説明

撮像における拡散励起用の方法および装置

【課題】感度が高く、エッジ効果が抑制された結合装置を提供する。
【解決手段】本発明は、検査すべき媒質(11)の光学断層式検査を目的とした少なくとも1本の光ファイバ(10、12)用の結合装置であって、検査すべき媒質(11)の表面(110)に接触させるべき支持面(22)を備える、光ファイバによって案内される波長用の拡散材料の塊(30)と、塊内に設けられ、かつ光ファイバ(10、12)の端部を受けることのできる少なくとも1つのハウジング(27、29)とを備える装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学分野に適用される拡散光学撮像、特に生体内および生体外の蛍光撮像の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
このような技術は、使いやすく低コストである、非イオン化放射を使用することによる非侵襲診断システムを実施するのに使用することができる。
【0003】
拡散光学撮像の1つの用途は蛍光撮像であり、この場合、蛍光マーカーまたはフルオロフォア(励起後に蛍光を放出することのできる分子の化学物質)が、検査すべき対象に注入され、それ自体がある特定の分子、たとえば癌性腫瘍に固定される。関心領域は、フルオロフォアの最適な励起波長で照明される。次に、蛍光信号が検出される。
【0004】
蛍光マーカーを注入しない拡散光学撮像技術も存在する。この場合、励起波長と同じ波長の信号の分析が試みられる。
【0005】
これらの蛍光断層撮影技術のうちの1つを実施する装置の一例が図1に示されている。
【0006】
たとえばチタンサファイアの励起レーザ8は、パルス列をある反復率、たとえば80MHzで供給し、励起ファイバ10からの平均出力は数百ミリワットになる。このレーザは、様々な種類の蛍光を励起するように波長を調整することができる。レーザは、励起光ファイバ10に注入され、サンプル11、すなわち、使用される技術の種類に応じて蛍光マーカーが含まれることも含まれないこともある拡散媒質を検査するのを可能にする。
【0007】
媒質内に蛍光マーカーが存在する場合、蛍光マーカーが放出した蛍光は、第2の検出光ファイバ12によって収集され、フィルタリングされた蛍光信号(参照符号16はフィルタを示す)は、蛍光信号を測定するのを可能にする手段13に連結された検出器、たとえば光電子増倍管4を使用して測定される。
【0008】
蛍光マーカーがない場合、検査は拡散光学検査であり、拡散された信号が第2の光ファイバ12によって収集され、この場合、フィルタ16が励起波長に適合される。
【0009】
どんな技術が使用されるかにかかわらず、感度を高めるために、検査される媒質に高いレーザエネルギーを注入することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許第1884765号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、エネルギー密度がある値を超えるとこの媒質が損傷する問題が生じる。このことは特に、組織、特に生体組織、たとえばヒトの器官(乳房、前立腺、脳、睾丸、腕、頸動脈、甲状腺等)の組織を扱う場合に当てはまる。
【0012】
パルスを幾何学的に広げることを試みることが可能である。しかし、組織が熱を放出するのが容易でないことに加えて、ファイバ10の直径が1mm程度以上になると画像の解像度が低下する。
【0013】
他の問題は、感度の問題であり、検査される媒質11から放出される光子の最適な収集を実現することが望ましい。特に介在物(interface)での損失を最小限に抑えることが試みるのが効果的である。
【0014】
他の問題は、再構成を阻害するエッジ効果に関し、この効果は正確にモデル化するのが困難である。したがって、媒質の特性を再構成する際、媒質の境界がエラーの原因となることが分かっている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、第1に、検査すべき媒質の光学検査のために少なくとも1本の光ファイバを結合する結合装置であると共に、検査が拡散光学撮像型の検査である、装置において、光ファイバによって案内される波長用の拡散材料のマトリックスまたは塊(mass)であって、検査すべき媒質の表面に接触させるべき支持面を備えるマトリックスまたは塊と、
一方の端部が拡散材料内に永久的に配置された少なくとも1本の光ファイバおよび/または塊内に設けられ、光ファイバの端部を受けることのできる少なくとも1つのハウジングとを備える装置に関する。
【0016】
本明細書の残りの部分では、マトリックスまたは塊または拡散マトリックスまたは拡散塊の各表現は同様に使用される。
【0017】
使用時には、マトリックスは、サンプルまたは検査される器官に接触するように配置される。
【0018】
この装置は、
それぞれが光ファイバの端部を受けることのできる少なくとも2つのハウジング、または
一方の端部が拡散材料内に永久的に配置された少なくとも1本の光ファイバおよび光ファイバの端部を受けることのできる少なくとも1つのハウジング、または
各ファイバの一方の端部が拡散材料内に永久的に配置された少なくとも2本のファイバを備える。
【0019】
より一般的には、同じマトリックス内に任意の数のハウジングおよび/またはファイバ端部を設けることができ、ハウジングが1本または複数のファイバ(励起ファイバおよび/または収集ファイバ)を受け入れるように構成される。
【0020】
特に、信号収集ファイバは、蛍光信号であるか、それとも拡散信号であるかにかかわらず、塊またはマトリックスの拡散物質内に永久的に挿入するかあるいは拡散物質内部のハウジング内に挿入することができる。この場合、このファイバが本発明の結合装置の外側に配置される場合と比べて信号収集の効率が向上することが分かっている。
【0021】
マトリックスを使用することの効果は、媒質の境界が励起ファイバおよび/または収集ファイバの端部から離れることであり、それによって、エッジ効果に関係する摂動が制限される。(支持面に実質的に垂直な方向に沿った)厚さが数cmを超える、たとえば3cmまたは5cmよりも大きい厚いマトリックスでは、エッジの影響を無視することができ、この場合、条件は、後で媒質の光学特性の再構成を容易にしかつ向上させる無限媒質の条件に近い。
【0022】
好ましくは、
1つのハウジングは、少なくとも1つの他のハウジングの底部および/またはファイバの端部が配置された距離(H)よりも短い、支持面からの距離(h)に配置された底部を有し、かつ/あるいは
1本のファイバは、一方の端部が、少なくとも1つの他のハウジングの底部が配置され、かつ/あるいは他のファイバの端部が配置された距離(H)よりも短い、支持面からの距離(h)において、拡散塊内に永久的に配置される。
【0023】
したがって、1本または複数の励起ファイバ端部を、検査される媒質との介在物(interface)から、1本または複数の収集ファイバの端部よりも遠くに位置させ、収集されるエネルギーを最大にすることが可能である。好ましい一実施態様によれば、高さhとしては、少なくとも1本の収集ファイバの場合には零が選択され、それによって、少なくとも1本の収集ファイバが媒質と接触するかあるいは媒質のできるだけ近くに位置し、収集されるエネルギーが最大になる。
【0024】
ファイバが、励起信号または入射信号を伝達し、拡散材料のマトリックスまたは塊のハウジングに挿入される場合、あるいはファイバの端部がこの塊内に永久的に密閉される場合、この塊は励起放射を拡散させる。この拡散は、拡散媒質が検査される媒質の光学特性に近い光学特性を有する場合には、検査される媒質の拡散と類似している。「近い」とは、検討中のパラメータの少なくとも1つ、たとえば吸収係数や低減された拡散係数(reduced diffusion coefficient)について相対偏差が30%未満であり、好ましくは20%であることを意味する。
【0025】
この場合、介在物および検査される媒質を単一の拡散媒質とみなすことができる。また、これによって、再構成ステップ中の計算が簡略化される。
【0026】
したがって、拡散媒質は、検査される媒質の組織の吸収係数μaおよび低減された拡散係数μs'に近い吸収係数μaおよび低減された拡散係数μs'を有することが好ましい。
【0027】
したがって、拡散材料は、たとえば、低減された拡散係数μs'が0.1cm-1より大きくかつ700cm-1より小さく、好ましくは1cm-1から50cm-1の間であり、さらに好ましくは5cm-1から20cm-1の間である。
【0028】
拡散材料は、吸収係数μaが0.01cm-1より大きくかつ10cm-1より小さくてよい。この係数は低減された拡散係数μs'より小さいことが好ましい。0.01cm-1から1cm-1の間の値が好ましい。
【0029】
吸収層が拡散材料の塊を部分的にあるいは少なくとも部分的に覆うことができる。これは、マトリックスを部分的に覆うかあるいは少なくとも部分的に覆う黒色塗料または陽極酸化金属の層であってよい。この層には金属との接触面がないことが好ましい。
【0030】
検査すべき対象と接触するように構成された支持面上の励起ビームのスポットは、表面積Stが1mm2から1cm2または数cm2、たとえば5cm2の間であるか、あるいは約10cm2または数10cm2程度、たとえば10cm2から20cm2または50cm2の間であることが好ましい。
【0031】
本発明の他の特定の実施形態によれば、支持面は、鋭い縁部を含まない実質的に丸い形状を有し、検査すべき対象に接触させる支持面を延ばす1つまたは複数の隆起部をさらに有する。
【0032】
この装置は有利なことに、底部が実質的に隆起部内または隆起部の所に配置された、少なくとも1つのハウジングまたは少なくとも1本のファイバの端部を備えてよい。
【0033】
本発明によれば、励起ビームまたは入射ビームは、拡散塊の外側または内側に配置された光源、一般的には点光源から送られるが、組織は、拡散塊内で励起信号が拡散することによって広範囲に照明される。
【0034】
光源または光源点は、直径が3mm未満で、好ましくは500μm未満であり、一方、組織は、直径が少なくとも1mmまたは5mmまたは10mmであり、好ましくは少なくとも20mm未満または5cm未満であるスポットによって照明される。この点光源は、マトリックス内に配置することができ、このケースは特に、一方の端部が拡散塊内に含められる光ファイバに対応し、すなわち、この端部が場合によっては、点光源とみなされる。このことは、励起ファイバの端部が拡散塊に設けられた開口部に挿入されるか、あるいは励起ファイバの端部が、たとえば成形によって、拡散塊内に永久的に固定される場合に特に当てはまる。しかし、場合によっては光源を拡散塊から離れた位置に配置することができる。
【0035】
マトリックスがクラッディングとして働く場合、一方のファイバの端部はコアを備えるだけでよい。
【0036】
本発明の他の主題は、特に媒質の蛍光撮像用の拡散光学撮像装置であって、
a)放射源を形成し、少なくとも第1の波長で媒質上への入射放射を形成する手段、たとえばレーザと、
b)一方の端部が拡散塊内に永久的に配置された光ファイバを備えるか、あるいは拡散材料の塊内に設けられたハウジング内に配置された光ファイバを備える、本発明による結合装置と、
c)検査中の媒質から得られた拡散信号または蛍光信号を検出する検出手段とを備える装置である。
【0037】
結合装置のこの光ファイバは、媒質によって放出された信号を収集し、検出手段の方へ送る収集光ファイバであってよい。
【0038】
この装置は、検査すべき媒質上に入射放射を送る励起光ファイバをさらに備えてよい。
【0039】
結合装置の光ファイバは、検査すべき媒質上に入射放射を送る励起光ファイバであってよい。
【0040】
特定の一実施態様ではやはり、レーザや光ファイバなどの励起光源が拡散マトリックスから離れた位置に位置し、かつ対応する放射が、マトリックスを通過することによって、検査すべき媒質の方へ送られ、1本または複数の収集ファイバが、本発明によるマトリックス内に永久的または一次的に位置する。
【0041】
特定の一実施態様ではやはり、レーザや光ファイバなどの励起光源が拡散マトリックスから離れた位置に位置し、かつ対応する光放射が、マトリックスを通過することなしに、検査すべき媒質の方へ送られ、1本または複数の収集ファイバが、本発明によるマトリックス内に永久的または一次的に位置する。
【0042】
放射源は、パルス連続時間放射源(a pulsed continuous-time radiation source)またはパルス振幅変調放射源(a amplitude-modulated source)であってよい。適用される拡散光学撮像技術は時間分解式または任意の他の種類の技術であってよい。この技術を蛍光拡散光学撮像、たとえば蛍光断層撮影、または拡散媒質の光学特性の判定に適用することができる。
【0043】
本発明の他の主題は、媒質の一部を検査する拡散光学撮像式の検査方法であると共に、本発明の少なくとも1つの結合装置が使用される方法において、
結合装置がこの媒質に接触させられ、
媒質が、放射源を形成して、媒質上に入射放射を形成し、次にこの入射放射を媒質に入射させる手段によって照明されるかあるいは光学的に励起され、
媒質から放射された光学信号が少なくとも1本の収集光ファイバによって収集される方法である。
【0044】
結合装置の拡散媒質の支持面と検査すべき媒質の表面との間に流体が与えられることが好ましい。
【0045】
結合流体を用いるか用いないかにかかわらず、予想外のことであるが、検査すべき媒質が、たとえば生体組織と同様にある種の可撓性を有する場合、検査すべき媒質に接触させた結合装置に圧力をかけると、受信信号を増大することが可能になることが分かった。少なくとも1本の励起ファイバおよび/または少なくとも1本の収集ファイバを備える本発明による装置を実施すると、有利なことに、圧力をかけて、検査される媒質に結合装置を接触させ、この媒質に含まれる流体をこの媒質の外部の、結合装置の周囲に配置された領域の方へ流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】従来技術による方法を実施する装置を示す図である。
【図2】円筒状拡散マトリックスを含む本発明の実施形態の例を示す図である。
【図3】実質的に半球状の拡散マトリックスを含む本発明の他の実施形態の例を示す図である。
【図4】各ファイバ用の拡散マトリックスを含む本発明の他の実施形態の例を示す図である。
【図5A】2本の励起ファイバおよび1本の信号収集ファイバを含む本発明の他の実施形態の一例を示す図である。
【図5B】2本の信号収集ファイバおよび1本の励起ファイバを含む本発明の他の実施形態の一例を示す図である。
【図6A】1本または複数の励起ファイバを受けることのできる1つまたは複数のハウジングを含む本発明の他の実施形態の例を示す図である。
【図6B】蛍光信号を収集する収集ファイバを受けることのできる1つまたは複数のハウジングを含む本発明の他の実施形態の例を示す図である。
【図6C】1本または複数の励起ファイバを受けることのできる1つまたは複数のハウジングを含む本発明の他の実施形態の例を示す図である。
【図6D】蛍光信号を収集する収集ファイバを受けることのできる1つまたは複数のハウジングを含む本発明の他の実施形態の例を示す図である。
【図7】本発明の装置が、分析すべき媒質の表面に接触しているときに、この装置に圧力がかけられる、本発明による装置の一使用法を示す図である。
【図8A】1つまたは複数の隆起部を備えるマトリックスを含む本発明の他の実施形態の例を示す図である。
【図8B】1つまたは複数の隆起部を備えるマトリックスを含む本発明の他の実施形態の例を示す図である。
【図8C】1つまたは複数の隆起部を備えるマトリックスを含む本発明の他の実施形態の例を示す図である。
【図8D】1つまたは複数の隆起部を備えるマトリックスを含む本発明の他の実施形態の例を示す図である。
【図9A】本発明による装置のマトリックスを示す図である。
【図9B】このマトリックスの支持面上に照明によって生成されるスポットを示す図である。
【図9C】このスポットの断面に沿った強度プロファイルを示す図である。
【図10A】端部がマトリックスの材料内に永久的に配置されたファイバを含む本発明の他の実施形態の例を示す図である。
【図10B】端部がマトリックスの材料内に永久的に配置されたファイバを含む本発明の他の実施形態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明の実施形態の第1の例は図2に示されている。
【0048】
この図は、それぞれ検査すべき拡散媒質11内に励起ビーム9(またはより一般的には入射ビーム)を送り込み、かつ同じ媒質から放射される蛍光信号または拡散信号を収集するファイバ10、12を示している。
【0049】
この例では、2本のファイバ10、12の端部が拡散材料内の介在物エレメント20に挿入される。本明細書の残りの部分では、表現「マトリックス」が使用されるが、その代わりに語「介在物」または「塊」を同様に使用してよい。このマトリックスは固体材料であってよいが、柔らかい粘性または液状の材料であってもよく、その場合、マトリックスはたとえば脂質内に位置する。
【0050】
この場合のマトリックスは、実質的に円筒状であり、円筒の回転軸XX'に垂直な2つの面22、24を有する。これらの面の一方(図2における面24)は、2つのキャビティまたはハウジング27、29用の2つの開口部26、28を備えている。これらのハウジングは、2本のファイバ、すなわち励起ファイバ10および収集ファイバ12が開口部26、28を介して挿入されたときにこれらのファイバの端部を受けるように構成されている。言い換えれば、好ましくは実質的に円形である開口部26、28はそれぞれ、好ましくはファイバに適合されて実質的に円筒状であるキャビティ27、29を形成する壁によってマトリックス20の拡散材料の塊内を延びている。各キャビティは、検査すべき媒質11と接触するように構成された表面22に面する一方の密閉端部271、291を有している。
【0051】
各密閉端部271、291は、ハウジング27、29の、この表面22に最も近い部分でもある。励起ビーム9は、端部271を介して、励起ファイバ10から出てマトリックスに入り、拡散ビーム9は、端部291を介して、マトリックスから出て収集ファイバ12によって収集される。マトリックス内にこのように形成された各キャビティは、少なくとも1本のファイバを受けるように構成されている。したがって、各開口部26、28の直径は実質的に、開口部が受けることになっているファイバの直径である。一方および/または両方のキャビティの底部に結合液体を配置することができ、この液体の屈折率はマトリックス材料の屈折率に近いことが好ましい。
【0052】
有利なことに、マトリックスと検査中の媒質11との光学的結合を向上させ、したがって、マトリックスおよび媒体11から成る拡散システム内の光線の伝搬のモデル化を容易にするには、マトリックス材料の拡散および任意に吸収の光学特性として、検査すべき媒質の光学特性に近い特性を選択することができる。
【0053】
したがって、マトリックスの構成材料の低減された拡散係数μ'sは、0.1cm-1より大きくてよく、好ましくは1cm-1から700cm-1の間で、より好ましくは1cm-1から50cm-1の間で、さらに好ましくは5cm-1から20cm-1の間であり、これらの値は、赤色光線または赤外線の励起波長または蛍光波長にうまく適合されている。
【0054】
マトリックス構成材料の吸収係数μaは、0cm-1から10cm-1の間で、好ましくは0.01cm-1から1cm-1の間であってよく、この場合も、これらの値は赤色光線または赤外線の励起波長または蛍光波長にうまく適合されている。
【0055】
吸収係数μaが小さい場合、過度の信号損失およびマトリックスの過度の加熱(あらゆる吸収が温度を上昇させる)を防止することが可能である。介在物の影響を低減させかつ再構成を容易にするために、マトリックス20は、最も均質の媒質を形成するように検査される物質11と同じ吸収係数μaを有するように形成することが好ましい。したがって、場合によっては小さい吸収係数が選択され、一方、他の用途では、検討中の媒質の吸収係数に近い吸収係数が好ましい。
【0056】
二酸化チタンインキ用樹脂型の組成物が適切な材料からなる。拡散ポリマー、または拡散粒子が添加された透明ポリマー、あるいは冷却ゲルを使用することも可能である。冷却ゲルは、PVAと略されることが多く、冷凍−解凍サイクルにかけることによって粘性にし、場合によっては固形にすることができるポリビニルアルコール化合物である。変形形態として、アガロースゲルまたは動物ゼラチンを含む粘性または固形の材料を使用することも可能である。材料の屈折率として検査される媒質の屈折率に近い値を選択することが好ましい。
【0057】
使用される励起放射9は、特に、波長がたとえば400nmから1300nmの間で、好ましくは600nmから950nmの間である赤外線であってよい。収集される信号15は、励起ビームの波長よりも大きい波長を有する(外来性マーカーから得られる蛍光信号の場合)か、あるいは(拡散信号と同様に)励起ビームの波長と実質的に同一であるかあるいは励起ビームの波長に近い波長を有する。
【0058】
表面22または支持面は、装置を検査すべき媒質11の表面11'に接触させるのを可能にする。一般に、この表面22は平面であり、少なくとも部分的に平面である表面に接触させることができる。
【0059】
しかし、表面22を湾曲させることができ、あるいは表面22は湾曲部を含んでよく、以下の説明で、特に、丸い形状を有する隆起部を含むかあるいは検査すべき媒質の表面に垂直な平面内に少なくとも1つの非零曲率半径を含む軟性または可撓性の組織を検査する場合、他の表面が適切であることが理解されよう。
【0060】
マトリックス20は、図2と同様に円筒状であってよく、その場合、表面22'に実質的に垂直な軸XX'の周りに回転対称性を有する外側表面20'を有するが、これは一例に過ぎず、この対称性は必ずしも存在するわけではない。マトリックスの形状はこの例に限らず、検査すべき媒質または組織と接触するように構成されていないマトリックスの表面は、立方体状、または直方体状、または図3のマトリックス30の表面30'のような半球状であってよいか、あるいは他の例によれば、曲面30'、40'、50'(図4〜図8D参照)およびたとえば半楕円形の平面22を有してよい。どの場合でも、マトリックスは、各々が、1本のファイバを受けるように構成された実質的に円筒形状のキャビティ27、29によって延長された少なくとも1つまたは少なくとも2つの開口部26、28を有してよい。
【0061】
考えられる実施形態とは無関係に、固形のマトリックスは、使用時に、検査される媒質の表面に接触しないように構成された外側表面20'、30'、40'、50'を有する。この表面は、たとえば黒色塗料層または陽極酸化金属層で形成された吸収層31、41、51で部分的に被覆することができる。ただし、ファイバ10、12をマトリックス内に位置させる開口部領域26、28と、分析すべき媒質に接触させる表面22上には吸収層を被覆できない。
【0062】
一般に、励起ファイバ10が本発明による結合装置に挿入される場合、光源はマトリックスの拡散媒質内の点とみなされる。しかし、励起放射が、検査される媒質11の表面11'に到達する前に、このマトリックス内で励起放射の拡散効果が生じる。たとえば、図3は、表面11'に到達する前にこの光ファイバの端部から拡散する波9'の形をした、ファイバ10から得られる励起ビームの拡散を示している。以下に詳しく説明する図9A〜図9Cは、本発明による装置によって得ることのできる拡大効果の例を示している。
【0063】
したがって、この媒質に対する入射ビームの効果は、点効果ではなく、本発明の結合装置なしでファイバのみを使用した場合よりも広い表面上に分散される。したがって、信号の表面密度は、励起が本発明による装置なしで同じ励起信号強度で検査すべき媒質の方へ送られるときよりも低くなる。
【0064】
したがって、検査すべき媒質への損傷が最小限に抑えられ、場合によっては回避される。しかし、この光源はそのまま点光源とみなされ、レーザビームまたは光ファイバを点光源としてモデル化することができる。再構成に使用されるモデルでも拡散マトリックスを考慮に入れ、拡散媒質に拡散マトリックスを組み込むことができる。
【0065】
各ハウジング27、29の深さは、ハウジング27、29が受けるファイバの機能に適合されることが好ましい。
【0066】
特に、励起ファイバ10の端部と分析すべき物質の表面11'との間の距離を等方性拡散の平均自由行程、すなわち、拡散媒質内の励起光子の低減された拡散係数(=1/μs')の逆数よりも長くすることが事実上好ましい。
【0067】
また、収集ファイバがマトリックス内で励起ファイバよりも先に位置し、したがって、収集ファイバの端部が表面22にかなり近く、好ましくは接触するのが好ましいことが分かった。
【0068】
一般に、実施形態とは無関係に、拡散媒質を区画する領域に接触するように構成された表面22は、励起ファイバ10を受けるように構成されたキャビティ27の密閉端部271よりも、密閉信号収集ファイバ12を受けるように構成されたキャビティ29の密閉端部291に近いことが好ましい。言い換えれば、表面22をこの同じ表面に最も近いキャビティ27の端部271から分離する高さHは、この表面22を表面22に最も近いキャビティ29の端部291から分離する高さhよりも大きい。たとえば、Hは0から5cmの間で、好ましくは1mmから10mmの間であり、一方、hは0から5cmの間で、好ましくは0から5mmの間であり、より好ましくは0に近い。
【0069】
信号収集の効果は、収集ファイバ12の端部が介在物22に近くなると高まる。したがって、検査される媒質から得られ、事実上、参照符号51、52、54(図3に示されている)で示される行程を辿り、直接ファイバ12の端部の方へは送られないいくつかの光子は、マトリックス20の塊および/または検査される媒質11の塊において拡散され、したがって、ファイバ12の端部の方へ送り返される。これらの光子は、反射を受けるかあるいはマトリックス20または媒質11のこの塊において拡散され(図3の行程51-52-54参照)、その一部はファイバ12によって捕捉される。これらの光子51は、媒質11と収集ファイバの端部291との間に拡散材料が配置されていない場合、信号を失う。
【0070】
やはり好ましくは、検査される対象と接触するように構成された支持面22上の、図3に示されているような励起ビームのスポット37は、数mm2から数cm2、場合によっては数10cm2程度であり、たとえば10mm2から10cm2の間の表面積Stを有する。支持面22上の励起ビームのこのスポットの直径は、拡散スポットの最大強度の中間高さにおける幅であると考えられる。このスポット27が実質的に円形である場合、支持面22の所のスポット27の直径は、たとえば500μmから1cmまたは数cmの間である。ファイバ10からの出力において、光スポットの直径sは、数百μmであり、たとえば数μmから数百μmの間で、場合によっては1mmである。これは、励起ファイバが本発明による結合装置に挿入されるのであれば、本発明の他の実施形態についても有効である。
【0071】
ファイバの端部の表面をsで示し、拡散マトリックス20の表面22をSで示すことによって、考慮すべき最大許容エネルギーは、Sの値が大きくなるほど低くなり、再構成の空間解像度は特にsに依存する。図9A〜図9Cは、上記に図2に関連して説明した種類の装置であるが、単一のファイバ、すなわち励起ファイバまたは入射ビーム10のみが挿入される本発明による装置(図9A)を使用したときの、検査される媒質11に入射するビームの拡大について説明する図である。このファイバに送られた放射は、検査される媒質と接触するように構成された出力表面22上で、実質的にDに等しい直径のスポットを形成する。この装置では、ファイバは直径が約60μmであり、ファイバの端部は、表面22から約6cmに等しい距離だけ離れて位置している。マトリックス材料のμaおよびμ's係数はそれぞれ0.03cm-1および9cm-1である。
【0072】
図9Bは、表面22の平面内のこのスポットの画像を示し、任意の単位で400から1200の間の右側のスケールに強度が表示されている。図9Cは、このスポットの平面を通過し、実質的に最大強度の領域を通過する軸AA'に沿った強度プロファイルを示している。この曲線によって、ここでは約4cmである中間高さにおける幅を規定することが可能であることが分かる。この中間高さ幅によって、表面22の所に入射ビームの直径を規定することができる。この例では、入射ビームの照明面が、直径60μm(ファイバ10から出る時点)から直径数センチメートルに増大するため、この例では、本発明による装置が事実上、入射ビームの照明面をかなり大きくするのを可能にすることも理解されよう。光源がマトリックスの外側に配置されるが、拡散媒質11に到達する前にマトリックス30を通過するビーム、たとえば点ビームを生成するファイバまたはレーザ光源である場合、励起ビームの同じ拡大効果が観測されることは明らかである。この場合、やはりこの拡散マトリックスの利点の1つが得られ、すなわち、入射ビームが拡大され、それによって、検査される媒質に損傷を生じさせずに高強度の光源を使用することが可能になる。この技術的効果は、励起信号が拡大されることにより信号の表面密度が低下することによって得られ、この拡大は、この励起信号が媒質11に到達する前にマトリックス30内で拡散する作用の下で生じる。
【0073】
上記の例では、マトリックスは、ファイバ10、12の各々に1つずつ2つの開口部および2つのハウジングを備えている。
【0074】
一変形形態として、図4のように各ファイバにマトリックスを使用することも可能であり、励起ファイバ10および収集ファイバ12の場合、必要に応じて、検査すべき対象の表面上に位置する、本発明による2つのマトリックス40、50が使用される。各マトリックスに挿入されるファイバの種類(励起または収集)に応じて、ファイバは、このマトリックス内でより深い深さまたはより浅い深さまで進入することができ、上述の効果による利益を得て、特に、検査される媒質から放出される放射を捕捉するために、励起ファイバ10がマトリックス40内で進入できる深さ(図4の深さH)は、収集ファイバ12がマトリックス50内で進入できる深さよりも浅くなっている(図4で深さh<H)。各々が励起ビームを送る複数のファイバを使用する場合、各ビームに1つずつ複数のマトリックスを並べて配置することができ、信号収集の場合には1つまたは複数のマトリックスを配置することができる。
【0075】
他の変形形態として、図5Aのように複数のファイバに1つのマトリックスを使用することも可能であり、たとえば、複数の励起ファイバ10、10'および1本の収集ファイバ12を同じマトリックス30内に位置させる。しかし、単一の励起ファイバ10および複数の収集ファイバ12、12'を有することも可能である(図5B)が、好ましくは、複数の励起ファイバ10、10'、たとえば1本から100本の励起ファイバおよび複数の収集ファイバ、たとえば1本から100本の収集ファイバを有する。
【0076】
この場合も、各ハウジングの深さは、受けるべきファイバの種類に適合されることが好ましい。
【0077】
たとえば励起ファイバ10用の単一のキャビティ27を備えるマトリックス40を有することも可能である(図6A)。この場合、収集ファイバ12はマトリックスの外側に位置し、それによって、媒質11から放出された蛍光信号15または拡散信号を捕捉することができる。変形形態として、マトリックス50(図6B)は、信号収集ファイバ12用の単一のキャビティ29を備えている。この場合、励起ファイバ12が、マトリックスの外側に位置して励起信号9を送るか、あるいは励起ファイバがなく、入射光放射が、マトリックス50からある距離に配置された光源から直接送られる。光源によって生成される光放射のすべてまたは一部がマトリックス50の一部を通過し、それによって、入射光信号が検査すべき媒質11に到達する前にマトリックス50内で拡散される技術的効果が維持できるように構成することが可能であることが好ましい。言い換えれば、光源は、媒質11の方へ送られ、マトリックス50の外側表面50'に入射する光線を供給するレーザ源または光ファイバであってよい。この実施形態では、上記の説明から分かるように、励起信号がマトリックス50内で拡散することによる利益を得ることが可能である。
【0078】
しかし、励起信号をマトリックス40内での拡散を試みずに媒質11の方へ送ることもできる。
【0079】
各キャビティ27、29の深さは、上述の検討事項に関連して、キャビティが受けるファイバの種類に適合されるのが好ましい。2本の(または場合によっては2本よりも多い)励起ファイバ10、10'を含むマトリックス50も実施可能であり(図6C)、一方、ここでは収集ファイバ12がマトリックスの外側に位置する。この場合、媒質11の表面から離れて位置するが、この表面から放出された光信号の一部を収集するようにこの表面に光学的に結合された検出器で、収集ファイバを置き換えることができる。同様に、2本の(または場合によっては2本よりも多い)収集ファイバ12、12'を含むマトリックス50も実施可能であり(図6D)、一方、1本または複数の励起ファイバ10がマトリックスの外側に位置する。
【0080】
上述の装置の使用時には、分析すべきサンプルにマトリックスの表面22を接触させる。ファイバは、たとえばサンプルに接触する前に、対応するマトリックスに挿入される。
【0081】
例が図10Aに示されている本発明の他の実施形態によれば、ファイバは、マトリックスの製造時に、たとえば成形によってマトリックスに組み込まれる。これによって、各ファイバの端部とマトリックス材料との間の光学的結合を向上させることができる。したがって、この実施形態では、マトリックスを製造する際、図2のハウジング27、29などの1つまたは複数のハウジングは準備されず、少なくとも1本の光ファイバの端部がマトリックス材料内に、たとえば、数ミリメートルから数センチメートル、たとえば1mmまたは5mmまたは10mmから1cmまたは5cmまたは10cmの間の長さl(拡散塊の、検査される媒質11に接触するように構成されていない表面30'とこの塊内に配置された光ファイバの端部との間の距離)にわたって永久的に配置される。この装置を得るには、1本または複数の光ファイバの周りにマトリックスの材料を成形することが可能である。同様に、上記に図2〜図6Dに関連して説明したうちの任意のマトリックスの形状を有するマトリックスと1本または複数のファイバを一体化することが可能である。
【0082】
この実施形態では、ファイバの端部は、やはり上述の特性および/または値を有してよい距離Hおよびhの所に、この場合は永久的に配置される。光学的な意味での利点は、ファイバが挿入されるハウジングを有するマトリックスに関して上記に説明した利点と同じである。特に、入射ビームの拡大効果が同じである。また、上記にビーム51、52、54の例を示す図3に関連して説明した利点と同じ、マトリックス30などのマトリックス内に永久的に配置された収集ファイバ12による有利な効果が得られる。マトリックス材料の形状および/または特性、特にマトリックス材料の種類および/または低減された拡散係数および/または吸収係数は、すでに上記に示したものから選択することが好ましい。同じことが、使用される入射放射、および特に赤外線または近赤外線の波長を選択することのできる好ましい波長範囲に当てはまる。したがって、この実施形態による装置は、「いつでも使用可能」であり、すなわち、マトリックスが、検査される媒質11に接触しているときは、マトリックス内にこの目的のために設けられたハウジングにファイバを挿入する工程を実施する必要もない。
【0083】
この他の実施形態の一変形形態によれば、本発明による装置は、1つまたは複数の光ファイバの端部を永久的に囲む拡散塊を備え、かつ1本または複数の他の光ファイバが挿入されるハウジングも備えている。図10Bはたとえば、ファイバ10が拡散材料の塊30内に永久的に配置され、一方、2本の収集ファイバ12、12'が対応するハウジング29、29'に挿入される実施形態を示している。本明細書の残りの部分では、特に指摘がないかぎり、1本または複数のファイバがマトリックスの1つまたは複数のハウジングに挿入される一方の実施形態に関連して与えられた説明が、1本または複数のファイバがマトリックスの製造時にマトリックスに組み込まれるかあるいはマトリックスと一体化される他方の実施形態にも当てはまる。
【0084】
光学的な分析のために実施される本発明の好ましい一実施形態では、入射光エネルギーが、たとえばファイバ10を介して、検査される媒質11の方へ送られる。分析すべき放射がこの媒質内を伝搬した後、設けられた測定手段4、13、たとえば光増倍管またはCCDカメラなどのカメラや、CMOSや、CCDアレイや、1つまたは複数のアバランシェフォトダイオードによってエネルギーが収集され、このエネルギーが検出器、たとえば表面22から離れているがこの表面に光学的に結合された検出器にファイバを介して送られる。使用される組立体は、図1に示されており、本発明の結合装置と組み合わせて使用することができる組立体であってよいが、本発明は、放射源8が連続時間光源または振幅変調光源で置き換えられる場合にも適用される。どの場合でも、レーザは、様々な種類のフルオロフォアを励起するように波長をたとえば400nmから1300nm、好ましくは600nmから950nmに調整することができる。
【0085】
このシステムは、測定されたデータを処理するデジタル処理手段、たとえばこの目的のためにプログラムされたコンピュータをさらに備える。蛍光撮像信号を時間分解分析する方法の一例が特許文献1に記載されている。この方法を使用して、装置から得た画像を再構成することができる。
【0086】
本発明の他の態様によれば、ある種の可撓性または弾性を有する媒質11を分析する場合は、図7に示されているように、マトリックス30をこの媒質にわずかに押し込んだ場合に励起光エネルギーがよりうまく結合される。この図には、図3に示されている種類のマトリックスが例示されているが、本発明による他のあらゆるマトリックスに同じ結果が当てはまる。
【0087】
生体組織に関しては、図7に矢印55、57によって示されているように、吸収に関与する血液が、マトリックスにかかる圧力によって局所的に排出されることによって、上記のように励起光エネルギーがうまく結合される。(マトリックス30の表面22と組織11の表面11'との間の)空気も排出され、それによって、組織と空気の界面が最小化することによって結合をよりうまく行うことが可能になる。したがって、マトリックス30に圧力をかけることによって、入射放射が媒質にうまく結合され、媒質から放出された信号が本発明による収集装置にうまく結合される。
【0088】
より一般的には、検査される媒質が流体を含む場合、本発明の結合装置に圧力をかけることによって、この流体を検査される領域の外側に押し出すかあるいは排出することができ、それによって測定信号が向上する。
【0089】
また、本発明による結合装置と検査される媒質をうまく結合するには、図8Aに示されているように鋭い縁部を含まない実質的に丸いかあるいは凸の形状を有してよい1つまたは複数の突起または隆起部22'、22"を有する支持面22を設けることが可能である。
【0090】
この場合、本発明による装置は、検査すべき媒質11との接触面22、すなわち、この媒質の表面に垂直な平面内に少なくとも1つの非零曲率半径を有する表面を備える。
【0091】
上記の突起または隆起部は、分析すべき物質の方向において主支持面22を越えて延びる物質の部分または領域である。主支持面22が、分析すべき物質の表面11と接触している間、隆起部はこの物質により深く進入する。これによって、2つの隆起部22'、22"が物質11に押し込まれたマトリックスを示す図8Aから理解されるように、物質のマトリックス20用の領域、すなわち、分析すべき物質に囲まれる領域が形成される。
【0092】
図8Bはこの実施形態の変形形態を示している。この場合、マトリックス内に励起ファイバが位置する、図6Aに示されている種類のシステムが例示されている。ファイバ10の端部は隆起部22'内に配置されており、したがって、物質11との相互作用を生じさせずにたとえば横方向に逃げることができた光子または放射90、90'が一方では、物質に当たり、それによって励起信号を強化してその効果を高めるため、分析すべき媒質への光子の進入がずっと効率的になる。
【0093】
好ましくは、図8Dに示されているように、励起ファイバ10の端部は、実質的に一定の曲率半径を有する隆起部22'の湾曲の中心に配置される。この構成では、隆起部に接触する組織の表面全体にわたって均質な励起を得ることが可能である。
【0094】
この例では、信号収集ファイバはマトリックス40の隣に配置される。
【0095】
(図3と同様に)マトリックス内にファイバ12も配置され、その端部も隆起部22"内に配置される場合、信号収集も強化される。この場合、図8Cに示されている構造が得られる。この図では、図8Bと同様に、各キャビティ27、29の端部271、291が表面110の下方に軸zに沿って配置され、検査すべき媒質11が装置の各側に区画されていることが分かる。
【0096】
どの場合でも、隆起部22'、22"は、マトリックス20の構成材料と同一の材料であってよい。
【0097】
どの場合でも、表面22と検査すべき物質の表面との間に、好ましくは媒質または材料の屈折率に近い屈折率を有する液体を添加することが可能である。(さらに結合を向上させるには粘性の液体、たとえば脂質内液体が好ましい)。この液体としては、透明で拡散が無視できる液体が好ましい。この液体がない場合、圧力をかけてマトリックス20の表面22と検査すべき材料11の表面110との間の空気を押し出すだけで、結合を十分適切に行うことができる。
【符号の説明】
【0098】
4、13 測定手段
8 放射源
9 励起ビーム
10、10'、12、12' ファイバ
11 拡散媒質
11' 表面
15 蛍光信号
20 介在物エレメント、マトリックス
20'、30'、40'、50' 外側表面
22、24 面
22'、22" 隆起部
26、28 開口部
27、29 キャビティ、ハウジング
271、291 密閉端部
30 マトリックス
31、41、51 吸収層
37 スポット
40 マトリックス
50 マトリックス
51、52、54 行程
90、90' 放射
110 表面
AA' 軸
D 直径
h、H 高さ
St 表面積
XX' 軸
μa、μ's 係数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒質(11)を撮像する拡散光学撮像装置であって、
a)放射源を形成し、前記媒質(11)上に少なくとも第1の波長で入射放射を形成する手段(8)と、
b)検査される前記媒質から放射された拡散信号または蛍光信号を検出する手段と、
c)結合装置とを備え、
前記結合装置が、
検査すべき前記媒質(11)の表面(110)に接触させるべき支持面(22)を備える塊(20、30、40、50)と、
媒質(11)から放出された信号を収集し、前記信号を検出手段の方へ送る少なくとも1本の収集光ファイバ(12、12')、および前記入射放射を検査すべき前記媒質上に送る少なくとも1本の励起光ファイバとを備え、
各光ファイバが、
その一方の端部が、前記拡散材料内に永久的に配置されるか、あるいは
前記結合装置が、前記光ファイバを受けることのできる少なくとも1つのハウジングを備え、このハウジングが前記拡散材料の塊に設けられ、
前記収集光ファイバの端部または前記収集光ファイバを受けることのできる前記ハウジングの底部は、前記励起光ファイバの端部または前記励起光ファイバを受けることのできる前記ハウジングの底部が配置された前記支持体面(22)からの距離(H)よりも短い前記支持面(22)からの距離(h)に配置され、
前記結合装置の前記塊は、少なくとも1本の前記光ファイバによって案内される波長用の拡散材料からなる装置。
【請求項2】
前記拡散材料は、低減された拡散係数が0.1cm-1より大きく700cm-1より小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記拡散材料は、吸収係数が0.01cm-1より大きく1cm-1より小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
拡散材料の前記塊(20、30、40、50)を少なくとも部分的に覆う吸収層(31)をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
検査すべき前記媒質(11)に接触するように構成された前記支持面(22)上の、少なくとも1条の入射ビームのスポット(37)は、表面積Stが1mm2から数十cm2の間である、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記支持面(22)は、鋭い縁部を有さない1つまたは複数の凸状隆起部(22'、22")をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
底部が実質的に前記隆起部内または前記隆起部の所に配置された少なくとも1つのハウジング(27、27'、29、29')を備え、かつ/あるいは端部が実質的に前記隆起部内または前記隆起部の所に配置された少なくとも1本のファイバを備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記放射源(8)は、パルス連続時間放射源またはパルス振幅変調放射源である、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
媒質(11)の一部を検査する光学断層撮影式の検査方法であると共に、請求項1から8のいずれか一項によって少なくとも1つの装置が使用される方法において、
前記結合装置が、この媒質に接触させられ、
前記媒質(11)が、放射源を形成して前記媒質(11)上に入射放射を形成し、次にこの入射放射を前記媒質(11)に進入させる手段(8)を使用して照明されるかあるいは光学的に励起され、
前記媒質(11)から放出された光学信号は、少なくとも1本の収集光ファイバ(12、12')によって収集される方法。
【請求項10】
前記結合装置の前記拡散媒質の前記支持面(22)と検査すべき前記媒質(11)の前記表面(110)との間に流体を与える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記結合装置が前記媒質(11)に接触する位置にあるときに前記結合装置に圧力をかけ、この媒質に含まれる前記流体をこの媒質の一部から、前記結合装置の周囲に配置された領域の方へ流す、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
媒質を撮像する拡散光学撮像装置であって、
材料のマトリックスまたは塊であって、前記塊が1つまたは複数の凸状隆起部を含みかつ鋭い縁部を含まない、検査すべき前記媒質の前記表面に接触させる支持面を備える材料のマトリックスまたは塊と、
一方の端部が前記拡散材料内に永久的に配置された少なくとも1本の光ファイバ、および/または前記塊内に設けられ、光ファイバの端部を受けることのできる少なくとも1つのハウジングとを備え、前記材料のマトリックスまたは塊が、前記光ファイバによって案内される波長用の拡散材料からなる装置。
【請求項13】
底部が実質的に前記隆起部内または前記隆起部の所に配置された少なくとも1つのハウジングを備え、かつ/あるいは端部が前記隆起部内または前記隆起部の所に配置された少なくとも1本のファイバを備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
1つの前記隆起部は、実質的に一定の曲率半径を有し、前記装置は、端部が前記湾曲部の中心に配置された励起ファイバをさらに備える、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
媒質の一部を検査する光学断層撮影式の検査方法であると共に、請求項12から14のいずれか一項によって少なくとも1つの装置を使用する方法において、
前記結合装置が、この媒質に接触させられ、
前記塊は、放射源を形成する隆起部に接触する組織の表面全体にわたって均質の励起が得られるように端部が前記隆起部の湾曲部の中心に配置された励起ファイバを備え、
前記媒質から放出された光学信号が、少なくとも1本の収集光ファイバによって収集される方法。
【請求項16】
媒質の一部を検査する光学断層撮影式の検査方法であると共に、請求項12から14のいずれか一項によって少なくとも1つの装置が使用される方法において、
前記結合装置が、この媒質に接触させられ、
前記媒質が、放射源を使用して前記媒質上に入射放射を形成することによって照明されるかあるいは光学的に励起され、
前記塊は、前記媒質から放出された均質の光学信号を収集するように端部が隆起部の湾曲部の中心に配置された検出ファイバを備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図9B】
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【公開番号】特開2011−80997(P2011−80997A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−227508(P2010−227508)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(502124444)コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ (383)
【Fターム(参考)】