説明

撥水性ポリウレタン樹脂発泡体

【課題】軽量性に優れしかも良好な撥水性を発揮することのできる撥水性ポリウレタン樹脂発泡体を提供する。
【解決手段】 ポリオール、発泡剤、触媒、撥水剤及びポリイソシアネートを含む配合物を発泡してなる撥水性ポリウレタン樹脂発泡体であって、ポリオールとしてポリエステルポリオールとポリエステルポリエーテルポリオールを含む。ポリオールを100重量部とした場合に発泡剤として水を2.5〜6重量部、ポリエステルポリオールを3〜60重量部、ポリエステルポリエーテルポリオールを40〜97重量部、撥水剤を25〜80重量部含む。撥水剤は、炭素数14〜36のモノアルコールと、炭素数15〜36の脂肪族あるいは脂環族ジカルボン酸との結合体からなるエステルとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量な撥水性ポリウレタン樹脂発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
撥水性ポリウレタン樹脂発泡体は、自動車、家電、住宅等、種々の分野で広く用いられている。従来、撥水性ポリウレタン樹脂発泡体としては、フッ素系撥水剤を含浸させたものや、配合物の原料配合を調整して発泡させたものなどが知られている。また、撥水性ポリウレタン樹脂発泡体は、用途によっては軽量なものが求められている。
【0003】
従来における軽量な撥水性ポリウレタン樹脂発泡体としては、ポリオールとしてPPG系ポリオール100重量部に対して、イソシアネートとしてMDI系イソシアネートを60重量部以上用い、整泡剤としてイソシアネート又はポリオールと反応性の基を有するシリコーンを、触媒として有機金属触媒を、架橋剤としてイソシアネート基と反応する活性水素を有するものを使用し、さらに発泡剤として水を3重量部以上用いるものがある。
【0004】
しかし、従来の軽量な撥水性ポリウレタン樹脂発泡体にあっては、密度が35kg/m以上と高く、撥水性ポリウレタン樹脂発泡体の用途によってはさらに軽量性が求められている。
【特許文献1】特開2002−338944号公報
【特許文献2】特開平10−176074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、軽量性に優れしかも良好な撥水性を発揮する撥水性ポリウレタン樹脂発泡体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、ポリオール、発泡剤、触媒、撥水剤及びイソシアネートを含む配合物を発泡してなる撥水性ポリウレタン樹脂発泡体であって、前記ポリオールとしてポリエステルポリオールとポリエステルポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記ポリオールを100重量部とした場合に前記発泡剤として水を2.5〜6重量部含み、前記撥水性ポリウレタン樹脂発泡体の密度が10〜30kg/cmであることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記撥水剤が、炭素数14〜36のモノアルコールと、炭素数15〜36の脂肪族あるいは脂環族ジカルボン酸との結合体からなるエステルであることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記ポリオールを100重量部とした場合に、前記ポリエステルポリオールが3〜60重量部、より好ましくは15〜35重量部、前記ポリエステルポリエーテルポリオールが40〜97重量部、より好ましくは65〜85重量部、前記ポリオール100重量部に対して前記撥水剤が25〜80重量部、より好ましくは30〜50重量部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリエステルポリオールを使用することによって、撥水剤の分散性が優れ、配合物の粘度調整が可能となって発泡体が低密度となり、また、ポリエステルポリエーテル共重合ポリオールを使用することによって、発泡体の強度が増大し耐加水分解性が改善され、良好な撥水性を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明においてポリオールは、ポリエステルポリオールとポリエステルポリエーテルポリオールが併用される。
【0012】
ポリエステルポリオールは、ポリウレタン樹脂発泡体用として知られているものが用いられる。例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、ショ糖などのポリオールとから重縮合して得られたものや、ラクトン系ポリオール等を挙げることができる。本発明では、ポリエステルポリオールを用いることによって、撥水剤の分散性が良好となり、配合物の粘度調整が可能となり、発泡体を低密度にすることができる。
【0013】
ポリエステルポリエーテルポリオールは、公知のものを用いることができる。例えば、脂肪族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体と低分子ジオールを用いてエステル化反応またはエステル交換反応を行い、さらには重縮合反応を行うことにより、あるいはポリエステルポリオールとポリテトラメチレングリコールをエステル交換反応させることにより得られたものなどを挙げることができる。本発明では、ポリエステルポリエーテルポリオールを用いることによって、発泡体の強度が増大し、耐加水分解性が改善され、良好な撥水性を発揮する。
【0014】
前記ポリエステルポリオールとポリエステルポリエーテルポリオールは、ポリオールを100重量部とした場合に、ポリエステルポリオールについては3〜60重量部、より好ましくは15〜35重量部とされ、また、ポリエステルポリエーテルポリオールについては40〜97重量部、より好ましくは65〜85重量部とされる。ポリオールを100重量部とした場合においてポリエステルポリオールが60重量部よりも多くなると、ポリウレタン架橋体中のエーテル鎖が少なくなるため、発泡体の強度、加水分解性が悪くなる。それに対し、ポリエステルポリオールが3重量部よりも少なくなると、撥水剤とポリエステルポリオールの相溶性が悪くなって良好な発泡体が得られなくなる。
【0015】
発泡剤としては、水が好適である。水の量は、ポリオールを100重量部とした場合、2.5〜6重量部が好ましい。また、本発明においては、メチレンクロライド等の発泡助剤を用いる必要がない。
【0016】
触媒としては、トリエチルアミンやテトラメチルグアニジン等のアミン系触媒や、スタナスオクトエート等の錫触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を用いることができる。触媒の一般的な量は、ポリオールを100重量部とした場合、0.01〜2.0重量部である。
【0017】
撥水剤としては、エステルが用いられる。前記エステルとしては、炭素数14〜36のモノアルコールと、炭素数15〜36の脂肪族あるいは脂環族ジカルボン酸との結合体が好ましい。前記炭素数14〜36のモノアルコールとしては、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、セリルアルコール及びイソステアリルアルコール等の飽和モノアルコール、オレイルアルコール等の不飽和モノアルコール等が挙げられる。また、炭素数15〜36の脂肪族あるいは脂環族ジカルボン酸としては、タブシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸等を挙げることができる。前記モノアルコールの炭素数を14〜36及び前記脂肪族あるいは脂環族ジカルボン酸の炭素数を15〜36の範囲とすることによって、得られる発泡体の撥水性が、一層良好となる。また、撥水剤の量は、ポリオールを100重量部とした場合に25〜80重量部、より好ましくは30〜50重量部である。撥水剤の量がポリオール100重量部当たり25重量部よりも少ないと、十分な撥水効果が得られなくなり、また撥水剤の量が80重量部よりも多いと、撥水剤が可塑剤として作用し、発泡体の形成が難しくなる。
【0018】
本発明における撥水剤として特に好ましいエステルとして、ダイマー酸ジステアリルを挙げることができる。前記ダイマー酸ジステアリルの合成は次のようにして行われる。まず、ダイマー酸とステアリルアルコールを1:2のモル比で混合し、窒素ガスを反応容器に導入しながら撹拌して150〜180℃まで温度を上げ、その状態で放置する。その際、反応容器内を20mmHgに減圧して水分を除去する。1時間半経過後、p−トルエンスルホン酸、酢酸カルシウム、オクチル酸カルシウム、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸第1錫から選択した触媒をダイマー酸1モル当たり0.2〜0.8g添加する。前記放置後約2時間後に反応生成物の酸価が5.0以下となった時点を反応終了時点とし、その後常温まで温度を下げることによりダイマー酸ジステアリルを得る。
【0019】
ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2以上有する脂肪族系または芳香族系ポリイソシアネート、それらの混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートを使用することができる。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネート等を挙げることができ、芳香族ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックポリイソシアネート(クルードMDI)等を挙げることができる。なお、その他プレポリマーも使用することができる。また、その他、整泡剤や、着色剤、難燃剤等、適宜助剤が添加されてもよい。
【0020】
前記撥水性ポリウレタン樹脂発泡体は、前記各原料を所要量配合した配合物を攪拌機で混合して反応させる公知の発泡方法によって製造される。撥水性ポリウレタン樹脂発泡体の密度は10〜30kg/mである。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。表1に示す配合からなる配合物を、定法に従って攪拌混合し、発泡させることにより実施例1〜5の撥水性ポリウレタン樹脂発泡体を製造した。表1において、ポリエステルポリオールは三洋化成工業株式会社製、AH−405、ポリエステルポリエーテルポリオールは三井武田ケミカル株式会社製、L−50、撥水剤はダイマー酸ジステアリル、アミン系触媒は日本乳化剤株式会社製、N,N−ジメチルアミノエタノール(DMAE)、金属触媒は有機酸金属錫塩(スタナスオクトエート)、整泡剤はトーレ・シリコーン株式会社製、SH−193、ポリイソシアネートは日本ポリウレタン株式会社製、T−80を用いた。
【0022】
【表1】

【0023】
また比較のため、表2に示すように、ポリエステルポリオールとポリエステルポリエーテルポリオールの量が請求項4の量から外れる比較例1及び比較例2、撥水剤の量が請求項4の量から外れる比較例3及び比較例5、水の量が請求項2の量から外れる比較例4を実施例と同様にして製造した。なお、比較例3については、正常に発泡せず、発泡体が得られなかった。
【0024】
【表2】

【0025】
このようにして製造した実施例1〜5及び比較例1,2,4,5の発泡体についてJIS K 6400に従い、密度、25%硬さ、引張強度、伸びを測定した。また撥水性試験を次のようにして行った。まず、実施例及び比較例の発泡体から、300×70×30(厚み)mmの試験片を裁断し、その試験片の重量(a)を測定した。次いで、図1に示すように、試験片を水槽の底面に配置して下方が開口した金網を試験片の上方から被せ、さらに金網上に重しを乗せた後、水槽に水を深さ150mmとなるように注入した。この状態で24時間放置した後、試験片を水槽から取り出し、金網に乗せて試験片の水切りを行い、試験片に含まれる水が自然流下しなくなった時点で試験片の重量を測定し、撥水試験前の試験片の重量(a)との差が、前記(a)の値以下の場合に撥水性を良好(○)とした。各測定結果を、表1及び表2に示す。また、良好な発泡体が得られたか否か及び、発泡体表面に撹拌不良による縞が見られたか否かについても判断し、併せて表1及び表2に示した。
【0026】
実施例1〜5は、いずれも成形性及び撹拌混合性が良好であり、さら軽量性及び撥水性も良好であった。それに対して、比較例1及び比較例2はポリエステルポリオールの量が少なくポリエステルポリエーテルポリオールが多いことから撥水性に劣り、また撹拌不良が発生した。比較例3は撥水剤の量が多いことから成形不良を生じて発泡体が得られなかった。また、比較例4は水の量が少ないことから密度が高く、軽量性に劣っていた。比較例5は撥水剤の量が少ないことから撥水性が劣っていた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】撥水性試験時の状態を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、発泡剤、触媒、撥水剤及びポリイソシアネートを含む配合物を発泡してなる撥水性ポリウレタン樹脂発泡体であって、前記ポリオールとしてポリエステルポリオールとポリエステルポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする撥水性ポリウレタン樹脂発泡体。
【請求項2】
前記ポリオールを100重量部とした場合に前記発泡剤として水を2.5〜6重量部含み、前記撥水性ポリウレタン樹脂発泡体の密度が10〜30kg/mであることを特徴とする請求項1に記載の撥水性ポリウレタン樹脂発泡体。
【請求項3】
前記撥水剤は、炭素数14〜36のモノアルコールと、炭素数15〜36の脂肪族あるいは脂環族ジカルボン酸との結合体からなるエステルであることを特徴とする請求項1または2に記載の撥水性ポリウレタン樹脂発泡体。
【請求項4】
前記ポリオールを100重量部とした場合に、前記ポリエステルポリオールは3〜60重量部、より好ましくは15〜35重量部、前記ポリエステルポリエーテルポリオールは40〜97重量部、より好ましくは65〜85重量部、前記撥水剤は25〜80重量部、より好ましくは30〜50重量部であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の撥水性ポリウレタン樹脂発泡体。

【図1】
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【公開番号】特開2006−70220(P2006−70220A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257843(P2004−257843)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】