播種機
【課題】上板と下板とを相対的に摺動させて播種する播種機において、粒径2mm以下といった小粒径の種子であっても、上板と下板との間に種子が入り込むことなく安定して播種できるようにする。
【解決手段】容器本体1の底板部11の上側をスライド板2が摺動する。スライド板2の表面には複数の溝23が形成され、これらの溝23の底面には複数の小孔24が形成されている。そして底板部11には、小孔24に対応した大孔15が形成されている。通常状態では、小孔24の下端開口は底板部11によって封鎖されており、小孔24内に入った種子9はここに保持される。そして播種する場合は、スライド板2を摺動させて、小孔24と大孔15とが上下方向に重なるようにし、小孔24内に保持されていた種子9を落下させる。
【解決手段】容器本体1の底板部11の上側をスライド板2が摺動する。スライド板2の表面には複数の溝23が形成され、これらの溝23の底面には複数の小孔24が形成されている。そして底板部11には、小孔24に対応した大孔15が形成されている。通常状態では、小孔24の下端開口は底板部11によって封鎖されており、小孔24内に入った種子9はここに保持される。そして播種する場合は、スライド板2を摺動させて、小孔24と大孔15とが上下方向に重なるようにし、小孔24内に保持されていた種子9を落下させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の種子を一定間隔で同時に播種できる播種機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
育苗ポットに播種する場合、あるいは地床に略等間隔で播種する場合、効率的且つ正確に播種を行うため、播種機がこれまでから用いられている。図12及び図13に、従来の播種機の構造を示す。図12は播種機の平面図、図13は、図12のB−B線断面図である。
【0003】
この図の播種機は、播種すべき種子を収容する、略直方体箱状で上面開口の容器本体1と、容器本体1に対してスライド自在のスライド板6とを有している。容器本体1は、複数の大孔15が縦横方向に所定間隔で形成された底板部11と、底板部11の周縁に垂設された外側壁部12と、外側壁部12の上端からそれぞれ内方に向かって延出した天壁部13と、天壁部13の端部から垂下した内側壁部14とを有する。内側壁部14と底板部11との間には、スライド板6の摺動を可能とし、且つスライド板6の上面と内側壁部14の下端との間の種子の通過を不能とする隙間が形成されている。
【0004】
一方、スライド板6は、播種すべき種子が収容される小孔63が縦横方向に所定間隔で形成された本体部61と、本体部61の、摺動方向の一方側の側辺から上方に延出した垂直壁部62とを有し、容器本体1の一つの外側壁部12の下方に形成された細長い開口部16から、容器本体1の底板部11の上面を摺動するように挿入されている。そして、スライド板6の垂直壁部62と、容器本体1の、開口部16が形成された外側壁部12とは、押しバネSが外挿された一対のピンPで接続されている。押しバネSによって、スライド板6は、容器本体1の底板部11上の、小孔63と大孔15とが上下方向に重ならない位置に維持される。
【0005】
このような構成の播種機で播種を行う場合、まず種子又はコート種子を容器本体1内に適当量投入し、播種機を適宜振動、揺動、回動する等の操作をすることによって、小孔63内に所定粒の種子を入れる。このとき、小孔63と大孔15とは、図12および図13に示す状態、すなわち、互いに対応関係にある小孔63と大孔15とが、上下方向に重なり合わない状態にある。従って、小孔63の下端開口は底板部11によって封鎖され、小孔63内に配分された種子は小孔63内に保持される。
【0006】
次に、播種機を所望の播種位置に配置した後、スライド板6の垂直壁部62を押しバネSの力に抗して容器本体1方向へ押すことにより、スライド板6が摺動して、小孔63の下部に、対応する大孔15が位置するようになる。これにより、小孔63と大孔15とが種子落下方向において重なり合って、種子が播種機の下方に落下し、播種が行われる。以上のような操作により、各育苗ポットまたは地床に種子を所定粒ずつ等間隔に播種していた。
【0007】
ところが、従来の播種機は、通常粒径3mm以上の種子やコート種子を主にその対象としたものであり、例えば粒径2mm以下といった小さな粒径の種子等を対象とする播種機は、本発明者等が知りうる限り少なくとも市販されていない。これは、小さな粒径の種子等を播種する場合、スライド板6の小孔63に所定粒の種子を収容するためには、種子の粒径に合わせてスライド板6の小孔63の径を小さくすると共に、スライド板6の厚みも薄くする必要があるからである。例えば、スライド板6の小孔63に1粒の種子を収容する場合、スライド板6の厚みは種子の粒径以下にする必要がある。スライド板6の厚みを薄くすると剛性が低下し、スライド板6が撓みやすくなる。スライド板6が撓むと、スライド板6と容器本体1の底板部11との間に隙間ができ、スライド板6の小孔63に収容されていた種子が前記隙間に入り込み、うまく播種できないという不具合が生じるのである。そこで、例えば特許文献1ではスライド板にリブを形成して強度低下の抑制を図っているが、未だ満足できる効果が得られていない。
【特許文献1】特開平8−322326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、粒径2mm以下といった小さな粒径の種子であっても、上板と下板との間に種子が入り込むことなく安定して播種できる播種機を提供することにある。
【0009】
また本発明の目的は、スライド板の小孔に種子を迅速に配分し、効率的に播種できる播種機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく本発明者等が鋭意検討した結果、小粒径の種子を播種する場合、スライド板の厚みを全体に薄くするのではなく、スライド板の小孔の周囲の厚みだけを薄くすればよいとの着想にもとづき本発明をなすに至った。即ち、本発明の播種機は、播種すべき種子の大きさに応じて形成された複数の貫通孔を有する上板と、この上板の下側に重なるように設けられた下板とを有し、前記上板と前記下板とは相対的に摺動可能であり、前記複数の貫通孔の下端開口は前記下板によって開放・封鎖される播種機であって、前記上板の表面に複数の溝が形成され、前記複数の貫通孔が、前記複数の溝の底面に設けられていることを特徴とする。
【0011】
ここで、溝内の種子の流動を円滑にし、貫通孔に種子を迅速に配分する観点から、前記複数の溝の幅は、播種すべき種子の粒径の2〜6倍の範囲であるのが好ましい。また、前記複数の溝を所定間隔で略平行に形成し、前記複数の溝の端部の一方又は両方を、前記複数の溝の形成方向に対して略垂直方向に形成された通路溝によって連通するのが好ましい。
【0012】
上板の剛性保持の観点からは、前記複数の溝を、前記上板と前記下板との相対的な摺動方向に対して交差する方向に形成するのが好ましい。また前記溝の幅に対する溝の形成間隔は、1.5倍以上であるのが好ましい。
【0013】
播種されなかった種子を飛散させることなく迅速に回収する観点からは、前記複数の溝及び前記通路溝の少なくとも一方に、播種されなかった種子を回収するための回収孔を設けるのが好ましい。このとき、播種作業中に、回収孔から種子が漏れ出るのを防止するため、前記回収孔を封止部材によって封止・開放可能とする、あるいは回収孔への種子の進入を阻止する仕切り部材を上板に設けるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の播種機では、上板の表面に複数の溝を形成し、それらの溝の底面に、種子を収容する貫通孔を設けたので、溝の深さを調整することによって、上板の剛性を維持しながら、播種する種子に合わせて貫通孔の深さを調整できる。これにより、小粒径の種子であっても、上板が撓むことなく確実に播種できるようになる。
【0015】
溝の幅を、播種すべき種子の粒径の2〜6倍の範囲にすると、溝内で種子が詰まることなく円滑に流動し、貫通孔に種子を迅速に配分できるようになる。
【0016】
また、複数の溝を所定間隔で略平行に形成し、前記複数の溝の端部の一方又は両方を、前記複数の溝の形成方向に対して略垂直方向に形成された通路溝によって連通すると、溝間を種子が移動できるようになり、貫通孔に種子を迅速に配分できるようになる。
【0017】
前記複数の溝を、前記上板と前記下板との相対的な摺動方向に対して交差する方向に形成すると、そしてまた、前記溝の幅に対する溝の形成間隔を1.5倍以上とすると、上板の剛性がより保持され、上板の撓みが一層防止されるようになる。
【0018】
前記複数の溝及び前記通路溝の少なくとも一方に、播種されなかった種子を回収するための回収孔を設けると、播種されなかった種子を飛散させることなく迅速に回収できるようになる。また、回収孔を封止部材によって封止・開放可能とする、あるいは回収孔への種子の進入を仕切り部材で阻止・開放するようにすると、播種作業中に回収孔から種子が漏れ出るのを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る播種機についてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0020】
本発明に係る播種機の一実施形態を図1及び図2に示す。図1は播種機の斜視図であり、図2は図1のA−A線断面図である。なお、図12及び図13に示した従来の播種機と同じ部材及び部分は同一の符号を用いる。
【0021】
図1及び図2の播種機は、播種すべき種子を収容する、略直方体箱状で上面開口の容器本体1と、容器本体1に対して摺動自在のスライド板(上板)2とを有している。容器本体1は、複数の大孔15が縦横方向に所定間隔で形成された底板部(下板)11と、底板部11の周縁から上方に延出した外側壁部12と、外側壁部12の上端からそれぞれ内方に向かって延出した天壁部13と、天壁部13の端部から垂下した内側壁部14とを有する。内側壁部14と底板部11との間には、スライド板2の摺動を可能とし、且つスライド板2の上面と内側壁部14の下端との間の種子の通過を不能とする隙間が形成されている。なお、底板部11に形成された大孔15は、後述するように、種子を落下させるためのものであって、貫通孔であればその形状に特に限定はない。例えば、1列の小孔に対応するような1つの長孔であってもよい。
【0022】
容器本体1は、底板部11、外側壁部12、天壁部13、内側壁部14のそれぞれ別体として作製した後、接合して成形してもよいし、これらを一体に成形してもよい。容器本体1の材質に特に限定はなく従来公知のものを使用できるが、播種作業の利便性を考慮すると、少なくとも底板部11は透明な材料が望ましい。具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリプロピレンやプロピレン共重合体等のプロピレン、プロピレンを含んでなるプロピレン系樹脂、塩化ビニル、ナイロン、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂等が挙げられる。上記例示の樹脂のうち、アクリル樹脂を用いることがより好ましい。アクリル樹脂の中でも、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が特に好ましい。
【0023】
一方、スライド板2は、平面視が長方形状の本体部21と、本体部21の、摺動方向の一方側の側辺から上方に延出した垂直壁部22とを有する。スライド板2は、容器本体1の一つの外側壁部12の下方に形成された細長い開口部16から、容器本体1の底板部11の上面を摺動するように挿入されている。そして、スライド板2の垂直壁部22と、容器本体1の、開口部16が形成された外側壁部12とは、押しバネSが外挿された一対のピンPで接続されている。
【0024】
スライド板2の本体部22の表面には、摺動方向に対して直交する方向に所定間隔で平行に複数の溝23,23・・・(以下、単に「溝23」と記す)が形成されている。そして溝23の底面には所定間隔で種子を収容する小孔(貫通孔)24、24・・・(以下、単に「小孔24」と記す)が形成されている。なお、この実施形態では、小孔24を上記のように配列形成しているが、小孔24の配列形成はこれに限定されるものではなく、播種しようとする種子の種類や育苗ポットの配列などから適宜決定すればよい。また、小孔24の形状は丸孔に限定されるものではなく、播種する種子の形状等から適宜決定すればよい。そしてまた、小孔24の大きさは、種子を収容できるように、種子の大きさや形状等から適宜決定すればよいが、例えば粒径1.0〜1.7mm程度の種子1粒を収容する場合、小孔24の直径は2mm程度が好ましい。
【0025】
また、図1及び図2の播種機では、小孔24は、溝23の幅方向中央に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば図3に示すように、溝23の側壁に近接して形成しても構わない。溝23の側壁に近接して小孔24を形成すると、溝23の側壁に沿わして種子9を移動させることによって、種子9を小孔23に容易に入れられるようになる。
【0026】
また、スライド板2に形成する溝23の幅は、種子が流動する範囲であれば特に限定はないが、種子の円滑な流動と小孔24への迅速な収容とを満たす観点からは、播種する種子の粒径の2〜6倍の範囲が好ましい。溝23の深さは、スライド板2の本体部21の厚さと、播種する種子の粒径から決定される小孔24の深さとの差から定まる。溝23の幅d(図1に図示)に対する溝23の形成間隔D(図1に図示)は、スライド板2の強度等の点から、1.5倍以上とするのが好ましい。
【0027】
溝23の形成方向は、スライド板2の摺動方向に対して直交する方向に限定されるものではないが、種子を小孔24に入れる作業性やスライド板2の耐撓み性の点からは、スライド板2の摺動方向に対して交差する方向が好ましく、より好ましくは上記実施形態のようなスライド板2の摺動方向に直交する方向である。なお、各溝23の形成方向は必ずしも同方向である必要なく、例えば「ハ」字状であっても構わない。
【0028】
また、図1の播種機において、スライド板2の表面には、溝23の両端部を連通するように通路溝25a,25bが形成されている。この通路溝25a,25bには小孔24は形成されておらず、容器本体1内に投入された種子は通路溝25a,25bを通って溝間を移動し、また小孔24に収納されなかった種子は通路溝25a,25bに貯留する。このような通路溝25a,25bをスライド板2に設けなくても本件発明の効果は奏されるが、通路溝25a,25bを形成する方が、種子を小孔24に入れる作業効率及び所定粒播種の確実性は上がる。また通路溝25a,25bは溝23の一方端部に形成するよりも両端部に設ける方が、種子の移動循環が効果的に行われ、小孔24内への種子の収容が迅速に行われるようになり好ましい。
【0029】
スライド板2の成形は、容器本体1の成形と同様に、本体部21と垂直壁部22とを別体として作製した後、接合して成形してもよいし、これらを一体に成形してもよい。スライド板2の材質に特に限定はなく従来公知のものを使用できるが、播種作業の利便性を考慮すると、少なくとも本体部21は透明な材料が望ましい。具体的な樹脂材料としては、容器本体1の好適材料として挙げたものがここでも例示される。スライド板2を一体成形する場合には、例えば、射出成形や熱成形、ブロー成形などの成形方法を用いることができる。
【0030】
次に、このような構成の播種機を用いた播種作業について説明する。まず、播種する種子を容器本体1内に適当量投入し、播種機を適宜振動、揺動、回動する等の操作をする。これによって、複数の溝23および通路溝25a,25b内を種子が循環や往復するように移動し、スライド板2の小孔24のそれぞれに種子が入る。このとき、スライド板2の小孔24と容器本体1の大孔15とは、図4(a)に示すように、種子の播種方向に重なり合わない状態にある。従って、小孔24の下端開口は容器本体1の底板部11によって封鎖され、小孔24内に入った種子9は小孔24内に保持される。
【0031】
すべての小孔24に種子が入ると、例えば通路溝25b(図1に図示)が下方となるように播種機を若干傾け、余った種子を通路溝25bに集めてそこに留める。そして、播種機を所望の播種位置に合わせて配置する。次に、スライド板2の垂直壁部22を、押しバネSの力に抗して容器本体1方向へ押す。すると、スライド板2が摺動して、図4(b)に示すように、スライド板2の小孔24の下部に、対応する大孔15が位置するようになり、小孔24の下端開口が開放され、小孔24に収容されていた種子9が落下して播種が行われる。
【0032】
次に、スライド板2の垂直壁部22に対する容器本体1方向への押圧を解除すると、押しバネSの弾性力によってスライド板2は容器本体1から離れる方向に摺動する。これによって、小孔24の下端開口は容器本体1の底板部11で封鎖される。そしてまた、播種機を揺動・回動等の操作することによって小孔24内に種子9を入れ、前記の操作を繰り返して、各育苗ポットまたは地床に種子9を所定粒ずつ所定間隔に播種する。
【0033】
一連の播種作業が終了した後、播種機に残った種子を回収する。播種機から種子を回収する方法に特に限定はなく、例えば、播種機を若干傾けて通路溝25bの一方端に種子9を集めた後、播種機を大きく傾けて、容器本体1の内側壁部14上を種子9が転げ落ちるようにして、用意した所定の容器内に種子9を回収するようにしてもよい。なお、小さな粒径の種子の場合、上記方法による種子回収では種子が飛散する等の不具合が生じるおそれがあるので、例えば、播種機を次のような構成として種子回収することが推奨される。
【0034】
図5は、種子の回収を容易に且つ円滑に行える播種機の一例を示す平面図である。スライド板2表面の通路溝25bの一方端の隅部に回収孔27が形成されている。そして、容器本体1の底板部11には、開口17が形成されている。回収孔27と開口17とは、押しバネSによってスライド板2が容器本体1から離れた位置あるときは重なり合わず、スライド板2が、押しバネSの力に抗して、容器本体1に近づいた位置になったときは、回収孔27が開口17の上側位置となるように形成されている。なお、回収孔27は、通路溝25a,25b及び溝23のいずれの位置に形成してもよいが、効率よく種子を集めて回収する観点からは、通路溝25a,25b及び溝23の隅部に形成するのが望ましい。また、回収孔は2個以上設けてももちろん構わない。
【0035】
図6に、図5の播種機における種子回収作業を説明するための斜視図を示す。播種作業中には、回収孔27から種子9が落下するのを防止するため、回収孔27は円筒形状の栓(封止部材)71で封止されている(図6(a))。そして、一連の播種作業が終了すると、回収孔27から栓71が外されると共に、回収孔27が重力方向下方となるように播種機が若干傾けられ、回収孔27に種子9が集められる(図6(b))。次に、スライド板2を、押しバネSの力に抗して容器本体1方向へ移動させると(図5を参照)、回収孔27は、開口17の上方位置にくる(図6(c))。ここで、開口17の直下に所定の回収容器を配置しておけば、回収孔27及び開口17を通って種子9は落下し回収容器内に迅速且つ円滑に回収される。
【0036】
なお、回収孔27の形状に特に限定はなく、播種すべき種子やコート種子の形状等から適宜決定すればよい。また開口17を長孔とし、回収孔27の移動に拘わらず回収孔27と開口17とが常に連通しているようにしてもよい。この場合、栓71の下部を開口17に進入させることが可能となる。また、スライド板2を摺動させることなく、回収孔27から栓71を外すだけで種子を回収できるようになる。
【0037】
図7に、本発明で使用できる封止部材の他の実施形態を示す。この実施形態の栓(封止部材)72は、同図(a)に示すように、円筒状で下面開口の本体部721と、本体部721の上面に形成されたツマミ723とを備え、本体部721の側面には、種子が通過できる大きさの開口部722が形成されている。栓72は、回収孔27を塞ぐようにスライド板2に対して回動可能に取り付けられ、播種作業中は、同図(b)に示すように、本体部721の側面が通路溝25bに露出する状態に保持され、回収孔27への種子の進入が当該側面によって阻止される。そして、一連の播種作業が終了すると、同図(c)に示すように、ツマミ723によって、開口部722が通路溝25bに露出するように栓72が回動される。これによって、前記実施形態と同様に、開口部722を通って種子は落下可能となり、所定の回収容器内に回収できるようになる。
【0038】
図8に、封止部材として蓋部材を用いた場合の一例を示す。同図(a)に示すように、回収孔27に隣接して溝28がスライド板2に形成されている。この溝28内に、蓋部材(封止部材)73が摺動自在に取り付けられている。蓋部材73は、直方体形状の本体部731と、本体部731の上面に形成されたツマミ732とを有する。播種作業中は、同図(b)に示すように、蓋部材73の本体部731によって回収孔27は封鎖される。そして、一連の播種作業が終了すると、同図(c)に示すように、蓋部材73は、ツマミ732によって溝28内を、回収孔27を開放する方向に摺動され、これによって、前記実施形態と同様に、回収孔27を通って種子は落下可能となり、所定の回収容器内に回収できるようになる。
【0039】
図9は、播種作業中に回収孔27から種子がこぼれ落ちるのを防止するために、仕切り部材を用いた場合の一例を示す斜視図である。スライド板2に形成された回収孔27に向かう通路の両壁に、四角形状に窪んだ凹部29a,29bが形成されている。播種作業中は、同図(a)に示すように、この凹部29a,29bに、仕切り板(仕切り部材)81の両側端部が嵌め入れられ、仕切り板81によって回収孔27への種子の進入が阻止される。そして、一連の播種作業が終了すると、同図(b)に示すように、仕切り板81が、スライド板から取り外され、これによって、回収孔27への種子の進入が可能となり、所定の回収容器内に種子を回収できるようになる。なお、この実施形態では、仕切り部材をスライド板2に対して取り外し可能としているが、仕切り部材をスライド板2から取り外すことなく、例えば、回収孔27に向かう通路に出入可能又は回動可能に設けて、回収孔27に向かう通路を封鎖・開放するようにしても構わない。
【0040】
本発明で用いる封止部材及び仕切り部材は、回収孔27を封止・封鎖及び開放できるものであればよく、前記実施形態に限定されることなく従来公知の部材を用いることができる。
【0041】
図10及び図11に、本発明に係る播種機の他の実施形態を示す。図10は、播種機の摺動方向と平行な縦断面斜視図、図11は、播種機の摺動方向と直角方向の縦断面斜視図である。この実施形態が、前記実施形態と異なる点は、前記実施形態の播種機では、下板が固定で上板が摺動するのに対し、この実施形態の播種機では上板が固定で下板が摺動する点にある。すなわち、前記実施形態とこの実施形態とは、スライド板が、容器本体の底板部の上側を摺動するのか、底板部の下側を摺動するのかが異なる。以下、この異なる点を中心に説明する。
【0042】
図10及び図11の播種機は、略直方体箱状で上面開口の容器本体3と、この容器本体3の外底面に摺動自在に取り付けられたスライド板(下板)4とを有する。容器本体3は、底板部(上板)31と、底板部31の周縁から上方に延出した側壁部32と、側壁部32の上端から水平に外方へ延出したつば状部33と、つば状部33の一辺の端部から下方へ延出した垂下壁部34とが一体成形されてなる。そして底板部31の表面には、摺動方向に対して直交する方向に所定間隔で平行に複数の溝35,35,・・・が形成され、溝35の両端部には、溝35を連通するように通路溝37が形成されている。そして複数の溝35の底面には所定間隔で種子を収容する小孔(貫通孔)36が形成されている。容器本体3の底板部31に形成される溝35、小孔36、通路溝37の具体的構成は、前記実施形態の構成をこの実施形態でも採用できる。
【0043】
一方、スライド板4は、平面視が長方形状の本体部41と、本体部41の、摺動方向の一方側の側辺から上方に延出した垂直壁部42とを有する。スライド板4の本体部41には、容器本体3に形成された小孔36に対応する複数の大孔43が形成されている。
【0044】
図11に示すように、容器本体3の底板部31の外底面の向かい合う側部には、断面「L」字状の一対のガイド部材5a,5bが取り付けられている。この一対のガイド部材5a,5bの間にスライド板4の本体部41の両側端部を差し入れることによって、スライド板4は容器本体3に対し摺動自在に取り付けられる。そして、スライド板4の垂直壁部42と容器本体3の垂下壁部34とは、押しバネSが外挿された一対のピンPで接続されている。
【0045】
図10に示すように、播種機は通常状態では、押しバネSの付勢力によって小孔36と大孔43とは種子落下方向に重ならない位置に保持されている。即ち、小孔36の下端開口はスライド板4によって封鎖されている。この状態で種子を各小孔36に入れる。そして、播種機を所望の播種位置に合わせて配置する。次に、スライド板4の垂直壁部42を、押しバネSの力に抗して容器本体3方向へ押す。すると、スライド板4が摺動して、容器本体3の小孔36の下部に、対応する大孔43が位置するようになり、小孔36の下端開口が開放され、小孔36に収容されていた種子が播種機の下方に落下し、播種が行われる。次に、スライド板4の垂直壁部42に対する容器本体3方向への押圧を解除すると、押しバネSの弾性力によってスライド板4は容器本体3から離れる方向に摺動し、前記の通常状態に戻る。
【0046】
以上説明した本発明の播種機は、1粒の種子を小孔に収容し播種する用途に好適に用いられる。また、前述のように粒径が2mm以下の小さな粒子の播種に好適に用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の播種機は、粒径の小さい種子でも、摺動する上板と下板との間に挟み込むことなく確実に播種することでき有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る播種機の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】小孔の形成位置の例を示す斜視図である。
【図4】小孔への種子の収容と、播種とを示す概説図である。
【図5】回収孔を設けた本発明に係る播種機の一実施形態を示す平面図である。
【図6】図5の播種機における種子の回収作業の説明図である。
【図7】回収孔を設けた本発明に係る播種機の他の実施形態を示す斜視図である。
【図8】回収孔を設けた本発明に係る播種機の他の実施形態を示す斜視図である。
【図9】回収孔を設けた本発明に係る播種機の他の実施形態を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る播種機の他の実施形態を示す縦断面斜視図である。
【図11】図10の播種機の他方向の縦断面斜視図である。
【図12】従来の播種機を示す平面図である。
【図13】図12の播種機のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 容器本体(下板)
2 スライド板(上板)
3 容器本体(上板)
4 スライド板(下板)
9 種子
17 開口
23,35 溝
24,36 小孔(貫通孔)
25a,25b,37 通路溝
27 回収孔
71,72 栓(封止部材)
73 蓋部材(封止部材)
81 仕切り板(仕切り部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の種子を一定間隔で同時に播種できる播種機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
育苗ポットに播種する場合、あるいは地床に略等間隔で播種する場合、効率的且つ正確に播種を行うため、播種機がこれまでから用いられている。図12及び図13に、従来の播種機の構造を示す。図12は播種機の平面図、図13は、図12のB−B線断面図である。
【0003】
この図の播種機は、播種すべき種子を収容する、略直方体箱状で上面開口の容器本体1と、容器本体1に対してスライド自在のスライド板6とを有している。容器本体1は、複数の大孔15が縦横方向に所定間隔で形成された底板部11と、底板部11の周縁に垂設された外側壁部12と、外側壁部12の上端からそれぞれ内方に向かって延出した天壁部13と、天壁部13の端部から垂下した内側壁部14とを有する。内側壁部14と底板部11との間には、スライド板6の摺動を可能とし、且つスライド板6の上面と内側壁部14の下端との間の種子の通過を不能とする隙間が形成されている。
【0004】
一方、スライド板6は、播種すべき種子が収容される小孔63が縦横方向に所定間隔で形成された本体部61と、本体部61の、摺動方向の一方側の側辺から上方に延出した垂直壁部62とを有し、容器本体1の一つの外側壁部12の下方に形成された細長い開口部16から、容器本体1の底板部11の上面を摺動するように挿入されている。そして、スライド板6の垂直壁部62と、容器本体1の、開口部16が形成された外側壁部12とは、押しバネSが外挿された一対のピンPで接続されている。押しバネSによって、スライド板6は、容器本体1の底板部11上の、小孔63と大孔15とが上下方向に重ならない位置に維持される。
【0005】
このような構成の播種機で播種を行う場合、まず種子又はコート種子を容器本体1内に適当量投入し、播種機を適宜振動、揺動、回動する等の操作をすることによって、小孔63内に所定粒の種子を入れる。このとき、小孔63と大孔15とは、図12および図13に示す状態、すなわち、互いに対応関係にある小孔63と大孔15とが、上下方向に重なり合わない状態にある。従って、小孔63の下端開口は底板部11によって封鎖され、小孔63内に配分された種子は小孔63内に保持される。
【0006】
次に、播種機を所望の播種位置に配置した後、スライド板6の垂直壁部62を押しバネSの力に抗して容器本体1方向へ押すことにより、スライド板6が摺動して、小孔63の下部に、対応する大孔15が位置するようになる。これにより、小孔63と大孔15とが種子落下方向において重なり合って、種子が播種機の下方に落下し、播種が行われる。以上のような操作により、各育苗ポットまたは地床に種子を所定粒ずつ等間隔に播種していた。
【0007】
ところが、従来の播種機は、通常粒径3mm以上の種子やコート種子を主にその対象としたものであり、例えば粒径2mm以下といった小さな粒径の種子等を対象とする播種機は、本発明者等が知りうる限り少なくとも市販されていない。これは、小さな粒径の種子等を播種する場合、スライド板6の小孔63に所定粒の種子を収容するためには、種子の粒径に合わせてスライド板6の小孔63の径を小さくすると共に、スライド板6の厚みも薄くする必要があるからである。例えば、スライド板6の小孔63に1粒の種子を収容する場合、スライド板6の厚みは種子の粒径以下にする必要がある。スライド板6の厚みを薄くすると剛性が低下し、スライド板6が撓みやすくなる。スライド板6が撓むと、スライド板6と容器本体1の底板部11との間に隙間ができ、スライド板6の小孔63に収容されていた種子が前記隙間に入り込み、うまく播種できないという不具合が生じるのである。そこで、例えば特許文献1ではスライド板にリブを形成して強度低下の抑制を図っているが、未だ満足できる効果が得られていない。
【特許文献1】特開平8−322326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、粒径2mm以下といった小さな粒径の種子であっても、上板と下板との間に種子が入り込むことなく安定して播種できる播種機を提供することにある。
【0009】
また本発明の目的は、スライド板の小孔に種子を迅速に配分し、効率的に播種できる播種機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく本発明者等が鋭意検討した結果、小粒径の種子を播種する場合、スライド板の厚みを全体に薄くするのではなく、スライド板の小孔の周囲の厚みだけを薄くすればよいとの着想にもとづき本発明をなすに至った。即ち、本発明の播種機は、播種すべき種子の大きさに応じて形成された複数の貫通孔を有する上板と、この上板の下側に重なるように設けられた下板とを有し、前記上板と前記下板とは相対的に摺動可能であり、前記複数の貫通孔の下端開口は前記下板によって開放・封鎖される播種機であって、前記上板の表面に複数の溝が形成され、前記複数の貫通孔が、前記複数の溝の底面に設けられていることを特徴とする。
【0011】
ここで、溝内の種子の流動を円滑にし、貫通孔に種子を迅速に配分する観点から、前記複数の溝の幅は、播種すべき種子の粒径の2〜6倍の範囲であるのが好ましい。また、前記複数の溝を所定間隔で略平行に形成し、前記複数の溝の端部の一方又は両方を、前記複数の溝の形成方向に対して略垂直方向に形成された通路溝によって連通するのが好ましい。
【0012】
上板の剛性保持の観点からは、前記複数の溝を、前記上板と前記下板との相対的な摺動方向に対して交差する方向に形成するのが好ましい。また前記溝の幅に対する溝の形成間隔は、1.5倍以上であるのが好ましい。
【0013】
播種されなかった種子を飛散させることなく迅速に回収する観点からは、前記複数の溝及び前記通路溝の少なくとも一方に、播種されなかった種子を回収するための回収孔を設けるのが好ましい。このとき、播種作業中に、回収孔から種子が漏れ出るのを防止するため、前記回収孔を封止部材によって封止・開放可能とする、あるいは回収孔への種子の進入を阻止する仕切り部材を上板に設けるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の播種機では、上板の表面に複数の溝を形成し、それらの溝の底面に、種子を収容する貫通孔を設けたので、溝の深さを調整することによって、上板の剛性を維持しながら、播種する種子に合わせて貫通孔の深さを調整できる。これにより、小粒径の種子であっても、上板が撓むことなく確実に播種できるようになる。
【0015】
溝の幅を、播種すべき種子の粒径の2〜6倍の範囲にすると、溝内で種子が詰まることなく円滑に流動し、貫通孔に種子を迅速に配分できるようになる。
【0016】
また、複数の溝を所定間隔で略平行に形成し、前記複数の溝の端部の一方又は両方を、前記複数の溝の形成方向に対して略垂直方向に形成された通路溝によって連通すると、溝間を種子が移動できるようになり、貫通孔に種子を迅速に配分できるようになる。
【0017】
前記複数の溝を、前記上板と前記下板との相対的な摺動方向に対して交差する方向に形成すると、そしてまた、前記溝の幅に対する溝の形成間隔を1.5倍以上とすると、上板の剛性がより保持され、上板の撓みが一層防止されるようになる。
【0018】
前記複数の溝及び前記通路溝の少なくとも一方に、播種されなかった種子を回収するための回収孔を設けると、播種されなかった種子を飛散させることなく迅速に回収できるようになる。また、回収孔を封止部材によって封止・開放可能とする、あるいは回収孔への種子の進入を仕切り部材で阻止・開放するようにすると、播種作業中に回収孔から種子が漏れ出るのを確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る播種機についてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0020】
本発明に係る播種機の一実施形態を図1及び図2に示す。図1は播種機の斜視図であり、図2は図1のA−A線断面図である。なお、図12及び図13に示した従来の播種機と同じ部材及び部分は同一の符号を用いる。
【0021】
図1及び図2の播種機は、播種すべき種子を収容する、略直方体箱状で上面開口の容器本体1と、容器本体1に対して摺動自在のスライド板(上板)2とを有している。容器本体1は、複数の大孔15が縦横方向に所定間隔で形成された底板部(下板)11と、底板部11の周縁から上方に延出した外側壁部12と、外側壁部12の上端からそれぞれ内方に向かって延出した天壁部13と、天壁部13の端部から垂下した内側壁部14とを有する。内側壁部14と底板部11との間には、スライド板2の摺動を可能とし、且つスライド板2の上面と内側壁部14の下端との間の種子の通過を不能とする隙間が形成されている。なお、底板部11に形成された大孔15は、後述するように、種子を落下させるためのものであって、貫通孔であればその形状に特に限定はない。例えば、1列の小孔に対応するような1つの長孔であってもよい。
【0022】
容器本体1は、底板部11、外側壁部12、天壁部13、内側壁部14のそれぞれ別体として作製した後、接合して成形してもよいし、これらを一体に成形してもよい。容器本体1の材質に特に限定はなく従来公知のものを使用できるが、播種作業の利便性を考慮すると、少なくとも底板部11は透明な材料が望ましい。具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリプロピレンやプロピレン共重合体等のプロピレン、プロピレンを含んでなるプロピレン系樹脂、塩化ビニル、ナイロン、ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂等が挙げられる。上記例示の樹脂のうち、アクリル樹脂を用いることがより好ましい。アクリル樹脂の中でも、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が特に好ましい。
【0023】
一方、スライド板2は、平面視が長方形状の本体部21と、本体部21の、摺動方向の一方側の側辺から上方に延出した垂直壁部22とを有する。スライド板2は、容器本体1の一つの外側壁部12の下方に形成された細長い開口部16から、容器本体1の底板部11の上面を摺動するように挿入されている。そして、スライド板2の垂直壁部22と、容器本体1の、開口部16が形成された外側壁部12とは、押しバネSが外挿された一対のピンPで接続されている。
【0024】
スライド板2の本体部22の表面には、摺動方向に対して直交する方向に所定間隔で平行に複数の溝23,23・・・(以下、単に「溝23」と記す)が形成されている。そして溝23の底面には所定間隔で種子を収容する小孔(貫通孔)24、24・・・(以下、単に「小孔24」と記す)が形成されている。なお、この実施形態では、小孔24を上記のように配列形成しているが、小孔24の配列形成はこれに限定されるものではなく、播種しようとする種子の種類や育苗ポットの配列などから適宜決定すればよい。また、小孔24の形状は丸孔に限定されるものではなく、播種する種子の形状等から適宜決定すればよい。そしてまた、小孔24の大きさは、種子を収容できるように、種子の大きさや形状等から適宜決定すればよいが、例えば粒径1.0〜1.7mm程度の種子1粒を収容する場合、小孔24の直径は2mm程度が好ましい。
【0025】
また、図1及び図2の播種機では、小孔24は、溝23の幅方向中央に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば図3に示すように、溝23の側壁に近接して形成しても構わない。溝23の側壁に近接して小孔24を形成すると、溝23の側壁に沿わして種子9を移動させることによって、種子9を小孔23に容易に入れられるようになる。
【0026】
また、スライド板2に形成する溝23の幅は、種子が流動する範囲であれば特に限定はないが、種子の円滑な流動と小孔24への迅速な収容とを満たす観点からは、播種する種子の粒径の2〜6倍の範囲が好ましい。溝23の深さは、スライド板2の本体部21の厚さと、播種する種子の粒径から決定される小孔24の深さとの差から定まる。溝23の幅d(図1に図示)に対する溝23の形成間隔D(図1に図示)は、スライド板2の強度等の点から、1.5倍以上とするのが好ましい。
【0027】
溝23の形成方向は、スライド板2の摺動方向に対して直交する方向に限定されるものではないが、種子を小孔24に入れる作業性やスライド板2の耐撓み性の点からは、スライド板2の摺動方向に対して交差する方向が好ましく、より好ましくは上記実施形態のようなスライド板2の摺動方向に直交する方向である。なお、各溝23の形成方向は必ずしも同方向である必要なく、例えば「ハ」字状であっても構わない。
【0028】
また、図1の播種機において、スライド板2の表面には、溝23の両端部を連通するように通路溝25a,25bが形成されている。この通路溝25a,25bには小孔24は形成されておらず、容器本体1内に投入された種子は通路溝25a,25bを通って溝間を移動し、また小孔24に収納されなかった種子は通路溝25a,25bに貯留する。このような通路溝25a,25bをスライド板2に設けなくても本件発明の効果は奏されるが、通路溝25a,25bを形成する方が、種子を小孔24に入れる作業効率及び所定粒播種の確実性は上がる。また通路溝25a,25bは溝23の一方端部に形成するよりも両端部に設ける方が、種子の移動循環が効果的に行われ、小孔24内への種子の収容が迅速に行われるようになり好ましい。
【0029】
スライド板2の成形は、容器本体1の成形と同様に、本体部21と垂直壁部22とを別体として作製した後、接合して成形してもよいし、これらを一体に成形してもよい。スライド板2の材質に特に限定はなく従来公知のものを使用できるが、播種作業の利便性を考慮すると、少なくとも本体部21は透明な材料が望ましい。具体的な樹脂材料としては、容器本体1の好適材料として挙げたものがここでも例示される。スライド板2を一体成形する場合には、例えば、射出成形や熱成形、ブロー成形などの成形方法を用いることができる。
【0030】
次に、このような構成の播種機を用いた播種作業について説明する。まず、播種する種子を容器本体1内に適当量投入し、播種機を適宜振動、揺動、回動する等の操作をする。これによって、複数の溝23および通路溝25a,25b内を種子が循環や往復するように移動し、スライド板2の小孔24のそれぞれに種子が入る。このとき、スライド板2の小孔24と容器本体1の大孔15とは、図4(a)に示すように、種子の播種方向に重なり合わない状態にある。従って、小孔24の下端開口は容器本体1の底板部11によって封鎖され、小孔24内に入った種子9は小孔24内に保持される。
【0031】
すべての小孔24に種子が入ると、例えば通路溝25b(図1に図示)が下方となるように播種機を若干傾け、余った種子を通路溝25bに集めてそこに留める。そして、播種機を所望の播種位置に合わせて配置する。次に、スライド板2の垂直壁部22を、押しバネSの力に抗して容器本体1方向へ押す。すると、スライド板2が摺動して、図4(b)に示すように、スライド板2の小孔24の下部に、対応する大孔15が位置するようになり、小孔24の下端開口が開放され、小孔24に収容されていた種子9が落下して播種が行われる。
【0032】
次に、スライド板2の垂直壁部22に対する容器本体1方向への押圧を解除すると、押しバネSの弾性力によってスライド板2は容器本体1から離れる方向に摺動する。これによって、小孔24の下端開口は容器本体1の底板部11で封鎖される。そしてまた、播種機を揺動・回動等の操作することによって小孔24内に種子9を入れ、前記の操作を繰り返して、各育苗ポットまたは地床に種子9を所定粒ずつ所定間隔に播種する。
【0033】
一連の播種作業が終了した後、播種機に残った種子を回収する。播種機から種子を回収する方法に特に限定はなく、例えば、播種機を若干傾けて通路溝25bの一方端に種子9を集めた後、播種機を大きく傾けて、容器本体1の内側壁部14上を種子9が転げ落ちるようにして、用意した所定の容器内に種子9を回収するようにしてもよい。なお、小さな粒径の種子の場合、上記方法による種子回収では種子が飛散する等の不具合が生じるおそれがあるので、例えば、播種機を次のような構成として種子回収することが推奨される。
【0034】
図5は、種子の回収を容易に且つ円滑に行える播種機の一例を示す平面図である。スライド板2表面の通路溝25bの一方端の隅部に回収孔27が形成されている。そして、容器本体1の底板部11には、開口17が形成されている。回収孔27と開口17とは、押しバネSによってスライド板2が容器本体1から離れた位置あるときは重なり合わず、スライド板2が、押しバネSの力に抗して、容器本体1に近づいた位置になったときは、回収孔27が開口17の上側位置となるように形成されている。なお、回収孔27は、通路溝25a,25b及び溝23のいずれの位置に形成してもよいが、効率よく種子を集めて回収する観点からは、通路溝25a,25b及び溝23の隅部に形成するのが望ましい。また、回収孔は2個以上設けてももちろん構わない。
【0035】
図6に、図5の播種機における種子回収作業を説明するための斜視図を示す。播種作業中には、回収孔27から種子9が落下するのを防止するため、回収孔27は円筒形状の栓(封止部材)71で封止されている(図6(a))。そして、一連の播種作業が終了すると、回収孔27から栓71が外されると共に、回収孔27が重力方向下方となるように播種機が若干傾けられ、回収孔27に種子9が集められる(図6(b))。次に、スライド板2を、押しバネSの力に抗して容器本体1方向へ移動させると(図5を参照)、回収孔27は、開口17の上方位置にくる(図6(c))。ここで、開口17の直下に所定の回収容器を配置しておけば、回収孔27及び開口17を通って種子9は落下し回収容器内に迅速且つ円滑に回収される。
【0036】
なお、回収孔27の形状に特に限定はなく、播種すべき種子やコート種子の形状等から適宜決定すればよい。また開口17を長孔とし、回収孔27の移動に拘わらず回収孔27と開口17とが常に連通しているようにしてもよい。この場合、栓71の下部を開口17に進入させることが可能となる。また、スライド板2を摺動させることなく、回収孔27から栓71を外すだけで種子を回収できるようになる。
【0037】
図7に、本発明で使用できる封止部材の他の実施形態を示す。この実施形態の栓(封止部材)72は、同図(a)に示すように、円筒状で下面開口の本体部721と、本体部721の上面に形成されたツマミ723とを備え、本体部721の側面には、種子が通過できる大きさの開口部722が形成されている。栓72は、回収孔27を塞ぐようにスライド板2に対して回動可能に取り付けられ、播種作業中は、同図(b)に示すように、本体部721の側面が通路溝25bに露出する状態に保持され、回収孔27への種子の進入が当該側面によって阻止される。そして、一連の播種作業が終了すると、同図(c)に示すように、ツマミ723によって、開口部722が通路溝25bに露出するように栓72が回動される。これによって、前記実施形態と同様に、開口部722を通って種子は落下可能となり、所定の回収容器内に回収できるようになる。
【0038】
図8に、封止部材として蓋部材を用いた場合の一例を示す。同図(a)に示すように、回収孔27に隣接して溝28がスライド板2に形成されている。この溝28内に、蓋部材(封止部材)73が摺動自在に取り付けられている。蓋部材73は、直方体形状の本体部731と、本体部731の上面に形成されたツマミ732とを有する。播種作業中は、同図(b)に示すように、蓋部材73の本体部731によって回収孔27は封鎖される。そして、一連の播種作業が終了すると、同図(c)に示すように、蓋部材73は、ツマミ732によって溝28内を、回収孔27を開放する方向に摺動され、これによって、前記実施形態と同様に、回収孔27を通って種子は落下可能となり、所定の回収容器内に回収できるようになる。
【0039】
図9は、播種作業中に回収孔27から種子がこぼれ落ちるのを防止するために、仕切り部材を用いた場合の一例を示す斜視図である。スライド板2に形成された回収孔27に向かう通路の両壁に、四角形状に窪んだ凹部29a,29bが形成されている。播種作業中は、同図(a)に示すように、この凹部29a,29bに、仕切り板(仕切り部材)81の両側端部が嵌め入れられ、仕切り板81によって回収孔27への種子の進入が阻止される。そして、一連の播種作業が終了すると、同図(b)に示すように、仕切り板81が、スライド板から取り外され、これによって、回収孔27への種子の進入が可能となり、所定の回収容器内に種子を回収できるようになる。なお、この実施形態では、仕切り部材をスライド板2に対して取り外し可能としているが、仕切り部材をスライド板2から取り外すことなく、例えば、回収孔27に向かう通路に出入可能又は回動可能に設けて、回収孔27に向かう通路を封鎖・開放するようにしても構わない。
【0040】
本発明で用いる封止部材及び仕切り部材は、回収孔27を封止・封鎖及び開放できるものであればよく、前記実施形態に限定されることなく従来公知の部材を用いることができる。
【0041】
図10及び図11に、本発明に係る播種機の他の実施形態を示す。図10は、播種機の摺動方向と平行な縦断面斜視図、図11は、播種機の摺動方向と直角方向の縦断面斜視図である。この実施形態が、前記実施形態と異なる点は、前記実施形態の播種機では、下板が固定で上板が摺動するのに対し、この実施形態の播種機では上板が固定で下板が摺動する点にある。すなわち、前記実施形態とこの実施形態とは、スライド板が、容器本体の底板部の上側を摺動するのか、底板部の下側を摺動するのかが異なる。以下、この異なる点を中心に説明する。
【0042】
図10及び図11の播種機は、略直方体箱状で上面開口の容器本体3と、この容器本体3の外底面に摺動自在に取り付けられたスライド板(下板)4とを有する。容器本体3は、底板部(上板)31と、底板部31の周縁から上方に延出した側壁部32と、側壁部32の上端から水平に外方へ延出したつば状部33と、つば状部33の一辺の端部から下方へ延出した垂下壁部34とが一体成形されてなる。そして底板部31の表面には、摺動方向に対して直交する方向に所定間隔で平行に複数の溝35,35,・・・が形成され、溝35の両端部には、溝35を連通するように通路溝37が形成されている。そして複数の溝35の底面には所定間隔で種子を収容する小孔(貫通孔)36が形成されている。容器本体3の底板部31に形成される溝35、小孔36、通路溝37の具体的構成は、前記実施形態の構成をこの実施形態でも採用できる。
【0043】
一方、スライド板4は、平面視が長方形状の本体部41と、本体部41の、摺動方向の一方側の側辺から上方に延出した垂直壁部42とを有する。スライド板4の本体部41には、容器本体3に形成された小孔36に対応する複数の大孔43が形成されている。
【0044】
図11に示すように、容器本体3の底板部31の外底面の向かい合う側部には、断面「L」字状の一対のガイド部材5a,5bが取り付けられている。この一対のガイド部材5a,5bの間にスライド板4の本体部41の両側端部を差し入れることによって、スライド板4は容器本体3に対し摺動自在に取り付けられる。そして、スライド板4の垂直壁部42と容器本体3の垂下壁部34とは、押しバネSが外挿された一対のピンPで接続されている。
【0045】
図10に示すように、播種機は通常状態では、押しバネSの付勢力によって小孔36と大孔43とは種子落下方向に重ならない位置に保持されている。即ち、小孔36の下端開口はスライド板4によって封鎖されている。この状態で種子を各小孔36に入れる。そして、播種機を所望の播種位置に合わせて配置する。次に、スライド板4の垂直壁部42を、押しバネSの力に抗して容器本体3方向へ押す。すると、スライド板4が摺動して、容器本体3の小孔36の下部に、対応する大孔43が位置するようになり、小孔36の下端開口が開放され、小孔36に収容されていた種子が播種機の下方に落下し、播種が行われる。次に、スライド板4の垂直壁部42に対する容器本体3方向への押圧を解除すると、押しバネSの弾性力によってスライド板4は容器本体3から離れる方向に摺動し、前記の通常状態に戻る。
【0046】
以上説明した本発明の播種機は、1粒の種子を小孔に収容し播種する用途に好適に用いられる。また、前述のように粒径が2mm以下の小さな粒子の播種に好適に用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の播種機は、粒径の小さい種子でも、摺動する上板と下板との間に挟み込むことなく確実に播種することでき有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る播種機の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】小孔の形成位置の例を示す斜視図である。
【図4】小孔への種子の収容と、播種とを示す概説図である。
【図5】回収孔を設けた本発明に係る播種機の一実施形態を示す平面図である。
【図6】図5の播種機における種子の回収作業の説明図である。
【図7】回収孔を設けた本発明に係る播種機の他の実施形態を示す斜視図である。
【図8】回収孔を設けた本発明に係る播種機の他の実施形態を示す斜視図である。
【図9】回収孔を設けた本発明に係る播種機の他の実施形態を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る播種機の他の実施形態を示す縦断面斜視図である。
【図11】図10の播種機の他方向の縦断面斜視図である。
【図12】従来の播種機を示す平面図である。
【図13】図12の播種機のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 容器本体(下板)
2 スライド板(上板)
3 容器本体(上板)
4 スライド板(下板)
9 種子
17 開口
23,35 溝
24,36 小孔(貫通孔)
25a,25b,37 通路溝
27 回収孔
71,72 栓(封止部材)
73 蓋部材(封止部材)
81 仕切り板(仕切り部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
播種すべき種子の大きさに応じて形成された複数の貫通孔を有する上板と、この上板の下側に重なるように設けられた下板とを有し、前記上板と前記下板とは相対的に摺動可能であり、前記複数の貫通孔の下端開口は前記下板によって開放・封鎖される播種機において、
前記上板の表面に複数の溝が形成され、前記複数の貫通孔が、前記複数の溝の底面に設けられていることを特徴とする播種機。
【請求項2】
前記複数の溝の幅が、播種すべき種子の粒径の2〜6倍の範囲である請求項1記載の播種機。
【請求項3】
前記複数の溝が、所定間隔で略平行に形成され、
前記複数の溝の端部の一方又は両方が、前記複数の溝の形成方向に対して略垂直方向に形成された通路溝によって連通している請求項1又は2記載の播種機。
【請求項4】
前記複数の溝が、前記上板と前記下板との相対的な摺動方向に対して交差する方向に形成されている請求項1〜3のいずれかの請求項に記載の播種機。
【請求項5】
前記複数の溝の幅に対する溝の形成間隔が、1.5倍以上である請求項1〜4のいずれかの請求項に記載の播種機。
【請求項6】
前記複数の溝及び前記通路溝の少なくとも一方に、播種されなかった種子を回収するための回収孔が形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の播種機。
【請求項7】
前記回収孔を封止・開放する封止部材をさらに備えた請求項6記載の播種機。
【請求項8】
前記回収孔への種子の進入を阻止する仕切り部材を前記上板に設けた請求項6記載の播種機。
【請求項1】
播種すべき種子の大きさに応じて形成された複数の貫通孔を有する上板と、この上板の下側に重なるように設けられた下板とを有し、前記上板と前記下板とは相対的に摺動可能であり、前記複数の貫通孔の下端開口は前記下板によって開放・封鎖される播種機において、
前記上板の表面に複数の溝が形成され、前記複数の貫通孔が、前記複数の溝の底面に設けられていることを特徴とする播種機。
【請求項2】
前記複数の溝の幅が、播種すべき種子の粒径の2〜6倍の範囲である請求項1記載の播種機。
【請求項3】
前記複数の溝が、所定間隔で略平行に形成され、
前記複数の溝の端部の一方又は両方が、前記複数の溝の形成方向に対して略垂直方向に形成された通路溝によって連通している請求項1又は2記載の播種機。
【請求項4】
前記複数の溝が、前記上板と前記下板との相対的な摺動方向に対して交差する方向に形成されている請求項1〜3のいずれかの請求項に記載の播種機。
【請求項5】
前記複数の溝の幅に対する溝の形成間隔が、1.5倍以上である請求項1〜4のいずれかの請求項に記載の播種機。
【請求項6】
前記複数の溝及び前記通路溝の少なくとも一方に、播種されなかった種子を回収するための回収孔が形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の播種機。
【請求項7】
前記回収孔を封止・開放する封止部材をさらに備えた請求項6記載の播種機。
【請求項8】
前記回収孔への種子の進入を阻止する仕切り部材を前記上板に設けた請求項6記載の播種機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−72176(P2009−72176A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299981(P2007−299981)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(596005964)住化農業資材株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(596005964)住化農業資材株式会社 (29)
【Fターム(参考)】
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