、触覚用振動子15を振動させて振動板40に伝播して振動させる。また、振動板40はタッチパネル形式でも良く、透明な素材など種々の素材を用いることができる。
【0038】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータのシム11、音響用振動子14、触覚用振動子15、撓み振動子保持部20、おもり23、弾性板状体34、板状弾性体35などは、全体として長手状に形成されているが、それらの幅方向は、図2及び図3に示すように、ベースプレート30の幅内でほぼ形成されているので、全体として小型に構成されている。また、各々の厚みも薄く形成されているので、全体として高さ方向も薄く構成されている。また、弾性板状体34が挿入されることによって慣性振動となり音響特性が優れるものとなっている。
【0039】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータの組立方法について説明する。
図1乃至図3に示すように、まず、おもり23が両面粘着テープ24によって接着された音響用振動子14のシム11の入力端子18を撓み振動子保持部20のシム孔28に挿入する。
【0040】
次に、撓み振動子保持部20の底面に形成された給電用端子溝26に給電用端子16を組み込み、その先端を触覚用圧電素子13の表面に形成された電極(図示せず)に接続する。これにより給電用端子16と触覚用圧電素子13との間に電気的接続が形成される。同様に、給電用端子溝27に給電用端子17を組み込んで、その先端を音響用圧電素子12の表面に形成された電極(図示せず)に接続する。これにより給電用端子17と音響用圧電素子12との間に電気的接続が形成される。
【0041】
また、撓み振動子保持部20の側面をベースプレート30の係止爪31及び32と係合させて折り曲げ固定させる。ここで、ベースプレート30の上面には触覚用圧電素子13が接着され、触覚用圧電素子13の上面には弾性板状体34が接着剤38で、板状弾性体35が両面接着テープ(図示せず)で接着される。
【0042】
シム11の凸部19は、開口33の内側に挿入され、この開口33の空間内をシム11の凸部19が揺動できるようになっている。
【0043】
このように各構成物を階層状に組み合わせることで、撓み振動型アクチュエータ1が構成される。
【0044】
なお、本発明に係る撓み振動型アクチュエータの組立の順番については、適宜変えてよいことは勿論である。
【0045】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータ1は、音響用振動子14と触覚用振動子15の両方の振動子を有するが、ベースプレート30にシム11の作用を持たせることで、シム2枚を使用せずに、シム11の1枚とベースプレート30とで音響用振動子14と触覚用振動子15の2つの振動子を構成している。これにより、構成部品を減少することが可能となり、小型化、軽量化及び廉価化することができる。
【0046】
次に、本発明に係る撓み振動型アクチュエータの動作について説明する。
本発明に係る撓み振動型アクチュエータのベースプレート30の開口33の空間内に揺動可能に挿入される音響用振動子14は、先端が自由端となっており、音響振動用として作用する。これに対して、両面接着テープ36及び37よって振動板40に固定される触覚用振動子15は、触覚振動用として作用する。
【0047】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータ1の給電用端子17と入力端子18を交流電源(図示せず)に接続してシム11と音響用圧電素子12の間に交流電圧を印加する。シム11の裏面に接着された音響用圧電素子12は、両面に電圧が加えられると、両面間に電界が生じて音響用圧電素子12の厚み方向に伸縮が生じる。電圧は交流なので、交互に反対方向への伸縮を行う。ここで、シム11は伸縮しないため、シム11には音響用圧電素子12の伸縮に合わせて撓みが生ずる。
【0048】
音響用振動子14のシム11が撓むと、その先端と撓み振動子保持部20とが上下方向に互いに逆向きに変位する。音響用振動子14の先端の自由端が下方に変位すると、その反作用(慣性力)によって、その撓み振動子保持部20が上方に変位し、その結果、ベースプレート30を介して振動板40が上方に変位する。この音響用振動子14の作用を慣性(または反作用)型撓み振動子と称することもできる。
【0049】
また、本発明に係る撓み振動型アクチュエータ1の給電用端子16とベースプレート30を交流電源(図示せず)に接続してベースプレート30と振動用圧電素子13との間に交流電圧を印加すると、振動用圧電素子13に伸縮が生じる。ここで、ベースプレート30は伸縮しないため、ベースプレート30には触覚用圧電素子13の伸縮に合わせて撓みが生ずる。
【0050】
この触覚用振動子15は、シムの機能を有するベースプレート30が両面接着テープ36及び37によって振動板40に固定されているため、ベースプレート30が撓むことで触覚用振動子15が撓み変位しようとすると、撓みを直接振動板40に伝播する。この触覚用振動子15を制動(または作用)型撓み振動子ということもできる。
【0051】
このように、本発明に係る撓み振動型アクチュエータ1は、アクチュエータを2段重ねの慣性型と制動型とで構成することにより、先端を自由端にした慣性型音響用振動子14から高品位の音声信号を発生させると同時に、ベースプレート30を振動板40に固定した制動型触覚用振動子15から触覚振動を発生させることができる。
【0052】
図4及び図5は、本発明に係る撓み振動型アクチュエータ1の振動子の駆動特性を示す図である。図4及び図5に示す横軸は、振動の周波数、縦軸は1voltの入力信号で発生する駆動力(ニュートン)であり、縦軸の0dBNが1ニュートンである。
【0053】
図4は、音響用振動子14に電圧を供給したときに撓み振動子保持部20に発生する慣性振動時の駆動力特性を示す図である。この駆動力は、振動板40に慣性振動として伝達されて音声として出力される。また、図5は、触覚用振動子15に電圧が供給された時の撓み振動子保持部20に発生する直接振動の時の駆動特性を示す図である。シム11としてのベースプレート30が直接触覚用振動子15に設けられているため振動板40を直接振動して触覚振動が出力される。
【0054】
図4と図5を参照して、100Hz付近を比較すると、図5の触覚振動として必要な駆動力が約20dB(10倍)大きいことがわかる。図4及び図5から分かるように、本発明に係る撓み振動型アクチュエータは、300Hz以下の触覚振動をさせることができ、100Hz〜200Hzの範囲での振動をさせる場合も好適である。
【0055】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータ1の音響用振動子14の寸法としては、長さ20mm〜50mm、幅3mm〜10mm、厚み0.5mm〜3mmの範囲が好適である。上記最小の寸法以下では、寸法が小さすぎて製造が困難となり、また、上記最大寸法以上では、携帯電話機など小型の携帯用機器への応用が困難となる。
【0056】
[実施例1]
図6は、本発明に係る撓み振動型アクチュエータに適用した実施例であり、図7は、図6のA−A線断面図である。携帯端末機50は、フィルム54とガラス55でなる振動板を兼ねるタッチパネル部51と、表示部52と、操作部53と、撓み振動型アクチュエータ2a及び2bと、クッション56a及び56bと、クッション57a及び57bとを有する。
【0057】
タッチパネル部51のガラス55は、図6及び図7に示すように薄く透明な板状であり、上面にフィルム54を接着している。ガラス55とフィルム54の間には透明導電膜(図示せず)及びドットスペーサ(図示せず)を有する。ガラス55の下面には表示部52がクッション57a及び57bが接着されおり、クッション57a及び57bの他端は表示部52に接着されている。また、表示部52の外側にアクチュエータ2a及び2bが、ガラス55に接着剤で直接接着されている。また、ガラス55の下面外縁部はクッション56a及び56bが接着されており、クッション56a及び56bの他端は、筐体50に接着されている。
【0058】
タッチパネル部51のフィルム54はガラス55と同じ大きさに成形された薄く透明な板状であり、下面をガラス55に接着されている。フィルム54の表面を使用者が触覚入力すると、フィルム54が撓み、ガラス55とフィルム54の間に設置された透明導電膜とドットスペーサが接触することで電流が流れ、タッチパネル部に入力があったことを検出する。
【0059】
使用者は、携帯端末機50への入力を操作部53又はタッチパネル部51を操作して行い、携帯端末機50は入力に対して、表示・音声・振動等によって応答する。ここで音声は撓み振動型アクチュエータ2a及び2bが振動することにより、タッチパネル部51に伝達し、タッチパネル部51を振動させて音声を出力する。
【0060】
また、撓み振動型アクチュエータ2a及び2bが振動することにより、タッチパネル部51に伝達されて触覚振動がタッチパネル部51を介して使用者に伝播される。
【0061】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータは、撓み振動型アクチュエータ2a及び2bが左右に設けられているので、タッチパネル部51への触覚振動の伝達は均等に行われ、より明瞭な触覚振動を出力することが可能である。また、音声と触覚振動の同時出力が可能であるので、音声と触覚振動を同時体験することもできる。また、タッチパネル部51を指などで固定しても音声振動と触覚振動とに影響することが少ないため、タッチパネルと共存して使用することが可能である。
【0062】
このようにタッチパネル部51と撓み振動型アクチュエータ2a及び2bによって音声と触覚振動を出力することができるので、別途スピーカや振動装置を携帯端末機に組み込む必要が無くなるため、携帯端末機を小型化・低廉化することができると共に、使用者はより明瞭な音声と触覚振動を体感することができる。
【0063】
図6は、携帯端末機として説明したが、携帯電話機、電子辞書、携帯用ゲーム機、カーナビゲーション等の電子機器に於いて、操作部・表示部・音声発生部、好ましくはタッチパネルを備える小型の電子機器に使用することができる。
【0064】
[実施例2]
触覚用振動子への印加電圧が一定な場合、触覚用振動子の撓みによる触覚振動も一定となり、使用者へ伝達される触覚振動も一定の単調な振動となる。その結果、単調な振動に対して慣れを生じて触覚振動に対する使用者の反応が鈍くなる。
【0065】
そこで、本発明に係る撓み振動型アクチュエータは、触覚用振動子にAM(Amplitude Modulation)変調及び/又はFM(Frequency Modulation)変調した電気信号を印加し、不規則な振幅変調をさせることにより、触覚用振動子が不規則で、かつ強弱のある振動を発生させる。使用者に伝播される触覚振動が規則的な単調なものから、強弱があり、不規則な触覚振動となるので、特に指先で敏感に触覚振動を関知させることができる。
【0066】
また、触覚用振動子は直流電圧の制御によって触覚振動を発生する。直流電圧を印加すると触覚用振動子は撓みを生じ、印加を停止すると触覚用振動子は撓みが停止する。このように、制御によって印加する直流電圧の有無を繰り返すことで、振動が発生する。印加の有無の繰り返しは矩形波を制御するものであっても良い。また、触覚用振動子に印加する直流電圧の強弱、印加時間、印加間隔を不規則にすることで、触覚用振動子は不規則な振動を発生する。
【0067】
このような交流電圧及び直流電圧による印加電圧は、予めランダムとなる制御に設定しても良いし、複数の不規則な印可のパターンを設定しておき、設定の中から使用者が任意に選択できるようにしてもよい。
【0068】
本発明に係る撓み振動型アクチュエータは、上記実施形態や実施例に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の趣旨の範囲内において適宜改良または変更することができることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
1 撓み振動型アクチュエータ
2a、2b、 撓み振動型アクチュエータ
11 シム
12 音響用圧電素子
13 触覚用圧電素子
14 音響用振動子
15 触覚用振動子
16 給電用端子
17 給電用端子
18 入力端子
19 凸部
20 撓み振動子保持部
23 おもり
24 両面接着テープ
26 給電用端子溝
27 給電用端子溝
28 シム孔
30 ベースプレート
31 係止爪
32 係止爪
33 開口
34 弾性板状体
35 板状弾性体
36 両面接着テープ
37 両面接着テープ
38 接着剤
39 折曲部
40 振動板
50 携帯端末機
51 タッチパネル部
52 表示部
53 操作部
54 フィルム
55 ガラス
56a、56b クッション
57a、57b クッション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長くて薄い形状の音響用圧電素子を保持するシムからなる音響用振動子と、
細長くて薄い形状の触覚用圧電素子を保持するベースプレートからなる触覚用振動子とを備え、
前記ベースプレートの一端側は、撓み振動子保持部を保持するとともに、
該撓み振動子保持部は、前記音響用振動子のシムの一端側を保持する構成としたこと、
を特徴とする撓み振動型アクチュエータ。
【請求項2】
前記ベースプレートの他端側は折曲部を有し、該折曲部に形成された開口に、前記ベースプレートの一端側の撓み振動子保持部に保持された前記音響用振動子のシムの先端が、前記開口の空間内で揺動できるように挿入されて構成したこと、
を特徴とする請求項1記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項3】
前記シムの一方の側に設けられた前記音響用圧電素子と、前記ベースプレートで保持された触覚用圧電素子との間に板状弾性体を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項4】
前記触覚用圧電素子は、接着剤を介して弾性板状体が設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項5】
前記ベースプレートは、振動板に取り付けられてなることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項6】
前記音響用振動子のシムには、おもりが設けられてなることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項7】
前記音響用圧電素子、前記触覚用圧電素子、前記撓み振動子保持部、前記板状弾性体、前記弾性板状体の各々の幅は、前記ベースプレートの幅内で形成されてなることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項8】
前記触覚用振動子の出力による振動周波数は、300Hz以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項7記載の何れか1に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項9】
前記触覚用振動子は、AM変調及び/又はFM変調した電気信号を印可することによって振動を発生するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項8記載の何れか1に記載の撓み振動型アクチュエータ。
【請求項10】
前記触覚用振動子は、直流電圧の制御によって振動を発生するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項8記載の何れか1に記載の撓み振動型アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−245842(P2010−245842A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92357(P2009−92357)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(595077418)株式会社オーセンティック (25)
【Fターム(参考)】