説明

撮像装置、印刷システム、撮像装置制御プログラム及び撮像装置制御方法

【課題】ユーザが望む色に近い画像を再現することのできるようにする。
【解決手段】撮影後に画像を印刷する際の使用プリンタ、印刷インク、印刷用紙の補正が選択又は設定されているか否かを判断する(ステップS127)。使用プリンタ、印刷インク、印刷用紙の補正が選択又は設定されている場合には、データメモリに予め記憶されている、当該選択又は設定された使用プリンタ、印刷インク、印刷用紙の分光特性データR(λi)を取得する(ステップS128)。そして、分光画像信号を、波長帯域(λi)毎に、前記ステップS128で取得した使用プリンタ、印刷インク、印刷用紙の分光特性に応じて補正する(ステップS126)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、印刷システム、及び撮像装置に用いられる撮像装置制御プログラム及び撮像装置制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、USB等によりプリンタと接続可能であって、撮像した画像データをプリンタに出力して、印刷再生し得る撮像装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−190982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、印刷再生される画像の色は、印刷時におけるプリンタや印刷紙、印刷インキ等により決まってしまう。したがって、単に撮像してこの撮像した画像データに基づき印刷再生を行うと、ユーザが望む色に近い画像を再現することができない。
【0004】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、ユーザが望む色に近い画像を再現することのできる撮像装置、印刷システム、撮像装置制御プログラム及び撮像装置制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために請求項1記載の発明に係る撮像装置にあっては、入力される駆動信号に応じて、被写体光の透過波長帯域を変化させるフィルタ手段と、このフィルタ手段に駆動信号を入力して、前記透過波長帯域を複数段に変化させる分光制御手段と、前記フィルタ手段の後方に配置され、該フィルタ手段が透過波長帯域を変化させる毎に撮像する撮像手段と、この撮像手段により撮像された透過波長帯域毎の分光画像データにおける少なくとも一つの分光画像データを、所定の補正要素における対応する波長帯域の補正データに基づき補正する補正手段と、この補正手段により補正された前記分光画像データを含む前記透過波長帯域毎の分光画像データを再生用画像データとして外部に出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
また、請求項2記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記所定の補正要素は、前記撮像手段の撮像時における照明光源、前記再生用画像データに基づき画像を再生する再生時における照明光源、前記再生用画像データに基づき画像を印刷再生する際に用いられる多色プリンタ、印刷インキ、印刷用紙、前記撮像手段の撮像時に使用を仮想されたフィルムのいずれか少なくとも一つの種類を含むものであることを特徴とする。
【0007】
また、請求項3記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記再生用画像データを記憶する記憶手段を更に備え、前記出力手段は、前記記憶手段に記憶されている再生用画像データを出力することを特徴とする。
【0008】
また、請求項4記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記透過波長帯域毎の分光画像データを合成する合成手段と、前記合成手段により得られた合成画像データと前記透過波長帯域毎の分光画像データとを対応付けて記憶する記憶手段とを備え、前記出力手段は、前記記憶手段に記憶されている合成画像データと前記透過波長帯域毎の分光画像データのうちいずれか一方の画像データを再生用画像データとして出力することを特徴とする。
【0009】
また、請求項5記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記所定の補正要素が前記多色プリンタである場合において、当該プリンタが前記分光画像データに基づく印刷が可能であるか否かを判断する判断手段を備え、前記出力手段は、前記判断手段の判断結果に基づき、前記分光画像データに基づく印刷が可能である場合には、前記透過波長帯域毎の分光画像データを再生用画像データとして出力し、不可能である場合には、前記合成画像データを再生用画像データとして出力することを特徴とする。
【0010】
また、請求項6記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記所定の補正要素が前記多色プリンタである場合において、前記出力手段は、前記再生用画像データを当該プリンタが直接的に印刷に用いることが可能なデータに変換して出力することを特徴とする。
【0011】
また、請求項7記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記所定の補正要素が前記多色プリンタである場合において、前記補正手段は、前記多色プリンタから出力された当該多色プリンタに係る分光特性補正データを受信する受信手段を備え、この受信手段により受信された前記分光特性補正データを前記補正データとすることを特徴とする。
【0012】
また、請求項8記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記所定の補正要素が前記撮像手段の撮像時における照明光源である場合において、前記補正手段は、標準光源の分光放射輝度データと前記撮像手段の撮像時における照明光源の分光放射輝度データとを取得する取得手段を備え、この取得手段により取得された前記標準光源の分光放射輝度データと前記照明光源の分光放射輝度データとに基づき、前記撮像手段により撮像された透過波長帯域毎の分光画像データを前記標準光源で撮像したと仮定した分光画像データに変換することを特徴とする。
【0013】
また、請求項9記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記所定の補正要素が前記撮像手段の撮像時における照明光源である場合において、前記補正手段は、前記撮像手段により撮像された分光反射率特性が既知の被写体に基づき、撮像時における照明光の分光放射率特性を取得する取得手段を備え、この取得手段により取得された前記撮像時における照明光の分光放射率特性を前記補正データとすることを特徴とする。
【0014】
また、請求項10記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記所定の補正要素が前記撮像手段の撮像時における照明光源である場合において、前記補正手段は、前記撮像手段により撮像された同一被写体が日向にある場合の前記透過波長帯域毎の分光画像データにおける少なくとも一つの分光画像データと、日陰にある場合の前記透過波長帯域毎の分光画像データにおける少なくとも一つの分光画像データとに基づき、撮影時における照明光源を推定して、前記補正データを設定する手段を備えることを特徴とする。
【0015】
また、請求項11記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記所定の補正要素が前記撮像手段の撮像時に使用を仮想されたフィルムの種類である場合において、前記補正手段は、前記フィルムの分光感度特性を前記補正データとすることを特徴とする。
【0016】
また、請求項12記載の発明に係る撮像装置にあっては、前記使用を仮想されたフィルムは、赤外フィルム、紫外フィルム、白黒フィルム、一般可視光カラーフィルムのいずれかであることを特徴とする。
【0017】
また、請求項13記載の発明に係る撮像装置にあっては、複数のフィルムの種類名を表示する表示手段と、この表示手段に表示されたフィルムの種類名からいずれかを選択する選択手段とを備え、前記補正手段は、前記選択手段により選択されたフィルムの種類名に対応する分光感度特性を前記補正データとすることを特徴とする。
【0018】
また、請求項14記載の発明に係る撮像装置にあっては、複数のフィルムの特性を表示する表示手段と、この表示手段に表示されたフィルムの特性からいずれかを選択する選択手段とを備え、前記補正手段は、前記選択手段により選択されたフィルムの特性に対応する分光感度特性を前記補正データとすることを特徴とする。
【0019】
また、請求項15記載の発明に係る印刷システムにあっては、撮像装置と多色プリンタとからなる印刷システムであって、前記撮像装置は、入力される駆動信号に応じて、被写体光の透過波長帯域を変化させるフィルタ手段と、このフィルタ手段に駆動信号を入力して、前記透過波長帯域を複数段に変化させる分光制御手段と、前記フィルタ手段の後方に配置され、該フィルタ手段が透過波長帯域を変化させる毎に撮像する撮像手段と、この撮像手段により撮像された透過波長帯域毎の分光画像データと当該分光画像データに関するカラープロファイル情報を前記プリンタに出力する出力手段とを備え、前記プリンタは、前記出力手段により出力された前記透過波長帯域毎の分光画像データ及びカラープロファイル情報を受信する受信手段と、この受信手段により受信された透過波長帯域毎の分光画像データにおける少なくとも一つの分光画像データを、受信されたカラープロファイル情報に基づき補正する補正手段と、この補正手段により補正された前記分光画像データを含む前記透過波長帯域毎の分光画像データを再生用画像データとして印刷出力する出力手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
また、請求項16記載の発明に係る撮像装置制御プログラムにあっては、入力される駆動信号に応じて、被写体光の透過波長帯域を変化させるフィルタ手段と、このフィルタ手段に駆動信号を入力して、前記透過波長帯域を複数段に変化させる分光制御手段と、前記フィルタ手段の後方に配置され、該フィルタ手段が透過波長帯域を変化させる毎に撮像する撮像手段とを備える撮像装置が有するコンピュータを、前記撮像手段により撮像された透過波長帯域毎の分光画像データにおける少なくとも一つの分光画像データを、所定の補正要素における対応する波長帯域の補正データに基づき補正する補正手段と、この補正手段により前記分光画像データを補正された前記透過波長帯域毎の分光画像データを再生用画像データとして外部に出力する出力手段として機能させることを特徴とする。
【0021】
また、請求項17記載の発明に係る撮像装置制御方法にあっては、入力される駆動信号に応じて、被写体光の透過波長帯域を変化させるフィルタ手段と、このフィルタ手段に駆動信号を入力して、前記透過波長帯域を複数段に変化させる分光制御手段と、前記フィルタ手段の後方に配置され、該フィルタ手段が透過波長帯域を変化させる毎に撮像する撮像手段とを備える撮像装置の制御方法であって、この撮像手段により撮像された透過波長帯域毎の分光画像データにおける少なくとも一つの分光画像データを、所定の補正要素における対応する波長帯域の補正データに基づき補正する補正ステップと、この補正ステップにより前記分光画像データを補正された前記透過波長帯域毎の分光画像データを再生用画像データとして外部に出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ユーザが望む色に近い画像を再現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係るデジタルカメラ(分光カメラ)1の回路構成を示すブロック図である。図に示すように、デジタルカメラ1は、制御回路2を有している。制御回路2には、CPU3とこのCPU3にデータバス4を介して各々接続されたインタフェース5、音声入出力回路6、入力回路7、メモリカード・IF8、USBコントローラ9、入出力インタフェース10、入出力回路11、入出力ポート12、13、HDD・IF14が設けられている。音声入出力回路6には、マイク16がアンプ17及びA/D変換器18を介して接続されているとともに、スピーカ19がアンプ20及びD/A変換器21を介して接続されている。入力回路7には、各種操作キー、スイッチ等が設けられた操作入力部22が接続され、メモリカード・IF8には脱着自在に設けられた画像メモリ媒体25が接続されている。USBコントローラ9はUSB端子26に接続されており、入出力インタフェース10はアンテナ27を有する無線LAN送受信部28に通信コントローラ29を介して接続されている。また、入出力回路11には、外部トリガー端子30がトリガー検出部31を介して接続されている。
【0024】
なお、前記USB端子26にプリンタを接続することが可能であり、したがって制御回路2は接続されUSB端子26に接続されたプリンタとUSBコントローラ9を介して通信することが可能である。
【0025】
前記入出力ポート12には、分光フィルタ駆動部32、温度検出回路33、焦点レンズ駆動部34、ズーム駆動部35、ブレ補正駆動部36、絞り駆動部37及びシャッタ駆動部38が接続されているとともに、ストロボ39がストロボ駆動回路40を介して接続され、LED41がLED駆動回路42を介して接続されている。つまり、このLED41もストロボ39と同様に、AF時や撮影時において補助光を発生させるためのものである。また、LED駆動回路42による駆動によりLED41の発光色、発光波長、及び発光波長帯域を変化させることが可能である。
【0026】
前記温度検出回路33は、分光フィルタ59近傍の温度を検出するものである。前記入出力ポート13には、当該デジタルカメラ1の上下方向のブレを検出する角速度センサ(Y/Pitch)43と、上下方向のブレを検出する角速度センサ(X/Yaw)とが各々検出回路44、46を介して接続されている。HDD・IF14には、HDD記憶装置47が接続されている。HDD記憶装置47は、ディスク媒体48を有するとともに、モータ49、モータドライバ50、マイコン部51、VCモータ52、ヘッドアンプ53、リード/ライトチャンネル+CODEC54、HDD制御部55等を有している。
【0027】
また、制御回路2には、電池56が電源制御部57を介して接続され、電源制御部57は制御回路2により制御されて各部に電池56からの電力を供給する。さらに、前記データバス4には音声CODEC(符号器/復号器)15、プログラムメモリ23及びデータメモリ24が接続されている。音声CODEC15は、音声信号を符号化するとともに音声データを復号化する。プログラムメモリ23は、後述するフローチャートに示す制御回路2が動作するためのプログラムを格納しており、データメモリ24は各種データが予め格納されているとともに画像データ以外の他のデータを格納する。
【0028】
一方、撮像光学系58は、前記焦点レンズ駆動部34、ズーム駆動部35、ブレ補正駆動部36により駆動されるレンズ群から構成され、前方光軸上には分光フィルタ59が配置されているとともに、後方光軸上には撮像素子60が配置されている。
【0029】
ところで、今日においては6百万画素の解像度で60フレーム/秒、VGAの低解像度でも300フレーム/秒以上など、高解像度かつ高フレームレートで撮影が可能なCMOSイメージセンサが開発され、実用化されるに至っている。本実施の形態は、このような既に開発、実用化されている高解像度かつ高フレームレート撮影可能なイメージセンサの存在を前提として、このイメージセンサを撮像素子60として用いるものである。また、撮像光学系58中には、前記絞り駆動部37により駆動される絞り61及び前記シャッタ駆動部38により駆動されるシャッタ62が介挿されている。
【0030】
前記撮像素子60は、並列読み出しなどの前記高フレームレートでの撮影を行うための高速読み出しが可能なものであるが、一般的な撮像素子とは異なり、画素毎のベイヤー配列のRGBカラーフィルター等は設けられていない。この撮像素子60は、イメージセンサ部63、水平走査部64、垂直走査部65、P/S変換部66を有している。水平走査部64は、信号読み出し、信号処理部、CDS(相関二重サンプル回路)/ADC(A/D変換器)を備えている。この撮像素子60には、DSP部67が接続されている。DSP部67には、撮像素子60のP/S変換部66から取り込んだ画像信号を処理するためのS/P変換部68、前処理部69、バッファメモリ(A)70、帯域別信号処理部71、マルチプレーン加算回路72、RGB変換部73、階調変換ガンマ補正部74、カラーマトリクス回路75、解像度変換部76を備えているとともに、前記垂直走査部65の周期を制御するためのコントローラ77や、画像特徴抽出処理・画像認識処理部78、測光処理/合焦検出/分光特性抽出/補正部79を備えている。
【0031】
前記解像度変換部76、画像特徴抽出処理・画像認識処理部78、測光処理/合焦検出/分光特性抽出/補正部79は、画像データバス80を介してバッファメモリ(B)81、画像CODEC(符号器/復号器)82、動画像CODEC(符号器/復号器)83及び表示駆動回路84に接続され、画像データバス80は前記制御回路2のインタフェース5に接続されている。バッファメモリ(B)81は、画像CODEC82及び動画像CODEC83が符号化及び復号化処理する際の画像データを一時的に格納し、表示駆動回路84は、LCDからなる表示部85を駆動する。
前記分光フィルタ59は、近紫外〜可視光領域〜近赤外光領域で狭帯域の透過波長特性を持つフィルタである。この狭帯域の透過波長特性を持つフィルタとしては、後述するリオ(Lyot)フィルタや、ファブリペロー(Fabry−Perot)干渉フィルタ等がある。また、LCTF(液晶チューナブルフィルタ)やLCFP(液晶ファブリペロー)エタロンなどの電子制御可能なフィルタも用いることができる。
【0032】
(第1の実施の形態)
【0033】
図5は、本発明の第1の実施の形態の概要を示す説明図である。本実施の形態は、前記USB端子26により、プリンタ100をデジタルカメラ1に接続し、ユーザが設定した撮影モードにおいてプリンタ100から分光特性補正データ(プリンタ系分光補正データ(インク、用紙など))を受信し、この受信したプリンタ系の分光特性補正データに基づいて画像データを補正して記録しておき、後に記録画像をプリンタに出力するものである。
【0034】
したがって、データメモリ24には、図5に示したプリンタ100から受信したプリンタ系分光補正データ(インク、用紙など)が記憶されているとともに、同図に示した照明光源の分光補正データや撮影系の分光補正データが記憶されている。
【0035】
図2及び図3は、本発明の第1の実施の形態における撮影制御の処理手順を示す一連のフローチャートである。本実施の形態は、より詳しくは選択波長帯域の分光画像を各波長帯域毎に撮影し、光学系の透過率特性、撮像素子の感度精度、照明光源の放射率特性、印刷インク・用紙の分光特性で補正した分光画像データ又は一般画像データを出力するようにしたものである。
【0036】
制御回路2はプログラムメモリ23に格納されているプログラムに基づき、このフローチャートに示すような処理を実行する。先ず、ユーザによる操作入力部22での操作等に応じて、撮影モードを選択するとともに、撮影条件等を選択する(ステップS101)。次に、この選択された撮影モードが分光撮影モードであるか否かを判断し(ステップS102)、分光撮影モードでない場合にはその他のモード処理に移行する(ステップS103)。
【0037】
分光撮影モードであった場合には、ユーザによる操作入力部22での操作等に応じて、スルー映像の波長帯域、撮影波長帯域をそれぞれ選択する(ステップS104)。このステップS104において、スルー映像の波長帯域とは、表示部85に表示させるスルー画像の波長帯域であり、撮影波長帯域とは、撮影して記録する波長帯域である。この撮影波長帯域は、特に限定的に設定しない場合には、前記分光フィルタ59により分光される全波長帯域であり、以下の説明においては、全波長帯域が撮影波長帯域として選択されているものとする。
【0038】
次に、ユーザによる操作入力部22での操作等に応じて、再生時の照明プロファイル、プリンタのプロファイルを選択する(ステップS105)。つまり、前記データメモリ24には、再生時の照明プロファイル及びプリンタのプロファイルデータが照明の種別、プリンタの種別毎に格納されている。そして、ユーザの操作に応じて、撮影後においてプリンタでプリント再生する際の照明の種別に対応する照明プロファイル、及びプリンタの種別に対応するプリンタのプロファイルを選択又は設定する。
【0039】
引き続き、分光スルー画像表示処理と分光特性データの取得処理を実行する(ステップS106)。このステップS106における分光画像表示処理においては、分光フィルタ59が動作することにより得られる波長帯域毎の分光画像データのうち、前記ステップS104で設定されたスルー映像の波長帯域の分光画像データを取得して、この取得した分光画像データに基づきスルー画像を表示部85に表示させる。また、このステップS106における分光特性データの取得処理においては、分光フィルタ59が動作することにより得られる波長帯域毎の分光画像データの特性を示す各分光特性データを取得して、バッファメモリ(A)70に保存する。
【0040】
次に、操作入力部22に設けられているレリーズ釦が半押しされた否かを判断する(ステップS107)。レリーズ釦が半押しされない場合には、その他のキー処理を実行して(ステップS108)、ステップS106に戻る。レリーズ釦が半押しされた場合には、AF処理、AE処理、AWB処理を実行する(ステップS109)。
【0041】
しかる後に、レリーズ釦が全押しされたか否かを判断する(ステップS110)。レリーズ釦が全押しされない場合には、レリーズ釦の半押しを継続しているか否かを判断する(ステップS111)。レリーズ釦の半押しが継続しておらず、半押しが解除された場合には、前記ステップS106に戻る。レリーズ釦の半押しが継続されている場合には、前述したステップS106と同様に分光スルー画像表示処理と分光特性データの取得処理を実行して(ステップS112)、ステップS110に戻り、ステップS110→S111→S112→S110のループを繰り返す。
【0042】
このループが繰り返されている状態において、レリーズ釦の全押しが検出されると、ステップS110からステップS113に進み、予め分光画像の高速連写合成が設定又は選択されているか否かを判断する。分光画像の高速連写合成が設定又は選択されていない場合には、その他の撮影処理に移行する(ステップS114)。
【0043】
また、分光画像の高速連写合成が設定又は選択されている場合には、撮像素子60とDS10P部67を高速連写&マルチプレーン加算モードに設定する(ステップS115)。次に、撮影条件に応じて、透過波長帯域の数(n)と各露出時間(t/n)を再設定する(ステップS116)。つまり、1枚の撮影画像をn個の透過波長帯域毎に、露出時間(t)内において、露出及び撮影処理を行うと、透過波長帯域毎の露出時間は「t/n」となるので、この露出時間(t/n)と透過波長帯域の数(n)とを設定する。
【0044】
次に、透過波長帯域の数(n)に分割された画像の波長帯域において、最初の波長帯域(λi=λ1)を選択する(ステップS117)。この最初の波長帯域(λi=λ1)は、波長が最も短い帯域側でもよいし、最も長い帯域側でもよい。
【0045】
そして、電子制御フィルタ(分光フィルタ59)に、所定の駆動信号を加えて、透過波長帯域を前記ステップS117で選択した波長帯域λ1に設定する(図3のステップS118)。引き続き、露光(シャッタ開)&撮影処理を実行し、シャッタ駆動部38を動作させてシャッタ62を開くとともに、イメージセンサ部63からの画像データをバッファメモリ(A)70に記憶する(ステップS119)。したがって、このステップS119での処理により、バッファメモリ(A)70には分光フィルタ59を透過した波長帯域λiからなる分光画像データが記憶されることとなる。
【0046】
次に、前記ステップS116で再設定された各露出時間(t/n)が経過したか否かを判断する(ステップS120)。各露出時間(t/n)が経過したならば、シャッタ駆動部38を動作させてシャッタ62を閉じて露光を終了する(ステップS121)。そして、前記ステップS119で撮影されてバッファメモリ(A)70に記憶された分光画像データを、該バッファメモリ(A)70から読み出す(ステップS122)。引き続き、この読み出した分光画像データを、波長帯域(λi)毎に、レンズ(撮影光学系58)、分光フィルタ32の透過率T(λi)に応じて補正するとともに、感度S(λi)などを補正する(ステップS123)。
【0047】
また、撮影時における照明光源の補正が選択又は設定されているか否かを判断する(ステップS124)。撮影時における照明光源の補正が選択又は設定されている場合には、データメモリ24に予め記憶されている、当該選択又は設定された照明光源の放射特性(λi)を取得する(ステップS125)。そして、分光画像信号を、波長帯域(λi)毎に、前記ステップS125で取得した撮影時の照明光源と再生時の照明光源の分光特性の比に応じて補正する(ステップS126)。
【0048】
なお、本実施の形態においては、分光画像信号を、波長帯域(λi)毎に、撮影時の照明光源と再生時の照明光源の分光特性の比に応じて補正するようにしたが、撮影時の照明光源の分光特性のみ、又は再生時の照明光源の分光特性のみにより、分光画像信号を、波長帯域(λi)毎に補正を行うようにしてもよい。
【0049】
また、撮影時の照明光源の分光特性により分光画像信号を、波長帯域(λi)毎に補正する場合には、ステップS125で撮影時における照明光源の放射特性(λi)を取得するのみならず、標準光源の分光放射特性を取得し、これら取得された前記標準光源の放射特性と前記照明光源の分光放射特性(λi)とに基づき、ステップS126で前記撮像された透過波長帯域毎の分光画像データを前記標準光源で撮像したと仮定した分光画像データに変換するようにしてもよい。これにより、標準光源で照明された場合に画像に変換できるので、色再現性の良い再生ができる。
【0050】
また、撮影後に画像を印刷する際の使用プリンタ、印刷インク、印刷用紙の補正が選択又は設定されているか否かを判断する(ステップS127)。使用プリンタ、印刷インク、印刷用紙の補正が選択又は設定されている場合には、データメモリ24に予め記憶されている、当該選択又は設定された使用プリンタ、印刷インク、印刷用紙の分光特性データR(λi)を取得する(ステップS128)。そして、分光画像信号を、波長帯域(λi)毎に、前記ステップS128で取得した使用プリンタ、印刷インク、印刷用紙の分光特性に応じて補正する(ステップS129)。
【0051】
なお、本実施の形態においては、分光画像信号を、使用プリンタ、印刷インク、印刷用紙の分光特性に応じて補正するようにしたが、使用プリンタと印刷インク、使用プリンタと印刷用紙、印刷インクと印刷用紙、使用プリンタのみ、印刷インクのみ、印刷用紙のみの分光特性に応じて補正するようにしてもよい。
【0052】
次に、分光画像データで記録又は出力するが選択又は設定されているか否かを判断する(ステップS130)。分光画像データで記録又は出力するが選択又は設定されている場合には、波長帯域(λi)毎の分光画像データV(x,y;λi)をバッファメモリ(B)81に記録する(ステップS131)。
【0053】
また、一般画像データで記録又は出力するが選択又は設定されているか否かを判断する(ステップS132)。一般画像データで記録又は出力するが選択又は設定されている場合には、各画素の輝度値V(x,y;λi)に等色関数を乗算して、R,G,Bデータに変換する(ステップS133)。さらに、撮影された各波長帯の分光画像の各画素のR,G,Bデータをマルチプレーン加算合成して、バッファメモリ(B)81に記憶する(ステップS134)。
【0054】
したがって、バッファメモリ(B)81には、分光画像データで記録又は出力するが選択又は設定されている場合には、t/n毎に波長帯域(λi)毎の分光画像データV(x,y;λi)が記憶され、一般画像データで記録又は出力するが選択又は設定されている場合には、t/n毎に撮影された分光画像の各画素のR,G,Bデータをマルチプレーン加算合成した合成画像が更新されつつ記憶される。また、分光画像データで記録又は出力する、及び一般画像データで記録又は出力するが選択又は設定されている場合には、両者が記憶されることとなる。
【0055】
次に、帯域数n枚の分光画像を撮影済みか否か、つまりi≧nとなったか否かを判断する(ステップS135)。i≧nとなっておらず、帯域数n枚の分光画像を撮影済みでない場合には、iをインクリメントして(i=i+1)、このiの値により示される次の波長帯域(λi)を選択し(ステップS136)、ステップS118からの処理を繰り返す。したがって、ステップS118〜S135の処理は、t/nのタイミングでn回繰り返され、n回繰り返されると、ステップS135の判断がYESとなって、ステップS135からステップS137に進む。
【0056】
したがって、ステップS118〜S135の処理がn回繰り返されることにより、バッファメモリ(B)81には、分光画像データで記録又は出力するが選択又は設定されている場合には、n枚の波長帯域毎の分光画像が記憶され、一般画像データで記録又は出力するが選択又は設定されている場合には、n個の各波長帯の分光画像の各画素のR,G,Bデータがマルチプレーン加算合成された単一の合成画像が記憶されることとなる。無論、分光画像データで記録又は出力すると一般画像データで記録又は出力するが共に選択されている場合には、バッファメモリ(B)81には、n枚の波長帯域毎の分光画像とn個の各波長帯の分光画像の各画素のR,G,Bデータがマルチプレーン加算合成された単一の合成画像が記憶されることとなる。
【0057】
次に、これらバッファメモリ(B)81記憶されている撮影画像データの圧縮及び符号化処理を実行する(ステップS137)。また、この圧縮及び符号化処理した撮影画像に当該撮影画像のカラープロファイルを付加する(ステップS138)。そして、当該撮影画像のカラープロファイルが付加された撮影画像データを画像メモリ媒体25に保存記録する(ステップS139)。
したがって、撮影終了後にUSB端子26にプリンタを接続し、プリンタモードを設定することにより、波長帯域毎の分光画像に各分光画像のカラープロファイルが付加されたデータ、あるいはマルチプレーン加算合成された単一の合成画像に当該合成画像のカラープロファイルが付加されたデータをプリンタに出力することが可能となる。
【0058】
しかる後に、前記画像メモリ媒体25に保存記録した撮影画像データに基づく画像を表示部85にプレビュー表示する(ステップS140)。
【0059】
なお、本実施の形態においては、帯域数n枚の全ての分光画像に対してステップS126及びS129で補正を行うようにしたが、帯域数n枚の分光画像のうち少なくとも1枚の分光画像に対して補正を行うようにしてもよい。
【0060】
図4は、本実施の形態における作用を示す図である。すなわち、本実施の形態においては、連写された分光画像データV(x,y;λ1)〜V(x,y;λ1n)は、「透過率」や「感度」からなる撮影系の分光特性データ(a)により撮影系の分光特性を補正され、「撮影時の照明光」や「再生時の照明光」からなる照明光の分光放射率特性(b)により照明光源の分光特性を補正され、「印刷用紙」「印刷インキ」「重ね塗り補正係数」からなるプリンタ系の分光特性データ(c)によりプリンタ系の分光特性を補正される。しかる後、CMYK系の等色関数(d)に基づき、各画素の3刺激値を算出してマルチプレーン加算され、必要に応じてトリミング/拡大やノイズ除去/鮮鋭化処理されてCMY又はOMYKデータを出力することができる。
【0061】
したがって、これらCMY又はOMYKデータに基づきプリンタがプリント動作することにより、プリンタの印刷色の分光特性にバラツキがある場合にも、実際の撮影時の被写体の正確な色に近い画像を再現印刷することができる。
【0062】
また、撮影時被写体に照射されている光源の分光放射特性Er(λ)を選択、又は測定、あるいは推定演算して、これを同様に補正して、光源の分光放射率特性Er(λ)を再生時やプリントの観賞時の照明光源の分光放射率特性Ep(λ)に変換してから記録することができる。同様に、印刷に用いるプリンタ系の各色インキの分光放射率特性Rk(λ)、用紙(W)の分光放射率特性Rw(λ)などを考慮して、所望の分光特性のカラー画像データを作成し、プリンタの特性を補って、より忠実性、再現性の高い画像を印刷して利用することができる。
【0063】
図5〜図8は、本実施の形態に係るデジタルカメラ1の使用態様を示す図である。図5は、前述のように撮影した分光画像データ群を、デジタルカメラ1内で再生時の照明やプリンタ100の分光特性に合わせて補正して記録するとともに、RGBデータに変換してプリンタ100に出力し、プリンタ100側でRGBからCMY(CMYK)に変換して印刷する場合である。
【0064】
しかし、このように再生時のプリンタ100の分光特性に合わせて補正して記録するのではなく、連写された分光画像データV(x,y;λ1〜λn)をデジタルカメラ1側においてそのまま記憶しておき、プリントモードにおいてプリンタ100から分光特性補正データを受信し、受信したプリンタ系の分光特性補正データに基づいて撮影記録済みの画像データV(x,y;λ1〜λn)を補正してからプリンタ100に出力するようにしてもよい。
【0065】
また、プリンタ100からプリンタ系の分光特性補正データを受信することなく、デジタルカメラ1に予め記憶されているプリンタ系の分光特性補正データに基づいて分光画像データV(x,y;λ1〜λn)を補正して記録するようにしてもよい。
図6は、前述のように撮影した分光画像データ群を、デジタルカメラ1内で再生時の照明やプリンタ100の分光特性に合わせて補正した後、CMY又はCMYKに変換してプリンタ100に出力場合である。
【0066】
図7(A)は、分光画像に非対応のプリンタ102を用いて、デジタルカメラ1で撮影された画像の印刷再生を行う場合を示す図である。この場合には、デジタルカメラ1にPC(パーソナルコンピュータ)101を接続するとともに、PC101に分光画像に非対応のプリンタ102を接続する。そして、デジタルカメラ1からPC101に前記一般画像データを出力し、PC101内でプリンタ・ドライバによりRGBからCMYKに変換して、プリンタ102に出力する。
【0067】
同図(B)は、分光画像に対応したプリンタ103を用いて、デジタルカメラ1で撮影された画像の印刷再生を行う場合を示す図である。この場合には、デジタルカメラ1にPC(パーソナルコンピュータ)101を接続するとともに、PC101に分光画像に対応のプリンタ103を接続する。そして、デジタルカメラ1からPC101に前記分光画像データを出力し、PC101内で分光画像対応のプリンタ・ドライバによりRGBからCMYKに変換して、プリンタ103に出力する。つまり、画像ファイルのうち、分光画像データを用いて、ユーザが設定する「用紙の種類」や「印刷品質」「色調整」等に従ってプリンタ・ドライバ独自で色処理を行う。
【0068】
図8は、分光画像に非対応のプリンタ102を用いて、デジタルカメラ1で撮影された画像の印刷再生を行う場合を示す図である。この場合には、デジタルカメラ1にPC(パーソナルコンピュータ)101を接続するとともに、PC101に分光画像に非対応のプリンタ102を接続する。そして、アプリケーション内蔵の分光画像対応カラーマネージメントモジュールにより、アプリケーション内蔵の分光画像対応CMMが、「ソースカラースペース」(入力)側に分光画像のプロファイルを、「プリントカラースペース」(出力)側に印刷用紙のプロファイルを利用して印刷する。
【0069】
図9〜図11は、前記ステップS138で撮影画像のカラープロファイルを付加された撮影画像データを前記ステップS139でファイル化してメモリー記録媒体に記録する場合の記録方法の例を示す図である。図9は、一般画像と分光画像群を別ファイルとして、同一フォルダに格納し、対応関係をDPOFファイルなどでグループ化設定する例である。また、一般画像ファイル(全帯域画像)と対応付けて、分光画像ファイル群も記憶する。これにより、分光画像に対応できない分光非対応型プリンタと接続する場合には、一般画像ファイルの一般画像データを印刷に利用し、分光画像に対応する分光対応型プリンタと接続する場合には、分光画像ファイル群の分光画像データを印刷に利用することができる。
【0070】
図10は、一般画像と分光画像群を別ファイルとして、別のフォルダに格納し、対応関係を(MPV、MPEG7、XML、等で記述した)プレイリスト記述データでグループ化設定する例である。これによっても、分光画像に対応できない分光非対応型プリンタと接続する場合には、一般画像ファイルの一般画像データを印刷に利用し、分光画像に対応する分光対応型プリンタと接続する場合には、分光画像ファイル群の分光画像データを印刷に利用することができる。
【0071】
図11は、一般(全帯域)画像と分光画像群とを一つの画像データとして記録する例である。また、図12は、圧縮データファイルの構造例を示す図である。
【0072】
図13は、「太陽光+天空光」の混合と見なせる日向と日陰の分光分布の例を示す。これをプログラムメモリ23に記憶させておくことにより、日向と日陰の分光分布から、太陽光と天空光の分光放射特性を推定算出できる。
・日向:Csun(λ)=R(λ)(Esky(λ)+Esun(λ))、
・日陰:Cshade(λ)=R(λ)Esky(λ)、とすると、
Csun(λ)−Cshade(λ)=R(λ)Esky(λ)
R(λ)={Csun(λ)−Cshade(λ)}/Esun(λ)
となるので、R(λ)を消去できて
・天空光Esky(λ)=太陽光Esun(λ)・Cshade(λ)/{Csun(λ)−Cshade(λ)}
【0073】
図14において、(a)は黒体輻射の分布放射率特性と色温度との関係を示す図、(b)は昼光(日中の太陽光)の分光放射率特性を示す図、(c)は白熱電球の分光放射率特性を示す図、(d)は白熱蛍光灯の分光放射率特性を示すグラフ、(e)は3波長型蛍光灯(昼光色)の分光放射率特性を示す図である。
【0074】
これらの分光放射率特性をプログラムメモリ23に記憶させておくことにより、前記ステップS125において照明光源の分光放射特性E(λi)を取得する際に、プログラムメモリ23からの読み出す単純な処理により、容易に照明光源の分光放射特性E(λi)を取得することができる。
【0075】
次に、本実施の形態における構成上の詳細、動作及び作用上の詳細について説明する。
[分光フィルタ59]
前記分光フィルタ59としては、狭帯域の透過波長特性を持つフィルタを用いる。この狭帯域の透過波長特性を持つフィルタとしては、リオ(Lyot)フィルタや、ファブリペロー(Fabry−Perot)干渉フィルタ等がある。また、LCTF(液晶チューナブルフィルタ)やLCFP(液晶ファブリペロー)エタロンなどの電子制御可能なフィルタも用いることができる。
【0076】
(1)リオ・フィルタ
リオ・フィルタ(LyotFilter)は、複屈折性の結晶板による干渉を利用し、非常に狭い波長城の光を透過する光学フィルタであって、2枚の平行な偏光板の間に、方解石や水晶など複屈折性(birefringence)の結晶板を配したものである。複屈折性の結晶板(厚さd)を透過した光は、互いに垂直な振動方向の通常光と異常光の2光線に分離し、それぞれ異なる屈折率と位相速度を持つ。結晶のX軸方向に直線偏光した光に対して屈折率Ne、Y軸方向に直線偏光した光に対して屈折率Noの場合、
位相差δは、δ=(2π/λ)(Ne−No)d・・・式(1)
透過率Tは、T=cosδ/2・・・式(2)
となり、分離した通常光と異常光は、同じ偏光状態で光路長の整数倍に等しい波長の光だけが、結晶板から出射される。2枚の平行な偏光板の間に、結晶板を45度回転させて配すると、全体の波長特性は、周期的に多数の透過ピークがある櫛歯状の透過波長特性となる。結晶板の角度をモータ等で回転させることにより、透過波長のピークを変えて、フィルタ特性をチューニングできる。
【0077】
また、複数N枚の結晶板を、順次、次の結晶板より厚さdが2倍となるように、dk=2k−1×d(k=1、2・・・、N−1)として積層すると、透過波長の多数のピークから所望波長の光だけ選択できる。多層フィルタによる全体の透過率は、x=δ/2とおくと、次式となる。
T=T・・・TN−1=cos×(2x)cos(4x)・・・cos(2N−1x)・・・式(3)
【0078】
(2)ファフリー・ペロー干渉フィルタ
ファブリ・ペロー干渉フィルタ(Fabry−PerotFilter、Fabry−PerotEtalon)は、多重反射光線の干渉効果を利用して、狭い波長城の光だけを透過する。水晶の平行平板の両面、若しくは、2枚のガラス板の内面に、金属薄膜や誘電体多層薄膜など反射膜をコートした単純な構造で、各種光学機器に広く利用されている。反射膜(半透鏡)を透過して内部に入射された光線は、2枚の面の間を多重反射する。透過光の波面は、その内、偶数回の反射を受けた後に透過する各成分波面の重畳となる。
位相差δ=(2π/λ)2ndcosθ=4πndcosθ/λ・・・式(4)
入射光Iinに対し、透過光Itは、It=Iin×(1−R/{(1−R)+4Rsin(δ)}となるので、
透過率T=(1−R)/{(1−R)+4Rsin(δ)・・・式(5)
ここで、δ:位相差、λ:波長、θ:入射角、d:ミラー間の物理的間隔、n:媒質の屈折率(空気の場合n=1)、R:ミラーの反射率。
【0079】
各成分波面間に位相差がないとき透過光が最大になり、このとき光学距離の差は、波長λの整数倍になる。mλ=2ndcosθ、(m=1,2,3,・・・)・・・式(6)
このとき、他の波長では、各透過成分波面間で打ち消し合いの干渉が起こり、透過光がゼロ近くまで減少する。ミラーは、可視光ではAg、Au、AI、Cr、Rhなどを蒸着した金属膜コーティングでも可能だが、吸収ロスが大きいために、主に、多層の誘電体薄膜等が用いられる。可視光域では、高屈折率のH膜(ZnS等)と低屈折率のL膜(MgF2等)を、λ/4ずつ交互に13層重ねた誘電体多層膜で、99.5%程度の反射率が得られる。
【0080】
ミラーの間隔dは、数ミクロン(μm)〜数センチ(cm)まで様々に設計でき、この間隔d、若しくは、媒質の屈折率nを変えることで、透過する波長を選択できる。また、フィルタの傾きを調整することで波長特性を微調整できる。プリズムや回折格子に比べ、分解能が非常に高く、偏光板を使用するリオ・フィルタ等に比べ、透過率が高く、吸収が少ない。隣のピーク波長との間隔FSR(Free Spectral Range)を、最小帯域幅となる透過ピークの半値全幅FWHM(Fu11 Width at Half Maximum)で割った値は、フィネス(Finesse)と呼ばれ、フィルタ性能をあらわす。
フィネスF=FSR/FWHM=Δλ/δλ=π√R/(1−R)・・・式(7)
【0081】
ここで、フリースペクトラルレンジFSR=Δλ=δλ=λo/(2nd)・・・式(8)
ピーク波長の半値全幅FWHM=δλ=FSR/F・・・式(9)
鏡面の反射率Rを上げるほど、フィネスFが高くなり、波長分解能であるFWHM=δλを狭くし、透過ピークを鋭くすることができる。
また、入射角θで入射する波長λの透過光の強度It(θ,λ)は、次式で表される。
It(θ,λ)=Io(λ)/[1+{4R/(1−R)}sin(2πでnd・cosθ/λ)]=Io(λ)/{1+(F/π)2sin2(δ/2)}・・・式(10)
ここで、Io(λ)は、同心円状の干渉パターン(Hadinger fringe)の中心での透過光強度。
【0082】
光源が単色性(単一波長)ならば、エタロンは特定の条件を満たす入射角でのみ、光を透過させる。このため単色球面波を入射させると、同心円状の円環(干渉パターン)を生成する。なお、ファブリ・ペロー・エタロン(固定間隔のものはエタロン板と呼ばれる)をフィルタとして用いる際には、入射角θが、最も内側の干渉リング(円環)に相当する入射角よりも小さくなるよう、次式の視野角FOV(Field of view)を制限する必要がある。
視野角FOV=√{(8/λ)Xδλ}・・・式(11)
【0083】
(3)電子制御可能な干渉フィルタ
前述のリオ・フィルタや、ファブリ・ペロー・フィルタに、液晶素子や電気光学結晶などの複屈折性要素を挿入して組み合わせると、透過波長特性を電子的に可変できる狭帯域フィルタを構成でき、選択された所望の波長帯域で分光撮影ができる。
【0084】
液晶同調フィルタ(LCTF:Liquid Crystal Tunable Filter)は、前述のリオ・フィルタの各層において、入力偏光子と出力偏光子の2枚の偏光子の間に、複屈折性結晶板と液晶素子とを挟んでサンドイッチ構造とし、複数段積層したものである。入射光は、入力偏光子を通り、次に、偏光子の偏光輪に対し結晶軸が45度に設置された複屈折結晶板により、それぞれ位相速度の異なった常光、異常光の2成分に等量に分割される。液晶分子の長輪方向と短輪方向での屈折率の違いにより、長輪方向に偏光している光と、直交する偏光方向の光との間には光路長差(Δ1φ=2πΔz/λ)が生じる。液晶素子の電極間にかける電圧を変化させると、液晶分子の長輪方向が傾くので光路長差が小さくなる。液晶素子に加える電圧(V)により、液晶の結晶軸の一方の屈折係数が変化するので、一方の光は他方の光に比べ遅延する。このように、液晶素子は遅相器として働き、液晶素子を出た2つの成分は出力偏光子で合成されるが、干渉により波長に関して周期的な透過特性となる。
【0085】
これらを1段として、次々に、複屈折結晶板の厚さが前段の2倍になるようにして複数段重ねることで、入射光の最終的な透過特性を狭帯域にすることができる。したがって、リオ・フィルタのように結晶板を回転させる代りに、各層に挿入した液晶素子の透明電極間に印加する電圧を変えるだけで、各層の選択波長を連続して高速で可変して、その組合せにより、全ての層を透過する所望波長の光だけを選択的に透過させ、CCDなどで撮像すると、狭帯域の分光カメラが実現できる。
【0086】
(4)LCTFの透過波長の選択
所望の波長において、全フィルタにおける透過率のピークを揃えるためには、液晶にかけるAC(交流)若しくは直流(DC)矩形波の電圧を調整して、所望の狭帯域波長に各フィルタの透過率ピークを合わせる必要がある。
各層フィルタの各電圧における分光透過率の特性データ、又は各波長(λi)に調整する為に各層の液晶素子にかける電圧データを、参照テーブル(LUT)として予めメモリに記憶しておき、制御回路2では、それらを参照してフィルタの選択特性を自動調整できるように制御すればよい。
【0087】
なお、積層型のLCTFで、不要な方向の偏光を遮断する為に、液晶と結晶板の両側に偏光板が必要である。また、選択波長の帯域を5〜10nm程度の狭帯域だけの光で撮像して分光画像を得る為には、フィルタ層の数、すなわち、結晶板と液晶層の数を増やして、同時に透過する波長を分離する必要があり、偏光板の数が増えるので透過率が落ちる。特に短波長側(紫〜紫外線側)では透過率がかなり低下する(暗くなる)難点がある。中心部と周辺部とでも透過率が変わり、一様ではない。また、LCTFでは、液晶の立ち上がり時間や、波長特性の切り替え処理や調整処理に時間がかかると、高速撮影が制限される。例えば、可視光領域の400〜700nmを波長間隔10nm毎に撮影する場合、31枚撮影する必要があり、液晶の立ち上がり時間や波長の切り替えに約50ms以上かかるとすると、露出条件などが満たされたとしても、秒当たり20枚(帯域)程度しか撮影できないので、全帯域の撮影に、1.5秒以上かかってしまう等の制約がある。
【0088】
(5)液晶ファブリ・ペロー・エタロン(LCFP:Liquid Crysta1 Fabry−Perotetalon)
液晶ファブリ・ペロー・エタロン(LCFP)としては、米国SSI社(Scientific Solutions lnc.)のものが公知である。LCFPは、前述の多重反射を利用するファブリ・ペロー干渉フィルタの、薄膜ミラーが形成された2枚のガラス板(又は水晶板)等の間に、液晶層を封入し、両側に透明電極を形成したものである。所定の波長特性となるようにミラー間隔(ギャップ)を最適に設計するのに加え、エタロンのギャップ幅を埋める液晶層の両側電極に印加する電圧を変えることで、液晶層の屈折率nを変化させて、それまでピークではなかった波長に透過率ピークを与えるように変化させ、前述のファブリ・ペロー干渉フィルタにおける前述の式(4)、式(5)により、
間隔d、液晶層も含む屈折率nを式(4)に代入して、
位相差δ=4πndcosθ/λ・・・前述式(4)
を求め、当該位相差δを式(5)に代入して、
透過率T=(1−R)/{(1−R)+4Rsin(δ)}・・・前述式(5)
を求めることができ、フィルタの各波長における分光透過率特性を求めることができる。
【0089】
あるいは、これら理論式によるシミュレーション結果又は逆算結果と、液晶の駆動電圧−屈折率特性データから、所望の透過特性となる液晶の屈折率n、及び、所要の駆動電圧Vを求めることができ、各層フィルタを所望の分光透過率特性とすることができる。さらに、異なるミラー間隔のエタロンを多層に積層し、各層に設けた液晶層に印加する電圧を変えることで、複数層のフィルタ全てを透過する波長帯域を、所望の狭帯域の波長帯城λにチューニングすることができ、順次選択した波長帯域の光だけを撮像して、分光撮影に利用できる。ただし、液晶の特性として、この屈折率変化は偏光の直交2成分のうち、1成分のみにしか機能しないため、他方の成分はチューニングには寄与できず、この不要成分をブロックするためにLCFPと直列に偏光板を挿入する必要がある。
【0090】
(6)液晶ファブリ・ペロー・エタロン(LCFP)の設計
分光撮影で利用するフィルタの動作波長範囲を、例えば、波長400nm〜700nmの可視光全域とする場合、その全域において高反射率となるコーティングを、平面度の高いエタロン基板上に蒸着する必要がある。また、コーティングの反射率と透過率との相反や、エタロン面の平坦度や間隔の平行精度などから、実用的に無理なく実現できるフィネスFには、例えば(SSI社製LCFPの標準品の場合)波長400nmでF≦8、600nmでF≦10、800nmでF≦12、i200nmでF≦15、1500nmでF≦20などと、ある程度の限界がある。
【0091】
所望の帯域における波長分解能(最小帯域幅)を、FWHM=δλ=50nm、あるいは、10nmに設定したい場合、例えば、400〜700nmの可視光域では、実現できるフィネスF=8〜10程度と考えると、前述の式(6)から、フィネスF=Δjλ/δλであるので、δλ=50nmの場合には、ピーク波長の間隔FSR=Δ1λ=δλ×F=50nm×8=400nmとなり、単一のエタロンでも可視光全域で利用できるが、δλ=10nmの場合、FSR=δλXF=10nm×8=80nmとなり、帯域内で3〜4個のピーク波長が同時に透過されてしまうことになり、3〜4個の次数分離フィルタを必要とする。また、フィネスの点からは所望のFSRが可能であっても、種々のギャップ幅(ミラー間隔)に対するFSRと波長λの関係から、例えば、実現できるエタロンの最小ギャップ幅が3μmの場合、単一エタロンでは、可視光全域ではFSRは30〜80nm程度しか得られないので、次数分離フィルタが4〜10個程度必要になることがわかる。このような場合、複数のエタロンを組み合わせた多層のLCFPを利用する。
【0092】
(7)多層のLCFP
複数のエタロンを直列に組み合わせて使う場合、ギャップ幅の大きな方の第1エタロン(波長分解エタロン)が、系全体の透過幅を規定し、ギャップ幅の小さな方の第2エタロン(次数抑制エタロン)がFSRを規定する。系全体のFSRは、両エタロンのFSRの比に依存する。第1エタロンのFSRと、第2エタロンのFSRとの整数比が、B/Aで表現できるとすると、
FSR=A×FSR=B×FSR・・・式(12)
B=1の場合は、第2エタロンのFSRそのものが全体系のFSRになる。それ以外なら、全体系のFSRは次数抑制エタロンのFSRよりもB倍だけ大きくなる。式(12)から、2台のエタロンを組合せた系では、波長分解エタロンのFSRはA倍に拡大し、全体系のFSRの中に存在できる透過帯の総数も、A倍(FSR拡大係数)に拡大することができる。
【0093】
次数分離フィルタの数を最少にするためには、液晶のチューナブルレンジ(屈折率の変化範囲)よりも大きくならない範囲で、エタロンのFSRを最大化することが必要である。例えば、ギャップ幅3μmのエタロンでは、可視光域(4004m〜700n面が10個の次数で満たされるが、ギャップ幅6μmと、7.4μmのエタロンを組み合わせると、得られるFSRは、ギャップ幅3μmの単体エタロンの2倍、ギャップ幅1.5μmの単体エタロンに相当するものが実現できる。
【0094】
(8)カラー画像の撮影プロセス
一般に、波長(λ)における3次元空間座標(x,y,z)の時間(t)における、ある反射物体の分光反射率の関数をO(x,y,z,t,λ)で表すと、この物質を、分光放射率E(λ)の光源で照明して、分光透過率T(λ)のレンズを通して結像し、分光透過率TFi(λ)のフィルタ、分光感度S(λ)を有する撮像素子のカメラで撮影するとき、カメラの撮像出力である2次元画像Vi(x,y)は、次式で表すことができる。
Vi(x,y)=∫∫∫T(λ)TFi(λ)S(λ)t(t)A(z)O(x,y,z,t,λ)E(λ)dλdtdz・・・式(13)
(ただし、t(t):露光時間、A(z):レンズによる結像関数(3次元−2次元変換関数))。
【0095】
カメラでは露出時間tも所定時間ON/OFFの矩形関数近似できるので、ここでは、色の再現性に注目して、座標軸や時間関数、レンズ結像関数などを略化して考えると、
Vi(x,y)=∫T(λ)TFi(λ)S(λ)O(x,y,λ)(λ)dλ・・・式(14)
となる。
従来の3原色に基づくRGBの3バンド画像の場合には、上記式で、i=R,G,Bで、分光透過率TFi(λ)は、それぞれ、TFR(λ),TFG(λ),TFB(λ)のカーフィルタである。
本実施の形態に係る分光カメラ(デジタルカメラ1)や、狭帯域毎の分光画像の場合にはバンド番号i=1,2,・・・,nとすると、分光透過率T・(λ)が、それぞれ、TF1(λ),TF2,・・・,TFn(λ)の狭帯域バンド毎のフィルタに相当する。(なお上記式で、反射物体と光源のO(λ)E(λ)の代わりに、物体の分光放射輝度Oe(λ)に置き換えると、放射物体の場合にも同様に扱える。)
【0096】
(9)3原色による色再現
一般に、色再現では3色の分解像V、V,Vを、例えば、CIE−XYZ表色系における等色関数x ̄(λ),y ̄(λ),z ̄(λ)などを用いて、元の物体の3刺激値(X,Y,Z)が、下記の(X,Y,Z)と対応するような、所謂測色的な色再現が行われている。
=K∫O(λ)E(λ)x ̄(λ)dλ、
=K∫O(λ)E(λ)y ̄(λ)dλ、
=K∫O(λ)E(λ)z ̄(λ)dλ、・・・式(15)
ここで、K=100[%]/{∫E(入)y ̄(λ)dλ}、
【0097】
また、記録された画像をハードコピーとして、別の分光放射率の照明光源E′(λ)で観察する場合も、光源E(λ)をE′(λ)に、物体の分光反射率O(λ)を、画像の分光反射率(又は、分光濃度)O′(λ)に置き換えると、3刺激値(X,Y,Z)は次式で表される。
=K∫O′(λ)E′(λ)x ̄(λ)dλ、
=K∫O′(λ)E′(λ)y ̄(λ)dλ、
=K∫O′(λ)E′(λ)z ̄(λ)dλ、・・・式(16)
ここで、K=100[%]/{∫E′(λ)y ̄(λ)dλ}、
【0098】
フィルムや写真、印刷などのハードコピー、又は、電子ディスプレーなど、個々に表現形式や変換行列又はLUT(Lookup Table、変換表)は異なっても、上記と同様に考えることができる。このように、式(15)、(16)からも明らかなように、物体、画像の3刺激値は、照明光源の分光放射率E(λ)、E′(λ)などに依存することになる。
【0099】
(10)分光画像の色表現
本実施の形態のような分光画像の場合も式(14)から、
Vi(x,y)=∫T(λ)TFi(λ)S(λ)O(x,y,λ)(λ)dλ・・・前式(14)
(ただし、vi(x,y):2次元画像、E(λ):光源の分光放率、T(λ):撮影レンズの分光透過率、TFi(λ):i番目のフィルタの分光透過率、S(λ)撮像素子の分光感度、O(x,y,λ.):物体の分光反射率である。
【0100】
(11)広帯域画像への変換
得られた複数枚の分光画像データを高速で転送入力したDSPでは、各波長帯λiにおける画の輝度信号V(x,y;λi)を、帯域毎の撮影レンズや干渉フィルタ等の分光透過率F(λi)、撮像センサの分光感度S(λi)をカメラ内のメモリに記憶しておき、れらの逆数等に応じた所定の比率で乗算して、波長帯域別の感度性バラツキが補正された分光画像V′(x,y;λi)を得る。つまり、
V′(x,y;λi)=V(x,y;λi)/F(λi)・S(λi)
【0101】
また、さらに各分光画像の波長帯域(λi)毎におけるr ̄(λi)、g(λi)b ̄(λi)など等色関数などを乗算して、各面素(x、y)毎のR、G、Bなどの3刺激値を求め、
Ri(x、y)=V′(x,y;λi)×r ̄(λi)、
Gi(x、y)=V′(x,y;λi)×g ̄(λi)、
Bi(x、y)=V′(x,y;λi)×b ̄(λi)、
さらに、DSP内のマルチプレーン加算回路により、各波帯域(λi)の各面素(x、y)のRGB値をそれぞれ加算合成して、RGBなど広帯域カラーの画データに変換することができる。
R(x,y)=ΣiRi(x,y)、
G(x,y)=ΣiGi(x,y)、
B(x,y)=ΣiBi(x,y)、・・・式(19)
【0102】
また、標準モニター等のガンマ特性に合わせて、諧調補正やガンマ補正を行ったり、各画素(x、y)毎のrgb色度値やYUV(YCrCb)信号など、他の色空間座標に変換して出力してもよい。このようにして、複数の波長帯域の殆んど同じタイミングとなる微小時間内で高速速写された分光画像を高速に読み出し、加算合成して、色再現性の高い高解像度からなる1枚の広帯域画像データを生成し、出力又は記録できる。
【0103】
図15は、光源の分光特性の推定又は算出する処理手順を示すフローチャートである。屋内の照明であるか否かを判断し(ステップS201)、屋内の照明である場合には既知の光源であるか否かを判断する(ステップS202)。既知の光源である場合には、蛍光灯、電球など光源の種類を選択する(ステップS203)。また、この選択した光源の種類に応じて、対応する分光放射率データE(λ)をデータメモリ24から読み出す(ステップS204)。そして、求めた(読み出した)照明や光源の分光放射利率特性に基づいて、分光画像の分光補正データを設定する(ステップS5)。
【0104】
また、前記ステップS202での判断の結果、既知の光源でなかった場合には、基準色票又は分光反射率が既知の被写体が現在取り込んでいる画像中にあるか否かを判断する(ステップS206)。ある場合には、マクベスチャートなどの基準色票、又は分光反射率が既知の被写体を当該照明下で撮影するよう指示する(ステップS207)。次に、順次波長帯域を切り替えて帯域毎の分光画像を連続撮影し(ステップS208)、この撮影された分光画像データより、輝度の分光分布データC(λ)を計測して記憶する(ステップS209)。また、この記憶した輝度の分光分布データC(λ)から、下記式により分光放射率特性E(λ)を求める(ステップS210)。
E(λ)=C(λ)/R(λ)
ただし、
R(λ):被写体又はその部分の分光反射率
C(λ):被写体又はその部分の輝度の分光分布特性
しかる後に、この求めた照明や光源の分光放射率特性に基づいて、分光画像の分光特性補正データを設定する。
【0105】
また、ステップS206での判断の結果、基準色票又は分光反射率が既知の被写体がない場合には、まず、被写体の既知の光源で撮影するよう指示する(ステップS211)。そして、被写体が既知の光源E(λ)に照射されているとき、順次波長帯域(λ)を切り替えて、帯域毎の分光画像群を連続撮影する(ステップS212)。次に、この連続撮影により得られる分光画像データより、日向の被写体の輝度の分光分布データC(λ)を計測して記憶する(ステップS213)。また、被写体の分光反射率をR(λ)=C(λ)/E(λ)として、前述したステップS207からの処理を実行する。
【0106】
他方、ステップS201での判断の結果、屋内の照明でなかった場合には、屋外の撮影か否かを判断する(ステップS215)。このステップS215での判断の結果、屋外の撮影でない場合には、前述したステップS202に戻る。また、屋外の撮影であった場合には、直射日光か否かを判断する(ステップS216)。直射日光であった場合には、太陽光Esun(λ)を光源の種類として選択し(ステップS217)、前述したステップS204に進む。
【0107】
また、ステップS216での判断の結果、直射日光でなかった場合には、同一被写体が日向のときに撮影するよう指示する(ステップS218)。そして、被写体が日向あるとき、順次波長帯域(λ)を切り替えて、帯域毎の分光画像群を連続撮影する(ステップS219)。次に、この連続撮影により得られる分光画像データより、日向の被写体の輝度の分光分布データCsun(λ)を計測して記憶する(ステップS220)。
【0108】
次に、同一被写体が日陰のときに撮影するよう指示する(ステップS221)。そして、同一被写体が日陰あるとき、順次波長帯域(λ)を切り替えて、帯域毎の分光画像群を連続撮影する(ステップS222)。次に、この連続撮影により得られる分光画像データより、日陰の被写体の輝度の分光分布データCshade(λ)を計測して記憶する(ステップS223)。引き続き、天空光(又は日陰)の分光放射率Esky(λ)を下記式により求める(ステップS224)
sky(λ)=Esun(λ)×Cshade(λ)/{Csun(λ)−Cshade(λ)}
ただし、
sun(λ):太陽光(昼光)の分光放射率
また、天空光Esky(λ)に、日陰〜日向の程度によって、重み付け(w)した太陽光Esun(λ)を加算して、E(λ)=Esky(λ)+wEsun(λ)とする(ステップS225
。しかる後に、求めた照明や光源の分光放射率特性に基づいて、分光画像の分光補正データを設定する(ステップS205)。
【0109】
つまり、太陽光は、シーン撮影時の太陽を直接観察することで、取得できる。一方、天空光は天空半球上からの均一な照明と仮定できるが、雲等の影響によって天空は完全に均一ではないので、屋外シーン中の日向と日陰を利用して推定するものとするのである。
【0110】
また、このようにして設定された分光特性補正データがデータメモリ24に記憶されることにより、光源が未知の場合にも、簡単に、照明光源の分光放射率特性を推定演算でき、補正データを簡単に設定できるので、所望の再生時の光源の場合でも、撮影時の照明下の被写体と再現性の高い画像が再生できる。
【0111】
(第2の実施の形態)
図16及び図17は、本発明の第2の実施の形態における撮影制御の処理手順を示す一連のフローチャートである。本実施の形態は、撮影系や撮影感度の補正、あるいは被写体を照明する光源の分光放射率特性や、プリンタ系の分光反射特性などの補正処理だけでなく、赤外線フィルムや赤外線増感フィルム、紫外線フィルムなど、特殊フィルムで撮影する場合などのように、撮像分光感度特性を意図的に大きく変換する処理を行う場合の撮影制御を行うようにしたものである。
【0112】
制御回路2はプログラムメモリ23に格納されているプログラムに基づき、このフローチャートに示すような処理を実行する。先ず、ユーザによる操作入力部22での操作等に応じて、撮影モードを選択するとともに、撮影条件等を選択する(ステップS301)。次に、この選択された撮影モードが分光撮影モードであるか否かを判断し(ステップS302)、分光撮影モードでない場合にはその他のモード処理に移行する(ステップS303)。
【0113】
分光撮影モードであった場合には、ユーザによる操作入力部22での操作等に応じて、スルー映像の波長帯域、撮影波長帯域をそれぞれ選択する(ステップS304)。このステップS304において、スルー映像の波長帯域とは、表示部85に表示させるスルー画像の波長帯域であり、撮影波長帯域とは、撮影して記録する波長帯域である。この撮影波長帯域は、特に限定的に設定しない場合には、前記分光フィルタ59により分光される全波長帯域であり、以下の説明においては、全波長帯域が撮影波長帯域として選択されているものとする。
【0114】
次に、ユーザによる操作入力部22での操作等に応じて、赤外線フィルム効果など変換したい分光感度特性を設定又は選択する(ステップS305)。つまり、前記データメモリ24には、赤外線フィルムの分光感度特性などの、各種フィルムの分光感度特性がフィルムの種類別に格納されている。そして、ユーザの操作に応じて、所望の効果を発生するフィルム種を選択又は設定する。
【0115】
このとき、表示部85にフィルムの種類名を表示し、この表示したフィルムの種類名から操作入力部22での操作により選択させるようにすることによって、簡単にフィルム種の選択を行うことができる。
【0116】
引き続き、分光スルー画像表示処理と分光特性データの取得処理を実行する(ステップS306)。このステップS306における分光画像表示処理においては、分光フィルタ59が動作することにより得られる波長帯域毎の分光画像データのうち、前記ステップS304で設定されたスルー映像の波長帯域の分光画像データを取得して、この取得した分光画像データに基づきスルー画像を表示部85に表示させる。また、このステップS306における分光特性データの取得処理においては、分光フィルタ59が動作することにより得られる波長帯域毎の分光画像データの特性を示す各分光特性データを取得して、バッファメモリ(A)70に保存する。
【0117】
次に、操作入力部22に設けられているレリーズ釦が半押しされた否かを判断する(ステップS307)。レリーズ釦が半押しされない場合には、その他のキー処理を実行して(ステップS308)、ステップS306に戻る。レリーズ釦が半押しされた場合には、AF処理、AE処理、AWB処理を実行する(ステップS309)。
【0118】
しかる後に、レリーズ釦が全押しされたか否かを判断する(ステップS310)。レリーズ釦が全押しされない場合には、レリーズ釦の半押しを継続しているか否かを判断する(ステップS311)。レリーズ釦の半押しが継続しておらず、半押しが解除された場合には、前記ステップS306に戻る。レリーズ釦の半押しが継続されている場合には、前述したステップS306と同様に分光スルー画像表示処理と分光特性データの取得処理を実行して(ステップS312)、ステップS310に戻り、ステップS310→S311→S312→S310のループを繰り返す。
【0119】
このループが繰り返されている状態において、レリーズ釦の全押しが検出されると、ステップS310からステップS313に進み、予め分光画像の高速連写合成が設定又は選択されているか否かを判断する。分光画像の高速連写合成が設定又は選択されていない場合には、その他の撮影処理に移行する(ステップS314)。
【0120】
また、分光画像の高速連写合成が設定又は選択されている場合には、撮像素子60とDS30P部67を高速連写&マルチプレーン加算モードに設定する(ステップS315)。次に、撮影条件に応じて、透過波長帯域の数(n)と各露出時間(t/n)を再設定する(ステップS316)。つまり、1枚の撮影画像をn個の透過波長帯域毎に、露出時間(t)内において、露出及び撮影処理を行うと、透過波長帯域毎の露出時間は「t/n」となるので、この露出時間(t/n)と透過波長帯域の数(n)とを設定する。
【0121】
次に、透過波長帯域の数(n)に分割された画像の波長帯域において、最初の波長帯域(λi=λ1)を選択する(ステップS317)。この最初の波長帯域(λi=λ1)は、波長が最も短い帯域側でもよいし、最も長い帯域側でもよい。
【0122】
そして、電子制御フィルタ(分光フィルタ59)に、所定の駆動信号を加えて、透過波長帯域を前記ステップS317で選択した波長帯域λ1に設定する(図17のステップS318)。引き続き、露光(シャッタ開)&撮影処理を実行し、シャッタ駆動部38を動作させてシャッタ62を開くとともに、イメージセンサ部63からの画像データをバッファメモリ(A)70に記憶する(ステップS319)。したがって、このステップS319での処理により、バッファメモリ(A)70には分光フィルタ59を透過した波長帯域λiからなる分光画像データが記憶されることとなる。
【0123】
次に、前記ステップS316で再設定された各露出時間(t/n)が経過したか否かを判断する(ステップS320)。各露出時間(t/n)が経過したならば、シャッタ駆動部38を動作させてシャッタ62を閉じて露光を終了する(ステップS321)。そして、前記ステップS319で撮影されてバッファメモリ(A)70に記憶された分光画像データを、該バッファメモリ(A)70から読み出す(ステップS322)。引き続き、この読み出した分光画像データを、波長帯域(λi)毎に、レンズ(撮影光学系58)、分光フィルタ32の透過率T(λi)に応じて補正するとともに、感度S(λi)などを補正する(ステップS323)。
【0124】
また、撮影時における照明光源の補正が選択又は設定されているか否かを判断する(ステップS324)。撮影時における照明光源の補正が選択又は設定されている場合には、データメモリ24に予め記憶されている、当該選択又は設定された照明光源の放射特性(λi)を取得する(ステップS325)。そして、分光画像信号を、波長帯域(λi)毎に、前記ステップS325で取得した撮影時の照明光源と再生時の照明光源の分光特性の比に応じて補正する(ステップS326)。
【0125】
なお、本実施の形態においては、分光画像信号を、波長帯域(λi)毎に、撮影時の照明光源と再生時の照明光源の分光特性の比に応じて補正するようにしたが、撮影時の照明光源の分光特性のみ、又は再生時の照明光源の分光特性のみにより、分光画像信号を、波長帯域(λi)毎に補正を行うようにしてもよい。
【0126】
また、赤外線フィルム効果など分光感度特性に変換が選択又は設定されているか否かを判断する(ステップS327)。赤外線フィルム効果など分光感度特性に変換が選択又は設定されている場合には、データメモリ24に予め記憶されている、当該選択又は設定された変換したい分光感度特性Sf2(λ)、又は変換特性Sf1(λ)→Sf2(λ)を設定する(ステップS328)。そして、分光画像信号を、波長帯域(λi)毎に、前記ステップS328で設定した分光感度特性Sf2(λ)に変換する(ステップS326)。
【0127】
次に、分光画像データで記録又は出力するが選択又は設定されているか否かを判断する(ステップS330)。分光画像データで記録又は出力するが選択又は設定されている場合には、波長帯域(λi)毎の分光画像V(x,y;λi)をバッファメモリ(B)81に記録する(ステップS331)。
【0128】
また、一般画像データで記録又は出力するが選択又は設定されているか否かを判断する(ステップS332)。一般画像データで記録又は出力するが選択又は設定されている場合には、各画素の輝度値V(x,y;λi)に等色関数を乗算して、R,G,Bデータに変換する(ステップS333)。さらに、撮影された各波長帯の分光画像の各画素のR,G,Bデータをマルチプレーン加算合成して、バッファメモリ(B)81に記憶する(ステップS334)。
【0129】
したがって、バッファメモリ(B)81には、分光画像データで記録又は出力するが選択又は設定されている場合には、t/n毎に波長帯域(λi)毎の分光画像V(x,y;λi)が記憶され、一般画像データで記録又は出力するが選択又は設定されている場合には、t/n毎に撮影された分光画像の各画素のR,G,Bデータをマルチプレーン加算合成した合成画像が更新されつつ記憶される。また、分光画像データで記録又は出力する及び一般画像データで記録又は出力するが選択又は設定されている場合には、両者が記憶されることとなる。
【0130】
次に、帯域数n枚の分光画像を撮影済みか否か、つまりi≧nとなったか否かを判断する(ステップS335)。i≧nとなっておらず、帯域数n枚の分光画像を撮影済みでない場合には、iをインクリメントして(i=i+1)、このiの値により示される次の波長帯域(λi)を選択し(ステップS336)、ステップS318からの処理を繰り返す。したがって、ステップS318〜S335の処理は、t/nのタイミングでn回繰り返され、n回繰り返されると、ステップS335の判断がYESとなって、ステップS335からステップS337に進む。
【0131】
したがって、ステップS318〜S335の処理がn回繰り返されることにより、バッファメモリ(B)81には、分光画像データで記録又は出力するが選択又は設定されている場合には、n枚の波長帯域毎の分光画像が記憶され、一般画像データで記録又は出力するが選択又は設定されている場合には、n個の各波長帯の分光画像の各画素のR,G,Bデータがマルチプレーン加算合成された単一の合成画像が記憶されることとなる。無論、分光画像データで記録又は出力すると一般画像データで記録又は出力するが共に選択されている場合には、バッファメモリ(B)81には、n枚の波長帯域毎の分光画像とn個の各波長帯の分光画像の各画素のR,G,Bデータがマルチプレーン加算合成された単一の合成画像が記憶されることとなる。
【0132】
次に、これらバッファメモリ(B)81記憶されている撮影画像データの圧縮及び符号化処理を実行する(ステップS337)。また、この圧縮及び符号化処理した撮影画像に当該撮影画像のカラープロファイルを付加する(ステップS338)。そして、当該撮影画像のカラープロファイルが付加された撮影画像データを画像メモリ媒体25に保存記録する(ステップS339)。
したがって、撮影終了後にUSB端子26にプリンタを接続し、プリンタモードを設定することにより、波長帯域毎の分光画像に各分光画像のカラープロファイルが付加されたデータ、あるいはマルチプレーン加算合成された単一の合成画像に当該合成画像のカラープロファイルが付加されたデータをプリンタに出力することが可能となる。
【0133】
しかる後に、前記画像メモリ媒体25に保存記録した撮影画像データに基づく画像を表示部85にプレビュー表示する(ステップS340)。
【0134】
図18は、本実施の形態における作用を示す図である。すなわち、本実施の形態においては、連写された分光画像データV(x,y;λ1)〜V(x,y;λ1n)は、「透過率」や「感度」からなる撮影系の分光特性データ(a)により撮影系の分光特性を補正され、「撮影時の照明光」や「再生時の照明光」からなる照明光の分光放射率特性(b)により照明光源の分光特性を補正され、赤外フィルムなど異なる分光感度特性(C)変換される。すなわち、波長帯域λ1〜λnにおいて、「変換前の感度特性」から「変換後の感度特性に変換される。しかる後、RGB表色系の等色関数(d)に基づき、各画素の3刺激値を算出してマルチプレーン加算され、必要に応じてトリミング/拡大やノイズ除去/鮮鋭化処理されてRGBデータを出力することできる。
【0135】
したがって、このRGBデータに基づき画像を表示したりプリンタで画像を印刷することにより、一般的なデジタルカメラによる撮影とは相違して、異なる分光感度特性のフィルムで撮影した場合と同様に特殊な撮影効果を楽しむことができる。無論、赤外フィルム以外にも、紫外感度拡張フィルムや、白黒や一般可視光カラーフィルムでも、メーカーや製品による特性の違いや現像処理におけるバラツキなどを可変したり、シミュレーションしたり、同様の効果を再現したりするのに利用することもできる。
【0136】
図19は、各種フィルムの分光撮影感度特性を示す図であり、縦軸が対数感度であり横軸が波長である。したがって、図示した分光撮影感度特性をデータメモリ24に記憶しておき、前述したステップS329の処理で、各帯域毎に当該フィルムの分光撮影感度特性となるように分光感度特性を変換することにより、恰も当該フィルムで撮影したかのような特性の画像を表示したり印刷再生したりすることができる。
【0137】
また、前記ステップS305において赤外フィルム効果など変換したい分光感度特性を設定/選択する際には、図示した各種フィルムの分光撮影感度特性を表示部85に表示して、操作入力部22での操作により、表示した各種フィルムの分光撮影感度特性からいずれを選択させるようにすることもできる。これにより、ユーザは各種フィルムの分光撮影感度特性を確認しながら、容易に所望の分光感度特性を設定/選択することができる。
【0138】
なお、前述した第1の実施の形態においては、デジタルカメラ1側においてステップS129で分光画像信号を、波長帯域(λi)毎に、前記ステップS128で取得した使用プリンタ、印刷インク、印刷用紙の分光特性に応じて補正するようにした。しかし、この処理をプリンタ側で行うようにしてもよい。
【0139】
つまり、デジタルカメラ1とこのデジタルカメラ1に接続されたプリンタとからなる印刷システムおいて、デジタルカメラ1側においては、帯域数n枚の分光画像を撮影してプリンタに出力し、プリンタ側において波長帯域(λi)毎に、前記ステップS128で取得した使用プリンタ、印刷インク、印刷用紙の分光特性に応じて補正する処理(ステップS129)を行う。これにより、上記印刷システムにおいても実際の撮影時の被写体の正確な色に近い画像を再現することができる。
【0140】
なお、前述した第1の実施の形態においては、デジタルカメラ1側においてステップS129で分光画像信号を、波長帯域(λi)毎に、前記ステップS128で取得した使用プリンタ、印刷インク、印刷用紙の分光特性に応じて補正するようにした。しかし、デジタルカメラ1とこのデジタルカメラ1にUSB端子26を介して接続されたプリンタとからなる印刷システムおいて、デジタルカメラ1側では、透過波長帯域数n枚の分光画像を撮影して分光画像データを記録する。
【0141】
しかる後に、この記録した分光画像データと当該分光画像データに関するカラープロファイル情報をUSB端子26を介してプリンタに出力し、プリンタはこれら透過波長帯域毎の分光画像データ及びカラープロファイル情報を受信して記録する。そして、これら受信して記録した透過波長帯域毎の分光画像データにおける少なくとも一つの分光画像データを、同様に受信して記録したカラープロファイル情報に基づき補正する。また、この補正された前記分光画像データを含む前記透過波長帯域毎の分光画像データを再生用画像データとして所定の用紙に印刷出力する。
【0142】
これにより、上記印刷システムにおいても実際の撮影時の被写体の正確な色に近い画像を印刷により再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の各実施の形態に共通するデジタルカメラの回路構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における撮影制御処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図2に続くフローチャートである。
【図4】第1の実施の形態における作用を示す図である。
【図5】同実施の形態に係るデジタルカメラの使用態様を示す図である。
【図6】同実施の形態に係るデジタルカメラの他の使用態様を示す図である。
【図7】同実施の形態に係るデジタルカメラの他の使用態様を示す図である。
【図8】同実施の形態に係るデジタルカメラの他の使用態様を示す図である。
【図9】同実施の形態における記録方法の例を示す図である。
【図10】同実施の形態における他の記録方法の例を示す図である。
【図11】同実施の形態における他の記録方法の例を示す図である。
【図12】圧縮データファイルの構造例を示す図である。
【図13】「太陽光+天空光」の混合と見なせる日向と日陰の分光分布の例を示す図である。
【図14】(a)は黒体輻射の分布放射率特性と色温度との関係を示す図、(b)は昼光(日中の太陽光)の分光放射率特性を示す図、(c)は白熱電球の分光放射率特性を示す図、(d)は白熱蛍光灯の分光放射率特性を示す図、(e)は3波長型蛍光灯(昼光色)の分光放射率特性を示す図である。
【図15】光源の分光特性の推定又は算出する処理手順を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第2の実施の形態における撮影制御処理手順を示すフローチャートである。
【図17】図16に続くフローチャートである。
【図18】本発明の第2の実施の形態における作用を示す図である。
【図19】各種フィルムの分光撮影感度特性を示す図である。
【符号の説明】
【0144】
1 デジタルカメラ
2 制御回路
3 CPU
22 操作入力部
23 プログラムメモリ
24 データメモリ
25 メモリカード媒体
25 画像メモリ媒体
32 分光フィルタ駆動部
33 温度検出回路
34 焦点レンズ駆動部
35 ズーム駆動部
36 ブレ補正駆動部
47 HDD記憶装置
48 ディスク媒体
49 モータ
58 撮像光学系
59 分光フィルタ
60 撮像素子
62 シャッタ
63 イメージセンサ部
64 水平走査部
65 垂直走査部
66 P/S20変換部
67 DSP部
68 S20/P変換部
69 前処理部
71 帯域別信号処理部
72 マルチプレーン加算回路
73 RGB変換部
75 カラーマトリクス回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される駆動信号に応じて、被写体光の透過波長帯域を変化させるフィルタ手段と、
このフィルタ手段に駆動信号を入力して、前記透過波長帯域を複数段に変化させる分光制御手段と、
前記フィルタ手段の後方に配置され、該フィルタ手段が透過波長帯域を変化させる毎に撮像する撮像手段と、
この撮像手段により撮像された透過波長帯域毎の分光画像データにおける少なくとも一つの分光画像データを、所定の補正要素における対応する波長帯域の補正データに基づき補正する補正手段と、
この補正手段により補正された前記分光画像データを含む前記透過波長帯域毎の分光画像データを再生用画像データとして外部に出力する出力手段と
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記所定の補正要素は、前記撮像手段の撮像時における照明光源、前記再生用画像データに基づき画像を再生する再生時における照明光源、前記再生用画像データに基づき画像を印刷再生する際に用いられる多色プリンタ、印刷インキ、印刷用紙、前記撮像手段の撮像時に使用を仮想されたフィルムのいずれか少なくとも一つの種類を含むものであることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記再生用画像データを記憶する記憶手段を更に備え、
前記出力手段は、前記記憶手段に記憶されている再生用画像データを出力することを特徴とする請求項1又は2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記透過波長帯域毎の分光画像データを合成する合成手段と、
前記合成手段により得られた合成画像データと前記透過波長帯域毎の分光画像データとを対応付けて記憶する記憶手段とを備え、
前記出力手段は、前記記憶手段に記憶されている合成画像データと前記透過波長帯域毎の分光画像データのうちいずれか一方の画像データを再生用画像データとして出力することを特徴とする請求項1又は2記載の撮像装置。
【請求項5】
前記所定の補正要素が前記多色プリンタである場合において、
当該プリンタが前記分光画像データに基づく印刷が可能であるか否かを判断する判断手段を備え、
前記出力手段は、前記判断手段の判断結果に基づき、前記分光画像データに基づく印刷が可能である場合には、前記透過波長帯域毎の分光画像データを再生用画像データとして出力し、不可能である場合には、前記合成画像データを再生用画像データとして出力することを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項6】
前記所定の補正要素が前記多色プリンタである場合において、
前記出力手段は、前記再生用画像データを当該プリンタが直接的に印刷に用いることが可能なデータに変換して出力することを特徴とする請求項2記載の撮像装置。
【請求項7】
前記所定の補正要素が前記多色プリンタである場合において、
前記補正手段は、
前記多色プリンタから出力された当該多色プリンタに係る分光特性補正データを受信する受信手段を備え、
この受信手段により受信された前記分光特性補正データを前記補正データとすることを特徴とする請求項2記載の撮像装置。
【請求項8】
前記所定の補正要素が前記撮像手段の撮像時における照明光源である場合において、
前記補正手段は、
標準光源の分光放射輝度データと前記撮像手段の撮像時における照明光源の分光放射輝度データとを取得する取得手段を備え、
この取得手段により取得された前記標準光源の分光放射輝度データと前記照明光源の分光放射輝度データとに基づき、前記撮像手段により撮像された透過波長帯域毎の分光画像データを前記標準光源で撮像したと仮定した分光画像データに変換することを特徴とする請求項2記載の撮像装置。
【請求項9】
前記所定の補正要素が前記撮像手段の撮像時における照明光源である場合において、
前記補正手段は、
前記撮像手段により撮像された分光反射率特性が既知の被写体に基づき、撮像時における照明光の分光放射率特性を取得する取得手段を備え、
この取得手段により取得された前記撮像時における照明光の分光放射率特性を前記補正データとすることを特徴とする請求項2記載の撮像装置。
【請求項10】
前記所定の補正要素が前記撮像手段の撮像時における照明光源である場合において、
前記補正手段は、
前記撮像手段により撮像された同一被写体が日向にある場合の前記透過波長帯域毎の分光画像データにおける少なくとも一つの分光画像データと、日陰にある場合の前記透過波長帯域毎の分光画像データにおける少なくとも一つの分光画像データとに基づき、撮影時における照明光源を推定して、前記補正データを設定する手段を備えることを特徴とする請求項2記載の撮像装置。
【請求項11】
前記所定の補正要素が前記撮像手段の撮像時に使用を仮想されたフィルムの種類である場合において、
前記補正手段は、前記フィルムの分光感度特性を前記補正データとすることを特徴とする請求項2記載の撮像装置。
【請求項12】
前記使用を仮想されたフィルムは、赤外フィルム、紫外フィルム、白黒フィルム、一般可視光カラーフィルムのいずれかであることを特徴とする請求項11記載の撮像装置。
【請求項13】
複数のフィルムの種類名を表示する表示手段と、
この表示手段に表示されたフィルムの種類名からいずれかを選択する選択手段とを備え、
前記補正手段は、前記選択手段により選択されたフィルムの種類名に対応する分光感度特性を前記補正データとすることを特徴とする請求項11又は12記載の撮像装置。
【請求項14】
複数のフィルムの特性を表示する表示手段と、
この表示手段に表示されたフィルムの特性からいずれかを選択する選択手段とを備え、
前記補正手段は、前記選択手段により選択されたフィルムの特性に対応する分光感度特性を前記補正データとすることを特徴とする請求項11又は12記載の撮像装置。
【請求項15】
撮像装置と多色プリンタとからなる印刷システムであって、
前記撮像装置は、
入力される駆動信号に応じて、被写体光の透過波長帯域を変化させるフィルタ手段と、
このフィルタ手段に駆動信号を入力して、前記透過波長帯域を複数段に変化させる分光制御手段と、
前記フィルタ手段の後方に配置され、該フィルタ手段が透過波長帯域を変化させる毎に撮像する撮像手段と、
この撮像手段により撮像された透過波長帯域毎の分光画像データと当該分光画像データに関するカラープロファイル情報を前記プリンタに出力する出力手段とを備え、
前記プリンタは、
前記出力手段により出力された前記透過波長帯域毎の分光画像データ及びカラープロファイル情報を受信する受信手段と、
この受信手段により受信された透過波長帯域毎の分光画像データにおける少なくとも一つの分光画像データを、受信されたカラープロファイル情報に基づき補正する補正手段と、
この補正手段により補正された前記分光画像データを含む前記透過波長帯域毎の分光画像データを再生用画像データとして印刷出力する出力手段とを備えたことを特徴とする印刷システム。
【請求項16】
入力される駆動信号に応じて、被写体光の透過波長帯域を変化させるフィルタ手段と、このフィルタ手段に駆動信号を入力して、前記透過波長帯域を複数段に変化させる分光制御手段と、前記フィルタ手段の後方に配置され、該フィルタ手段が透過波長帯域を変化させる毎に撮像する撮像手段とを備える撮像装置が有するコンピュータを、
前記撮像手段により撮像された透過波長帯域毎の分光画像データにおける少なくとも一つの分光画像データを、所定の補正要素における対応する波長帯域の補正データに基づき補正する補正手段と、
この補正手段により前記分光画像データを補正された前記透過波長帯域毎の分光画像データを再生用画像データとして外部に出力する出力手段と
して機能させることを特徴とする撮像装置制御プログラム。
【請求項17】
入力される駆動信号に応じて、被写体光の透過波長帯域を変化させるフィルタ手段と、
このフィルタ手段に駆動信号を入力して、前記透過波長帯域を複数段に変化させる分光制御手段と、前記フィルタ手段の後方に配置され、該フィルタ手段が透過波長帯域を変化させる毎に撮像する撮像手段とを備える撮像装置の制御方法であって、
この撮像手段により撮像された透過波長帯域毎の分光画像データにおける少なくとも一つの分光画像データを、所定の補正要素における対応する波長帯域の補正データに基づき補正する補正ステップと、
この補正ステップにより前記分光画像データを補正された前記透過波長帯域毎の分光画像データを再生用画像データとして外部に出力する出力ステップと
を含むことを特徴とする撮像装置制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−141842(P2009−141842A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318220(P2007−318220)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】