説明

撮像装置、画像生成システム、サーバおよび電子機器

【課題】視点分離素子を用いて取得した撮像データにおいてその実質的な性質を損なうことなく、効率的なデータ転送を実現することが可能な撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、撮像レンズと、撮像レンズの通過光線を互いに異なる複数の視点からの光線に分離する視点分離素子と、複数の画素を含むと共に、各画素において視点分離素子の通過光線を受光し、その受光量に基づく撮像データを得る撮像素子と、撮像データに対し可逆的圧縮を施すデータ圧縮部とを備える。撮像レンズの通過光線が、視点分離素子によって複数の視点からの光線に分離され、撮像素子の各画素において受光されることにより、その受光量に基づく撮像データが得られる。撮像データに対して可逆的圧縮を施すことにより、視点分離素子を用いて取得した上記撮像データにおいて、その実質的な性質を損なうことなく、データ量を削減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多視点撮像データを取得する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な撮像装置が提案され、開発されている。また、撮像データに対し、所定の画像処理を施して出力するようにした撮像装置も提案されている。例えば、特許文献1および非特許文献1には、「Light Field Photography」と呼ばれる手法を用いた撮像装置が提案されている。この撮像装置は、撮像レンズとイメージセンサとの間に、レンズアレイを配置したものである。被写体からの入射光線は、レンズアレイにおいて各視点の光線に分離された後、イメージセンサで受光される。イメージセンサから得られる画素データを用いて、同時刻に多視点の画像を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−021683号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ren.Ng、他7名,「Light Field Photography with a Hand-Held Plenoptic Camera」,Stanford Tech Report CTSR 2005-02
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような撮像装置では、レンズアレイの1つのレンズを通過した光線は、イメージセンサ上のm×n(m,nは1以上の整数、但しm=n=1を除く)の画素において受光される。各レンズに対応する画素数(m×n個)分の視点画像を得ることができる。
【0006】
上記特許文献1および非特許文献1では、このような視点画像の生成処理(画像演算処理)を撮像装置内で行っている。例えばこれらの画像処理が外部の電子機器において行われる場合、イメージセンサから出力された撮像データ(RAW画像データ)を電子機器へ転送する、あるいは、外部メモリーに記憶させる必要がある。従って、そのような撮像データのデータ量を削減し、効率的なデータ転送を実現することが望まれている。
【0007】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、多視点撮像データの性質を損なうことなく、効率的なデータ転送を実現することが可能な撮像装置を提供することにある。また、本開示の他の目的は、そのような撮像データを転送して、撮像装置外部の画像処理部において多視点画像を生成することが可能な画像生成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の撮像装置は、撮像レンズと、撮像レンズの通過光線を、互いに異なる複数の視点からの光線に分離する視点分離素子と、複数の画素を含むと共に、各画素において視点分離素子の通過光線を受光し、その受光量に基づく多視点の撮像データを出力する撮像素子と、撮像データに対し可逆的圧縮を施すデータ圧縮部とを備えたものである。
【0009】
本開示の撮像装置では、撮像レンズの通過光線は、視点分離素子によって複数の視点からの光線に分離され、撮像素子の各画素において受光されることにより、その受光量に基づく多視点の撮像データが得られる。この撮像データに対してデータ圧縮部が可逆的圧縮を施すことにより、視点分離素子を用いて取得した撮像データにおいて、その性質が損なわれることなく、データ量が削減する。
【0010】
本開示の画像生成システムは、上記本開示の撮像装置と、撮像装置からの出力データを通信回線を介して取得し、取得した出力データに基づいて画像処理を行う画像処理部とを備えたものである。
【0011】
本開示の画像生成システムでは、上記本開示の撮像装置から、出力データ(可逆的圧縮された撮像データ)が、通信回線を介して画像処理部側へ転送された後、圧縮前と実質的に同一の撮像データに展開(解凍)される。画像処理部では、この展開後の撮像データに対し所定の画像処理を施す。
【0012】
本開示のサーバは、可逆的圧縮が施された多視点撮像データを受信し、受信した多視点撮像データを展開し、展開された多視点撮像データに基づいて画像処理を行うものである。
【0013】
本開示の電子機器は、可逆的圧縮が施された多視点撮像データを受信し、受信した多視点撮像データを展開し、展開された多視点撮像データに基づいて画像処理を行うものである。
【発明の効果】
【0014】
本開示の撮像装置によれば、撮像レンズの通過光線を、視点分離素子によって複数の視点からの光線に分離し、撮像素子の各画素において受光することにより、その受光量に基づく多視点の撮像データを得ることができる。この撮像データに対して可逆的圧縮を施すことにより、多視点の撮像データのデータ量を、その性質を損なうことなく削減することができる。これにより、転送時間を短縮化したり、データ蓄積に必要な記憶容量を削減することができる。よって、多視点撮像データの性質を損なうことなく、効率的なデータ転送を実現することが可能となる。
【0015】
本開示の画像生成システムによれば、上記本開示の撮像装置を備えることにより、可逆的圧縮が施された撮像データを、通信回線を介して画像処理部側へ転送した後、圧縮前と実質的に同一の撮像データに展開することができる。画像処理部では、その展開後の撮像データを用いて様々な画像処理を行うことができる。よって、視点分離素子を用いて取得した撮像データを転送して、撮像装置外部の画像処理部において多視点画像を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本開示の一の実施の形態に係る撮像装置の全体構成を表す図である。
【図2】イメージセンサとレンズアレイとの配置関係について表す模式図である。
【図3】各画素へのカラーフィルタ割り当て(色配列)について表す模式図である。
【図4】図1に示したデータ圧縮部と画像処理部との関係を表す機能ブロック図である。
【図5】視点分離について説明するための模式図である。
【図6】イメージセンサにより取得される撮像データ(RAW画像データ)を表す模式図である。
【図7】(A)〜(I)は、図6に示した撮像データに基づいて生成される各視点画像を説明するための模式図である。
【図8】(A)〜(I)は、視点画像の一例を表す模式図である。
【図9】データ処理部における圧縮処理動作を表すフローチャートである。
【図10】イメージセンサにより取得される撮像データ(RAW画像データ)における色配列について表す模式図である。
【図11】(A)〜(I)は、各視点画像の画素データ群における色配列を表す模式図である。
【図12】色配列の単位領域のパターンについて表す模式図である。
【図13】(A)〜(I)は、各視点画像データにおける色配列に基づく並べ替え処理動作を説明するための模式図である。
【図14】視点画像データ間の圧縮処理について説明するための模式図である。
【図15】視点画像データ間の圧縮処理について説明するための模式図である。
【図16】視点画像データ間の圧縮処理について説明するための模式図である。
【図17】視点画像データ間の圧縮処理について説明するための模式図である。
【図18】(A),(B)は、ブロック領域間の圧縮処理について説明するための模式図である。
【図19】基準ブロック領域間の圧縮処理について説明するための模式図である。
【図20】(A),(B)は、基準ブロック領域間の圧縮処理について説明するための模式図である。
【図21】行基準ブロック領域間の圧縮処理について説明するための模式図である。
【図22】(A),(B)は、行基準ブロック領域間の圧縮処理について説明するための模式図である。
【図23】適用例に係る画像生成システムの概略構成を表す模式図である。
【図24】適用例に係る他の画像生成システムの概略構成を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。尚、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(レンズアレイを用いて撮影した撮像データに対し可逆的圧縮を施す撮像装置の例)
2.適用例(画像生成システムの例)
【0018】
<実施の形態>
[全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る撮像装置(撮像装置1)の全体構成を表すものである。撮像装置1は、いわゆる単眼方式のライトフィールドカメラであり、例えば被写体2を撮像して、複数の視点成分を含む多視点撮像データ(RAW画像データ)を出力するものである。この撮像装置1は、撮像レンズ11、レンズアレイ12、イメージセンサ13、データ圧縮部14、イメージセンサ駆動部15および制御部16を備える。尚、以下では、光軸Z1に沿った方向をZとし、光軸Z1に直交する面内において、水平方向(横方向)をX、垂直方向(縦方向)をYとする。
【0019】
撮像レンズ11は、被写体2を撮像するためのメインレンズであり、例えば、ビデオカメラやスチルカメラ等で使用される一般的な撮像レンズにより構成されている。この撮像レンズ11の光入射側(または光出射側)には、開口絞り10が配設されている。
【0020】
レンズアレイ12は、撮像レンズ11の結像面(焦点面)に配置されることにより、入射光線を、互いに異なる視点からの光線として、画素単位で分離するための視点分離素子である。レンズアレイ12では、複数のマイクロレンズ12aがX方向(行方向)およびY方向(列方向)に沿って2次元配置されている。このようなレンズアレイ12では、各マイクロレンズ12aに割り当てられた画素数((イメージセンサ13の全画素数)/(レンズアレイ12のレンズ数))分の視点分離が可能である。換言すると、1つのマイクロレンズ12aに割り当てられた画素(後述のマトリクス領域M)の範囲内で画素単位での視点分離が可能である。尚、「視点分離」とは、換言すると、撮像レンズ11の通過光線が撮像レンズ11のどの領域を通過してきたものであるかをその方向性を含めて、イメージセンサの画素単位で記録しておくことである。このレンズアレイ12の結像面には、イメージセンサ13が配設されている。
【0021】
イメージセンサ13は、例えばマトリクス状に配列した複数の画素センサ(以下、単に画素とする)を有し、レンズアレイ12を通過した光線を受光して多視点撮像データ(撮像データD0)を取得するものである。撮像データD0は、いわゆるRAW画像信号であり、イメージセンサ13上の各画素が受光した光強度を示す電気信号(画素データ)の集合である。このイメージセンサ13は、複数の画素がマトリクス状に(X方向およびY方向に沿って)配置したものであり、例えばCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)またはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの固体撮像素子により構成されている。このイメージセンサ13の光入射側(レンズアレイ12の側)には、所定の色配列(後述)を有するカラーフィルタが設けられている。
【0022】
図2は、これらのレンズアレイ12(マイクロレンズ12a)とイメージセンサ13との配置例を表したものである。このように、1つのマイクロレンズ12aに対し、イメージセンサ13上の複数の画素(m×nの画素)が割り当てられ、1つのマイクロレンズ12aを通過した光線がm×nの画素において受光されるようになっている。この例では、1つのマイクロレンズ12aに対し、3×3の画素P(マトリクス領域M)が割り当てられており、これにより、各マイクロレンズ12aの通過光線は、マトリクス領域M内において画素P単位で視点分離されつつ受光される。
【0023】
図3は、イメージセンサ13上に設けられたカラーフィルタの色配列について模式的に表したものである。このように、イメージセンサ13上には、画素毎に例えばR(Red),G(Green),B(Blue)のいずれかのフィルタが設けられており、各画素では、R,G,Bのいずれかの色の画素データが得られるようになっている。この例では、R,G,Bを、R:G:B=1:2:1の割合で配列させた、いわゆるベイヤー配列を有するカラーフィルタを用いている。この場合、例えば2×2のR,G,Bの色配列を単位配列Uとして、R,G,Bのいずれかの色が各画素へ割り当てられる。
【0024】
データ圧縮部14は、イメージセンサ13から出力される撮像データD0に対し、可逆的圧縮を施す演算処理部である。このデータ圧縮部14は、RAW画像データである撮像データD0、即ち、画像処理(デモザイク処理、シェーディング処理、ノイズリダクション処理等)前の撮像データを構成する画素データ群に対し、所定のアルゴリズムを用いて圧縮処理を施す。具体的には、詳細は後述するが、撮像データD0を構成する画素データ群を、視点画像に対応するデータ配列(説明上「視点画像データ」と称する)に並べ替えを行い、各視点画像データ間で差分値をとり、画素データを差分値で置き換えていく。また、この視点画像データ間の差分値演算を続けていくと、基準となる視点画像データ(基準視点画像データ)が最後に1面だけ残るが、これについては、更にその基準視点画像データ内で、差分値演算を行い、最終的に数画素分の画素データのみを残して、他の画素データについては全て差分値に置き換えることができる。
【0025】
このような圧縮処理は、可逆性を有し、展開(解凍)時には、最終的に差分値演算の基準値として残った数画素分の画素データに基づいて、上記処理を逆の順序で行う(差分値を順次加算していく)ことにより、圧縮前の撮像データ(撮像データD0)と同一の撮像データ(D2)を復元することができる。図4に示したように、本実施の形態では、撮像装置1内に画像処理部を有さず(画像処理を行わず)、撮像装置1の外部に設けられた画像処理部112において画像処理が行われる。例えば、詳細は後述するが、撮像装置1からの出力データDoutは、有線または無線の通信回線や外部メモリー110等を介して、圧縮解凍部111および画像処理部112を備えた他の電子機器やサーバ等に転送される。データ転送後、圧縮解凍部111においてデータが展開されることにより、RAW画像データである撮像データD2が画像処理部112へ出力され、画像処理部112において所定の画像処理が施される。これにより、例えば多視点の画像が、処理画像データD3として得られる。尚、「可逆的圧縮」では、圧縮前後のデータが完全同一となる、いわゆる完全可逆圧縮(完全ロスレス圧縮)はもちろん、圧縮前後のデータが完全一致ではない場合も含むものである。即ち、本開示の「可逆的圧縮」は、圧縮前後の撮像データが上記のように「実質的同一」となる圧縮を示し、生成した多視点画像において、人間の眼で目視できない程度の軽微なデータの損失や相違が生じ得る圧縮をも含んでいる。
【0026】
尚、データ圧縮部14では、上記のような圧縮後の撮像データを符号化することにより、出力データDoutを生成する。符号化手法としては、特に限定されないが、例えば2進符号化あるいはハフマン符号化等が挙げられる。
【0027】
イメージセンサ駆動部15は、イメージセンサ13を駆動してその露光や読み出しの制御を行うものである。
【0028】
制御部16は、データ圧縮部14およびイメージセンサ駆動部15の各動作を制御するものであり、例えばマイクロコンピュータなどにより構成されている。
【0029】
[作用、効果]
(撮像データの取得)
撮像装置1では、撮像レンズ11の結像面にレンズアレイ12が設けられ、このレンズアレイ12の結像面にイメージセンサ13が設けられることにより、イメージセンサ13の各画素には、被写体2からの光線が、その強度分布に加え進行方向(視点)についての情報が保持された光線ベクトルとして記録される。即ち、レンズアレイ12を通過した光線は、視点毎に分離され、イメージセンサ13の異なる画素において受光される。
【0030】
例えば、図5に示したように、撮像レンズ11を通過してマイクロレンズ12aへ入射した光線のうち、互いに異なる視点における光線(光束)L1,L2,L3は、それぞれ互いに異なる3つの画素において受光される。このように、マイクロレンズ12aに割り当てられたマトリクス領域Mでは、互いに異なる視点の光線が、画素毎に受光される。イメージセンサ13では、イメージセンサ駆動部15による駆動動作に応じて、例えばライン順次に読み出しが行われ、撮像データD0が取得される。
【0031】
図6は、イメージセンサ13から得られた撮像データD0(RAW画像信号)を模式的に表したものである。本実施の形態のように、1つのマイクロレンズ12aに3×3のマトリクス領域Mが割り当てられている場合、イメージセンサ13では、上述のようにマトリクス領域M毎に、計9つの視点の光線がそれぞれ互いに異なる画素(画素センサ)において受光される。このため、撮像データD0は、イメージセンサ13の画素配列に対応した画素データ群よりなり、マトリクス領域Mに対応した、3×3の配列の画素データ(図4中のMa)が2次元配置されたものである。尚、図6の撮像データD0では、説明上、マトリクス領域Ma内の各画素データに「1」〜「9」の数字を付している。
【0032】
(撮像データと用いた画像処理)
本実施の形態では、図4に示したように、撮像装置1の外部に設けられた画像処理部112が、上記のような撮像データD0に基づいて、複数(ここでは9つ)の視点画像を生成する。具体的には、各マトリクス領域Ma間で互いに同一位置にある画素データ(図6において同一の数字が付された画素データ)を抽出して合成する(各画素データを並べ替える)ことにより、9つの視点画像を生成することができる(図7(A)〜(I))。尚、画像処理部112は、上記視点画像に対し、他の画像処理、例えばデモザイク処理等のカラー補間処理、ホワイトバランス調整処理、ガンマ補正処理、ノイズリダクション処理等を必要に応じて施す。
【0033】
ここで、図8(A)〜(I)に、図7(A)〜(I)のデータ配列に対応する視点画像の一例(視点画像R1〜R9)を示す。被写体2の画像としては、奥行き方向において互いに異なる位置に配置された3つの被写体「人」,「山」,「花」の画像Ra,Rb,Rcを示している。視点画像R1〜R9は、上記3つの被写体のうち「人」に撮像レンズ11の焦点が合うようにして撮影されたものであり、「人」よりも奥にある「山」の画像Rbと、「人」よりも手前にある「花」の画像Rcとについてはデフォーカスした画像となっている。単眼方式の撮像装置1では、フォーカスした「人」の画像Raは、視点が変わってもシフトしないが、デフォーカスした画像Rb,Rcは、視点毎に互いに異なる位置にシフトする。尚、図8(A)〜(I)では、各視点画像間の位置シフト(画像Rb,Rcの位置シフト)を誇張して示している。
【0034】
これらの9つの視点画像R1〜R9は、互いに視差を有する多視点画像として様々な用途に利用可能であるが、これらの視点画像R1〜R9のうち、例えば左視点および右視点に対応する2つの視点画像を利用して、立体映像表示を行うことができる。例えば、図8(D)に示した視点画像R4を左視点画像、図8(F)に示した視点画像R6を右視点画像として用いることができる。このような左右2枚の視点画像を、所定の立体表示システムを用いて表示することにより、「山」は「人」よりも奥まって、「花」は「人」よりも手前に飛び出して、それぞれ観察される。
【0035】
(データ圧縮処理動作)
本実施の形態では、上述のように、上記画像処理が撮像装置1の外部の画像処理部112において行われる。即ち、イメージセンサ13から出力された撮像データD0は、通信回線を介して画像処理部112側へ転送される。撮像装置1では、データ圧縮部14が、撮像データD0を可逆的圧縮し、これを符号化することにより転送用の出力データDoutを生成する。以下、このデータ圧縮部14の詳細な圧縮処理動作(出力データDout生成動作)について説明する。図9には、本実施の形態のデータ圧縮処理の処理フローについて示す。
【0036】
(第1の圧縮処理(視点画像データ間の差分処理))
ここで、上記のような撮像データD0において、各画素データは、イメージセンサ13上に設けられたカラーフィルタ(図示せず)の色配列に対応したカラーの信号として記録される。図10に、撮像データD0における各画素データの色配列について模式的に示す。このように、撮像データD0として、カラーフィルタの色配列(ここでは、ベイヤー配列)に応じて、R,G,Bのいずれかの色の画素データを含む画素データ群が得られる。例えば、撮像データD0として、2×2の単位配列Uで配列したR,G,Bのいずれかの色のデータが画素毎に得られる。
【0037】
データ圧縮部14は、まず、上記色配列を有する撮像データD0に基づいて(RAW画像データの形式のまま)、上述したような各視点画像に対応する視点画像データを生成する(各視点画像のデータ配列となるように、撮像データD0の並べ替えを行う)(図9のステップS1)。これにより、例えば図11(A)〜(I)に示したような9つの視点画像データR1〜R9を生成する。尚、各視点画像データでは、図10に示した単位配列Uを有する撮像データD0から各視点画像データを生成した場合の各画素データの色配列を示している。
【0038】
このように、撮像データD0に基づいて視点画像データR1〜R9を生成すると、各視点画像データにおける色の単位配列は、図12(A)〜(D)に別途示したように、計4種類の単位配列U1〜U4のいずれかに基づくものとなる。具体的には、図11(A)に示したように、視点画像データR1は、撮像データD0のうち、各マトリクス領域Maの画素データ「1」(左上の画素データ)同士から成り、色配列は単位領域U1(単位領域Uと同じ)に基づくものとなる。同様に、図11(B)に示した視点画像データR2では、画素データ「2」(中央上の画素データ)同士から成り、色配列は単位領域U2に基づく。同様に、図11(C)に示した視点画像データR3では、画素データ「3」(右上の画素データ)同士から成り、色配列は単位領域U1に基づく。同様に、図11(D)に示した視点画像データR4では、画素データ「4」(左中央の画素データ)同士から成り、色配列は単位領域U3に基づく。同様に、図11(E)に示した視点画像データR5では、画素データ「5」(中央の画素データ)同士から成り、色配列は単位領域U4に基づく。同様に、図11(F)に示した視点画像データR6では、画素データ「6」(右中央の画素データ)同士から成り、色配列は単位領域U3に基づく。同様に、図11(G)に示した視点画像データR7では、画素データ「7」(左下の画素データ)同士から成り、色配列は単位領域U1に基づく。同様に、図11(H)に示した視点画像データR8では、画素データ「8」(右上の画素データ)同士から成り、色配列は単位領域U2に基づく。同様に、図11(I)に示した視点画像データR9では、画素データ「9」(右下の画素データ)同士から成り、色配列は単位領域U1に基づく。
【0039】
データ圧縮部14は、続いて、上記視点画像データR1〜R9において、各色配列が同一(単位配列が同一)となるように、画素データの並べ替えを行う(図9のステップS2)。具体的には、視点画像データR1〜R9のうちの1つの視点画像データを基準視点画像データとして、この基準視点画像データと同一の単位配列に基づく色配列となるように、各画素データを並べ替える。例えば、ここでは、図13(A)〜(I)に示したように、視点画像データR1を基準視点画像データとして、その他の視点画像データR2〜R9の色配列が、視点画像データR1と同じ単位配列(U1)に基づくものとなるように、画素データを並べ替える。この並べ替えは、例えば、単位配列U2〜U4に対応する2×2の画素領域毎に、これら4画素間で画素データの配置を入れ替えることにより行う。尚、図11(C),(G),(I)に示した視点画像データR3,R7,R9では、もともとも単位配列U1に基づく色配列を有しているため、並べ替えの必要はない。これにより、全ての視点画像データR1〜R9の色配列が単位配列U1に基づくものとなる。
【0040】
この後、データ処理部14は、互いに同一の色配列を有する視点画像データR1〜R9間で差分値を算出し、この差分値を画素データと置き換える演算処理を行う(図9のステップS3)。図14〜図17に、この差分演算処理について模式的に示す。図14に示したように、各視点画像データR1〜R9の色配列が同一となっている状態で、視点画像データR9から基準視点画像データである視点画像データR1に向かって順次処理を行う。尚、ここでは、視点画像データR1〜R9において、各画素データはXY平面内に配置され、各視点画像データR1〜R9が、このXY平面に直交するZ軸方向に沿って配列するものと仮定して説明する。
【0041】
具体的には、データ処理部14は、第N面の視点画像データRNと第(N−1)面の視点画像データR(N-1)との間で、画素データ同士の差分値(第1の差分値)を算出し、算出した差分値を第N面の視点画像データRNにおける各画素データと置き換えていく。例えば、図15に示したように、まず、視点画像データR9,R8間で、互いに同一座標にある画素データ同士の差分値を算出し、この差分値を視点画像データR9における画素データと置き換える。詳細には、例えば視点画像データR9の座標(x,y)=(1,1)に配置された画素データ(Gの画素データ)と、視点画像データR8における同座標に配置された画素データ(Gの画素データ)との差分値a(11)を、上記視点画像データR9の座標(1,1)の画素データと置き換える。このようにして、視点画像データR9の全ての画素データについて差分値a(12),a(13),…を算出し、画素データとの置き換えを行う。同様に、図16に示したように、視点画像データR8についても、視点画像データR7(図16には図示せず)との間で互いに同一座標にある画素データ同士の差分値b(11),b(12),b(13),…を算出し、算出した差分値をその画素データと置き換えていく。
【0042】
このような差分値算出および置き換えの処理を、視点画像データR9から視点画像データR2まで順次行う。これにより、図17に示したように、基準視点画像データとしての視点画像データR1以外の(N−1)個の視点画像データ(ここでは、8つの視点画像データR2〜R9)における各画素データを差分値に置き換える、即ちデータ圧縮することができる。
【0043】
尚、上記説明では、視点画像データR9から順次1つ前の視点画像データとの間で差分値を算出するようにしたが、差分値のとりかたはこれに限定されず、例えば、基準視点画像データ(視点画像データR1)と、その他の視点画像データR2〜R9とのそれぞれの間で差分値を順次算出し、画素データと置き換えるようにしてもよい。
【0044】
(第2の圧縮処理(ブロック領域間の差分処理))
続いて、データ処理部14は、上記のような視点画像データR2〜R9の圧縮処理後、基準視点画像データとして残った視点画像データR1に対し、以下に説明するような圧縮処理(第2の圧縮処理)を施す。即ち、視点画像データR1を構成する画素データ群において、2以上の画素データからなるブロック領域間で、互いに同一位置にある画素データ同士の差分値(第2の差分値)を算出し、この差分値を各画素データと置き換える(図9のステップS4)。図18(A),(B)に、この差分演算処理について模式的に示す。
【0045】
具体的には、視点画像データR1の画素データ群を、それぞれがp×q(p,qは2以上の整数)の画素データからなるブロック領域に分割し、全ブロック領域のうちの選択的な複数のブロック領域を基準ブロック領域として、基準ブロック領域と他のブロック領域、例えば基準ブロック領域に隣接するブロック領域との間において、差分値を算出する。ここでは、図18(A)に示したように、p=q=2として、画素データ群を2×2のブロック領域に分割し、これらの全ブロック領域のうち行方向および列方向に沿って1つおきに配置されたブロック領域を基準ブロック領域(U11,U12,…,U21,U22,…)とする。これらの基準ブロック領域U11等と、これに隣接するブロック領域との間で、互いに同一位置に配置された画素データ同士の差分値を算出する。
【0046】
詳細には、基準ブロック領域U11とこれに行方向において隣接するブロック領域U112とに着目した場合、画素データR13,R11の差分値r(13)を画素データR13と置き換える。同様に、画素データR14,R12の差分値r(14)を画素データR14と置き換え、画素データR23,R21の差分値r(23)を画素データR23と置き換え、画素データR24,R22の差分値r(24)を画素データR24と置き換える。このような処理を全ての基準ブロック領域U11等以外の全ブロック領域について順次行うことにより、図18(B)に示したように、基準ブロック領域U11等以外のブロック領域における画素データを差分値r(13),r(14),r(17),r(18),…に置き換えることができる。
【0047】
(第3の圧縮処理(基準ブロック領域間の差分処理))
図19は、上記のような視点画像データR1内におけるブロック差分処理後、残った基準ブロック領域U11等を模式的に表したものである。データ処理部14は、このような基準ブロック領域U11等に対し、以下に説明するような圧縮処理(第3の圧縮処理)を施す。即ち、行方向(X方向)に沿って配列した基準ブロック領域間において、互いに同一位置にある画素データ同士の差分値(第3の差分値)を算出し、この差分値を各画素データと置き換える(図9のステップS5)。図20(A),(B)に、この差分演算処理について模式的に示す。尚、図19および図20では、視点画像データR1内において、既に圧縮済みの(差分値に置き換わっている)画素データの図示を省略している。
【0048】
具体的には、図19に示したように、行方向に沿って左端から順に第n番目(nは2以上の整数)まで配列した複数の基準ブロック領域において、第n番目の基準ブロック領域と第(n−1)番目の基準ブロック領域との間で差分値を算出し、算出した第3の差分値を第n番目の基準ブロック領域における各画素データと置き換える。この処理を行毎に行う。
【0049】
詳細には、まず、基準ブロック領域U1n,U1(n-1)間で、互いに同一位置にある画素データ同士の差分値を算出し、この差分値を基準ブロック領域U1nにおける画素データと置き換える。詳細には、例えば基準ブロック領域U1nの左上に配置された画素データR1cと、基準ブロック領域U1(n-1)における同位置に配置された画素データR1aとの差分値r(1c)を、上記基準ブロック領域U1nの画素データR1cと置き換える。このようにして、図20(A)に示したように、基準ブロック領域U1n内の全ての画素データについて差分値r(1c),r(1d),r(2c),r(2d)を算出し、各画素データとの置き換えを行う。この処理を、基準ブロック領域U1nから基準ブロック領域U12まで順次行い、かつこれらの処理を他の行についても同様に行う。これにより、図20(B)に示したように、左端に配置された基準ブロック領域U11,U21,…以外の基準ブロック領域における各画素データを差分値に置き換えることができる。
【0050】
(第4の圧縮処理(行基準ブロック領域間の差分処理))
図21は、上記のような基準ブロック領域間の差分処理後、残った左端の基準ブロック領域(以下、説明上「行基準ブロック領域」という)U11,U21,…を模式的に表したものである。データ処理部14は、このような行基準ブロック領域U11等に対し、以下に説明するような圧縮処理(第4の圧縮処理)を施す。即ち、列方向(Y方向)に沿って配列した行基準ブロック領域間において、互いに同一位置にある画素データ同士の差分値(第4の差分値)を算出し、この差分値を各画素データと置き換える(図9のステップS6)。図22(A),(B)に、この差分演算処理について模式的に示す。尚、図21および図22では、視点画像データR1内において、既に圧縮済みの(差分値に置き換わっている)画素データの図示を省略している。
【0051】
具体的には、図21に示したように、列方向に沿って上端から順に第m番目(mは2以上の整数)まで配列した複数の行基準ブロック領域U11,U21,…,U(m-1)1,Um1において、第m番目の行基準ブロック領域と第(m−1)番目の行基準ブロック領域との間で差分値を算出し、算出した差分値を第m番目の行基準ブロック領域における各画素データと置き換える。
【0052】
詳細には、まず、行基準ブロック領域U(m-1)1,Um1間で、互いに同一位置にある画素データ同士の差分値を算出し、この差分値を基準ブロック領域Um1における画素データと置き換える。詳細には、例えば行基準ブロック領域Um1の左上に配置された画素データRc1と、行基準ブロック領域U(m-1)1における同位置に配置された画素データRa1との差分値r(c1)を、上記行基準ブロック領域Um1の画素データRc1と置き換える。このようにして、図22(A)に示したように、行基準ブロック領域Um1内の全ての画素データについて差分値r(c1),r(d1),r(c2),r(d2)を算出し、各画素データとの置き換えを行う。この処理を、行基準ブロック領域Um1から行基準ブロック領域U21まで順次行う。これにより、図22(B)に示したように、上端に配置された行基準ブロック領域U11以外の行基準ブロック領域における各画素データを差分値に置き換えることができる。
【0053】
データ圧縮部14は、上記のようにして、RAW画像データである撮像データD0、即ち、画像処理(デモザイク処理、シェーディング処理、ノイズリダクション処理等)前の画素データ群に対し圧縮処理(可逆的圧縮処理)を施す。この圧縮処理は、可逆性を有し、展開(解凍)時には、最終的に差分値演算の基準値として残った数画素分の画素データ(行基準ブロック領域U11)に基づいて、上記処理を逆の順序で行う(差分値を順次加算していく)ことにより、圧縮前の撮像データ(撮像データD0)と実質同一の撮像データ(D2)を復元することができる。図4に示したように、本実施の形態では、撮像装置1内に画像処理部を有さず(画像処理を行わず)、撮像装置1の外部に設けられた画像処理部112において画像処理が行われる。
【0054】
尚、データ圧縮部14では、上記のような圧縮後の撮像データ(数画素分の画素データと他の画素データに対応する差分値)を、符号化する(図9のステップS7)ことにより、出力データDoutを生成する。符号化手法(符号割り当て手法)としては、特に限定されないが、例えば2進符号化あるいはハフマン符号化等が挙げられる。符号化されたデータは、外部転送用の出力データDoutとして、データ圧縮部14から出力される。
【0055】
以上のように本実施の形態では、撮像レンズ11の通過光線を、レンズアレイ12によって複数の視点からの光線に分離しつつ、イメージセンサ13の各画素において受光し、受光量に基づく画素データを取得する。データ圧縮部14が、イメージセンサ13から出力された撮像データD0に対し可逆的圧縮(特に第1の圧縮処理)を施すことにより、レンズアレイ12を用いて取得した撮像データの性質を損なうことなく、そのデータ量を削減することができる。これにより、RAW画像データである撮像データを外部の画像処理部へ転送する場合に、その転送時間を短縮化したり、データ蓄積に必要な記憶容量を削減することができる。よって、多視点撮像データの性質を損なうことなく、効率的なデータ転送を実現することが可能となる。
【0056】
尚、上記実施の形態では、第1の圧縮処理において、各視点画像データを、色配列に応じた並べ替え処理の後、差分値を算出するようにしたが、必ずしも並べ替えを行わなくともよい。即ち、撮像データに基づいて視点画像データを生成した後、色配列が互いに異なる状態で差分処理を行ってもよい。但し、色によって画素値に差が生じ易いので、まずは差分処理の前に画素データを並べ替えて色配列を揃えた方が、得られる差分値をより小さくすることができ、データ量を削減し易いため望ましい。また、イメージセンサ上にカラーフィルタを設けない場合(モノクロ撮影の場合)にも上記色配列に応じた並べ替え処理は行わなくてよい。
【0057】
<適用例>
図23は、上記実施の形態の撮像装置1から出力に基づいて視点画像を生成する画像生成システムの一例を模式的に表したものである。このように、撮像装置1は、例えば、複数のインターフェース(センサーインターフェース121,USBインターフェース120,記憶部124とのインターフェース122、ネットワークインターフェース(外部インターフェース)123)を有している。撮像装置1は、ネットワークインターフェース123を介して、ネットワーク上のサーバ125あるいは電子機器126と通信可能となっている。サーバ125は、画像処理部112を備えており、所定のソフトウェア等を用いて様々な画像処理(デモザイク処理、視点画像生成処理等)を施すことができる。これにより、撮像装置1からサーバ125へ、圧縮後の撮像データD2(RAW画像データ)を転送する(アップロードする)ことができる。また、サーバ125では、取得した撮像データD2を展開後、その展開後のRAW画像データに対して画像処理を施すことで、様々な画像を生成可能である。例えば、展開した撮像データD2に基づいて、上述したように、各マトリクス領域M内で互いに同一位置にある画素データを抽出し、これらを合成する処理を行うと共に、デモザイク処理や他の画像処理を行うことにより、複数の視点画像を生成する。このようにして生成した視点画像(処理画像)D3は、例えばPCやネットTV等の電子機器126に取り込む(ダウンロードする)ことも可能である。
【0058】
このように、撮像装置1に外部ネットワーク接続用のインターフェースを設け、これを用いて外部のサーバ125(画像処理部)に撮像データをRAW画像の状態で転送することで、様々なソフトウェアを使用した画像処理が可能となる。このようなネットワークシステムにより、ユーザの好みに合った画像生成が可能となり、またカメラ内に画像処理部を設ける必要がなくなるため、カメラコストを削減することができる。また、転送用のデータとして、上述したようなデータ圧縮部14による可逆的圧縮後のデータ(撮像データD2)が用いられることで、効率的なデータ転送が実現できる。尚、転送後、サーバ125において撮像データD2が展開されるが、展開後の撮像データは、上述したように圧縮前の撮像データD0と実質的に同一であるため、処理画像において、データ圧縮に起因する画質劣化を招くことはない。
【0059】
図24は、上記のような多視点画像生成システムにおいて、課金サーバを設けた例である。このように、撮像装置1、サーバ125および電子機器126同士を繋ぐアクセスポイントAPを設け、このアクセスポイントAPを介して、撮像装置1から撮像データを暗号化してサーバへアップすると共に、サーバ125からの処理画像の取得に際しては認証および課金を行うことも可能である。
【0060】
尚、上記適用例では、サーバ125が画像処理部を備えた場合を例示したが、これに限定されず、電子機器126が画像処理部を備えていてもよい。また、サーバ125は、撮像データD2を、上記のように撮像装置1から直接的に取得してもよいし、電子機器126を介して間接的に取得するようにしてもよい。逆に、電子機器126が画像処理部を備える場合には、撮像データD2を撮像装置1から直接的に取得してもよいし、サーバ125を介して間接的に取得するようにしてもよい。
【0061】
以上、実施の形態および変形例を挙げたが、本開示内容は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、1つのマイクロレンズに割り当てられる画素(マトリクス領域M)が3×3=9個である場合を例に挙げて説明したが、マトリクス領域Mは、これに限定されず、任意のm×n(m,nは1以上の整数。但し、m=n=1を除く。)の画素から構成することができ、m,nが互いに異なっていてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態等では、視点分離素子としてレンズアレイを例示したが、光線の視点成分を分離可能な素子であれば、レンズアレイに限定されない。例えば、撮像レンズと、イメージセンサとの間に、XY平面において複数領域に分割され、各領域において開閉を切り替えることが可能な液晶シャッターを視点分離素子として配置した構成であってもよい。あるいは、XY平面に複数の孔が形成された、いわゆるピンホールを利用した視点分離素子を用いてもよい。
【0063】
更に、上記実施の形態等では、データ圧縮部が、マトリクス領域Mに配置された全画素数分(上記説明では9つ)の視点画像データを生成して、これら全ての視点画像データについて圧縮処理を行ったが、必ずしも全ての視点画像データを生成、圧縮しなくともよい。例えば、後段の画像処理において、視点画像として左右2枚の視点画像のみが必要とされる場合等には、それらの2枚分の視点画像データのみを転送できればよいため、一部の画素データを用いて必要な視点画像データを生成し、生成した視点画像データに対してのみ、上記一連の圧縮処理(第1〜第4の圧縮処理)を施せばよい。
【0064】
尚、本開示は以下のような構成を取ることも可能である。
(1)撮像レンズと、前記撮像レンズの通過光線を、互いに異なる複数の視点からの光線に分離する視点分離素子と、複数の画素を含むと共に、各画素において前記視点分離素子の通過光線を受光し、その受光量に基づく多視点の撮像データを出力する撮像素子と、前記撮像データに対し可逆的圧縮を施すデータ圧縮部とを備えた撮像装置。
(2)前記撮像データは、複数の画素データを含む画素データ群からなり、前記データ圧縮部は、前記画素データ群に基づいて、それぞれが視点画像に対応するN個(Nは1以上の整数)の視点画像データを生成し、N個の視点画像データ間で互いに同一座標にある画素データ同士の第1の差分値を算出し、前記第1の差分値を当該画素データと置き換える第1の圧縮処理を行う上記(1)に記載の撮像装置。
(3)前記撮像素子は、各画素データとして、2以上の色のうちのいずれかの色の画素データを取得し、前記データ圧縮部は、前記第1の圧縮処理において、前記N個の視点画像データのうちの1の視点画像データを基準視点画像データとし、前記基準視点画像データを構成する画素データ群と同一の色配列となるように、他の視点画像データを構成する画素データ群の並べ替えを行い、前記画素データ群の並べ替えの後、前記第1の差分値を算出する上記(2)に記載の撮像装置。
(4)前記データ圧縮部は、前記第1の圧縮処理において、前記基準視点画像データを第1面の視点画像データとして、第N面の視点画像データと第(N−1)面の視点画像データとの間で前記第1の差分値を算出し、算出した第1の差分値を前記第N面の視点画像データにおける各画素データと置き換える処理を、第N面から第2面の視点画像データについて順次行うことにより、前記基準視点画像データ以外の(N−1)個の視点画像データの各画素データを前記第1の差分値に置き換える上記(3)に記載の撮像装置。
(5)前記データ圧縮部は、前記第1の圧縮処理において、前記基準視点画像データと、その他の(N−1)個の視点画像データのそれぞれとの間で前記第1の差分値を順次算出し、算出した第1の差分値を前記(N−1)個の視点画像データにおける各画素データと順次置き換える上記(3)に記載の撮像装置。
(6)前記データ圧縮部は、前記第1の圧縮処理の後、前記基準視点画像データを構成する画素データ群に対し、2以上の画素データからなるブロック領域間で、互いに同一位置にある画素データ同士の第2の差分値を算出し、前記第2の差分値を当該画素データと置き換える第2の圧縮処理を行う上記(3)〜(5)のいずれかに記載の撮像装置。
(7)前記データ圧縮部は、前記第2の圧縮処理において、前記基準視点画像データの画素データ群を、それぞれがp×q(p,qは2以上の整数)の画素データからなるブロック領域に分割し、全ブロック領域のうちの選択的な複数のブロック領域を基準ブロック領域として、前記基準ブロック領域とこれに隣接するブロック領域との間において、前記第2の差分値を順次算出し、算出した第2の差分値と、前記基準ブロック領域以外のブロック領域における各画素データを置き換える上記(6)に記載の撮像装置。
(8)前記データ圧縮部は、前記第2の圧縮処理の後、前記複数の基準ブロック領域のうち、互いに同一の行方向に沿って配列した基準ブロック領域間で互いに同一位置にある画素データ同士の第3の差分値を算出し、前記第3の差分値を当該画素データと置き換える第3の圧縮処理を行う上記(6)または(7)に記載の撮像装置。
(9)前記データ圧縮部は、前記第3の圧縮処理において、前記行方向に沿って一方の端部側から順に第n番目(nは2以上の整数)まで配列した複数の基準ブロック領域において、第n番目の基準ブロック領域と第(n−1)番目の基準ブロック領域との間で前記第3の差分値を算出し、算出した第3の差分値を第n番目の基準ブロック領域における各画素データと置き換える処理を、第n番目から第2番目の基準ブロック領域について、行毎に順次行うことにより、第1番目の基準ブロック領域(行基準ブロック領域)以外の基準ブロック領域の各画素データを前記第3の差分値に置き換える上記(8)に記載の撮像装置。
(10)前記データ圧縮部は、前記第3の圧縮処理の後、各行の端部において列方向に沿って配置された前記行基準ブロック領域同士の間で互いに同一位置にある画素データ同士の第4の差分値を算出し、前記第4の差分値を当該画素データと置き換える第4の圧縮処理を行う上記(9)に記載の撮像装置。
(11)前記データ圧縮部は、前記第4の圧縮処理において、前記列方向に沿って一方の端部側から順に第m番目(mは2以上の整数)まで配列した複数の行基準ブロック領域において、第m番目の行基準ブロック領域と第(m−1)番目の行基準ブロック領域との間で前記第4の差分値を算出し、算出した第4の差分値を第m番目の行基準ブロック領域における各画素データと置き換える処理を、第m番目から第2番目の行基準ブロック領域について順次行うことにより、前記第1番目の行基準ブロック領域以外の行基準ブロック領域の各画素データを前記第4の差分値に置き換える上記(10)に記載の撮像装置。
(12)前記撮像素子から得られる画素データ群の色配列は、ベイヤー配列である上記(3)〜(11)のいずれかに記載の撮像装置。
(13)前記データ圧縮部は、圧縮後の撮像データを符号化して出力データを生成する上記(1)〜(12)のいずれかに記載の撮像装置。
(14)撮像装置と、前記撮像装置からの出力データを通信回線を介して取得し、取得した出力データに基づいて画像処理を行う画像処理部とを備え、前記撮像装置は、撮像レンズと、前記撮像レンズの通過光線を、互いに異なる複数の視点からの光線に分離する視点分離素子と、複数の画素を含むと共に、各画素において前記視点分離素子の通過光線を受光し、その受光量に基づく多視点の撮像データを出力する撮像素子と、前記撮像素子から得られた撮像データに対し可逆的圧縮を施すことにより、前記出力データを生成するデータ圧縮部と、を有する画像生成システム。
(15)前記画像処理部は、ネットワーク上のサーバまたは電子機器内に設けられ、前記出力データを展開後、前記画像処理を行う上記(14)に記載の画像生成システム。
(16)前記画像処理部は、前記出力データを展開後、展開後のデータから選択的な画素データを抽出して並べ替えを行うことにより、複数の視点画像を生成する上記(14)または(15)に記載の画像生成システム。
(17)可逆的圧縮が施された多視点撮像データを受信し、受信した多視点撮像データを展開し、展開された多視点撮像データに基づいて画像処理を行うサーバ。
(18)可逆的圧縮が施された多視点撮像データを受信し、受信した多視点撮像データを展開し、展開された多視点撮像データに基づいて画像処理を行う電子機器。
【符号の説明】
【0065】
1…撮像装置、11…撮像レンズ、12…レンズアレイ、12a…マイクロレンズ、13…イメージセンサ、14…データ圧縮部、15…イメージセンサ駆動部、16…制御部、2…被写体、D0〜D2…撮像データ、Dout…出力データ、M,Ma…マトリクス領域、R1〜R9…視点画像(視点画像データ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像レンズと、
前記撮像レンズの通過光線を、互いに異なる複数の視点からの光線に分離する視点分離素子と、
複数の画素を含むと共に、各画素において前記視点分離素子の通過光線を受光し、その受光量に基づく多視点の撮像データを出力する撮像素子と、
前記撮像データに対し可逆的圧縮を施すデータ圧縮部と
を備えた撮像装置。
【請求項2】
前記撮像データは、複数の画素データを含む画素データ群からなり、
前記データ圧縮部は、
前記画素データ群に基づいて、それぞれが視点画像に対応するN個(Nは1以上の整数)の視点画像データを生成し、
N個の視点画像データ間で互いに同一座標にある画素データ同士の第1の差分値を算出し、前記第1の差分値を当該画素データと置き換える第1の圧縮処理を行う
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像素子は、各画素データとして、2以上の色のうちのいずれかの色の画素データを取得し、
前記データ圧縮部は、前記第1の圧縮処理において、
前記N個の視点画像データのうちの1の視点画像データを基準視点画像データとし、前記基準視点画像データを構成する画素データ群と同一の色配列となるように、他の視点画像データを構成する画素データ群の並べ替えを行い、
前記画素データ群の並べ替えの後、前記第1の差分値を算出する
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記データ圧縮部は、前記第1の圧縮処理において、
前記基準視点画像データを第1面の視点画像データとして、第N面の視点画像データと第(N−1)面の視点画像データとの間で前記第1の差分値を算出し、算出した第1の差分値を前記第N面の視点画像データにおける各画素データと置き換える処理を、第N面から第2面の視点画像データについて順次行うことにより、前記基準視点画像データ以外の(N−1)個の視点画像データの各画素データを前記第1の差分値に置き換える
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記データ圧縮部は、前記第1の圧縮処理において、
前記基準視点画像データと、その他の(N−1)個の視点画像データのそれぞれとの間で前記第1の差分値を順次算出し、
算出した第1の差分値を前記(N−1)個の視点画像データにおける各画素データと順次置き換える
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記データ圧縮部は、前記第1の圧縮処理の後、
前記基準視点画像データを構成する画素データ群に対し、2以上の画素データからなるブロック領域間で、互いに同一位置にある画素データ同士の第2の差分値を算出し、前記第2の差分値を当該画素データと置き換える第2の圧縮処理を行う
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記データ圧縮部は、前記第2の圧縮処理において、
前記基準視点画像データの画素データ群を、それぞれがp×q(p,qは2以上の整数)の画素データからなるブロック領域に分割し、
全ブロック領域のうちの選択的な複数のブロック領域を基準ブロック領域として、前記基準ブロック領域とこれに隣接するブロック領域との間において、前記第2の差分値を順次算出し、
算出した第2の差分値と、前記基準ブロック領域以外のブロック領域における各画素データを置き換える
請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記データ圧縮部は、前記第2の圧縮処理の後、
前記複数の基準ブロック領域のうち、互いに同一の行方向に沿って配列した基準ブロック領域間で互いに同一位置にある画素データ同士の第3の差分値を算出し、前記第3の差分値を当該画素データと置き換える第3の圧縮処理を行う
請求項6に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記データ圧縮部は、前記第3の圧縮処理において、
前記行方向に沿って一方の端部側から順に第n番目(nは2以上の整数)まで配列した複数の基準ブロック領域において、第n番目の基準ブロック領域と第(n−1)番目の基準ブロック領域との間で前記第3の差分値を算出し、算出した第3の差分値を第n番目の基準ブロック領域における各画素データと置き換える処理を、第n番目から第2番目の基準ブロック領域について、行毎に順次行うことにより、第1番目の基準ブロック領域(行基準ブロック領域)以外の基準ブロック領域の各画素データを前記第3の差分値に置き換える
請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記データ圧縮部は、前記第3の圧縮処理の後、
各行の端部において列方向に沿って配置された前記行基準ブロック領域同士の間で互いに同一位置にある画素データ同士の第4の差分値を算出し、前記第4の差分値を当該画素データと置き換える第4の圧縮処理を行う
請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記データ圧縮部は、前記第4の圧縮処理において、
前記列方向に沿って一方の端部側から順に第m番目(mは2以上の整数)まで配列した複数の行基準ブロック領域において、第m番目の行基準ブロック領域と第(m−1)番目の行基準ブロック領域との間で前記第4の差分値を算出し、算出した第4の差分値を第m番目の行基準ブロック領域における各画素データと置き換える処理を、第m番目から第2番目の行基準ブロック領域について順次行うことにより、前記第1番目の行基準ブロック領域以外の行基準ブロック領域の各画素データを前記第4の差分値に置き換える
請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記撮像素子から得られる画素データ群の色配列は、ベイヤー配列である
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記データ圧縮部は、圧縮後の撮像データを符号化して出力データを生成する
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項14】
撮像装置と、前記撮像装置からの出力データを通信回線を介して取得し、取得した出力データに基づいて画像処理を行う画像処理部とを備え、
前記撮像装置は、
撮像レンズと、
前記撮像レンズの通過光線を、互いに異なる複数の視点からの光線に分離する視点分離素子と、
複数の画素を含むと共に、各画素において前記視点分離素子の通過光線を受光し、その受光量に基づく多視点の撮像データを出力する撮像素子と、
前記撮像素子から得られた撮像データに対し可逆的圧縮を施すことにより、前記出力データを生成するデータ圧縮部と
を有する画像生成システム。
【請求項15】
前記画像処理部は、ネットワーク上のサーバまたは電子機器内に設けられ、前記出力データを展開後、展開されたデータに基づいて前記画像処理を行う
請求項14に記載の画像生成システム。
【請求項16】
前記画像処理部は、展開されたデータから選択的な画素データを抽出して並べ替えを行うことにより、複数の視点画像を生成する
請求項15に記載の画像生成システム。
【請求項17】
可逆的圧縮が施された多視点撮像データを受信し、
受信した多視点撮像データを展開し、
展開された多視点撮像データに基づいて画像処理を行う
サーバ。
【請求項18】
可逆的圧縮が施された多視点撮像データを受信し、
受信した多視点撮像データを展開し、
展開された多視点撮像データに基づいて画像処理を行う
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−90059(P2013−90059A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227175(P2011−227175)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】