説明

撮像装置、プログラム及び撮像装置のブレ補正方法

【課題】主点位置における加速度を導出する際の誤差に起因する手振れ補正の補正精度の低下を回避する。
【解決手段】複数のレンズを有する撮像光学系、被写体像を撮像する撮像素子、角速度検出手段及び加速度検出手段を有し、主点の位置を導出する主点位置導出手段と、複数のレンズの移動に応じて主点の位置が変化した場合に、加速度検出手段を移動させて、導出された主点の位置に対して最短の距離になる位置に停止させる移動手段と、検出された角速度及び加速度を用いて、光軸が回転して生じる角度ブレの回転半径に基づいてブレ量を導出するブレ量導出手段と、導出されたブレ量に基づいて手振れ補正を行う補正手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手振れを補正することで撮影画像の劣化を防止する撮像装置、プログラム及び撮像装置のブレ補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、手振れ補正を行うためにカメラの撮像面における像ブレを検出し、この像ブレを打ち消す方向にレンズユニット内の光学系や装置筐体内の撮像素子を駆動させて手振れ補正を行う撮像装置が用いられている。また、このような撮像装置において、光学系の焦点調整動作や変倍動作等によって変化する光学系の焦点距離に応じて決まる像ブレ量を、この像ブレ量を補正するのに必要な光学素子の補正量に変換するための変換係数をレンズユニット側に持たせた撮像装置が開発されている。
【0003】
そして、近年では、像ブレ量を補正するために、光学系における近距離の誤差を考慮したレンズデータを、データ量を少なくして持たせることができる撮像装置が提案されている(特許文献1参照)。この撮像装置は、レンズユニット内の記憶手段にブレ補正量を求めるためのデータとして像距離を求めるための係数と主点間隔に関するデータとを格納しておき、ブレ補正時に、これら係数及び主点間隔に関するデータとからブレ補正係数を求め、このブレ補正係数と角速度センサで検出された角速度とからブレ補正を行うためのシフト補正量を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−58160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の撮像装置等で手振れ補正を行う際には、角度ブレとシフトブレの両方を考慮して行うのが一般的であり、この場合にシフトブレの補正を行う際には主点位置からの回転半径を演算する必要がある。そのため、この手振れ補正を行う際には、光学系の主点位置変化と加速度センサの取り付け位置に基づいて加速度センサの取り付け位置に生じた加速度を主点位置にて発生する加速度に換算する必要があり、その換算結果に誤差が発生している可能性があるという問題があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、主点位置における加速度を導出する際の誤差に起因する手振れ補正の補正精度の低下を回避することができる撮像装置、プログラム及び撮像装置のブレ補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る撮像装置は、請求項1に記載したように、移動可能なレンズを含む複数のレンズを有する撮像光学系と、前記撮像光学系を通して被写体像を撮像する撮像素子と、設置された位置における角速度を検出する角速度検出手段と、前記撮像光学系の光軸に沿った方向に移動可能に設置されるとともに、停止された位置における加速度を検出する加速度検出手段と、前記撮像光学系の主点の位置を導出する主点位置導出手段と、前記移動可能なレンズの移動に応じて前記撮像光学系の主点の位置が変化した場合に、前記加速度検出手段を移動させて前記主点位置導出手段によって導出された主点の位置に対して最短の距離になる位置に停止させる移動手段と、前記角速度検出手段によって検出された角速度及び前記加速度検出手段によって検出された加速度を用いて、前記撮像光学系の光軸が回転して生じる角度ブレの回転半径に基づいてブレ量を導出するブレ量導出手段と、前記ブレ量導出手段によって導出されたブレ量に基づいて、手振れ補正を行う補正手段と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の撮影装置によれば、撮像素子により、移動可能なレンズを含む複数のレンズを有する撮像光学系を通して被写体像が撮像され、角速度検出手段により、設置された位置における角速度が検出され、前記撮像光学系の光軸に沿った方向に移動可能に設置された加速度検出手段により、停止された位置における加速度が検出される。
【0009】
また、請求項1に記載の撮影装置によれば、主点位置導出手段により、前記撮像光学系の主点の位置が導出され、移動手段により、前記移動可能なレンズの移動に応じて前記撮像光学系の主点の位置が変化した場合に、前記加速度検出手段が移動されて前記主点位置導出手段によって導出された主点の位置に対して最短の距離になる位置に停止される。
【0010】
さらに、請求項1に記載の撮影装置によれば、ブレ量算出手段により、前記角速度検出手段によって検出された角速度及び前記加速度検出手段によって検出された加速度を用いて、前記撮像光学系の光軸が回転して生じる角度ブレの回転半径に基づいてブレ量が導出され、補正手段により、前記ブレ量導出手段によって導出されたブレ量に基づいて、手振れ補正が行われる。これにより、主点位置における加速度を導出する際の誤差に起因する手振れ補正の補正精度の低下を回避することができる、という効果を奏する。
【0011】
また、本発明に係る撮像装置において、請求項2に記載したように、前記ブレ量導出手段は、以下の式に基づいてブレ量δを導出するようにしても良い。
δ=(1+β)fθ+βRθ
ただし、βは撮影倍率、fは焦点距離、θは角速度の積分値より得られる角度ブレ、Rは加速度の積分値より得られる速度V、角速度ωとしたときV/ωで得られる回転半径である
【0012】
これにより、主点位置における加速度を導出する際の誤差に起因する手振れ補正の補正精度の低下を回避することができる、という効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る撮像装置において、請求項3に記載したように、前記撮像光学系によるズーム倍率が予め定められた第1閾値を超えている場合は、前記移動手段は、前記加速度検出手段を被写体側に移動させ、前記ブレ量導出手段は、前記加速度検出手段によって検出された加速度を、当該加速度検出手段が前記主点の位置に位置された場合の値に換算して用いるようにしても良い。これにより、主点位置における加速度を導出する際の誤差に起因する手振れ補正の補正精度の低下を回避することができる、という効果を奏する。
【0014】
また、本発明に係る撮像装置において、請求項4に記載したように、前記撮像光学系による焦点距離が予め定められた第2閾値を超えている場合は、前記移動手段は、前記加速度検出手段を被写体側に移動させ、前記ブレ量導出手段は、前記加速度検出手段によって検出された加速度を、当該加速度検出手段が前記主点の位置に位置された場合の値に換算して用いるようにしても良い。これにより、主点位置における加速度を導出する際の誤差に起因する手振れ補正の補正精度の低下を回避することができる、という効果を奏する。
【0015】
また、本発明に係る撮像装置において、請求項5に記載したように、前記移動手段は、前記撮像光学系による焦点距離が予め定められた距離以上変化した場合に前記加速度検出手段の移動を行うようにしても良い。これにより、主点位置における加速度を導出する際の誤差に起因する手振れ補正の補正精度の低下を回避することができる、という効果を奏する。
【0016】
また、本発明に係る撮像装置において、請求項6に記載したように、前記移動手段は、前記撮像光学系の主点の位置から被写体までの距離が予め定められた距離以上変化した場合に前記加速度検出手段の移動を行うようにしても良い。これにより、主点位置における加速度を導出する際の誤差に起因する手振れ補正の補正精度の低下を回避することができる、という効果を奏する。
【0017】
一方、上記目的を達成するために、請求項7に記載のプログラムは、移動可能なレンズを含む複数のレンズを有する撮像光学系を通して被写体像を撮像する撮像素子、設置された位置における角速度を検出する角速度検出手段、及び前記撮像光学系の光軸に沿った方向に移動可能に設置されるとともに、停止された位置における加速度を検出する加速度検出手段を有する撮像装置を制御するコンピュータを、前記撮像光学系の主点の位置を導出する主点位置導出手段と、前記移動可能なレンズの移動に応じて前記撮像光学系の主点の位置が変化した場合に、加速度検出手段を移動させて前記主点位置導出手段によって導出された主点の位置に対して最短の距離になる位置に停止させる前記移動手段と、前記角速度検出手段によって検出された角速度及び前記加速度検出手段によって検出された加速度を用いて、前記撮像光学系の光軸が回転して生じる角度ブレの回転半径に基づいてブレ量を導出するブレ量導出手段と、前記ブレ量導出手段によって導出されたブレ量に基づいて、手振れ補正を行う補正手段と、として機能させるためのプログラムである。
【0018】
従って、請求項7に記載のプログラムによれば、コンピュータを請求項1に記載の発明と同様に作用させることができるので、請求項1に記載の発明と同様に、主点位置における加速度を導出する際の誤差に起因する手振れ補正の補正精度の低下を回避することができる、という効果を奏する。
【0019】
また、上記目的を達成するために、請求項8に記載のブレ補正方法は、移動可能なレンズを含む複数のレンズを有する撮像光学系、前記撮像光学系を通して被写体像を撮像する撮像素子、設置された位置における角速度を検出する角速度検出手段、及び前記撮像光学系の光軸に沿った方向に移動可能に設置されるとともに、停止された位置における加速度を検出する加速度検出手段を有する撮像装置の回転半径導出方法であって、前記撮像光学系の主点の位置を導出する主点位置導出ステップと、前記移動可能なレンズの移動に応じて前記撮像光学系の主点の位置が変化した場合に、前記加速度検出手段を移動させて前記主点位置導出ステップによって導出された主点の位置に対して最短の距離になる位置に停止させる移動手段と、前記角速度検出手段によって検出された角速度及び前記加速度検出手段によって検出された加速度を用いて、前記撮像光学系の光軸が回転して生じる角度ブレの回転半径に基づいてブレ量を導出する導出ステップと、前記ブレ量導出ステップによって導出されたブレ量に基づいて、手振れ補正を行う補正ステップと、を行うブレ補正方法である。
【0020】
従って、請求項8に記載のブレ補正方法によれば、請求項1に記載の発明と同様に作用することができるので、請求項1に記載の発明と同様に、主点位置における加速度を導出する際の誤差に起因する手振れ補正の補正精度の低下を回避することができる、という効果を奏する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、主点位置における加速度を導出する際の誤差に起因する手振れ補正の補正精度の低下を回避することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態に係る撮像装置の外観を示す図であり、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は背面図である。
【図2】実施形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係る撮像装置における角度ブレを説明するための概略図である。
【図4】実施形態に係る撮像装置におけるシフトブレを説明するための概略図である。
【図5】実施形態に係る撮像装置の撮像光学系の主点の位置を説明するための概略側面図である。
【図6】実施形態に係る撮像装置のブレ補正処理に関連する要部の構成を示すブロック図である。
【図7】実施形態に係る撮像装置の加速度センサの移動機構を説明するための概略図であり、(A)は透過斜視図、(B)は概略側面図、(C)は概略正面図である。
【図8】実施形態に係る撮像装置の加速度センサが移動される状態を示す遷移図であり、(A)は移動前、(B)は移動後を示す概略側面図である。
【図9】第1実施形態に係る回転半径算出処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】第2実施形態に係る回転半径算出処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】第3実施形態に係る回転半径算出処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
以下、第1実施形態に係る撮像装置1について添付図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る撮像装置1の外観を示す図であり、図1(A)は上面図、図1(B)は正面図、図1(C)は背面図である。図2は、本実施形態に係る撮像装置1の構成を示すブロック図である。
【0025】
図1に示すように、撮像装置1は、内部に撮像に用いられる各種電子機器が収納された筐体2を有する。筐体2の正面には、複数のレンズからなる撮像光学系3、及び、発光するストロボ4が設けられている。また、筐体2の背面には、LCD(Liquid Crystal Display)等を有する表示部5、ユーザ操作により設定指示が入力されるメニュー操作部6Aが設けられている。一方で、筐体2の上面部には、ユーザ操作により撮影指示等を入力するレリーズボタン6B、ユーザ操作により電源のオン/オフ状態の切替指示を入力する電源ボタン6C、ユーザ操作によりモード切替指示を入力するモード切替ボタン6D、及び、ユーザ操作によりズーム倍率を変更するズームボタン6Eが設けられている。以下、メニュー操作部6A、レリーズボタン6B、電源ボタン6C、モード切替ボタン6D、及びズームボタン6Eをまとめて操作部6と言う。
【0026】
表示部5には、静止画の撮像に先立って撮像される画素数の少ない画像がスルー画として表示され、これにより表示部5がファインダとして機能する。また、表示部5には、メモリカード等の記憶媒体(図示省略。)等に記憶された画像が表示されたり、ユーザによる操作部6の操作に応じた操作メニューや設定メニュー等が表示されたりする。
【0027】
モード切替ボタン6Dにより切り替えられるモードは、通常の撮影を行う撮影モード、マクロモードで撮影を行うマクロ撮影モード、表示部5に既存の撮影画像を表示する再生モード、及び、各種設定を行う設定モード等である。マクロ撮影モードとは、被写体に接近して撮影するモードであり、被写界深度が撮像装置1に近接する位置にピントが合うように設定された状態で撮影を行うモードである。撮像装置1がマクロ撮影モードに設定されている場合、撮像装置1による撮影時の被写界深度が予め定められた範囲内に設定される。
【0028】
図2に示すように、撮像装置1は、上述した撮像光学系3,撮像素子12,ブレ補正部13,角速度センサ14,加速度センサ15,AF(Automatic Focus)検出回路16,AE/AWB(Automatic Exposure/Automatic White Balance)検出回路17、AFE(Analog Front End)31、A/D変換器32、DSP(Digital Signal Processor)33、画像処理部34、メモリ35、及びCPU(Central Processing Unit)37を備えている。
【0029】
撮像光学系3は、レンズ21、絞り22、及びブレ補正レンズ23等から構成される。レンズ21は、ズームや焦点調節時に光軸Lに沿って移動可能に設けられたレンズである。図2においては簡単のためにレンズ21を1つのみ図示しているが、レンズ21は、複数のレンズからなり、ズーム時に駆動されるズーミングレンズ、焦点調節時に駆動されるフォーカシングレンズ等を含んでいる。絞り22は、光軸L上に複数の絞り羽根で形成する開口を有し、絞り羽根の位置を移動させ、開口の大きさを調節することにより、露光量を調節する。
【0030】
ブレ補正レンズ23は、光軸Lに対して垂直な方向に移動可能に設けられ、撮像装置1に手振れ(角度ブレ及びシフトブレ)が発生したときに、手振れを打ち消す向きに移動される。ブレ補正レンズ23は、ボイスコイルモータ(VCM)やステッピングモータ等からなるアクチュエータ(後述するアクチュエータ57)によって駆動される。なお、ブレ補正レンズ23の移動方向や移動量は、ブレ補正部13によって制御される。
【0031】
撮像素子12は、例えばCCD(Charge Coupled Device)型撮像素子であり、撮像光学系3に撮像面を向けて配置され、撮像光学系3を通して被写体を撮像する。撮像面には、複数の画素が所定の配列で設けられており、画素毎に被写体から入射した光を光電変換することにより、被写体の像を撮像する。撮像素子12が出力する撮像信号は、AFE31に入力され、相関二重サンプリングによってノイズが除去され、増幅される。こうしてAFE31でノイズが除去され、増幅された撮像信号はA/D変換器32によってデジタルの画像データに変換され、DSP33に入力される。
【0032】
DSP33は、入力された画像データに階調補正処理やガンマ補正処理等の信号処理を施す画質補正処理回路や、画像データをJPEG等の所定形式で圧縮/伸張する圧縮伸張処理回路として機能する。また、画像処理部34には、DSP33で各種補正処理等が施された画像データが入力され、さらに輪郭強調処理等の画像処理を施す。画像処理部34によって画像処理が施された画像データは、メモリ35に記憶されたり、表示部5に表示されたりする。
【0033】
AF検出回路16は、DSP33から出力される画像データに基づいて焦点距離を検出する回路であり、画像データ内の所定のAF検出領域から高周波成分を抽出し積算した評価値を出力する。そして、評価値に基づいて、AF検出領域内のコントラストが最大となるように、撮像光学系3のフォーカシングレンズ(レンズ21)をフォーカスモータ60(図7も参照)により光軸Lに沿って移動させることにより、自動的にフォーカシングを行う。
【0034】
AE/AWB検出回路17は、DSP33から出力される画像データに基づいて、ホワイトバランスが撮影に適切か否かを検出するとともに、撮影に適切な露光量を検出する。そして、露光量が適切になるように、絞り22の開口の大きさや、撮像素子12の電子シャッタの速度等を調節する。
【0035】
ブレ補正部13は、撮像装置1の回転によって生じる角速度ωを角速度センサ14の出力値から取得し、平行移動によって生じる並進加速度Acc1を加速度センサ15の出力値から取得し、加速度ω及び並進加速度Acc1に基づいて、撮像装置1に生じた手振れを算出して補正する。なお、ブレ補正部13が算出する手振れは、光軸Lが回転することによる角度ブレθと、光軸Lに垂直な面内での平行移動によるシフトブレYの2種類がある。ブレ補正部13は、角速度ω及び並進加速度Acc1に基づいて角度ブレθ及びシフトブレYを算出すると、これらに基づいて、ブレ量δを算出する。ブレ量δは、後述するアクチュエータ57に入力され、アクチュエータ57は入力されたブレ量δを打ち消すようにブレ補正レンズ23を駆動する。
【0036】
CPU37は、操作部6を介したユーザ操作にしたがって上述の撮像装置1の各部を統括的に制御する。CPU37は例えば、レリーズボタン6Bが半押し操作されると、AF検出回路16によって自動焦点調節を行うとともに、AE/AWB検出回路17によって露光量を自動的に調節する。また、CPU37は、撮像装置1が撮影モードに設定されている際に、後述する回転半径算出処理プログラムを実行する。
【0037】
以下、本実施形態に係る撮像装置1による手振れ補正の態様を説明する。撮像装置1は、前述したように、手振れによって発生する角度ブレθとシフトブレYをブレ補正部13によって算出する。
【0038】
図3は、本実施形態に係る撮像装置1における角度ブレを説明するための概略図である。図3に示すように、角度ブレθは、回転中心Cを中心として光軸Lが回転するブレであり、回転半径Rは例えば回転中心Cから角速度センサ14までの長さである。角度ブレθは角速度ωを積分することにより算出され、回転半径Rは、後述するようにシフトブレYによって発生する並進加速度Acc1と角速度ωに基づいて算出される。
【0039】
また、図4は、本実施形態に係る撮像装置1におけるシフトブレを説明するための概略図である。図4に示すように、シフトブレYは、光軸Lに垂直な面内での撮像装置1の平行移動によるブレであり、角度ブレθと回転半径Rによって、Y=R・θの関係により表される。回転半径Rは、シフトブレYによって発生する並進加速度Acc1を積分することによって得られる並進速度Vと、角速度ωとを用いて、R=V/ωの関係に基づいて算出される。
【0040】
ここで、本実施形態に係る撮像装置1における手振れのブレ量δの算出方法について説明する。撮像光学系3の主点の位置におけるシフトブレYと撮像光学系3の角度ブレθ及び撮像光学系3の焦点距離fと撮影倍率βより撮像面に生ずる手振れのブレ量δは、以下の(1)式で求められる。
δ=(1+β)fθ+βY ………………(1)
角度ブレθは角速度信号の積分結果より求まり、シフトブレYは加速度信号の2階積分により求まる。
【0041】
また、撮像光学系3の主点位置におけるシフトブレYと角度ブレθと回転中心Cを定めた場合の回転半径R(回転中心Cから加速度センサ15までの距離)の関係は、以下の(2)式で表せる。
Y=Rθ ………………(2)
【0042】
よって、本実施形態の撮像装置1では、(1)式に(2)式を代入して得られた(3)式を用いてブレ量δを算出し、このブレ量δに対して手振れ補正を行っている。
δ=(1+β)fθ+βRθ ………………(3)
すなわち、(3)式では、シフトブレを求める際に、加速度センサ15により直接求まるシフトブレYを用いるのではなく、一旦(2)式で求まる回転半径Rを求め、この回転半径Rと角速度信号の積分結果である角度ブレθと撮影倍率βを用いる。
【0043】
なお、光学系の主点は、光学系を1枚の薄いレンズに置き換えた場合の、その薄いレンズと光軸の交点のことである。光学系の主点には、前側主点(第1主点)と後側主点(第2主点)の2種類の主点がある。
【0044】
図5は、撮像光学系3の主点の位置を説明するための概略側面図である。図5に示すように、第2主点は、光学系の前方(物体側)から入射させた平行光と、光学系の後側(像側)から出射した光とを使って求められる。第2主点は、以下の手順により導出される。
(1)光学系の物体側から平行光である光線Aを入射させる
(2)光学系の後方から出射する光線Bを求める
(3)光線Aと光線Bを互いに延長し、交点Cを求める
(4)交点Cから光軸Lに降ろした足Hが第2主点である
【0045】
なお、光学系が2枚のレンズを組み合わせたものであった場合、光学系の第2主点の位置は、以下の(4)式により求められる。
【数1】

光学系がn枚のレンズを組み合わせたものであった場合、この式を用いてn枚目のレンズまで繰り返し第2主点を算出することにより、光学系の全体の第2主点の位置が導出される。
【0046】
なお、以下では、「第2主点」を単に「主点」と言う。
【0047】
図6は、本実施形態に係る撮像装置1のブレ補正処理に関連する要部の構成を示すブロック図である。図6に示すように、角速度センサ14の出力信号(以下、角速度信号と言う。)及び加速度センサ15の出力信号(以下、加速度信号と言う。)は、ブレ補正部13に入力される。角速度信号及び加速度信号を入力したブレ補正部13は、各々ブレ量を算出して、算出されたブレ量に基づいてブレ補正レンズ23の移動方向や移動量を制御する。
【0048】
ブレ補正部13は、角速度の変化量を算出するために、バンドパスフィルタ(BPF)41、A/D変換器42、ハイパスフィルタ(HPF)43,46,位相補償回路44、積分回路45、及び敏感度算出部47を備えている。また、ブレ補正部13は、加速度の変化量を算出するために、ローパスフィルタ(LPF)48、A/D変換器49、HPF50、成分判定部51、位相補正回路52、及び積分回路53を備えている。さらに、ブレ補正部13は、角速度及び加速度の変化量からブレ量を算出して補正するために、回転半径算出部54、回転中心補正部55、ブレ量算出部56、及びアクチュエータ57を備えている。
【0049】
ブレ補正部13に入力した角速度信号は、BPF41に入力され、角速度センサ14の出力信号のうち、手振れ補正によって発生する角度ブレθの周波数帯(例えば1〜10Hz程度)の成分がA/D変換器42に入力される。A/D変換器42は、入力された所定周波数帯の角速度信号を、デジタル信号に変換し、HPF43に入力する。HPF43は、角速度信号のDC成分を除去する。DC成分が除去された角速度信号は、位相補償回路44に入力され、位相を整えられた後、角速度ωとして出力される。位相補償回路44が出力する角速度ωは、積分回路45と回転半径算出部54に入力される。積分回路45は、位相補償回路44から入力される角速度ωを積分し、得られた値をHPF46に出力する。HPF46は角速度ωを積分して得られた値のDC成分を除去することによって角度ブレθを算出して、敏感度算出部47に角度ブレθを出力する。敏感度算出部47は、角度ブレθに対する敏感度fθを算出し、算出された敏感度fθをアクチュエータ57に出力する。
【0050】
一方、加速度センサ15の出力信号は、LPF48に入力されノイズが除去されるとともに、A/D変換器49によってデジタル信号に変換し、HPF50に入力する。HPF50は、重力による加速度成分を除去するフィルタであり、カットオフ周波数fcは例えば約10m/sである。HPF50は、重力加速度を除去した並進加速度Acc1を、成分判定部51に対して出力する。
【0051】
成分判定部51は、撮像光学系3に接続されており、撮像光学系3からレンズ21の駆動状態を示す情報としてズーミングレンズの位置情報P1,フォーカシングレンズの位置情報P2を取得する。また、成分判定部51は、絞り22の駆動状態を示す情報(以下、絞り情報という)P3を取得する。成分判定部51は、取得した位置情報等P1,P2,P3から撮像光学系3の駆動状態に応じて撮像装置1の内部で発生する加速度(以下、内部加速度という)を算出し、HPF50から入力される並進加速度信号Acc1から内部加速度を除去することにより、シフトブレYにともなって発生する並進加速度Acc2を算出し、位相補償回路52に対して出力する。
【0052】
位相補償回路52は、成分判定部51から入力される並進加速度Acc2の位相を整え、積分回路53に入力する。積分回路53は、入力された並進加速度Acc2を積分することにより、シフトブレYの並進速度Vを算出する。積分回路53によって算出されたシフトブレYの並進速度Vは、回転半径算出部54に入力される。
【0053】
回転半径算出部54は、位相補償回路44から入力される角速度ωと、積分回路53から入力される並進速度Vに基づいて、撮像装置1に生じた角度ブレθによる回転半径Rを算出する。具体的には、回転半径算出部54は、並進速度Vを角速度ωで割ることによって回転半径R‘を算出する(R’=V/ω)。回転半径算出部54は、算出した回転半径R‘を回転中心補正部55に対して出力する。
【0054】
ここで算出される回転半径R‘から回転中心C’が定まるが、回転半径R’から定まる回転中心C’は撮像光学系3等撮像装置1の駆動状態を反映しておらず、必ずしも正確ではない。このため、回転中心補正部55は、CPU37から、加速度センサ15の位置情報、撮像光学系3の主点情報、被写体距離の情報等を取得し、これらに基づいて回転中心C’及び回転半径R’を補正することにより、撮像装置1の駆動状態を反映した正確な回転中心C及び回転半径Rを算出する。回転中心補正部55が算出した回転半径Rは、ブレ量算出部56に入力される。
【0055】
ブレ量算出部56は、HPF46から角度ブレθを、回転中心補正部55から回転半径R’を取得する。また、ブレ量算出部56は、撮像倍率β及び焦点距離fをCPU37から取得する。ブレ量算出部56は、取得した角度ブレθ、回転半径R、撮像倍率β、焦点距離fから、ブレ量(δ=(1+β)fθ+βRθ)を算出する。このとき、ブレ量算出部56は、加速度センサ15の感度に基づいて回転半径Rとして、入力された回転半径Rの値をゲイン補正した値に補正する。アクチュエータ57は、ブレ量算出部56によって算出されたブレ量δが打ち消されるように、ブレ補正レンズ23を駆動する。これにより、撮像装置1における手振れが補正される。
【0056】
また、本実施形態に係る撮像装置1は、例えばフォーカシングやズーミングによって撮像光学系3における焦点距離や被写体距離が変更された場合に、加速度センサ15を撮像光学系3の主点の位置に移動させる機構を備えている。手振れのブレ量を算出する際に、通常、加速度センサ15による加速度信号が撮像光学系3の主点における加速度になるように加速度信号を変換するが、加速度センサ15が主点の位置にあればその変換を行う必要がなく、主点位置における加速度を導出する際の誤差に起因する手振れ補正の補正精度の低下を回避することができる。
【0057】
図7は、本実施形態に係る撮像装置1の加速度センサ15の移動機構を説明するための概略図であり、(A)は概略斜視図であり、(B)は概略側面図であり、(C)は概略正面図である。図7に示すように、撮像光学系3には、ユーザ操作に基づいてフォーカシングを行うためにレンズ21のフォーカスレンズを光軸方向に移動させるフォーカスモータ60、ユーザ操作に基づいてズーミングを行うためにレンズ21のズーミングレンズを光軸方向に移動させるズームモータ61が備えられている。
【0058】
フォーカスモータ60及びズームモータ61は、CPU37に電気的に接続されており、CPU37は、ユーザによる操作部6を介する操作に応じて、フォーカスモータ60及びズームモータ61の駆動を制御する。なお、CPU37はフォーカスモータ60及びズームモータ61の位置を把握しており、これらの位置に基づいて主点の位置や焦点距離や被写体距離を導出することができる。
【0059】
また、撮像装置1は、加速度センサ15を撮像光学系3における光軸Lに沿った方向に移動させる移動機構15aを備えている。この移動機構15aは、回転することにより加速度センサ15を光軸Lに沿った方向に移動させるボールネジ15b、加速度センサ15を光軸Lに沿った方向に安定して移動させるための案内レール(図示省略。)、ボールネジ15bを回転駆動するモータ(図示省略。)等を含んで構成されている。
【0060】
図8本実施形態に係る撮像装置1の加速度センサ15が移動される状態を示す遷移図であり、(A)は移動前、(B)は移動後の状態を示す概略側面図である。図8(A)及び(B)に示すように、撮像装置1は、フォーカシング等により撮像光学系3の主点の位置がΔLだけ移動した場合に、CPU37の制御で移動機構15aにより加速度センサ15を光軸Lに沿って主点の移動方向にΔLだけ移動させる。
【0061】
このように構成された本実施形態に係る撮像装置1は、撮影モードに設定されている際、ズーミングにより焦点距離が変更されたか、またはフォーカシングにより被写体距離が変更された場合に、加速度センサ15の位置を撮像光学系3の主点に近い位置に移動させた上で、回転半径算出部52によって回転半径Rを算出する。そして撮像装置1は、算出した回転半径Rからブレ量δを算出して手振れを補正する。
【0062】
ここで、本実施形態に係る撮像装置1は、撮影モードに設定されている間に、所定時間毎に回転半径算出処理プログラムを実行する。そこで、図9を参照して、回転半径算出処理プログラムを実行する際の撮像装置1の作用を説明する。なお、図9は、撮影モードに設定されている際に、CPU37により実行される回転半径算出処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ35に予め記憶されている。なお、回転半径算出処理プログラムは、メモリカード等の記録媒体に記憶されていて、当該記録媒体からメモリ35に記憶されることによりメモリ35にインストールされても良い。
【0063】
始めに、ステップS101において、CPU37は焦点距離が変更されたか否かを判定する。この際、CPU37は、ズームモータ61によりレンズ21のズーミングレンズを所定距離以上移動させた場合に、焦点距離が変更されたものと判定する。
【0064】
ステップS101において焦点距離が変更されたと判定された場合は、ステップS103において、CPU37は、ズーミングレンズの移動後の主点の位置を導出した後、導出した主点の位置に加速度センサ15を移動させるように移動機構15aを制御する。なお、導出した主点の位置とは、移動機構15aによって移動可能な範囲内において主点から最短の距離となる位置である。
【0065】
ステップS101において焦点距離が変更されていないと判定された場合は、ステップS105において、CPU37は、被写体距離が変更されたか否かを判定する。この際、CPU37は、フォーカスモータ60によりレンズ21のフォーカシングレンズを所定距離以上移動させた場合に、被写体距離が変更されたものと判定する。
【0066】
ステップS105において被写体距離が変更されたと判定された場合は、ステップS107において、CPU37は、フォーカシングレンズの移動後の主点の位置を導出した後、導出した主点の位置に加速度センサ15を移動させるように移動機構15aを制御する。
【0067】
ステップS105において焦点距離が変更されていないと判定された場合、あるいはステップS107において加速度センサの位置を移動させた後に、ステップS109において、CPU37は、ブレ補正部13に加速度センサ15から加速度信号を取得させるとともに、角速度センサ14から角速度信号を取得させる。そしてCPU37は、ステップS111において、ブレ補正部13に回転半径を導出させ、回転半径算出処理プログラムを終了する。
【0068】
このようにして本実施形態に係る撮像装置1において、撮像光学系3の主点の位置が導出され、複数のレンズの移動に応じて主点の位置が変化した場合に、導出された主点の位置に対して最短の距離になるよう加速度検出手段である加速度センサ15が移動され、角速度検出手段である角速度センサ14によって検出された角速度及び加速度センサ15によって検出された加速度を用いて、撮像光学系3の光軸Lが回転して生じる角度ブレの回転中心から角速度センサ14の設置位置までの距離である回転半径、当該回転半径から定まるブレ量が導出され、導出されたブレ量に基づいて、手振れ補正が行われる。
【0069】
これにより、主点位置における加速度を導出する際の誤差に起因する手振れ補正の補正精度の低下を回避することができる、という効果を奏する。
【0070】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る撮像装置1について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、第2実施形態に係る撮像装置1は、第1実施形態に係る撮像装置1と同様に、図1、図2、図5及び図7に示す構成を有しているため、当該構成に関して重複する説明を省略する。
【0071】
本実施形態に係る撮像装置1は、撮影モードに設定されている間に、所定時間経過毎に回転半径算出処理プログラムを実行する。そこで、まず、図10を参照して、回転半径算出処理プログラムを実行する際の撮像装置1の作用を説明する。なお、図10は、撮影モードに設定された際に、CPU37により実行される回転半径算出処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ35に予め記憶されている。なお、回転半径算出処理プログラムは、メモリカード等の記録媒体に記憶されていて、当該記録媒体からメモリ35に記憶されることによりメモリ35にインストールされても良い。
【0072】
始めに、ステップS201において、CPU37は焦点距離が変更されたか否かを判定する。この際、CPU37は、ズームモータ61によりレンズ21のズーミングレンズを所定距離以上移動させた場合に、焦点距離が変更されたものと判定する。
【0073】
ステップS201において焦点距離が変更されたと判定された場合は、ステップS203において、CPU37は、ズーム倍率が予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。この閾値を示す情報はメモリ35に記憶されている。
【0074】
ステップS203においてズーム倍率が閾値以上でないと判定された場合は、ステップS205において、CPU37は、ズーミングレンズの移動後の主点の位置を導出した後、導出した主点の位置に加速度センサ15を移動させるように移動機構15aを制御する。
【0075】
ステップS203においてズーム倍率が閾値以上でないと判定された場合は、ステップS207において、CPU37は、移動機構15aにより加速度センサ15を撮像装置1の先端側(ここでは撮像光学系3の光軸方向における被写体側)に移動させるように制御する。この際、加速度センサ15を移動させる位置は予め決定されていて、当該位置を示す情報は予めメモリ35に記憶されている。ステップS209において、CPU37は、加速度センサ15に関する情報を移動後の位置における情報に換算する。
【0076】
ステップS211において、CPU37は、ブレ補正部13に加速度センサ15から加速度信号を取得させるとともに、角速度センサ14から角速度信号を取得させる。そしてCPU37は、ブレ補正部13に回転半径Rを導出させるように制御して、回転半径算出処理プログラムを終了する。このとき導出された回転半径Rは、ブレ量δを導出する際に使用される。
【0077】
加速度センサ15の質量をm、撮像装置1の重心から加速度センサ15までの距離をrとした場合、加速度センサ15にかかる慣性モーメントIは、I=mrで表され、慣性モーメントIは距離rに比例する。つまり撮像装置1の先端に加速度センサ15を取り付けることにより、より正確な加速度情報を得ることができる。平行移動によるシフトブレのみを考慮した場合には、加速度センサ15の取り付け位置による情報量の変化は小さいが、実際にはシフトブレのみでなく角度ブレも発生しているため、手振れ補正という枠で考えた場合、加速度センサ15を撮像装置1の先端に設置することにより正確な補正を行うことができる。
【0078】
このようにして本実施形態に係る撮像装置1において、撮像光学系3によるズーム倍率が予め定められた第1閾値を超えている場合は、加速度検出手段である加速度センサ15が被写体側に移動され、ズーム倍率が第1閾値を超えている場合は、加速度センサ15によって検出された加速度が、当該加速度センサ15が主点の位置に位置された場合の値に換算されて用いられる。
【0079】
これにより、撮像装置1における手振れが顕著に現れる場面において、加速度センサ15を撮像装置1の先端よりに移動させることで、加速度センサ15により得られる情報の情報量を増加させ、補正精度を向上させることができる、という効果を奏する。
【0080】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る撮像装置1について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、第3実施形態に係る撮像装置1は、第1実施形態及び第2実施形態に係る撮像装置1と同様に、図1、図2、図5及び図7に示す構成を有しているため、当該構成に関して重複する説明を省略する。
【0081】
本実施形態に係る撮像装置1は、撮影モードに設定されている間に、所定時間経過毎に回転半径算出処理プログラムを実行する。そこで、まず、図11を参照して、回転半径算出処理プログラムを実行する際の撮像装置1の作用を説明する。なお、図11は、撮影モードに設定された際に、CPU37により実行される回転半径算出処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、当該プログラムはメモリ35に予め記憶されている。なお、回転半径算出処理プログラムは、メモリカード等の記録媒体に記憶されていて、当該記録媒体からメモリ35に記憶されることによりメモリ35にインストールされても良い。
【0082】
始めに、ステップS301において、CPU37は被写体距離が変更されたか否かを判定する。この際、CPU37は、フォーカスモータ60によりレンズ21のフォーカシングレンズを所定距離以上移動させた場合に、被写体距離が変更されたものと判定する。
【0083】
ステップS301において被写体距離が変更されたと判定された場合は、ステップS303において、CPU37は、被写体距離が予め定められた閾値以上であるか否かを判定する。この閾値を示す情報はメモリ35に記憶されている。
【0084】
ステップS303において被写体距離が閾値以上でないと判定された場合は、ステップS305において、CPU37は、フォーカシングレンズの移動後の主点の位置を導出した後、導出した主点の位置に加速度センサ15を移動させるように移動機構15aを制御する。
【0085】
ステップS303において被写体距離が閾値以上であると判定された場合は、ステップS307において、CPU37は、移動機構15aにより加速度センサ15を撮像装置1の先端側(ここでは撮像光学系3の光軸方向における被写体側)に移動させるように制御する。この際、加速度センサ15を移動させる位置は予め決定されていて、当該位置を示す情報は予めメモリ35に記憶されている。ステップS309において、CPU37は、加速度センサ15に関する情報を移動後の位置における情報に換算する。
【0086】
ステップS311において、CPU37は、ブレ補正部13に加速度センサ15から加速度信号を取得させるとともに、角速度センサ14から角速度信号を取得させる。そしてCPU37は、ブレ補正部13に回転半径Rを導出させて、回転半径算出処理プログラムを終了する。このとき導出された回転半径Rは、ブレ量δを導出する際に使用される。
【0087】
このようにして本実施形態に係る撮像装置1において、撮像光学系3による焦点距離が予め定められた第2閾値を超えている場合は、加速度検出手段である加速度センサ15が被写体側に移動され、焦点距離が前記第2閾値を超えている場合は、加速度センサ15によって検出された加速度が、当該加速度センサ15が主点の位置に位置された場合の値に換算されて用いられる。
【0088】
これにより、撮像装置1における手振れが顕著に現れる場面において、加速度センサ15を撮像装置1の先端よりに移動させることで、加速度センサ15により得られる情報の情報量を増加させ、補正制度を向上させることができる、という効果を奏する。
【0089】
なお、本実施形態に係る撮像装置1は、撮像光学系3にブレ補正レンズ23を備え、ブレ補正レンズ23を光軸Lに垂直な面内で移動させることにより手振れの補正を行う例を説明したが、これに限らない。例えば、手振れの補正は、撮像光学系3の光軸Lに対して撮像素子12を移動させることによっても行うことができる。本実施形態に係る撮像装置1は、このように撮像素子12を移動させて手振れ補正を行う撮像装置にも好適である。
【0090】
また、本実施形態では、撮像素子12がCCD型の撮像素子である例を説明したが、これに限らず、CMOS型の撮像素子を用いても良い。
【符号の説明】
【0091】
1…撮像装置,2…筐体,3…光学撮像系,4…ストロボ,5…表示部,6…操作部,6A…メニュー操作部,6B…レリーズボタン,6C…電源ボタン,6D…モード切替ボタン,6E…ズームボタン,12…撮像素子,13…ブレ補正部,14…角速度センサ,15…加速度センサ,15a…移動機構,15b…ボールねじ,16…AF検出回路,17…AE/AWB検出回路,21…レンズ,22…絞り,23…ブレ補正レンズ,31…AFE,32,42、49 …A/D変換器,33…DSP,34…画像処理部,35…メモリ,36…表示部,37…CPU,41…BPF,43、46、50…HPF,44、52…位相補償回路,45、53…積分回路,47…敏感度算出部,48…LPF,48、51…成分判定部,54…回転半径算出部,55…回転中心補正部,56…ブレ量算出部,57…アクチュエータ,60…フォーカスモータ,61…ズームモータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能なレンズを含む複数のレンズを有する撮像光学系と、
前記撮像光学系を通して被写体像を撮像する撮像素子と、
設置された位置における角速度を検出する角速度検出手段と、
前記撮像光学系の光軸に沿った方向に移動可能に設置されるとともに、停止された位置における加速度を検出する加速度検出手段と、
前記撮像光学系の主点の位置を導出する主点位置導出手段と、
前記移動可能なレンズの移動に応じて前記撮像光学系の主点の位置が変化した場合に、前記加速度検出手段を移動させて前記主点位置導出手段によって導出された主点の位置に対して最短の距離になる位置に停止させる移動手段と、
前記角速度検出手段によって検出された角速度及び前記加速度検出手段によって検出された加速度を用いて、前記撮像光学系の光軸が回転して生じる角度ブレの回転半径に基づいてブレ量を導出するブレ量導出手段と、
前記ブレ量導出手段によって導出されたブレ量に基づいて、手振れ補正を行う補正手段と、
を備えた撮像装置。
【請求項2】
前記ブレ量導出手段は、以下の式に基づいてブレ量δを導出する請求項1記載の撮像装置。
δ=(1+β)fθ+βRθ
ただし、βは撮影倍率、fは焦点距離、θは角速度の積分値より得られる角度ブレ、Rは加速度の積分値より得られる速度V、角速度ωとしたときV/ωで得られる回転半径である
【請求項3】
前記撮像光学系によるズーム倍率が予め定められた第1閾値を超えている場合は、前記移動手段は、前記加速度検出手段を被写体側に移動させ、前記ブレ量導出手段は、前記加速度検出手段によって検出された加速度を、当該加速度検出手段が前記主点の位置に位置された場合の値に換算して用いる
請求項1または2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像光学系による焦点距離が予め定められた第2閾値を超えている場合は、前記移動手段は、前記加速度検出手段を被写体側に移動させ、前記ブレ量導出手段は、前記加速度検出手段によって検出された加速度を、当該加速度検出手段が前記主点の位置に位置された場合の値に換算して用いる
請求項1または2記載の撮像装置。
【請求項5】
前記移動手段は、前記撮像光学系による焦点距離が予め定められた距離以上変化した場合に前記加速度検出手段の移動を行う
請求項1乃至4の何れか1項記載の撮像装置。
【請求項6】
前記移動手段は、前記撮像光学系の主点の位置から被写体までの距離が予め定められた距離以上変化した場合に前記加速度検出手段の移動を行う
請求項1乃至5の何れか1項記載の撮像装置。
【請求項7】
移動可能なレンズを含む複数のレンズを有する撮像光学系を通して被写体像を撮像する撮像素子、設置された位置における角速度を検出する角速度検出手段、及び前記撮像光学系の光軸に沿った方向に移動可能に設置されるとともに、停止された位置における加速度を検出する加速度検出手段を有する撮像装置を制御するコンピュータを、
前記撮像光学系の主点の位置を導出する主点位置導出手段と、
前記移動可能なレンズの移動に応じて前記撮像光学系の主点の位置が変化した場合に、加速度検出手段を移動させて前記主点位置導出手段によって導出された主点の位置に対して最短の距離になる位置に停止させる前記移動手段と、
前記角速度検出手段によって検出された角速度及び前記加速度検出手段によって検出された加速度を用いて、前記撮像光学系の光軸が回転して生じる角度ブレの回転半径に基づいてブレ量を導出するブレ量導出手段と、
前記ブレ量導出手段によって導出されたブレ量に基づいて、手振れ補正を行う補正手段と、
として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
移動可能なレンズを含む複数のレンズを有する撮像光学系、前記撮像光学系を通して被写体像を撮像する撮像素子、設置された位置における角速度を検出する角速度検出手段、及び前記撮像光学系の光軸に沿った方向に移動可能に設置されるとともに、停止された位置における加速度を検出する加速度検出手段を有する撮像装置の回転半径導出方法であって、
前記撮像光学系の主点の位置を導出する主点位置導出ステップと、
前記移動可能なレンズの移動に応じて前記撮像光学系の主点の位置が変化した場合に、前記加速度検出手段を移動させて前記主点位置導出ステップによって導出された主点の位置に対して最短の距離になる位置に停止させる移動手段と、
前記角速度検出手段によって検出された角速度及び前記加速度検出手段によって検出された加速度を用いて、前記撮像光学系の光軸が回転して生じる角度ブレの回転半径に基づいてブレ量を導出する導出ステップと、
前記ブレ量導出ステップによって導出されたブレ量に基づいて、手振れ補正を行う補正ステップと、
を行う撮像装置のブレ量導出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−247544(P2012−247544A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117931(P2011−117931)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】