説明

撮像装置

【課題】低画質や不具合が発生した趣のある、あるいは遊び心がある画像を容易に、あるいは意図的に撮影できる機能を持った撮像装置を提供すること。
【解決手段】被写体像の撮像を行う撮像手段と、前記撮像手段で得られた画像信号を処理する信号処理手段と、を備えた撮像装置であって、前記信号処理手段が、当該撮影にて得られた画像信号と、その前までに撮影された画像信号と、を複数の条件に従い合成し、前記複数の条件の設定値のうち少なくとも一つの設定値を、撮影のたびにランダムに変化させて設定することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は銀塩フィルムカメラ、デジタルカメラ、ムービーカメラなどの撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、すべての銀塩フィルムカメラやデジタルカメラはより良い撮影結果を得るために技術的に進歩してきた(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、ピントの合った画像、露光の適切な画像、ブレのない画像、色調バランスの適切な画像を得ることであり、あるいは1回の撮影で1枚の画像が得られ、画面上で均一な露光の画面を得ることである。
【0003】
しかし、その一方で価値観の多様化により、低品質で信頼性の低い銀塩フィルムカメラを使って、画質が悪い画像を趣のある、あるいは遊び心のあるものとして撮影することもひとつの分野として確立されつつある。例えば、ピントのボケた画像、露光不足または露光オーバーな画像、ブレた画像、色調バランスが崩れた画像、あるいはそれらが組み合わされた画像などである。
【0004】
同様に、撮影装置のハード的なトラブルに起因する不具合が発生した画像も趣のある、あるいは遊び心のあるものとして積極的に撮影されている。例えば、多重露光された画像、コマ重なりのある画像、光線漏れのある画像、あるいはそれらが組み合わされた画像などである。
【0005】
【特許文献1】特開2001−257977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように積極的に撮影しようとしている画像は、単に低画質や不具合が発生していればよいわけではなく、低画質の程度や不具合発生の程度が適当な範囲内に抑えられて鑑賞に堪える絵となっている必要があった。そのためには、撮影装置の使用者があるレベルの撮影技術や撮影装置に関する知識を持っている必要があり、簡単に撮影できるものではなかった。また、撮影技術や知識を駆使しても趣のある、あるいは遊び心のある画像が必ず得られるわけではなかった。
【0007】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、低画質や不具合が発生した趣のある、あるいは遊び心がある画像を容易に、あるいは意図的に撮影できる機能を持った撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために提供する本発明の撮像装置は、下記(1)〜(9)の技術的特徴を備える。
(1):被写体像の撮像を行う撮像手段と、前記撮像手段で得られた画像信号を処理する信号処理手段と、を備えた撮像装置であって、前記信号処理手段が、当該撮影にて得られた画像信号と、その前までに撮影された画像信号と、を複数の条件に従い合成し、前記複数の条件の設定値のうち少なくとも一つの設定値を、撮影のたびにランダムに変化させて設定することを特徴とする撮像装置である。
【0009】
(2):乱数生成手段を備え、前記乱数生成手段により生成された乱数に基づいて、前記条件の設定値のうち少なくとも一つの設定値を、撮影のたびにランダムに変化させて設定することを特徴とする上記(1)に記載の撮像装置である。
【0010】
(3):前記複数の条件の設定値が、合成する枚数の設定、合成する撮影信号の設定、重ねる位置の設定のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の撮像装置である。
【0011】
(4):光源を備え、前記光源からの光を前記撮像手段の感光面に導いて撮像を行うことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1に記載の撮像装置である。
【0012】
(5):前記光源が、AF補助光用の光源、ストロボ、日付写し込み用の光源のいずれかを含むことを特徴とする上記(4)に記載の撮像装置である。
【0013】
(6):前記複数の条件の設定値が、前記光源からの光の強さ、前記光源からの光の入る位置、前記光源からの光の入る角度のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする上記(4)または(5)に記載の撮像装置である。
【0014】
(7):前記複数の条件のうち、撮影のたびにランダムに変化させて設定値を設定する条件を、ランダムに選択することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1に記載の撮像装置である。
【0015】
(8):前記複数の条件のうち、撮影のたびにランダムに変化させて設定値を設定する条件を、使用者が選択できることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1に記載の撮像装置である。
【0016】
(9):撮影のたびにランダムに変化させて設定値を設定する条件同士の重みを、使用者が設定できることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1に記載の撮像装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の撮像装置によれば、使用者が思いがけない、意外性のある画質低下効果や不具合発生効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係る撮像装置の一実施の形態における構成について図面を参照して説明する。
ここではオートフォーカス(AF)機能、オートアイリス(AE)機能、手ブレ補正機能、オートホワイトバランス機能(AWB)を有するデジタルスチルカメラである本発明の撮像装置の構成を前提に説明するが、本発明が適用される対象はこれに限定されるものではなく、前記機能のうち少なくとも1つを備えている撮像装置(一眼レフカメラ、ビデオカメラなど)であればよい。また、上記オートフォーカス(AF)機能、オートアイリス(AE)機能、手ブレ補正機能、オートホワイトバランス機能(AWB)は従来公知の技術でよい。なお、ここでいうデジタルスチルカメラは、撮像手段として光学レンズ系と絞りと撮像素子(CCD)とを有しており、当該スチルカメラに設けられたレリーズボタンが2段階押されることによりシャッターが動作し、所定の撮影条件に設定された光学系レンズと絞りとを介して被写体像が撮像素子上に結像される構成である。また、シャッターボタンの第1段階の押し下げにより外光の明るさを測定する測光手段、被写体までの距離を測定する測距手段などを備えている。さらに、撮像手段で得られた画像信号を処理する相関二重サンプル部、オートゲインコントロール部、A/D変換部、デジタル信号処理部を有する公知の信号処理手段を備えている。
【0019】
図1は本発明に係る撮像装置であるデジタルスチルカメラにおける、低画質モード時の操作及び撮影制御の流れを示すフローチャートである。
以下、図1に基づき構成・動作を説明する。
低画質撮影モードとする場合、デジタルスチルカメラのモード切り替え部を操作することにより撮影制御システムが通常の自動撮影モードから低画質モードに切り替えられるようにすればよい。また、電源投入後直ちに低画質モードになるように構成しても何ら問題はない。低画質モードに切り替える際に、自動低画質モード・ランダム低画質モード・マニュアル低画質モードの選択が可能になっている。あるいは、個々の製品に応用する際にはいずれかの低画質モードのみを採用しても問題はない。
以下、それぞれの低画質モードを説明する。
【0020】
(1)自動低画質モード
自動低画質モードが選択されると、ランダム低画質モード及びマニュアル低画質モードのいずれもがOFFとなった状態で撮影システムが制御される。
撮影にあたって、使用者がシャッターボタンを半押し(第1段階の押し下げ)することによりファーストレリーズRL1がONになり(S101)、測距手段、測光手段、ブレ検出などの自動機構のセンサーにより被写体までの距離、外光の明るさなどの測定、検出が行われる(S102)。
その測定、検出結果に基づいて適正値(被写界深度L、EV値E、像面速度V、色温度W)が決定される(S103)。
【0021】
この適正値のうち、被写界深度Lは、被写体までの距離などから求められる被写界深度の近点LNから遠点LFまでの範囲をもつものである。詳しくは、被写界深度の近点LN、遠点LFは次の式で求められる。
N=(OD’*OD)/(OD’+OD) … (1)
F=(OD’*OD)/(OD’−OD) … (2)
ただし、ODは物体距離、FLは撮影レンズの焦点距離、Fは撮影する際のレンズの最適絞り値、δは許容錯乱円径、OD’=(FL*FL/(δ*F))*ODである。また、像面速度Vは、像点の像面に平行な速度成分(mm/sec)である。
【0022】
ついで、低画質モードON(S104)、ランダムモードOFF(S105)の状態が確認されることによって、次の式(3)〜(6)において定数a=1、b=1、c=1、d=1となり、AFシフト量SAF、AEシフト量SAE、ブレ補正の補正係数K、AWBシフト量SAWBが決定される(S107)。
【0023】
AF=K1*a=K1 … (3)
AE=K2*b=K2 … (4)
K=K3*c=K3 … (5)
AWB=K4*d=K4 … (6)
【0024】
なお、このときのK1〜K4の値は、撮影前に予め設定されている定数であり、撮影制御システムによって自動的に設定されるものである。あるいは、使用者による定数テーブルからの選択あるいは数値入力によって設定されるようにしてもよい。
【0025】
つぎに、マニュアルモードOFF(S108)の状態が確認されることによって、次の式(7)〜(10)に従い、被写界深度L1、EV値E1、像面速度V1、色温度W1の撮影条件が算出される(S110)。
【0026】
L1=L+K1 … (7)
E1=E+K2 … (8)
V1=V+K3 … (9)
W1=W+K4 … (10)
【0027】
その後、フォーカスやアイリスを上記式(7)〜(9)に基づく撮影条件にするためにスチルカメラの鏡胴やシャッターの絞りなどの撮像機構が駆動し調整されて撮影準備状態となる(S111)。
使用者がシャッターボタンを更に押すこと(第2段階の押し下げ)によりセカンドレリーズRL2がONになると(S112)、所定の撮影条件で被写体像がCCD上に露光される(S113)。撮像された画像データは信号処理手段において前記算出された色温度W1に基づいてホワイトバランス調整が行われ、その他の所定の信号処理が施される。信号処理後の画像データがデジタルスチルカメラ装備の液晶画面に表示され、必要に応じてメモリなどに記録されて撮影が終了する。
上記の説明では、撮影条件(被写界深度L1、EV値E1、像面速度V1、色温度W1)すべてが設定され、撮影される場合であったが、これらの撮影条件の1つのみ、あるいは任意の組み合わせの撮影条件が自動的に、または使用者の意思で選択され、その他の撮影条件は適正値の条件が設定されるようにしてもよい。
なお、フォーカスやアイリスなどの駆動はセカンドレリーズRL2がONになった後に行われてもよい。
上記撮影制御システムでは、自動機構のセンサーが測定した結果に基づいて算出された適正値から所定の大きさだけずらされた撮影条件とするものであり、ある一定の低画質の画像が安定して得られるものである。
【0028】
(2)ランダム低画質モード
ランダム低画質モードを選択した場合には、上記の画質を低下させる個々の要素とその効果の重さの組み合わせが撮影毎に変化するようにつぎのように制御される。
撮影にあたって、ファーストレリーズRL1のONにより(S101)、自動機構のセンサーの測定、検出が行われ(S102)、適正値(被写界深度L、EV値E、像面速度V、色温度W)が決定される(S103)までは自動低画質モードと同じある。
【0029】
ついで、低画質モードON(S104)、ランダムモードON(S105)の状態が確認されることによって、定数a〜dそれぞれについて、定数a〜dそれぞれで決められている数値範囲内で乱数発生に基づいた数値が設定される(S106)。AFシフト量SAF、AEシフト量SAE、ブレ補正の補正係数K、AWBシフト量SAWBが次式(11)〜(14)に従い決定される(S107)。これにより、各シフト量、係数は撮影のたびにランダムに変化する。
【0030】
AF=K1*a … (11)
AE=K2*b … (12)
K=K3*c … (13)
AWB=K4*d … (14)
【0031】
なお、このときのK1〜K4の値は、撮影前に予め設定されている定数であり、撮影制御システムによって自動的に設定されるものである。あるいは、使用者による定数テーブルからの選択あるいは数値入力によって設定されるようにしてもよい。
【0032】
つぎに、マニュアルモードOFF(S108)の状態が確認されることによって、次の式(15)〜(18)に従い、被写界深度L1、EV値E1、像面速度V1、色温度W1の撮影条件が算出される(S110)。
【0033】
L1=L+K1*a … (15)
E1=E+K2*b … (16)
V1=V+K3*c … (17)
W1=W+K4*d … (18)
【0034】
その後、フォーカスやアイリスを上記式(15)〜(17)に基づく撮影条件にするためにスチルカメラの鏡胴やシャッターの絞りなどの撮像機構が駆動し調整されて撮影準備状態となる(S111)。
使用者がシャッターボタンを更に押すこと(第2段階の押し下げ)によりセカンドレリーズRL2がONになると(S112)、所定の撮影条件で被写体像がCCD上に露光される(S113)。撮像された画像データは信号処理手段において前記算出された色温度W1に基づいてホワイトバランス調整が行われ、その他の所定の信号処理が施される。信号処理後の画像データがデジタルスチルカメラ装備の液晶画面に表示され、必要に応じてメモリなどに記録されて撮影が終了する。
上記の説明では、撮影条件(被写界深度L1、EV値E1、像面速度V1、色温度W1)すべてが設定され、撮影される場合であったが、これらの撮影条件の1つのみ、あるいは任意の組み合わせの撮影条件が自動的にランダムに、または使用者の意思で選択され、その他の撮影条件は適正値の条件が設定されるようにしてもよい。
上記ランダム低画質モードでは、撮影のたびに画質が一定しない低画質の画像が得られ、使用者が思いがけない、意外性のある画質低下効果が得られる可能性が大きくなる。なお、自動低画質モードのように全体の効果の強弱を使用者が選択できるようにしても良い。
【0035】
(3)マニュアル低画質モード
マニュアル低画質モードの場合は、撮影条件個々の項目の動作と効果の重みを使用者の意志で選択できるように構成されている。
この場合、図1において撮影開始からステップS107までは上記操作、動作内容と同じであり、自動低画質モード、ランダム低画質モードいずれのモードであってもよい。ステップ108以降の動作内容について説明する。
【0036】
マニュアルモードON(S108)の状態が確認されることによって、使用者により設定された定数a〜dを式(11)〜(14)に当てはめて、AFシフト量SAF、AEシフト量SAE、ブレ補正の補正係数K、AWBシフト量SAWBが決定される(S109)。定数a〜dの設定はマニュアルモードON(S108)の状態が確認された時点(撮影の途中)で行われてもよいが、撮影前のマニュアル低画質モード選択のときに設定されるようにしてもよい。ついで、使用者により設定された定数a〜dが用いられた式(11)〜(14)式が当てはめられた式(15)〜(18)に従い、被写界深度L1、EV値E1、像面速度V1、色温度W1の撮影条件が算出される(S110)。
【0037】
その後、フォーカスやアイリスを上記式(15)〜(17)に基づく撮影条件にするためにスチルカメラの鏡胴やシャッターの絞りなどの撮像機構が駆動し調整されて撮影準備状態となる(S111)。
使用者がシャッターボタンを更に押すこと(第2段階の押し下げ)によりセカンドレリーズRL2がONになると(S112)、所定の撮影条件で被写体像がCCD上に露光される(S113)。撮像された画像データは信号処理手段において前記算出された色温度W1に基づいてホワイトバランス調整が行われ、その他の所定の信号処理が施される。信号処理後の画像データがデジタルスチルカメラ装備の液晶画面に表示され、必要に応じてメモリなどに記録されて撮影が終了する。
上記の説明では、撮影条件(被写界深度L1、EV値E1、像面速度V1、色温度W1)すべてが設定され、撮影される場合であったが、これらの撮影条件の1つのみ、あるいは任意の組み合わせの撮影条件が使用者の意思で選択され、その他の撮影条件は適正値の条件が設定されるようにしてもよい。
【0038】
このほか、ステップ109において使用者が撮影条件に関する機能を任意に設定できるようにしてもよい。例えば、AEに関して「適正に機能させる」、「OFFにする」、「適正値からシフトさせる」の3つの選択肢から使用者が選択出来るようにし、適正値からシフトさせることを選択した場合は使用者がそのシフト量や方向を入力し、画質低下効果の度合いを調整できるように構成してもよい。また、使用者が望む効果が得られる組み合わせの設定が出来た場合は、その組み合わせを図示しない記録手段によりカメラに記憶させて、後から呼び出せるように構成しても良い。
【0039】
(4)通常撮影モード
スチルカメラのモード切り替え部を操作することにより通常撮影モードが選択されると、低画質モードがOFFとなり、通常の自動撮影が可能となる。
通常撮影の場合、ステップS103で決定された検出結果に基づいた適正値(物体距離L、EV値E、像面速度V、色温度W)がそのまま撮影条件として設定され、その条件に基づいてスチルカメラの鏡胴やシャッターの絞りなどの撮像機構が駆動し調整されて撮影準備状態となる(S111)。
つぎに、使用者がシャッターボタンを更に押すこと(第2段階の押し下げ)によりセカンドレリーズRL2がONになると(S112)、所定の撮影条件で被写体像がCCD上に露光される(S113)。撮像された画像データは適正値の色温度Wに基づいてホワイトバランス調整が行われ、その他の所定の信号処理が施される。信号処理後の画像データがデジタルスチルカメラ装備の液晶画面に表示され、必要に応じてメモリなどに記録されて撮影が終了する。
【実施例】
【0040】
上記本発明に係る撮影制御システムのうち、低画質モードに関して撮影条件を設定した例を以下に示す。
(a)被写界深度L1
上記式(15)において、被写界深度Lに関して、その適正範囲の最大値または最小値が選択された後に係数及び定数が設定される。ここで、被写界深度Lとして遠点LFが選択された場合、K1=LF、0<a≦1とする。また、被写界深度Lとして近点LNが選択された場合、K1=LN、−0.5≦a<0とする。
すなわち、
L1=LF+LF*a (0<a≦1)
L1=LN+LN*a (−0.5≦a<0)
とする。被写界深度Lの遠点LF、近点LNの選択は、例えば自動低画質モードでは遠点LFが選択されるようにし、ランダム低画質モードではステップS106の乱数発生を利用していずれかが選択されるようにし、マニュアル低画質モードでは使用者が事前に選択できるようにしてもよい。
【0041】
これは次の考え方に基づく。
すなわち、上記式(1)、(2)において被写体距離がODの場合、LFより遠方あるいはLNより至近側にレンズのピントを合わせるとCCD上(あるいは像面上)の被写体像はボケる。ボケすぎて絵にならない場合を考慮すると、本発明の目的に合った適正値から外れた値L1は次の範囲がよい。
F<L1≦2*LF
N>L1≧0.5*LN
上記AFシフト量に関する係数、定数の設定はこれら2つの式に基づいている。
【0042】
(b)EV値E1
AEシフト量に関しては、適用される撮像装置の種類、あるいはフィルムの種類によって設定される定数が異なる。これは露光の許容範囲の広狭の程度の差による。
すなわち、デジタルカメラやポジフィルムを使ったカメラの場合は、露光の許容範囲は狭いため、上記式(16)はつぎのようになる。
E1=E+K2*b (K2=±1、0.5≦b≦2.5)
また、ネガフィルムを使ったカメラの場合は、露光の許容範囲は広いため、上記式(16)はつぎのようになる。
E1=E+K2*b (K2=±1、2≦b≦5)
上記K2の値の選択は、例えば自動低画質モードではK2=1が選択されるようにし、ランダム低画質モードではステップS106の乱数発生を利用していずれかが選択されるようにし、マニュアル低画質モードでは使用者が事前に選択できるようにしてもよい。
【0043】
(c)像面速度V1
上記式(17)はつぎのようになる。
V1=V+K3*c (K3=δ/T、0≦c≦5)
ここで、Vは補正可能な像面速度、すなわち適正像面速度(mm/sec)であり、V=δ/Tである。また、δは許容錯乱円径(mm)、Tは露出時間(sec)である。
この撮影条件は、本来被写体上の1点が像面上の1点に結像するべきところ、許容錯乱円径以上に撮影レンズの一部または像面そのものを意図的に動かすことによってブレた画像を作り出すものである。なお、6δをブレすぎて絵にならない場合を考慮した上限としている。
【0044】
(d)色温度W1
上記式(18)はつぎのようになる。
W1=W+K4*d (K4=±1500、1≦d≦1.6)
この撮影条件は、撮影された後で画像データを信号処理するデジタルカメラだけに適用される条件であり、オートホワイトバランスにおいて白が白として発色するようにRGB各出力成分の比率を調整する基準となる色温度W(この場合、5500K)を変化させることによって、ホワイトバランスをずらすものである。
なお、K4の数値の選択は、例えば自動低画質モードではK4=1500が選択されるようにし、ランダム低画質モードではステップS106の乱数発生を利用していずれかが選択されるようにし、マニュアル低画質モードでは使用者が事前に選択できるようにしてもよい。
【0045】
つぎに、本発明に係る撮像装置の他の実施の形態における構成について図面を参照して説明する。
図2は、本発明に係る撮像装置であるデジタルスチルカメラにおける、不具合発生モード時の操作及び撮影制御の流れを示すフローチャートである。本発明に係る撮像装置の撮影制御システムが適用される対象は、デジタルスチルカメラなどのように撮影された画像データを撮影後に信号処理して後加工できるようなプロセスをもつ撮像装置に適用されるだけではなく、各種撮像装置(一眼レフカメラ、ビデオカメラなど)であればよい。なお、ここでいうデジタルスチルカメラは、撮像手段として光学レンズ系と絞りと撮像素子(CCD)とを有しており、当該スチルカメラに設けられたレリーズボタンが2段階押されることによりシャッターが動作し、所定の撮影条件に設定された光学系レンズと絞りとを介して被写体像が撮像素子上に結像される構成である。また、シャッターボタンの第1段階の押し下げにより外光の明るさを測定する測光手段と被写体までの距離を測定する測距手段とを備えている。さらに、撮像手段で得られた画像信号を処理する相関二重サンプル部、オートゲインコントロール部、A/D変換部、デジタル信号処理部を有する公知の信号処理手段を備えている。
【0046】
以下、図2に基づき構成・動作を説明する。
不具合発生モードとする場合、デジタルスチルカメラのモード切り替え部を操作することにより撮影制御システムが通常の自動撮影モードから不具合発生モードに切り替えられるようにすればよい。また、電源投入後直ちに不具合発生モードになるように構成しても何ら問題はない。不具合発生モードに切り替える際に、自動的に不具合を発生させる自動不具合発生モード、不具合の組み合わせや効果の重みをランダムに発生し組み合わせるランダム不具合発生モード、手動で不具合の項目や効果を選択できるマニュアル不具合発生モードの選択が可能になっている。あるいは、個々の製品に応用する際にはいずれかの不具合発生モードのみを採用しても問題はない。
モード別の操作の流れは低画質モードと基本的に同じである。
【0047】
(1)自動不具合発生モード
自動不具合発生モードが選択されると、ランダム不具合発生モード及びマニュアル不具合発生モードのいずれもがOFFとなった状態で撮影システムが制御される。
撮影にあたって、使用者がシャッターボタンを半押し(第1段階の押し下げ)することによりファーストレリーズRL1がONになり(S201)、測距手段、測光手段、ブレ検出などの自動機構のセンサーが被写体までの距離、外光の明るさなどの測定、検出が行われる(S202)。
その測定、検出結果に基づいて適正値(被写界深度L、EV値E、像面速度V、色温度W)が決定される(S203)。
【0048】
ついで、不具合発生モードON(S204)、ランダムモードOFF(S205)の状態が確認されることによって、多重露光、コマ重なり、光線漏れのいずれかの不具合項目がONとなり、ONとなった不具合項目の重みが設定される(S207)。
【0049】
なお、不具合項目それぞれの重みは、撮影前に予め設定されている定数であり、撮影制御システムによって自動的に設定されるものである。あるいは、使用者による定数テーブルからの選択あるいは数値入力によって設定されるようにしてもよい。
【0050】
上記不具合項目の設定と平行して、あるいはその後に、ステップS203で決定された検出結果に基づいた適正値(被写界深度L、EV値E、像面速度V、色温度W)がそのまま撮影条件として設定され、その条件に基づいてスチルカメラの鏡胴やシャッターの絞りなどの撮像機構が駆動し調整されて撮影準備状態となる(S211)。
つぎに、使用者がシャッターボタンを更に押すこと(第2段階の押し下げ)によりセカンドレリーズRL2がONになると(S212)、所定の撮影条件で被写体像がCCD上に露光される(S213)。
【0051】
その撮影動作と同時あるいはその前に、マニュアルモードOFF(S208)の状態が確認されることによって、ステップS207で設定された不具合項目の条件に従い、ステップS213で撮影された画像データが信号処理段階で合成される(S210)。なお、多重露光やコマ重なりはその前までに撮影された画像データを利用して合成する。ついで、その信号処理後の不具合画像データがデジタルスチルカメラ装備の液晶画面に表示され、必要に応じてメモリなどに記録されて撮影が終了する(S214)。
なお、フォーカスやアイリスなどの駆動はセカンドレリーズRL2がONになった後に行われてもよい。
上記撮影制御システムでは、予め設定された重みに基づき調整された不具合を発生させるものであり、ある一定の不具合の画像が安定して得られるものである。
【0052】
(2)ランダム不具合発生モード
ランダム不具合発生モードを選択した場合には、上記の不具合を発生させる個々の要素とその効果の重さの組み合わせが撮影毎に変化するようにつぎのように制御される。
撮影にあたって、ファーストレリーズRL1のONにより(S201)、自動機構のセンサーの測定、検出が行われ(S202)、適正値(被写界深度L、EV値E、像面速度V、色温度W)が決定される(S203)までは自動不具合発生モードと同じある。
【0053】
ついで、不具合発生モードON(S204)、ランダムモードON(S205)の状態が確認されることによって、不具合項目に対応する定数a〜cそれぞれについて、定数a〜cそれぞれで決められている数値範囲内で乱数発生に基づいた数値が設定され、同時に不具合項目それぞれのON/OFFが乱数発生を利用して決定される(S206)。多重露光、コマ重なり、光線漏れの不具合項目のうち、ステップS206で決定された項目がONとなり、ONとなった不具合項目の重みが予め設定されている重みにそれぞれ定数a〜cが加味されて設定される(S207)。これにより、各不具合の発生、その程度は撮影のたびにランダムに変化する。
以降のステップにおける撮影制御は上記自動不具合発生モードと同じである。
上記ランダム不具合発生モードでは、撮影のたびに不具合の程度が一定しない不具合のある画像が得られ、使用者が思いがけない、意外性のある不具合発生効果が得られる可能性が大きくなる。
【0054】
(3)マニュアル不具合発生モード
マニュアル不具合発生モードの場合は、不具合項目の動作と効果の重みを使用者の意志で選択できるように構成されている。
この場合、図2において撮影開始からステップSS07までは上記操作、動作内容と同じであり、自動不具合発生モード、ランダム不具合発生モードいずれのモードであってもよい。ステップS208、S209の動作内容について説明する。
【0055】
マニュアルモードON(S208)の状態が確認されることによって、使用者により選択された不具合項目がONとなり、かつONとなった不具合項目の重みが予め設定されている重みにそれぞれ使用者により設定された定数a〜cが加味されて設定される(S209)。定数a〜cの設定はマニュアルモードON(S208)の状態が確認された時点(撮影の途中)で行われてもよいが、撮影前のマニュアル不具合発生モード選択のときに設定されるようにしてもよい。
以降のステップにおける撮影制御は上記自動不具合発生モードと同じである。
【0056】
以下個々の不具合の内容を説明する。
(イ)多重露光効果
デジタルカメラの場合は、モード設定後の複数の撮影画像データを合成処理することにより多重露光効果を得ることができる。銀塩フィルムカメラの場合は、フィルムの送りを止めることにより複数の露光が同じ画面に記録される。その際多重露光枚数の設定や露出の調整を、効果の重み調整と言う形で行なう。
【0057】
(ロ)コマ重なり
デジタルカメラと銀塩フィルムカメラ共に、基本的には多重露光と同様の処理で行なう事が出来る。ただし、重み調整により、重ねるコマ(撮影画像)の指定と重ねる位置の指定が行われる。
【0058】
(ハ)光線漏れ
デジタルカメラの場合は、光源を発光させ画像の一部を露出オーバーの状態にさせても良いし、予めカメラに光漏れのみを記憶させておき、その画像を後から合成することも出来る。銀塩フィルムカメラの場合は、暗箱状態を一時的に破るような操作を行なえば良い。あるいは光源を発光させフィルムの一部を感光させても良い。その場合は新規に光源を設置しても良いし、AF補助・ストロボ・日付写し込み用LEDなどの既にカメラに内蔵されている光源の光を感光面に導く構造にしても良い。ただし、重み調整により、光線の強さの指定と光線の入る位置及び角度の指定が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る撮像装置における撮影制御システムの一の実施の形態における低画質モード時における操作及び撮影制御の流れを示すフローチャートである。
【図2】本発明に係る撮像装置における撮影制御システムの他の実施の形態における不具合発生モード時における操作及び撮影制御の流れを示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像の撮像を行う撮像手段と、
前記撮像手段で得られた画像信号を処理する信号処理手段と、
を備えた撮像装置であって、
前記信号処理手段が、当該撮影にて得られた画像信号と、その前までに撮影された画像信号と、を複数の条件に従い合成し、
前記複数の条件の設定値のうち少なくとも一つの設定値を、撮影のたびにランダムに変化させて設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
乱数生成手段を備え、
前記乱数生成手段により生成された乱数に基づいて、前記条件の設定値のうち少なくとも一つの設定値を、撮影のたびにランダムに変化させて設定することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記複数の条件の設定値が、合成する枚数の設定、合成する撮影信号の設定、重ねる位置の設定のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
光源を備え、
前記光源からの光を前記撮像手段の感光面に導いて撮像を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記光源が、AF補助光用の光源、ストロボ、日付写し込み用の光源のいずれかを含むことを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記複数の条件の設定値が、前記光源からの光の強さ、前記光源からの光の入る位置、前記光源からの光の入る角度のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項4または5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記複数の条件のうち、撮影のたびにランダムに変化させて設定値を設定する条件を、ランダムに選択することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記複数の条件のうち、撮影のたびにランダムに変化させて設定値を設定する条件を、使用者が選択できることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の撮像装置。
【請求項9】
撮影のたびにランダムに変化させて設定値を設定する条件同士の重みを、使用者が設定できることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−312409(P2007−312409A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174039(P2007−174039)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【分割の表示】特願2002−274814(P2002−274814)の分割
【原出願日】平成14年9月20日(2002.9.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】