説明

撮像装置及びその制御方法

【課題】カメラユニットをパン回転又はチルト回転させるための動力伝達機構が有するバックラッシュを除去するための押圧力を調整することにより、高速回転時及び低速回転時それぞれの要求性能を満足することができる撮像装置を提供する。
【解決手段】被写体を撮像して撮像信号を出力する撮像光学系レンズユニットと、ハスバギア201とウォームギア202とから構成され、バックラッシュを有する動力伝達機構と、この動力伝達機構を介して撮像光学系レンズユニットをパン回転させるパン駆動用モーター208と、ウォームギア202を押圧することでバックラッシュを除去するためのパン駆動用プランジャ207と、この撮像光学系レンズユニットがパン回転している場合に、高速駆動用押圧力と低速駆動用押圧力とのいずれかの押圧力になるようにパン駆動用プランジャ207を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン回転又はチルト回転可能なカメラユニットを備えるカメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスビル、商店、街中などにおいて、防犯、防災などを目的として監視カメラが利用されており、これら監視カメラの多くは、パン方向或いはチルト方向にカメラユニットを回転させることができる。
【0003】
このような監視カメラは、カメラユニットをパン方向或いはチルト方向に回転させるために、複数のギアから構成される動力伝達機構を有し、これら複数のギア間にはバックラッシュが設けられている。このバックラッシュは、回転時には、これら複数のギアを滑らかに回転させるために必要である一方、回転停止時には、位置ズレや揺れなどの原因となってしまう。
【0004】
特許文献1には、カメラ旋回駆動装置が開示されている。このカメラ旋回駆動装置は、ウォームとウォームホイールにより回転動力を伝達し、回転停止時には、バネ及び圧電素子により、ウォームをウォームホイールに押し付けることでウォームとウォームホイール間のバックラッシュを小さくする。また、このカメラ旋回駆動装置は、回転時には、圧電素子による押し付けを解除し、バネのみでウォームをウォームホイールに押し付けることによりウォームとウォームホイール間の適正なバックラッシュを確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−279758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、監視カメラ装置にはプリセット撮像機能を有しているものが多い。この機能は、予め所望の撮像ポジション(パン位置、チルト位置、ズーム位置)を監視カメラ装置に複数記憶させておき、記憶された撮像ポジションをユーザが必要に応じて指定すると、指定された撮像ポジションを監視カメラ装置が素早く撮像するものである。
【0007】
この場合、監視カメラ装置は、パン方向又はチルト方向に高速回転することが要求される一方、高速回転中は、撮像画像が流れてしまって人間の目視が困難なため、バックラッシュに起因する撮像画像の揺れは許容される。さらに、監視カメラ装置をパン方向又はチルト方向に回転させるためのモーターは、回転数が増加するほど出力トルクが減少してしまう。このため、監視カメラ装置をパン方向又はチルト方向に高速回転させるために必要なトルクは、小さいことが望ましい。
【0008】
また、監視カメラ装置にはプリセット巡回機能を有しているものも多い。この機能は、監視カメラ装置内に複数記憶された所望の撮像ポジションを監視カメラが自動的に巡回して撮像するものであり、ユーザは巡回途中の撮像画像を見たいことが多い。
【0009】
この場合、監視カメラには、バックラッシュに起因する監視カメラの揺れを抑制しながら一定の低速度で巡回ルートを撮像することが要求される。さらに、監視カメラ装置をパン方向又はチルト方向に回転させるためのモーターは、回転数が減少するほど出力トルクが増加する。このため、監視カメラ装置をパン方向又はチルト方向に低速回転させるために必要なトルクは、監視カメラ装置をパン方向又はチルト方向に高速回転させるために必要なトルクより大きくても許容され得る。
【0010】
このように、バックラッシュに起因する撮像画像の揺れへの要求性能及び監視カメラ装置をパン方向又はチルト方向に回転させるために必要なトルクへの要求性能は、監視カメラ装置の高速回転時と低速回転時とで異なる。しかしながら、従来のカメラ旋回駆動装置では、高速回転時及び低速回転時それぞれの要求性能が異なることについて考慮されていなかった。
【0011】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものである。すなわち、カメラユニットをパン回転又はチルト回転させるための動力伝達機構が有するバックラッシュを除去するための押圧力を調整することにより、高速回転時及び低速回転時それぞれの要求性能を満足することができる撮像装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、レンズを含み、被写体を撮像して撮像信号を出力するカメラユニットと、ギアから構成され、バックラッシュを有する動力伝達機構と、前記動力伝達機構を介して前記カメラユニットをパン回転させるパン駆動手段と、前記ギアを押圧することによって前記バックラッシュを除去するためのバックラッシュ除去手段と、前記パン駆動手段が前記カメラユニットをパン回転させている場合に、前記バックラッシュを除去しない高速駆動用押圧力と、前記高速駆動用押圧力よりも大きい押圧力であって前記バックラッシュを除去することができる低速駆動用押圧力と、のいずれかの押圧力になるように前記バックラッシュ除去手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するために、本発明の撮像装置の制御方法は、レンズを含み、被写体を撮像して撮像信号を出力するカメラユニットと、ギアから構成され、バックラッシュを有する動力伝達機構と、前記動力伝達機構を介して前記カメラユニットをパン回転させるパン駆動手段と、前記ギアを押圧することによって前記バックラッシュを除去するためのバックラッシュ除去手段と、を備える撮像装置の制御方法であって、前記パン駆動手段が前記カメラユニットをパン回転させている場合に、前記バックラッシュを除去しない高速駆動用押圧力と、前記高速駆動用押圧力よりも大きい押圧力であって前記バックラッシュを除去することができる低速駆動用押圧力と、のいずれかの押圧力になるように前記バックラッシュ除去手段を制御する制御ステップを有することを特徴とする。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、レンズを含み、被写体を撮像して撮像信号を出力するカメラユニットと、ギアから構成され、バックラッシュを有する動力伝達機構と、前記動力伝達機構を介して前記カメラユニットをチルト回転させるチルト駆動手段と、前記ギアを押圧することによって前記バックラッシュを除去するためのバックラッシュ除去手段と、前記チルト駆動手段が前記カメラユニットをチルト回転させている場合に、前記バックラッシュを除去しない高速駆動用押圧力と、前記高速駆動用押圧力よりも大きい押圧力であって前記バックラッシュを除去することができる前記低速駆動用押圧力と、のいずれかの押圧力になるように前記バックラッシュ除去手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、上記目的を達成するために、本発明の撮像装置の制御方法は、レンズを含み、被写体を撮像して撮像信号を出力するカメラユニットと、ギアから構成され、バックラッシュを有する動力伝達機構と、前記動力伝達機構を介して前記カメラユニットをチルト回転させるチルト駆動手段と、前記ギアを押圧することによって前記バックラッシュを除去するためのバックラッシュ除去手段と、を備える撮像装置の制御方法であって、前記チルト駆動手段が前記カメラユニットをチルト回転させている場合に、前記バックラッシュを除去しない高速駆動用押圧力と、前記高速駆動用押圧力よりも大きい押圧力であって前記バックラッシュを除去することができる前記低速駆動用押圧力と、のいずれかの押圧力になるように前記バックラッシュ除去手段を制御する制御ステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、次のような撮像装置を提供することができる。すなわち、カメラユニットをパン回転又はチルト回転させるための動力伝達機構が有するバックラッシュを除去するための押圧力を調整することにより、高速回転時及び低速回転時それぞれの要求性能を満足することができる撮像装置である。。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るパンチルトカメラ1の分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るパン機構の構成の詳細を示す拡大分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るチルト機構の構成の詳細を示す拡大斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るパンチルトカメラ1の制御のための構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係る、バックラッシュ除去圧制御処理の一部を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態に係る、バックラッシュ除去圧制御処理の一部を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る、バックラッシュ除去圧制御処理の一部の変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置、具体的には、パンチルトカメラ1の分解斜視図である。
【0020】
図1における底面外装部品22は、カメラ固定台部20と電気基板21とを支持する。そして、電気基板21は、底面外装部品22に取り付けられ、カメラ固定台部20を支持する。また、カメラ固定台部20は、底面外装部品22及び電気基板21に取り付けられ、パン回転支持台14などを支持する。なお、カメラ固定台部20の周辺のパン機構については、図2を用いて後に詳述する。
【0021】
パン回転支持台14は、カメラ支持部材13と、中央外装部品15と、側面外装部品16と、前面外装部品17と、前面カバー18と、撮像信号処理基板19と、が取り付けられる。ここで、撮像信号処理基板19は、後述する撮像光学系レンズユニット10から出力される撮像信号を処理するためのものである。
【0022】
カメラ支持部材13は、カメラ部外装部品12に覆われた撮像光学系レンズユニット10をチルト回転可能に支持する。なお、カメラ支持部材13の周辺のチルト機構については、図3を用いて後に詳述する。
【0023】
続いて、図2は、本発明の実施形態に係るパンチルトカメラ1のパン機構の構成の詳細を示す拡大分解斜視図である。
【0024】
図2において、パン回転支持台14は、パン回転軸14aを備える。このパン回転軸14aには、パン回転支持台14をパン回転させるためのハスバギア201が直結される。また、パン回転軸14aは、ハスバギア201に圧入された状態で、ボールベアリング211が圧入されたパン軸受け部品212により、回転摺動可能に支持される。
【0025】
なお、本発明の実施形態では、パン駆動用モーター208の駆動力をパン回転支持台14に伝達するためのギアとしてハスバギア201を用いたが、これに限るものではない。例えば、ウォームホイールを用いても良い。
【0026】
ハスバギア201に噛合されるウォームギア202は、一端をベアリング203により、他端をベアリング204により、回転摺動可能に支持される。また、この他端は、板バネ206によって付勢される。これは、ウォームギア202のスラスト方向のガタを吸収するためである。
【0027】
この板バネ206が付勢する圧力は、パン回転支持台14が支持する上部の部品すべての重量及びパン回転に伴うイナーシャにより、ウォームギア202のスラスト方向にかかる反力以上である必要がある。なお、板バネ206とウォームギア202とをピボット接触とすることにより、摩擦摺動による抵抗を最小限に抑えることが可能である。
【0028】
ベアリング203は、カメラ固定台部20に設けられた嵌合穴部20aに嵌合され、ウォームギア202を所定の位置に支持する。
【0029】
ベアリング204は、弾性部材205によって付勢されることで、ウォームギア202をハスバギア201に所定の圧力で接触、つまり、ウォームギア202をハスバギア201に押し付ける方向に押圧する。
【0030】
また、ベアリング204の摺動嵌合部204aは、カメラ固定台部20の嵌合長穴部20cに嵌合する。これにより、ウォームギア202は、ハスバギア201へ押し付けられる方向に沿って摺動移動することが可能となり、ハスバギア201とウォームギア202とのバックラッシュを除去することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、ハスバギア201とウォームギア202とが、撮像光学系レンズユニット10のパン回転に関する、動力伝達機構に相当する。
【0032】
弾性部材205は、コイルバネなどで構成されており、ハスバギア201とウォームギア202との間のバックラッシュを除去するためのバックラッシュ除去用弾性部材である。この弾性部材205の一端は、ベアリング204に接触(当接)するとともにベアリング204をハスバギア201に向かって付勢し、他端は、パン駆動用プランジャ207に保持される。
【0033】
パン駆動用プランジャ207は、弾性部材205を少なくとも3つの位置に保持することができる。そして、パン駆動用プランジャ207は、弾性部材205の保持位置を変えて弾性部材205の撓み長を変えることにより、ウォームギア202をハスバギア201に向かって付勢する圧力を調整することができる。
【0034】
パン駆動用モーター208は、カメラ固定台部20に設けられた嵌合穴部20cに嵌合され、所定の位置に固定される。パン駆動用モーター208の回転軸には、プーリ209が圧入されて固定される。このプーリ209は、プーリ209とウォームギア202のプーリ部202aとに張り渡されたタイミングベルト210を駆動することで、プーリ部202aを回転させる。つまり、パン駆動用モーター208は、タイミングベルト210で動力伝達をすることにより、ウォームギア202のプーリ部202aを回転させる。
【0035】
続いて、図3は、本発明の実施形態に係るパンチルトカメラ1のチルト機構の構成の詳細を示す拡大斜視図である。図3における2点の図それぞれは、チルト機構が組み上げられた状態を示す左図とチルト機構が分解された状態を示す右図である。なお、図3における2点の図のうちチルト機構が分解された状態を示す右図では、一部の部品を省略して示している。
【0036】
図3において、レンズユニット支持部材11をチルト回転させるためのハスバギア102は、レンズユニット支持部材11が備えるチルト回転軸11aに圧入され、ビス締めされることにより、チルト回転軸11aに直結される。
【0037】
なお、本発明の実施形態では、チルト駆動用モーター109の駆動力をレンズユニット支持部材11に伝達するためのギアとしてハスバギア102を用いたが、これに限るものではない。例えば、ウォームホイールを用いても良い。
【0038】
ハスバギア102に噛合されるウォームギア103は、一端をベアリング104により、他端をベアリング105により、回転摺動可能に支持される。また、この他端は、板バネ107によって付勢される。これは、ウォームギア103のスラスト方向のガタを吸収するためである。この板バネ107が付勢する圧力は、撮像光学系レンズユニット10及びレンズユニット支持部材11及びカメラ部外装部品12の重量及びチルト回転に伴うイナーシャにより、ウォームギア103のスラスト方向にかかる反力以上である必要がある。なお、板バネ107とウォームギア103はピボット接触とすることにより、摩擦摺動による抵抗を最小限に抑えることが可能である。
【0039】
ベアリング104は、カメラ支持部材13の嵌合穴部13aに嵌合し、ウォームギア103を所定の位置に支持する。
【0040】
また、ベアリング105の摺動嵌合部105aは、カメラ支持部材13の嵌合長穴部13bに嵌合する。これにより、ウォームギア103は、ハスバギア102へ押し付けられる方向に摺動移動することが可能となり、ハスバギア102とウォームギア103とのバックラッシュを除去することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、ハスバギア102とウォームギア103とが、撮像光学系レンズユニット10のチルト回転に関する、動力伝達機構に相当する。
【0042】
弾性部材106は、コイルバネなどで構成されており、ハスバギア102とウォームギア103との間のバックラッシュを除去するためのバックラッシュ除去用弾性部材である。この弾性部材の一端は、ベアリング105に接触(当接)するとともにベアリング105をハスバギア102に向かって付勢し、他端は、チルト駆動用プランジャ108に保持される。
【0043】
チルト駆動用プランジャ108は、弾性部材106を少なくとも3つの位置に保持することができる。そして、チルト駆動用プランジャ108は、弾性部材106の保持位置を変えて弾性部材106の撓み長を変えることにより、ウォームギア103をハスバギア102に向かって付勢する圧力を調整することができる。
【0044】
チルト駆動用モーター109は、カメラ支持部材13に設けられた嵌合穴部13cに嵌合され、所定の位置に固定される。チルト駆動用モーター109の回転軸には、プーリ110が圧入されて固定される。プーリ110は、プーリ110とウォームギア103のプーリ部103aとに張り渡されたタイミングベルト111を駆動することで、プーリ部103aを回転させる。つまり、チルト駆動用モーター109は、タイミングベルト111で動力伝達をすることにより、ウォームギア103のプーリ部103aを回転させる。
【0045】
続いて、図4は、パン回転及びチルト回転に関するバックラッシュ除去圧を、撮像光学系レンズユニットのズーム位置やパンチルトカメラ1内部の温度などに応じて制御するための構成を示すブロック図である。
【0046】
カメラユニットとしての撮像光学系レンズユニット10は、被写体を撮像して撮像信号を生成する。また、チルト駆動用プランジャ108は、後述する制御部303の指示を受け、弾性部材106の保持位置を変える。なお、本実施形態では、弾性部材106の保持位置を変える駆動手段としてチルト駆動用プランジャ108を用いているが、これに限るものではない。
【0047】
そして、パン駆動用プランジャ207は、制御部303の指示を受け、弾性部材205の保持位置を変える。なお、本実施形態では、弾性部材205の保持位置を変える駆動手段としてパン駆動用プランジャ207を用いているが、これに限るものではない。
【0048】
チルト駆動用モーター109は、制御部303の指示を受け、撮像光学系レンズユニット10をチルト回転させる。なお、本実施形態では、チルト駆動用モーター109としてステッピングモーターを用いているが、これに限るものではない。
【0049】
パン駆動用モーター208は、制御部303の指示を受け、撮像光学系レンズユニット10をパン回転させる。なお、本実施形態では、パン駆動用モーター208としてステッピングモーターを用いているが、これに限るものではない。
【0050】
温度検出手段としての温度センサ301は、パンチルトカメラ1の内部の温度を検出する。具体的には、温度センサ301は、チルト駆動用モーター109の温度とパン駆動用モーター208の温度とを検出する。
【0051】
記憶部としてのメモリ302は、例えば、不揮発性メモリであり、パン角度とチルト角度とズーム位置とを示す撮像ポジション情報を複数記憶する。また、メモリ302は、人間の目視により撮像画像を認識可能な限界パン回転速度とズーム位置とを対応付けて記憶する。さらに、メモリ302は、人間の目視により撮像画像を認識可能な限界チルト回転速度とズーム位置とを対応付けて記憶する。
【0052】
なお、本実施形態の撮像光学系レンズユニット10には、高倍率ズームレンズが搭載されており、撮像画像を目視で認識可能な限界パン回転速度又は限界チルト回転速度は、ズーム位置によって異なる。
【0053】
さらに、メモリ302は、チルト駆動用モーター109の出力トルクの温度特性データとパン駆動用モーター208の出力トルクの温度特性データとを記憶する。具体的には、メモリ302は、複数の温度範囲それぞれとそれぞれの温度範囲におけるチルト駆動用モーター109の出力トルクとを対応付けて記憶する。また、メモリ302は、複数の温度範囲それぞれとそれぞれの温度範囲におけるパン駆動用モーター208の出力トルクとを対応付けて記憶する。
【0054】
制御部303は、CPUなどで構成されており、パンチルトカメラ1の各部を統括的に制御する。まず、制御部303は、撮像ポジションが指定されたか否かを判定する。例えば、制御部303は、ネットワークを介して接続された外部のカメラ制御装置から、撮像ポジションの指定を受け付けることができ、撮像ポジションの指定を受け付けたか否かを判定する。また、撮像ポジションが指定されたと判定した場合には、指定された撮像ポジションに対応する撮像ポジション情報をメモリ302から読み出す。
【0055】
次に、制御部303は、指定された撮像ポジションへの移動を開始するように、パン駆動用モーター208及びチルト駆動用モーター109及び不図示のズーム駆動用モーターそれぞれに指示する。また、制御部303は、撮像光学系レンズユニット10のズーム位置を検出し、検出したズーム位置に対応する限界パン回転速度及び限界チルト回転速度をメモリ302から取得する。
【0056】
ここで、本発明の実施形態に係る制御部303は、エンコーダ又はポテンションメータ等の位置検出器(不図示)により検出された回転角と回転数とに基づき、撮像光学系レンズユニット10のパン角度及びチルト角度とを検出するものとする。同様に、制御部303は、撮像光学系レンズユニット10のズームレンズの位置を検知し、撮像光学系レンズユニット10のズーム位置を検出するものとする。
【0057】
また、制御部303は、温度センサ301からパンチルトカメラ1内の温度を検出する。この検出した温度に基づき、制御部303は、パン回転及びチルト回転それぞれについて、停止時用バックラッシュ除去圧と高速駆動用バックラッシュ除去圧と低速駆動用バックラッシュ除去圧とを算出する。
【0058】
さらに、制御部303は、パン回転速度が限界パン回転速度を下回っているか否かと、パン回転中であるか否かと、に応じ、バックラッシュ除去圧を切り換えるよう、パン駆動用プランジャ207に指示する。また、制御部303は、チルト回転速度が限界チルト回転速度を下回っているか否かとチルト回転中であるか否かとに応じ、バックラッシュ除去圧を切り換えるよう、チルト駆動用プランジャ108に指示する。
【0059】
続いて、図5と図6とを参照しながら、撮像光学系レンズユニットの現在のズーム位置やパンチルトカメラ1内部の現在の温度等に応じて、パン回転及びチルト回転に関してバックラッシュ除去圧を切り換えるためのバックラッシュ除去圧制御処理について説明する。この処理は、制御部303によって実行される。
【0060】
ステップS701では、制御部303は、撮像ポジションが指定されたか否かを判定する。撮像ポジションが指定されたと制御部303が判定した場合は、ステップS702に進み、撮像ポジションが指定されていないと制御部303が判定した場合は、ステップS701に戻る。
【0061】
ステップS702では、制御部303は、ステップS701で指定された撮像ポジションに対応する撮像ポジション情報をメモリ302から読み出す。
【0062】
ステップS703では、制御部303は、チルト駆動用モーター109とパン駆動用モーター208と不図示のズーム駆動用モーターに指示し、ステップS702で読み出された撮像ポジション情報により示される撮像ポジションへの移動を開始する。
【0063】
ステップS704では、制御部303は、撮像光学系レンズユニット10の現在のズーム位置を検出する。
【0064】
ステップS705では、制御部303は、ステップS704で検出されたズーム位置に対応する限界パン回転速度をメモリ302から取得し、取得した限界パン回転速度をパン回転速度の閾値として決定する。例えば、限界パン回転速度は、撮像光学系レンズユニット10のズームレンズがテレ端に近づくにつれて低速になり、このズームレンズがワイド端に近づくにつれて高速になる。
【0065】
ステップS706では、制御部303は、ステップS704で検出されたズーム位置に対応する限界チルト回転速度をメモリ302から取得し、取得した限界チルト回転速度をチルト回転速度の閾値として決定する。例えば、限界チルト回転速度は、撮像光学系レンズユニット10のズームレンズがテレ端に近づくにつれて低速になり、このズームレンズがワイド端に近づくにつれて高速になる。
【0066】
ステップS707では、制御部303は、パンチルトカメラ1内部の現在の温度を温度センサ301から取得する。具体的には、制御部303は、パン駆動用モーター208の温度とチルト駆動用モーター109の温度とを温度センサ301から取得する。
【0067】
ステップS708では、制御部303は、パン駆動用の高速駆動用バックラッシュ除去圧とパン駆動用の低速駆動用バックラッシュ除去圧とパン駆動用の停止時用バックラッシュ除去圧とを算出する。これら3つのバックラッシュ除去圧は、ステップS707で取得された温度とパン回転に関する負荷トルクの温度特性データとパン駆動用モーター208の出力トルクの温度特性データとに基づき、算出されるものである。
【0068】
また、制御部303は、チルト駆動用の高速駆動用バックラッシュ除去圧とチルト駆動用の低速駆動用バックラッシュ除去圧とチルト駆動用の停止時用バックラッシュ除去圧とを算出する。これら3つのバックラッシュ除去圧は、ステップS707で取得された温度とチルト回転に関する負荷トルクの温度特性データとチルト駆動用モーター109の出力トルクの温度特性データとに基づき、算出されるものである。
【0069】
例えば、制御部303は、温度センサ301により検出された温度が所定の温度範囲よりも低い場合、当該温度範囲よりも高い温度が温度センサ301により検出された場合に算出されるバックラッシュ除去圧よりも高いバックラッシュ除去圧が算出される。一方、制御部303は、温度センサ301により検出された温度が所定の温度範囲よりも高い場合、当該温度範囲よりも低い温度が温度センサ301により検出された場合に算出されるバックラッシュ除去圧よりも低い除去圧が算出される。
【0070】
ステップS709は、制御部303は、パンチルトカメラ1のパン回転速度がステップS706で決定されたパン回転速度の閾値以下であるか否かを判定する。
【0071】
そして、パンチルトカメラ1のパン回転速度が当該閾値以下ではないと制御部303が判定した場合、つまり、パンチルトカメラ1が高速駆動時で駆動速度が優先されるべきと制御部303が判断した場合は、ステップS710に進む。一方、パンチルトカメラ1のパン回転速度がステップS706で決定されたパン回転速度の閾値以下であると制御部303が判定した場合は、ステップS711に進む。
【0072】
ステップS710は、制御部303は、ステップS708で算出されたパン駆動用の高速駆動用バックラッシュ除去圧(パン駆動用の高速駆動用押圧力)になるように、パン駆動用プランジャ207を制御する。
【0073】
ここで、本実施形態におけるパン駆動用の高速駆動用バックラッシュ除去圧は、パン駆動用モーター208のロストルク(動力損失)を抑制可能な圧力であり、ウォームギア202とハスバギア201とのバックラッシュを除去しない、ほぼ無負荷の押圧力である。なお、このロストルクは、ハスバギア201とウォームギア202との間で発生する摺動摩擦に起因するものである。
【0074】
ステップS711は、制御部303は、パンチルトカメラ1がパン回転しているか否かを判定する。具体的には、パン駆動用モーター208が駆動し、撮像光学系レンズユニット10をパン回転させているか否かを制御部303は判定する。
【0075】
そして、パンチルトカメラ1がパン回転していると制御部303が判定した場合、つまり、パンチルトカメラ1が停止直前であり駆動精度が優先されるべきと制御部303が判断した場合は、ステップS712に進む。一方、パンチルトカメラ1がパン回転していないと制御部303が判定した場合は、ステップS713に進む。
【0076】
ステップS712では、制御部303は、ステップS708で算出されたパン駆動用の低速駆動用バックラッシュ除去圧(パン駆動用の低速駆動用押圧力)になるように、パン駆動用プランジャ207を制御する。
【0077】
ここで、パン駆動用の低速駆動用バックラッシュ除去圧は、パンチルトカメラ1の低速駆動時の位置ズレを抑制可能な圧力であり、パン駆動用の高速駆動用バックラッシュ除去圧よりも大きい圧力である。この低速駆動用バックラッシュ除去圧は、パンチルトカメラ1のパン回転速度がステップS706で決定されたパン回転速度の閾値以下である場合に、ハスバギア201とウォームギア202とのバックラッシュを除去することができる圧力である。
【0078】
例えば、本実施形態の低速駆動用バックラッシュ除去圧は、少なくとも、パンチルトカメラ1のうちパン回転する部分の重量と該部分のパン回転速度の変化(加減速)に伴うイナーシャとによるパンチルトカメラ1の位置ズレを抑制することができる圧力である。
【0079】
ステップS713では、制御部303は、ステップS708で算出されたパン駆動用の停止時用バックラッシュ除去圧(パン駆動用の停止時用押圧力)になるように、パン駆動用プランジャ207を制御する。
【0080】
ここで、パン駆動用の停止時用バックラッシュ除去圧は、パンチルトカメラ1の停止時における揺れ及び位置ズレを抑えることができる圧力であり、パン駆動用の低速駆動用バックラッシュ除去圧よりも大きい圧力である。この停止時用バックラッシュ除去圧は、パンチルトカメラ1がパン回転していない場合に、ハスバギア201とウォームギア202とのバックラッシュを除去することができる圧力である。
【0081】
例えば、本実施形態における停止時用バックラッシュ除去圧は、少なくとも、パンチルトカメラ1のうちパン回転する部分の重量及び所定の振動・衝撃などの外力によるパンチルトカメラ1の揺れを抑えることができる圧力である。これにより、特定の撮像ポジションを常時撮像する定点撮像において、外乱による衝撃・振動で撮像画像がぶれることを防止することができる。
【0082】
ステップS714では、制御部303は、パンチルトカメラ1のチルト回転速度がステップS706で決定されたチルト回転速度の閾値以下であるか否かを判定する。
【0083】
そして、パンチルトカメラ1のチルト回転速度が当該閾値以下ではないと制御部303が判定した場合、つまり、パンチルトカメラ1が高速駆動時で駆動速度が優先されるべきと制御部303が判断した場合は、ステップS715に進む。一方、パンチルトカメラ1のチルト回転速度がステップS706で決定されたチルト回転速度の閾値以下であると制御部303が判定した場合は、ステップS716に進む。
【0084】
ステップS715では、制御部303は、ステップS708で算出されたチルト駆動用の高速駆動用バックラッシュ除去圧(チルト駆動用の高速駆動用押圧力)になるように、チルト駆動用プランジャ108を制御する。
【0085】
ここで、チルト駆動用の高速駆動用バックラッシュ除去圧は、チルト駆動用モーター109のロストルク(動力損失)を抑制可能な圧力であり、ハスバギア102とウォームギア103とのバックラッシュを除去しない、ほぼ無負荷の圧力である。なお、このロストルクは、ハスバギア102とウォームギア103との間で発生する摺動摩擦に起因するものである。
【0086】
ステップS716では、制御部303は、パンチルトカメラ1がチルト回転しているか否かを判定する。具体的には、チルト駆動用モーター109が駆動し、撮像光学系レンズユニット10をチルト回転させているか否かを制御部303は判定する。
【0087】
そして、パンチルトカメラ1がチルト回転していると制御部303が判定した場合、つまり、パンチルトカメラ1が停止直前であり駆動精度が優先されるべきと制御部303が判断した場合はステップS717に進む。一方、パンチルトカメラ1がチルト回転していないと制御部303が判定した場合はステップS718に進む。
【0088】
ステップS717では、制御部303は、ステップS708で算出されたチルト駆動用の低速駆動用バックラッシュ除去圧(チルト駆動用の低速駆動用押圧力)になるように、チルト駆動用プランジャ108を制御する。
【0089】
ここで、チルト駆動用の低速駆動用バックラッシュ除去圧は、パンチルトカメラ1の低速駆動時の位置ズレを抑制可能な圧力であり、チルト駆動用の高速駆動用バックラッシュ除去圧よりも大きい圧力である。この低速駆動用バックラッシュ除去圧は、パンチルトカメラ1のチルト回転速度がステップS706で決定されたチルト回転速度の閾値以下である場合に、ハスバギア102とウォームギア103とのバックラッシュを除去することができる圧力である。
【0090】
例えば、本実施形態の低速駆動用バックラッシュ除去圧は、少なくとも、パンチルトカメラ1のチルト回転する部分の重量及び該部分のチルト回転速度の変化(加減速)に伴うイナーシャによるパンチルトカメラ1の位置ズレを抑制することができる圧力である。
【0091】
ステップS718では、制御部303は、ステップS708で算出されたチルト駆動用の停止時用バックラッシュ除去圧(チルト駆動用の停止時用押圧力)になるように、チルト駆動用プランジャ108を制御する。
【0092】
ここで、チルト駆動用の停止時用バックラッシュ除去圧は、パンチルトカメラ1の停止時における揺れ及び位置ズレを抑えることができる圧力であり、チルト駆動用の低速駆動用バックラッシュ除去圧よりも大きい圧力である。この停止時用バックラッシュ除去圧は、パンチルトカメラ1がチルト回転していない場合に、ハスバギア102とウォームギア103とのバックラッシュを除去することができる圧力である。
【0093】
例えば、本実施形態における停止時用バックラッシュ除去圧は、少なくとも、パンチルトカメラ1のチルト回転する部分の重量及び所定の振動・衝撃などの外力によるパンチルトカメラ1の揺れを抑えることができる圧力である。これにより、特定の撮像ポジションを常時撮像する定点撮像において、外乱による衝撃・振動で撮像画像がぶれることを防止することができる。
【0094】
ステップS719では、制御部303は、ステップS701で指定された撮像ポジションへの移動が完了したか否かを判定する。そして、ステップS701で指定された撮像ポジションへの移動が完了したと制御部303が判定した場合は、ステップS701に戻る。また、ステップS701で指定された撮像ポジションへの移動が完了していないと制御部303が判定した場合は、ステップS704に戻る。
【0095】
例えば、制御部303は、撮像光学系レンズユニット10の現在のパン角度とステップS702で読み出された撮像ポジション情報が示すパン角度とが一致するか否かを判定する。また、撮像光学系レンズユニット10の現在のチルト角度とステップS702で読み出された撮像ポジション情報が示すチルト角度と一致するか否かを判定する。さらに、撮像光学系レンズユニット10の現在のズーム位置とステップS702で読み出された撮像ポジション情報が示すズーム位置とが一致するか否かを判定する。
【0096】
そして、制御部303は、パン角度及びチルト角度及びズーム位置の3つ全てが一致すると判定した場合には、ステップS701で指定された撮像ポジションへの移動が完了したと判定する。しかし、制御部303は、パン角度及びチルト角度及びズーム位置のうち、1つでも一致しないと判定した場合は、ステップS701で指定された撮像ポジションへの移動が完了していないと判定する。
【0097】
以上のように、本実施形態では、制御部303は、パン駆動用モーター208が撮像光学系レンズユニット10をパン回転させている場合に、パン駆動用プランジャ207を次のように制御する。すなわち、制御部303は、パン駆動用の高速駆動用バックラッシュ除去圧と、この除去圧よりも大きい圧力であるパン駆動用の低速駆動用バックラッシュ除去圧と、のいずれかの除去圧になるようにパン駆動用プランジャ207を制御する。
【0098】
これにより、パンチルトカメラ1は、高速回転時及び低速回転時それぞれの要求性能を満足することができる。なお、撮像光学系レンズユニット10がチルト回転する場合も同様である。
【0099】
さらに、本実施形態では、制御部303は、撮像光学系レンズユニット10がパン回転する速度が限界パン回転速度を下回っていない場合に、パン駆動用の高速駆動用バックラッシュ除去圧になるように、パン駆動用プランジャ207を制御する。これにより、撮像光学系レンズユニット10がパン方向に高速回転している場合に、撮像光学系レンズユニット10を回転させるために要求されるトルクを小さくすることができる。なお、撮像光学系レンズユニット10がチルト回転する場合も同様である。
【0100】
なお、本実施形態では、パン回転に関する負荷トルクの温度特性データなどに基づき、低速駆動用バックラッシュ除去圧及び停止時用バックラッシュ除去圧を算出したが、これに限るものではない。つまり、パン回転に伴うイナーシャは、撮像光学系レンズユニット10のチルト角度に応じて変化するので、このチルト角度も考慮して、低速駆動用バックラッシュ除去圧及び停止時用バックラッシュ除去圧を算出するように構成しても良い。
【0101】
例えば、パン回転に伴うイナーシャは、パンチルトカメラ1が水平に設置され且つ撮像光学系レンズユニット10が水平な方向に向けられた場合に、最も大きくなる。したがって、この場合におけるパン回転に関する負荷トルクの温度特性データが、メモリ302によって記憶されるパン回転に関する負荷トルクの温度特性データとなるように構成しても良い。この構成は、撮像光学系レンズユニット10に含まれる前玉レンズが大きいほど有効である。
【0102】
続いて、図7を用いて、バックラッシュ除去圧制御処理の一部を異ならせた、本発明の実施形態に係るパンチルトカメラ1の変形例について説明する。ここで、図7は、バックラッシュ除去圧制御処理の一部の変形例を説明するためのものである。なお、本変形例では、上述した実施形態に対応するものと同一の要素には同一符合を付し、その説明を省略する。
【0103】
ステップS708の後、ステップS801では、制御部303は、ステップS701で指定された撮像ポジションに対応するパン角度と撮像光学系レンズユニット10の現在のパン角度との差が所定値以下であるか否かを判定する。つまり、制御部303は、ステップ702で読み出された撮像ポジション情報が示すパン角度と撮像光学系レンズユニット10の現在のパン角度との差が所定値以下であるか否かを判定する。
【0104】
そして、制御部303は、ステップS702で読み出された撮像ポジション情報が示すパン角度と撮像光学系レンズユニット10の現在のパン角度との差が所定値以下ではないと判定した場合、ステップS710に進む。換言すれば、パンチルトカメラ1が高速駆動時で駆動速度が優先されるべきと制御部303が判断した場合は、ステップS710に進む。一方、制御部303は、ステップS702で読み出された撮像ポジション情報が示すパン角度と撮像光学系レンズユニット10の現在のパン角度との差が所定値以下であると判定した場合は、ステップS802に進む。
【0105】
ステップS802では、制御部303は、撮像光学系レンズユニット10のパン方向への回転速度(パン回転速度)が減速中であるか否かを判定する。そして、制御部303は、撮像光学系レンズユニット10のパン方向への回転速度が減速中であると判定した場合には、ステップS711に進み、減速中ではないと判定した場合には、ステップS710に進む。
【0106】
ステップS713の後、ステップS803では、制御部303は、ステップS701で指定された撮像ポジションに対応するチルト角度と撮像光学系レンズユニット10の現在のチルト角度との差が所定値以下であるか否かを判定する。つまり、制御部303は、ステップS702で読み出された撮像ポジション情報が示すチルト角度と撮像光学系レンズユニット10の現在のチルト角度との差が所定値以下であるか否かを判定する。
【0107】
そして、制御部303は、ステップS702で読み出された撮像ポジション情報が示すチルト角度と撮像光学系レンズユニット10の現在のチルト角度との差が所定値以下ではないと判定した場合、ステップS715に進む。換言すれば、パンチルトカメラ1が高速駆動時で駆動速度が優先されるべきと制御部303が判断した場合は、ステップS715に進む。一方、制御部303は、ステップS702で読み出された撮像ポジション情報が示すチルト角度と撮像光学系レンズユニット10の現在のチルト角度との差が所定値以下であると判定した場合は、ステップS804に進む。
【0108】
ステップS804では、制御部303は、撮像光学系レンズユニット10のチルト方向への回転速度(チルト回転速度)が減速中であるか否かを判定する。そして、制御部303は、撮像光学系レンズユニット10のチルト方向への回転速度が減速中であると判定した場合には、ステップS716に進み、減速中ではないと判定した場合には、ステップS715に進む。
【0109】
以上のように、本変形例では、制御部303は、撮像光学系レンズユニット10の現在のパン角度とステップS701で指定された撮像ポジションに対応するパン角度との差が所定値以内であるか否かを判定する。そして、制御部303は、この差が所定値以内であると判定した場合に、パン駆動用の低速駆動用バックラッシュ除去圧になるように、パン駆動用プランジャ207を制御する。
【0110】
撮像光学系レンズユニット10の現在のパン角度と指定された撮像ポジションに対応するパン角度との差が所定値以内、例えば、5度以内であれば、撮像光学系レンズユニット10は、指定された撮像ポジションに対応するパン角度に到達する直前にある。このような場合に、ハスバギア201とウォームギア202との間のバックラッシュが小さくなるので、撮像光学系レンズユニット10は、指定された撮像ポジションに対応するパン角度に高い精度で停止することができる。なお、撮像光学系レンズユニット10がチルト回転する場合も同様である。
【0111】
また、本変形例では、制御部303は、撮像光学系レンズユニット10がパン回転する速度が減速中であるか否かを判定する。そして、制御部303は、パン回転する速度が減速中であると判定した場合に、パン駆動用の低速駆動用バックラッシュ除去圧になるように、パン駆動用プランジャ207を制御することができる。
【0112】
パンチルトカメラ1は、ステップS701で指定された撮像ポジションへ移動する場合、まず、所定の速度に達するまで加速した後、当該指定された撮像ポジション付近まで等速度移動し、その後に減速を開始し、当該指定された撮像ポジションで停止する。したがって、撮像光学系レンズユニット10のパン回転する速度が減速中であれば、撮像光学系レンズユニット10は、ステップS701で指定された撮像ポジションに対応するパン角度に到達する直前にある。
【0113】
このような場合に、ハスバギア201とウォームギア202との間のバックラッシュが小さくなるので、撮像光学系レンズユニット10は、指定された撮像ポジションに対応するパン角度に高い精度で停止することができる。なお、撮像光学系レンズユニット10がチルト回転する場合も同様である。
【0114】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の
実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発
明に含まれる。また、上述した実施形態の一部を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0115】
10 撮像光学系レンズユニット
102 ハスバギア
103 ウォームギア
106 弾性部材
108 チルト駆動用プランジャ
109 チルト駆動用モーター
201 ハスバギア
202 ウォームギア
205 弾性部材
207 パン駆動用プランジャ
208 パン駆動用モーター
303 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを含み、被写体を撮像して撮像信号を出力するカメラユニットと、
ギアから構成され、バックラッシュを有する動力伝達機構と、
前記動力伝達機構を介して前記カメラユニットをパン回転させるパン駆動手段と、
前記ギアを押圧することによって前記バックラッシュを除去するためのバックラッシュ除去手段と、
前記パン駆動手段が前記カメラユニットをパン回転させている場合に、前記バックラッシュを除去しない高速駆動用押圧力と、前記高速駆動用押圧力よりも大きい押圧力であって前記バックラッシュを除去することができる低速駆動用押圧力と、のいずれかの押圧力になるように前記バックラッシュ除去手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記カメラユニットがパン回転する速度が所定の閾値以下であるか否かを判定し、前記速度が前記所定の閾値以下でないと判定した場合に、前記バックラッシュ除去手段の押圧力が前記高速駆動用押圧力になるように前記バックラッシュ除去手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記速度が前記所定の閾値以下であると判定した場合に、前記低速駆動用押圧力になるように前記バックラッシュ除去手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
人間の目視により撮像画像を認識可能な限界パン回転速度と前記レンズのズーム位置とを対応付けて記憶する記憶部を更に有し、
前記制御手段は、前記レンズの現在のズーム位置に対応する前記限界パン回転速度を前記所定の閾値として決定することを特徴とする請求項2又は3に記載の撮像装置。
【請求項5】
外部のカメラ制御装置からパン角度の指定を受け付ける受け付け手段を更に有し、
前記制御手段は、前記カメラユニットの現在のパン角度を検出し、検出したパン角度と前記受け付け手段によって受け付けられたパン角度との差が所定値以内であるか否かを判定し、前記差が所定値以内であると判定した場合に、前記バックラッシュ除去手段の押圧力が前記低速駆動用押圧力になるように前記バックラッシュ除去手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記カメラユニットがパン回転する速度が減速中であるか否かを判定し、前記速度が減速中であると判定した場合に、前記バックラッシュ除去手段の押圧力が前記低速駆動用押圧力になるように前記バックラッシュ除去手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記パン駆動手段が前記カメラユニットをパン回転させていない場合に、前記低速駆動用押圧力よりも大きい押圧力であって前記バックラッシュを除去する停止時用押圧力になるように前記バックラッシュ除去手段を制御することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記パン駆動手段の温度を検出する温度検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記温度検出手段で検出された温度に基づいて、前記高速駆動用押圧力及び前記低速駆動用押圧力及び前記停止時用押圧力それぞれを算出することを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記高速駆動用押圧力は、前記バックラッシュで発生する摩擦に起因する前記パン駆動手段の動力損失を抑制可能な押圧力であり、
前記低速駆動用押圧力は、前記撮像装置のうちパン回転する部分の重量と該部分の加減速に伴うイナーシャとによる前記撮像装置の位置ズレを抑制可能な押圧力であり、
前記停止時用押圧力は、前記重量と所定の外力とによる撮像装置の揺れを抑制可能な押圧力であることを特徴とする請求項7又は8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記動力伝達機構は、前記カメラユニットにパン駆動手段の駆動力を伝達するハスバギアと該ハスバギアに噛合されるウォームギアとを含み、
前記バックラッシュ除去手段は、前記ウォームギアを前記ハスバギアに押し付ける方向に押圧することによって前記バックラッシュを除去することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
レンズを含み、被写体を撮像して撮像信号を出力するカメラユニットと、ギアから構成され、バックラッシュを有する動力伝達機構と、前記動力伝達機構を介して前記カメラユニットをパン回転させるパン駆動手段と、前記ギアを押圧することによって前記バックラッシュを除去するためのバックラッシュ除去手段と、を備える撮像装置の制御方法であって、
前記パン駆動手段が前記カメラユニットをパン回転させている場合に、前記バックラッシュを除去しない高速駆動用押圧力と、前記高速駆動用押圧力よりも大きい押圧力であって前記バックラッシュを除去することができる低速駆動用押圧力と、のいずれかの押圧力になるように前記バックラッシュ除去手段を制御する制御ステップを有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項12】
レンズを含み、被写体を撮像して撮像信号を出力するカメラユニットと、
ギアから構成され、バックラッシュを有する動力伝達機構と、
前記動力伝達機構を介して前記カメラユニットをチルト回転させるチルト駆動手段と、
前記ギアを押圧することによって前記バックラッシュを除去するためのバックラッシュ除去手段と、
前記チルト駆動手段が前記カメラユニットをチルト回転させている場合に、前記バックラッシュを除去しない高速駆動用押圧力と、前記高速駆動用押圧力よりも大きい押圧力であって前記バックラッシュを除去することができる前記低速駆動用押圧力と、のいずれかの押圧力になるように前記バックラッシュ除去手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
レンズを含み、被写体を撮像して撮像信号を出力するカメラユニットと、ギアから構成され、バックラッシュを有する動力伝達機構と、前記動力伝達機構を介して前記カメラユニットをチルト回転させるチルト駆動手段と、前記ギアを押圧することによって前記バックラッシュを除去するためのバックラッシュ除去手段と、を備える撮像装置の制御方法であって、
前記チルト駆動手段が前記カメラユニットをチルト回転させている場合に、前記バックラッシュを除去しない高速駆動用押圧力と、前記高速駆動用押圧力よりも大きい押圧力であって前記バックラッシュを除去することができる前記低速駆動用押圧力と、のいずれかの押圧力になるように前記バックラッシュ除去手段を制御する制御ステップを有することを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−225949(P2012−225949A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90413(P2011−90413)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】