説明

撮像装置

【課題】高い解像度及び色再現精度を維持しつつ、一層安価に製造される撮影装置を実現する。
【解決手段】本発明は、輝度と色とを分離することを基本思想とする。撮影レンズ(1)を介して入射した光は、ビームスプリッタ(2)により第1及び第2の光路(12a,12b)を伝搬する光に分割する。第1の光路には、高解像度の第1の撮像素子(14)を配置し、高解像度輝度信号を発生する。第2の光路には、第1の撮像素子よりも低い解像度の第2の撮像素子(18)を配置し、この第2の撮像素子から低解像度のRGB色信号を発生する。高解像度輝度信号及び低解像度色信号は、映像信号処理回路(15)に供給し、この映像信号処理回路において、内挿処理を行って高解像度色信号を形成する。高解像度の撮像素子を1枚だけしか用いていないため、高い解像度及び色再現性を維持しつつ、製造コストを一層安価にできると共に偽色の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影レンズから出射した光について輝度と色とを分離し、高解像度で色再現精度の高い映像出力を形成できる撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の放送用ビデオカメラの構成を図1に示す。被写体の像を撮影する撮影レンズ1の後段に色分解プリズム2が配置され、撮像レンズから出射した光はRGBの光に分解される。色分解プリズム2の各所定の位置に、RGBの光をそれぞれ受光してRGBの色信号をそれぞれ出力する3つの撮像素子3R、3G及び3Bが配置される。3個の撮像素子から出力される色信号は映像信号処理回路4に供給され、輝度信号及び色差信号が作成される。この従来の撮像装置において、高解像度のN×M画素の画像を必要とする場合、RGB用にN×M画素の3個の高解像度の撮像素子を用意し、これらの撮像素子を高精度に位置合わせして組み合わされている。
【0003】
別の従来の撮像装置の構成を図2に示す。撮影レンズ1の出射側にベイヤ方式(Bayer方式)の色フィルタ5と、色フィルタからの出射光を受光してRGBの色信号を出力する単一の撮像素子6とを有し、撮像素子6から出力されたRGBの色信号を映像信号処理回路4に供給している。この既知の撮像装置は、N×M画素の単一の撮像素子と同一画素数の色フィルタとを用いてRGB共にN×M画素の画像を出力する利点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1に示す従来の撮像装置においては、高解像度の映像信号を得るためには、高解像度の3個の撮像素子を設ける必要があり、しかも3個の撮像素子を相互に高精度に組み込まなければならず、組み立て作業が煩雑になり、製造コストが高価になる欠点がある。
また、図2に示す従来の撮像装置は、偽色が発生し易く、特に細かな模様を含む被写体の画像を撮像する場合実際とは異なる色の模様が生じる欠点がある。さらに、高解像度の画像を得るためには、撮像素子及び色フィルタ自体を高解像度化する必要があるだけでなく、色フィルタと撮像素子とを貼り合わす際極めて高い位置決め精度が要求される欠点がある。このような欠点は、解像度を高くするにしたがって一層顕著になる。
【0005】
本発明の目的は、上述した欠点を解消し、高い解像度及び色再現精度を維持しつつ、一層安価なコストで製造される撮像装置を実現することにある。
本発明の別の目的は、解像度を高くしても偽色の発生が抑制された撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による撮像装置は、被写体を撮影する撮影レンズと、撮影レンズから出射した光を第1の光路を伝搬する光と第2の光路を伝搬する光とに分割するビームスプリッタと、前記第1の光路に配置され、高解像度輝度信号を出力する高解像度の第1の撮像手段と、前記第2の光路に配置され、前記輝度信号の解像度よりも低い解像度の色信号を出力する低解像度の第2の撮像手段と、前記高解像度輝度信号及び低解像度色信号を受け取り、前記高解像度輝度信号の解像度に等しい高解像度の色信号を出力する映像信号処理回路とを具えることを特徴とする。
【0007】
人間の視覚では、輝度成分に対して解像度が高いが、色の差に関しては輝度よりも低い解像度で十分である。そのため、撮像装置が高解像度の輝度と低解像度の色を撮影できるのであれば、視覚的に問題が生ずることはない。このような撮像装置が実現できれば、効率的で安価に製造することができる。しかし、従来の撮像装置はRGBの色信号から色と輝度を再現するため、必要以上に高解像度の撮像素子と高精度な製造技術を必要としている。
本発明は、このような認識に立脚しており、輝度と色とを分離し、高解像度の第1の撮像手段により高解像度輝度信号を発生させ、低解像度の第2の撮像手段により低解像度色信号を発生させる。そして、映像信号処理回路において、高解像度輝度信号を用いて低解像度色信号を高解像度色信号に変換する。このように構成することにより、高解像度の撮像素子が1枚だけで済むため、高い解像度及び色再現性を維持しつつ、製造コストを一層安価にすることができる。特に、色信号を発生する撮像素子の解像度は、輝度信号を発生させる撮像素子の解像度の縦横共に1/4程度にすることが可能であるため、組み立て精度の要件が緩和されると共に製造コストが一層安価になる。しかも、偽色の発生を大幅に抑制することができる。
【0008】
本発明による撮像装置の好適実施例は、第2の撮像手段を、R,G,Bの色信号を出力する単一の撮像素子で構成し、前記ビームスプリッタと前記単一の撮像素子との間に光学ローパスフィルタと色フィルタとを配置したことを特徴とする。
【0009】
本発明による撮像装置の別の好適実施例は、第2の撮像手段は、前記ビームスプリッタから出射した光をR,G,Bの光に分解する色分解光学系と、色分解されたR,G,Bの光をそれぞれ受光して低解像度のR,G,Bの色信号をそれぞれ出力する3つの撮像素子とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明による撮像装置の好適実施例は、映像信号処理回路は、前記低解像度色信号から低解像度の輝度信号を作成する手段と、低解像度色信号と低解像度輝度信号との比を表す信号を形成する手段と、当該比を表す信号について内挿処理を実行し、前記高解像度輝度信号の解像度に等しい高解像度の信号に変換する手段と、当該高解像度の信号に前記高解像度輝度信号を乗算する手段とを具えることを特徴とする。尚、本例においては、低解像度色信号について内挿処理を実行してから低解像度輝度信号で除算することも可能である。
【0011】
本発明による撮像装置の別の好適実施例は、低解像度色信号を発生する第2の撮像手段と前記映像信号処理回路との間に色補正手段を設け、色補正された低解像度色信号を前記映像信号処理回路に供給することを特徴とする。本例では、低解像度色信号について色補正するため、色補正回路の負荷を軽減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、被写体からの光を輝度と色とに分離し、高解像度の撮像素子から輝度信号を発生させ、低解像度の撮像素子から色信号を発生させ、映像信号処理回路において低解像度色信号を高解像度輝度信号と同一の解像度(同一の画素数)の高解像度色信号に変換しているので、高い解像度及び色再現性を維持しつつ製造コストを一層安価にすることができ、偽色の発生も抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図3は本発明による撮像装置の一例を示す線図である。被写体から発生した光は、撮影レンズ10を介して、ビームスプリッタ11に入射する。ビームスプリッタ11は、被写体からの光を第1の光路12aを伝搬する光と第2の光路12bを伝搬する光とに分割する。第1の光路には高解像度輝度信号を発生させる第1の撮像手段を設け、第2の光路には低解像度のRGB色信号を発生させる第2の撮像手段を設ける。
【0014】
第1の光路12aには、比視感度曲線にしたがったフィルタリング特性を有する輝度用のフィルタ13及び第1の撮像素子14を配置する。第1の撮像素子14は高い解像度を有し、その出力信号は高解像度の輝度信号として映像信号処理回路15に供給する。第2の光路12bには、光学ローパスフィルタ(光学LPF)16、色フィルタ17及び第2の撮像素子18を順次配置する。第2の撮像素子18は、第1の撮像素子14よりも低い解像度、例えば画素数が垂直方向及び水平に1/2の画素数を有する撮像素子とし、当該第2の撮像素子からRGBの各チャンネルの低解像度RGB色信号を発生して映像信号処理回路15に供給する。光学LPF16は、被写体からの光のうち高周波数成分を減衰させる作用を果たし、例えば第2の撮像素子18の解像度の半分の解像度に対応する周波数以上の周波数成分を取り除く。また、色フィルタ17は第2の撮像素子と同一の解像度を有し、例えばベイヤ方式の色フィルタとすることができる。
【0015】
図4は映像信号処理回路の一例を示す線図である。高解像度の第1の撮像素子14の画素数をN×Mとし、低解像度の第2の撮像素子18の各RGBチャンネルに対応する画素数をn×mとする(N>n,M>m)。また、第1の撮像素子から出力される高解像度輝度信号をYNMとし、第2の撮像素子から出力される低解像度色信号をRnm、Gnm及びBnmとする。
【0016】
第2の撮影素子18から出力される低解像度色信号Rnm、Gnm及びBnm は輝度信号作成回路20に入力する。輝度信号作成回路20において、低解像度色信号Rnm、Gnm及びBnm を用いて低解像度の輝度信号Ynm を作成する。ここで、輝度信号YnmとRGB色信号とは式(1)に示す関係にあり、輝度信号作成回路20は、式(1)に基づいて変換を行う。尚、式(1)において、係数C、C及びCは輝度信号を比視感度曲線に整合させるための重み付け因子であり、RGB色信号の重み付け因子である。
nm=C・Rnm +C・Gnm+C・Bnm (1)
【0017】
また、低解像度RGB色信号は除算器21a、21b及び21cにも供給され、この除算器において、各低解像度RGB色信号を低解像度輝度信号Ynmで除算し、式(2)で表される値の信号、すなわち低解像度色信号の低解像度輝度信号に対する比をそれぞれ出力する。尚、輝度信号Ynmが零の場合、値が不定になるため、式(2)ではYnmが零の場合零とする。ここで、式(2)により表される低解像度色信号の低解像度輝度信号に対する比を比率信号と称することにする。
nm/Ynm 、Gnm/Ynm 、Bnm/Ynm (2)
除算器21a〜21cから出力される低解像度の比率信号は、内挿回路22a〜22cに供給する。内挿回路22a〜22cは、第1及び第2の撮像素子14及び18の画素数に関する情報を用いて低解像度の比率信号について内挿処理を行い、n×m画素からN×M画素へ、すなわち第1の撮像素子14の解像度と同一の解像度(同一の画素数)に変換する。ここで、内挿変換された高解像度の比率信号は、[R]NM[G]NM及び[B]NMで表示する。
【0018】
次に、乗算器23a〜23cを用いて、信号[R]NM、[G]NM及び[B]NM について輝度信号YNMをそれぞれ乗算し、式(3)で示され第1の撮像素子の解像度と同一解像度(第1の撮影素子の画素数と等しい画素数)の色信号RNM、GNM及びBNM をそれぞれ形成する。
NM=[R]NM×YNM
NM=[G]NM×YNM (3)
NM=[B]NM×YNM
【0019】
次に、本発明による映像信号処理回路の作用について説明する。説明に際し、図5に示す縦縞のパターンを撮影する場合を想定する。式(1)の係数C,C,Cをそれぞれ0.3,0.7及び0.1とする。図4の各回路からの出力信号のレベルを図6に示す。図6(a)は第1の撮像素子14から出力される高解像度輝度信号YNMのレベルを示す。第1の撮像素子に入射する光は輝度フィルタ13によりフィルタリングされているため、RGBの光は、それぞれ信号レベル0.3、0.7及び0.1となる。
【0020】
図6(b)〜(d)は低解像度の第2の撮像素子から出力される低解像度色信号Rnm、Gnm及びBnm のレベルをそれぞれ示す。第2の撮像素子からの出力信号は光学LPF16の影響により信号レベルの変化が緩やかである。
【0021】
図6(e)は、輝度信号作成回路20から出力される低解像度の輝度信号Ynmのレベルを示す。
【0022】
図6(f)〜(h)は除算器21a〜21cから出力される低解像度の比率信号のレベルを示す。
【0023】
図6(i)〜(k)は、乗算器23a〜23cで高解像度輝度信号が乗算された後の高解像度のRGB色信号RNM、GNM及びBNM のレベルを示す。このように、本発明による映像信号処理回路から第1の撮像素子と同一解像度の高解像度色信号を出力することができ、すなわち、RGB用の3個の高解像度の撮像素子を用いる撮像装置で得られる色信号と同一解像度の色信号を出力することができる。
【0024】
尚、上述した実施例では、低解像度の撮像素子から出力される低解像度色信号を除算器で除算してから内挿処理を実行したが、内挿処理を実行してから除算処理を行ってもよい。また、高解像度の第1の撮像素子14から出力される輝度信号をそのまま用いてモノクロカメラとして使用することも可能である。さらに、低解像度の第2の撮像素子18から出力される低解像度色信号を用いて低解像度の色差信号を形成することも可能である。さらに、低解像度の第2の撮像素子からの出力信号をRGBの3チャンネルの信号としたが、色再現の精度を上げるため、4色、6色等に設定することも可能である。
【0025】
さらに、上述した実施例では、高解像度輝度信号を発生する第1の撮像素子の前面に輝度用のフィルタ13を用いたが、必ずしも当該フィルタを用いなくても良い。輝度用のフィルタを用いない場合、RGBの重み付けは全て同等になるので、式(1)の係数は全て1とする。また、輝度用のフィルタの特性が輝度と異なっていてもRGBの色信号を出力するのであれば、原理的に問題となることはない。
【0026】
図7は本発明による撮像装置の変形例を示す線図である。本例では、低解像度のRGB色信号を発生させる第2の撮像手段として、色分解プリズム30と、色分解プリズムの所定の位置に配置したRGB用の3個の低解像度の撮像素子31a〜31cを用いる。これら3個の撮像素子から低解像度のRGB色信号を映像信号処理回路15に供給する。本例においても、RGB色信号発生用の3個の撮像素子として、低解像度の撮像素子を用いることができ、組み立て作業が容易になると共に製造コストが一層安価になる。
【0027】
図8は、本発明による撮像装置の別の変形例を示す線図である。本例では、低解像度のRGB色信号を発生する第2の撮像手段と映像信号処理回路との間に色補正回路40を設ける。映像信号処理回路の前段に色補正回路を設けることにより、低解像度の色信号について色補正することができ、色補正回路の負荷を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来の撮像装置の構成を示す線図である。
【図2】従来の撮像装置の構成を示す線図である。
【図3】本発明による撮像装置の一例を示す線図である。
【図4】映像信号処理回路の一例を示す線図である。
【図5】本発明による信号処理を説明するための被写体パターンを示す線図である。
【図6】映像信号処理回路の各部分での信号レベルを示す線図である。
【図7】本発明による撮像装置の変形例を示す線図である。
【図8】本発明による撮像装置の別の変形例を示す線図である。
【符号の説明】
【0029】
1,10 撮影レンズ
2 色分解プリズム
3R,3G,3B
4,15 映像信号処理回路
11 ビームスプリッタ
12a,12b 第1及び第2の光路
13 輝度用フィルタ
14 第1の撮像素子
16 光学LPF
17 色フィルタ
18 第2の撮像素子
20 輝度信号作成回路
21a〜21c 除算器
22a〜22c 内挿回路
23a〜23c 乗算器
30 色分解プリズム
31a〜31c 低解像度撮像素子
40 色補正回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮影する撮影レンズと、撮影レンズから出射した光を第1の光路を伝搬する光と第2の光路を伝搬する光とに分割するビームスプリッタと、前記第1の光路に配置され、高解像度輝度信号を出力する高解像度の第1の撮像手段と、前記第2の光路に配置され、前記輝度信号の解像度よりも低い解像度の色信号を出力する低解像度の第2の撮像手段と、前記高解像度輝度信号及び低解像度色信号を受け取り、前記高解像度輝度信号の解像度に等しい高解像度の色信号を出力する映像信号処理回路とを具えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第2の撮像手段を、R,G,Bの色信号を出力する単一の撮像素子で構成し、前記ビームスプリッタと前記単一の撮像素子との間に光学ローパスフィルタと色フィルタとを配置したことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第2の撮像手段は、前記ビームスプリッタから出射した光をR,G,Bの光に分解する色分解光学系と、色分解されたR,G,Bの光をそれぞれ受光して低解像度のR,G,Bの色信号をそれぞれ出力する3つの撮像素子とを有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記映像信号処理回路は、前記低解像度色信号から低解像度の輝度信号を作成する手段と、前記低解像度色信号と低解像度輝度信号との比を表す信号を形成する手段と、当該比を表す信号について内挿処理を実行し、前記高解像度輝度信号の解像度に等しい高解像度の信号に変換する手段と、当該高解像度の信号に前記高解像度輝度信号を乗算する手段とを具えることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の撮影装置。
【請求項5】
前記低解像度色信号を発生する第2の撮像手段と前記映像信号処理回路との間に色補正手段を設け、色補正された低解像度色信号を前記映像信号処理回路に供給することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−246295(P2006−246295A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61952(P2005−61952)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】