説明

撮像装置および撮像装置の制御方法

【課題】撮像素子の移動機構の薄型化を図ることができる撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像素子3と、撮像素子3を保持する撮像素子保持板4と、撮像素子保持板4を弾性支持する板バネ5と、撮像素子3を駆動する駆動手段と、撮像素子3が出力する信号を処理し、板バネ5に固定された信号処理基板11とを備える撮像装置を設ける。そして、駆動手段が、板バネ5を弾性変形させることによって、撮像素子3を光軸Lに沿った方向に移動させ、信号処理基板11を撮像素子3とは逆位相側に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および撮像装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一眼レフタイプのレンズ交換式デジタルカメラに関し、静止画撮影機能に加えて動画撮影機能を有する製品が提案されている。そして、動画撮影時に有利なコントラスト検出方式のオートフォーカス機構(以下ではコントラストAFと記述)を備える撮像装置の開発がなされている。
【0003】
コントラストAFを備える撮像装置として、交換レンズ内のフォーカスレンズ移動機構に加えて、カメラ本体内の撮像素子の移動機構を備える撮像装置が提案されている。この撮像装置は、撮像素子を撮影光軸方向にウォブリング動作させることを通じてレンズの合焦方向を判定し、その判定結果に基づいてフォーカスレンズを走査して合焦動作を実行する。特許文献1は、圧電素子をアクチュエータとして用いて、撮像素子をウォブリング動作させる機構を備えるビデオカメラを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−048957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、圧電素子をアクチュエータとして用いた撮像素子の移動機構を備える従来の撮像装置は、以下のような問題がある。すなわち、例えば、レンズ交換式の撮像装置のボディ内部に撮像素子の移動機構を配置すると、撮像装置全体が大型化してしまう。特に、撮像装置の厚さ方向の寸法が長くなってしまうことが問題となる。従って、撮像装置が備える撮像素子の移動機構の薄型化を図ることが必要となる。
【0006】
本発明は、撮像素子の移動機構の薄型化を図ることができる撮像装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態の撮像装置は、撮像手段と、前記撮像手段を保持する保持手段と、前記保持手段を弾性支持する弾性支持手段と、前記弾性支持手段を弾性変形させることによって前記撮像手段を光軸に沿った方向に移動する駆動手段と、前記撮像手段が出力する信号を処理する手段であって、少なくともその一部が前記弾性支持手段に固定され、前記弾性支持手段の弾性変形によって、前記撮像手段とは逆位相側に移動する信号処理手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より薄型の撮像素子の移動機構を有する撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】撮像装置の全体構成の例を示す図である。
【図2】撮影レンズの内部構成例を示す図である。
【図3】撮像装置の要部の外観斜視図である。
【図4】撮像素子の移動機構の動作例を示す図である。
【図5】実施例2の撮像装置の構成例を示す図である。
【図6】撮像素子と信号処理基板とが固定された構成を有する撮像装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至4は、本発明の実施例1の撮像装置の構成を示す図である。図1は、実施例1の撮像装置の全体構成の例であって、撮像装置の垂直断面図である。図2は、撮像レンズをつけていない状態の撮影レンズの内部構成例を示す。図2(A)は、撮像装置の要部の水平断面上視図である。図2(B)は、撮像装置の要部の垂直断面図である。また、図3は、撮像装置の要部の外観斜視図である。図3(A)は、撮像装置の要部の正面から見た外観斜視図を示す。図3(B)は、撮像装置の要部の背面方向から見た外観斜視図を示す。図3(A)、(B)に示す撮像装置は、撮像素子3が基準位置にある状態である。
【0011】
また、図4は、撮像装置の要部の水平断面の上視図であって、後述する圧電素子の駆動による撮像素子の移動機構の動作例を示す。図4(A)は、撮像素子3が基準位置にある撮像装置の状態の例を示す。この例では、撮像素子3の撮像面が撮影レンズ(図示を省略)の予定結合面Pにある位置が撮像素子3の基準位置である。図4(B)は、撮像素子3が前進した状態の例である。図4(C)は、撮像素子3が後退した状態の例である。
【0012】
図1乃至図4に示す撮像装置は、例えば、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子により被写体像を光電変換して画像情報を生成し、任意のメモリ等の電子的記録媒体にその画像情報を記録するデジタル撮像装置である。この撮像装置は、撮像素子を撮像光学系(撮像レンズ)の光軸に沿って移動して撮像する。なお、CCDは、Charge Coupled Deviceの略称である。CMOSは、Complementary Metal Oxide Semiconductorの略称である。
【0013】
図1に示す撮像装置において、21はカメラ本体、22は交換レンズである。23は交換レンズ22に設けられた撮影光学系である。23aは撮像光学系23の中で合焦動作を行うAFレンズである。24は撮像光学系23の像を撮像素子3およびプリズム26に分岐するクイックリターンミラーである。27はプリズムに入射した光束を接眼面に導く観察光学系、28は撮像素子3への入射を制御するシャッタ、29は撮影光学系23により撮像素子3上に結像された画像を再生する背面液晶モニターである。ここで撮像光学系23の焦点調節はAFレンズ23aを矢印23bが示す前後の方向に駆動することで行う。
【0014】
焦点状態の検出は撮像素子3の画像のコントラストを検出した評価値を用いて行う。すなわち、AFレンズ23aを所定量ずつ移動させながら撮像素子3で得られる画像の評価値を求め、最も評価値の高い結果が得られるAFレンズ23aの位置を合焦位置としている。
【0015】
このような合焦調節動作は、山登りAF、或いはTV−AF、コントラストAFなどと称され、合焦検出の為に専用のセンサが不要であるという利点を有している。しかし、コントラストAFは、コントラストの大小は検出できるが、AFレンズ23aを移動させないとコントラスト変化の方向が分からないという問題がある。具体的には、コントラストAFでは、撮像装置が備える制御部(図示を省略)は、AFレンズ23aを所定方向(例えば撮像素子3側)に移動していきながら画像の評価値を求めていく。評価値が低くなっていく場合には、制御部は、ピントが外れていく方向にAFレンズ23aが駆動されていると判断し、その駆動方向を反転させる必要がある。上記制御部は、本実施形態の撮像装置の制御方法を実現する。
【0016】
上記のような問題を補うために、ウォブリングと称する合焦検出処理が一般的に行われている。例えば、図1において、制御部が、矢印25aが示す前後の方向に撮像素子3を移動させることでウォブリング動作を行う。ウォブリング動作時に、制御部は、撮像素子3が撮像光学系23側に移動している時の画像の評価値と背面液晶モニター29側に移動している時の画像の評価値とを比較し、画像評価値の高い側が合焦方向であると判定する。その後、制御部は、合焦方向に向かってAFレンズ23aを駆動して、最も画像評価値が高くなるレンズ位置を求める。
【0017】
次に、図2において、1は撮像装置の本体である。1aは、本体1のレンズ取り付け面(マウント部)である。2はセンサ地板であって、撮像素子3を移動させる機構(以下、撮像素子移動機構と記述)を備える。
【0018】
センサ地板2は、例えば所定の箇所に調整ワッシャ2aを挟みこむことにより、その高さ調整が可能なように本体1に取り付けられている。これにより、センサ地板2が、マウント部1aから所定の距離の位置に保たれるとともに、撮像レンズの光軸に直交する平面性を有する。
【0019】
撮像素子3は、被写体からの光束が結像される撮像手段として機能する。撮像素子3は、セラミック材などの外形パッケージを有し、撮像素子内部の撮像面に投影された画像を電気信号に変換する。この撮像面がレンズの予定結像面にあることで、ピントの合った画像が撮像される。なお、撮像素子がパッケージされたものを以下では撮像素子パッケージと記述する。
【0020】
撮像素子3は、いわゆる電子シャッタの機能を備えており、画像信号取り込み開始となる電子シャッタとしての電子先幕、及び取り込み中止を行う電子後幕の機能を有している。すなわち、電子先幕の動作により画像の電荷の蓄積を開始し、電子後幕の動作により所定の時間後に蓄積を終了することが可能である。その後、撮像素子3は、蓄積した画像の電荷の読み出し動作を行い、撮像手段3からの電気的な接続手段である撮像素子側フレキシブル基板8を経由して、後述する信号処理手段に画像信号を出力する。
【0021】
撮像素子3は、撮像素子保持板4に取り付けられている。撮像素子保持板4は、撮像素子3を保持する保持手段として機能する。撮像素子保持板4は、略コの字形状を有する。具体的には、撮像素子保持板4は、平面部4bと、略直径に曲げられた腕部4aとを有する。なお、撮像素子保持板4が、撮像素子パッケージに一体成型されており、撮像信号を外部に出力する端子(リード)をその一部とする金属板であってもよい。平面部4bは、撮像素子3から撮像素子3の長手方向に沿って延伸する第1の平面部である。
【0022】
腕部4aは、第1の平面部(平面部4b)と予め決められた角度(この例では略直角)をなす第1の屈曲部である。腕部4aの先端は、板バネ5の平面部5bと撮像素子保持板4の平面部4bとが平行となるように、つまり、平面部5bと撮像素子3の撮像面とが平行となるように、板バネ5の腕部5aと精度良く半田付け固定されている。これにより、撮像素子3の撮像面が傾かないようにし、後述する板バネ5の平面部5bの撓み変形に伴って撮像素子3が光軸Lに沿って移動することができるようになる。
【0023】
弾性支持手段5は、撮像素子保持板4を弾性支持する。弾性支持手段5は、弾性部材(例えば板バネ等の薄板部材)である。以下では、弾性支持手段5を板バネ5とも記述する。この例では、板バネ5は、弾性を有するニッケルと鉄の合金である42アロイ材からなる矩形の板材を曲げて加工して形成されている。板バネ5は、略コの字形状を有する。具体的には、板バネ5は、中央の平面部5bと、両端の略直角に曲げられた腕部5aとを備える。平面部5bは、後述するカウンタウェイト9が設けられた第2の平面部である。腕部5aは、該第2の平面部(平面部5b)と予め決められた角度(この例では略直角)をなす第2の屈曲部である。
【0024】
板バネ5は、その腕部5aの先端において、撮像素子3の撮像面と板バネ5の平面部5bが略平行となる状態で、撮像素子保持板の腕部4aと精度良く半田付け固定されている。板バネ5は、圧電素子7の伸縮に伴って、その中心部を中心に前後の厚板方向(光軸に沿った方向)に撓み変形する。板バネ5が撓み変形することにより、撮像素子3が、光軸Lに沿って移動する。
【0025】
板バネ5は、所定の接合部において支点6と接合し、固定される。支点6は、板バネ5を図中の上下から挟む、一対の支持部材である。各々の支点6は、板バネ5の中央部から略等距離の位置で、後述の圧電素子7のたわみ変形に支障なく板バネ5及び撮像素子3を支持している。
【0026】
支点6は、4箇所の支点調整板6aを挟んで、センサ地板2に対して調整可能に取り付けられる。これにより、図4(A)に示すように、撮像素子3の撮像面の位置が、撮影レンズの予定結合面Pの位置に調整される。すなわち、支点6は、平面部5bを予め決められた支持点(支点6)において支持し、撮像素子3の基準位置を調整する支持手段として機能する。支点調整板6aは、板バネ5の短手方向において、支点6の端部のそれぞれに2つ(合計4つ)設けられている。
【0027】
圧電素子7(圧電素子7aおよび7b)は、板バネ5の平面部5bに貼り付けられており、電圧印加によって伸縮する。圧電素子7aは、平面部5bの表面に貼り付けられており、圧電素子7bは、平面部5bの裏面に貼り付けられている。
【0028】
圧電素子7a、7bは、板バネ5の平面部5bを弾性変形させることによって撮像素子3を光軸に沿った方向に移動させる駆動手段である。この例では、圧電素子7a,7bは、PZTなどを材料とした薄板状の圧電セラミック素子である。撮像装置が備える制御部が、圧電素子7a、7bに対して印加する電圧の大きさと電流の流れる方向を制御する。これにより、圧電素子の伸縮方向と伸縮量とが制御される。この例では、パラレル型という接続方法により、一定の電圧を上下の圧電素子に印加し、上下の圧電素子が互いに逆方向に伸縮する。
【0029】
例えば、プラス電圧の印加により、圧電素子7aは伸縮し、圧電素子7bは伸長する。従って、図4(B)に示すように、一体となって接着された板バネ5は、前側が凹むように変形し、撮像素子3が前進する。また、マイナス電圧の印加により、圧電素子7aは伸長し、圧電素子7bは収縮する。従って、図4(C)に示すように、一体となって接着された板バネ5は、前側が突出するように変形し、撮像素子3は後退する。つまり、圧電素子に対する電圧の印加により、支点6を支点として、板バネ5の平面部5bの中央部と腕部5aの先端部分との間に変位が生じ、撮像素子3が光軸Lに沿って移動する。なお、圧電素子7の伸長または収縮の変位量は、印加する電圧の大きさを調整することによって制御可能である。上述した板バネ5、支点6、圧電素子7は、撮像素子3を光軸に沿った方向に移動させる撮像素子移動機構を構成する。
【0030】
カウンタウェイト9は、放熱手段として機能する。この例では、カウンタウェイト9は、真鍮などの、比重が大きく、かつ、放熱の良好な材料からなる。また、カウンタウェイト9は、複数の放熱フィンを備える。撮像素子3周辺で発生した熱は、最終的にカウンタウェイト9が備える放熱フィンのヒートシンク効果により効率良く放熱される。なお、カウンタウェイト9の質量は、撮像素子3の質量とストロークの積をカウンタウェイト9のストロークで割って得られる質量である。つまり、カウンタウェイト9の質量は、撮像素子3の移動による振動を打ち消すことができる質量である。
【0031】
カウンタウェイト9は、平面部5bの裏面の、圧電素子7bが設けられた領域よりも該裏面の延伸方向外側に設けられている。具体的には、図2(B)に示すように、カウンタウェイト9は、平面部5bの裏面の中央の上下2点のみを取り付け位置として、カウンタウェイト取り付け位置10において板バネ5に固定されている。従って、カウンタウェイト9の板バネ5の取り付けは、圧電素子による板バネ5の撓み変形に影響しない。
【0032】
信号処理基板11は、撮像素子3が出力する画像信号を処理する信号処理手段の一部である。信号処理基板11は、信号処理側フレキシブル基板12を介して、撮像手段3から画像信号を受け取り、受け取った画像信号をアナログ/デジタル変換する(アナログ/デジタル変換機能を有する)。
【0033】
信号処理基板11は、図2(B)に示すように、撮像素子3の背面側に設けられている。信号処理基板11と撮像素子3との間には、光軸に沿った方向の間隙が存在する。信号処理基板11は、その中央部において信号基板保持部材13を介して変形部材である板バネ5に固定されている。すなわち、信号処理手段は、少なくともその一部(信号処理基板11)が板バネ5に固定されている。信号処理基板11は、板バネ5の弾性変形によって、撮像素子3とは逆位相側に移動する。
【0034】
図2(B)に示す撮像素子側フレキシブル基板8と信号処理側フレキシブル基板12は、撮像素子3と信号処理基板11とを電気的に接続する接続手段として機能する。撮像素子側フレキシブル基板8は第1の接続手段である。信号処理側フレキシブル基板12は第2の接続手段である。撮像素子側フレキシブル基板8、信号処理側フレキシブル基板12の信号伝達距離は同じである。撮像素子側フレキシブル基板8と信号処理側フレキシブル基板12は、撮像素子3と信号処理基板11との間の間隙に設けられている。
【0035】
撮像素子側フレキシブル基板8と信号処理側フレキシブル基板12は、光軸Lと垂直な平面を接続面として互いに接続されている。これにより、撮像素子移動機構による撮像素子3の光軸方向への移動を阻害する力の発生を抑えることができる。
【0036】
図5は、実施例2の撮像装置の構成例を示す図である。実施例2の撮像装置は、図1乃至4を参照して説明した実施例1の撮像装置が備える撮像素子側フレキシブル基板8および信号処理側フレキシブル基板12に代えて、湾曲フレキシブル基板14を備える。なお、図5において、撮像素子3は基準位置にある。
【0037】
湾曲フレキシブル基板14は、撮像素子3と信号処理基板11とを電気的に接続する接続手段である。湾曲フレキシブル基板14は、湾曲形状を有し、撮像素子3と信号処理基板11とを光軸Lに沿って離れる方向に付勢する。すなわち、湾曲フレキシブル基板14は、図5中の矢印Q方向と矢印R方向に弾性力を発生させる。その結果、撮像素子3を介して、撮像素子保持板4は矢印Q方向に付勢される。また、信号処理基板11及び信号基板保持部材13を介して、板バネ5は矢印R方向に付勢される。発生する付勢力が光軸線対称となるように、湾曲フレキシブル基板14は光軸線対称な配置であることが望ましい。この付勢する力により、撮像素子保持板4及び板バネ5により構成される矩形構造は力のつり合いがとられ、駆動時の光軸に対する撮像面の垂直性が安定し、且つ振動の少ない動作が可能となる。
【0038】
次に、図2と図6とを参照して、本発明の効果について説明する。図6は、撮像素子と信号処理基板とが固定された構成を有する撮像装置を示す図である。信号処理基板11を分離せずに撮像素子3側へと固定すると、撮像素子3側の信号処理基板11分の質量の増加分と、板バネ5側の信号処理基板11分の質量の減量分を打ち消す量だけ、カウンタウェイト9の厚みを増して質量を増量しなければならない。従って、カウンタウェイト9の厚さB’は、図2(A)に示す撮像装置が備えるカウンタウェイトの厚さBより厚くなる。その結果、撮像素子移動機構全体の厚さA’(図6)は、図2(A)に示す撮像装置が備える撮像素子移動機構全体の厚さAより厚くなってしまう。
【0039】
一方、図2に示す撮像装置においては、撮像素子3と信号処理基板11との電気的な接続手段である撮像素子側フレキシブル基板8及び信号処理側フレキシブル基板12が上下に複数配置され、その信号伝達距離が等距離となるように配置される。また、撮像素子側フレキシブル基板8及び信号処理側フレキシブル基板12は、撮像素子3と板バネ5の間の内側に納まるように配置される。なお、伝達距離の等距離が保たれ、光軸線対称な配置が保たれる構造であれば、撮像素子側フレキシブル基板8と信号処理側フレキシブル基板12は、左右や斜めに配置されてもよい。
【0040】
図2に示す撮像装置が備える撮像素子移動機構は、板バネ5、支点6、駆動源である圧電素子7a、7bを有する。制御部が、圧電素子7に電圧印加することによって圧電素子7が伸縮すると、板バネ5の平面部5bがたわみ変形するが腕部5aは前後に移動する。これにより、撮像素子3は光軸方向に直交する撮像面を維持したまま、フランジバック位置から光軸方向に前進あるいは後退する。同時に、カウンタウェイト9が後退あるいは前進し、撮像素子3とカウンタウェイト9は互いに逆方向に移動する。この時、板バネ5に固定された信号処理基板11の一部も、カウンタウェイト9と同方向に移動する。
【0041】
この撮像素子3と、カウンタウェイト9および信号処理基板11の、光軸逆方向の移動により、カウンタバランスがとられる。カウンタバランスは、撮像素子3とカウンタウェイト9および信号処理基板11の質量比およびストローク比で決まる。
【0042】
図2に示す撮像装置のように、信号処理手段を撮像素子3に固定するのではなく板バネ5に固定することにより、以下の効果が得られる。すなわち、撮像素子3側の質量が信号処理基板11の分軽くなるので、カウンタウェイト9側を軽量化できる。また、カウンタウェイト9側に信号処理基板11分の質量が足されることになるので、カウンタウェイト9の質量を軽量化することができる。そして、カウンタバランスをとるためには撮像素子3の重心と、カウンタウェイト9側の重心とが、ともに光軸L上にある必要があるが、軽量化によりカウンタウェイト9の薄型化が可能となり、結果として撮像素子移動機構全体の小型化、薄型化が可能となる。
【0043】
本発明の撮像装置によれば、板バネ5が保持する部材の質量を軽量化することが可能となり、図2(A)に示す信号処理基板11の厚さCとカウンタウェイト9の厚さBとを合わせた厚さである厚さAをより小さく抑えることができる。すなわち、撮像素子移動機構全体の厚さが、図6に示す撮像装置の撮像素子移動機構全体の厚さである厚さA’から厚さAへと薄型化する。
【0044】
信号処理基板11の重量がより重い方が、カウンタウェイト9の軽量化への寄与は大きくなる。しかし、信号処理手段が撮像素子移動機構へと搭載されることによるノイズ等の影響を抑えるために、アナログ/デジタル変換機能を有する信号処理基板11の重量は、画像劣化を最小限に抑える重量にする。
【0045】
また、撮像素子移動機構のストローク制御については、制御部が電圧制御によって圧電素子7たわみ量を変化させ、撮像素子3が前後するストロークを変化させることを通じて行う。
【0046】
一方、2箇所の支点6の、板バネ5の長手方向の間隔を調整することにより、撮像素子3が移動するストロークとカウンタウェイト9が移動するストロークの比を変化させることができる。また、板バネ5の短手方向において、支点調整板6aにより支点6の光軸方向の高さを変化させて板バネ5を捻ることで、撮像素子3の撮像面の倒れ方が変化する。このように支点6の位置を前後、左右、あるいは傾けて微調整することによって、部品の製造ばらつきがあっても、撮像素子3の撮像面が光軸に対し傾きがなく、フランジバック距離の基準位置にあるように調整することができる。
【0047】
本発明の撮像装置においては、撮像素子3と信号処理基板11とが分離し、信号処理基板11が板バネ5に固定されている。また、信号処理基板11は、撮像素子3と逆位相で移動する。従って、本発明によれば、精度が高く、小型でかつ薄型の撮像素子移動機構を備えた撮像装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 本体
2 センサ地板
3 撮像素子
4 撮像素子保持板
5 板バネ
6 支点
7 圧電素子
8 撮像素子側フレキシブル基板
12 信号処理側フレキシブル基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段と、
前記撮像手段を保持する保持手段と、
前記保持手段を弾性支持する弾性支持手段と、
前記弾性支持手段を弾性変形させることによって前記撮像手段を光軸に沿った方向に移動する駆動手段と、
前記撮像手段が出力する信号を処理する手段であって、少なくともその一部が前記弾性支持手段に固定され、前記弾性支持手段の弾性変形によって、前記撮像手段とは逆位相側に移動する信号処理手段とを備える
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記弾性支持手段に固定される前記信号処理手段の一部が、アナログ/デジタル変換機能を有する信号処理基板である
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像手段と前記信号処理基板とを電気的に接続する接続手段を備え、
前記信号処理基板が、前記撮像手段の背面側に設けられ、前記撮像手段との間に光軸に沿った方向の間隙を有し、
前記接続手段は、前記撮像手段と前記信号処理基板との間の間隙に設けられる
ことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記接続手段は、光軸と垂直な平面を接続面として互いに接続された第1、第2の接続手段を有し、
前記第1、第2の接続手段の信号伝達距離が同じである
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記接続手段は、湾曲形状を有し、前記撮像手段と前記信号処理基板とを光軸に沿って離れる方向に付勢する
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記保持手段は、前記撮像手段から該撮像手段の長手方向に沿って延伸する第1の平面部と、該第1の平面部と予め決められた角度をなす第1の屈曲部とを備え、
前記弾性支持手段は、放熱手段が設けられた第2の平面部と、該第2の平面部と予め決められた角度をなす第2の屈曲部とを備え、
前記第1の屈曲部と前記第2の屈曲部とは、前記第1の平面部と前記第2の平面部とが平行となるように接続されており、
前記第2の平面部は、前記駆動手段によって駆動されて、前記光軸に沿って前後に撓む弾性部材を備える
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記駆動手段は、前記第2の平面部に設けられた、電圧印加によって伸縮する圧電素子を備える
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
撮像手段と、前記撮像手段を保持する保持手段と、前記保持手段を弾性支持する弾性支持手段と、前記撮像手段を駆動する駆動手段と、前記撮像手段が出力する信号を処理する手段であって、少なくともその一部が前記弾性支持手段に固定された信号処理手段とを備える撮像装置の制御方法であって、
前記駆動手段が、前記弾性支持手段を弾性変形させることによって、前記撮像手段を光軸に沿った方向に移動させ、前記信号処理手段を前記撮像手段とは逆位相側に移動させる
ことを特徴とする撮像装置の制御方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−208155(P2012−208155A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71536(P2011−71536)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】