説明

撮像装置

【課題】 簡単な構成により可動レンズの移動に対応して絞りを可変することのできる小型で組み立てが容易となる撮像装置を実現すること。
【解決手段】 本発明による撮像装置は、可動レンズ63を保持する可動レンズ枠61、及び磁性部材62を備えた可動レンズユニット60と、複数の対物光学系31、34が配設され、可動レンズ枠を撮影光軸方向に進退自在に保持する固定レンズ枠33と、磁性体から形成された絞り羽根74の移動により撮影光量を調整する絞りユニット35と、可動レンズ枠の進退移動に応じて、絞り羽根を磁力により移動する強磁性体38と、具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学性能を可変自在な撮像装置であって、特に、内視鏡などの医療機器に用いられる撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内視鏡は、医療用分野及び工業用分野で広く用いられるようになった。また、このような内視鏡の中には、イメージファイバを用いて観察像を接眼レンズにて観察する従来からのファイバースコープ型の内視鏡、或いは内視鏡先端部、内視鏡操作部などに固体撮像素子を配して、モニタに観察画像を表示させる電子内視鏡がある。
【0003】
これらの内視鏡には、合焦点を変化させずに、可動レンズを光軸方向に可動させて、連続的に画角、倍率等を可変させる、フォーカス、ズーム機能のため可動レンズ機構を備えたものがある。このような可動レンズ機構の技術は、内視鏡に限らず適用され、例えば、特許文献1に記載のレンズ駆動装置、或いは特許文献2に記載の撮像装置に開示された技術が用いられている。
【0004】
特許文献1に記載のレンズ駆動装置は、磁気的作用により、レンズ可動体を光軸方向に可動させる技術が開示されている。また、特許文献2の撮像装置は、磁気的作用により、シャッタ、及び絞りを開閉する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−227705公報
【特許文献2】特開2006−276798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のレンズ駆動装置、或いは撮像装置のような、最適な焦点位置を変化させて、可動するレンズを備えた構成において、最適な明るさを調整、すなわち、その光学系における光の量を調整するための可変絞りが設けられる。
【0006】
このように、可動レンズ機構と可変絞り機構を備えた従来の撮像光学系は、構造が非常に複雑なものとなり、部品の駆動機構の調整が困難であり、組み立て性が悪いという問題がある。
【0007】
特に、医療装置である内視鏡は、体腔等に挿入されるため細径化が望まれ、これに合わせて、撮像装置の駆動機構の大きさの小型化が要求されている。そのため、撮像装置の構成部品自体を非常に小さな構成としても、組み立て性が悪くなるばかりでなく、複雑な構造形態によっては撮像装置の小型化を阻害してしまう場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成により可動レンズの移動に対応して絞りを可変することのできる小型で組み立てが容易な撮像装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明による撮像装置は、可動レンズを保持する可動レンズ枠、及び磁性部材を備えた可動レンズユニットと、複数の対物光学系が配設され、上記可動レンズ枠を撮影光軸方向に進退自在に保持する固定レンズ枠と、磁性体から形成された絞り羽根の移動により撮影光量を調整する絞りユニットと、上記可動レンズ枠の進退移動に応じて、上記絞り羽根を磁力により移動する強磁性体と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単な構成により可動レンズの移動に対応して絞りを可変することのできる小型で組み立てが容易となる撮像装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。尚、本発明の実施の形態においては、体腔内に挿入して、生体組織を観察する医療装置である内視鏡装置の中における、例えば、腹腔鏡下外科手術で使用される硬性電子内視鏡に内蔵される撮像装置の一例を以下に説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
先ず、図1から図10を用いて、第1の実施の形態の撮像装置について説明する。
図1〜図10は、本発明の第1の実施の形態に係り、図1は硬性電子内視鏡の構成を示す図、図2は硬性電子内視鏡の先端部内に配設される撮像装置の断面図、図3は図2のIII−III断面図、図4は絞りユニットの分解斜視図、図5は絞りユニットの正面図、図6は図5のVI−VI断面図、図7は可動レンズユニットが後方に位置した状態を示す断面図、図8は図7のVII−VII断面図、図9は可動レンズユニットが前方に位置した状態を示す断面図、図10は図8のX−X断面図である。
【0013】
図1に示すように、硬性電子内視鏡1(以下、単に内視鏡という)1は、挿入部2と、この挿入部2の基端に連設された操作部3と、この操作部3から延出したユニバーサルコード4と、このユニバーサルコード4の基端に配されたスコープコネクタ5と、このスコープコネクタ5の側部から延出するケーブルの端部に設けられた電気コネクタ6と、を有して主に構成されている。
【0014】
内視鏡1の挿入部2は、先端から順に、先端部11と、この先端部11に連設された湾曲部12と、この湾曲部12と操作部3との間に設けられた硬質管部13と、を有して構成されている。本実施の形態の硬質管部13は、ステンレス等から形成された非可撓性の硬性管から形成されている。尚、先端部11内には、撮像光学系を備えた、後述する撮像装置が内蔵されている。
【0015】
本実施の形態の内視鏡1の操作部3には、回動操作により湾曲部12の湾曲操作を行うための2つの湾曲操作レバー14,15、及び各種操作等を行うためのスイッチ類16が設けられている。これら湾曲操作レバー14,15は、回動操作されることにより、挿入部2の湾曲部12が4方向、或いは2方向へ湾曲する構成となっている。また、操作部3に配された複数のスイッチ類16は、所定の内視鏡機能、例えば、先端部11内に配設された撮像装置の操作等を実行する際に操作されるものである。
【0016】
また、図示していないが、本実施の形態の内視鏡1は、スコープコネクタ5がハロゲンランプ等の照明光発生手段が内蔵された光源装置に接続され、電気コネクタ6がビデオプロセッサに接続される。
【0017】
光源装置からの照明光は、ユニバーサルコード4から先端部11まで挿通するライトガイドバンドルにより伝送され、先端部11から被検体に向けて照射される。尚、ビデオプロセッサは、モニタと接続され、内視鏡1にて撮影された内視鏡画像をモニタに出力して表示させる。
【0018】
次に、図2、及び図3を用いて、内視鏡1の先端部11内に配設される、本実施の形態の撮像装置について、以下に詳しく説明する。
図2に示すように、本実施の形態の撮像装置20は、レンズユニット30と、このレンズユニット30の後方に嵌合される撮像素子ユニット40と、レンズユニット30、及び撮像素子ユニット40の外周の一部に沿って配設された可動レンズ駆動機構50と、を有して主に構成されている。
【0019】
レンズユニット30は、先端部11の先端面に配置される観察レンズを含む前方の対物光学系を構成する前群レンズ31と、この前群レンズ31を保持する非磁性体材から形成された固定レンズ枠である前群レンズ固定枠32と、この前群レンズ固定枠32の後端部に嵌合して連設され、後方の対物光学系を構成する後群レンズ34を保持した略筒状の非磁性体から形成された固定レンズ枠である後群レンズ固定枠33と、この後群レンズ固定枠33内に進退自在に配設され、絞りユニット35が先端部分に嵌合固定された可動レンズユニット60と、を有して構成されている。
【0020】
後群レンズ固定枠33は、先端側の外周部に強磁性体である、ここでは永久磁石(以下、単に磁石と略記する)38が嵌着されている。この磁石38は、ここでは、永久磁石が用いられ、図2の紙面に向かって見た、後群レンズ固定枠33の上方側に配設されている。
【0021】
可動レンズユニット60は、非磁性体から形成された可動レンズ枠61と、この可動レンズ枠61の基端に嵌着されたリング状の磁性体から形成された磁性部材62と、可動レンズ枠61に保持された可動レンズ63と、から構成されている。この可動レンズユニット60は、可動レンズ枠61内において、撮影光軸Oに沿って進退移動自在に直進ガイドされている。
【0022】
撮像素子ユニット40は、カバーガラス等の光学部品42を保持する保持枠41と、光学部品42に受光部側が面接合するように接着された、CCD、CMOS等のイメージセンサである固体撮像素子43と、この固体撮像素子43に電気的に接続された電子部品が実装され、複数の通信線45が電気的に半田接続されたFPC(フレキシブルプリント基板)44と、を有して主に構成されている。
【0023】
保持枠41は、先端部分がレンズユニット30の後群レンズ固定枠33に内嵌固定しており、基端外周部分に固体撮像素子43等を被覆して保護する熱収縮チューブ46が配設されている。尚、この熱収縮チューブ46内には、保護接着剤が固体撮像素子43、FPC44、及び通信線45を覆うように充填されている。
【0024】
可動レンズ駆動機構50は、撮影光軸Oに平行な凹部状の溝であるガイド溝51aが形成されたフレーム51と、ガイド溝51aに直進ガイドされる非磁性体材から形成された磁石保持台52と、この磁石保持台52の上部に嵌合された強磁性体である永久磁石の可動磁石53と、磁石保持台52を前方側へ付勢するバネ54と、磁石保持台52の基端部に接合されたSMA(Shape Memory Alloys:形状記憶合金)ワイヤ55と、フレーム51の基端に嵌着された、金属、例えば、ステンレス製のパイプ56と、SMAワイヤ55が内部に挿通し、パイプ56内に挿設された絶縁性を有したピーク(PEEK)チューブ等の絶縁チューブ57と、この絶縁チューブ57の基端に設けられ、SMAワイヤ55が接合された電極用カシメ58と、この電極用カシメ58に電気的に接続された電源ケーブル59と、絶縁チューブ57の基端部分から電極用カシメ58と共に電源ケーブル59を被覆する絶縁シース65と、を有して構成されている。尚、SMAワイヤ55は、磁石保持台52の基端部に結合した後、折り返かえされて、後述のGND(グランド)ワイヤ55aとして、後方へ延設される。
【0025】
フレーム51は、図3に示すように、断面略U字型をしており、上端部分がレンズユニット30の後群レンズ固定枠33と嵌合している。また、この嵌合状態において、後群レンズ固定枠33の外形面とフレーム51の内形面により囲まれた空間が形成される。この空間内で磁石保持台52は、ガイド溝51aにより直進ガイドされ、可動磁石53と共に撮影光軸Oに平行な方向に進退移動する。
【0026】
この磁石保持台52の進退移動は、磁石保持台52の後端部に接続されたSMAワイヤ55に電極用カシメ58を介して、電源ケーブル59から電力が供給されて、SMAワイヤ55自体が発熱し収縮して、バネ54による前方への付勢力に抗して後方側へ磁石保持台52を牽引する。これにより、磁石保持台52は、後方へ可動する。
【0027】
また、SMAワイヤ55への電力供給を停止すると、SMAワイヤ55が常温に戻り、磁石保持台52がバネ54による前方への付勢力を受けて前方へ可動する。磁石保持台52は、前方へ可動すると、先端面がフレーム51の先端に嵌合された当接部材39と当接して前方への可動が規制される。
【0028】
尚、SMAワイヤ55は、磁石保持台52にて折り返されて、後方へ延設する絶縁チューブ55bに被覆されたGND(グランド)ワイヤ55a(図3参照)と電気的に接続されている。
【0029】
こうして、磁石保持台52は、可動磁石53と共に撮影光軸Oに沿った平行な方向へ進退移動する。このとき、可動レンズ枠61の基端部に設けられた磁性部材62は、後群レンズ固定枠33の外部から可動磁石53からの磁力を受けて吸い寄せられ、この可動磁石53の進退移動に連動して、可動レンズ枠61と共に、後群レンズ固定枠33内で撮影光軸Oに沿った平行な方向に進退移動する。
【0030】
換言すると、可動レンズユニット60は、可動レンズ63を保持した可動レンズ枠61の磁性部材62が可動磁石53からの磁気的作用を受けて、後群レンズ固定枠33内で進退移動する。
【0031】
この可動レンズユニット60の進退移動距離は、可動レンズ63の撮影光軸Oに沿った可動に伴って可変する撮像装置20の所定のズーム・テレ状態に対応した焦点距離により設定されている。
【0032】
この可動レンズユニット60の後方への可動において、後群レンズ固定枠33の内周面には、可動レンズ枠61の基端に配設された磁性部材62の基端面に当接して可動位置を規制する内径方向に突起した規制凸部33aが形成されている。また、可動レンズユニット60の前方への可動おいては、可動レンズ枠61の先端面が前群レンズ固定枠32の基端面に当接することで移動が規制される。
【0033】
すなわち、可動レンズユニット60は、可動レンズ枠61が前群レンズ固定枠32に当接する位置から磁性部材62が後群レンズ固定枠33の規制凸部33aに当接する位置までの範囲で撮影光軸Oに沿った可動範囲が規定されている。
【0034】
さらに、可動レンズユニット60は、先端が前群レンズ31と前群レンズ固定枠32に封止され、後群レンズ34に塞がれた密閉された後群レンズ固定枠33の空間内で進退移動する。つまり、本実施の形態の撮像装置20は、可動レンズ駆動機構50が密閉された後群レンズ固定枠33の空間内の可動レンズユニット60を磁気的作用により進退移動させる構成となっているため、耐湿性の良い構成となっている。
【0035】
また、本実施の形態の撮像装置20は、例えば、可動レンズユニット60が前方に位置するワイド状態と、後方に位置するテレ状態の2つの状態に切替られる構成であり、これら夫々の状態の焦点距離に合わせて、最適な光量を調整するため絞りユニット35の絞りの開口径φが可変する構成となっている。
【0036】
次に、図4〜図6に基づいて、絞りの開口径φが可変する本実施の形態の絞りユニット35について、以下に詳しく説明する。
図4に示すように、絞りユニット35は、中心に絞り孔71aが設けられ、円盤状の非磁性体により形成された固定絞り板71と、円環状の非磁性体から形成された絞り枠72と、絞り羽根抑えを構成する略半円状の非磁性板体である2枚の保持板73と、上部側に絞り孔74aが形成され、下部側に切り欠き74bが形成された磁性体から形成された可動絞り羽根74と、この可動絞り羽根74の上端部に一端部が固定された付勢部材であるバネ75と、を有して構成されている。
【0037】
固定絞り板71は、形成された絞り孔71aが撮影光の一部だけを通し、本実施の形態の光学系において撮影光量を調整して、所定の光学性能を満足する絞り孔71aの開口径φA(図6参照)が設定されている。また、この固定絞り板71は、可動絞り羽根74との摺動摩擦抵抗を低減するPTFE等の表面加工が施されている。
【0038】
絞り枠72は、外周面が円形状の固定絞り板71の外形に略一致しており、可動絞り羽根74、及び保持板73よりも大きな所定の厚みを有している。
【0039】
2枚の保持板73は、後述するが、互いが対向して配置され、このときに向かい合う縁辺部の一面側に可動絞り羽根74が固定絞り板71に接触した状態で可動絞り羽根74の両端部分を面接触して摺動自在に保持して上下に直進ガイドするガイド溝73aが形成されている。このガイド溝73aの表面にも、可動絞り羽根74との摺動摩擦抵抗を低減するPTFE等の表面加工が施されている。
【0040】
可動絞り羽根74は、摺動摩擦抵抗を低減するPTFE等の表面加工が施されている。この可動絞り羽根74に形成された絞り孔74aは、撮影光の一部だけを通し、本実施の形態の光学系において撮影光量を調整して、所定の光学性能を満足する絞り孔71aの開口径φAよりも小さな開口径φB(図6参照)が設定されている。
【0041】
また、この可動絞り羽根74は、バネ75が設けられる上部側と反対側の下部側に拡がると共に、上部が円弧状に切削加工された切り欠き74bが形成されている。この切り欠き74bは、固定絞り板71の絞り孔71aよりも大きな形状をしている。
【0042】
上述の固定絞り板71は、その一面の円周部分に絞り枠72が固着される。そして、可動絞り羽根74は、絞り枠72が固着された固定絞り板71の一面と面接触するように配置される。
【0043】
バネ75は、可動絞り羽根74に固定された一端部と反対側の他端部が絞り枠72の内面と接着などにより固定される。そして、可動絞り羽根74は、2枚の保持板73により、両側部分が固定絞り板71のガイド溝73aに係合され、固定絞り板71に抑えつけられるように、固定絞り板71と2枚の保持板73に上下に摺動自在に挟持される。また、これら2枚の保持板73は、各絞り孔71a,74aを塞ぐことのない所定の距離で離間する状態で絞り枠72に固着される。
【0044】
こうして、図5、及び図6に示すように、組み付けられた本実施の形態の絞りユニット35は、可動絞り羽根74が前方側に位置するよう、図2に示したように、可動レンズユニット60の可動レンズ枠61の先端部分に内嵌固着される。
【0045】
次に、以上のように構成された本実施の形態の撮像装置20において、可動レンズユニット60の撮影光軸Oに沿った進退移動に伴って連動する絞りユニット35の可動絞り羽根74が、以下では上下方向に可動する作用について、図7〜図10を用いて、以下に詳しく説明する。
【0046】
先ず、本実施の形態の撮像装置20は、図7、及び図8に示す、後方に位置するテレ状態のとき、上述したように、SMAワイヤ55に電流が印加され、このSMAワイヤ55が収縮することで、可動磁石53が設けられた磁石保持台52をバネ54の前方への付勢力に抗して後方へ牽引する。
【0047】
すると、可動レンズユニット60は、磁性部材62が磁気的作用により可動磁石53に引き寄せられ、可動磁石53に連動して後群レンズ固定枠33内で後方へ移動する。そして、可動レンズユニット60は、後群レンズ固定枠33の規制凸部33aに磁性部材62の基端面が当接して後方への移動が規制され、設定された所定の焦点距離のテレ状態の位置で停止する。
【0048】
このとき、絞りユニット35の可動絞り羽根74は、図8に示すように、ここでは上部側のバネ75により、可動磁石53側の下方への付勢力が働き、絞り枠72に下端部が当接した状態となる。この状態において、可動絞り羽根74は、絞り孔74aが固定絞り板71の絞り孔71aの中心に一致し、この絞り孔71aの周囲を覆うように重畳する。つまり、このとき、絞りユニット35は、可動絞り羽根74の絞り孔74aの開口径φBによる撮影光量を調整する絞り量となる。
【0049】
その一方で、撮像装置20は、図9、及び図10に示す、本実施の形態における、前方に位置するワイド状態のとき、上述したように、SMAワイヤ55への電流の印加が停止され、このSMAワイヤ55が常温での長さに戻り、バネ54の付勢力により可動磁石53が設けられた磁石保持台52が前方へ押され移動する。
【0050】
このとき、可動レンズユニット60は、可動磁石53の磁気的作用を受けている磁性部材62により、可動磁石53の移動に連動して後群レンズ固定枠33内で前方へ移動する。そして、可動レンズユニット60は、可動レンズ枠61の先端面が前群レンズ固定枠32の基端面に当接することで前方への移動が規制され、設定された焦点距離のズーム状態の位置で停止する。
【0051】
このとき、絞りユニット35の可動絞り羽根74は、図10に示すように、上部側のバネ75による下部側への付勢力に抗して、後群レンズ固定枠33の上部に設けられた磁石38に引き寄せられ上方へ移動する。つまり、絞りユニット35は、可動レンズユニット60と共に、前方へ移動すると、後群レンズ固定枠33の磁石38に近接した位置に移動するため、磁性体から形成された可動絞り羽根74が磁石38の磁気的作用を受けて、上方へ保持板73のガイド溝73aに直進ガイドされながら引き寄せられる。
【0052】
この状態において、可動絞り羽根74は、絞り孔74aが固定絞り板71の絞り孔71aよりも上方に移動して、切り欠き74bによって、この絞り孔71aが露出する状態となる。つまり、このとき、絞りユニット35は、固定絞り板71の絞り孔71aの開口径φAによる撮影光量を調整した絞り量となる。
【0053】
以上から、本実施の形態の撮像装置20は、テレとズームの2つの状態に応じて、可動レンズユニット60が撮影光軸Oに沿った前後の移動に応じて、絞りユニット35の可動絞り羽根74が保持板73のガイド溝73aに直進ガイドされながら上下に移動する。
【0054】
すなわち、磁性体により形成された可動絞り羽根74は、可動レンズユニット60と共に絞りユニット35が前方に移動すると、磁石38に近接するため、この磁石38からの磁力を受けて、バネ75の付勢力よりも大きな力で引き寄せられて上方へ移動する。一方、可動絞り羽根74は、可動レンズユニット60と共に絞りユニット35が後方に移動すると、磁石38から遠ざかり、この磁石38からの磁力が低下して、バネ75の付勢力のほうが勝り、下方へ移動する。
【0055】
尚、磁石38は、撮影光軸Oの前後方向、つまり、撮像装置20の長軸の前後方向において、可動磁石53がワイド位置となる前方側へ移動した位置よりも、さらに前方の位置であって、撮影光軸Oの点対称の位置に配置されている。そして、本実施の形態においては、磁性体の可動絞り羽根74がワイド状態の前方に移動した位置でバネ75の付勢力と可動磁石53からの磁力を受けても、磁石38の磁力により、十分に上方へ移動することができるように、各磁石38,53の配置位置、及びこれら磁石38,53が可動絞り羽根74へ作用する磁力と、バネ75の付勢力が設定されている。また、磁性体の可動絞り羽根74がテレ状態の後方に移動した位置で磁石38からの磁力を受けても、バネ75の付勢力により、十分に下方へ移動することができるように、磁石38の配置位置、及び磁石38の可動絞り羽根74へ作用する磁力と、バネ75の付勢力が設定されている。
【0056】
以上に説明したように、本実施の形態のテレ・ズーム機能を備えた撮像装置20は、密閉された空間内の可動レンズユニット60が可動レンズ駆動機構50の磁気的作用により撮影光軸Oに沿った進退移動することで耐湿性の良い構造となっている共に、テレ状態、或いはズーム状態に応じて撮影光量を可変する絞りユニット35による絞りの開閉も磁気的作用により行う簡単な構造とすることができる。特に、本実施の形態の撮像装置20は、絞りユニット35による絞りの可変構造がシンプルなものであるため、小型でも、非常に組み立て性が良くなる。
【0057】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について、図11から図XXに基づき、以下に説明する。
また、図11から図15は、本発明の第2の実施の形態に係り、図11は撮像装置の構成を示す部分断面図、図12は可動レンズユニットが後方に位置した状態を示す断面図、図13は図12のXIII−XIII断面図、図14は可動レンズユニットが前方に位置した状態を示す断面図、図15は図14のXV−XV断面図である。尚、以下の説明において、上述した第1の実施の形態の撮像装置20と同一の構成について同じ符号を用い、それら構成の詳細な説明を省略する。
【0058】
本実施の形態の撮像装置20は、絞りユニット35が前群レンズ固定枠32の基端部分に嵌合固定されている。また、可動レンズユニット60の可動レンズ枠61は、先端部分の上部に強磁性体である磁石81が嵌合配置されている。さらに、後群レンズ固定枠33は、先端側の下部外周側であって、絞りユニット35の直下に強磁性体である磁石82が嵌合配置されている。
【0059】
すなわち、本実施の形態の撮像装置20は、第1の実施の形態で可動レンズユニット60に固定した絞りユニット35を前群レンズ固定枠32に配設した構成となっている。
【0060】
このように構成された撮像装置20は、図12に示すように、本実施の形態においても、後方に位置するテレ状態のとき、絞りユニット35の可動絞り羽根74が、図13に示すように、絞りユニット35の直下に設けられた磁石82の磁力を受けて、この磁石82側である下方に引き寄せられ、絞り枠72に下端部が当接した状態となる。この状態において、可動絞り羽根74は、絞り孔74aが固定絞り板71の絞り孔71aの中心に一致し、この絞り孔71aの周囲を覆うように重畳する。つまり、このとき、絞りユニット35は、可動絞り羽根74の絞り孔74aの開口径φBによる撮影光量を調整する絞り量となる。
【0061】
その一方で、撮像装置20は、図14に示すように、本実施の形態においても、前方に位置するワイド状態のとき、絞りユニット35の可動絞り羽根74が、図15に示すように、直下にある磁石82の磁力による下方へ引き寄せられる力に抗して、可動レンズ枠61の先端上部に設けられた磁石81の磁力を受けて引き寄せられ上方へ移動する。つまり、絞りユニット35は、可動レンズユニット60が前方へ移動すると、可動レンズ枠61の磁石81が近接する上方の位置に移動するため、磁性体から形成された可動絞り羽根74が磁石81の磁気的作用を受けて、保持板73のガイド溝73aに直進ガイドされながら上方へ引き寄せられる。
【0062】
この状態において、可動絞り羽根74は、絞り孔74aが固定絞り板71の絞り孔71aよりも上方に移動して、切り欠き74bによって、この絞り孔71aが露出する状態となる。つまり、このとき、絞りユニット35は、固定絞り板71の絞り孔71aの開口径φAによる撮影光量を調整した絞り量となる。
【0063】
すなわち、磁性体により形成された可動絞り羽根74は、可動レンズユニット60が前方に移動すると、磁石81が近接するため、この磁石81からの磁力を受けて、磁石82の磁力よりも大きな磁力で引き寄せられて上方へ移動する。一方、可動絞り羽根74は、可動レンズユニット60が後方に移動すると、磁石81が遠ざかり、この磁石81からの磁力が低下して、磁石82の磁力のほうが勝り、下方へ移動する。
【0064】
従って、可動レンズユニット60の磁石81は、可動レンズユニット60が前方へ移動した点対称の位置に設けられる後群レンズ固定枠33に配設された磁石82よりも磁力が大きく、この磁石82の磁力に抗して、可動絞り羽根74を引き寄せることができる磁力が設定されている。
【0065】
尚、本実施の形態の絞りユニット35は、2つの磁石81,82によって、可動絞り羽根74が撮影光軸Oに対して直交する方向、ここでは上下に進退移動する構成となっているため、図13、及び図15に示すように、第1の実施の形態にて設けられていたバネ75を必要としない。
【0066】
以上に説明した本実施の形態の撮像装置20は、第1の実施の形態と同様な効果が得られると共に、絞りユニット35にバネ75を設ける必要がないため、2つの磁石81,82の磁力の力関係を設定するだけで良く構成が簡易なものとなる。
【0067】
尚、上述の各実施の形態に記載した絞りユニット35は、一例であり、図16〜図19に示すような構成としても良い。尚、図16は第1の変形例に係り、絞りユニットの構成を示す正面図、図17は図16のXVII−XVII断面図、図18は第2の変形例に係り、絞り羽根の構成を示す正面図、図19は第3の変形例に係り、絞り羽根の構成を示す正面図である。
【0068】
例えば、図16、及び図17に示すように、絞りユニット35は、可動絞り羽根74Aの構成が各実施の形態と異なる。具体的には、可動絞り羽根74Aは、磁性体から形成され、絞り孔74aが形成された円形状の外周部から延設された腕部の延出端部が羽根軸84により、固定絞り板71に対して回動自在に配設されている。
【0069】
可動絞り羽根74Aの腕部には、バネ止め部材87が配設されており、このバネ止め部材87にバネ86の一端が接続されている。このバネ86は、下方に可動絞り羽根74Aを牽引するように付勢し、その他端部は、絞り枠72の内面に固着されている。
【0070】
また、固定絞り板71には、可動絞り羽根74Aの絞り孔74aが絞り孔71aに重畳する位置で、バネ86により付勢された可動絞り羽根74Aの位置を当接して規定する羽根止め部材85が設けられている。
【0071】
このように構成された絞りユニット35においても、可動絞り羽根74Aが、上述した、各実施の形態のように、可動レンズユニット60の進退移動、撮像装置20のテレ状態である前方の移動に伴って、近接する強磁性体による磁力を受け、上方へ引き寄せられる力が与えられ、バネ86の付勢力に抗して、羽根軸84回りに上方側へ回動する。
【0072】
一方、可動絞り羽根74Aは、可動レンズユニット60が撮像装置20のワイド状態である後方の移動に伴って、強磁性体による磁力が低下し、バネ86により下方へ牽引され回動し、羽根止め部材85に当接して、絞り孔74aが絞り孔71aに重畳する位置で停止される。
【0073】
こうして、絞りユニット35は、絞りの開口径φを可変する機構を構成するものである。このように構成された絞りユニット35においても、上述した各実施の形態と同様な作用効果が得られる。
【0074】
また、図18に示すように、可動絞り羽根74は、絞り孔74aと切り欠き74bとを繋ぐようなスリット74cを有したほうが良い。このスリット74cは、可動絞り羽根74の進退移動の際に、撮影光軸Oが通過する位置に形成されている。
【0075】
このように可動絞り羽根74にスリット74cを設けることで、可動絞り羽根74の進退移動の際に、撮影光軸Oが一瞬遮断されることが無いため、撮像装置20により撮影される画像がテレ・ワイド切り替えのときに、一瞬消えてしまうことが防止できる。また、撮像装置20は、何かの不具合により、可動絞り羽根74が正確に進退せず、進退途中に停止してしまったとしても、撮影画像が消えてしまうことも防止することができる。
【0076】
さらに、可動絞り羽根74に形成される切り欠き74bは、可動絞り羽根74の上方へ移動した際、固定絞り板71の絞り孔71aを完全に露出させることができれば良いため、例えば、図19に示すように、上部が略半円状で下方に垂直に延びた形状に形成されるような、如何なる形状でも構わない。
【0077】
また、上述の各実施の形態では、可動絞り羽根74を磁気的作用に可動させる強磁性体は、簡単な構成とするため、永久磁石を用いたが、これに限定することなく、電磁石などでも良い。
【0078】
さらに、可動絞り羽根74は、磁性体としたが、それ自体が強磁性体であっても良く、この場合、可動方向に応じて、各磁石との吸引、及び反発の極性を設定すれば良い。
【0079】
以上の各実施の形態に記載した発明は、その実施の形態、及び変形例に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施の形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0080】
例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る硬性電子内視鏡の構成を示す図
【図2】同、硬性電子内視鏡の先端部内に配設される撮像装置の断面図
【図3】同、図2のIII−III断面図
【図4】同、絞りユニットの分解斜視図
【図5】同、絞りユニットの正面図
【図6】同、図5のVI−VI断面図
【図7】同、可動レンズユニットが後方に位置した状態を示す断面図
【図8】同、図7のVII−VII断面図
【図9】同、可動レンズユニットが前方に位置した状態を示す断面図
【図10】同、図8のX−X断面図電子内視鏡の先端部の断面図
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置の構成を示す部分断面図
【図12】同、可動レンズユニットが後方に位置した状態を示す断面図
【図13】同、図12のXIII−XIII断面図
【図14】同、可動レンズユニットが前方に位置した状態を示す断面図
【図15】同、図14のXV−XV断面図
【図16】第1の変形例に係る絞りユニットの構成を示す正面図
【図17】同、図16のXVII−XVII断面図
【図18】第2の変形例に係る絞り羽根の構成を示す正面図
【図19】第3の変形例に係る絞り羽根の構成を示す正面図
【符号の説明】
【0082】
1…硬性電子内視鏡
2…挿入部
11…先端部
20…撮像装置
30…レンズユニット
31…前群レンズ
32…前群レンズ固定枠
33a…規制凸部
33…後群レンズ固定枠
34…後群レンズ
35…絞りユニット
38…永久磁石
39…当接部材
40…撮像素子ユニット
41…保持枠
42…光学部品
43…固体撮像素子
50…可動レンズ駆動機構
52…磁石保持台
53…可動磁石
54…バネ
55…SMAワイヤ
59…電源ケーブル
60…可動レンズユニット
61…可動レンズ枠
62…磁性部材
63…可動レンズ
71a,74a…絞り孔
71…固定絞り板
72…絞り枠
73a…ガイド溝
73…保持板
74c…スリット
74…可動絞り羽根
φ,φA,φB…開口径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動レンズを保持する可動レンズ枠、及び磁性部材を備えた可動レンズユニットと、
複数の対物光学系が配設され、上記可動レンズ枠を撮影光軸方向に進退自在に保持する固定レンズ枠と、
磁性体から形成された絞り羽根の移動により撮影光量を調整する絞りユニットと、
上記可動レンズ枠の進退移動に応じて、上記絞り羽根を磁力により移動する強磁性体と、
を具備したことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
上記固定レンズ枠の外部から上記可動レンズ枠の上記磁性部材を磁力により進退移動する可動レンズ駆動機構を備えたことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
上記絞りユニットは、上記可動レンズ枠に配設され、
上記強磁性体は、上記固定レンズ枠に配設され、上記絞りユニットが上記可動レンズ枠と共に、光軸方向に進退移動することで、上記絞り羽根を磁力により移動することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
上記絞りユニットは、上記固定レンズ枠に配設され、
上記強磁性体は、上記可動レンズ枠に配設され、上記可動レンズ枠と共に、撮影光軸方向に進退移動することで、上記絞り羽根を磁力により移動することを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
上記可動レンズ枠、及び上記固定レンズ枠は、非磁性体から形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
上記可動レンズ駆動機構は、
上記可動レンズの上記磁性部材を引きつける移動磁石と、
該移動磁石を電力の供給により収縮して後方へ牽引する形状記憶合金ワイヤと、
上記移動磁石を前方へ付勢する付勢部材と、
から構成されたアクチュエータであることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項7】
上記固定レンズ枠は、上記複数の対物光学系により前後が封止された密閉空間を有し、
上記可動レンズユニットは、上記密閉空間内に撮影光軸方向に進退自在に配設されていることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−75170(P2009−75170A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241489(P2007−241489)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】